(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20240319BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B60R11/02 S
(21)【出願番号】P 2020158372
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】片岡 愉樹
(72)【発明者】
【氏名】清下 大介
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】黒田 一平
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀典
(72)【発明者】
【氏名】中村 岳司
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-302127(JP,A)
【文献】特開2015-077843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の上下方向に延びるヒンジピラーと、
上記ヒンジピラーの下端に固定され、車両前後方向に延びて前端部が上記ヒンジピラーよりも車両前方に位置するサイドシルと、
上記ヒンジピラーの前方に設けられる前輪のホイールと、を備える車両の前部車体構造であって、
上記ヒンジピラーは、ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面を備え、
上記サイドシル前端部の上方において、上記ヒンジピラーに固定され車両前方に延びるガセットと、
該ガセットの後部から前部にかけて設けられ、前方ほど下方に位置するように傾斜した車両前後方向に延びる高剛性部と、
上記ヒンジピラー閉断面内に上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとを連結する補強部材とを備え、
上記ガセットは、少なくとも上壁と外側壁と下壁とを有して平面視で四角形状に形成されており、
上記高剛性部は、上記上壁と上記外側壁との間の稜線、並びに上記外側壁と上記下壁との間の稜線であり、
上記高剛性部前端と上記サイドシル前端との間の上下方向の領域と、上記ホイールの中心位置と当該ホイールの上端位置との間の上下方向の領域と、が車両正面視で上下方向に重複するように設けられ
、
上記ガセットが車両正面視で上記補強部材と重複することを特徴とする
車両の前部車体構造。
【請求項2】
上記ガセットは上記補強部材の下半分の部位と車両正面視で重複する
請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記補強部材は、スピーカを保持した状態で上記ヒンジピラーに固定されるスピーカボックスで構成された
請求項1または請求項2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記補強部材と対向する上記ヒンジピラーアウタには、上記ガセットの高さ位置と略同じ高さ位置にドアヒンジ取付け部が設けられた
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
車両の上下方向に延びるヒンジピラーと、
上記ヒンジピラーの下端に固定され、車両前後方向に延びて前端部が上記ヒンジピラーよりも車両前方に位置するサイドシルと、
上記ヒンジピラーの前方に設けられる前輪のホイールと、を備える車両の前部車体構造であって、
上記ヒンジピラーは、ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面を備え、
上記サイドシル前端部の上方において、上記ヒンジピラーに固定され車両前方に延びるガセットと、
該ガセットの後部から前部にかけて設けられ、前方ほど下方に位置するように傾斜した車両前後方向に延びる高剛性部と、
上記ヒンジピラー閉断面内に上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとを連結する補強部材とを備え、
上記ガセットは、少なくとも上壁と外側壁と下壁とを有して平面視で三角形状に形成されており、
上記高剛性部は、上記上壁と上記外側壁との間の稜線、並びに上記外側壁と上記下壁との間の稜線であり、
上記高剛性部前端と上記サイドシル前端との間の上下方向の領域と、上記ホイールの中心位置と当該ホイールの上端位置との間の上下方向の領域と、が車両正面視で上下方向に重複するように設けられ、
上記ガセットが車両正面視で上記補強部材と重複することを特徴とする
車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の前部車体構造に関し、詳しくは、車両の上下方向に延びるヒンジピラーと、上記ヒンジピラーの下端に固定され、車両前後方向に延びて前端部が上記ヒンジピラーよりも車両前方に位置するサイドシルと、上記ヒンジピラーの前方に設けられる前輪のホイールと、を備える車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の上下方向に延びるヒンジピラーと、該ヒンジピラーの下端に固定され車両の前後方向に延びるサイドシルと、を備えた車両の前部車体構造において、車両のオフセット衝突時に上記ヒンジピラーの倒れ込みを抑制するため、サイドシルの前端をガセットで補強する構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、サイドシルがヒンジピラーの前面よりも前方に位置するFR(前部機関後輪駆動)方式の車両で、上述の如き構造を採用すると、オフセット衝突時に、前輪のホイールがサイドシル前端で受止められ、車両の前進が抑制されるが、車両の重心はサイドシルよりも上方に位置しているため、車両前方が下方に沈み込む挙動が発現する。
【0004】
これにより、乗員と車体との相対位置が変化し、車両前方が下方に沈み込んで、下がり、これに対して乗員が相対的に上方に位置する状態となり、乗員に対してエアバッグの展開位置が所期の位置からずれるという問題があった。
この問題点を解決するためには、ヒンジピラーの前面をサイドシルの前端位置まで延長することが考えられるが、この場合には、車体重量が増加するという新たな問題点が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、車両のオフセット衝突時に、車両前方が下方に沈み込む挙動を抑制することができる車両の前部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による車両の前部車体構造は、車両の上下方向に延びるヒンジピラーと、上記ヒンジピラーの下端に固定され、車両前後方向に延びて前端部が上記ヒンジピラーよりも車両前方に位置するサイドシルと、上記ヒンジピラーの前方に設けられる前輪のホイールと、を備える車両の前部車体構造であって、上記ヒンジピラーは、ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面を備え、上記サイドシル前端部の上方において、上記ヒンジピラーに固定され車両前方に延びるガセットと、該ガセットの後部から前部にかけて設けられ、前方ほど下方に位置するように傾斜した車両前後方向に延びる高剛性部と、上記ヒンジピラー閉断面内に上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとを連結する補強部材とを備え、上記ガセットは、少なくとも上壁と外側壁と下壁とを有して平面視で四角形状に形成されており、上記高剛性部は、上記上壁と上記外側壁との間の稜線、並びに上記外側壁と上記下壁との間の稜線であり、上記高剛性部前端と上記サイドシル前端との間の上下方向の領域と、上記ホイールの中心位置と当該ホイールの上端位置との間の上下方向の領域と、が車両正面視で上下方向に重複するように設けられ、上記ガセットが車両正面視で上記補強部材と重複するものである。
