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特許7456319クリーニング装置およびそれを備えるインクジェット画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】クリーニング装置およびそれを備えるインクジェット画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/165 301
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020125852
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021941
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(72)【発明者】
【氏名】山田 千晶
(72)【発明者】
【氏名】平山 順哉
(72)【発明者】
【氏名】出石 由美子
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-1421(JP,A)
【文献】特開2009-220520(JP,A)
【文献】特開2020-59188(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0309251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、
被押圧面を有し、洗浄液が含浸されることが可能かつ前記被押圧面が押圧されることにより含浸された洗浄液が排出されることが可能に構成されるとともに、前記ノズル面を払拭可能に構成された払拭部材と、
前記払拭部材に洗浄液を含浸させる液充填部と、
前記被押圧面を押圧する押圧面を有し、前記払拭部材における洗浄液の含浸量を調整する液調整部とを備え、
前記押圧面は、
当該押圧面による前記被押圧面の押圧時に、前記被押圧面において分散配置された複数の部分にそれぞれ接触する複数の接触部分と、
前記複数の接触部分の間に設けられる少なくとも1つの液排出口とを含む、クリーニング装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの液排出口は、前記押圧面による前記被押圧面の押圧時に、前記払拭部材から排出される洗浄液を前記押圧面から前記払拭部材の外部に導くように形成された、請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記払拭部材の前記被押圧面は、一方向に延び、
前記液調整部は、
前記一方向に延びる支持部材と、
前記支持部材が延びる方向に間隔を置いて並ぶとともに前記被押圧面に向かって突出するように前記支持部材に取り付けられた複数の接触部材とを含み、
前記複数の接触部材のうち前記被押圧面に向く部分は、前記複数の接触部分を構成し、
前記複数の接触部材の間に形成される複数の隙間は、前記少なくとも1つの液排出口を構成する、請求項1または2記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記払拭部材は、前記一方向に延びる回転軸に取り付けられたローラであり、
前記ローラの外周面の一部は前記被押圧面を構成し、
前記支持部材は、当該支持部材の中心軸を基準として回転可能に設けられ、
前記複数の接触部材は、複数の円柱状部材で構成され、
前記複数の円柱状部材は、各円柱状部材の中心が前記支持部材の中心軸上に位置するように前記支持部材に取り付けられた、請求項3記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記液調整部は、前記押圧面を有する多孔質体により構成され、
前記押圧面には、前記押圧面が向く方向に開放された複数の細孔が形成され、
前記押圧面における前記複数の細孔の開口端以外の部分は、前記複数の接触部分を構成し、
前記複数の細孔の開口端は、前記少なくとも1つの液排出口を構成する、請求項1または2記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記払拭部材は、一方向に延びる第1の回転軸に取り付けられたローラであり、
前記ローラの外周面の一部は前記被押圧面を構成し、
前記液調整部は、
前記一方向に延びる第2の回転軸と、
前記第2の回転軸の外周面を取り囲むように設けられる複数の周辺部材とを含み、
前記複数の周辺部材は、
前記第2の回転軸が延びる方向に延びるように、前記第2の回転軸の外周面の周方向における複数の部分にそれぞれ取り付けられ、
前記第2の回転軸の周方向において互いに隣り合う各2つの周辺部材の間には、隙間が形成され、
前記複数の周辺部材は、前記複数の接触部分を構成し、
前記複数の周辺部材のうち互いに隣り合う各2つの周辺部材の間に形成される隙間は、前記液排出口を構成する、請求項1または2記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記液調整部は、前記押圧面を形成する板状部材を含み、
前記板状部材は、分散配置された複数の貫通孔を有し、
前記板状部材のうち前記複数の貫通孔が形成されていない部分は、前記複数の接触部分を構成し、
前記複数の貫通孔は、前記少なくとも1つの液排出口を構成する、請求項1または2記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記液調整部は、複数の線状部材により構成され、前記押圧面を形成する網状部材を含み、
前記網状部材のうち前記複数の線状部材は、前記複数の接触部分として機能し、
前記網状部材において前記複数の線状部材の間に形成される複数の開口は、前記少なくとも1つの液排出口として機能する、請求項1または2記載のクリーニング装置。
【請求項9】
前記払拭部材は、一方向に延びる第1の回転軸に取り付けられたローラであり、
前記ローラの外周面の一部は前記被押圧面を構成し、
前記液調整部は、前記一方向に延びる直線を中心としたらせん状に延びる線状部材を含み、
前記線状部材のうち前記一方向に並ぶ複数の部分は、前記複数の接触部分を構成し、
前記一方向に並ぶ前記線状部材の複数の部分の間に形成される複数の隙間は、前記少なくとも1つの液排出口を構成する、請求項1または2記載のクリーニング装置。
【請求項10】
前記払拭部材は、前記押圧面による前記被押圧面の押圧時に、前記被押圧面が当該払拭部材の上端部よりも下方に位置するように設けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載のクリーニング装置。
【請求項11】
記録媒体に画像形成用のインクを吐出するノズル面を有するインクジェットヘッドと、
請求項1~10のいずれか一項に記載のクリーニング装置とを備える、インクジェット画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体に画像形成用のインクを吐出するインクジェットヘッドのクリーニング装置およびそれを備えるインクジェット画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙または布帛等の種々の記録媒体に画像を形成するためにインクジェット画像形成装置が用いられる。インクジェット画像形成装置においては、例えばインクジェットヘッドに設けられた複数のノズルから記録媒体に画像形成用のインクが吐出される。画像形成に用いられたインクの液滴、紙粉または糸くず等が、汚染物質としてインクジェットヘッドに付着すると、高い精度で画像形成を行うことができない。そこで、インクジェットヘッドを洗浄する種々のクリーニング装置が提案されている。
【0003】
クリーニング装置の一例として特許文献1に記載されたインクジェット記録ヘッドメンテナンス機構は、記録ヘッドのノズルからインクを吐出し、被記録部材に当該インクによる画像を形成するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドのノズル形成面に接触しかつ前記記録ヘッドに対し相対的に移動することによってクリーニング動作を行うメンテナンス機構に関し、回転可能に軸支され、液体吸収性能および適度な圧力を加えることで吸収した液体を滲ます性能を有する弾性体により形成されるローラと、可撓性の弾性体で形成されるワイパーブレードと、前記ローラおよび前記ワイパーブレードを搭載する移動可能なキャリッジにより構成され、クリーニング動作前に、予め前記記録ヘッドから前記ローラに対してインクを吐出し吸収させておき、前記ローラで前記ノズル形成面を拭った後、前記ワイパーブレードで前記ノズル形成面をワイピングすることを特徴としている。さらに、上記のインクジェット記録ヘッドメンテナンス機構は、クリーニング動作終了時に、前記ローラを回転可能な方向へ所定角度回転させるとともに、この際に前記キャリッジ上に形成した掻き取り爪で、該ローラに付着する汚れを排出させることを特徴としている。
【0004】
