(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ゴムコーティング装置及びそのコーティングヘッド
(51)【国際特許分類】
B29C 48/154 20190101AFI20240319BHJP
B29D 30/48 20060101ALI20240319BHJP
B29C 48/34 20190101ALI20240319BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20240319BHJP
【FI】
B29C48/154
B29D30/48
B29C48/34
B29C48/92
(21)【出願番号】P 2020096345
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】伊田 真悟
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-006619(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198544(WO,A1)
【文献】特開2017-170622(JP,A)
【文献】特開2011-016254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B29D 30/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コードに未加硫ゴムをコーティングするためのゴムコーティング装置であって、
未加硫ゴムを第1方向に押し出すためのゴム押出部と、
前記ゴム押出部から押し出された未加硫ゴムを溜めるためのゴムチャンバーを画定するコーティングヘッドとを含み、
前記コーティングヘッドは、
前記ゴムチャンバー内の前記第1方向の下流側の端を規定するヘッド内端面と、
前記ゴムチャンバー内に前記コードを通過させるためのコード入口及びコード出口とを含み、
前記コード入口及びコード出口を通過する前記コードのコードパスと前記ヘッド内端面との間の最大離隔距離が5mm以下となるように設けられている、
ゴムコーティング装置。
【請求項2】
前記コードパスは、前記第1方向と直交する第2方向に延びる、請求項1に記載のゴムコーティング装置。
【請求項3】
前記ヘッド内端面は、前記第1方向の下流側に凸の円弧状の円弧部を含む、請求項1又は2に記載のゴムコーティング装置。
【請求項4】
前記ヘッド内端面は、前記第1方向と直交して直線状に延びる直線部を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴムコーティング装置。
【請求項5】
前記未加硫ゴムを前記ゴム押出部から押し出すためのスクリューを含み、
前記コードパスと前記スクリューの軸方向とのなす角度は、30度以上である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴムコーティング装置。
【請求項6】
前記コーティングヘッドは、前記コード出口及び前記コード入口の他には、前記未加硫ゴムが前記コーティングヘッドから流出するための開口部を有しない、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のゴムコーティング装置。
【請求項7】
前記コーティングヘッドには、複数本の前記コードパスが設けられる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のゴムコーティング装置。
【請求項8】
前記複数本の前記コードパスのピッチは、12mm以下である、請求項7に記載のゴムコーティング装置。
【請求項9】
前記複数本の前記コードパスは、それぞれ、前記第1方向と直交する第3方向に配列される、請求項7又は8に記載のゴムコーティング装置。
【請求項10】
前記ヘッド内端面は、前記第1方向と直交して直線状に延びる直線部を含み、
前記直線部は、前記第3方向に隣接する前記
コードパス間の長さよりも大きい、請求項9に記載のゴムコーティング装置。
【請求項11】
前記コーティングヘッドは、前記未加硫ゴムを前記ゴム押出部から受け入れる受入口を有し、
前記ゴムチャンバーは、前記第1方向に沿って、前記受入口との前記ヘッド内端面との間に形成される、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のゴムコーティング装置。
【請求項12】
前記ゴム押出部の圧力を、前記スクリューの回転数を操作量としてPI制御又はPID制御する制御具を具える、請求項