【0008】
またこの発明による車両の前部車体構造は、車両の上下方向に延びるヒンジピラーと、上記ヒンジピラーの下端に固定され、車両前後方向に延びて前端部が上記ヒンジピラーよりも車両前方に位置するサイドシルと、上記ヒンジピラーの前方に設けられる前輪のホイールと、を備える車両の前部車体構造であって、上記ヒンジピラーは、ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面を備え、上記サイドシル前端部の上方において、上記ヒンジピラーに固定され車両前方に延びるガセットと、該ガセットの後部から前部にかけて設けられ、前方ほど下方に位置するように傾斜した車両前後方向に延びる高剛性部と、上記ヒンジピラー閉断面内に上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとを連結する補強部材とを備え、上記ガセットは、少なくとも上壁と外側壁と下壁とを有して平面視で三角形状に形成されており、上記高剛性部は、上記上壁と上記外側壁との間の稜線、並びに上記外側壁と上記下壁との間の稜線であり、上記高剛性部前端と上記サイドシル前端との間の上下方向の領域と、上記ホイールの中心位置と当該ホイールの上端位置との間の上下方向の領域と、が車両正面視で上下方向に重複するように設けられ、上記ガセットが車両正面視で上記補強部材と重複するものである。
【0009】
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、車両のオフセット衝突時には、ホイールが後退し、該ホイールがサイドシル前端に当接する。車両の重心はサイドシルよりも上方に位置するので、オフセット衝突により車両下方部のサイドシルが止められると、車両前方が下方に沈み込もうとする回転が生ずる。この際、サイドシルの前端を中心として高剛性部の前方が下方に回転する挙動の過程で、高剛性部に対してホイールの上半分が当接する。
【0010】
これにより高剛性部には後方かつ上方向の荷重が入力される。当該高剛性部は前方ほど下方に位置するよう傾斜しているので、ホイールから高剛性部に入力される後方かつ上方向の衝突荷重を当該高剛性部の軸方向で受け、高剛性部の変形が抑制されると共に、衝突荷重を高剛性部からヒンジピラーに荷重伝達し、車両前方が下方に沈み込もうとする回転を抑制することができる。
【0011】
また、上述のサイドシルの前端部がヒンジピラーよりも車両前方に位置しており、ヒンジピラーの前面をサイドシルの前端位置まで延長するものではないので、車体重量の増加を招くものではない。
【0012】
さらにこの発明は、上記サイドシル前端部の上方において、上記ヒンジピラーに固定され車両の前後方向に延びるガセットを備え、該ガセットは、少なくとも上壁と外側壁と下壁とを有して平面視で四角形状に形成されており、上記高剛性部は、上記上壁と上記外側壁との間の稜線、並びに、上記外側壁と上記下壁との間の稜線であることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、高剛性部をガセットの稜線で構成するので、軽量な構造でありながら、平面視四角形状のガセットの上記稜線の前傾構造により、オフセット衝突荷重を稜線の軸方向で受けて、当該荷重をヒンジピラーに伝達する。これにより、オフセット衝突時に車両前方が下方に沈み込む挙動を抑制することができる。
【0014】
さらにまた、この発明は、上記サイドシル前端部の上方において、上記ヒンジピラーに固定され車両の前後方向に延びるガセットを備え、該ガセットは、少なくとも上壁と外側壁と下壁とを有して平面視で三角形状に形成されており、上記高剛性部は、上記上壁と上記外側壁との間の稜線、並びに、上記外側壁と上記下壁との間の稜線であることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、高剛性部をガセットの稜線で構成するので、軽量な構造でありながら、平面視三角形状のガセットの上記稜線の前傾構造により、オフセット衝突荷重を稜線の軸方向で受けて、当該荷重をヒンジピラーに伝達する。これにより、オフセット衝突時に車両前方が下方に沈み込む挙動を抑制することができる。また、上記ガセットは、平面視三角形状のトラス(truss)構造であるから、当該ガセットの強度向上を図ることができる。
【0016】
加えてこの発明は、上記ヒンジピラーは、ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面を備えており、上記ヒンジピラー閉断面内に上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとを連結する補強部材を備え、上記ガセットは車両正面視で上記補強部材と重複することを特徴とする。
上記構成によれば、上述のガセットからの荷重を、補強部材を備えたヒンジピラー閉断面で支持することができ、ヒンジピラーの断面変形を抑制することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記ガセットは上記補強部材の下半分の部位と車両正面視で重複するものである。
上記構成によれば、ガセットに入力される後方かつ上方向の衝突荷重が上記補強部材の前方下部から後方上部を介してヒンジピラーに伝達できる。すなわち、上記衝突荷重を斜め後上方向に向けてヒンジピラーに伝達する経路が形成される。これにより、ガセットに生じる反力を、ヒンジピラー閉断面で支持することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記補強部材は、スピーカを保持した状態で上記ヒンジピラーに固定されるスピーカボックスで構成されたものである。
上述のスピーカボックスは、合成樹脂製の内側ボックス部と、高強度金属部材による外側ボックス部とのうちの外側ボックス部に設定してもよい。
上記構成によれば、補強部材(スピーカボックス)により、スピーカの保持と、ガセットからの荷重支持機能との両立を図ることができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記補強部材と対向する上記ヒンジピラーアウタには、上記ガセットの高さ位置と略同じ高さ位置にドアヒンジ取付け部が設けられたものである。
上記構成によれば、オフセット衝突時に、上記ガセットに入力される後方かつ上方向の衝突荷重を、上述のドアヒンジ取付け部からドアヒンジを介してフロントドアにも荷重伝達することができる。
さらに、車両側突時には、フロントドアが車幅方向内側に引き込まれるが、その際、上記ガセットが引っ張り力にて支えるので、ヒンジピラーを内側に引き込む変形をも抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、車両のオフセット衝突時に、車両前方が下方に沈み込む挙動を抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図1からキャブサイドアウタパネルを取外した状態で示す外側面図
【
図3】
図2からヒンジピラーアウタを取外した状態で示す外側面図
【
図7】(a)は上側のヒンジレインフォースメントを示す拡大側面図、(b)は下側のヒンジレインフォースメントを示す拡大側面図
【
図8】(a)は外側ボックス部を車両前方かつ外方から見た状態で示す斜視図、(b)は外側ボックス部を車両前方かつ内方から見た状態で示す斜視図
【
図10】ガセットを車両前方かつ外方から見た状態で示す斜視図
【
図11】車両の前部車体構造の他の実施例を示す要部側面図
【
図13】
図11で示したガセットを車両前方かつ上方から見た状態で示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
