(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】計測装置ユニット
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
B60R11/02 Z
(21)【出願番号】P 2020107443
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】野口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】横山 創
(72)【発明者】
【氏名】三木 早樹人
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10099630(US,B1)
【文献】特開2002-034055(JP,A)
【文献】特開2014-080094(JP,A)
【文献】特開2019-194091(JP,A)
【文献】特開2004-299511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0305260(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(50)に搭載される計測装置ユニット(100)であって、
前記車両の外部に配置される複数の検出器(30)と、
前記車両の外部と前記車両の内部とを連通する前記車両の既設の車両貫通孔(50H,
50HA~50HE)を介して、前記車両の外部から前記車両の内部に亘って配置される
配線(CB,CB1~CB3)と、
前記車両の内部に配置されるデータ処理装置(90)であって、前記配線を用いて前記
複数の検出器と有線接続され、前記複数の検出器から取得する検出データを統合するため
のデータ処理装置と、
前記車両の外部に固定され、前記複数の検出器を搭載するための支持フレーム(70)
であって、前記車両貫通孔と連通するフレーム貫通孔(70H)を有する支持フレームと
、を備え、
前記支持フレームは、
前記車両の前側に配置される前方支持フレーム(71)と、
前記前方支持フレームから離間し、前記車両の後ろ側に配置される後方支持フレーム
(72)と、を備え
、
前記前方支持フレームは、
前記車両の幅方向の全域に亘って配置されている前端部(71F)と、
前記前端部の一方の端部で直交して車両後方に向かって連続する第1右側方部(71R)と、
前記前端部の他方の端部で直交して前記車両後方に向かって連続する第1左側方部(71F)と、を含み、
前記後方支持フレームは、
前記車両の前記幅方向の全域に亘って配置されている後端部(72B)と、
前記後端部の一方の端部で直交して車両前方に向かって連続する第2右側方部(72R)と、
前記後端部の他方の端部で直交して前記車両前方に向かって連続する第2左側方部(72F)と、を含み、
前記前方支持フレームにおいて前記第1右側方部および前記第1左側方部は、車両前後方向の全域に亘って配置されておらず、
前記後方支持フレームにおいて前記第2右側方部および前記第2左側方部は、前記車両前後方向の全域に亘って配置されていない、
計測装置ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置ユニットであって、
前記後方支持フレーム
の前記第2右側方部および前記第2左側方部それぞれは、前記複数の検出器のうちいずれか一の検出器(30LR)の検出軸(D1)を、前記一の検出器の配置位置よりも前記車両の前側に向け、かつ前記一の検出器の検出範囲(AR)が前記車両の側方を含むように、前記一の検出器を固定する検出器固定部(720)を備える、
計測装置ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の計測装置ユニットであって、
前記支持フレームは、締結具貫通孔(80H)を有する円筒締結具(80)を前記フレーム貫通孔および前記車両貫通孔に挿通して前記車両と締結することによって、前記車両の外表面に固定され、
前記配線は、前記締結具貫通孔を介して前記車両の外部から前記車両の内部に亘って配置される、
計測装置ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の計測装置ユニットであって、