しかしながら、上記のように、ローラに付着する汚れを掻き取り爪で取り除く構成では、実際には、ローラに付着する汚れを十分に排出させることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-361879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、払拭部材の清浄度を高く維持することを可能にするクリーニング装置およびそれを備えるインクジェット画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面によれば、ノズル面を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、被押圧面を有し、洗浄液が含浸されることが可能かつ被押圧面が押圧されることにより含浸された洗浄液が排出されることが可能に構成されるとともに、ノズル面を払拭可能に構成された払拭部材と、払拭部材に洗浄液を含浸させる液充填部と、被押圧面を押圧する押圧面を有し、払拭部材における洗浄液の含浸量を調整する液調整部とを備え、押圧面は、当該押圧面による被押圧面の押圧時に、被押圧面において分散配置された複数の部分にそれぞれ接触する複数の接触部分と、複数の接触部分の間に設けられる少なくとも1つの液排出口とを含む。
【0008】
そのクリーニング装置においては、液充填部において払拭部材に洗浄液が含浸される。洗浄液が含浸された払拭部材の被押圧面が、液調整部の押圧面により押圧される。このとき、被押圧面が押圧されることにより払拭部材から排出されるべき洗浄液が、液排出部から複数の接触部分の間を通して直接的に排出される。それにより、払拭部材の内部から外部にかけて洗浄液の強力な流れが発生する。この洗浄液の流れは、払拭部材の内部に存在する汚染物資を液排出口から円滑に排出させるとともに、払拭部材の表面に付着する汚染物質をその表面から剥離する。さらに、上記の洗浄液の流れは、払拭部材から排出または剥離された汚染物質が払拭部材に再付着することを抑制する。その結果、払拭部材の清浄度を高く維持することが可能になる。
【0009】
好ましくは、少なくとも1つの液排出口は、押圧面による被押圧面の押圧時に、払拭部材から排出される洗浄液を押圧面から払拭部材の外部に導くように形成される。
【0010】
この場合、押圧面による被押圧面の押圧時に、払拭部材から排出されるべき洗浄液が払拭部材の内部および表面に存在する汚染物質とともに払拭部材から円滑に排出される。
【0011】
好ましくは、払拭部材の被押圧面は、一方向に延び、液調整部は、一方向に延びる支持部材と、支持部材が延びる方向に間隔を置いて並ぶとともに被押圧面に向かって突出するように支持部材に取り付けられた複数の接触部材とを含み、複数の接触部材のうち被押圧面に向く部分は、複数の接触部分を構成し、複数の接触部材の間に形成される複数の隙間は、少なくとも1つの液排出口を構成する。
【0012】
この場合、複数の接触部材の一部が被押圧面に接触し、被押圧面を押圧する。払拭部材に含浸された洗浄液および払拭部材に進入した汚染物質は、複数の接触部材の間に形成される少なくとも1つの隙間から排出される。これにより、簡単な構成で、払拭部材から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0013】
好ましくは、払拭部材は、一方向に延びる回転軸に取り付けられたローラであり、ローラの外周面の一部は被押圧面を構成し、支持部材は、当該支持部材の中心軸を基準として回転可能に設けられ、複数の接触部材は、複数の円柱状部材で構成され、複数の円柱状部材は、各円柱状部材の中心が支持部材の中心軸上に位置するように支持部材に取り付けられる。
【0014】
この場合、複数の円柱状部材の外周端部の一部が被押圧面に接触し、被押圧面を押圧する。払拭部材に含浸された洗浄液および払拭部材に進入した汚染物質は、近接する各2つの円柱状部材の隙間から排出される。
【0015】
ここで、払拭部材のローラが回転する際には、その回転に応じて複数の円柱状部材も回転させることができる。それにより、液調整部と払拭部材との間に大きな摩擦が生じることが防止されるので、払拭部材の長寿命化が実現される。
【0016】
好ましくは、液調整部は、押圧面を有する多孔質体により構成され、押圧面には、押圧面が向く方向に開放された複数の細孔が形成され、押圧面における複数の細孔の開口端以外の部分は、複数の接触部分を構成し、複数の細孔の開口端は、少なくとも1つの液排出口を構成する。
【0017】
この場合、簡単な構成で、払拭部材から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0018】
好ましくは、払拭部材は、一方向に延びる第1の回転軸に取り付けられたローラであり、ローラの外周面の一部は被押圧面を構成し、液調整部は、一方向に延びる第2の回転軸と、第2の回転軸の外周面を取り囲むように設けられる複数の周辺部材とを含み、複数の周辺部材は、第2の回転軸が延びる方向に延びるように、第2の回転軸の外周面の周方向における複数の部分にそれぞれ取り付けられ、第2の回転軸の周方向において互いに隣り合う各2つの周辺部材の間には、隙間が形成され、複数の周辺部材は、複数の接触部分を構成し、複数の周辺部材のうち互いに隣り合う各2つの周辺部材の間に形成される隙間は、液排出口を構成する。
【0019】
この場合、複数の周辺部材の少なくとも一部が被押圧面に接触し、被押圧面を押圧する。複数の周辺部材のうち互いに隣り合う各2つの周辺部材の間には、隙間が形成されている。これにより、被押圧面に接触する少なくとも一部の周辺部材と被押圧面との間には、一方向に延びる液体の流路が形成される。
【0020】
そのため、払拭部材の被押圧面が複数の周辺部材により押圧される際には、払拭部材に含浸された洗浄液および払拭部材に進入した汚染物質が、複数の周辺部材と被押圧面との間に形成された流路を通して、払拭部材の外部に排出される。したがって、簡単な構成で、払拭部材から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0021】
ここで、払拭部材のローラが回転する際には、その回転に応じて液調整部の周辺部材も回転させることができる。それにより、液調整部と払拭部材との間に大きな摩擦が生じることが防止されるので、払拭部材の長寿命化が実現される。
【0022】
好ましくは、液調整部は、押圧面を形成する板状部材を含み、板状部材は、分散配置された複数の貫通孔を有し、板状部材のうち複数の貫通孔が形成されていない部分は、複数の接触部分を構成し、複数の貫通孔は、少なくとも1つの液排出口を構成する。
【0023】
この場合、板状部材のうち複数の貫通孔が形成されていない部分が被押圧面に接触し、被押圧面を押圧する。払拭部材に含浸された洗浄液および払拭部材に進入した汚染物質は、板状部材の複数の貫通孔に流れ込み、払拭部材の内部から外部に排出される。これにより、簡単な構成で、払拭部材から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0024】
好ましくは、液調整部は、複数の線状部材により構成され、押圧面を形成する網状部材を含み、網状部材のうち複数の線状部材は、複数の接触部分として機能し、網状部材において複数の線状部材の間に形成される複数の開口は、少なくとも1つの液排出口として機能する。
【0025】
この場合、複数の線状部材が被押圧面に接触し、被押圧面を押圧する。払拭部材に含浸された洗浄液および払拭部材に進入した汚染物質は、複数の線状部材の間に形成される複数の開口から排出される。これにより、簡単な構成で、払拭部材から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0026】
好ましくは、払拭部材は、一方向に延びる第1の回転軸に取り付けられたローラであり、ローラの外周面の一部は被押圧面を構成し、液調整部は、一方向に延びる直線を中心としたらせん状に延びる線状部材を含み、線状部材のうち一方向に並ぶ複数の部分は、複数の接触部分を構成し、一方向に並ぶ線状部材の複数の部分の間に形成される複数の隙間は、少なくとも1つの液排出口を構成する。
【0027】
この場合、線状部材のうち一方向に並ぶ複数の部分が被押圧面に接触し、被押圧面を押圧する。払拭部材に含浸された洗浄液および払拭部材に進入した汚染物質は、線状部材の複数の部分の間に形成される複数の隙間から排出される。これにより、簡単な構成で、払拭部材から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0028】
好ましくは、払拭部材は、押圧面による被押圧面の押圧時に、被押圧面が当該払拭部材の上端部よりも下方に位置するように設けられる。
【0029】
被押圧面が押圧されることにより被押圧面から排出される洗浄液および汚染物質は、重力により下方に落下する。上記の構成によれば、被押圧面が払拭部材の上端部よりも下方に位置するので、払拭部材の内部から外部に排出された洗浄液および汚染物質が、払拭部材の上端部に再付着することが防止される。したがって、払拭部材の上端部に払拭部材から排出された汚染物質が再付着することによる払拭部材の再汚染が防止される。
【0030】
この発明の他の局面によれば、インクジェット画像形成装置は、記録媒体に画像形成用のインクを吐出するノズル面を有するインクジェットヘッドと、上記のクリーニング装置とを備える。