車両のオフセット衝突時に、車両前方が下方に沈み込む挙動を抑制するという目的を、車両の上下方向に延びるヒンジピラーと、上記ヒンジピラーの下端に固定され、車両前後方向に延びて前端部が上記ヒンジピラーよりも車両前方に位置するサイドシルと、上記ヒンジピラーの前方に設けられる前輪のホイールと、を備える車両の前部車体構造であって、上記サイドシル前端部の上方において上記ヒンジピラーに固定され、車両の前後方向に延びる高剛性部を備え、上記高剛性部は前方ほど下方に位置するよう傾斜しており、上記高剛性部前端と上記サイドシル前端との間の上下方向の領域と、上記ホイールの中心位置と当該ホイールの上端位置との間の上下方向の領域と、が車両正面視で上下方向に重複するように設けられるという構成にて実現した。
【実施例】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部車体構造を示し、
図1は当該車両の前部車体構造を示す外側面図、
図2は
図1からキャブサイドアウタパネル16を取外した状態で示す外側面図、
図3は
図2からヒンジピラーアウタ32を取外した状態で示す外側面図である。また、
図4は
図3の要部拡大側面図、
図5は
図4のA-A線矢視断面図、
図6は
図4のB-B線矢視断面図である。
【0024】
図5、
図6に示すように、車室の床面を形成するフロアパネル10を設け、このフロアパネル10の車幅方向端部には上方に立上がる折曲げ部11を一体形成している。
上述のフロアパネル10の上記折曲げ部11には、
図2、
図3、
図4、
図5、
図6に示すように、サイドシル20(詳しくは、後述するサイドシルインナ21の内壁部21c)を接合固定している。
上述のサイドシル20は、
図5に示すように、サイドシルインナ21とサイドシルアウタ22とを接合固定して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面23を有する車体骨格部材である。
【0025】
サイドシルインナ21は、
図5に示すように、上側の接合フランジ部21aと、該接合フランジ部21aの下端から車幅方向内方に延びる上壁部21bと、該上壁部21bの車幅方向内方端から下方に延びる内壁部21cと、該内壁部21cの下端から車幅方向外方に延びる下壁部21dと、該下壁部21dの車幅方向外方端から下方に延びる下側の接合フランジ部21eと、を備えている。
【0026】
サイドシルアウタ22は、
図5に示すように、上側の接合フランジ部22aと、該接合フランジ部22aの下端から車幅方向外方に延びる上壁部22bと、該上壁部22bの車幅方向外方端から下方に延びる外壁部22cと、該外壁部22cの下端から車幅方向内方に延びる下壁部22dと、該下壁部22dの車幅方向内方端から下方に延びる下側の接合フランジ部22eと、を備えている。
【0027】
図1~
図4に示すように、サイドシル20の前端には、後述するヒンジピラー30に対して車両前方へ突出する前方突出部24が設けられている。この前方突出部24はサイドシル前端を構成するものである。
【0028】
図3に示すように、サイドシル20の一部を構成する前方突出部24は、上壁24a、前壁24b、下壁24c、側壁24dを有すると共に、これらの車幅方向内側にはフランジ部24eが一体形成されている。
【0029】
ここで、上述のフロアパネル10の折曲げ部11は、
図5に示すように、サイドシルインナ21の内壁部21cに接合固定されている。
また、同図に示すように、サイドシルインナ21の上側の接合フランジ部21aと、サイドシルアウタ22の上側の接合フランジ部22aとが接合固定される。同様に、サイドシルインナ21の下側の接合フランジ部21eと、サイドシルアウタ22の下側の接合フランジ部22eとが接合固定される。
【0030】
図6に示すように、フロアパネル10の上面には、断面ハット形状のフロアフレーム12が連結されている。このフロアフレーム12はフロアフレーム前部13とフロアフレーム後部14とを有して車両の前後方向に延びており、フロアフレーム前部13は後述するダッシュパネル39の下部背面と、フロアパネル10の前部上面との間に跨がって取付けられている。
上述のフロアフレーム後部14とフロアパネル10との間には、車両前後方向に延びるフロアフレーム閉断面14Sが形成され、これにより、下部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0031】
図2、
図3に示すように、車両下部において、車両の前後方向に延びる上述のサイドシル20と、車両上部において斜め方向に延びるフロントピラー15と、の間を車両の上下方向に延びて、これら両者20,15を連結するヒンジピラー30を設けている。
【0032】
ここで、上述のフロントピラー15はその前端から後端にかけて上方かつ後方に斜め方向に延びるもので、当該フロントピラー15は、フロントピラーインナとフロントピラーアウタとを接合固定して、同フロントピラー15の長手方向に延びるフロントピラー閉断面15Sを有する車体強度部材である。また、該フロントピラー15の後端には図示しないルーフサイドレールが連続して接続されている。
【0033】
図5、
図6に示すように、上述のヒンジピラー30は、ヒンジピラーインナ31とヒンジピラーアウタ32とを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面33を有する車体強度部材である。当該ヒンジピラー30の上端は、
図2、
図3に示すように、フロントピラー15の傾斜下端に固定され、ヒンジピラー30の下端は
図5に示すように、上記サイドシル20に固定されている。
【0034】
図6に示すように、ヒンジピラーインナ31は、前側の接合フランジ部31aと、前側段差部31bと、内壁部31cと後側段差部31dと、後側の接合フランジ部31eと、を有すると共に、前側の接合フランジ部31aからさらに前方に延びる前方延出部31fとを備えている。
【0035】
図6に示すように、ヒンジピラーアウタ32は、前側の接合フランジ部32aと、前壁部32bと、外壁部32cと、後壁部32dと、後側の接合フランジ部32eと、を平面視で断面ハット形状に一体形成したものである。
【0036】
上述の前壁部32bは、前側の接合フランジ部32aの後端から車幅方向外方に延びている。上述の外壁部32cは前壁部32bの車幅方向外端から車両後方に延びている。上述の後壁部32dは外壁部32cの後端から車幅方向内方に延びている。さらに、上述の後側の接合フランジ部32eは後壁部32dの車幅方向内端から車両後方に延びている。
【0037】
そして、
図6に示すように、ヒンジピラーインナ31の前側の接合フランジ部31aと、ヒンジピラーアウタ32の前側の接合フランジ部32aとを接合固定すると共に、ヒンジピラーインナ31の後側の接合フランジ部31eと、ヒンジピラーアウタ32の後側の接合フランジ部32eとを接合固定して、ヒンジピラー30を構成している。
【0038】
図1~
図4に示すように、上述のヒンジピラーインナ31の前方延出部31fに対してサイドシル20の前方突出部24におけるフランジ部24eが溶接手段にて固定されている。
また、
図1、
図2に示すように、上述のヒンジピラー30におけるヒンジピラーアウタ32の車両前側下部には、車両前方かつ下方に延びる前下延出部32fが一体形成されており、この前下延出部32fがサイドシル20の前方突出部24における各要素24a,24d,24eに溶接手段にて固定されている。
【0039】
図3、
図5に示すように、ヒンジピラーインナ31の内壁部31cにおける上下方向中間部には、開口部34が形成されており、この開口部34より下方の内壁部31cには、同図に示すように後述するスピーカボックス40の外側ボックス部43を取付けるために、車室内に開口する開口部35が形成されている。
