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  • 特許-蓄電装置の取付構造 図1
  • 特許-蓄電装置の取付構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】蓄電装置の取付構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/242 20210101AFI20240319BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240319BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240319BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20240319BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20240319BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20240319BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240319BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20240319BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20240319BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20240319BHJP
【FI】
H01M50/242
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/6557
H01M10/6561
H01M10/6567
H01M50/204 401H
H01M50/262 E
H01M50/262 M
H01M50/262 S
H01M50/289
H01M10/625
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020128136
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025361
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-069870(JP,A)
【文献】特開平11-180164(JP,A)
【文献】特開2006-035940(JP,A)
【文献】特開2018-069872(JP,A)
【文献】特開2013-157181(JP,A)
【文献】特開2017-196959(JP,A)
【文献】特開2020-090208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 10/6557
H01M 10/6561
H01M 10/6567
H01M 10/613
B60K 1/04
H01M 10/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置が収容された筐体を車両の下部に取り付けた蓄電装置の取付構造であって、
前記筐体は、一面が開口する有底箱型の本体部と、前記本体部の前記一面を塞ぐ蓋部とを備え、
前記蓋部は、前記車両における左右一対のリブ部材間にわたって延在する前記車両のパネル部材によって構成され、
前記本体部は、前記パネル部材及び前記一対のリブ部材の下方において前記一対のリブ部材から垂下した状態で前記一対のリブ部材に対して固定されており、
前記蓄電装置は、前記筐体内において前記車両の高さ方向に積層された複数の蓄電モジュールを含み、
前記蓄電モジュールの積層体には、前記パネル部材と前記筐体における前記本体部の底面部とによって拘束荷重が付与されており、
前記本体部は、前記パネル部材と前記車両における別のパネル部材との間に配置されている蓄電装置の取付構造。
【請求項2】
前記車両の幅方向においては前記蓄電モジュールの積層体が一つ配置され、且つ前記蓄電モジュールの積層体は前記車両の幅方向の中心線と重なるように前記筐体内に配置されている請求項記載の蓄電装置の取付構造。
【請求項3】
前記蓄電モジュールの積層体と前記筐体の内面との間には、内容物の充填に応じて膨張可能なパッケージと、前記パッケージ内に充填された衝撃吸収材とによって構成されたダンパ部材が配置されている請求項1又は2記載の蓄電装置の取付構造。
【請求項4】
蓄電装置が収容された筐体を車両の下部に取り付けた蓄電装置の取付構造であって、
前記筐体は、一面が開口する有底箱型の本体部と、前記本体部の前記一面を塞ぐ蓋部とを備え、
前記蓋部は、前記車両における左右一対のリブ部材間にわたって延在する前記車両のパネル部材によって構成され、
前記本体部は、前記パネル部材及び前記一対のリブ部材の下方において前記一対のリブ部材から垂下した状態で前記一対のリブ部材に対して固定されており、
前記筐体内は、大気圧に対して減圧されている蓄電装置の取付構造。
【請求項5】
蓄電装置が収容された筐体を車両の下部に取り付けた蓄電装置の取付構造であって、
前記筐体は、一面が開口する有底箱型の本体部と、前記本体部の前記一面を塞ぐ蓋部とを備え、
前記蓋部は、前記車両における左右一対のリブ部材間にわたって延在する前記車両のパネル部材によって構成され、
前記本体部は、前記パネル部材及び前記一対のリブ部材の下方において前記一対のリブ部材から垂下した状態で前記一対のリブ部材に対して固定されており、
