(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20240319BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20240319BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/205
(21)【出願番号】P 2020199603
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222331(JP,A)
【文献】特開2020-164143(JP,A)
【文献】特開平06-344844(JP,A)
【文献】特開2011-057142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において助手席に着座した乗員の前方側におけるインストルメントパネルの内部に折り畳まれて収納され、内部に膨張用ガスを流入させて収納部位から後方側に向かって突出するように展開膨張し、前記乗員を保護可能に構成される助手席用のエアバッグであって、
内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体と、該バッグ本体の膨張完了形状を規制する規制手段と、を有する構成とされ、
前記バッグ本体が、膨張完了形状を、左右方向に略沿って貫通する中空部を有し、該中空部の周囲を、上下両側において前後方向に略沿うように配置される上側膨張部及び下側膨張部と、前後両側において上下方向に略沿うように配置される前側膨張部及び後側膨張部と、によって囲まれる略四角筒形状として、膨張完了時に前記乗員側に配置される前記後側膨張部を、前記乗員を保護可能な乗員保護部とし、膨張完了時における前端側に、前記収納部位側に取り付けられる取付部を、配設させる構成とされ、
前記上側膨張部が、膨張完了時に、前端側を、前記インストルメントパネルの上方に配置されるウィンドシールドによって支持される構成とされ、
前記下側膨張部が、膨張完了時に、前端側を、前記インストルメントパネルによって支持される構成とされ、
前記規制手段が、
前記中空部を閉塞するように、周縁を全周にわたって前記バッグ本体側に連結される閉塞パネルとして、構成されるとともに、それぞれ、前記中空部の左右両端側を閉塞するように、2箇所に配設され、
前記バッグ本体において、内周面側の前記中空部の周壁を構成する内周パネル部において、前記乗員保護部の前面側を構成する領域に、前記バッグ本体内に流入した膨張用ガスを前記中空部側に排出可能な排気孔が、形成され、
前記バッグ本体において、前記内周パネル部と前記閉塞パネルとによって囲まれた領域が、ガス貯留部として、構成され、
前記閉塞パネルにおける左右の少なくとも一方に、前記バッグ本体の展開膨張時において、前記ガス貯留部内に外気を取り込み可能な吸気穴部が、形成され、
該吸気穴部が、開口面積を、前記排気孔の開口面積よりも小さく設定されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記吸気穴部が、外部へのガスの排出を抑制可能に、逆止弁機構を備えていることを特徴とする
請求項1に記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両においてシートに着座した乗員の前方側に折り畳まれて収納され、内部に膨張用ガスを流入させて収納部位から後方側に向かって突出するように展開膨張し、乗員を保護可能に構成されるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグとしては、左右方向に略沿って貫通する中空部を、膨張完了時の上下前後の略中央に配置させるように、ループ状に膨張する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。この従来の助手席用エアバッグでは、膨張完了時に中空部の上側に配置される上側部と、中空部の下側に配置される下側部との離隔距離を規制するように、上側部と下側部とを連結する規制手段を、配設させる構成とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエアバッグでは、上側部と下側部とを連結手段を用いて連結させることにより、展開膨張時における上側部と下側部との過度の離隔を抑制し、上下方向側で大きく揺動しつつ膨張することを抑制する構成である。しかしながら、従来のエアバッグでは、規制手段が左右の中央付近となる一箇所のみに配設される構成であることから、展開膨張時に、左右に広い範囲で略均等に揺動を抑制する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、左右に広い範囲で略均等に揺動を抑制して、膨張させることが可能なエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグは、車両においてシートに着座した乗員の前方側に折り畳まれて収納され、内部に膨張用ガスを流入させて収納部位から後方側に向かって突出するように展開膨張し、乗員を保護可能に構成されるエアバッグであって、
