(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】変形センサ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20240319BHJP
G01B 7/16 20060101ALI20240319BHJP
A47C 31/12 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G01B7/00 103R
G01B7/16 R
A47C31/12
(21)【出願番号】P 2020149151
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木佐貫 義勝
(72)【発明者】
【氏名】村岸 裕治
(72)【発明者】
【氏名】服部 義和
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-089588(JP,A)
【文献】特開2017-075847(JP,A)
【文献】特開2020-008527(JP,A)
【文献】特開平11-274247(JP,A)
【文献】特開2007-240475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00ー 7/34
G01B 21/00-21/32
A47C 27/00-27/22
A47C 31/00-31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性弾性体が複数方向に配設された複数の外圧計測部と、
前記導電性弾性体に沿って移動可能である
移動接点端子の内側に位置する電圧計測端子を用いて、所定位置間の前記導電性弾性体の電気抵抗値を計測する電気抵抗計測部と、
前記電気抵抗計測部が計測した前記電気抵抗値を用いて前記外圧計測部の所定の位置の三次元座標値を演算する演算部と、
を備える、変形センサ。
【請求項2】
前記演算部からの指示に基づいて電圧を印加する前記導電性弾性体を順次選択する選択部をさらに備える、請求項1に記載の変形センサ。
【請求項3】
前記
移動接点端子は円環状の導電体
を有する、請求項1または2に記載の変形センサ。
【請求項4】
前記外圧計測部は、
前記導電性弾性体の一端に設けられ、前記導電性弾性体に電圧を印加する電圧印加端子と、
前記導電性弾性体の、前記電圧印加端子が設けられる端と反対の端に設けられ、電圧を計測する電圧計測端子と、
を備え、
前記演算部は、前記電圧計測端子の三次元座標値を演算する、請求項1~3のいずれか1項に記載の変形センサ。
【請求項5】
前記導電性弾性体は、前記電圧計測端子から複数方向に配設されている、請求項4に記載の変形センサ。
【請求項6】
隣接する前記外圧計測部において、1つの前記電圧印加端子を共通して利用する、請求項4又は5に記載の変形センサ。
【請求項7】
前記外圧計測部の配置位置に応じて前記導電性弾性体の配設数を変化させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の変形センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、椅子使用者の座位姿勢を立体的に推定することが可能な座位姿勢モニタリングシステムの提供を目的として、椅子の座面及び背面に作用する圧力の分布を検出し、電気信号に変換して出力する圧力分布センサと、圧力分布センサからの情報に基づいて椅子使用者の座位姿勢を推定する姿勢推定装置が開示されている。
【0003】
同様に、特許文献2には、自動車のシート又はベッド等の大面積の表面に作用する垂直荷重又はせん断荷重の分布を測定するためのセンサシステムを構築する技術が開示されている。特許文献3及び特許文献4等で開示されていた技術では、所定のピッチで検出対象物の表面に多数個のセンサを配列する必要があったために、コストが高くなり、配線数が増加する課題があった。また特許文献3及び特許文献4等で開示されていた技術では、センサの配列密度によって荷重の検出分解能が制約を受け、検出分解能を高めることが困難という課題があった。特許文献2で開示された技術では、これらの課題を解決するための開示がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-102861号公報
【文献】特開2015-169532号公報
【文献】特開2013-79831号公報