5に記載のゴムコーティング装置。
【請求項13】
コードに未加硫ゴムをコーティングするためのゴムコーティング装置用のコーティングヘッドであって、
第1方向に流れる未加硫ゴムを溜めるためのゴムチャンバーと、
前記ゴムチャンバー内の前記第1方向の下流側の端を規定するヘッド内端面と、
前記ゴムチャンバー内に前記コードを通過させるためのコード入口及びコード出口とを含み、
前記コード入口及びコード出口は、前記ゴムチャンバー内を通過する前記コードと前記ヘッド内端面との間の最大離隔距離が5mm以下となる位置に設けられている、
コーティングヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムコーティング装置及びそのコーティングヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、コードに未加硫ゴムを被覆してゴム被覆コードを製造するための製造装置が記載されている。この製造装置は、前記コードと前記未加硫ゴムとが供給されるゴム供給空間を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような装置において、未加硫ゴムがゴム供給空間で長時間滞留すると、例えば、ゴムの摩擦熱によって前記未加硫ゴムが加硫されるゴム焼けが生じる。このようなゴム焼けは、コードに付着させることができず、ゴム被覆コードの品質を低下させるという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ゴム被覆コードの品質を向上することができるゴムコーティング装置及びそのコーティングヘッドを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コードに未加硫ゴムをコーティングするためのゴムコーティング装置であって、未加硫ゴムを第1方向に押し出すためのゴム押出部と、前記ゴム押出部から押し出された未加硫ゴムを溜めるためのゴムチャンバーを画定するコーティングヘッドとを含み、前記コーティングヘッドは、前記ゴムチャンバー内の前記第1方向の下流側の端を規定するヘッド内端面と、前記ゴムチャンバー内に前記コードを通過させるためのコード入口及びコード出口とを含み、前記コード入口及びコード出口を通過する前記コードのコードパスと前記ヘッド内端面との間の最大離隔距離が5mm以下となるように設けられている。
【0007】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記コードパスが、前記第1方向と直交する第2方向に延びる、のが望ましい。
【0008】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記ヘッド内端面が、前記第1方向の下流側に凸の円弧状の円弧部を含む、のが望ましい。
【0009】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記ヘッド内端面が、前記第1方向と直交して直線状に延びる直線部を含む、のが望ましい。
【0010】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記未加硫ゴムを前記ゴム押出部から押し出すためのスクリューを含み、前記コードパスと前記スクリューの軸方向とのなす角度は、30度以上である、のが望ましい。
【0011】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記コーティングヘッドが、前記コード出口及び前記コード入口の他には、前記未加硫ゴムが前記コーティングヘッドから流出するための開口部を有しない、のが望ましい。
【0012】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記コーティングヘッドには、複数本の前記コードパスが設けられる、のが望ましい。
【0013】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記複数本の前記コードパスのピッチが、12mm以下である、のが望ましい。
【0014】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記複数本の前記コードパスが、それぞれ、前記第1方向と直交する第3方向に配列される、のが望ましい。
【0015】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記ヘッド内端面が、前記第1方向と直交して直線状に延びる直線部を含み、前記直線部は、前記第3方向に隣接する前記コードパス間の長さよりも大きい、のが望ましい。