図1に示すように、上述のサイドシル20、フロントピラー15およびヒンジピラー30の車外側の面は、キャブサイドアウタパネル16により一体的に覆われている。
【0040】
上述のキャブサイドアウタパネル16は、同図に示すように、フロントピラー15の外部を覆うフロントピラー部16FPと、ヒンジピラー30の外部を覆うヒンジピラー部16HPと、サイドシル20の外部を覆うサイドシル部16SSと、を備えている。
【0041】
図3に示すように、ヒンジピラー30のヒンジピラーインナ31において、上下一対のドアヒンジ(図示せず)のうちの上側のドアヒンジのボディ側ヒンジブラケットが取付けられる部位には、上側のヒンジレインフォースメント36が接合固定されている。
【0042】
図2に示すように、ヒンジピラー30のヒンジピラーアウタ32において、上下一対のドアヒンジ(図示せず)のうちの下側のドアヒンジのボディ側ヒンジブラケットが取付けられる部位には、下側のヒンジレインフォースメント37が接合固定されている。
【0043】
図7の(a)は上側のヒンジレインフォースメント36を示す拡大側面図、
図7の(b)は下側のヒンジレインフォースメント37を示す拡大側面図である。
図7の(a)に示すように、上側のヒンジレインフォースメント36は、少なくとも、側壁部36aと、この側壁部36aに上下および前後のスラント部36b,36c,36d,36eを介して一体形成されたフラットな隆起部36fと、を備えている。
【0044】
該隆起部36fは、フロントドアの前縁の上下に設けられる上下一対のドアヒンジブラケットのうち上側のドアヒンジブラケットの位置に対応しており、フロントドア取付け用の台座となるものである。
【0045】
図7の(b)に示すように、下側のヒンジレインフォースメント37は、少なくとも、側壁部37aと、この側壁部37aに上下および前後のスラント部37b,37c,37d,37eを介して一体形成されたフラットな隆起部37fと、を備えている。
【0046】
上記隆起部37fは、フロントドアの前縁の上下に設けられる上下一対のドアヒンジブラケットのうち下側のドアヒンジブラケットの位置に対応しており、フロントドア取付け用の台座となるものである。
【0047】
図面では車両右側の構造のみを示しているが、上述のサイドシル20、フロントピラー15およびヒンジピラー30は左右略対称構造に形成されており、
図6に示すように、左右一対のヒンジピラー30,30の前部同士を車幅方向に連結するダッシュパネル39が設けられている。
【0048】
この実施例においては、FR(前部機関後輪駆動)方式の車両を採用している。このため、上述のダッシュパネル39はエンジンルームと車室とを車両の前後方向に仕切るものである。また、プロペラシャフトを配設する目的で、上述のダッシュパネル39下部およびフロアパネル10の車幅方向中央には、
図1、
図2、
図3に示すように、車室側に突出して車両の前後方向に延びるトンネル部17が設けられている。
【0049】
上述のダッシュパネル39の前方部にはエンジンルームが形成されている。このエンジンルームの左右両サイドにおいて車両の前後方向に延びる車体強度部材としてのフロントサイドフレーム(図示せず)を設けている。
【0050】
図1~
図3に示すように、上述のフロントサイドフレームに対して車幅方向外側で、かつ、ホイールハウス18の上端よりも車両上方側には、エプロンレインフォースメント19が配設されている。このエプロンレインフォースメント19は、車両前後方向に略水平に延びており、その内部には閉断面空間が形成されている。
【0051】
また、
図1~
図3に示すように、エプロンレインフォースメント19は、ヒンジピラー30の上端部から車両前方へ延びるエプロンレイン後部19Rと、該エプロンレイン後部19Rの前端から車両前方へ延びるエプロンレイン前部19Fと、を備えている。
【0052】
図1~
図3に示すように、上述のフロントサイドフレームの前端部と、上述のエプロンレインフォースメント19におけるエプロンレイン前部19Fの前端部と、は上下方向に延びる連結部材としてのシュラウドサイドメンバ25で連結されている。
【0053】
図1~
図3に示すように、エプロンレインフォースメント19の車両前後方向の中間部下部と、ヒンジピラー30におけるヒンジピラーアウタ32の上下方向の中間部前部と、を斜交い状に連結する連結レインフォースメント26を設けている。
【0054】
図1~
図3、特に、
図2に示すように、上述の連結レインフォースメント26は、ヒンジピラーアウタ32の上下方向中間部前側からエプロンレイン後部19Rの前端部下部に向けて、前上方向に延びる連結レイン後部26Rと、この連結レイン後部26Rの前端部からエプロンレイン前部19Fの後端側下部に向けて前上方向に延びる連結レイン前部26Fと、を備えている。
上述の連結レイン後部26Rと連結レイン前部26Fとは一直線状に連結されている。
【0055】
図1~
図3に示すように、ヒンジピラー30の前方には、スチールホイールまたはアルミホイールから成るホイール27と、タイヤ28とを備えた前輪29が設けられている。上述の前輪29の上側過半部はホイールハウス18により離間囲繞されている。
【0056】
また、
図1~
図3に示すように、ホイールハウス18の車両前後方向の中間上部には、前輪29用の懸架装置としてのフロントサスペンション部材のダンパ(図示せず)を収容するサスペンションハウジング38が設けられている。
【0057】
すなわち、この実施例の車両の前部車体構造は、車両の上下方向に延びるヒンジピラー30と、該ヒンジピラー30の下端に固定され、車両前後方向に延びて前端部(前方突出部24参照)が上記ヒンジピラー30よりも車両前方に位置するサイドシル20と、上記ヒンジピラー30の前方に設けられる前輪29のホイール27と、を備えている。
【0058】
ところで、この実施例の車両の前部車体構造は、
図5に示すように、ヒンジピラー30下部のサイドシル20近傍に、すなわち、乗員の足元スペースに、バスレフレックス(bass reflex)式のスピーカボックス40を備えている。
【0059】
同図に示すように、このスピーカボックス40は、その内部にスピーカ41を保持した樹脂部材から成る内側ボックス部42と、この内側ボックス部42に対して車幅方向外側に位置する板金製の外側ボックス部43と、を備えている。
【0060】
図5に示すように、上述のスピーカ41は、その内部にダンパおよびコーン等を備えたフレーム41aと、フレーム41aのネック部に位置するヨーク41bと、上記コーンの開放側に設けられたスピーカグリル41cと、を備えている。
【0061】
図8は外側ボックス部43を示す斜視図であって、
図8の(a)は外側ボックス部43を車両前方かつ外方から見た状態で示す斜視図、
図8の(b)は外側ボックス部43を車両前方かつ内方から見た状態で示す斜視図である。
【0062】
図5、
図6、
図8に示すように、外側ボックス部43は、上側フランジ部43aと、下側フランジ部43bと、前側フランジ部43cと、後側フランジ部43dと、これら各フランジ部43a~43dからヒンジピラーアウタ32の外壁部32cに近接する位置まで車幅方向の外方へ膨出する膨出部43eと、を備えている。この膨出部43eは高強度部材を深絞り加工することにより形成される。
【0063】
上述の膨出部43eは、
図8に示すように、上壁43f、前壁43g、下壁43h、後壁43i、外壁43jを備えている。
図6に示すように、上述の膨出部43eにおける外壁43jの前部は、ヒンジピラーアウタ32の外壁部32cに当接しており、これら両者43j,32cがスポット溶接手段にて接合固定されている。また、
図5に示すように、サイドシル閉断面23内に位置する下側フランジ部43bには、サイドシルレイン44が連結されており、このサイドシルレイン44の下部は、サイドシル20の下側の各接合フランジ部21e,22e間に挟持されると共に、これら各要素21e,22eにスポット溶接手段にて固定されている。
