(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】エネルギーマネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 15/00 20060101AFI20240319BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240319BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20240319BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240319BHJP
H01M 8/00 20160101ALN20240319BHJP
H01M 8/04 20160101ALN20240319BHJP
【FI】
H02J15/00 G
H02J3/38 170
H02J3/14
H02J3/38 120
H02J3/32
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
(21)【出願番号】P 2020095727
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中島 敦士
(72)【発明者】
【氏名】舩越 博臣
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-308587(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051417(WO,A1)
【文献】特開2019-170097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 15/00
H02J 3/38
H02J 3/14
H02J 3/32
H01M 8/00
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部発電装置(13)から供給される系統電力を受電する外部受電装置(15)と、
水素を製造する水素製造装置(43)と、
水素を貯蔵する水素貯蔵装置(44)と、
水素を消費してエネルギーを発生させる水素消費装置(47)と、
前記外部受電装置で受電した電力または前記水素消費装置で発生したエネルギーを消費可能なエネルギー消費機器(51)と、
前記エネルギー消費機器で発生した排熱を回収する排熱回収装置(59)と、
前記エネルギー消費機器へのエネルギー供給を制御する制御部(70)と
、
前記外部受電装置で受電した電力を蓄電する蓄電池(25)とを備え、
前記制御部は、前記エネルギー消費機器で発生する排熱量が所定量以上である場合に前記排熱回収装置で回収した排熱を利用して前記水素製造装置に水素を製造させ
、
前記制御部は、前記外部受電装置で受電した電力のうち、前記エネルギー消費機器および前記水素製造装置で消費されなかった電力である余剰電力を前記蓄電池に蓄電し、
前記エネルギー消費機器は、エネルギー消費タイミングとユーザへの機能提供タイミングとをずらすことが可能な可変消費機器(51a)を備え、
前記制御部は、前記余剰電力のうち前記蓄電池に蓄電されなかった電力が多いほど前記可変消費機器で消費する電力を増やすエネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
前記排熱回収装置は、前記エネルギー消費機器で発生した排熱を用いて水蒸気を生成し、生成した水蒸気を前記水素製造装置に供給する請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項3】
前記外部受電装置は、再生可能エネルギーを用いて発電された電力を受電し、
前記制御部は、前記外部受電装置で受電した電力が前記エネルギー消費機器で消費する電力よりも多いほど水素製造量を増やす請求項1または請求項2に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項4】
前記外部
発電装置の発電状況に基づくデマンドレスポンス指令を受信する通信装置(61)を備え、
前記制御部は、前記