【0031】
上記のクリーニング装置においては、払拭部材の清浄度を高く維持することが可能である。それにより、記録媒体に形成される画像の画質劣化を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェット画像形成装置の基本構成および動作を説明するための斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るインクジェット画像形成装置の基本構成および動作を説明するための斜視図である。
図3図1のクリーニングユニットの平面図である。
図4図3のクリーニングユニットのA-A線断面図である。
図5】液量調整部材の第1の構成例を説明するための図である。
図6】液量調整部材の第1の構成例を説明するための図である。
図7】液量調整部材の第2の構成例を説明するための図である。
図8】液量調整部材の第2の構成例を説明するための図である。
図9】液量調整部材の第3の構成例を説明するための図である。
図10】液量調整部材の第3の構成例を説明するための図である。
図11】液量調整部材の第4の構成例を説明するための図である。
図12】液量調整部材の第4の構成例を説明するための図である。
図13】液量調整部材の第5の構成例を説明するための図である。
図14】液量調整部材の第5の構成例を説明するための図である。
図15】液量調整部材の第6の構成例を説明するための図である。
図16】液量調整部材の第6の構成例を説明するための図である。
図17】他の実施の形態に係るクリーニングユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施の形態に係るクリーニング装置およびそれを備えるインクジェット画像形成装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
[1]インクジェット画像形成装置の基本構成
図1および図2は、本発明の一実施の形態に係るインクジェット画像形成装置の基本構成および動作を説明するための斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット画像形成装置1は、主として記録媒体搬送装置2、インク供給装置3およびクリーニング装置4を備える。
【0035】
記録媒体搬送装置2は、紙または布帛等の記録媒体mを搬送する。具体的には、記録媒体搬送装置2は、駆動ローラ21、従動ローラ22および張力制御ローラ23を備える。ここで、インクジェット画像形成装置1において、水平面内で直交する第1の方向D1および第2の方向D2を定義する。駆動ローラ21および従動ローラ22は、第1の方向D1に延びるようにかつ所定の距離をおいて第2の方向D2の方向に並ぶように配置されている。張力制御ローラ23は、第1の方向D1に延びるようにかつ駆動ローラ21と従動ローラ22との間の中間位置の下方に配置されている。
【0036】
駆動ローラ21、従動ローラ22および張力制御ローラ23の間には、搬送ベルト24が掛け渡されている。搬送ベルト24のうち駆動ローラ21の上端部と従動ローラ22の上端部との間に掛け渡される部分(以下、搬送吸着部と呼ぶ。)は、図示しない吸着装置により記録媒体mを吸着可能に構成され、記録媒体mの載置面として機能する。
【0037】
記録媒体搬送装置2は、さらに搬送駆動部29を備える。搬送駆動部29は、図1に太い実線の矢印a1で示すように、駆動ローラ21を回転させる。それにより、搬送ベルト24が回転する。インクジェット画像形成装置1の外部から、回転する搬送ベルト24の搬送吸着部上に記録媒体mが導かれる。搬送ベルト24上に導かれた記録媒体mは、図1に太い実線の矢印a2で示すように、搬送ベルト24の搬送吸着部により吸着されつつ従動ローラ22から駆動ローラ21に向く方向(第2の方向D2)に搬送される。なお、本例の記録媒体mは、帯状の布帛である。
【0038】
インク供給装置3は、記録媒体搬送装置2により搬送される記録媒体mに、画像形成用のインクを供給する。具体的には、インク供給装置3は、ヘッド部30およびヘッド移動部39を備える。ヘッド部30は、複数(本例では4個)のヘッドユニット31がヘッドキャリッジ32に収容された構成を有する。図1および図2では、ヘッドキャリッジ32の外形が一点鎖線で示される。
【0039】
ヘッドキャリッジ32においては、共通の構成を有する複数のヘッドユニット31が予め定められた順で並ぶように固定されている。図1の吹き出し内に、一のヘッドユニット31の下端部を下方から見た図が示される。図1の吹き出し内に示されるように、複数のヘッドユニット31の各々の底部には、当該ヘッドユニット31について予め定められた色のインクを吐出する複数のインクヘッドihが設けられる。本例のヘッドユニット31においては、第1の方向D1に並ぶように配置された一群のインクヘッドihと他の一群のインクヘッドihとが、第2の方向D2に2列で並ぶように配置されている。
【0040】
なお、各ヘッドユニット31においては、3以上の多数群(例えば、4つの群)のインクヘッドihが第2の方向D2に多数列(例えば、4つの列)で並ぶように配置されてもよい。
【0041】
ここで、図1に示される4つのヘッドユニット31のうち、記録媒体mの搬送方向における最初のヘッドユニット31(最も上流に位置するヘッドユニット31)に設けられるインクヘッドihは、イエローのインクを吐出する。また、記録媒体mの搬送方向における2番目のヘッドユニット31に設けられるインクヘッドihは、マゼンタのインクを吐出する。また、記録媒体mの搬送方向における3番目のヘッドユニット31に設けられるインクヘッドihは、シアンのインクを吐出する。さらに、記録媒体mの搬送方向における最後のヘッドユニット31(最も下流に位置するヘッドユニット31)に設けられるインクヘッドihは、ブラックのインクを吐出する。
【0042】
各ヘッドユニット31には、インクヘッドによるインクの吐出を制御する図示しないインクヘッド制御部が設けられている。以下の説明では、各ヘッドユニット31のインクヘッドihのうち、インクの吐出口が形成された面をノズル面と呼ぶ。
【0043】
ヘッドキャリッジ32は、複数のインクヘッドihのノズル面が搬送ベルト24の搬送吸着部に対向するように、記録媒体搬送装置2の上方の空間で上下動可能に支持される。ヘッド移動部39は、図1に示すように、記録媒体mへの画像形成時に、複数のヘッドユニット31が搬送ベルト24に近接する下方位置にヘッドキャリッジ32を移動させ、保持する。一方、ヘッド移動部39は、後述するノズルクリーニング時に、図2に示すように、複数のヘッドユニット31が搬送ベルト24から所定距離離間する上方位置にヘッドキャリッジ32を移動させ、保持する。これにより、上方位置にあるヘッドキャリッジ32と搬送ベルト24との間には空間が形成される。
【0044】
クリーニング装置4は、複数(本例では4個)のクリーニングユニット40およびクリーニングユニット移動部49を備える。複数のクリーニングユニット40は、インク供給装置3の複数のヘッドユニット31にそれぞれ対応するように設けられ、複数のヘッドユニット31のノズル面をそれぞれ洗浄可能に構成される。以下の説明では、クリーニングユニット40を用いてヘッドユニット31のノズル面を洗浄することをノズルクリーニングと呼ぶ。クリーニングユニット40の詳細は後述する。
【0045】
クリーニングユニット移動部49は、図1に示すように、記録媒体mへの画像形成時に、ヘッド部30および記録媒体搬送装置2から一定距離離間した待機位置にクリーニングユニット40を移動させ、保持する。一方、クリーニングユニット移動部49は、図2に白抜きの矢印で示すように、ノズルクリーニング時に、上方位置に保持されたヘッドキャリッジ32と搬送ベルト24との間の空間で複数のクリーニングユニット40を移動させる。
【0046】
[2]クリーニングユニット40の構成
図3図1のクリーニングユニット40の平面図であり、図4図3のクリーニングユニット40のA-A線断面図である。図4では、図3のクリーニングユニット40のA-A線断面図とともに、図1のヘッドユニット31の構成が一点鎖線で示される。
【0047】
図3および図4に示すように、クリーニングユニット40は、主として払拭部材41、液量調整部材42、回転駆動部43および貯留槽44を備える。払拭部材41は、後述する洗浄液に浸漬されることにより、洗浄液が含浸されることが可能に構成されている。また、払拭部材41は、洗浄液が含浸された状態で、その外表面の一部が押圧されることにより含浸された洗浄液が払拭部材41の外部に排出されること(絞り出されること)が可能に構成されている。
【0048】
具体的には、本実施の形態に係る払拭部材41は、柔軟性を有するスポンジ状の多孔質材料からなり、中空の丸棒形状を有する支持軸41aに取り付けられている。支持軸41aの中心軸に直交する断面において、払拭部材41は支持軸41aの外周面を取り囲む。この状態で、払拭部材41は、支持軸41aの中心軸から概ね一定距離離間した略円筒形状の外周面を有する。
【0049】