内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体と、バッグ本体の膨張完了形状を規制する規制手段と、を有する構成とされ、
バッグ本体が、膨張完了形状を、左右方向に略沿って貫通する中空部を有し、中空部の周囲を、上下両側において前後方向に略沿うように配置される上側膨張部及び下側膨張部と、前後両側において上下方向に略沿うように配置される前側膨張部及び後側膨張部と、によって囲まれる略四角筒形状として、膨張完了時に乗員側に配置される後側膨張部を、乗員を保護可能な乗員保護部とし、膨張完了時における前端側に、収納部位側に取り付けられる取付部を、配設させる構成とされ、
規制手段が、バッグ本体の左右方向側の中央を中心として左右対称となる複数箇所に、配設されるとともに、それぞれ、左右方向の側方から見て、中空部を跨ぐようにして、少なくとも上縁側と下縁側とを、バッグ本体側に連結される構成とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアバッグでは、膨張完了時に左右方向の側方から見て、中空部を跨ぐようにして、少なくとも上縁側と下縁側とをバッグ本体側(上側膨張部及び下側膨張部)に連結させる規制手段が、バッグ本体の左右方向側の中央を中心として左右対称となる複数箇所に、配設される構成であることから、膨張初期に、バッグ本体が、上側膨張部と下側膨張部とを離隔させるように展開することを、左右に広い範囲で的確に抑制することができ、バッグ本体を、左右に広い範囲で略均等に揺動を抑制して、膨張させることができて、膨張を完了させたバッグ本体により、安定して乗員を保護することができる。また、本発明のエアバッグでは、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体が、膨張完了形状を、左右方向に略沿って貫通する中空部を有する略四角環状として構成されており、膨張完了時に中空部の後側に配置される後側膨張部を、乗員を保護可能な乗員保護部としている。すなわち、本発明のエアバッグでは、乗員保護部が、略板状として、収納部位側に取り付けられる取付部と分離して配置されるものの、乗員保護部の上端側と下端側とは、膨張完了時に前後方向に略沿うように配置される上側膨張部と下側膨張部とにより、支持されることから、乗員保護部によって、前方移動する乗員を安定して受け止めることができる。また、乗員保護部を支持する上側膨張部と下側膨張部とは、規制部材により、左右方向側で離隔した複数箇所で相互に連結されていることから、乗員保護部による乗員受止時に、反力を低下させるような相互に離隔する変形も、左右に広い範囲で規制されることとなる。そのため、取付部と分離されて間に中空部を備える構成であっても、前方移動する乗員を、乗員保護部によって安定して拘束することができる。
【0008】
したがって、本発明のエアバッグでは、左右に広い範囲で略均等に揺動を抑制して、膨張させることができる。
【0009】
また、本発明のエアバッグにおいて、各規制手段を、上縁側及び下縁側に加えて、前縁側と後縁側とをバッグ本体側に連結させる構成とすれば、各規制手段が、上側膨張部と下側膨張部に加えて、前側膨張部と後側膨張部(乗員保護部)とにも、連結されることから、バッグ本体の膨張初期の揺動を、規制手段によって、一層的確に抑制することが可能となって、好ましい。
【0010】
さらに、上記構成のエアバッグにおいて、各規制手段を、中空部を閉塞するように、周縁を全周にわたってバッグ本体側に連結される閉塞パネルとして、構成すれば、規制手段が、それぞれ、外周縁を全長にわたってバッグ本体側に連結されるように配置されることとなり、バッグ本体の膨張初期の揺動を、規制手段によって、より一層的確に規制することが可能となる。
【0011】
そして、この閉塞パネルは、それぞれ、中空部の左右両端側を閉塞するように、2箇所に配設させる構成とすれば、閉塞パネルのバッグ本体側への連結作業を容易に行うことができて、製造が簡便となり、好ましい。
【0012】
さらにまた、上記構成のエアバッグにおいて、バッグ本体における内周面側の中空部の周壁を構成する内周パネル部に、バッグ本体内に流入した膨張用ガスを中空部側に排出可能な排気孔を、形成し、
バッグ本体において、内周パネル部と閉塞パネルとによって囲まれた領域を、ガス貯留部として、構成することが、好ましい。
【0013】
エアバッグを上記構成とすれば、バッグ本体の膨張完了後に、ガス貯留部内に膨張用ガスを排出させて、ガス貯留部を膨張させることができることから、前方移動する乗員を乗員保護部によって受け止める際に、内圧を高められた状態のガス貯留部によって、前後方向に圧縮されることに対抗する反力を確保することができて、前方移動する乗員を、乗員保護部とガス貯留部とによって、一層安定して拘束することができる。