デマンドレスポンス指令に基づき前記外部受電装置で受電する電力を増やす場合に、水素製造量を増やす請求項1から請求項3のいずれかに記載のエネルギーマネジメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、エネルギーマネジメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、パワーコンディショナ装置と蓄電池と水素製造装置とを有する電力供給システムを開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術文献の構成では、蓄電池と水素貯蔵装置を備え、発電量が天候や季節に左右される発電装置を使用した場合でも、日々および年間を通して施設の電力需要を満たす電力供給を継続的に行っている。しかしながら、施設で発生した排熱を利用することは想定されていない。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、エネルギーマネジメントシステムにはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示される1つの目的は、効率的なエネルギー管理を実行可能なエネルギーマネジメントシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されたエネルギーマネジメントシステムは、外部発電装置(13)から供給される系統電力を受電する外部受電装置(15)と、水素を製造する水素製造装置(43)と、水素を貯蔵する水素貯蔵装置(44)と、水素を消費してエネルギーを発生させる水素消費装置(47)と、外部受電装置で受電した電力または水素消費装置で発生したエネルギーを消費可能なエネルギー消費機器(51)と、エネルギー消費機器で発生した排熱を回収する排熱回収装置(59)と、エネルギー消費機器へのエネルギー供給を制御する制御部(70)と、外部受電装置で受電した電力を蓄電する蓄電池(25)とを備え、制御部は、エネルギー消費機器で発生する排熱量が所定量以上である場合に排熱回収装置で回収した排熱を利用して水素製造装置に水素を製造させ、
制御部は、外部受電装置で受電した電力のうち、エネルギー消費機器および水素製造装置で消費されなかった電力である余剰電力を蓄電池に蓄電し、
エネルギー消費機器は、エネルギー消費タイミングとユーザへの機能提供タイミングとをずらすことが可能な可変消費機器(51a)を備え、
制御部は、余剰電力のうち蓄電池に蓄電されなかった電力が多いほど可変消費機器で消費する電力を増やす。
【0007】
開示されたエネルギーマネジメントシステムによると、エネルギー消費機器で発生する排熱量が所定量以上である場合に排熱回収装置で回収した排熱を利用して水素製造装置に水素を製造させる制御部を備えている。このため、外部受電装置から水素製造装置に供給する電力の一部をエネルギー消費機器の排熱で賄うことができる。したがって、効率的なエネルギー管理を実行可能なエネルギーマネジメントシステムを提供できる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】エネルギーマネジメントシステムの構成を示す構成図である。
【
図2】エネルギーマネジメントシステムの制御に関するブロック図である。
【
図3】エネルギーマネジメントシステムの制御に関するフローチャートである。
【
図4】第2実施形態におけるエネルギーマネジメントシステムの制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0011】
第1実施形態
図1において、エネルギーマネジメントシステム1は、外部受電装置15とエネルギー消費機器51とを備えている。外部受電装置15は、外部発電装置13で発電した電力を受電する装置である。外部受電装置15は、外部受電装置15の受電能力の上限以下に設定されている契約電力を超えない範囲で電力を受電することとなる。外部発電装置13は、火力発電などによって安定して発電可能な発電装置と、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを用いて発電可能な発電装置とを備えている。ここで、太陽光発電装置や風力発電装置などの再生可能エネルギーを用いた発電装置は、天候などの自然環境に大きく影響されるため発電量が安定しにくい発電装置である。このため、外部発電装置13の発電量は季節、天候、時刻といった時間とともに変動する外部要因によって変動し得る。
【0012】
外部受電装置15は、交流電力を受電する交流受電装置15aと、直流電力を受電する直流受電装置15dとを備えている。交流受電装置15aは、直流受電装置15dよりも電圧の高い電力を受電する。例えば、交流受電装置15aは、数千ボルトの電圧の交流電力を受電する。一方、直流受電装置15dは、数百ボルトの電圧の直流電力を受電する。交流受電装置15aは、交流電力の電圧を変圧するインバータを備えている。直流受電装置15dは、直流電力の電圧を変圧するコンバータを備えている。