【文献】特開2013-210368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シート又はベッドのような、人が座ったり寝たりする用途のある物体においては、垂直荷重及びせん断荷重の計測が、座り心地又は寝心地などの特性を評価する上で重要となる。一方、クッションに荷重が作用すると座面などが変形する。座面の変形によって座面に作用する荷重の方向が変化することから、座面の変形状態は、シート又はベッドの特性に大きく影響する。従って、座り心地又は寝心地などの特性を評価する際には、荷重のみならず変形の計測も必要とされている。また、荷重を計測するためのセンサを座面等に配設した場合、センサの剛性(曲げ剛性)がクッション材の剛性と異なることから、特性計測の際に本来の特性と異なる特性となってしまう。
【0006】
以上から、従来技術においては、特性に大きく影響する変形が計測されていないことに加え、クッション材の特性と異なる特性の部材の配設に伴い、シート又はベッドの適正な特性評価が困難になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、荷重により生じる変形を計測することで、シート又はベッドのような人が座ったり寝たりする用途のある物体に対して適正な特性評価を行うことが可能な変形センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る変形センサは、導電性弾性体が複数方向に配設された複数の外圧計測部と、前記導電性弾性体に沿って移動可能であり、所定位置間の前記導電性弾性体の電気抵抗値を計測する電気抵抗計測部と、前記電気抵抗計測部が計測した前記電気抵抗値を用いて前記外圧計測部の所定の位置の三次元座標値を演算する演算部と、を備える。
【0009】
本発明の第1態様によれば、導電性弾性体の電気抵抗値に基づいて外圧計測部の所定の位置の三次元座標値を演算することで、シート又はベッドのような人が座ったり寝たりする用途のある物体に対して適正な特性評価を行うことが可能となる。
【0010】
本発明の第2態様に係る変形センサは、第1態様に係る変形センサであって、前記演算部からの指示に基づいて電圧を印加する前記導電性弾性体を順次選択する選択部をさらに備える。
【0011】
本発明の第2態様によれば、外圧計測部に対する演算箇所を変更しながら特性評価を行うことが可能となる。
【0012】
本発明の第3態様に係る変形センサは、第1態様又は第2態様に係る変形センサであって、前記電気抵抗計測部は円環状の導電体である。
【0013】
本発明の第3態様によれば、電気抵抗計測部が円環状であることで荷重方向に応じて電気抵抗計測部が移動でき、導電性弾性体の電気抵抗値を適切に計測することが可能となる。
【0014】
本発明の第4態様に係る変形センサは、第1態様~第3態様のいずれかに係る変形センサであって、前記外圧計測部は、前記導電性弾性体の一端に設けられ、前記導電性弾性体に電圧を印加する電圧印加端子と、前記導電性弾性体の、前記電圧印加端子が設けられる端と反対の端に設けられ、電圧を計測する電圧計測端子と、を備え、前記演算部は、前記電圧計測端子の三次元座標値を演算する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、電圧印加端子と電圧計測端子との間の距離に応じて導電性弾性体の電気抵抗値を計測することで、シート又はベッドのような人が座ったり寝たりする用途のある物体に対して適正な特性評価を行うことが可能となる。
【0016】
本発明の第5態様に係る変形センサは、第4態様に係る変形センサであって、前記導電性弾性体は、前記電圧計測端子から複数方向に配設されている。
【0017】
本発明の第5態様によれば、導電性弾性体は、電圧計測端子から複数方向に配設されていることで、センサ剛性をシート又はベッド等の物体のクッション剛性に類似したものとすることができる。
【0018】
本発明の第6態様に係る変形センサは、第4態様又は第5態様に係る変形センサであって、隣接する前記外圧計測部において、1つの前記電圧印加端子を共通して利用する。
【0019】
本発明の第6態様によれば、隣接する外圧計測部において、1つの電圧印加端子を共通して利用することで、共通して利用しない場合と比べて配線の数を減少させることができる。
【0020】
本発明の第7態様に係る変形センサは、第1態様~第6態様のいずれかに係る変形センサであって、前記外圧計測部の配置位置に応じて前記導電性弾性体の配設数を変化させる。
【0021】