払拭部材41に用いることができる多孔質材料としては、連続気泡により構成された複数の細孔を有するポリウレタンまたはポリオレフィン等の高分子化合物が挙げられる。支持軸41aに用いることができる材料としては、高い剛性を有するとともに耐腐食性を有するステンレス等が挙げられる。
【0050】
なお、払拭部材41は、支持軸41aに対して着脱可能に構成されてもよい。また、支持軸41aは、中空の丸棒形状に代えて、無垢な丸棒形状を有してもよいし、角棒形状を有してもよい。
【0051】
支持軸41aの両端部およびそれらの近傍部分は、支持軸41aに払拭部材41が取り付けられた状態で、払拭部材41の両端部から突出している。支持軸41aの両端部およびそれらの近傍部分は、貯留槽44に固定された軸支持部41b,41cにより、それぞれ回転可能に支持されている。回転駆動部43は、例えばモータを含み、ノズルクリーニング時に支持軸41aを回転させる。それにより払拭部材41が支持軸41aとともに回転する。
【0052】
液量調整部材42は、無垢の丸棒形状を有する支持軸42aに取り付けられている。支持軸42aの中心軸に直交する断面において、液量調整部材42は、支持軸42aの外周面を取り囲む。この状態で、液量調整部材42は、支持軸42aの中心軸から概ね一定距離離間した略円筒形状の外周面を有する。液量調整部材42の構成の詳細は後述する。なお、液量調整部材42は、支持軸42aに対して着脱可能に構成されてもよい。また、支持軸42aは、無垢の丸棒形状に代えて、中空の丸棒形状を有してもよいし、角棒形状を有してもよい。
【0053】
支持軸42aの両端部およびそれらの近傍部分は、支持軸42aに液量調整部材42が設けられた状態で、液量調整部材42の両端部から突出している。支持軸42aの両端部およびそれらの近傍部分は、貯留槽44に固定された軸支持部42b,42cにより、それぞれ回転可能に支持されている。
【0054】
2つの支持軸41a,42aは、支持軸41a,42a間の距離RLが、予め定められた基準長さで一定に保たれるように支持されている。基準長さは、払拭部材41の外周面の一部が液量調整部材42の外周面の一部で押圧されることにより払拭部材41の外周面の一部に所定深さのくぼみ(いわゆるニップ部)が形成されるように設定される。払拭部材41の外周面のうちニップ部を形成する部分は、本発明の被押圧面に相当する。また、液量調整部材42の外周面のうち、払拭部材41の外周面に接触する部分は、本発明の接触部分に相当する。
【0055】
貯留槽44は、上部が開放された箱形状を有する。具体的には、貯留槽44は、周壁部44wおよび底面部44bを有する。周壁部44wは、図3に示すように、平面視で払拭部材41および液量調整部材42を取り囲む矩形状に形成されている。また、底面部44bは、図4に示すように、周壁部44wの下端を塞ぐように形成されている。
【0056】
支持軸41aは、払拭部材41のうち下端部を含む一部分が貯留槽44の内部に位置しかつ第2の方向D2に平行となるように、軸支持部41b,41cにより支持されている。一方、支持軸42aは、液量調整部材42の全体が貯留槽44よりも上方に位置しかつ第2の方向D2に平行となるように、軸支持部42b,42cにより支持されている。なお、支持軸42aは、液量調整部材42の一部が貯留槽44に貯留された洗浄液に浸漬するように設けられてもよい。
【0057】
貯留槽44においては、周壁部44wに液導入部44iが設けられ、底面部44bに液排出部44dが設けられている。液導入部44iには、洗浄液供給系91が接続される。液排出部44dには、排液系92が接続される。洗浄液供給系91および排液系92の各々には、配管、ポンプ、バルブまたはレギュレータ等の流体関連機器が含まれる。
【0058】
洗浄液供給系91および排液系92は、貯留槽44内に払拭部材41の一部が浸漬する程度の一定量の洗浄液が貯留されるようにかつ新たな洗浄液で貯留槽44に貯留された古い洗浄液の少なくとも一部が置換されるように制御される。それにより、貯留槽44においては、払拭部材41の一部が常に清浄な洗浄液に浸漬される。
【0059】
払拭部材41は多孔質材料で構成されるので、払拭部材41のうち洗浄液に浸漬された部分には、清浄な洗浄液が含浸される。本実施の形態では、洗浄液として純水が用いられる。なお、洗浄液としては、純水の他、染料または顔料が除かれたインク液を用いることができる。あるいは、洗浄液としては、純水またはインク液に、界面活性剤、防腐剤または消泡剤が添加されたものを用いることもできる。
【0060】
図1のクリーニングユニット移動部49は、ノズルクリーニングが開始されると、待機位置にあるクリーニングユニット40を対象となるヘッドユニット31の側方の位置まで移動させる。その後、クリーニングユニット移動部49は、払拭部材41の上端部がヘッドユニット31のノズル面に順次接触するように、クリーニングユニット40を移動させる。図4の例では、クリーニングユニット40は、太い実線の矢印a3で示すように、第1の方向D1に移動される。このとき、回転駆動部43は、図4に太い実線の矢印a4で示すように、洗浄液に浸漬された払拭部材41の部分が液量調整部材42により押圧されつつノズル面に近づくように支持軸41aを回転させる。
【0061】
払拭部材41のうち液量調整部材42により押圧される部分では、図4に太い点線の矢印で示すように、貯留槽44内で含浸された洗浄液の一部が、払拭部材41の外部に排出される(絞り出される)。それにより、払拭部材41の外周面のうち、当該払拭部材41の回転方向における液量調整部材42よりも下流でかつヘッドユニット31のノズル面よりも上流の部分では、洗浄液の含浸量がノズル面の洗浄に適した量に調整される。
【0062】
払拭部材41の回転時には、その回転に応じて液量調整部材42も回転する。具体的には、液量調整部材42は、液量調整部材42の外周面のうち払拭部材41に接触する部分が、払拭部材41の外周面の進行方向に向かって移動するように回転する。それにより、液量調整部材42と払拭部材41との間に大きな摩擦が生じることが防止されるので、払拭部材41の長寿命化が実現される。また、液量調整部材42と払拭部材41との接触に起因する汚染物質の発生が低減される。
【0063】
クリーニングユニット移動部49は、払拭部材41がヘッドユニット31のノズル面全体に接触した後、払拭部材41をノズル面から離間させつつクリーニングユニット40を待機位置まで移動させる。それにより、ノズルクリーニングが終了する。
【0064】
クリーニングユニット40における上記の基準長さは、複数のヘッドユニット31のノズル面の形状、洗浄液の種類および払拭部材41の材料等を考慮して定められる。また、基準長さは、払拭部材41から排出されるべき洗浄液の量(絞り量)に対応するニップ部の深さndに応じて定められる。なお、クリーニングユニット40においては、基準長さを適宜変更することが可能となるように、例えば軸支持部42b,42cが、軸支持部41b,41cに対して第1の方向D1に移動可能に構成されてもよい。
【0065】
払拭部材41に含浸された洗浄液が液量調整部材42により払拭部材41の外部に排出される際には、ノズルクリーニング時に払拭部材41の表面に付着した汚染物質が、払拭部材41の表面から剥離され、洗浄液とともに払拭部材41の外部に排出される。また、払拭部材41の内部に進入して残留した汚染物質が、洗浄液とともに払拭部材41の外部に排出される。排出された洗浄液は貯留槽44により受け止められ、排出される。それにより、払拭部材41の外周面のうち、当該払拭部材41の回転方向における液量調整部材42よりも下流でかつヘッドユニット31のノズル面よりも上流の部分は、清浄度が高い状態で維持される。
【0066】
このように、ノズルクリーニング時には、高い清浄度を有しかつ適切な量の洗浄液が含浸された払拭部材41により各ヘッドユニット31のノズル面が洗浄される。したがって、定期的にノズルクリーニングを行うことにより、長期に渡って、記録媒体mに形成される画像の画質劣化を低減することが可能になる。
【0067】
ところで、本実施の形態に係る液量調整部材42は、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部を、払拭部材41の外部に円滑に排出させるための構成を有する。以下、液量調整部材42の具体的な構成例について説明する。
【0068】
[3]液量調整部材42の具体的な構成例
(1)第1の構成例
図5および図6は、液量調整部材42の第1の構成例を説明するための図である。図5に、第1の構成例に係る液量調整部材42と払拭部材41との外観斜視図が示される。図6に、図5の液量調整部材42および払拭部材41を支持軸42aに直交する鉛直面で切断した拡大断面図が示される。
【0069】
第1の構成例に係る液量調整部材42は、多孔質材料として、スチールウールにより構成される。具体的には、第1の構成例に係る液量調整部材42は、スチールウール製のシート状部材421で構成されたローラであり、図5に示すように、支持軸42aの外周面に巻き付けられている。ここで、スチールウールとは、繊維状に形成された鉄またはステンレスの集合体を所定形状に加工したものであり、外表面からその内部にかけて微細な空隙を有するものである。
【0070】