【0013】
交流受電装置15aは、外部受電装置15から遠く離れた位置で外部発電装置13が発電した電力を受電する。直流受電装置15dは、外部受電装置15に近い位置で外部発電装置13が発電した電力を受電する。例えば、交流受電装置15aは、送電線を経由して外部受電装置15から3kmよりも遠く離れた位置で発電された電力を受電する。一方、直流受電装置15dは、自営線を経由して外部受電装置15から3km以内の位置で発電された電力を受電する。まとめると、外部受電装置15は、外部発電装置13で発電され、各地に送電された系統電力を受電し、必要な電圧に変圧して出力する装置である。
【0014】
エネルギー消費機器51は電気機器と熱機器とを備えている。電気機器は、電力を消費して駆動する機器である。電気機器としては、照明装置や空調装置やアクチュエータ装置などの機器を採用可能である。ここで、照明装置や空調装置やアクチュエータ装置は、電力を消費するタイミングとユーザに機能を提供するタイミングとが略一致する機器である。例えば照明装置は、基本的に照明機能を発揮している間のみ電力を消費する機器である。照明装置などのエネルギー消費タイミングとユーザへの機能提供タイミングとをずらすことができない機器は、不変消費機器51bである。
【0015】
電気機器としては、圧縮空気を送るためのエアコンプレッサや水を冷却あるいは加熱する冷温水製造装置などを採用可能である。ここで、エアコンプレッサや冷温水製造装置は、電力を消費するタイミングとユーザに機能を提供するタイミングとが必ずしも一致しない機器である。例えばエアコンプレッサは、圧縮空気を溜めておき、ユーザが任意のタイミングで圧縮空気を使用することができる機器である。エアコンプレッサなどのエネルギー消費タイミングとユーザへの機能提供タイミングとをずらすことができる機器は、可変消費機器51aである。
【0016】
熱機器は、都市ガスなどの燃料を燃やして熱エネルギーを得る機器である。ただし、熱機器は、燃料だけでなく電力も消費して駆動する機器である。熱機器としては、様々な用途の加熱炉を採用可能である。加熱炉としては、加熱対象物である製品を焼成するための焼成炉や表面処理を行うための脱脂炉や金属材料を溶かすための溶解炉などが挙げられる。ただし、熱機器としては、加熱炉に限られず給湯器などの様々な機器を採用可能である。熱機器で加熱される製品の材料としては、アルミやセラミックが想定される。熱機器は、燃料を燃やすことで高温の排熱が発生することとなる。排熱の温度は、熱機器の種類や設定温度などによって異なるが、例えば300℃を超える温度である。
【0017】
エネルギーマネジメントシステム1は、蓄電池25を備えている。蓄電池25は、電力の蓄電と放電とが可能な二次電池で構成されている。蓄電池25としては、据え置き型の電池装置を採用可能である。また、蓄電池25としては、電気自動車やハイブリッド自動車などに搭載されている車載電池を採用可能である。特に、複数の車両の車載電池を組み合わせて蓄電池25を構成することで蓄電池25全体の電池容量を多く確保することができる。例えば、エネルギーマネジメントシステム1を工場に適用した場合には、社用車や従業員の自動車における車載電池を蓄電池25として活用することができる。
【0018】
エネルギーマネジメントシステム1は、水素製造装置43と水素貯蔵装置44と水素供給装置45と水素消費装置47とを備えている。水素製造装置43は、水素を製造する装置である。水素の製造方法としては、メタンなどの炭化水素系燃料と水蒸気とを反応させて水素と一酸化炭素を得る水蒸気改質法と呼ばれる方法を採用可能である。ただし、水素の製造方法は、上述の方法に限られず、水を電気分解する方法など様々な方法を採用可能である。
【0019】
水素貯蔵装置44は、水素を低温高圧な状態で貯蔵可能なタンクである。水素供給装置45は、水素貯蔵装置44に貯蔵されている水素を所望の様々な装置に供給するための装置である。水素供給装置45は、エネルギー消費機器51の一例をなす燃料電池自動車に水素を供給可能である。水素消費装置47は、水素を消費する装置であって、燃料電池やコージェネレーション装置を採用可能である。燃料電池は、水素と酸素とを反応させることで主に電力を得る装置である。燃料電池の発電時には、電気とともに水と熱が発生することとなる。コージェネレーション装置は、水素を燃料として熱や電気を得る装置である。水素消費装置47で発生した電力や熱は、エネルギー消費機器51に供給可能である。
【0020】