【0014】
そして、この排気孔を、内周パネル部において、乗員保護部の前面側を構成する領域に、配設させる構成とすれば、排気孔が、取付部、すなわち、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターから最も離隔した側に形成されることから、バッグ本体の膨張途中における膨張用ガスの排出を抑制でき、バッグ本体を確実に膨張させた後に、排気孔からガス貯留部内に膨張用ガスを排出させることができて、好ましい。
【0015】
さらに、閉塞パネルにおける左右の少なくとも一方に、バッグ本体の展開膨張時において、ガス貯留部内に外気を取り込み可能な吸気穴部を、形成する構成とすれば、エアバッグの展開膨張時に、ガス貯留部内に、外気を安定して取り込むことができ、ガス貯留部が真空状態となることを確実に抑制できて、好ましい。
【0016】
さらにまた、吸気穴部に、外部へのガスの排出を抑制可能な逆止弁機構を配設させる構成とすれば、バッグ本体の膨張完了後において、排気孔を経てガス貯留部内に排出される膨張用ガスが、ガス貯留部の外へ排気されることを抑制でき、ガス貯留部の内圧を安定して保持することが可能となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態である助手席用のエアバッグを単体で膨張させた状態を示す左斜め後方から見た状態の斜視図である。
【
図4】
図1のエアバッグにおいて、左右中央側での前後方向に沿った概略縦断面図である。
【
図5】
図1のエアバッグにおいて、前後方向に沿った概略横断面図である。
【
図6】
図1のエアバッグにおいて、前後中央側での左右方向に沿った概略縦断面図であり、取付部側を見た図である。
【
図7】
図1のエアバッグにおいて、前後中央側での左右方向に沿った概略縦断面図であり、乗員保護部側を見た図である。
【
図8】
図1のエアバッグにおいて、拘束用凹部の部位を示す概略部分縦断面図である。
【
図9】
図1のエアバッグにおいて、区画壁部の部位を示す概略断面図である。
【
図10】
図1のエアバッグに形成される吸気穴部を示す概略図である。
【
図11】
図1のエアバッグを構成する基布を示す平面図である。
【
図12】
図1のエアバッグを構成する残りの基布を示す平面図である。
【
図13】
図1のエアバッグを構成する基布において、乗員側パネル用基材と、乗員側パネルと、を示す平面図である。
【
図14】
図1のエアバッグを助手席用エアバッグ装置として車両に搭載させた状態において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略縦断面図である。
【
図15】
図1のエアバッグを助手席用エアバッグ装置として車両に搭載させた状態において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略横断面図である。
【
図16】
図1のエアバッグを助手席用エアバッグ装置として車両に搭載させた状態において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略横断面図であり、斜め前方に向かって移動する乗員の頭部を受け止める概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、車両において助手席PSに着座した乗員MPの前方に折り畳まれて収納される助手席用のエアバッグ15を、例に採り、説明をする。エアバッグ15は、
図14に示すように、助手席PSに着座した乗員MPの前方において、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面の内部に配置されるトップマウントタイプの助手席用エアバッグ装置Mに、使用されている。なお、実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両の前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0019】
実施形態の助手席用エアバッグ装置Mは、
図14,15に示すように、エアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ15及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれたエアバッグ15を覆うエアバッグカバー6と、を備えている。また、実施形態では、インフレーター8は、車両の前面衝突と、斜め衝突と、オフセット衝突と、の際に、作動するように構成されている。
【0020】
エアバッグ15は、