さらに、前記複数の検出器のうち2以上の検出器と有線接続される配線統合部(20,20A~20D)であって、前記複数の検出器のそれぞれから取得する前記検出データを統合し、前記配線を介して前記データ処理装置に出力する配線統合部を備える、
計測装置ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測装置ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
センサと処理回路とを有するセンサ組立体を車両の屋根に搭載する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0305260号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサ組立体の重量が大きい場合、車両の走行を安定させることが難しくなり得る。そのため、センサ組立体のうち車両の屋根に搭載される部材を軽量化したいといった要請がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、車両(50)に搭載される計測装置ユニット(100)が提供される。この計測装置ユニットは、前記車両の外部に配置される複数の検出器(30)と、前記車両の外部と前記車両の内部とを連通する前記車両の既設の車両貫通孔(50H,50HA~50HE)を介して、前記車両の外部から前記車両の内部に亘って配置される配線(CB,CB1~CB3)と、前記車両の内部に配置されるデータ処理装置(90)であって、前記配線を用いて前記複数の検出器と有線接続され、前記複数の検出器から取得する検出データを統合するためのデータ処理装置と、前記車両の外部に固定され、前記複数の検出器を搭載するための支持フレーム(70)であって、前記車両貫通孔と連通するフレーム貫通孔(70H)を有する支持フレームと、を備える。前記支持フレームは、前記車両の前側に配置される前方支持フレーム(71)と、前記前方支持フレームから離間し、前記車両の後ろ側に配置される後方支持フレーム(72)と、を備える。前記前方支持フレームは、前記車両の幅方向の全域に亘って配置されている前端部(71F)と、前記前端部の一方の端部で直交して車両後方に向かって連続する第1右側方部(71R)と、前記前端部の他方の端部で直交して前記車両後方に向かって連続する第1左側方部(71F)と、を含む。前記後方支持フレームは、前記車両の前記幅方向の全域に亘って配置されている後端部(72B)と、前記後端部の一方の端部で直交して車両前方に向かって連続する第2右側方部(72R)と、前記後端部の他方の端部で直交して前記車両前方に向かって連続する第2左側方部(72F)と、を含む。前記前方支持フレームにおいて前記第1右側方部および前記第1左側方部は、車両前後方向の全域に亘って配置されておらず、前記後方支持フレームにおいて前記第2右側方部および前記第2左側方部は、前記車両前後方向の全域に亘って配置されていない。
【0007】
この形態の計測装置ユニットによれば、複数の検出器から取得する検出データを統合するためのデータ処理装置が車両の内部に配置される。したがって、車両の屋根の上の重量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】支持フレームおよびセンサの構成を上面視で表す説明図。
【
図5】配線統合部の配置位置を上面視で表す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1を用いて、第1実施形態としての計測装置ユニット100について説明する。
図1に示すように、計測装置ユニット100は、車両50に搭載されて用いられる。計測装置ユニット100は、保護カバー60と、支持フレーム70と、複数の検出器30と、複数の配線統合部20と、データ処理装置90と、配線CBとを備えている。保護カバー60、支持フレーム70、複数の検出器30、ならびに配線統合部20は、車両50の屋根50Tに配置され、データ処理装置90は、車両50の内部に配置されている。
図1には、車両50の前側および後ろ側が示されている。保護カバー60、支持フレーム70、ならびに複数の検出器30は、車両の屋根50Tのほか、車両50の前方、後方、側方、下方といった車両50の屋根50T以外の外面に搭載されてもよい。