エネルギーマネジメントシステム1は、エネルギー消費機器51の熱機器に都市ガスを供給するための都市ガス供給装置55を備えている。熱機器が利用可能な燃料は、都市ガスに限られず、都市ガスに水素や炭化水素系燃料を混合した燃料も利用可能である。熱機器としては、都市ガスと水素とを混合した燃料を利用可能な機器を採用可能である。熱機器としては、都市ガスと水素とプロパンガスとを混合した燃料を利用可能な機器を採用可能である。言い換えると、熱機器は異なる燃料を消費可能な複数の機器によって構成可能である。
【0021】
エネルギーマネジメントシステム1は、水素混合器46を備えている。水素混合器46は、熱機器に供給する都市ガスに水素を混合するための装置である。水素混合器46は、都市ガスに水素を混合しない状態と混合する状態とに切り替える。また、水素混合器46は、都市ガスに水素を混合する場合に、混合する水素の量である水素混合量を制御する。都市ガスに水素を混合することで燃料を燃やした場合に得られる熱エネルギーの大きさが変化する。都市ガスに混合された水素の割合が多いほど、燃焼時に得られる熱エネルギーが低下しやすく、熱機器から出力される温度が低下しやすい。
【0022】
熱機器には、水素混合量の上限値である水素上限があらかじめ設定されている。水素上限は、熱機器の用途や状態などによって異なる。例えば、熱機器として加熱炉を採用した場合に、加熱雰囲気中に未燃焼の水素ガスである未燃水素が一部含まれることとなる。ここで、未燃水素は、都市ガスに混合された水素の割合が高いほど多くなりやすい。製品に対する未燃水素の影響が大きい場合には水素上限が低く、影響が小さい場合には水素上限が高く設定される。
【0023】
水素上限は、製品を加熱する加熱処理を実行中の水素上限である加熱水素上限と、加熱処理を実行する前の予熱処理の実行中の水素上限である予熱水素上限とを備えている。予熱処理には、熱機器が停止した状態から駆動を開始する場合の予熱だけでなく、熱機器の加熱処理を一時停止しているアイドリング状態の予熱も含まれる。加熱水素上限は、例えば2%であり、予熱水素上限は、例えば15%である。加熱水素上限は、予熱水素上限よりも低い値である。これにより、加熱処理中に発生する未燃水素の量を予熱処理中に発生する未燃水素の量よりも少なくしている。
【0024】
エネルギーマネジメントシステム1は、排熱回収装置59を備えている。排熱回収装置59は、エネルギー消費機器51で発生した排熱を回収する装置である。排熱回収装置59は、例えば加熱炉で製品の加熱に使用された後の高温空気と水とを熱交換する熱交換器である。これにより、排熱を利用して高温の水蒸気を得ることができる。排熱回収装置59で得られた水蒸気は、水素製造装置43に供給される。排熱回収装置59は、水蒸気を生成する熱交換器に限られない。例えば、排熱を利用して発電を行う発電装置でもよい。排熱回収装置59で発電した電力は、水素製造装置43に供給される。排熱回収装置59は、エネルギー消費機器51で発生した排熱が多いほど、多くの排熱を回収して水素製造装置43に供給することができる。
【0025】
図2において、制御部70は、外部受電装置15と蓄電池25とに接続している。制御部70は、外部発電装置13から受電している電力や受電可能な電力などの情報を取得する。制御部70は、外部受電装置15を制御して外部発電装置13から受電する電力を制御する。制御部70は、蓄電池25の現在の蓄電量などの情報を取得する。制御部70は、蓄電池25を制御して蓄電池25に蓄える電力を制御する。蓄電池25に複数の車載電池が含まれる場合には、制御部70が複数の車載電池ごとの蓄電量を取得および制御することとなる。
【0026】
制御部70は、エネルギー消費機器51に接続している。制御部70は、エネルギー消費機器51の電気機器で消費する電力の量である電力消費量を取得する。制御部70は、エネルギー消費機器51の熱機器で消費する燃料の量である燃料消費量を取得する。制御部70は、エネルギー消費機器51の駆動を制御する。ただし、制御部70は、エネルギー消費機器51の駆動を制御せず、電力消費量や燃料消費量の取得のみを行ってもよい。
【0027】
制御部70は、通信装置61に接続している。通信装置61は、エネルギーマネジメントシステム1におけるエネルギー管理に用いる情報である管理情報を取得するための装置である。管理情報の一例は、再生可能エネルギーの発電予測の情報である。管理情報の一例は、当日から1週間程度の天気予報の情報である。管理情報の一例は、電気機器や熱機器を用いて生産する製品の生産計画の情報である。生産計画とは、生産する製品の種類と1つの製品の生産に要するエネルギーと生産する製品の数量などを含む情報である。管理情報の一例は、電気や都市ガスの取引価格の情報である。