前記筐体における前記本体部は、面内方向にバネ性を有するシート状部材を介して前記リブ部材に対して固定されている蓄電装置の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電装置の取付構造として、例えば特許文献1に記載のバッテリ搭載構造がある。この従来のバッテリ搭載構造では、車両のフロアパネルの下側に複数のバッテリからなるバッテリユニットと、バッテリユニットに関する電気的接続を制御する接続制御機器とが配置されている。バッテリユニットは、スペースを挟んで配列されたバッテリ群を有し、接続制御装置は、スペースの内側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/098418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のバッテリ搭載構造では、車両のフロアパネル、サイドメンバ、及びクロスメンバで囲まれた収容凹部にバッテリユニットの搭載フレームが配置されている。このため、バッテリ搭載構造の適用先の車種が変わる場合には、収容凹部の形状がその都度変わることとなり、バッテリユニットの配列の変更や搭載フレームの設計変更などが必要となる。
【0005】
本開示は、車種によらずに蓄電装置を汎用的に取り付けることが可能な蓄電装置の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電装置の取付構造は、蓄電装置が収容された筐体を車両の下部に取り付けた蓄電装置の取付構造であって、筐体は、一面が開口する有底箱型の本体部と、本体部の一面を塞ぐ蓋部とを備え、蓋部は、車両における左右一対のリブ部材間にわたって延在する車両のパネル部材によって構成され、本体部は、パネル部材及び一対のリブ部材の下方において一対のリブ部材から垂下した状態で一対のリブ部材に対して固定されている。
【0007】
この蓄電装置の取付構造では、本体部は、パネル部材の下方において一対のリブ部材に対して固定されている。これにより、車両の低背化を図ることができる。また、本体部は、一対のリブ部材から垂下した状態で一対のリブ部材に対して固定されている。つまり、本体部は、一対のリブ部材間の空間には配置されていない。そのため、取り付け先の車両が変わる場合であって一対のリブ部材間の空間の形状がその都度変わる場合においても、本体部の設計を変更することなく、本体部を車両に取り付けることができる。したがって、この蓄電装置の取付構造によれば、車種によらずに蓄電装置を汎用的に取り付けることが可能となる。
【0008】
蓄電装置は、筐体内において車両の高さ方向に積層された複数の蓄電モジュールを含み、蓄電モジュールの積層体には、パネル部材と筐体における本体部の底面部とによって拘束荷重が付与されていてもよい。この場合、蓄電モジュールの積層体によって車両の剛性を向上できる。
【0009】
蓄電モジュールの積層体は、車両の幅方向に対して単体に配置され、且つ車両の幅方向の中心線と重なるように筐体内に配置されていてもよい。この場合、車両の高さ方向から見た場合の面積が相対的に大きい蓄電モジュールの積層体を用いることで、車両の剛性をより一層向上できる。
【0010】
蓄電モジュールの積層体と筐体の内面との間には、内容物の充填に応じて膨張可能なパッケージと、パッケージ内に充填された衝撃吸収材とによって構成されたダンパ部材が配置されていてもよい。この場合、蓄電モジュールの積層体の表面と筐体の内面との間にパッケージを萎ませた状態で配置した後に、パッケージ内に衝撃吸収材を充填し、パッケージを膨張させることによって、蓄電モジュールの積層体の表面と筐体の内面との間にダンパ部材を隙間なく配置できる。したがって、蓄電モジュールの積層体への振動又は車両側のうねりの影響をダンパ部材によって十分に緩和できる。
【0011】
底面部は、車両における別のパネル部材によって構成されていてもよい。この場合、車両における2つのパネル部材によって、蓄電モジュールの積層体に拘束荷重を付与することができ、蓄電モジュールの積層体によって車両の剛性を更に向上できる。
【0012】
筐体内は、大気圧に対して減圧されていてもよい。この場合、筐体の内圧と大気圧との差圧によって、蓄電装置が車両と離れることを抑制できる。これにより、筐体と地面との距離が小さくなることを抑制でき、車両の低背化を図ることができる。
【0013】
筐体における本体部は、面内方向にバネ性を有するシート状部材を介してリブ部材に対して固定されていてもよい。この場合、シート状部材が変形し易くなるため、蓄電装置に対するシート状部材の追従性、及びシート状部材による緩衝吸収性を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、車種によらずに蓄電装置を汎用的に取り付けることが可能な蓄電装置の取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】蓄電装置の取付構造の一実施形態を示す概略的な断面図である。
図2】蓄電モジュールの層構成を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る蓄電装置の取付構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、蓄電装置の取付構造の一実施形態を示す概略的な断面図である。図1に示す蓄電装置の取付構造(以下、単に「取付構造」という)2は、蓄電装置3が収容された筐体20を車両1の下部に取付けるための構造である。まず、車両1の構成について説明する。車両1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車又は電気自動車等である。図1に示すように、車両1は、一対のサイドメンバ(リブ部材)11と、フロアパネル(パネル部材)12と、ロアケース(別のパネル部材)13とを備えている。