【0010】
車両50は、人間が運転する自動運転車両であり、いわゆるECU(engine control unit)としての運転支援制御装置40を備えている。車両50の屋根50Tには、屋根50Tの外面と車両50の内部とを連通する車両貫通孔50Hが備えられている。車両貫通孔50Hは、例えば、ルーフレールを装着するための嵌合孔や、GPS信号や電波などを受信するための通信アンテナを装着するための嵌合孔など、車両50が有する既設の貫通孔である。車両50は、無人の自動運転車両であってよく、自動運転車両のほか、少なくとも一の原動機を有する種々のモータビークルであってよい。
【0011】
保護カバー60は、支持フレーム70、複数の検出器30の少なくとも一部、ならびに複数の配線統合部20、を内包する筐体である。保護カバー60は、強化樹脂やカーボン、金属などの材料で形成され、内包する各部材が外気や日射に曝されることを抑制または防止している。保護カバー60の前面は、車両50の走行時の空気抵抗を低減させるために、車両50の前方に向かうに従って傾斜している。保護カバー60は、多面体や球体など、支持フレーム70や配線統合部20を内包できる種々の形状であってよい。
【0012】
支持フレーム70は、複数の検出器30と、複数の配線統合部20と、を支持する枠体である。本実施形態において、支持フレーム70は、断面が略四角形状の中空の金属部材で形成されている。中空の部材を用いることによって支持フレーム70の重量が低減されている。支持フレーム70の上面には、検出器30や配線統合部20が搭載されている。支持フレーム70は、下面が車両50の屋根50Tの外面上に当接する状態で、屋根50T上に固定されている。支持フレーム70は、例えば、車両50に複数の検出器30を追加的に搭載するために、既存の車種の車両50に着脱可能な外部ユニットとしてもよい。支持フレーム70には、支持フレーム70の上面から下面までを貫通し、車両貫通孔50Hと連通するフレーム貫通孔70Hが形成されている。支持フレーム70は、車両50の屋根50Tの外面上に配置されるほか、屋根50Tから離間するように配置されてもよい。例えば、車両50の屋根50T上に柱状の複数の支持体を配置し、複数の支持体の上端に支持フレーム70を載置することによって、支持フレーム70を車両50の屋根50Tから離間する状態で固定することができる。支持フレーム70は、四角形や三角形、五角形などの多角形のほか、楕円形や円形の断面形状を有してよい。支持フレーム70は、金属製に限らず、強化樹脂やカーボンなどの材料で形成されてよく、中空の部材のほか、中実の部材で形成されてもよい。検出器30は、支持フレーム70の上面に搭載されず、支持フレーム70の側面に取り付けられてもよい。
【0013】
本実施形態において、支持フレーム70は、車両50の進行方向の前側に配置される前方支持フレーム71と、車両50の進行方向の後ろ側に配置される後方支持フレーム72とを備えている。前方支持フレーム71は、幅方向に沿って屋根50Tの前端を覆うように配置されている。前方支持フレーム71には、車両50の前方を検出範囲とする検出器30と、車両50の左右側方を検出範囲とする検出器30と、複数の配線統合部20とが搭載されている。後方支持フレーム72は、前方支持フレーム71から車両後ろ側に離間する状態で、幅方向に沿って屋根50Tの後端を覆うように配置されている。後方支持フレーム72は、車両50の後方を検出範囲とする検出器30と、車両50の左右側方を検出範囲とする検出器30と、複数の配線統合部20とを搭載している。本明細書において、前方支持フレーム71と、後方支持フレーム72とを区別しない場合には、「支持フレーム70」を用いて説明する。
【0014】
検出器30は、例えば、対象物の画像データを取得するカメラ、対象物の距離等を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)、対象物の距離等を取得するミリ波レーダ等の検出器である。本実施形態において、複数の検出器30には、複数の異なる種類の検出器が含まれる。複数の検出器30は、それぞれ配線統合部20の入力部に個別に有線接続されている。各検出器30の検出データは、データ処理装置90に出力される。検出器30には、超音波センサ、他の電磁波または光を用いたセンサなどの種々の検出器が含まれてもよい。複数の検出器30は、1種類からなる複数の検出器であってもよい。