【0016】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記コーティングヘッドが、前記未加硫ゴムを前記ゴム押出部から受け入れる受入口を有し、前記ゴムチャンバーは、前記第1方向に沿って、前記受入口との前記ヘッド内端面との間に形成される、のが望ましい。
【0017】
本発明に係るゴムコーティング装置は、前記ゴム押出部の圧力を、前記スクリューの回転数を操作量としてPI制御又はPID制御する制御具を具える、のが望ましい。
【0018】
本発明は、コードに未加硫ゴムをコーティングするためのゴムコーティング装置用のコーティングヘッドであって、第1方向に流れる未加硫ゴムを溜めるためのゴムチャンバーと、前記ゴムチャンバー内の前記第1方向の下流側の端を規定するヘッド内端面と、前記ゴムチャンバー内に前記コードを通過させるためのコード入口及びコード出口とを含み、前記コード入口及びコード出口は、前記ゴムチャンバー内を通過する前記コードと前記ヘッド内端面との間の最大離隔距離が5mm以下となる位置に設けられている。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記の構成を採用することで、未加硫ゴムのゴムチャンバー内での滞留時間が短くなり、ゴム被覆コードの品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のゴムコーティング装置の一実施形態の側面図である。
【
図2】
図1のゴム押出部及びコーティングヘッドの斜視図である。
【
図3】
図1のゴム押出部及びコーティングヘッドの断面図である。
【
図5】(a)は、
図4のA-A線断面図、(a)は、
図4のB-B線断面図、(a)は、
図4のC-C線断面図である。
【
図6】他の実施形態のコーティングヘッドの斜視図である。
【
図7】(a)は、
図6のD-D線断面図、(a)は、
図6のE-E線断面図、(a)は、
図6のF-F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明のゴムコーティング装置1の一実施形態の側面図である。本実施形態のゴムコーティング装置(以下、単に「装置」という場合がある)1は、コードKに未加硫ゴムGをコーティングしてゴム被覆コードKaを形成するためのものである。装置1は、本実施形態では、タイヤ(図示省略)に使用されるタイヤ構成部材、例えば、ビードコア用のビードワイヤーを製造するためのものである。なお、装置1は、このようなビードワイヤーを製造するものに限定されるものではない。
【0022】
コードK及びゴムGは、例えば、周知構造のものが採用される。コードKの外径は、本実施形態では、0.5~2.0mm程度のものが採用される。ゴム被覆コードKaの外径は、1.0~3.0mm程度である。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態の装置1は、未加硫ゴム(以下、単に「ゴム」という場合がある)Gを押し出すためのゴム押出部2と、コードKにゴムGをコーティングするためのコーティングヘッド3とを含んでいる。また、装置1は、例えば、コード供給具4とコード回収具5と制御具6とを含んでいる。なお、装置1は、このような構成に限定されるわけではなく、例えば、これらとは異なる他の装置が追加されてもよい。
【0024】
コード供給具4は、コーティングヘッド3に、コードKを連続して供給するためのものである。コード供給具4は、例えば、コードKが予め巻き付けられた第1リール(巻き枠)10と、第1リール10を回転可能に支持する第1支持部11とを含む周知構造のものが採用される。本実施形態のコード供給具4は、複数の第1リール10、例えば、4個の第1リール10を含んでいる。
【0025】
コード回収具5は、ゴムGが被覆されたコードK(即ち、ゴム被覆コードKa)を回収するためのものである。コード回収具5は、例えば、ゴム被覆コードKaを巻き取るための第2リール12と、第2リール12を回転可能に支持する第2支持部13と、第2リール12を回転駆動させる第2駆動部14とを含む周知構造のものが採用される。本実施形態のコード回収具5は、複数の第2リール12、例えば、4個の第2リール12を含んでいる。
【0026】
本実施形態の装置1では、第2駆動部14が第2リール12を回転させることで、第1リール10のコードKがコーティングヘッド3においてゴム被覆コードKaに形成されて、連続して第2リール12に巻き付けられる。
【0027】