【0018】
一対のサイドメンバ11は、車両1の骨格となるシャシの一部である。一対のサイドメンバ11は、車両1の車室Sに対して下方に設けられている。一対のサイドメンバ11は、車両1の幅方向(左右方向、X軸方向)において車両1における両サイドに設けられている。一対のサイドメンバ11は、車両1の前後方向(Y軸方向)に沿って延びている。
【0019】
フロアパネル12は、車両1のボディの一部である。フロアパネル12は、車両1の車室Sに対して下方に設けられている。フロアパネル12は、一対のサイドメンバ11に対して下方に設けられている。フロアパネル12は、水平方向(XY面)において広がっている板状部材である。フロアパネル12は、左右一対のサイドメンバ11間にわたって延在する部分を含んでいる。ロアケース13は、フロアパネル12とは別のパネル部材であって、車両1のボディの一部である。ロアケース13は、フロアパネル12に対して下方に設けられている。ロアケース13は、車両1の高さ方向(Z軸方向)においてフロアパネル12から離れている。ロアケース13は、水平方向において広がっている板状部材である。
【0020】
取付構造2は、筐体20を備えている。筐体20の内部空間S1には、蓄電装置3が収容されている。蓄電装置3は、積層体30と、ダンパ部材60と、周辺機器70と、供給管80とを有している。積層体30は、X軸方向及びY軸方向に対して単体に配置されている。つまり、蓄電装置3は、1つの積層体30のみを有している。積層体30は、Z軸方向から見た場合に、車両1のX軸方向の中心線Lと重なるように筐体20内に配置されている。具体的には、一対のサイドメンバ11のX軸方向の中心線及び内部空間S1のX軸方向の中心線のそれぞれは、車両1の中心線Lと一致している。積層体30は、Z軸方向から見た場合に、内部空間S1の中央に配置されている。Z軸方向から見た場合に、積層体30のX軸方向の中心線及びY軸方向の中心線のそれぞれは、内部空間S1のX軸方向の中心線及びY軸方向の中心線のそれぞれと一致している。
【0021】
積層体30は、Z軸方向に積層された複数の蓄電モジュール40と、複数の熱交換器50とを含んで構成されている。ここでは、積層体30は、2体の蓄電モジュール40と、3体の熱交換器50とを有しており、熱交換器50間に蓄電モジュール40が挟まれるように熱交換器50と蓄電モジュール40とがZ軸方向において交互に配置されている。蓄電モジュール40及び熱交換器50の配置数は、図1の例に限られず、より多数の蓄電モジュール40及び熱交換器50を交互に配置してもよい。
【0022】
Z軸方向から見た場合における蓄電モジュール40の面積(ここでは、積層体30の面積)は、蓄電モジュール40の厚さよりも大きい。Z軸方向から見た場合における蓄電モジュール40の面積は、例えば1m以上である。Z軸方向から見た場合に、蓄電モジュール40の面積は、所定値よりも大きい。Z軸方向から見た場合に、蓄電モジュール40の面積は、例えば内部空間S1の面積の1/2よりも大きい。Z軸方向から見た場合に、X軸方向における蓄電モジュール40の幅は、所定値よりも大きい。Z軸方向から見た場合に、X軸方向における蓄電モジュール40の幅は、例えば一対のサイドメンバ11間の距離の1/2又はX軸方向における内部空間S1の幅の1/2よりも大きい。Z軸方向から見た場合に、Y軸方向における蓄電モジュール40の幅は、所定値よりも大きい。Z軸方向から見た場合に、Y軸方向における蓄電モジュール40の幅は、例えば一対のサイドメンバ11間の距離の1/2又はY軸方向における内部空間S1の幅の1/2よりも大きい。
【0023】
蓄電モジュール40は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電モジュール40は、電気二重層キャパシタであってもよいし、全固体電池であってもよい。本実施形態では、蓄電モジュール40がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0024】
図2に示されるように、蓄電モジュール40は、複数の蓄電セル4が積層方向(Z軸方向)にスタック(積層)されたセルスタック5を含んで構成されている。各蓄電セル4は、正極41と、負極42と、セパレータ43と、スペーサ44とを備える。正極41は、集電体51と、集電体51の第1面51aに設けられた正極活物質層52とを備える。正極41は、例えば矩形状の電極である。負極42は、集電体51と、集電体51の第1面51aに設けられた負極活物質層53とを備える。負極42は、例えば矩形状の電極である。負極42は、負極活物質層53が正極活物質層52と対向するように配置されている。本実施形態では、正極活物質層52及び負極活物質層53は、いずれも矩形状に形成されている。負極活物質層53は、正極活物質層52よりも一回り大きく形成されており、積層方向から見た平面視において、正極活物質層52の形成領域の全体が負極活物質層53の形成領域内に位置している。
【0025】