図1において、検出器には代表的に符号30を付して説明するが、複数の検出器30には、カメラ30C、LiDAR30L、ミリ波レーダ30Mが含まれ得る。
【0015】
データ処理装置90は、論理回路を備えるマイクロコンピュータである。データ処理装置90は、検出器30から取得した検出データを用いて統合データを生成する。データ処理装置90は、
図1に示すように、車両50内の運転支援制御装置40と通信可能に接続されている。データ処理装置90は、生成した統合データを運転支援制御装置40に出力する。運転支援制御装置40は、データ処理装置90から入力される車両50周囲の対象物に関する情報を用いて車両50の運転支援を実行する。
【0016】
配線統合部20は、複数の検出器30が採用する通信プロトコルをデータ処理装置90が採用する通信プロトコルへと変換するプロトコル変換を実行する。配線統合部20は、防塵防滴の機能を有する筐体と、筐体の内部に配置される図示しない配線とを有している。配線統合部20は、2以上の検出器30と有線接続されており、1本の配線CBを用いて車両50内部のデータ処理装置90と有線接続されている。配線CBは、配線統合部20の出力部に接続される通信ケーブルである。配線CBは、支持フレーム70のフレーム貫通孔70Hと、屋根50Tの車両貫通孔50Hとを介して、車両50の外部である支持フレーム70上から車両50の内部に亘って配置されている。
【0017】
図2に示すように、配線統合部20は、出力統合部200と、複数の検出器入力部203と、1つの出力部204とを備えている。各検出器入力部203と、各検出器30とは、それぞれ配線CB1~CB3を介して有線接続されている。各検出器入力部203は、各検出器30が備える配線CB1~CB3の接続端子の形状に対応する形状を有する接続部C1、C2、C3を備えている。各検出器入力部203は、内部配線を介してそれぞれ出力統合部200に接続されている。検出器入力部203は、各通信プロトコルの物理層を実装するための専用の集積回路、すなわち、PHYチップにより実現され、各検出器30が採用する通信プロトコルを出力統合部200が採用する通信プロトコルへと変換するプロトコル変換を実行する。各検出器30とデータ処理装置90との間の通信には、例えば、イーサネット[登録商標](100M、1G)、Flat Panel Display Link(FPD-LINK)、Gigabit Video Interface(GVIF)、Gigabit Multimedia Serial Link(GMSL)等のLow voltage differential signaling(LVDS)、HDBASE-Tといった通信プロトコルが用いられる。
図2の例では、接続部C1、C2、C3を備える複数の検出器入力部203が示されているが、複数の接続部C1、C2、C3を備えるとともに、一つの内部配線を介して出力統合部200に接続される単一の検出器入力部203が用いられてもよい。
【0018】
配線統合部20の出力部204は、配線CBを介して、車両50内のデータ処理装置90と接続されている。出力部204は、各通信プロトコルの物理層を実装するための専用の集積回路、すなわち、PHYチップにより実現され、出力統合部200において生成された統合データに対して、データ処理装置90において採用されている通信プロトコルへと変換するプロトコル変換処理を実行し、データ処理装置90に対して送信する。配線統合部20は、各検出器30の配線の接続端子形状というハードウェア面並びに各検出器30の通信プロトコルというソフトウェア面の相違を吸収・対応することができるので、データ処理装置90に対して仮想的な共通入力部を提供することができる。
【0019】
図3を用いて、支持フレーム70および検出器30の配置構成について説明する。
図3に示すように、前方支持フレーム71は、前端部71Fと、前端部71Fの両端で直交して車両後方に向かって連続する右側方部71Rおよび左側方部71Lと、右側方部71Rと左側方部71L間を繋ぐ補強部71Bとを含んでいる。前端部71Fは、車両50の屋根50Tの前端において車両50の幅方向の全域に亘って配置されている。前端部71Fには、前方検出用の検出器30が搭載され、右側方部71Rと左側方部71Lとには、側方検出用の検出器30が搭載されている。より具体的には、前端部71Fには、前方検出用のカメラ30CF、ミリ波レーダ30MF、ならびにLiDAR30LFが搭載され、右側方部71Rおよび左側方部71Lには、側方検出用のミリ波レーダ30MR,30MLが搭載されている。