図6の吹き出し内に示すように、シート状部材421の外表面においては、多数の金属繊維sfの間に多数の微細な空隙cvが形成されている。このような構成により、シート状部材421の外周面のうち払拭部材41に接触する金属繊維sfの部分は、ノズルクリーニング時に払拭部材41の外周面の一部を押圧する。それにより、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部が、払拭部材41内に残留する汚染物質とともに払拭部材41の外部に絞り出される。
【0071】
このとき、シート状部材421の多数の空隙cvは、図6に太い点線の矢印で示すように、払拭部材41から絞り出される洗浄液および払拭部材41内の汚染物質を、多数の金属繊維sfの間を通して払拭部材41の外部に円滑に導く。これにより、第1の構成例に係る液量調整部材42によれば、簡単な構成で、払拭部材41から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0072】
なお、支持軸42aは、図3の軸支持部42b,42cにより支持軸42aの中心軸を基準として回転可能に支持されている。したがって、払拭部材41が回転する際には、その回転に応じてシート状部材421も回転させることができる。それにより、シート状部材421と払拭部材41との間に大きな摩擦が生じることが防止されるので、払拭部材41の長寿命化が実現される。
【0073】
(2)第2の構成例
図7および図8は、液量調整部材42の第2の構成例を説明するための図である。図7に、第2の構成例に係る液量調整部材42と払拭部材41との外観斜視図が示される。図8に、図7の液量調整部材42および払拭部材41を支持軸41a,42aの中心軸を含む水平面で切断した断面図が示される。
【0074】
第2の構成例に係る液量調整部材42は、図7に示すように、複数の円柱状部材422を含むローラである。複数の円柱状部材422は、扁平な円柱形状を有し、各円柱状部材422の中心が支持軸42aの中心軸上に位置するように、かつ複数の円柱状部材422が等間隔で並ぶように、支持軸42aに取り付けられている。複数の円柱状部材422のうち互いに隣り合う各2つの円柱状部材422の間には、隙間gaが形成されている。複数の円柱状部材422の外周面のうち払拭部材41に接触する部分は、ノズルクリーニング時に払拭部材41の外周面の一部を押圧する。それにより、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部が、払拭部材41内に残留する汚染物質とともに払拭部材41の外部に絞り出される。
【0075】
このとき、隣り合う各2つの円柱状部材422の間に形成される隙間gaは、図8に太い点線の矢印で示すように、払拭部材41から絞り出される洗浄液および払拭部材41内の汚染物質を、複数の円柱状部材422間の隙間gaを通して払拭部材41の外部に円滑に排出させる。このように、第2の構成例に係る液量調整部材42によれば、簡単な構成で、払拭部材41から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0076】
なお、本例においても、支持軸42aは、図3の軸支持部42b,42cにより支持軸42aの中心軸を基準として回転可能に支持されている。したがって、第1の構成例に係る液量調整部材42と同様に、払拭部材41が回転する際には、その回転に応じて複数の円柱状部材422も回転させることができる。それにより、円柱状部材422と払拭部材41との間に大きな摩擦が生じることが防止されるので、払拭部材41の長寿命化が実現される。
【0077】
また、第2の構成例においては、円柱状部材422の厚みは、円柱状部材422の直径に比べて小さく設定されてもよい。複数の円柱状部材422の厚みは、円柱状部材422の直径の1/2以下に設定されてもよい。さらに、円柱状部材422は、厚みがより小さく設定されることにより、円板形状を有してもよい。
【0078】
第2の構成例においては、複数の円柱状部材422に代えて、楕円柱形状または多角柱形状(4角柱形状または6角柱形状等)を有する複数の部材が、液量調整部材42として支持軸42aに取り付けられてもよい。
【0079】
(3)第3の構成例
図9および図10は、液量調整部材42の第3の構成例を説明するための図である。図9に、第3の構成例に係る液量調整部材42と払拭部材41との外観斜視図が示される。図10に、図9の液量調整部材42および払拭部材41を支持軸42aに直交する鉛直面で切断した拡大断面図が示される。
【0080】
第3の構成例に係る液量調整部材42は、図9に示すように、複数の周辺部材423を含むローラである。複数の周辺部材423は、支持軸42aの外周面を取り囲むように設けられている。具体的には、複数の周辺部材423は、支持軸42aの一端部近傍から他端部近傍にかけて支持軸42aに平行に延びるように、支持軸42aの外周面の周方向における複数の部分にそれぞれ取り付けられている。
【0081】
複数の周辺部材423のうち支持軸42aの周方向において互いに隣り合う各2つの周辺部材423の間には、隙間gaが形成されている。払拭部材41の外周面には、複数の周辺部材423のうち2以上の周辺部材423が接触している。払拭部材41に接触する複数の周辺部材423と払拭部材41との間には、それらの複数の周辺部材423の間に形成された隙間gaにより、図10に示すように、支持軸42aの方向に延びる液体の流路fpが形成される。
【0082】
複数の周辺部材423のうち払拭部材41に接触する部分は、ノズルクリーニング時に払拭部材41の外周面の一部を押圧する。それにより、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部が、払拭部材41内に残留する汚染物質とともに払拭部材41の外部に絞り出される。
【0083】
図8に太い点線の矢印で示すように、払拭部材41から絞り出される洗浄液および払拭部材41内の汚染物質は、複数の流路fpを通して支持軸42aの両端部に導かれ、排出される。このように、第3の構成例に係る液量調整部材42によれば、簡単な構成で、払拭部材41から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0084】
なお、本例においても、支持軸42aは、図3の軸支持部42b,42cにより支持軸42aの中心軸を基準として回転可能に支持されている。したがって、第1の構成例に係る液量調整部材42と同様に、払拭部材41が回転する際には、その回転に応じて複数の周辺部材423も回転させることができる。それにより、複数の周辺部材423と払拭部材41との間に大きな摩擦が生じることが防止されるので、払拭部材41の長寿命化が実現される。
【0085】
(4)第4の構成例
図11および図12は、液量調整部材42の第4の構成例を説明するための図である。図11に、第4の構成例に係る液量調整部材42と払拭部材41との外観斜視図が示される。図12に、図11の液量調整部材42および払拭部材41を支持軸42aに直交する鉛直面で切断した拡大断面図が示される。
【0086】
第4の構成例に係る液量調整部材42は、図11に示すように、支持軸42aの両端部およびそれらの近傍を除く部分に、ローラとして金網製の筒部材425が取り付けられた構成を有する。
【0087】
図12の吹き出し内に示すように、筒部材425の外表面には、金属製の多数の線状部材swが編み込まれることにより、複数の網目meが形成されている。このような構成により、筒部材425の外周面のうち払拭部材41に接触する線状部材swの部分は、ノズルクリーニング時に払拭部材41の外周面の一部を押圧する。それにより、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部が、払拭部材41内に残留する汚染物質とともに払拭部材41の外部に絞り出される。
【0088】
このとき、筒部材425の多数の網目meは、図12に太い点線の矢印で示すように、払拭部材41から絞り出される洗浄液および払拭部材41内の汚染物質を筒部材425の内部に円滑に導く。筒部材425の内部に導かれた洗浄液は、筒部材425の下端部に位置する複数の網目meから図4の貯留槽44にさらに導かれる。これにより、第4の構成例に係る液量調整部材42によれば、簡単な構成で、払拭部材41から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0089】
なお、本例においても、支持軸42aは、図3の軸支持部42b,42cにより支持軸42aの中心軸を基準として回転可能に支持されている。したがって、第1の構成例に係る液量調整部材42と同様に、払拭部材41が回転する際には、その回転に応じて筒部材425も回転させることができる。それにより、筒部材425と払拭部材41との間に大きな摩擦が生じることが防止されるので、払拭部材41の長寿命化が実現される。
【0090】
(5)第5の構成例
図13および図14は、液量調整部材42の第5の構成例を説明するための図である。図13に、第5の構成例に係る液量調整部材42と払拭部材41との外観斜視図が示される。図14に、図13の液量調整部材42および払拭部材41の平面図が示される。
【0091】