各集電体51は、第1面51aとは反対側の面である第2面51bを有する。正極41の集電体51の第2面51bには、正極活物質層52が形成されていない。負極42の集電体51の第2面51bには、負極活物質層53が形成されていない。正極41の集電体51の第2面51bと負極42の集電体51の第2面51bとが互いに接するように、蓄電セル4がスタックされることによって、セルスタック5が構成される。これにより、複数の蓄電セル4が電気的に直列に接続される。セルスタック5では、積層方向に隣り合う蓄電セル4,4により、互いに接する正極41の集電体51及び負極42の集電体51を電極体とする疑似的なバイポーラ電極が形成される。すなわち、1つのバイポーラ電極は、互いに隣接する2つの集電体51,51、正極活物質層52及び負極活物質層53を含む。積層方向の一端には、終端電極として正極41の集電体51が配置される。積層方向の他端には、終端電極として負極42の集電体51が配置される。
【0026】
集電体51は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層52及び負極活物質層53に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体51を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。集電体51は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。集電体51の表面に、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。集電体51は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。集電体51を金属箔とする場合、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔又はステンレス鋼箔等を用いることができる。集電体51としてステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等)を用いた場合、集電体51の機械的強度を確保することができる。集電体51は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。本実施形態において、正極41の集電体51はアルミニウム箔であり、負極42の集電体51は銅箔である。箔状の集電体51を用いる場合、その厚みは、例えば、1μm~100μmとしてよい。
【0027】
正極活物質層52は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態において、正極活物質層52は複合酸化物としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)を含む。
【0028】
負極活物質層53は、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はなく使用可能である。例えば、負極活物質としてLi、又は、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)又はソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)を挙げることができる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態において、負極活物質層53は炭素系材料としての黒鉛を含む。
【0029】
正極活物質層52及び負極活物質層53のそれぞれ(以下、単に「活物質層」ともいう)は、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助剤、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等をさらに含み得る。活物質層に含まれる成分又は当該成分の配合比及び活物質層の厚さは特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照され得る。活物質層の厚みは、例えば2~150μmである。集電体51の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法等の従来から公知の方法を用いてもよい。正極41又は負極42の熱安定性を向上させるために、集電体51の表面(片面又は両面)又は活物質層の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば、無機粒子と結着剤とを含み、その他に増粘剤等の添加剤を含んでもよい。
【0030】
導電助剤は、正極41又は負極42の導電性を高めるために添加される。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒には、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が用いられる。
【0031】
セパレータ43は、正極41の正極活物質層52と負極42の負極活物質層53との間に配置されて、正極41と負極42とを隔離することで両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータ43は、蓄電セル4をスタックした際に隣り合うバイポーラ電極間の短絡を防止する。
【0032】
セパレータ43は、基材層55と、基材層55の第1面55aに設けられた第1接着層56と、基材層55の第2面55bに設けられた第2接着層57とを有する。第1接着層56は、第1面55aの全面に設けられている。第1接着層56は、負極活物質層53と基材層55との間に配置されている。第1接着層56は、負極活物質層53と基材層55とを接着している。第1接着層56は、負極42と基材層55との間の位置ずれを防止する。第2接着層57は、第2面55bの全面に設けられている。第2接着層57は、正極活物質層52と基材層55との間に配置されている。第2接着層57は、正極活物質層52と基材層55とを接着している。第2接着層57は、正極41と基材層55との間の位置ずれを防止する。