【0020】
図3に示すように、後方支持フレーム72は、後端部72Bと、後端部72Bの両端で直交して車両前方に向かって連続する右側方部72Rおよび左側方部72Lとを含んでいる。後端部72Bは、車両50の屋根50Tの後端において車両50の幅方向の全域に亘って配置されている。後端部72Bには、後方検出用の検出器30が搭載され、右側方部72Rと左側方部72Lとには、側方検出用の検出器30が搭載されている。より具体的には、後端部72Bには、後方検出用のカメラ30CB、ミリ波レーダ30MB、ならびにLiDAR30LBが搭載され、右側方部71Rには、右側方検出用のLiDAR30LRが搭載され、左側方部71Lには、左側方検出用のLiDAR30LLが搭載されている。
【0021】
図3には、LiDAR30LF,30LR,30LL,30LBの検出範囲AF,AR,AL,ABが模式的に示されている。本実施形態において、LiDAR30LF,30LR,30LL,30LBの構成は互いに同一である。検出範囲AF,AR,AL,ABは、上面視で内角を120度とする検出範囲である。LiDAR30LF,LBの検出軸は、車両50の進行方向と平行であり、それぞれ車両50の前後に向けられている。検出器30の検出軸とは、検出器30の検出範囲の中心軸を意味する。本実施形態において、側方検出用のLiDAR30LRおよびLiDAR30LLの検出軸は、その配置位置よりも車両50の前側に向けられており、LiDAR30LRの検出範囲ARが車両50の右側方を含み、LiDAR30LLの検出範囲ALが車両50の左側方を含むように設定されている。
【0022】
図4を用いて、LiDAR30LRの後方支持フレーム72への具体的な固定方法について説明する。LiDAR30LLの構成は、LiDAR30LRの構成と同様であるので説明を省略する。
図4に示すように、後方支持フレーム72の右側方部72Rには、検出器固定部720が備えられている。検出器固定部720は、後方支持フレーム72に一の検出器30としてのLiDAR30LRを固定するための固定具である。検出器固定部720は、LiDAR30LRを着脱可能に装着するための装着溝部721を備えている。装着溝部721は、側壁部722と、側壁部722と連続する底壁部723とを備え、LiDAR30LRの外形に対応する凹形状を有している。
図4の例では、装着溝部721は、矩形形状を有している。側壁部722は、LiDAR30LRが検出器固定部720に装着される際にLiDAR30LRを底壁部723に向かって案内する。底壁部723は、検出器固定部720に対してLiDAR30LRが装着された際にLiDAR30LRの先端面31と対向する壁面である。底壁部723には、本体側端子部724が配置されている。本体側端子部724は、検出器側端子部34と接続または係合される、複数の接続孔、複数の接続面、あるいは、複数の接続バネまたは接続ピンを有している。本体側端子部724には、図示しない配線CB1が接続されており、配線統合部20と通信可能に接続される。
【0023】
図4に示すように、LiDAR30LRは、検出器側端子部34を備えている。検出器側端子部34は、例えば、複数の接続ピン、複数の接続バネ、あるいは、複数の接続面を有している。LiDAR30LRは、装着溝部721に挿入されると、側壁部722に沿って底壁部723に向かって案内される。LiDAR30LRの先端面31が底壁部723に到達すると、検出器側端子部34は、例えば、複数の接続ピンが、本体側端子部724が備える複数の接続孔に嵌入されて固定または係合される。LiDAR30LRは、測距に用いられるレーザ光を発光する発光素子、光の入射に応じて電荷を出力する光電変換素子、検出波を出力する送信素子、反射波を検出する受信素子等からなる検出素子を含んでいる。LiDAR30LRは、検出素子による検出結果を用いて対象物を示す検出信号を生成し、検出器側端子部34を介して配線統合部20に出力する。
【0024】