【0064】
図5、
図6、
図8に示すように、上述の膨出部43eはドーム形状に形成されており、当該膨出部43eの内部には、空洞部45が形成されている。
上述の各フランジ部43a,43b,43c,43dのうちの上側フランジ部43a、前側フランジ部43c、後側フランジ部43dは、ヒンジピラーインナ31の開口部35の口縁において当該ヒンジピラーインナ31の内壁部31cにおける車幅方向内側の面にスポット溶接等の接合手段にて固定されている(
図5、
図6参照)。
【0065】
外側ボックス部43の上記各フランジ部43a,43c,43dがヒンジピラーインナ31に固定され、かつ外側ボックス部43の膨出部43eにおける外壁43jの前部がヒンジピラーアウタ32に固定されることで、ヒンジピラー閉断面33内において当該外側ボックス部43にてヒンジピラーインナ31とヒンジピラーアウタ32とを連結している。
【0066】
図5に示すように、外側ボックス部43の下側フランジ部43bは、車体骨格部材であるサイドシル20に固定されている。詳しくは、上記下側フランジ部43bはサイドシルインナ21の上側の接合フランジ部21aと、サイドシルアウタ22の上側の接合フランジ部22aと、の間に挟持固定されると共に、これら各要素21a,22aにスポット溶接手段にて固定されている。
【0067】
図5に示すように、内側ボックス部42は、表面壁42aと、上壁部42bと、裏面壁42cと、上側横壁42dと、上側縦壁42eと、下側横壁42fと、下側縦壁42gと、下壁部42hと、図示しない前壁部と、後壁部と、を備えている。
【0068】
図5に示すように、上述の表面壁42aはスピーカボックス40の車幅方向内側の表面を形成する。該表面壁42aの上部には、内側ボックス部42の内部空間46側、すなわち、車幅方向外側に延びる円筒形状のスピーカ支持部42kを一体形成し、このスピーカ支持部42kによりスピーカ41を支持している。
【0069】
上述の上壁部42bは、表面壁42aの上端から車幅方向外方に延びている。上述の裏面壁42cは上壁部42bの車幅方向外端から下方に延びている。
この裏面壁42cの全体は、外側ボックス部43の各フランジ部43a~43dを介してヒンジピラーインナ31に当接する当接部47を形成するものである。そして、上記裏面壁42cには、外側ボックス部43側の空洞部45と、内側ボックス部42側の内部空間46とを連通する連通開口部48が形成されている。
【0070】
図5に示すように、上述の上側横壁42dは、裏面壁42cの下端から車幅方向内方に延びている。また、上述の上側縦壁42eは、上側横壁42dの車幅方向内端から下方に延びている。さらに、上述の下側横壁42fは、上側縦壁42eの下端から車幅方向内方に延びている。さらにまた、上述の下側縦壁42gは、下側横壁42fの車幅方向内端から下方に延びている。加えて、上述の下壁部42hは下側縦壁42gの下端から車幅方向内方に延びて、下側縦壁42gの下端と表面壁42aの下端とを連結している。
【0071】
上述の内側ボックス部42の前壁部(図示せず)は、上記各要素42a~42hで囲繞された内側ボックス部42の前部を閉塞する。また、上述の内側ボックス部42の後壁部(図示せず)は、上記各要素42a~42hで囲繞された内側ボックス部42の後部を閉塞する。
【0072】
この実施例のスピーカボックス40はバスレフレックス式のエンクロージャ(enclosure)であるから、内側ボックス部42の前壁部の下部には低音再生出力用のポート開口部(図示せず)が開口形成されている。
【0073】
上述のようにスピーカの配設構造は、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面33と、車室内に開口する開口部35と、を有するヒンジピラー30と、スピーカ41を保持して上記開口部35の口縁に固定されるスピーカボックス40の外側ボックス部43と、を備えている(
図5参照)。
【0074】
また、上述の外側ボックス部43は、車体骨格部材としてのサイドシル20に固定される下側フランジ部43bと、この下側フランジ部43bからヒンジピラー30の車幅方向外側端部、すなわち、ヒンジピラーアウタ32の外壁部32cに近接する位置まで膨出する膨出部43eと、を備えている(
図5参照)。
【0075】
図9は高剛性部を備えたガセットの拡大側面図、
図10はガセットを車両前方かつ外方から見た状態で示す斜視図である。
図2、
図6に示すように、サイドシル20の前端部である前方突出部24の上方と、連結レインフォースメント26における連結レイン後部26Rの後端下部との間において上述のヒンジピラー30に固定されたガセット50を設けている。
【0076】
図9、
図10に示すように、上記ガセット50は、外側壁50aと、上壁50bと、下壁50cと、前部フランジ50dと、後部フランジ50eと、前側の上部フランジ50fと、後側と上部フランジ50gと、前側の下部フランジ50hと、後側の下部フランジ50iと、を備えている。
【0077】
外側壁50aは車両後側程、車幅方向の外側に位置するように傾斜しており、ガセット50が平面視で三角形状に形成されている(
図10参照)。
上述の上壁50bは外側壁50aの上端から車幅方向の内方に延びている。上述の下壁50cは外側壁50aの下端から車幅方向の内方に延びている。上述の前部フランジ50dは外側壁50aの前端から車両前方に延びている。上述の後部フランジ50eは外側壁50aの後端から車両後方に延びている。
【0078】
また、前側の上部フランジ50fは平面視三角形状の上壁50bの車幅方向内端(つまり、三角形の対辺)から上方に延びている。後側の上部フランジ50gは平面視三角形状の上壁50bの後端(つまり、三角形の底辺)から上方に延びている。さらに、前側の下部フランジ50hは平面視三角形状の下壁50cの車幅方向内端(つまり、三角形の対辺)から下方に延びている。後側の下部フランジ50iは平面視三角形状の下壁50cの後端(つまり、三角形の底辺)から下方に延びている。
【0079】
上述の上壁50bと上述の外側壁50aとの間に車両の前後方向に延びる上部稜線X1を形成すると共に、上述の外側壁50aと上述の下壁50cとの間にも車両の前後方向に延びる下部稜線X2を形成し、これらの各稜線X1,X2により、前方ほど下方に位置するよう傾斜した高剛性部(いわゆる前傾姿勢の高剛性部)を構成している。ここで、上下の各稜線X1,X2は互いに略平行に形成されている。また、各稜線X1,X2が仮想水平線に対して前方ほど下方に位置するよう傾斜する傾斜角度、いわゆる前下り角度は、この実施例においては、2度~4度に設定されているが、これに限定されるものではない。
【0080】
この実施例では、上下の稜線X1,X2を含んでガセット50の全体が車両の前後方向に延びると共に、当該ガセット50の全体を車両前方ほど下方に位置するよう傾斜させている。
【0081】
図2、
図6に示すように、上述の前部フランジ50dと、前側の上部フランジ50fと、前側の下部フランジ50hとは、スポット溶接等の手段にてヒンジピラーインナ31の前方延出部31fに固定されている。上述の後側の上部フランジ50gと、後側の下部フランジ50iとは、スポット溶接等の手段にてヒンジピラーアウタ32の前壁部32bに固定されている。上述の後部フランジ50eは、スポット溶接等の手段にてヒンジピラーアウタ32の外壁部32cに固定されている。これにより、上記ガセット50がヒンジピラー30に固定されたものである。
【0082】
また、
図9、
図10に示すように、ガセット50の外側壁50aにおける前後方向の中間部には、開口部51を開口形成し、これにより、略ボックス形状のガセット50の軽量化を図るように構成している。加えて、
図9、