【0033】
基材層55は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布であってもよい。基材層55を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。基材層55は、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。基材層55には、電解質が含浸されてもよく、基材層55自体を高分子電解質又は無機型電解質等の電解質で構成してもよい。
【0034】
基材層55に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリクス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質などが挙げられる。
【0035】
基材層55に電解液が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組合せて用いてもよい。
【0036】
第1接着層56及び第2接着層57のそれぞれは、熱硬化性接着剤又は熱可塑性接着剤を含んでもよいし、例えば電解液等の水分と反応して固化する接着剤(液湿気硬化型接着剤)を含んでもよい。液湿気硬化型接着剤は、例えば蓄電モジュール40の使用温度(例えば常温)よりも高い温度で固化してもよい。エステル系電解液が使用される場合、液湿気硬化型接着剤は80℃以下で固化してもよい。熱硬化性接着剤は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を含んでもよい。熱可塑性接着剤は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の結着剤を含んでもよい。第1接着層56及び第2接着層57のそれぞれは、接着剤を塗布することによって形成されてもよい。
【0037】
スペーサ44は、正極41の集電体51と負極42の集電体51との間に形成され、正極41の集電体51及び負極42の集電体51の少なくとも一方(例えば正極41の集電体51及び負極42の集電体51の両方、又は正極41の集電体51及び負極42の集電体51のいずれか一方のみ)に接合又は固定される。スペーサ44は、絶縁材料を含み、正極41の集電体51と負極42の集電体51との間を絶縁することによって、それら両集電体間の短絡を防止する。スペーサ44を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン、ABS樹脂、変性ポリプロピレン(変性PP)、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂などの種々の樹脂材料が用いられる。
【0038】
本実施形態において、スペーサ44は、集電体51の縁部51eに沿って延在し、平面視で矩形状に形成された正極活物質層52又は負極活物質層53の周囲を取り囲むように、平面視で矩形の枠状に形成されている。スペーサ44に、セパレータ43の縁部43aが埋設されていてもよい。
【0039】
本実施形態では、各蓄電セル4に配置されるスペーサ44は、一対の集電体51間に配置される部分と集電体51の縁部51eよりも外側に延びる部分とを有しており、セルスタック5の積層方向に隣り合うスペーサ44の外側に延びる部分同士が接合されて一体化している。複数のスペーサ44が一体化されて封止体44aを形成している。スペーサ44、正極41及び負極42によって囲まれた空間S2には、セパレータ43及び電解質(電解液)が収容されている。平面視において矩形の枠状をなすスペーサ44は、集電体51の縁部51eに接合固定されている。複数のスペーサ44が一体化されてなる封止体44aは、セルスタック5の積層方向の一端に配置された集電体51から積層方向の他端に配置された集電体51まで積層方向に延在する筒状部分を有している。隣り合うスペーサ44同士を接合する方法としては、例えば、熱溶着、超音波溶着又は赤外線溶着など、公知の溶着方法が用いられる。
【0040】
本実施形態において、スペーサ44は、正極41及び負極42との間の空間S2を封止する封止部としても機能しており、空間S2に収容された電解質の外部への透過を防止し得る。また、スペーサ44は、蓄電モジュール40の外部から空間S2内への水分の侵入を防止し得る。さらに、スペーサ44は、例えば充放電反応等により正極41又は負極42から発生したガスが蓄電モジュール40の外部に漏れることを防止し得る。
【0041】
蓄電モジュール40は、セルスタック5の積層方向においてセルスタック5を挟むように配置された一対の通電体(正極通電板46及び負極通電板47)を備える。正極通電板46及び負極通電板47のそれぞれは、良導電性材料で構成される。正極通電板46及び負極通電板47のそれぞれを構成する材料としては、集電体51を構成する材料と同じ材料を用いることができる。正極通電板46及び負極通電板47のそれぞれは、セルスタック5に用いられた集電体51よりも厚い金属板で構成してもよい。正極通電板46は、積層方向の一端において最も外側に配置された正極41の集電体51に電気的に接続される。負極通電板47は、積層方向の他端において最も外側に配置された負極42の集電体51に電気的に接続される。正極通電板46及び負極通電板47のそれぞれに設けられた端子を通じて蓄電モジュール40の充放電が行われる。