図4には、LiDAR30LRの検出軸D1が概念的に示されている。LiDAR30LRが検出器固定部720に固定されると、検出軸D1は、LiDAR30LRの配置位置よりも車両50の前側に向けられる。より具体的には、LiDAR30LRは、車両50の右側方に対して所定の角度θ1だけ車両50の前側に向けられた状態で支持フレーム70に固定される。検出器固定部720に設定される角度θ1は、車両右側方に対して30度で設定されており、LiDAR30LRの検出範囲ARが車両50の右側方を含むように固定されている。検出軸D1の角度θ1は、LiDAR30LRの検出範囲や車両50に対するLiDAR30LRの配置位置に基づいて任意に設定することができる。角度θ1は、LiDAR30LRの検出範囲ARが車両50の右側方を大きく含む角度であるほど好ましい。検出軸D1の角度θ1は、30度で設定されるほか、45度であってもよく、例えば、15度から75度の範囲で設定されることが好ましく、車両右側方に対して30度から60度の範囲内で設定されることがより好ましい。
【0025】
図5および
図6を用いて、配線CBの具体的な配置方法を説明する。
図5の例では、車両50の屋根50Tには、5つの車両貫通孔50Hが設けられている。本明細書では、説明の便宜のため、5つの車両貫通孔50Hをそれぞれ車両貫通孔50HA,50HB,50HC,50HD,50HEとして説明し、区別しない場合には、「車両貫通孔50H」を用いて説明する。車両貫通孔50HAおよび車両貫通孔50HCは、車両50の右側方に位置し、車両50の右側方用のルーフレールを装着するための嵌合孔である。車両貫通孔50HBおよび車両貫通孔50HDは、車両50の左側方に位置し、左側方用のルーフレールを装着するための嵌合孔である。車両貫通孔50HEは、車両50の後端に位置し、通信アンテナを装着するための嵌合孔である。車両貫通孔50Hは、ルーフレールや通信アンテナを取り外すことによって屋根50T上に露出する。
【0026】
図5に示すように、本実施形態の計測装置ユニット100は、支持フレーム70上に、4つの配線統合部20を備えている。より具体的には、車両50の右側前方に配置される配線統合部20Aと、車両50の左側前方に配置される配線統合部20Bと、車両50の右側後方に配置される配線統合部20Cと、車両50の左側後方に配置される配線統合部20Dとを有している。本明細書において、説明の便宜のため、4つの配線統合部20をそれぞれ配線統合部20A,20B,20C,20Dとして説明し、それぞれを区別しない場合には、「配線統合部20」を用いて説明する。
【0027】
各配線統合部20には、配線CB1~CB3等の複数の配線を用いて2以上の検出器30が有線接続されるとともに、1本の配線CBを用いてデータ処理装置90が有線接続されている。なお、
図5では、説明の便宜のため、配線CB,CB1~CB3の図示は省略されている。配線を効率良く配置するために、配線統合部20の大きさや配置は、配線CBが短縮でき、配索が容易となるように、配線統合部20に有線接続する検出器30の位置や数と、配線統合部20からの配線CBを通す車両貫通孔50Hの位置や数とを考慮して、設定されることが好ましい。例えば、配線統合部20の出力部204は、車両貫通孔50Hの近傍に配置されることが好ましい。本実施形態では、配線統合部20Aは、カメラ30CFと、LiDAR30LFと、ミリ波レーダ30MRと有線接続され、車両貫通孔50HAを通じて車両50内に導入される配線CBを用いてデータ処理装置90と有線接続される。配線統合部20Bは、ミリ波レーダ30MFと、ミリ波レーダ30MLと有線接続され、車両貫通孔50HBを介した配線CBを通じてデータ処理装置90と有線接続される。配線統合部20Cは、カメラ30CBと、LiDAR30LRと有線接続され、車両貫通孔50HCを介した配線CBを通じてデータ処理装置90と有線接続される。配線統合部20Dは、ミリ波レーダ30MBと、LiDAR30LLと有線接続され、車両貫通孔50HDを介した配線CBを通じてデータ処理装置90と有線接続される。車両50の後方に配置されるLiDAR30LBは、配線統合部20には接続されず、車両貫通孔50HEを介して配置される配線CBを用いてデータ処理装置90と直接的に有線接続されている。このように、配線統合部20は、省略されてもよい。
【0028】