図10に示すように、ガセット50の前側の上部フランジ50f、前側の下部フランジ50h、外側壁50aの前部下側、外側壁50aの後部上側にも、それぞれ開口部50j,50k,50m,50nが形成されている。
【0083】
さらに、
図9、
図10に示すように、ガセット50の外側壁50aにおいて、上記開口部51の周縁部を含めて前部フランジ50dから後部フランジ50eに至るまで車両前後方向に延びると共に、車幅方向外方に突出するリブ52を形成し、これによりガセット50それ自体の強度向上を図るように構成している。
【0084】
しかも、
図4に示すように、高剛性部である上部稜線X1、下部稜線X2(特に、下部稜線X2)の前端とサイドシル20の前端(前方突出部24の前端)20Fとの間の上下方向の領域αと、ホイール27の中心位置CEと当該ホイール27の上端位置WUとの間の上下方向の領域βと、が車両正面視で上下方向に重複するように設けられている。
【0085】
車両のオフセット衝突時には、前輪29のホイール27が後退し、該ホイール27がサイドシル20の前端、詳しくは、前方突出部24の前端20Fに当接する。車両の重心はサイドシル20よりも上方に位置するので、オフセット衝突により車両下方部のサイドシル20が止められると、車両前方が下方に沈み込もうとする回転が生ずる。この際、サイドシル20の前端20Fを中心としてガセット50の前方が、
図4に示す仮想円CIRに沿って下方に回転する挙動の過程で、下部稜線X2に対してホイール27の上半分が当接する。つまり、ガセット50の前端に対してホイール27が下方から当たる。これにより、ガセット50および下部稜線X2には後方かつ上方向の荷重が入力される。当該ガセット50および下部稜線X2は前方ほど下方に位置するよう傾斜しているので、ホイール27から下部稜線X2に入力される後方かつ上方向の衝突荷重を当該下部稜線X2の軸方向で受け、ガセット50の変形が抑制され、かつ、衝突荷重を下部稜線X2からヒンジピラー30に荷重伝達し、車両前方が下方に沈み込もうとする回転を抑制すべく構成している。
【0086】
また、
図4、
図9、
図10で示すように、上述の高剛性部を平面視で三角形状のガセット50の稜線X1,X2(特に、下部稜線X2)で構成することにより、軽量な構造でありつつ、車両のオフセット衝突時に車両前方が下方に沈み込む挙動を抑制するように構成している。さらに、上述のガセット50を平面視で三角形状のトラス構造とすることで、当該ガセット50の強度向上を図るように構成している。
【0087】
図5、
図6に示すように、上述のヒンジピラー30は、ヒンジピラーインナ31とヒンジピラーアウタ32とを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面33を備えている。そして、このヒンジピラー閉断面33内には、ヒンジピラーインナ31とヒンジピラーアウタ32とを連結する補強部材としてのスピーカボックス40の外側ボックス部43が設けられており、
図4に示すように、上述のガセット50は車両正面視で当該外側ボックス部43と上下方向に重複するものである。
【0088】
これにより、車両のオフセット衝突時、上述のガセット50からの荷重を、補強部材である外側ボックス部43を備えたヒンジピラー閉断面33で支持し、ヒンジピラー30の断面変形を抑制するように構成している。
【0089】
図3、
図4に示すように、上述のガセット50は補強部材としてのスピーカボックス40の外側ボックス部43の下半分の部位、詳しくは、外側ボックス部43の膨出部43eの下半分を含む外側ボックス部43の下半分の部位と車両正面視で上下方向に重複している。
【0090】
これにより、上記ガセット50に入力される後方かつ上方向の衝突荷重が上述の外側ボックス部43の前方下部から後方上部を介してヒンジピラー30に伝達される。すなわち、オフセット衝突時の衝突荷重を斜め後上方向に向けてヒンジピラー30に伝達する経路が形成され、この結果、ガセット50に生じる反力を、ヒンジピラー閉断面33で支持するように構成したものである。
【0091】
また、
図5に示すように、上述の補強部材は、スピーカ41を保持した状態で上述のヒンジピラー30下部に固定されるスピーカボックス40(詳しくは、その外側ボックス部43)で構成されている。これにより、補強部材としてのスピーカボックス40により、スピーカ41の保持と、ガセット50からの荷重支持機能との両立を図るように構成している。
【0092】
さらに、
図4~
図6に示すように、補強部材である外側ボックス部43と対向するヒンジピラー30のヒンジピラーアウタ32には、上述のガセット50の高さ位置と略同じ高さ位置にドアヒンジ取付け部32Gが設けられている。
【0093】
上述のドアヒンジ取付け部32Gには、ヒンジレインフォースメント37およびキャブサイドアウタパネル16のヒンジピラー部16HPを介して、ドアヒンジブラケットにおけるボディ側ヒンジブラケット(図示せず)が取付けられる。
【0094】
これにより、車両のオフセット衝突時に、上述のガセット50に入力される後方かつ上方向の衝突荷重を、上述のドアヒンジ取付け部32Gからドアヒンジを介してフロントドアにも荷重伝達するように構成している。一方、車両の側突時には、フロントドア、特に、その前後方向中間部が車幅方向内側に引き込まれるが、その際、上述のガセット50が引っ張り力にて支えることで、ヒンジピラー30を内側に引き込む変形をも抑制するように構成している。
【0095】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0096】
このように、
図1~
図10で示した実施例の車両の前部車体構造は、車両の上下方向に延びるヒンジピラー30と、上記ヒンジピラー30の下端に固定され、車両前後方向に延びて前端部(前方突出部24参照)が上記ヒンジピラー30よりも車両前方に位置するサイドシル20と、上記ヒンジピラー30の前方に設けられる前輪29のホイール27と、を備える車両の前部車体構造であって、上記サイドシル前端部(前方突出部24)の上方において上記ヒンジピラー30に固定され、車両の前後方向に延びる高剛性部(ガセット50の稜線X1,X2のうちの少なくとも下部稜線X2)を備え、上記高剛性部(下部稜線X2)は前方ほど下方に位置するよう傾斜しており、上記高剛性部(下部稜線X2)前端と上記サイドシル前端20Fとの間の上下方向の領域αと、上記ホイール27の中心位置CEと当該ホイール27の上端位置WUとの間の上下方向の領域βと、が車両正面視で上下方向に重複するように設けられたものである(
図3、
図4参照)。
【0097】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、車両のオフセット衝突時には、前輪29のホイール27が後退し、該ホイール27がサイドシル前端20Fに当接する。車両の重心はサイドシル20よりも上方に位置するので、オフセット衝突により車両下方部のサイドシル20が止められると、車両前方が下方に沈み込もうとする回転が生ずる。この際、サイドシル20の前端20Fを中心として高剛性部(下部稜線X2)の前方が
図4に示す仮想円CIRに沿って下方に回転する挙動の過程で、高剛性部(下部稜線X2)に対してホイール27の上半分が当接する。
【0098】
これにより高剛性部(下部稜線X2)には後方かつ上方向の荷重が入力される。当該高剛性部(下部稜線X2)は前方ほど下方に傾斜しているので、ホイール27から高剛性部(下部稜線X2)に入力される後方かつ上方向の衝突荷重を当該高剛性部(下部稜線X2)の軸方向で受け、高剛性部(下部稜線X2)の変形が抑制されると共に、衝突荷重を高剛性部(下部稜線X2)からヒンジピラー30に荷重伝達し、車両前方が下方に沈み込もうとする回転を抑制することができる。
【0099】