【0028】
制御部70は、水素製造装置43と水素貯蔵装置44と水素供給装置45と水素消費装置47とに接続している。制御部70は、水素製造装置43を駆動制御して水素製造量を制御する。制御部70は、水素貯蔵装置44の水素貯蔵量を制御する。制御部70は、水素供給装置45を駆動制御して水素消費装置47や水素混合器46への水素供給量を制御する。制御部70は、水素消費装置47を駆動制御して水素消費量を制御する。
【0029】
制御部70は、水素混合器46と都市ガス供給装置55と排熱回収装置59とに接続している。制御部70は、水素混合器46を駆動制御して、熱機器に供給する都市ガスへの水素混合量を制御する。制御部70は、都市ガス供給装置55を駆動制御して、熱機器への都市ガスの供給量を制御する。制御部70は、排熱回収装置59を駆動して排熱から回収するエネルギー量を制御する。
【0030】
制御部70は、取得部71と記憶部72と算出部73と実行部74とを備えている。取得部71は、管理情報などの情報を取得する。記憶部72は、取得した管理情報やあらかじめ設定された管理情報などの情報を記憶する。算出部73は、管理情報などの情報に基づいて水素製造量などのエネルギー管理の実行に使用する値を算出する。実行部74は、算出部73で算出した値などに基づいてエネルギー管理を実行する。実行部74は、エネルギーマネジメントシステム1を構成している各機器に制御信号を出力する。
【0031】
エネルギーマネジメントシステム1を工場に適用した場合を例に、排熱回収に関するエネルギー管理について、以下に説明する。
図3において、エネルギーマネジメントシステム1がエネルギー管理を開始するとステップS101において、変動情報を取得する。ここで、変動情報とは、管理情報のうち時間経過によって変化する情報のことである。変動情報の一例は、エネルギー消費機器51で消費する電力消費量の情報や燃料消費量の情報である。変動情報の一例は、外部発電装置13で発電する再生可能エネルギー発電量の情報である。変動情報の一例は、天気予報の情報である。変動情報の一例は、水素貯蔵装置44に貯蔵されている水素貯蔵量の情報である。変動情報の一例は、蓄電池25に蓄電されている蓄電量の情報である。変動情報の一例は、電気や都市ガスの取引価格の情報である。変動情報の一例は、エネルギー消費機器51から発生する排熱量である。
【0032】
変動情報の一例は、生産計画の情報である。この生産計画に基づき、製品を1つ生産する際に要するエネルギーと生産する製品の数量とを掛け合わせることで、生産活動全体で消費するエネルギーを概ね算出することができる。また、生産を開始する時刻と生産を終了する時刻を取得することで、予熱処理や加熱処理を行う時刻や排熱が多く発生する時刻などを把握することができる。
【0033】
変動情報には、現在の情報だけでなく今後の予測の情報が含まれる。制御部70は、変動情報として現在の電力消費量を取得するとともに、今後1週間の電力消費量の予測や1年間の電力消費量の予測などを取得することとなる。例えば、平日の昼間に生産活動を行い、夜間や休日には生産活動を行わない場合には、平日の昼間の電力消費量が多く、夜間と休日は電力消費量が少なくなる。また、冷房や暖房で電力を多く消費する夏や冬は、春や秋に比べて電力消費量が多くなりやすい。
【0034】
制御部70は、変動情報として現在の排熱量を取得するとともに、今後10分間の排熱量の予測などを取得することとなる。例えば、5分後から加熱炉の加熱を開始する場合には、現在から5分間は加熱炉による排熱が発生せず、5分後から加熱炉による排熱が発生する。また、加熱炉においては、加熱処理を実行している間と予熱処理を実行している場合では、排熱量が異なる場合がある。この場合、排熱量は、加熱炉が停止中、予熱処理中、加熱処理中のいずれの状態であるかによって、取得される排熱量が異なることになる。変動情報を取得した後、ステップS102に進む。
【0035】
ステップS102では、固定情報を取得する。ここで、固定情報とは、管理情報のうち時間経過によっては変化しない情報のことである。固定情報の一例は、水素製造装置43の水素製造能力である。水素製造能力は、単位時間あたりに製造可能な水素の量を示す情報である。水素製造能力は、水素製造装置43の種類や性能に応じて異なる。固定情報の一例は、予熱水素上限や加熱水素上限を含む水素上限の情報である。水素上限は、生産する製品や処理の種類に応じて異なる。固定情報の一例は、外部受電装置15の受電能力の情報である。固定情報の一例は、契約電力の情報である。固定情報を取得した後、ステップS110に進む。
【0036】