【0042】
セルスタック5の積層方向において最も外側に配置された集電体51と正極通電板46又は負極通電板47との間には、両部材間の導電接触を良好にする目的で、導電層45が更に配置されてもよい。この場合、導電層45は、集電体51の第2面51bに密着してもよい。
【0043】
導電層45は、例えば集電体51の硬度よりも低い硬度を有する。導電層45は、アセチレンブラック又はグラファイト等のカーボンを含む層であってもよく、Auを含むメッキ層であってもよい。
【0044】
再び、図1を参照する。図1に示されるように、熱交換器50は、蓄電モジュール40の冷却を行う部分である。熱交換器50は、例えば内部に冷却用流体が通る流路を有する板状部材である。Z軸方向から見た場合に、熱交換器50の外縁は、蓄電モジュール40の外縁よりも内側に位置している。流路は、板状部材を面内方向に貫通する貫通孔によって構成されている。流路には、本体部21を通した供給管80が接続され、本体部21の外部との間で冷却用流体の循環が行われる。冷却用流体としては、例えば空気、水、油などが用いられる。冷却用流体は、電気絶縁性を有するものであってもよい。冷却用流体が導電性を有するものである場合、熱交換器50は、冷却用流体に対して絶縁されていることが好ましい。
【0045】
ダンパ部材60は、積層体30に振動が加わった場合に、積層体30への振動の影響を緩和する部材である。ダンパ部材60は、積層体30と共に筐体20内に配置されている。ダンパ部材60は、筐体20の内面と積層体30との間に配置されている。具体的には、ダンパ部材60は、積層体30における積層方向(Z軸方向)の両端にそれぞれ配置されている。ダンパ部材60は、後述する本体部21の底面部21bと積層体30との間及び後述するシート状部材22の平板部22aと積層体30との間にそれぞれ位置している。Z軸方向から見た場合に、ダンパ部材60の外縁は、熱交換器50の外縁よりも外側に位置している。
【0046】
ダンパ部材60は、パッケージ61と、パッケージ61内に充填された衝撃吸収材62とによって構成されている。パッケージ61は、内容物(すなわち、衝撃吸収材62)が充填されていない場合には萎み、内容物の充填に応じて膨張可能な材料によって構成されている。また、パッケージ61は、電気絶縁性を有する材料によって構成されている。パッケージ61の構成材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
【0047】
パッケージ61は、衝撃吸収材62の充填により、充填前に比べて膨張した状態となっている。これにより、ダンパ部材60は、筐体20の内面と積層体30との間に介在している。衝撃吸収材62としては、気体、液体、ゲルからなる材料を用いることができる。衝撃吸収材62は、粉末状、粒子状といった固体の材料を用いることもできる。衝撃吸収材62は、これらの混合物からなる材料であってもよい。材料の一例としては、例えば使用環境において凍結及び気化しないオイル、クーラントで使用される不凍液(LCC:Long Life Coolant)などが挙げられる。
【0048】
また、パッケージ61内には、衝撃吸収材62と共に発火抑制剤63が充填されていてもよい。発火抑制剤63は、消火剤或いは難燃剤といった発火を抑制する材料である。発火抑制剤63は、気体、液体、固体(粉末)のいずれであってもよい。発火抑制剤63の一例としては、例えば無機系の粉末のリン酸二水素アンモニウム(化学式:NHPO、ABC粉末消火剤の主成分)などが挙げられる。
【0049】
発火抑制剤63を充填する場合、パッケージ61は、蓄電モジュール40の劣化時或いは異常時に蓄電モジュール40から生じる気体によって破断可能な材料によって構成されていることが好ましい。この場合、パッケージ61の材料としては、例えば天然高分子(コラーゲンやゼラチンなどのタンパク質、セルロースやデンプンなどの多糖類、天然ゴム等及びゼラチン-アラビアゴム、ゼラチン-ゲランゴム等の混合物)、及び合成高分子(ポリスチレン、ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等)などを用いることができる。
【0050】
周辺機器70は、各種電源及び供給管80における冷却用流体を循環させるためのポンプ等によって構成されている。周辺機器70は、端子31,32によって積層体30と電気的に接続されている。周辺機器70は、複数の端子33によってそれぞれの蓄電モジュール40と電気的に接続されている。周辺機器70は、複数の端子71によって蓄電装置3の外部と電気的に接続されている。
【0051】
筐体20には、減圧ポンプ24が設けられている。この減圧ポンプ24は、筐体20の内部空間S1の気体を吸引することによって筐体20の内圧を大気圧に対して減圧された状態を維持する。筐体20の内部空間S1には、ガス及び水分を吸着する吸着部材25が設けられている。吸着部材25は、例えば、蓄電モジュール40からガス及び水分が内部空間S1内に排出された場合、当該ガス及び水分は、吸着部材25によって吸着される。吸着部材25は、例えばシリカゲル、活性アルミナ、活性炭などによって形成されていてもよい。吸着部材25によって、内部空間S1内のガスが吸着されることで、内部空間S1の内圧の変動を抑制できる。
【0052】