また、この発明の一実施形態においては、上記サイドシル前端部(前方突出部24)の上方において、上記ヒンジピラー30に固定され車両の前後方向に延びるガセット50を備え、該ガセット50は、少なくとも上壁50bと外側壁50aと下壁50cとを有して平面視で三角形状に形成されており、上記高剛性部は、上記上壁50bと上記外側壁50aとの間の稜線(上部稜線X1)、並びに、上記外側壁50aと上記下壁50cとの間の稜線(下部稜線X2)であることを特徴とする(
図4、
図9、
図10参照)。
【0100】
この構成によれば、高剛性部をガセット50の稜線X1,X2で構成するので、軽量な構造でありながら、平面視三角形状のガセット50の上記稜線X1,X2の前傾構造により、オフセット衝突荷重を稜線X1,X2の軸方向で受けて、当該荷重をヒンジピラー30に伝達する。これにより、オフセット衝突時に車両前方が下方に沈み込む挙動を抑制することができる。また、上記ガセット50は、平面視三角形状のトラス構造であるから、当該ガセット50の強度向上を図ることができる。
【0101】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記ヒンジピラー30は、ヒンジピラーインナ31とヒンジピラーアウタ32とを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面33を備えており、上記ヒンジピラー閉断面33内に上記ヒンジピラーインナ31と上記ヒンジピラーアウタ32とを連結する補強部材(外側ボックス部43)を備え、上記ガセット50は車両正面視で上記補強部材(外側ボックス部43)と重複するものである(
図4、
図5、
図6参照)。
【0102】
この構成によれば、上述のガセット50からの荷重を、補強部材(外側ボックス部43)を備えたヒンジピラー閉断面33で支持することができ、ヒンジピラー30の断面変形を抑制することができる。
【0103】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記ガセット50は上記補強部材(外側ボックス部43)の下半分の部位と車両正面視で重複するものである(
図4参照)。
この構成によれば、ガセット50に入力される後方かつ上方向の衝突荷重が上記補強部材(外側ボックス部43)の前方下部から後方上部を介してヒンジピラー30に伝達できる。すなわち、上記衝突荷重を斜め後上方向に向けてヒンジピラー30に伝達する経路が形成される。これにより、ガセット50に生じる反力を、ヒンジピラー閉断面33で支持することができる。
【0104】
加えて、この発明の一実施形態においては、上記補強部材は、スピーカ41を保持した状態で上記ヒンジピラー30に固定されるスピーカボックス40(特に、その外側ボックス部43参照)で構成されたものである(
図5参照)。
この構成によれば、補強部材(スピーカボックス40における外側ボックス部43)により、スピーカ41の保持と、ガセット50からの荷重支持機能との両立を図ることができる。
【0105】
また、この発明の一実施形態においては、上記補強部材(外側ボックス部43)と対向する上記ヒンジピラーアウタ32には、上記ガセット50の高さ位置と略同じ高さ位置にドアヒンジ取付け部32Gが設けられたものである(
図4、
図5参照)。
【0106】
この構成によれば、車両のオフセット衝突時に、上記ガセット50に入力される後方かつ上方向の衝突荷重を、上述のドアヒンジ取付け部32Gからドアヒンジ(図示せず)を介してフロントドアにも荷重伝達することができる。
さらに、車両側突時には、フロントドアが車幅方向内側に引き込まれるが、その際、上記ガセット50が引っ張り力にて支えるので、ヒンジピラー30を内側に引き込む変形をも抑制することができる。
<他の実施例>
図11は車両の前部車体構造の他の実施例を示す要部側面図、
図12は
図11のC-C線矢視断面図、
図13は
図11で示したガセットを車両前方かつ上方から見た状態で示す斜視図である。
図6、
図10で示した先の実施例においては、車両平面視において三角形状に形成されたガセット50を採用したが、
図11~
図13に示すこの実施例においては、車両平面視において四角形状に形成されたガセット60を採用している。
【0107】
図11に示すように、このガセット60もサイドシル20の前端部である前方突出部24の上方と、連結レインフォースメント26における連結レイン後部26Rの後端下部との間において上述のヒンジピラー30に固定されている。
【0108】
図13に示すように、このガセット60は、外側壁60a、前壁60b、上壁60c、下壁60d、前部フランジ60e、外部フランジ60f、上部フランジ60g、下部フランジ60h、上側の後部フランジ60i、下側の後部フランジ60jと、を備えてボックス形状に形成されている。
【0109】
外側壁60aは車両前後方向に延びている。前壁60bは外側壁60aの前端から車幅方向内側に延びている。上壁60cは外側壁60aおよび前壁60bの上端と、各フランジ60g,60iの下端側とを連結している。下壁60dは外側壁60aおよび前壁60bの下端と、各フランジ60h,60jの上端側とを連結している。ここで、上述の上壁60cおよび下壁60dは略フラットに形成されている。
【0110】
また、前部フランジ60eは前壁60bの車幅方向内端から車両前方に延びている。外部フランジ60fは外側壁60aの後端から車両後方に延びている。上部フランジ60gは上壁60cの車幅方向内端から上方に延びている。下部フランジ60hは下壁60dの車幅方向内端から下方に延びている。上側の後部フランジ60iは上壁60cの後端から上方に延びている。下側の後部フランジ60jは下壁60dの後端から下方に延びている。
【0111】
そして、
図11、
図12に示すように、前部フランジ60e、上部フランジ60g、下部フランジ60hは、ヒンジピラーインナ31の前方延出部31fに対してスポット溶接等の手段にて固定されている。また、上下の各後部フランジ60i,60jはヒンジピラーアウタ32の前壁部32bに対してスポット溶接等の手段にて固定されている。さらに、外部フランジ60fはヒンジピラーアウタ32の外壁部32cに対してスポット溶接等の手段にて固定されている。これにより、上記ガセット60がヒンジピラー30に固定されたものである。
【0112】
上述の上壁60cおよび下壁60dを車両平面視で略四角形状に形成することで、ガセット60の全体を平面視四角形状に形成している。また、該ガセット60は
図13に示すように、ボックス状に形成されると共に、
図11に示すように、前方ほど下方に傾斜するように固定されている。
【0113】
図13に示すように、上述の上壁60cと上述の外側壁60aとの間には、車両の前後方向に延びる上部稜線Y1を形成すると共に、上述の外側壁60aと下壁60dとの間にも、車両の前後方向に延びる下部稜線Y2を形成し、これらの各稜線Y1,Y2により、前方ほど下方に位置するよう傾斜した高剛性部を構成している。また、上述の上部稜線Y1と下部稜線Y2とは略平行に形成されている。
【0114】
ここで、上述の各稜線Y1,Y2は、仮想水平線に対して前方ほど下方に位置するよう傾斜する傾斜角度いわゆる前下り角度が、この実施例においては、2度~4度に設定されているが、これに限定されるものではない。
【0115】
図13に示すように、上述の上壁60cと上述の前壁60bとの間には、車幅方向に延びる上部稜線Z1を形成すると共に、上述の下壁60dと上述の前壁60bとの間には、車幅方向に延びる下部稜線Z2を形成している。また、上述の上部稜線Z1と下部稜線Z2とは略平行に形成されている。
【0116】
前後方向に延びる上部稜線Y1の前端に、車幅方向に延びる上部稜線Z1を連続形成し、前後方向に延びる下部稜線Y2の前端に、車幅方向に延びる下部稜線Z2を連続形成している。
しかも、この実施例においても、