図2は、ゴム押出部2及びコーティングヘッド3の斜視図である。
図3は、ゴム押出部2の一部及びコーティングヘッド3の断面図である。
図2又は
図3に示されるように、本実施形態のゴム押出部2は、シリンダー15とスクリュー16とを含む周知構造のものである。
【0028】
シリンダー15は、例えば、床に固定された保持部19に保持されている。シリンダー15は、本実施形態では、ゴムGを連続して投入するための投入口17と、ゴムGが押出される押出口18とを有する。シリンダー15は、例えば、その内部に、投入口17から投入されたゴムGを混錬するためのチャンバー15aを有している。
【0029】
スクリュー16は、シリンダー15のチャンバー15aに配されている。本実施形態のスクリュー16は、周知構造の第1駆動具16aによって回転される。スクリュー16の回転によって、ゴムGは、押出口18に向かって定量的に押し出される。スクリュー16の軸方向は、本実施形態では、水平である。押出口18から押出されたゴムGは、コーティングヘッド3に供給される。スクリュー16の回転数(ゴムGの押出速度)は、例えば、制御具6によって制御される。
【0030】
コーティングヘッド3は、本実施形態では、ゴム押出部2から押し出されたゴムGを溜めるためのゴムチャンバー21を内部に有している。ゴムGは、ゴム押出部2によってゴムチャンバー21内を第1方向Xに押し出される。第1方向Xは、本実施形態では、スクリュー16の軸方向である。第1方向Xは、例えば、コーティングヘッド3のゴムチャンバー21の長手方向である。各図には、第1方向Xが矢印で示される。
【0031】
図4は、コーティングヘッド3の斜視図である。
図5(a)は、
図4のA-A線断面図、
図5(b)は、
図4のB-B線断面図、及び、
図5(c)は、
図4のC-C線断面図である。
図4又は
図5に示されるように、コーティングヘッド3は、ヘッド内端面23とコード入口24とコード出口25とを含んでいる。また、コーティングヘッド3は、例えば、ゴムGをゴム押出部2から受け入れるための受入口26(
図3に示される)が設けられている。
【0032】
ヘッド内端面23は、ゴムチャンバー21内の第1方向Xの下流側の端を画定する。コード入口24及びコード出口25は、ゴムチャンバー21内にコードKを通過させるためのコーティングヘッド3に設けられた開口である。コード入口24からゴムチャンバー21内に供給されたコードKは、ゴムチャンバー21内でゴムGが被覆されてゴム被覆コードKaとしてコード出口25から取り出される。ゴムチャンバー21内には、コード入口24及びコード出口25を通過するコードKの通路となるコードパス29が設けられる。
図5(a)及び(b)には、コードパス29が二点鎖線で示される。
【0033】
図5(a)に示されるように、コーティングヘッド3は、ヘッド内端面23とコードパス29との間の最大離間距離Laが5mm以下となるように形成されている。これにより、ゴム押出部2からゴムチャンバー21内に供給されたゴムGは、ゴムチャンバー21内でコードKよりも第1方向Xの下流側において滞留することがなく、ゴム焼けを生じない状態でコードKに被覆されて、コード出口25から取り出される。したがって、本実施形態の装置1は、ゴム被覆コードKaの品質を向上することができる。
【0034】
コードパス29は、本実施形態では、直線状に形成される。コードパス29は、例えば、コード入口24及びコード出口25の中心を通るように形成される。本実施形態のコーティングヘッド3には、複数本のコードパス29、例えば、4本のコードパス29が形成される。
【0035】
図5(b)に示されるように、コードパス29は、本実施形態では、第1方向Xと直交する第2方向Yに延びている。このようなコードパス29は、コードKにゴムGの圧力が大きく作用するので、コードKへのゴムGの被覆がスムーズになされるに役立つ。
【0036】
図5(a)に示されるように、複数本のコードパス29は、例えば、第1方向Xと直交する第3方向Zに配列されている。このようなコードパス29は、各コードKに均等にゴムGの圧力を作用させてゴムGを均等に被覆することができる。第3方向Zは、例えば、第2方向Yと直交している。これにより、各コードKにさらに均等にゴムGを被覆することができる。第3方向Zは、本実施形態では、鉛直である。
【0037】
上述の作用を効果的に発揮させるために、複数本のコードパス29のピッチPは、例えば、12mm以下であるのが望ましい。また、複数本のコードパス29のピッチPは、例えば、3mm以上であるのが望ましい。
【0038】