筐体20には、圧力開放弁26が設けられていてもよい。この圧力開放弁26は、蓄電モジュール40の劣化時或いは異常時に発生する高温の気体によって筐体20の内圧が上昇した場合に作動する弁である。圧力開放弁26の作動により、筐体20の内部空間S1の気体が筐体20の外部に放出されることで、筐体20の内圧が所定値を上回らないように圧力緩和が行われる。圧力開放弁26の種類には、特に制限はないが、例えば圧力が所定の閾値を超えたときに破断する破断タイプの弁であってもよく、温度が所定の閾値を超えたときに溶融する溶栓タイプの弁であってもよい。
【0053】
次に、取付構造2について詳細に説明する。図1に示されるように、筐体20は、本体部21と、シート状部材22と、蓋部としてのフロアパネル12とを有している。本体部21は、例えばステンレスといった金属によって形成され、直方体形状をなしている。本体部21は、車両1に対向する一面側に開口部21dが設けられた有底箱型をなしている。本体部21は、底面部21bと、底面部21bの四辺の縁にそれぞれ立設された側壁部21aとを有している。本体部21の開口部21d回りには、フランジ21cが設けられている。
【0054】
本体部21は、一対のサイドメンバ11の間の空間には、配置されておらず、フロアパネル12における車室Sとは反対側の平坦面に対して下方に配置されている。本体部21は、フロアパネル12とロアケース13との間に配置されている。Z軸方向から見た場合に、X軸方向における本体部21の幅は、一対のサイドメンバ11間の距離(一対のサイドメンバ11の互いに対向するそれぞれの内面間の距離)よりも大きい。X軸方向における本体部21の両側のフランジ21cは、フロアパネル12を介して一対のサイドメンバ11の下方に配置されている。
【0055】
本体部21は、フロアパネル12及び一対のサイドメンバ11の下方において一対のサイドメンバ11から垂下した状態で一対のサイドメンバ11に対して固定されている。具体的には、本体部21は、一対のサイドメンバ11の下側から一対のサイドメンバ11に対して固定されている。本体部21は、一対のサイドメンバ11から吊り下がっている。本体部21のフランジ21cは、例えば複数のボルト(図示省略)及びナット(図示省略)等によって一対のサイドメンバ11に締結されている。これにより、蓄電装置3は、一対のサイドメンバ11及びフロアパネル12の下方において、本体部21に収容された状態で車両1に取付けられている。なお、複数のボルトは、フランジ21cに対してサイドメンバ11とは反対側から、フランジ21c及びサイドメンバ11に挿入されてもよいし、サイドメンバ11に対してフランジ21cとは反対側から、サイドメンバ11及びフランジ21cに挿入されてもよい。
【0056】
車両1における左右一対のサイドメンバ11間にわたって延在するフロアパネル12は、本体部21の一面を塞ぐ蓋部として機能する。すなわち、蓋部は、フロアパネル12によって構成されている。本体部21が一対のサイドメンバ11に対して固定されると、本体部21の開口部21dがフロアパネル12によって塞がれ、積層体30には、フロアパネル12と筐体20における本体部21の底面部21bとによって拘束荷重が付与されている。具体的には、本体部21は、本体部21内に収容された積層体30がダンパ部材60を介してフロアパネル12に対して押圧されるように、一対のサイドメンバ11に対して固定されている。換言すると、積層体30は、Z軸方向においてフロアパネル12及び底面部21bによって挟み込まれている。これにより、積層体30及びフロアパネル12が一体的な構造となっている。なお、本体部21は、ロアケース13によって支持されていてもよい。
【0057】
本体部21は、シート状部材22を介して一対のサイドメンバ11に固定されている。具体的には、シート状部材22は、平板部22aと、バネ部22bと、外縁部22cとを含んでいる。平板部22a、バネ部22b及び外縁部22cは、同一の材料によって一体的に形成されている。平板部22aは、平板状をなしており、水平方向において広がっている。平板部22aは、Z軸方向から見て矩形状をなしている。バネ部22bは、平板部22aの外縁に繋がっており、Z軸方向から見て矩形環状をなしている。外縁部22cは、バネ部22bの外縁に繋がっており、Z軸方向から見て矩形環状をなしている。バネ部22bは、シート状部材22における平板部22aと外縁部22cとの間の部分を複数回折り曲げることによって形成されている。これにより、シート状部材22は、面内方向にバネ性を有することになっている。バネ部22bの弾性係数は、平板部22a及び外縁部22cの弾性係数よりも小さい。
【0058】
シート状部材22は、フロアパネル12と本体部21との間に配置されている。Z軸方向から見た場合に、平板部22aの外縁は、ダンパ部材60の外縁よりも外側に位置している。Z軸方向から見た場合に、バネ部22bは、ダンパ部材60を囲んでいる。外縁部22cは、フロアパネル12と本体部21のフランジ21cとの間に配置されている。外縁部22cは、シール部材23によってフランジ21cに対して気密に固定されている。これにより、筐体20には、蓄電装置3を気密に収容する内部空間S1が形成されている。
【0059】
内部空間S1は、製造時に減圧された状態で気密に封止され、上述したように減圧ポンプ24の吸引によって大気圧に対して減圧された状態が維持されている。内部空間S1の内圧は、本体部21の外部の大気圧よりも小さい。そのため、本体部21には本体部21の外側から内側に向かった力が作用する。これにより、フロアパネル12及び本体部21の底面部21bによって挟み込まれている積層体30は、Z軸方向において底面部21b及びシート状部材22(フロアパネル12)によって更に拘束されることになる。したがって、強い締結力を必要とせず、積層体30及びフロアパネル12をより確実に一体的な構造にすることができる。また、フロアパネル12と本体部21との締結による拘束荷重を低減できるため、フロアパネル12にかかる応力を低減できる。