第5の構成例に係る液量調整部材42は、図13に示すように、支持軸42aの両端部およびそれらの近傍を除く部分に、ローラとしてらせん状に加工された金属製の線状部材426が取り付けられた構成を有する。線状部材426は、支持軸42aの一端部近傍から他端部近傍にかけて、支持軸42aの中心軸を基準としてらせん状に延びるように、設けられている。
【0092】
線状部材426のらせんピッチは、略一定である。また、支持軸42aの方向に見た線状部材426の直径は、線状部材426の複数の部分において略一定である。線状部材426のうち払拭部材41に接触する部分は、ノズルクリーニング時に払拭部材41の外周面の一部を押圧する。それにより、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部が、払拭部材41内に残留する汚染物質とともに払拭部材41の外部に絞り出される。
【0093】
このとき、線状部材426のうち払拭部材41に接触する複数の部分の間に形成される隙間gaは、図14に太い点線の矢印で示すように、払拭部材41から絞り出される洗浄液および払拭部材41内の汚染物質を払拭部材41の外部に円滑に排出させる。このように、第5の構成例に係る液量調整部材42によれば、簡単な構成で、払拭部材41から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0094】
なお、本例においても、支持軸42aは、図3の軸支持部42b,42cにより支持軸42aの中心軸を基準として回転可能に支持されている。したがって、第1の構成例に係る液量調整部材42と同様に、払拭部材41が回転する際には、その回転に応じて線状部材426も回転させることができる。それにより、線状部材426と払拭部材41との間に大きな摩擦が生じることが防止されるので、払拭部材41の長寿命化が実現される。
【0095】
(6)第6の構成例
図15および図16は、液量調整部材42の第6の構成例を説明するための図である。図15に、第6の構成例に係る液量調整部材42と払拭部材41との外観斜視図が示される。図16に、図15の液量調整部材42および払拭部材41を支持軸42aに直交する鉛直面で切断した拡大断面図が示される。
【0096】
第6の構成例に係る液量調整部材42は、図15に示すように、支持軸42aの両端部およびそれらの近傍を除く部分に、板金製の筒部材424が取り付けられた構成を有する。筒部材424の両端部は閉塞されている。筒部材424は、その中心軸が支持軸42aの中心軸に一致するように、支持軸42aに取り付けられたローラである。また、筒部材424の外周面には、多数の貫通孔hがその外周面の全体に渡って分散するように形成されている。複数の貫通孔hは、筒部材424の内部空間と筒部材424の外部空間とを連通する。
【0097】
筒部材424の外周面のうち払拭部材41に接触する部分は、ノズルクリーニング時に払拭部材41の外周面の一部を押圧する。それにより、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部が、払拭部材41内に残留する汚染物質とともに払拭部材41の外部に絞り出される。
【0098】
このとき、筒部材424の多数の貫通孔hは、図16に太い点線の矢印で示すように、払拭部材41から絞り出される洗浄液および払拭部材41内の汚染物質を筒部材424の内部に円滑に導く。筒部材424の内部に導かれた洗浄液は、筒部材424の下端部に位置する複数の貫通孔hから図4の貯留槽44にさらに導かれる。これにより、第6の構成例に係る液量調整部材42によれば、簡単な構成で、払拭部材41から洗浄液および汚染物質を円滑に排出させることができる。
【0099】
なお、本例においても、支持軸42aは、図3の軸支持部42b,42cにより支持軸42aの中心軸を基準として回転可能に支持されている。したがって、第1の構成例に係る液量調整部材42と同様に、払拭部材41が回転する際には、その回転に応じて筒部材424も回転させることができる。それにより、筒部材424と払拭部材41との間に大きな摩擦が生じることが防止されるので、払拭部材41の長寿命化が実現される。
【0100】
[4]実施の形態の効果
(1)本実施の形態に係るインクジェット画像形成装置1においては、インク供給装置3に設けられる複数のヘッドユニット31のノズル面が、複数のクリーニングユニット40によりそれぞれ洗浄される(ノズルクリーニング)。
【0101】
クリーニングユニット40においては、払拭部材41の一部が貯留槽44内の洗浄液に浸漬されることにより、払拭部材41に洗浄液が含浸される。ノズルクリーニング時に、支持軸41aが回転されることにより、払拭部材41における洗浄液が含浸された部分が液量調整部材42により押圧される。
【0102】
ここで、払拭部材41において液量調整部材42により押圧される面を被押圧面と呼ぶ。この場合、液量調整部材42による払拭部材41の押圧時には、払拭部材41の被押圧面における分散された複数の部分に、第1~第6の構成例に係る液量調整部材42の複数の部分が接触する。それにより、押圧された払拭部材41の部分に含浸された洗浄液は、液量調整部材42のうち払拭部材41に接触する複数の部分の間を通して払拭部材41の外部に直接的に排出される。
【0103】
それにより、払拭部材41の内部から外部にかけて洗浄液の強力な流れが発生する。この洗浄液の流れは、払拭部材41の内部に存在する汚染物資を払拭部材41の内部から円滑に排出させるとともに、払拭部材41の表面に付着する汚染物質をその表面から剥離する。さらに、上記の洗浄液の流れは、払拭部材から排出または剥離された汚染物質が払拭部材に再付着することを抑制する。その結果、払拭部材41の清浄度を高く維持することが可能になる。
【0104】
また、上記の構成によれば、液量調整部材42による払拭部材41の押圧時に、払拭部材41から排出されるべき洗浄液が払拭部材41の内部で滞留することが防止される。それにより、払拭部材41における洗浄液の含浸量がノズルクリーニングに適した量に調整されるので、洗浄液が含浸された払拭部材41で、ノズル面を適切に払拭することができる。
【0105】
(2)上記の第1~第6の構成例に係る液量調整部材42は、払拭部材41の外周面を押圧する状態で、払拭部材41における被押圧部が当該払拭部材41の上端部よりも下方に位置するように設けられている。
【0106】
払拭部材41の一部が押圧されることにより被押圧部から排出される洗浄液および汚染物質は、重力により下方に落下する。上記の構成によれば、被押圧面が払拭部材41の上端部よりも下方に位置するので、払拭部材41の内部から外部に排出された洗浄液および汚染物質が、払拭部材41の上端部に再付着することが防止される。したがって、払拭部材41の上端部に払拭部材41から排出された汚染物質が再付着することによる払拭部材41の再汚染が防止される。
【0107】
[5]ノズルクリーニング試験
(1)ノズルクリーニング試験の方法
クリーニングユニット40においては、支持軸42aを払拭部材41の外周面の一部に押し付けることによっても、払拭部材41における洗浄液の含浸量を調整することが可能であると考えられる。しかしながら、支持軸42aによる払拭部材41の押圧時には、払拭部材41の外周面と支持軸42aとの接触部(ニップ部)で、支持軸42aの外周面により洗浄液の流通が阻止される。支持軸42aの外周面には、上記の第1~第6の構成例に係る液量調整部材42が有する空隙cv、隙間ga、網目meおよび貫通孔h等の洗浄液の通路が形成されていない。
【0108】
そのため、押圧により払拭部材41の外部に排出されるべき払拭部材41内の洗浄液は、払拭部材41の内部でニップ部を迂回するように長距離に渡って流動する。この場合、流動する洗浄液の大部分は払拭部材41の外部に排出されるが、流動する洗浄液の一部は払拭部材41の内部に残留する可能性が高い。そのため、支持軸42aを払拭部材41の外周面の一部に押し付ける方法では、払拭部材41の内部から外部に向かう洗浄液の強力な流れを発生させることができず、払拭部材41の内部または表面に汚染物質が残留する可能性がある。この場合、払拭部材41のクリーニング性能が低下する。また、支持軸42aを払拭部材41の外周面の一部に押し付ける方法では、払拭部材41における洗浄液の含浸量を正確に調整することが難しい。
【0109】
本発明者らは、上記の第1~第5の構成例に係る液量調整部材42の各々について、当該液量調整部材42により洗浄液の含浸量が調整された払拭部材41のクリーニング性能を確認しかつ払拭部材41における洗浄液の含浸量が正確に調整されるか否かを確認するために、以下に説明するノズルクリーニング試験を行った。
【0110】
まず、本発明者らは、第1、第2、第3、第4および第5の構成例の液量調整部材42をそれぞれ備えるクリーニングユニット40を、第1、第2、第3、第4および第5の実施例のクリーニングユニット40として作製した。
【0111】
第1の実施例に係る液量調整部材42は、第1の構成例に対応するスチールウール製のシート状部材421(図5および図6)を含む。シート状部材421は、2mmの厚みを有し、5mmの直径を有するステンレス製の支持軸42aに取り付けられている。そのスチールウールにおける金属繊維sfの直径は300μmであり、そのスチールウールにおける空隙率は60%である。