ヘッド内端面23は、本実施形態では、第1方向Xの下流側に凸の円弧状の円弧部23aを含んでいる。このようなヘッド内端面23は、ゴムGの流動性を維持して、ヘッド内端面23での滞留を抑制する。このような作用を高めつつ、コードKへのゴムGの被覆を均一に行うために、ヘッド内端面23は、例えば、コードパス29を中心とした円弧状であるのが望ましい。円弧部23aは、本実施形態では、半円弧状に形成されている。
【0039】
ヘッド内端面23は、複数の円弧部23a、本実施形態では、4つの円弧部23aと、各円弧部23aを継いで直線状に延びる直線部23bとを含んでいる。円弧部23aのそれぞれは、各コードパス29を囲むように、第3方向Zに配列されている。直線部23bは、本実施形態では、第3方向Zに沿って延び、各コードパス29の間に配されている。
【0040】
図5(b)に示されるように、ゴムチャンバー21は、本実施形態では、基部30と、基部30に連なってコード入口24側に突出する入口側部31と、基部30に連なってコード出口25側に突出する出口側部32とを含んでいる。基部30、入口側部31及び出口側部32は、本実施形態では、コードパス29が形成されている。入口側部31及び出口側部32は、本実施形態では、コードKの本数と同じ数が設けられている。
【0041】
入口側部31は、本実施形態では、その横断面積がコードパス29に沿って同じ大きさとなるように形成されている。入口側部31は、例えば、円柱状に形成されている。これにより、入口側部31内を通過するコードKと逆向きとなるゴムGの流れF(図で矢印で示す)が維持されるので、その滞留が抑制される。
【0042】
出口側部32は、本実施形態では、その横断面積がコードパス29に沿ってコード出口25に向かいテーパ状となるテーパ部32aを含んでいる。換言すると、本実施形態の出口側部32は、コード出口25に向かって横断面積が連続して小さくなるテーパ部32aを含んでいる。このような出口側部32は、コード出口25に向かってゴムGの圧力が高められるので、コードKへの被覆を強固にすることができる。
【0043】
コードパス29とスクリュー16の軸方向とのなす角度αは、30度以上であるのが望ましい。このような角度αは、ゴムGをスムーズにコードKに被覆させることができる。角度αは、50度以上がさらに望ましく、70度以上が一層望ましい。角度αは、本実施形態では、90度である。
【0044】
図3に示されるように、受入口26は、本実施形態では、ゴム押出部2の押出口18に接続されている。受入口26は、例えば、ゴムチャンバー21において、第1方向Xの最も上流側に配されている。本実施形態のゴムチャンバー21は、第1方向Xに沿って、受入口26とヘッド内端面23との間に形成されている。
【0045】
図4及び
図5(a)に示されるように、ゴムチャンバー21は、本実施形態では、コードパス29とヘッド内端面23との間の下流側部34と、コードパス29と受入口26との間の上流側部35とを含んでいる。
【0046】
上流側部35は、本実施形態では、その横断面の面積が一定な第1部分35Aと、第1部分35Aに連なって第1方向Xの下流側に向かって横断面の面積が連続して小さくなる漸減部35Bと、横断面の面積が一定の第2部分35Cとを含んでいる。
【0047】
第1部分35Aは、受入口26を含んでいる。第1部分35Aは、本実施形態では、楕円となる円柱状に形成されている。第1部分35Aは、本実施形態では、漸減部35B及び第2部分35Cの第1方向Xの長さよりも大きい第1方向Xの長さを有している。
【0048】
第2部分35Cは、例えば、漸減部35Bに連なって、横断面の面積が第1部分35Aの面積よりも小さく形成されている。第2部分35Cは、本実施形態では、入口側部31の一部と出口側部32の一部とを含んでいる。
【0049】
第2部分35Cの容積は、下流側部34の容積よりも大きく形成されている。このような第2部分35Cは、ゴムGのゴムチャンバー21内の乱流状態を小さくして、各コードKに均等にゴムGを被覆するのに役立つ。
【0050】
上述の作用を効果的に発揮させるために、第2部分35Cの第1方向Xの長さLbは、最大離間距離Laよりも大きいのが望ましい。
【0051】
図4に示されるように、コード入口24及びコード出口25は、本実施形態では、円形状をなしている。なお、コード入口24及びコード出口25は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、矩形状等の多角形状や、楕円形状のものでもよい。
【0052】