ステップS110では、水素製造量を算出する。水素製造量は、外部受電装置15で受電した電力からエネルギー消費機器51で消費する電力を引いた電力で製造可能な水素量である。再生可能エネルギーでの発電量が多いほど、外部受電装置15で受電する電力が多くなりやすい。また、外部受電装置15で受電した電力が多いほど、水素製造量が多くなりやすい。このため、再生可能エネルギーでの発電量が多いほど、水素製造量が多くなりやすい。
【0037】
算出した水素製造量が水素貯蔵装置44に貯蔵可能な水素量と水素消費装置47などで消費する水素量の合計を超えている場合がある。この場合には、水素貯蔵装置44に貯蔵可能な水素量と水素消費装置47などで消費する水素量の合計を水素製造量としてもよい。このように算出された水素製造量が、水素製造装置43の水素製造能力を超えている場合には、水素製造能力の範囲で製造可能な量を水素製造量とする。水素製造量を算出した後、ステップS121に進む。
【0038】
ステップS121では、水素製造量がゼロを超えているかを判定する。言い換えると、水素製造量がゼロであるか否かを判定する。少しでも水素を製造する場合には、ステップS131に進む。一方、水素製造量がゼロである場合には、ステップS142に進む。
【0039】
ステップS131では、排熱量が所定量以上であるか否かを判定する。所定量としては、水を加熱して水蒸気を得られる程度の熱量である。ただし、所定量は、上述の熱量に限られない。例えば、排熱の温度が300℃以上である場合には、排熱量が所定量以上であると判断してもよい。排熱量が所定量以上である場合には、ステップS132に進む。一方、排熱量が所定量未満である場合には、ステップS133に進む。
【0040】
ステップS132では、排熱回収装置59を用いた排熱回収を実行する。排熱回収によって得られた水蒸気や電力は、水素製造装置43に供給される。排熱回収装置59は、排熱を熱エネルギーのまま水素製造装置43に供給してもよく、排熱を電力に変換して水素製造装置43に供給してもよい。排熱回収を実行した後、排熱回収を実行している状態を維持して、ステップS141に進む。
【0041】
ステップS133では、排熱回収装置59を用いた排熱回収を停止する。排熱回収の実行中であれば排熱回収を停止し、排熱回収の停止中であれば排熱回収の停止状態を維持する。排熱回収を停止した後、ステップS141に進む。
【0042】
ステップS141では、算出した水素製造量に基づいて、水素製造装置43を用いた水素製造を実行する。排熱回収装置59が排熱を回収している場合には、回収された排熱と外部受電装置15で受電した電力とを用いて水素を製造する。一方、排熱回収装置59が停止している場合には、外部受電装置15で受電した電力のみを用いて水素を製造する。水素製造を実行した後、ステップS191に進む。
【0043】
ステップS142では、水素製造装置43を用いた水素製造を停止する。より詳細には、水素製造装置43への電力供給や水蒸気の供給を停止する。水素製造を停止した後、ステップS191に進む。
【0044】
ステップS191では、管理要求の有無を判定する。ここで、エネルギーマネジメントシステム1によるエネルギー管理を実行する場合は、管理要求がある場合である。管理要求の有無は、ユーザによって切り替え可能である。例えば、外部受電装置15が系統電力を受電可能な場合には、常に管理要求がある状態である。管理要求がある場合には、ステップS101に戻って、一連の制御を繰り返す。これにより、最新の変動情報に基づいて排熱回収に関するエネルギー管理を行うことができる。一方、管理要求がない場合には、排熱回収に関するエネルギー管理を終了する。
【0045】
上述した実施形態によると、制御部70は、エネルギー消費機器51で発生する排熱量が所定量以上である場合に排熱回収装置59で回収した排熱を利用して水素製造装置43に水素を製造させる。このため、多くのエネルギーを必要とする水素製造において、多くの排熱を利用することができる。したがって、エネルギー消費機器51の排熱を利用した分、外部受電装置15から水素製造装置43に供給する電力を削減できる。よって、効率的なエネルギー管理を実行可能なエネルギーマネジメントシステム1を提供できる。
【0046】
排熱回収装置59は、エネルギー消費機器51で発生した排熱を用いて水蒸気を生成し、生成した水蒸気を水素製造装置43に供給する。このため、排熱の熱エネルギーを電気エネルギーに変換して水素製造装置43に供給する場合に比べて、エネルギーの変換などで生じる損失を低減しやすい。したがって、排熱を効率的に水素製造に利用できる。
【0047】