【0112】
第2の実施例に係る液量調整部材42は、第2の構成例に対応する複数の円柱状部材422(図7および図8)を含む。複数の円柱状部材422の各々は、10mmの直径を有しかつ5mmの厚み(高さ)を有する。複数の円柱状部材422は、2mmの間隔で、5mmの直径を有するステンレス製の支持軸42aに取り付けられている。
【0113】
第3の実施例に係る液量調整部材42は、第3の構成例に対応する複数の周辺部材423(図9および図10)を含む。複数の周辺部材423の各々は、長板形状を有し、厚みは3mmである。複数の周辺部材423は、支持軸42aの方向に延びるとともに、当該支持軸42aの外周面を取り囲むように支持軸42aに取り付けられている。本例の支持軸42aは、ステンレスにより構成され、6mmの直径を有する。
【0114】
第4の実施例に係る液量調整部材42は、第4の構成例に対応する金網製の筒部材425(図11および図12)を含む。筒部材425は、5mmの直径を有するステンレス製の支持軸42aに取り付けられている。筒部材425の外周面における網目meの開口率は80%であり、各網目meの最大開口径は、1.5mmである。
【0115】
第5の実施例に係る液量調整部材42は、第5の構成例に対応する金属製の線状部材426(図13および図14)を含む。線状部材426は、5mmの直径を有するステンレス製の支持軸42aに取り付けられている。線状部材426のらせんピッチは1.5mmで略一定であり、支持軸42aの方向に見た線状部材426の直径は12mmで略一定である。
【0116】
また、本発明者らは、液量調整部材42を有さないクリーニングユニット40を、比較例のクリーニングユニット40として作製した。比較例のクリーニングユニット40においては、払拭部材41が支持軸42aの外周面により押圧される。比較例のクリーニングユニット40に設けられる支持軸42aとしては、12mmの外径を有するステンレス製の中空管を用いた。
【0117】
なお、第1~第5の実施例および比較例のクリーニングユニット40の各々において、払拭部材41は、ポリウレタンにより形成され、支持軸41aに取り付けられた状態で払拭部材41の直径(外径)は約40mmである。
【0118】
さらに、本発明者らは、作製された第1~第5の実施例および比較例に係るクリーニングユニット40を図1のクリーニング装置4に順次取り付け、クリーニングユニット40毎にノズルクリーニングを30回行った。具体的には、本発明者らは、第1~第5の実施例および比較例のクリーニングユニット40の各々について、複数のインクヘッドihから所定量のインクが吐出された後のヘッドユニット31の洗浄(ノズルクリーニング)を30回繰り返した。また、本発明者らは、各クリーニングユニット40について、ノズルクリーニングが10回繰り返されるごとに、払拭部材41のクリーニング性能を評価した。また、本発明者らは、払拭部材41における洗浄液の含浸量の調整性能としてノズルクリーニングの前後における払拭部材41の外径の変化量を測定した。
【0119】
(2)試験結果
第1および第4の実施例のクリーニングユニット40に関しては、ノズルクリーニングが10回繰り返された場合、ノズルクリーニングが20回繰り返された場合およびノズルクリーニングが30回繰り返された場合のいずれにおいても、最後に洗浄されたヘッドユニット31のノズル面には、インクの拭き残しが存在せず、洗浄液の液滴が付着していなかった。このことは、ノズルクリーニングが30回繰り返される場合でも、ノズル面の洗浄が適切に行われかつ洗浄後のノズル面が汚染されにくい状態にされたこと、すなわちクリーニング性能が極めて高いことを意味する。
【0120】
また、第1および第4の実施例のクリーニングユニット40に関しては、ノズルクリーニングが10回繰り返された場合、ノズルクリーニングが20回繰り返された場合およびノズルクリーニングが30回繰り返された場合のいずれにおいても、最後に行われたノズルクリーニングの前後における払拭部材41の外径の変化量は、0.5mm未満であった。このことは、ノズルクリーニングが30回繰り返される場合でも、払拭部材41に含浸された洗浄液の量が十分適切に調整されたこと、すなわち払拭部材41における洗浄液の含浸量の調整が極めて正確であることを意味する。
【0121】
第2、第3および第5の実施例のクリーニングユニット40に関しては、ノズルクリーニングが10回繰り返された場合およびノズルクリーニングが20回繰り返された場合のいずれにおいても、最後に洗浄されたヘッドユニット31のノズル面には、インクの拭き残しが存在せず、洗浄液の液滴が付着していなかった。一方、ノズルクリーニングが30回繰り返された場合、最後に洗浄されたヘッドユニット31のノズル面には、インクの拭き残しが存在しなかったが、洗浄液の液滴が付着していた。これらのことは、ノズルクリーニングが30回繰り返される場合でも、ノズル面の洗浄が適切に行われたこと、すなわちクリーニング性能が高いことを意味する。
【0122】
また、第2、第3および第5の実施例のクリーニングユニット40に関しては、ノズルクリーニングが10回繰り返された場合およびノズルクリーニングが20回繰り返された場合のいずれにおいても、最後に行われたノズルクリーニングの前後における払拭部材41の外径の変化量は、0.5mm未満であった。一方、ノズルクリーニングが30回繰り返された場合、最後に行われたノズルクリーニングの前後における払拭部材41の外径の変化量は、0.5mm以上1.0mm未満であった。これらのことは、ノズルクリーニングが30回繰り返される場合でも、払拭部材41に含浸された洗浄液の量が比較的適切に調整されたこと、すなわち払拭部材41における洗浄液の含浸量の調整が正確であることを意味する。
【0123】
比較例のクリーニングユニット40に関しては、ノズルクリーニングが10回繰り返された場合、ノズルクリーニングが20回繰り返された場合およびノズルクリーニングが30回繰り返された場合のいずれにおいても、最後に洗浄されたヘッドユニット31のノズル面には、インクの拭き残しが存在し、洗浄液の液滴が付着していた。このことは、ノズルクリーニングが10回以上繰り返される場合に、ノズル面の洗浄が適切に行われないこと、すなわちクリーニング性能が低いことを意味する。
【0124】
また、比較例のクリーニングユニット40に関しては、ノズルクリーニングが10回繰り返された場合、ノズルクリーニングが20回繰り返された場合およびノズルクリーニングが30回繰り返された場合のいずれにおいても、最後に行われたノズルクリーニングの前後における払拭部材41の外径の変化量は、1.0mm以上であった。このことは、ノズルクリーニングが10回繰り返される場合に、払拭部材41に含浸された洗浄液の量が適切に調整されないこと、すなわち払拭部材41における洗浄液の含浸量の調整が正確でないことを意味する。
【0125】
ノズルクリーニング試験について、以上の試験結果を下記「表1」に示す。下記表1においては、クリーニング性能に関して、「ヘッドユニット31のノズル面に、インクの拭き残しが存在せず、洗浄液の液滴が付着していなかったこと」が〇印で示される。また、「ヘッドユニット31のノズル面に、インクの拭き残しが存在せず、洗浄液の液滴が付着していたこと」が△印で示される。さらに、「ヘッドユニット31のノズル面に、インクの拭き残しが存在し、洗浄液の液滴が付着していたこと」が×印で示される。
【0126】
さらに、下記表1においては、払拭部材41に含浸された洗浄液の量の調整性能に関して、「最後に行われたノズルクリーニングの前後における払拭部材41の外径の変化量が0.5mm未満であったこと」が〇印で示される。また、「最後に行われたノズルクリーニングの前後における払拭部材41の外径の変化量が0.5mm以上1.0mm未満であったこと」が△印で示される。さらに、「最後に行われたノズルクリーニングの前後における払拭部材41の外径の変化量が1.0mm以上であったこと」が×印で示される。
【0127】
【表1】
上記の結果によれば、第1~第5の構成例の液量調整部材42によれば、長期に渡って、ヘッドユニット31の高いクリーニング性能が得られるとともに払拭部材41の洗浄液の含浸量を正確に調整できることがわかる。
【0128】
[6]他の実施の形態
(1)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、払拭部材41は、支持軸41aに巻き付けられることにより、ノズル面を洗浄するローラとして構成されるが、本発明はこれに限定されない。クリーニングユニット40においては、払拭部材41は、ローラ以外の構成を有してもよい。
【0129】
図17は、他の実施の形態に係るクリーニングユニット40の断面図である。図17の断面図は、図4の断面図に対応する。以下、図17のクリーニングユニット40について、図3および図4のクリーニングユニット40と異なる点を説明する。
【0130】
図17に示すように、本例のクリーニングユニット40においては、矩形の断面形状を有する回転台座48が、支持軸41aに固定されている。回転台座48は、支持軸41aの方向に一定距離延びるように形成されている。回転台座48のうち支持軸41aから最も離間した一面に、矩形の断面形状を有する払拭部材47が取り付けられている。払拭部材47は、上記の払拭部材41と同様に、柔軟性を有するスポンジ状の多孔質材料からなる。