本発明の第7態様によれば、全面で導電性弾性体の配設方向を増やす場合に比べて、信号線の配線の数を減らしつつ、計測精度を上げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、荷重により生じる変形を計測することで、シート又はベッドのような人が座ったり寝たりする用途のある物体に対して適正な特性評価を行うことが可能な変形センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る変形センサの概略構成を示す図である。
【
図2】導電性弾性体の長さと電気抵抗値との関係の一例をグラフで示した図である。
【
図3】移動接点端子の中心を原点とした導電性の円環が設置されている例を示した図である。
【
図4】変形センサに対する外力の作用に応じて移動接点端子が移動する様子を示す断面図である。
【
図5】変形センサの変形例について説明する図である。
【
図6】電圧印加端子に接続する信号線の共通化を説明する図である。
【
図7】導電性弾性体の配設方向が4方向の場合の信号線の共通化の一例を示す図である。
【
図8】導電性弾性体の配設方向が6方向の場合の信号線の共通化の一例を示す図である。
【
図9】導電性弾性体の配設方向が8方向の場合の信号線の共通化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0025】
図1は、本実施形態に係る変形センサの概略構成を示す図である。
図1に示した変形センサ1は、電圧印加端子11、電圧計測端子12、導電性弾性体13からなる複数の外圧計測部10と、電圧計測端子12と同心で配設される移動接点端子14と、電圧印加端子11及び電圧計測端子12と電気的に接続される接点切り替え器20と、入出力端子によって接点切り替え器20と電気的に接続される信号処理装置30と、を備える。
【0026】
図1に示した構成では、1つの外圧計測部10は、4つの電圧印加端子11、1つの電圧計測端子12、及び電圧印加端子11の各々と電圧計測端子12とを電気的に接続する4本の導電性弾性体13からなる。従って、変形センサ1の大きさは、外圧計測部10の数に応じて変更可能である。
【0027】
電圧印加端子11は、信号処理装置30から電圧が印加される端子である。信号処理装置30から電圧が印加される電圧印加端子11は、接点切り替え器20によって切り替えられる。従って、接点切り替え器20は本発明の選択部の一例である。
【0028】
電圧計測端子12は、電圧印加端子11に印加され、導電性弾性体13で降下した電圧を計測する。電圧計測端子12が計測する電圧は移動接点端子14の位置によって変化する。
【0029】
導電性弾性体13は、柔軟性と伸縮性とを有する薄板状のセンサベースに位置固定で配設されている。センサベースの伸縮性などの機械特性は、測定対象であるシート又はベッドなどの部材などと類似したものとする。なお、センサベースが平板状の形状を維持するために、導電性弾性体13は、初期張力を小さくして配設されている。また、測定対象であるシート又はベッドなどの表面部材などに計測目的などに応じて、直接センサを配設することも可能である。なお、電圧印加端子11及び電圧計測端子12もセンサベースに位置を固定して接続されている。
【0030】
図2は、導電性弾性体13の長さ[m]と電気抵抗値[Ω]との関係の一例をグラフで示した図である。
図2に示したように、導電性弾性体13の長さが伸びるほど電気抵抗値は増加し、その電気抵抗値は2次関数的に増加する。すなわち、電圧降下量が分かれば、電圧降下量に基づいて電気抵抗値が分かり、電気抵抗値が分かればその時の導電性弾性体13の長さが分かる。
【0031】
移動接点端子14は、変形センサ1に外力が作用していない初期状態においては、電圧計測端子と同心である。変形センサ1に外力が作用すると、移動接点端子14は、外力の方向に自由に移動し、外力の作用が無くなると、再び、電圧計測端子12と同心の位置に移動する。電圧計測端子12と同心の位置への移動は、例えば、電圧計測端子12と移動接点端子14とを導電性弾性体13で接続し、その弾性力などで行うことができる。
【0032】
移動接点端子14には、移動接点端子14の中心を原点とした導電性の円環が設置されており、円環は導電性弾性体13と接触して電気回路を形成している。なお、移動方向が決まっていれば、移動接点端子14の形状は円環状でなくても良い。
【0033】
図3は、移動接点端子14の中心を原点とした導電性の円環が設置されている例を示した図である。
図3の例では、移動接点端子14の内側に円環16が設置されている。円環16は、4本の導電性弾性体13と接している。また、円環16は、