制御部70は、外部受電装置15で受電した電力がエネルギー消費機器51で消費する電力よりも多いほど、水素製造量を増やす。このため、外部受電装置15で受電した電力が多い場合に水素製造装置43で消費する電力を増やすことができる。また、電力需要に対して電力供給の余裕がない場合に水素製造装置43で消費する電力を減らすことができる。したがって、エネルギー消費機器51への必要な電力供給を維持しつつ、多くの水素を製造することができる。
【0048】
ステップS133で排熱回収を停止した後、ステップS141に進むのではなく、ステップS142に進んでもよい。この場合、水素製造量がゼロを超えている場合であっても、水素製造を停止することとなる。このため、排熱を利用できない場合には水素製造を行わず、排熱を利用できる場合のみ水素製造を行うことができる。
【0049】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、管理情報としてデマンドレスポンス指令を用いる。また、余剰電力を算出し、蓄電量や電力消費量を変更する。
【0050】
エネルギーマネジメントシステム1を工場に適用した場合を例に、排熱回収に関するエネルギー管理について、以下に説明する。
図4において、エネルギーマネジメントシステム1がエネルギー管理を開始するとステップS101で、変動情報を取得する。変動情報には、デマンドレスポンス指令の情報が含まれている。ここで、デマンドレスポンス指令とは、電力の需要と供給のバランスをとる目的で、電力の供給を行う電力会社などから電力の消費を行う工場などの需要家側に出力される指令である。例えば、発電量が需要家全体の消費量を超えそうな場合には、一部の需要家に電力の受電量を一時的に低下させるよう要求する指令が出力されることとなる。あるいは、再生可能エネルギーでの発電量が過剰となる場合には、一部の需要家に受電量を一時的に増加させるよう要求する指令が出力されることとなる。このように、デマンドレスポンス指令とは、電力の供給側の発電状況と電力の需要家側の受電状況とに基づいて変動する情報である。変動情報を取得した後、ステップS102に進み、固定情報を取得し、ステップS110に進む。
【0051】
ステップS110では、デマンドレスポンス指令を考慮して水素製造量を算出する。デマンドレスポンス指令により、受電量が低下している場合には、水素製造量を低下させる。一方、デマンドレスポンス指令により受電量が増加している場合には、水素製造量を増加させる。これにより、水素製造装置43で消費する電力は、デマンドレスポンス指令に連動して増減することとなる。水素製造量を算出した後、ステップS121に進む。
【0052】
ステップS121からステップS142までは、上述の実施形態と同様の制御である。ただし、ステップS141またはステップS142を実行した後、ステップS250に進む。
【0053】
ステップS250では、余剰電力を算出する。ここで、余剰電力とは、外部受電装置15で受電する電力からエネルギー消費機器51で消費する電力と水素製造装置43で消費する電力を引いた電力である。このため、外部受電装置15で受電する電力が多いほど、余剰電力が多くなりやすい。また、エネルギー消費機器51で消費する電力と水素製造装置43で消費する電力とが少ないほど、余剰電力が多くなりやすい。より詳細には、デマンドレスポンス指令に基づき受電する電力を増加させた場合には、余剰電力が多くなりやすい。また、夜間や休日などの電気機器での消費電力が少ない場合には、受電する電力を多くすることで余剰電力を多く確保しやすい。余剰電力を算出した後、ステップS251に進む。
【0054】
ステップS251では、蓄電池25の蓄電量を変更する。余剰電力が発生している場合には蓄電量を多くし、余剰電力が発生していない場合には蓄電量を少なくする。例えば、余剰電力が発生している場合には蓄電量を電池容量の80%に設定し、余剰電力が発生していない場合には蓄電量を電池容量の60%に設定する。あるいは、余剰電力が発生している場合には、電気自動車への充電を許可し、余剰電力が発生していない場合には、電気自動車への受電を許可しないなどしてもよい。蓄電量を変更した後、ステップS252に進む。
【0055】
ステップS252では、可変消費機器51aの電力消費量を変更する。余剰電力のうち蓄電池25で蓄電しきれない電力を、可変消費機器51aの電力消費量を増加させることで消費する。一方、余剰電力が発生していない場合や余剰電力の全てが蓄電池25で蓄電可能である場合には、可変消費機器51aの電力消費量は増加させない。可変消費機器51aの電力消費量を変更した後、ステップS191に進む。
【0056】