【0131】
このクリーニングユニット40においては、支持軸41aが回転することにより、回転台座48が支持軸41aとともに回転する。それにより、払拭部材47が、第1の方向D1に平行な鉛直面内で、支持軸41aを中心とする円を描くように移動する。そのため、図17に点線で示すように、払拭部材47が最も下方に位置する場合には、払拭部材47が貯留槽44内の洗浄液に浸漬される。それにより、払拭部材47の全体に渡って洗浄液が含浸される。一方、払拭部材47が液量調整部材42と同じ高さに位置する場合には、払拭部材47の一面が液量調整部材42により押圧される。それにより、払拭部材47における洗浄液の含浸量が調整される。他方、払拭部材47が最も上方に位置する場合には、払拭部材47の上端部がヘッドユニット31のノズル面に接触する。それにより、ノズル面の洗浄が可能になる。
【0132】
図17のクリーニングユニット40においては、ノズルクリーニングの開始時に、回転駆動部43(図3)が、支持軸41aを回転させることにより払拭部材47を最も下方の位置まで移動させる。次に、回転駆動部43は、図17に太い実線の矢印a5で示すように、洗浄液に浸漬された払拭部材47が液量調整部材42により押圧されつつ最も上方の位置まで移動するように支持軸41aを回転させる。
【0133】
その後、クリーニングユニット移動部49(図1)は、上記実施の形態と同様に、待機位置にあるクリーニングユニット40を対象となるヘッドユニット31の側方の位置まで移動させる。また、クリーニングユニット移動部49は、図17に太い実線の矢印a6で示すように、払拭部材47がヘッドユニット31のノズル面に順次接触するように、クリーニングユニット40を移動させる。
【0134】
クリーニングユニット移動部49は、払拭部材47がヘッドユニット31のノズル面全体に接触した後、払拭部材47をノズル面から離間させつつクリーニングユニット40を待機位置まで移動させる。それにより、ノズルクリーニングが終了する。
【0135】
なお、クリーニングユニット移動部49は、ヘッドユニット31に対してクリーニングユニット40を一方向に移動させる場合に限らず、ヘッドユニット31に対してクリーニングユニット40を逆方向に移動させる場合にも払拭部材47をノズル面に接触させてもよい。
【0136】
(2)上記実施の形態に係るクリーニング装置4においては、クリーニングユニット移動部49は、クリーニングユニット40を一方向(第1の方向D1)に移動させることにより払拭部材41がヘッドユニット31のノズル面全体に接触した後、払拭部材41をノズル面から離間させつつクリーニングユニット40を待機位置まで移動させるが、本発明はこれに限定されない。
【0137】
クリーニングユニット移動部49は、クリーニングユニット40を一方向に移動させる場合に限らず、クリーニングユニット40を待機位置まで移動させる場合にも、払拭部材41をノズル面に接触させてもよい。
【0138】
(3)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、支持軸42aは軸支持部42b,42cによりそれぞれ回転可能に支持されているが、本発明はこれに限定されない。支持軸42aは、軸支持部42b,42cにより回転不可能に支持されていてもよい。
【0139】
(4)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、液量調整部材42は支持軸42aの外周面を取り囲むように円筒形状を有するが、本発明はこれに限定されない。液量調整部材42は、払拭部材41の外周面における一定領域のうち分散配置された複数の部分に接触する複数の接触部と、それらの複数の接触部の間に位置する複数の液排出用の開口とを有すればよい。したがって、液量調整部材42は、例えば平坦な金網形状を有してもよいし、平坦な櫛形状を有してもよい。
【0140】
(5)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、液量調整部材42は払拭部材41の外周面のうち上下方向における中央部分を押圧するが、本発明はこれに限定されない。液量調整部材42は、払拭部材41の外周面のうち上端部を押圧するように設けられてもよい。
【0141】
(6)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、ノズルクリーニング時に、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部が、主として液量調整部材42の内部に形成された隙間または細孔等の空間を通して排出される。ここで、払拭部材41には、当該払拭部材41を構成する多孔質材料の細孔よりも大きい開口断面を有しかつ払拭部材41に含浸された洗浄液を払拭部材41の外部に導く流路が形成されてもよい。
【0142】
この場合、ノズルクリーニング時には、払拭部材41に含浸された洗浄液の一部が、液量調整部材42の内部に形成される空間とともに、払拭部材41内に形成された流路を通して払拭部材41から排出される。それにより、液量調整部材42による払拭部材41の押圧時に、払拭部材41に含浸された洗浄液がより円滑に払拭部材41の外部に排出される。したがって、払拭部材41が清浄に保たれる。
【0143】
(7)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、ノズルクリーニング時に、払拭部材41が回転し、払拭部材41における洗浄液の含浸量が調整されるが、本発明はこれに限定されない。クリーニングユニット40においては、ノズルクリーニング時以外の時点(例えば待機時等)で、払拭部材41の回転、貯留槽44への洗浄液の供給および貯留槽44からの洗浄液の排出が行われてもよい。これにより、払拭部材41の清浄度をより高い状態で維持することが可能になる。また、払拭部材41の乾燥を防止することができるので、払拭部材41が乾燥することによる汚染物質の発生が防止される。
【0144】
(8)上記実施の形態に係るクリーニングユニット40においては、図3および図4に記載された構成に加えて、払拭部材41のうち洗浄液に浸漬された部分を局部的に押圧する部材が設けられてもよい。例えば、図4に示される断面図において、払拭部材41の下端部のみを支持軸41aに向かって押圧する新たな押圧部材が貯留槽44の底部またはその近傍に設けられてもよい。この場合、貯留槽44に貯留された洗浄液中で、払拭部材41の内部と外部との間に洗浄液の流れが発生する。それにより、洗浄液に浸漬された状態で、払拭部材41の内部または表面に存在する汚染物質が除去されるので、払拭部材41の清浄度をさらに向上させることができる。
【0145】
[7]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、インクヘッドihがインクジェットヘッドの例であり、払拭部材41の外周面のうち液量調整部材42により押圧される部分が被押圧面の例であり、貯留槽44、洗浄液供給系91および排液系92が液充填部の例であり、液量調整部材42のうち払拭部材41を押圧する面または部分が押圧面の例であり、液量調整部材42、支持軸42aおよび軸支持部42b,42cが液調整部の例である。
【0146】
また、支持軸42aが支持部材および第2の回転軸の例であり、複数の円柱状部材422が複数の接触部材および複数の円柱状部材の例であり、支持軸41aが回転軸および第1の回転軸の例であり、スチールウール製のシート状部材421が多孔質体の例であり、シート状部材421が有する多数の空隙cvが複数の細孔の例である。
【0147】
また、複数の周辺部材423が複数の周辺部材の例であり、筒部材424のうち外周面の部分が板状部材の例であり、筒部材425が網状部材の例であり、線状部材426が線状部材の例である。
【0148】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【符号の説明】
【0149】
1…インクジェット画像形成装置,2…記録媒体搬送装置,3…インク供給装置,4…クリーニング装置,21…駆動ローラ,22…従動ローラ,23…張力制御ローラ,24…搬送ベルト,29…搬送駆動部,30…ヘッド部,31…ヘッドユニット,32…ヘッドキャリッジ,39…ヘッド移動部,40…クリーニングユニット,41…払拭部材,41a…支持軸,41b…軸支持部,41c…軸支持部,42…液量調整部材,42a…支持軸,42b…軸支持部,42c…軸支持部,43…回転駆動部,44…貯留槽,44b…底面部,44d…液排出部,44i…液導入部,44w…周壁部,47…払拭部材,48…回転台座,49…クリーニングユニット移動部,91…洗浄液供給系,92…排液系,421…シート状部材,422…円柱状部材,423…周辺部材,424…筒部材,425…筒部材,426…線状部材,cv…空隙,fp…流路,ga…隙間,h…貫通孔,ih…インクヘッド,m…記録媒体,me…網目,sf…金属繊維,sw…線状部材
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