図5に示すように、支持フレーム70の形状は、上面視で屋根50Tの前端と、車両貫通孔50Hと覆いつつ、屋根50T上の占有面積が極力小さくなるように設定されている。フレーム貫通孔70Hが車両貫通孔50Hと上面視で重なるように支持フレーム70を配置することによって、フレーム貫通孔70Hと車両貫通孔50Hとは車両50の上下方向に連通する一つの貫通孔を形成している。
【0029】
図6には、前方支持フレーム71のフレーム貫通孔70H近傍の断面構造が示されている。
図6に示すように、支持フレーム70は、内部空間71Sを有する中空構造を有している。これにより、支持フレーム70を軽量化し、車両50の屋根50T上の重量を低減している。内部空間71Sには、配線CBが配置されてもよい。
【0030】
前方支持フレーム71は、円筒締結具80を用いて、車両50の屋根50T上に固定されている。円筒締結具80は、軸方向AXに沿った締結具貫通孔80Hを有する略円筒状のボルトである。締結具貫通孔80Hの外径は、配線CBを挿通可能な程度の大きさを有している。円筒締結具80は、前方支持フレーム71の上面側からフレーム貫通孔70Hおよび車両貫通孔50Hに挿通され、車両50内でナット82と締結される。これにより、支持フレーム70は、屋根50T上に固定される。円筒締結具80の上面に配置されている配線統合部20の出力部204からの配線CBは、締結具貫通孔80Hを介して車両50の内部に亘って配置され、データ処理装置90に接続される。
【0031】
以上、説明したように、本実施形態の計測装置ユニット100によれば、複数の検出器30から取得する検出データを統合するためのデータ処理装置90が車両50の内部に配置される。したがって、車両50の屋根50T上の重量を低減することができ、車両50の走行を安定させることができる。本実施形態の計測装置ユニット100によれば、車両50の既設の車両貫通孔50Hを利用して配線CBを車両50の外部から内部に亘って配置する。配線CBを車両50内に導入するための貫通孔を車両50に新たに形成する工程を削減することができる。したがって、車両50に容易に支持フレーム70を搭載させることができる。
【0032】
本実施形態の計測装置ユニット100によれば、車両貫通孔50Hと連通するフレーム貫通孔70Hを有する支持フレーム70が備えられる。したがって、支持フレーム70上の検出器30と、車両50内のデータ処理装置90との有線接続が容易となる。フレーム貫通孔70Hを車両貫通孔50Hに対する車両50に対する位置合わせに用いることができ、車両50に支持フレーム70を取り付ける際の位置合わせが容易となる。
【0033】
本実施形態の計測装置ユニット100によれば、支持フレーム70は、車両50の前側に配置される前方支持フレーム71と、前方支持フレーム71から離間して車両50の後ろ側に配置される後方支持フレーム72と、を備える。車両50の前端から後端まで連続する一体の支持フレーム70を用いる場合に比べて支持フレーム70の重量を低減することができる。車体の前後方向の長さが異なる複数の種類の車両50に対して、支持フレーム70の形状を変更することなく取り付けることができる。
【0034】
本実施形態の計測装置ユニット100によれば、後方支持フレーム72は、検出器固定部720を備える。検出器固定部720は、複数の検出器30のうちLiDAR30LRの検出軸D1を、LiDAR30LRの配置位置よりも車両50の前側に向け、かつ検出範囲ARが車両50の側方を含むように固定する。側方検出用の検出器30を車両50の後ろ側に備えることができるので、支持フレーム70の側方部分を削減することができ、例えば、前方支持フレーム71と後方支持フレーム72との離間距離を大きくすることができ、支持フレーム70を軽量化することができる。例えば、側方用の検出器30を、車両50の後ろ側へ位置変更するにあたり、検出軸D1の調整を省略することができ、検出器30の取り付け時の設定を容易に行うことができる。
【0035】
本実施形態の計測装置ユニット100によれば、支持フレーム70は、円筒締結具80をフレーム貫通孔70Hおよび車両貫通孔50Hに挿通して車両50と締結することによって、車両50の外表面に固定される。円筒締結具80の締結具貫通孔80Hは、配線CBを車両50の外部から内部に導入する。フレーム貫通孔70Hおよび車両貫通孔50Hを利用して円筒締結具80を締結することにより、支持フレーム70を車両50に容易に固定することができる。配線CBを、締結具貫通孔80Hを通じて車両50の外部から内部に導入することができ、効率良く支持フレーム70を固定することができる。