ステップS191では、管理要求の有無を判定する。管理要求がある場合には、ステップS101に戻り、管理要求がない場合には、排熱回収に関するエネルギー管理を終了する。
【0057】
上述した実施形態によると、制御部70は、外部受電装置15で受電した電力のうち、エネルギー消費機器51および水素製造装置43で消費されなかった電力である余剰電力を蓄電池25に蓄電する。このため、エネルギー消費機器51で消費する電力と水素製造装置43で消費する電力以上の電力を外部受電装置15で受電することができる。したがって、再生可能エネルギーを用いた発電量が多い場合であっても、電力を受電してエネルギーを消費あるいは蓄えることができる。
【0058】
制御部70は、余剰電力のうち蓄電池25に蓄電されなかった電力が多いほど、可変消費機器51aで消費する電力を増やす。このため、エネルギー消費機器51で消費する電力と水素製造装置43で消費する電力の合計を増やして、外部受電装置15で受電する電力を増やすことができる。したがって、再生可能エネルギーを用いた発電量が多い場合であっても、電力を受電して適切にエネルギーを消費することができる。
【0059】
制御部70は、デマンドレスポンス指令に基づき外部受電装置15で受電する電力を増やす場合に、水素製造量を増やす。このため、デマンドレスポンス指令に応じて水素製造量を変更して、水素製造装置43で消費する電力を変更できる。したがって、再生可能エネルギーを用いた発電量が多い場合であっても、電力を受電してエネルギーを消費することができる。
【0060】
制御部70は、デマンドレスポンス指令を受信してから水素製造量を増減させるのではなく。デマンドレスポンス指令が出力されることを予測して水素製造量を増減させてもよい。例えば、天気予報の情報に基づき、10分後に雨天から晴天に変わると予測される場合には、太陽光発電の発電量が増加することが予測される。この場合、10分後以降に電力会社から一部の需要家に受電量を一時的に増加させるよう要求するデマンドレスポンス指令が出力されると予測できる。このため、予測されるデマンドレスポンス指令に基づき、あらかじめ水素製造量を増加させることができる。したがって、デマンドレスポンス指令が実際に出力された際に速やかに対応することができる。
【0061】
ステップS251で蓄電量を変更した上で、都市ガスへの水素混合量を変更してもよい。例えば、蓄電量を増やす場合には、水素混合器46の開度を大きくして水素混合量を増加させる。一方、蓄電量を減らす場合には、水素混合器46の開度を小さくして水素混合量を減少させる。これにより、デマンドレスポンス指令に応じて、消費する水素の量を制御することで、水素製造装置43で消費する電力を制御することができる。同様に、蓄電量を変更した上で、燃料電池自動車への水素充填量を変更してもよい。あるいは、蓄電量を変更した上で、水素消費装置47への水素供給量を変更してもよい。
【0062】
ステップS252で可変消費機器51aの電力消費を削減しても、デマンドレスポンス指令に従い受電可能な電力が不足する場合がある。この場合、生産計画に則った生産活動を維持するため、不変消費機器51bのうち照明装置や空調装置の電力消費を削減してもよい。これによると、再生可能エネルギーの発電量が著しく低下している場合であっても、生産活動に直結する加熱炉などへのエネルギー供給を維持しやすい。
【0063】
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0064】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0065】
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置およびその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置およびその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと1つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 エネルギーマネジメントシステム、 13 外部発電装置、 15 外部受電装置、 15a 交流受電装置、 15d 直流受電装置、 25 蓄電池、 43 水素製造装置、 44 水素貯蔵装置、 45 水素供給装置、 46 水素混合器、 47 水素消費装置、 51 エネルギー消費機器、 51a 可変消費機器、 51b 不変消費機器、 55 都市ガス供給装置、 59 排熱回収装置、 61 通信装置、 70 制御部、 71 取得部、 72 記憶部、 73 算出部、 74 実行部