図1~7に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体16と、バッグ本体16の膨張完了形状を規制する規制手段(実施形態の場合、2枚の閉塞パネル部51L,51R)と、を備える構成とされている。
【0021】
バッグ本体16は、可撓性を有したシート体からなる袋状として、
図1,2,4に示すように、膨張完了形状を、左右方向に略沿って貫通する中空部48を有し、この中空部48の周囲を、上下両側において前後方向に略沿うように配置される上側膨張部22及び下側膨張部24と、前後両側において上下方向に略沿うように配置される前側膨張部26及び後側膨張部(乗員保護部35)と、によって囲まれる略四角筒形状とされている。実施形態では、バッグ本体16は、膨張完了形状を、後述する流入用開口19の中心を基準として、略左右対称形として、構成されている(
図3,5参照)。また、実施形態では、中空部48は、規制手段としての後述する閉塞パネル部51L,51Rにより、左端48a側と右端48b側とを閉塞される構成である(
図5~7参照)。そして、実施形態のエアバッグ15では、左端48a側と右端48b側とを閉塞パネル部51L,51Rによって閉塞される中空部48の内部領域(後述する内周パネル部80の本体部81と、閉塞パネル部51L,51R(側壁パネル部85L,85Rにおける中央側領域88L,88R)と、によって囲まれる領域)が、ガス貯留部49を構成している。この中空部48(ガス貯留部49)は、
図4に示すように、バッグ本体16の前後方向に沿った縦断面において、外形形状を略四角形状とされており、具体的には、前方にかけて拡開されるような略台形状とされている。バッグ本体16において、膨張完了時に乗員MP側に配置される後側膨張部は、乗員MPを保護可能な乗員保護部35を、構成している。また、バッグ本体16において、膨張完了時の前端側には、ケース12側に取り付けられる取付部18が、配設されている。
【0022】
取付部18は、膨張完了形状を、長手方向を左右方向に略沿わせた板状として、実施形態の場合、前側膨張部26の前側において、上端18a側を前側膨張部26の上端26a側と連通させつつ、膨張完了時に左右の側方から見た状態で、下端18b側を前側に位置させるように、前下がりに傾斜するように、構成されている(
図1,2,4参照)。取付部18において、下端18b側に配設される下壁部18eの領域には、内部に膨張用ガスを流入可能に略円形に開口して、周縁をケース12に取り付けられる流入用開口19が、形成されている(
図3,5参照)。流入用開口19は、下壁部18eの前後左右の略中央となる位置に、形成されている(
図5参照)。流入用開口19の周縁には、リテーナ9のボルト(図符号省略)を挿通させて、流入用開口19の周縁をケース12の底壁部(図符号省略)に取り付けるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔20が、形成されている。この取付部18は、下端18b側の領域を、
図14に示すように、エアバッグ15の膨張完了時に、ケース12内に配置される構成であり、膨張完了時における左右方向側の幅寸法を、他の部位と比較して小さく設定されて(
図5参照)、前後左右の幅寸法を、ケース12内に配置可能な寸法に、設定されている(
図14~16参照)。実施形態では、取付部18は、膨張完了時の上端18a側を、ウィンドシールド4に支持されることとなる(
図14参照)。
【0023】
前側膨張部26は、膨張完了形状を、長手方向を左右方向に略沿わせた板状として、上端26a側を、取付部18の上端18a,上側膨張部22の前端22aと連通され、下端26b側を、下側膨張部24の前端24aと連通される構成である。この前側膨張部26は、膨張完了時に左右の側方から見た状態で、上下方向に略沿うように配設される構成である(
図2参照)。詳細には、実施形態の場合、前側膨張部26は、膨張完了形状を、取付部18及び上側膨張部22と連通される上端26a側を狭幅とし、下側膨張部24と連通される下端26b側にかけて左右に幅広とするように、構成されている。この前側膨張部26は、膨張完了時における下部前面側(前壁部26cの下端側)を、インパネ1に支持されることとなる(
図14参照)。また、前側膨張部26における後壁部26dは、
図4,5に示すように、中空部48における周壁(ガス貯留部49の周壁50における前壁部50c)を構成することとなる。
【0024】
上側膨張部22は、膨張完了形状を、長手方向を左右方向に略沿わせた略板状として、前端22a側を、前側膨張部26の上端26a,取付部18の上端18aと連通され、後端22b側を、後側膨張部としての乗員保護部35の上端35aと連通される構成である。この上側膨張部22は、膨張完了時に左右の側方から見た状態で、前側膨張部26に対して略直交して、前後方向に略沿うように配設される構成である(
図2参照)。また、上側膨張部22は、詳細には、膨張完了形状を、