【0036】
本実施形態の計測装置ユニット100によれば、2以上の検出器30と有線接続される配線統合部20が備えられる。配線統合部20は、複数の検出器30のそれぞれから取得する検出データを統合し、1本の配線CBを介してデータ処理装置90に出力する。出力統合部200から出力される配線数を低減し、車両貫通孔50Hを効率良く利用することができるとともに、複数の検出器30と、データ処理装置90との有線接続が容易となる。
【0037】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態において、車両貫通孔50Hと連通するフレーム貫通孔70Hを有する支持フレーム70が備えられる。これに対して、計測装置ユニット100は、支持フレーム70を備えなくともよい。この場合において、検出器30は、車両50の屋根50T上に配置されてよく、配線統合部20は、屋根50T上に配置されてよく、省略されてもよい。
【0038】
(B2)上記実施形態において、支持フレーム70は、車両50の前側に配置される前方支持フレーム71と、前方支持フレーム71から離間して車両50の後ろ側に配置される後方支持フレーム72とを備える。これに対して、支持フレーム70は、車両50の左右側方に互いに離間して配置される左方支持フレームと、右方支持フレームとを備えてもよい。このように構成された計測装置ユニット100によれば、車両50の幅のことなる車種であっても支持フレームの形状を変更することを抑制できる。また、支持フレーム70は、前方支持フレーム71および後方支持フレーム72を備えず、例えば、略矩形状の一の枠体であってもよい。このように構成された計測装置ユニット100によれば、車両50が、例えば、車両貫通孔50HAおよび車両貫通孔50HBのみを備えるなど、車両貫通孔50Hの数が5よりも少ない場合に、配線CBの配置を容易にすることができる。また、強度の高い支持フレーム70を車両50に配置することができる。この場合において、検出器固定部720は、支持フレーム70の側方側の中央に備えられてよく、LiDAR30LRの検出軸D1を車両50の側方に向けてもよい。
【0039】
(B3)上記実施形態において、後方支持フレーム72は、LiDAR30LRの検出軸D1を、LiDAR30LRの配置位置よりも車両50の前側に向け、かつ検出範囲ARが車両50の側方を含むように固定する検出器固定部720を備える。これに対して、後方支持フレーム72は、検出器固定部720を備えなくてもよく、検出器固定部720に代えて、検出軸D1の向きを車両50の側方に向けるための検出器固定部が備えられてもよい。
【0040】
(B4)上記実施形態において、支持フレーム70は、円筒締結具80をフレーム貫通孔70Hおよび車両貫通孔50Hに挿通して車両50と締結することによって、車両50の外表面に固定される。これに対して、支持フレーム70は、円筒締結具80以外の締結具を用いて車両50に固定されてよい。支持フレーム70は、支持フレーム70が有する固定具が車両50を把持するなど、締結具以外の方法によって車両50に固定されてもよい。この場合において、フレーム貫通孔70Hと、車両貫通孔50Hとが連通していてもよく、フレーム貫通孔70Hは備えられなくてもよい。
【0041】
(B5)上記実施形態において、2以上の検出器30と有線接続される配線統合部20が支持フレーム70上に備えられる。これに対して、配線統合部20は、支持フレーム70上に限らず、支持フレーム70の下に配置されてよく、支持フレーム70と屋根50Tとの間に配置されてもよい。配線統合部20は、省略されてもよい。
【0042】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0043】
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
30…検出器、50…車両、50H,50HA~50HE…車両貫通孔、90…データ処理装置、100…計測装置ユニット、CB,CB1~CB3…配線