図3に示すように、電圧計測端子12とも導電性弾性体13で接続されている。
【0034】
信号処理装置30は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ及びROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ及びストレージを備える。信号処理装置30は、電圧計測端子12から送られる電圧値を用いて、電圧印加端子11と電圧計測端子12との間の電気抵抗値を計測する。従って、信号処理装置30は本発明の電気抵抗計測部の一例である。
【0035】
また、信号処理装置30は、電圧印加端子11と電圧計測端子12との間の電気抵抗値を用いて、電圧計測端子12の三次元座標値を演算する。従って、信号処理装置30は本発明の演算部の一例である。信号処理装置30は、電圧計測端子12の三次元座標値を演算することで、変形センサ1の特性を導出することができる。信号処理装置30の入出力端子としては、アナログ信号入出力端子又はディジタル信号入出力端子などの端子がある。なお、ディジタル信号出力端子は、切り替え信号として接点切り替え器20に接続されている。
【0036】
信号処理装置30は、CPUが、図示しないメモリ又はストレージから、変形センサ1の特性を評価する特性評価プログラムを読み出して実行することで、変形センサ1の特性を評価する。信号処理装置30は、本発明の演算部の一例として機能する。
【0037】
続いて、信号処理装置30による、変形センサ1の特性評価方法を説明する。
【0038】
図1に示した変形センサ1では、信号処理装置30は、接点切り替え器20にディジタル信号を送り、P1で示した電圧印加端子11に電圧Eを印加する。また、sig1で示した電圧計測端子12は、接点切り替え器20を介して、信号処理装置30のアナログ入力端子と接続されている。ここで、接点切り替え器20によって、
図1のP2、P3及びP4で示した電圧印加端子11を開放状態とする。
【0039】
接点切り替え器20によって、
図1のP2、P3及びP4で示した電圧印加端子11が開放状態となると、sig1で示した電圧計測端子12には、印加電圧Eと導電性弾性体13の長さとに応じた電気抵抗値によって決まる電圧e1が生じる。電圧e1は、導電性弾性体13に対する円環16の接触位置に対応することから、移動接点端子14の導電性弾性体13に対する位置、すなわち、P1で示した電圧印加端子11からの距離s1が得られる。
【0040】
同様に、信号処理装置30は、P2で示した電圧印加端子11に電圧を印加した場合とP3及びP4で示した電圧印加端子11に電圧を印加した際のe2、e3及びe4を計測することによって、移動接点端子14に沿って移動する電圧計測端子12の、電圧印加端子11からの距離s2、s3及びs4を求めることができる。他の外圧計測部10についても同様に、信号処理装置30は、接点切り替え器20を制御して、電圧印加端子11の各々に電圧を印加して移動接点端子14の電圧印加端子11からの距離を求めることができる。
【0041】
図4は、変形センサ1に対する外力の作用に応じて移動接点端子14が移動する様子を示す断面図である。距離sは、
図4に示すように、移動接点端子14が垂直荷重又はせん断荷重などの外力によって移動することに応じて変化する。
【0042】
図4(a)は、変形センサ1に荷重外力が作用していない場合を示している。変形センサ1に荷重外力が作用していない場合は、電圧印加端子11と電圧計測端子12との距離s1、s3は同じである。
【0043】
図4(b)は、変形センサ1に垂直荷重外力が作用している場合を示している。変形センサ1に垂直荷重外力が作用すると、電圧印加端子11と電圧計測端子12との距離s1’、s3’は、変形センサ1に荷重外力が作用していない場合の距離s1、s3よりそれぞれ同じだけ長くなるが、伸長による導電性弾性体13の電気抵抗変化率[Ω/m]を基に電気抵抗を計測することによって距離s1’とs3’とが得られる。
【0044】
図4(c)は、変形センサ1に斜め荷重外力が作用している場合を示している。変形センサ1に斜め荷重外力が作用すると、電圧印加端子11と電圧計測端子12との距離s1’’とs3’’の長さはそれぞれ異なる。しかし、導電性弾性体13の抵抗変化から、電圧印加端子11と電圧計測端子12との距離s1’’とs3’’とを得ることができる。
図1において、P1、P2及びP4で示した電圧印加端子11の三次元座標値が既知であるとすると、信号処理装置30は、距離s1、s2及びs4の値などから、三角測量の原理などを用いて、電圧計測端子12の三次元座標値を算出できる。信号処理装置30は、同様の処理を随時繰り返すことによって、電圧印加端子11及び電圧計測端子12の三次元座標値を求めることができる。