コーティングヘッド3は、コード入口24及びコード出口25の他には、ゴム被覆コードKaの形成時、ゴムGがコーティングヘッド3から流出するための開口部を有しない。このようなコーティングヘッド3は、ゴムGの消費量を低減することができる。なお、コーティングヘッド3には、例えば、メンテ時等のゴム被覆コードKaを形成しないときに、ゴムGをゴムチャンバー21から取り除くための開口部(図示省略)が設けられていてもよい。
【0053】
図1及び
図3に示されるように、制御具6は、例えば、制御デバイス6aと、ゴム押出部2の圧力を測定する圧力センサ6bとを含んでいる。
【0054】
本実施形態の制御デバイス6aは、例えば、CPU(中央演算装置)からなる演算部と、制御手順やプログラムが予め記憶されている記憶部と、記憶部から制御手順が読み込まれる作業用メモリとを含んでいる(図示省略)。制御デバイス6aは、処理結果等を表示するための表示部や、作業者が操作するための操作部が設けられてもよい。このような制御デバイス6aとしては、例えば、周知のプログラマブルシーケンサ、マイコン、パーソナルコンピュータ等が望ましい。
【0055】
圧力センサ6bは、例えば、ゴム押出部2内の圧力に対応する電気信号を制御デバイス6aに出力する。このような圧力センサ6bとしては、例えば、周知の接触式センサが採用される。圧力センサ6bは、チャンバー15a内の圧力を精度よく測定するように、スクリュー16よりも下流側に離間した位置、例えば、押出口18の近くの圧力を測定するのが望ましい。なお、圧力センサ6bは、コーティングヘッド3内の圧力を測定しても構わない。
【0056】
制御デバイス6aは、例えば、圧力センサ6bからの電気信号に基づいて、ゴム押出部2のゴムGの押出量(スクリュー9の回転数)を制御するように形成されている。また、制御デバイス6aは、例えば、コードKの本数毎に、ゴムGの押出量を制御するように形成されていても良い。なお、制御デバイス6aは、第2リール12の回転数によるコードKの速度に応じてゴムGの押出量を制御させてもよい。
【0057】
制御具6は、具体的には、スクリュー9の回転数を操作量として、ゴム押出部2内の圧力をPID制御している。PID制御は、フィードバック制御の一つであって、自動制御系において比例積分動作の残留偏差を0にする性質と、比例微分動作の応答を速くする性質を併せ持った特性を有する。なお、制御具6は、自動制御系において比例積分動作の残留偏差を0にする性質のみを有するPI制御でもよい。
【0058】
図6は、他の実施形態のコーティングヘッド3の斜視図である。
図7(a)は、
図6のD-D線断面図、
図7(b)は、
図6のE-E線断面図、及び、
図7(c)は、
図6のF-F線断面図である。本実施形態の構成要素と同じ構成には、同じ符号が付されてその説明が省略される。
図6及び
図7に示されるように、コーティングヘッド3は、この実施形態では、ヘッド内端面23が直線部23bで形成されている。
【0059】
直線部23bは、例えば、第3方向Zに離間するコードパス29間よりも大きい第3方向Zの長さで形成されている。直線部23bは、本実施形態では、最も離間するコードパス29a、29b間に亘る第3方向Zの長さを有している。このようなヘッド内端面23を有するコーティングヘッド3も、ゴム被覆コードKaの品質を向上する。
【0060】
図7(c)に示されるように、本実施形態の基部30は、コード入口24側に配される第1端面33aと、コード出口25側に配される第2端面33bとを含んでいる。第1端面33aは、例えば、コード入口24よりもコード出口25側に配されている。第2端面33bは、例えば、コード出口25よりもコード入口24側に配されている。第1端面33aと第2端面33bとは、第2方向Yに離間している。
【0061】
第1端面33aと第2端面33bとの間の最大離間距離Lcは、10mm以上であるのが望ましい。最大離間距離Lcを10mm以上とすることで、ゴムGをコードKに強固に被覆することができる。
【0062】
本実施形態の装置1では、例えば、コードパス29が4本形成されるコーティングヘッド3において、1本以上のコードKがメンテ等によって停止状態でも、他のゴム被覆コードKaの品質を高く維持することができる。また、例えば、最大離間距離Laが5mmを超えるコーティングヘッド3を含む装置1に比して、本発明の装置1では、品質不良のゴム被覆コードKaの発生を30%程度に削減できた。
【0063】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0064】
1 ゴムコーティング装置
2 ゴム押出部
3 コーティングヘッド
21 ゴムチャンバー
23 ヘッド内端面
24 コード入口
25 コード出口
29 コードパス
G 未加硫ゴム
K コード
X 第1方向
La 最大離間距離