図11に示すように、高剛性部である上部稜線Y1、下部稜線Y2(特に、下部稜線Y2)の前端とサイドシル20の前端(前方突出部24の前端20F)との間の上下方向の領域αと、ホイール27の中心位置CEと当該ホイール27の上端位置WUとの間の上下方向の領域βと、が車両正面視で上下方向に重複するように設けられている。
【0117】
このように、
図11~
図13で示した実施例の車両の前部車体構造は、車両の上下方向に延びるヒンジピラー30と、上記ヒンジピラー30の下端に固定され、車両前後方向に延びて前端部(前方突出部24参照)が上記ヒンジピラー30よりも車両前方に位置するサイドシル20と、上記ヒンジピラー30の前方に設けられる前輪29のホイール27と、を備える車両の前部車体構造であって、上記サイドシル前端部(前方突出部24)の上方において上記ヒンジピラー30に固定され、車両の前後方向に延びる高剛性部(ガセット60の稜線Y1,Y2のうちの少なくとも下部稜線Y2)を備え、上記高剛性部(下部稜線Y2)は前方ほど下方に位置するよう傾斜しており、上記高剛性部(下部稜線Y2)前端と上記サイドシル前端20Fとの間の上下方向の領域αと、上記ホイール27の中心位置CEと当該ホイール27の上端位置WUとの間の上下方向の領域βと、が車両正面視で上下方向に重複するように設けられたものである(
図11~
図13参照)。
【0118】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、車両のオフセット衝突時には、前輪29のホイール27が後退し、該ホイール27がサイドシル前端20Fに当接する。車両の重心はサイドシル20よりも上方に位置するので、オフセット衝突により車両下方部のサイドシル20が止められると、車両前方が下方に沈み込もうとする回転が生ずる。この際、サイドシル20を中心として高剛性部(下部稜線Y2)の前方が
図11に示す仮想円CIRに沿って下方に回転する挙動の過程で、高剛性部(下部稜線Y2)に対してホイール27の上半分が当接する。
【0119】
これにより高剛性部(下部稜線Y2)には後方かつ上方向の荷重が入力される。当該高剛性部(下部稜線Y2)は前方ほど下方に位置するよう傾斜しているので、ホイール27から高剛性部(下部稜線Y2)に入力される後方かつ上方向の衝突荷重を当該高剛性部(下部稜線Y2)の軸方向で受け、高剛性部(下部稜線Y2)の変形が抑制されると共に、衝突荷重を高剛性部(下部稜線Y2)からヒンジピラー30に荷重伝達し、車両前方が下方に沈み込もうとする回転を抑制することができる。
【0120】
また、この実施例においては、上記サイドシル前端部(前方突出部24)の上方において、上記ヒンジピラー30に固定され車両の前後方向に延びるガセット60を備え、該ガセット60は、少なくとも上壁60cと外側壁60aと下壁60dとを有して平面視で四角形状に形成されており、上記高剛性部は、上記上壁60cと上記外側壁60aとの間の稜線(上部稜線Y1)、並びに、上記外側壁60aと上記下壁60dとの間の稜線(下部稜線Y2)である。
【0121】
このように、高剛性部をガセット60の稜線Y1,Y2で構成するので、軽量な構造でありながら、平面視四角形状のガセット60の上記稜線Y1,Y2の前傾構造により、オフセット衝突荷重を稜線Y1,Y2の軸方向で受けて、当該荷重をヒンジピラー30に伝達する。これにより、オフセット衝突時に車両前方が下方に沈み込む挙動を抑制することができる。
【0122】
図11、
図12、
図13で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、
図1~
図10を参照して説明した先の実施例と略同様であるから、
図11~
図13において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
<さらに他の実施例>
図14はガセット60の他の実施例を示す斜視図である。
図14に示すこの実施例においては、
図13で示した先の実施例の構成に加えて、ガセット60の前後方向に延びる上記上部稜線Y1と上記下部稜線Y2との上下方向中間に、外側壁60aから車幅方向外方へ突出する側方ビード61を一体形成し、この側方ビード61により中間稜線Y3を形成している。
【0123】
また、ガセット60の車幅方向に延びる上記上部稜線Z1と上記下部稜線Z2との上下方向中間に、前壁60bから車両前方へ突出する前方ビード62を一体形成し、この前方ビード62により中間稜線Z3を形成している。
【0124】
ここで、上述の側方ビード61と中間稜線Y3とは、車両前後方向に延びると共に、前方ほど下方に位置するよう傾斜している。また、上述の前方ビード62と中間稜線Z3とは、車幅方向に延びている。
【0125】
さらに、前後方向に延びる側方ビード61の前端に、車幅方向に延びる前方ビード62を連続形成し、かつ、前後方向に延びる中間稜線Y3の前端に、車幅方向に延びる中間稜線Z3を連続形成している。
さらにまた、上述の中間稜線Y3は上部稜線Y1および下部稜線Y2と略平行に形成されており、上述の中間稜線Z3は上部稜線Z1および下部稜線Z2と略平行に形成されている。
【0126】
加えて、この実施例においては、前後方向に延びる各稜線Y1,Y2,Y3が、車両正面視においてホイール27の上半分の領域と上下方向で重複するように設けられている。
このように構成すると、上記各ビード61,62によりガセット60の強度向上を図ることができ、しかも、車両のオフセット衝突時に、高剛性部である各稜線Y1,Y2,Y3を介してヒンジピラー30に伝達する荷重伝達率の向上を図ることができる。
【0127】
図14で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については
図11~
図13の実施例と同様であるから、
図14において、
図13と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0128】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のサイドシル20の前端部は、実施例の前方突出部24に対応し、
以下同様に、
高剛性部は、ガセット50,60の稜線X1,X2,Y1,Y2に対応し、
補強部材は、スピーカボックス40の外側ボックス部43に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0129】
例えば、上記各実施例においては稜線X1,X2、稜線Y1,Y2をそれぞれ互いに平行に形成したが、これら各稜線X1,X2、Y1,Y2は前方ほど下方に傾斜する条件を保った状態下において、当該稜線の前部間の上下間隔に対して後部間の上下間隔が広くなるように形成してもよく、逆に、前部間の上下間隔に対して後部間の上下間隔が狭くなるように形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上説明したように、本発明は、車両の上下方向に延びるヒンジピラーと、上記ヒンジピラーの下端に固定され、車両前後方向に延びて前端部が上記ヒンジピラーよりも車両前方に位置するサイドシルと、上記ヒンジピラーの前方に設けられる前輪のホイールと、を備える車両の前部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0131】
20…サイドシル
20F…サイドシルの前端
24…前方突出部(サイドシルの前端部)
27…ホイール
29…前輪
30…ヒンジピラー
31…ヒンジピラーインナ
32…ヒンジピラーアウタ
32G…ドアヒンジ取付け部
33…ヒンジピラー閉断面
40…スピーカボックス
41…スピーカ
43…外側ボックス部(補強部材)
50…ガセット
50a…外側壁
50b…上壁
50c…下壁
60…ガセット
60a…外側壁
60c…上壁
60d…下壁
α,β…領域
CE…ホイールの中心位置
WU…ホイールの上端位置
X1,X2,Y1,Y2…稜線(高剛性部)