【0045】
本実施形態に係る変形センサ1は、電圧印加端子11及び電圧計測端子12の三次元座標値を信号処理装置30で求めることにより、垂直荷重又はせん断荷重などの外力が作用した際の外力の作用方向に加えて、荷重の大きさを計測することが可能となる。従って、本実施形態に係る変形センサ1は、シート又はベッドのような人が座ったり寝たりする用途のある物体に対して、高精度な特性評価が可能となる。
【0046】
また、本実施形態に係る変形センサ1は、導電性弾性体13をセンサとして用いることから、センサ剛性をシート又はベッド等の物体のクッション剛性に類似したものとすることができる。従って、本実施形態に係る変形センサ1は、シート又はベッド等の物体の本来の特性を損なうことなく特性の評価が行える。
【0047】
図1に示した変形センサ1は、4方向に導電性弾性体13を配設する構成を有していたが、本発明は係る例に限定されるものではない。導電性弾性体13の配設方向を4方向より多くしてもよい。
【0048】
図5は、変形センサ1の変形例について説明する図である。
図5の(a)は、
図1に示した変形センサ1のように、導電性弾性体13の配設方向を4方向とした場合を示している。
図5の(b)は、導電性弾性体13の配設方向を6方向とした場合を示している。
図5の(c)は、導電性弾性体13の配設方向を8方向とした場合を示している。
【0049】
図5の(b)及び(c)に示すように配設方法を変更して、導電性弾性体13の配設方向を4方向より多くすることが可能である。しかしながら、導電性弾性体13の配設方向を多くした場合には、電圧印加端子11及び電圧計測端子12と接続される信号線の数が増え、センサ剛性が高くなったり、計測時間が長くなったりする。しかし、導電性弾性体13の配設方向は、荷重外力の作用方向の分解能に相当することから、出来るだけ多方向であることが望ましい。
【0050】
そこで、本実施形態に係る変形センサ1は、外圧計測部10が複数配置される際には、電圧印加端子11に接続する信号線を共通化してもよい。
【0051】
図6は、電圧印加端子11に接続する信号線の共通化を説明する図である。
図6に示したように、隣接する外圧計測部10同士で電圧印加端子11に接続する信号線を共通化することで、信号線を削減することができる。
【0052】
図7は、導電性弾性体13の配設方向が4方向の場合の信号線の共通化の一例を示す図である。
図8は、導電性弾性体13の配設方向が6方向の場合の信号線の共通化の一例を示す図である。
図9は、導電性弾性体13の配設方向が8方向の場合の信号線の共通化の一例を示す図である。
図7~
図9中に、電圧印加端子11を共通化した際に省略可能な端子を示す。なお、基本構成数は、変形センサ1の計測面積が概ね同程度となる数にした。
【0053】
導電性弾性体13の配設方向が4方向の場合は、電圧印加端子11の総数が48個(4本×12個の外圧計測部10)であり、隣接する外圧計測部10の電圧印加端子11を共通化することによって、28個の電圧印加端子11を削減できる。電圧印加端子11の総数を48個から28個に削減できることから、削減率は100×28/48=58.3%である。信号線の総数は、電圧印加端子11への信号線(以下「電圧印加線」とも称する)20本と電圧計測端子12への信号線(以下「電圧計測線」とも称する)12本との、計32本となる。
【0054】
導電性弾性体13の配設方向が6方向の場合は、電圧印加端子11の総数が60個(6本×10個の外圧計測部10)であり、隣接する外圧計測部10の電圧印加端子11を共通化することによって、28個の電圧印加端子を削減できる。削減率は100×28/60=46.7%である。信号線の総数は、電圧印加線32本と電圧計測線10本との計42本となる。
【0055】
導電性弾性体13の配設方向が8方向の場合は、電圧印加端子11の総数が96個(8本×12個の外圧計測部10)であり、隣接する外圧計測部10の電圧印加端子11を共通化することによって、34個の電圧印加端子11を削減できる。削減率は100×34/96=35.4%である。信号線の総数は、電圧印加線62本と電圧計測線12本との計74本となる。
【0056】