【0060】
以上説明したように、取付構造2では、本体部21が、フロアパネル12の下方において一対のサイドメンバ11に対して固定されている。これにより、車両1の低背化を図ることができる。具体的には、本体部21がフロアパネル12の下方に配置されることにより、本体部21がフロアパネル12の上方の車室Sの空間を圧迫することを抑制できる。そのため、車両1の高さを高くすることなく、本体部21を取り付けることができる。また、本体部21がフロアパネル12の下方に配置されることにより、車両1の重心を下げることができる。そのため、車両1の運転性能を向上できる。また、本体部21は、一対のサイドメンバ11から垂下した状態で一対のサイドメンバ11に対して固定されている。つまり、本体部21は、一対のサイドメンバ11間の空間には配置されていない。そのため、取り付け先の車両1が変わる場合であって一対のサイドメンバ11間の空間の形状がその都度変わる場合(例えば、一対のサイドメンバ11間の空間が狭くなる場合)においても、本体部21の設計を変更することなく、本体部21を車両1に取り付けることができる。したがって、取付構造2によれば、車種によらずに蓄電装置3を汎用的に取り付けることが可能となる。
【0061】
蓄電装置3は、筐体20内において車両1の高さ方向に積層された複数の蓄電モジュール40を含んでいる。蓄電モジュール40の積層体30には、フロアパネル12と筐体20における本体部21の底面部21bとによって拘束荷重が付与されている。これにより、蓄電モジュール40の積層体30によって車両1の剛性を向上でき、車両1のねじれを抑制できる。例えば、積層体30を一対のサイドメンバ11間の橋渡しに必要なリインフォース(斜材)として利用することができる。また、車両1のボディの一部であるフロアパネル12によって積層体30を拘束しているため、積層体30を拘束するための部材を別途用意する必用がない。これにより、部品点数を削減する共に、車両1の低背化を図ることができる。
【0062】
蓄電モジュールの積層体30は、車両1の幅方向に対して単体に配置され、且つ車両1の幅方向の中心線Lと重なるように筐体20内に配置されている。これにより、車両1の高さ方向から見た場合の面積が相対的に大きい蓄電モジュール40の積層体30を用いることで、車両1の剛性をより一層向上できる。
【0063】
蓄電モジュール40の積層体30と筐体20の内面との間には、内容物の充填に応じて膨張可能なパッケージ61と、パッケージ61内に充填された衝撃吸収材62とによって構成されたダンパ部材60が配置されている。これにより、蓄電モジュール40の積層体30の表面と筐体20の内面との間にパッケージ61を萎ませた状態で配置した後に、パッケージ61内に衝撃吸収材62を充填し、パッケージ61を膨張させることによって、蓄電モジュール40の積層体30の表面と筐体20の内面との間にダンパ部材60を隙間なく配置できる。したがって、蓄電モジュール40の積層体30への振動又は車両1側のうねりの影響をダンパ部材60によって十分に緩和できる。
【0064】
筐体20内(内部空間S1)は、大気圧に対して減圧されている。これにより、筐体20の内圧と大気圧との差圧によって、蓄電装置3が車両1と離れることを抑制できる。これにより、筐体20と地面との距離が小さくなることを抑制でき、車両1の低背化を図ることができる。
【0065】
筐体20における本体部21は、面内方向にバネ性を有するシート状部材22を介してサイドメンバ11に対して固定されている。この場合、シート状部材22が変形し易くなるため、蓄電装置3(ここでは、ダンパ部材60)に対するシート状部材22の追従性、及びシート状部材22による緩衝吸収性を向上できる。また、内部空間S1が減圧される場合に、シート状部材22をダンパ部材60に追従させることで、本体部21の変形を抑制することができる。これにより、本体部21の薄化を図ることができる。また、積層体30への振動又は車両1側のうねりの影響をシート状部材22によって吸収できる。
【0066】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、本体部21の底面部は、ロアケース13によって構成されていてもよい。具体的には、ロアケース13は、フロアパネル12と共に、本体部21を挟み込んでもよい。積層体30は、フロアパネル12及びロアケース13によって挟み込まれていてもよい。この場合、車両1における2つのパネル部材によって、積層体30に拘束荷重を付与することができ、積層体30によって車両1の剛性を更に向上できる。
【0067】
また、上記実施形態では、ダンパ部材60が、本体部21の底面部21bと積層体30との間及びシート状部材22の平板部22aと積層体30との間にそれぞれ位置しているが、ダンパ部材60は、積層体30の側面と本体部21の側壁部21aとの間に更に配置されていてもよい。ダンパ部材60は、内部空間S1のうち、吸着部材25及び周辺機器70が配置されていない空間に配置されていてもよい。また、ダンパ部材60は、配置されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…車両、2…取付構造、3…蓄電装置、11…サイドメンバ(リブ部材)、12…フロアパネル(パネル部材)、13…ロアケース(別のパネル部材)、20…筐体、21…本体部、21b…底面部、22…シート状部材、30…積層体、40…蓄電モジュール、60…ダンパ部材、61…パッケージ、62…衝撃吸収材、L…中心線。
図1
図2