以上から、電圧印加端子11の削減率は、4方向が最も高く、8方向が最も低いという結果となった。一方、電圧計測線の総数は、4方向及び8方向が12本で、6方向が10本であることから、4方向及び8方向の計測点の数は6方向より多い。また、電圧印加線と電圧計測線との総数は、導電性弾性体13の配設方向が4方向では32本、6方向では42本、8方向では74本で、導電性弾性体13の配設方向が4方向の場合が最も少ないという結果となった。
【0057】
導電性弾性体13の配設方向及び数は、測定対象に作用する荷重外力に応じて決めることができる。
【0058】
本実施形態に係る変形センサ1は、接点切り替え器20を用いて電圧印加端子11を順次選択して電圧印加することを特徴とすることから、上記のような諸因子を考慮して、信号線の削減及び変形センサ1の剛性を変更できる。
【0059】
本実施形態に係る変形センサ1は、シート又はベッド等の物体の表面に設けられ、垂直荷重又はせん断荷重が作用すると、伸長する部位又は収縮する部位が生じてクッション変形する。このため、導電性弾性体13を配設する際には、伸長又は収縮を考慮して初期長さ(所定張力)を設定する必要がある。
【0060】
本実施形態に係る変形センサ1は、クッション変形時に電圧計測端子12が導電性弾性体13に沿って移動することによって、電気抵抗の計測を行うことから、所定張力を与えることなく導電性弾性体13を配設できる。これにより、所定張力のために変形センサ1に高剛性の部位を設ける必要が無くなり、変形センサ1を構成する上での制約が小さくなる。
【0061】
シート又はベッドが変形する際には、端部を位置固定して配設した導電性弾性体では、その変形に伴う体積変化によって電気抵抗が変化する。一方、導電性弾性体の電気抵抗は、長さによっても変化する。従って、本実施形態に係る変形センサ1は、シート又はベッドが変形する際の導電性弾性体の電気抵抗の変化の計測を、計測点を固定した体積変化ではなく、変形に応じて移動する計測点で行う。電気抵抗の変化を変形に応じて移動する計測点で電気抵抗の変化の計測を行うことにより、本実施形態に係る変形センサ1は、導電性弾性体13に所定張力を与えるための高剛性部位を設ける必要がなくなる。
【0062】
この結果、本実施形態に係る変形センサ1は、センサ剛性をシート又はベッドのクッション剛性に類似したものとすることができ、シート又はベッドの本来の特性を損なうことなく特性評価が行える。
【0063】
また、シート又はベッドのような、人が座ったり寝たりする用途のある物体においては、垂直荷重又はせん断荷重によるクッションの変形が特性に大きく影響する。本実施形態に係る変形センサ1は、シート又はベッド本来の特性を損なうことなく、変形と荷重を同時に計測することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態に係る変形センサ1は、導電性弾性体13に所定張力を与えるための高剛性部位を設ける必要がなくなることで、センサの構成品が少なくなる。本実施形態に係る変形センサ1は、センサの構成品が少なくなることなどから、クッション剛性への影響が更に小さく、シート又はベッドのような物体の本来の特性を損なうことが無い。加えて、本実施形態に係る変形センサ1は、複数方向に配設した導電性弾性体13の電気抵抗変化が、荷重変化にも対応していることから、変形と同時に垂直荷重とせん断荷重を得ることができる。
【0065】
本実施形態に係る変形センサ1は、場所に応じて、1つの外圧計測部10における導電性弾性体13の配設数を変化させてもよい。例えば、外力がより掛かりやすい場所についてのみ、導電性弾性体13の配設方向を増やしてもよい。変形センサ1の中央部分に外力がより掛かりやすければ、導電性弾性体13の配設方向を、4方向ではなく、6方向又は8方向等としてもよい。中央部分の外力がより掛かりやすい場所についてのみ導電性弾性体13の配設方向を増やすことで、変形センサ1の全面で導電性弾性体13の配設方向を増やす場合に比べて、信号線の配線の数を減らしつつ、計測精度を上げることができる。
【0066】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した特性評価処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、特性評価処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0067】
また、上記各実施形態では、特性評価処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 変形センサ
10 外圧計測部
11 電圧印加端子
12 電圧計測端子
13 導電性弾性体
14 移動接点端子
16 円環
17 センサベース