図3に示すように、取付部18及び前側膨張部26と連通される前端22a側の部位を狭幅とし、乗員保護部35と連通される後端22b側の部位を広幅とするように、構成されている。この上側膨張部22は、膨張完了時に、前端22a側、詳細には、前部上面側(上壁部22cの前端側)を、
インパネ1の上方に配置されるウィンドシールド4に支持される構成である(
図14参照)。上側膨張部22における下壁部22dは、
図4,6,7に示すように、中空部48における周壁(ガス貯留部49の周壁50における上壁部50a)を構成することとなる。
【0025】
また、実施形態では、上側膨張部22の前端22a側と前側膨張部26の上端26a側とは、区画壁部30によって区画されている。この区画壁部30は、周縁を、全周にわたって、上側膨張部22と前側膨張部26との境界部位を構成する壁部に、結合されている(
図1,4参照)。区画壁部30には、2つの円形に開口した連通孔31,31が、左右方向側で並設され(
図1,3,6参照)、この連通孔31により、上側膨張部22と前側膨張部26とが、連通されている。この区画壁部30及び連通孔31は、取付部18を経て流入する膨張用ガスを、上側膨張部22側への過度の流出を抑制して、前側膨張部26側(下側膨張部24側)へも安定して流出可能とするために、配設されている。
【0026】
下側膨張部24は、膨張完了形状を、長手方向を左右方向に略沿わせた略板状として、前端24a側を前側膨張部26の下端26bと連通され、後端24b側を乗員保護部35の下端35bと連通される構成である。この下側膨張部24は、膨張完了時に左右の側方から見た状態で、前側膨張部26に対して略直交しつつ、上側膨張部22に略沿うように、前後方向に略沿って配設される構成である(
図2参照)。また、下側膨張部24は、膨張完了形状を、前後の全域にわたって幅寸法を略同一とした略長方形板状とされている。そして、詳細には、下側膨張部24は、後端24b側を僅かに上側膨張部22側に接近させるように、上側膨張部22に対して、僅かに傾斜して形成されている。この下側膨張部24は、膨張完了時における前面下部側(詳細には、前端24a側であって、前側膨張部26との交差部位付近)を、インパネ1に当接されて支持される構成である(
図14参照)。下側膨張部24における上壁部24cは、
図4,6,7に示すように、中空部48における周壁(ガス貯留部49の周壁50における下壁部50b)を構成することとなる。
【0027】
後側膨張部としての乗員保護部35は、膨張完了時の後端側となる乗員MP側において、膨張完了時の形状を、上側膨張部22及び下側膨張部24と略直交するように、上下方向に略沿った略板状として、上端35a側を上側膨張部22の後端22bと連通され、下端35b側を下側膨張部24の後端24bと連通される構成である。この乗員保護部35は、上下の略全域にわたって幅寸法を略同一とした略長方形状とされている。乗員保護部35においては、前壁部35cが、中空部48における周壁(ガス貯留部49の周壁50における後壁部50d)を構成している(
図4,5,7参照)。実施形態の場合、乗員保護部35の前壁部35c(ガス貯留部49の後壁部50dであって、後述する内周パネル部80の本体部81において乗員保護部35の前面側を構成する領域)には、バッグ本体16内に流入した膨張用ガスGを中空部48(ガス貯留部49)側に排出可能な排気孔37が、形成されている(
図5,7参照)。排気孔37は、実施形態の場合、前壁部35cの上下の略中央となる位置において、左右方向に沿った2箇所に、形成されている。具体的には、排気孔37は、開口面積を、バッグ本体16の展開膨張時における膨張用ガスの排出を抑制して、バッグ本体16の膨張完了後に、ガス貯留部49内に膨張用ガスを排出可能な大きさに、設定されている。また、この排気孔37の配置数は、実施形態に限定されるものではなく、1箇所のみに設ける構成としてもよい。
【0028】
また、実施形態の場合、乗員保護部35は、
図1,3~5に示すように、中央側領域39と、中央側領域39の左右両側に配置されて中央側領域39に対して後外方に向かって突出する突出領域40L,40Rと、を備えている。中央側領域39は、乗員保護部35の左右の中央側の部位の上下の略全域にわたった領域から、構成され、突出領域40L,40Rは、中央側領域39の左右両側において、それぞれ、乗員保護部35の上下の略全域にわたって、形成されている(
図4参照)。突出領域40L,40Rは、実施形態の場合、乗員保護部35における左壁部35e若しくは右壁部35fから連なって形成される外壁部40aと、中央側領域39側に配設される内壁部40bと、の周縁40c,40d相互を結合させることにより、構成されている(
図5参照)。
【0029】
そして、実施形態では、乗員保護部35における中央側領域39の後壁部39a(乗員保護部35の後壁部35dにおける左右方向の中央側の部位)が、車両の前突時に前進移動する乗員MPの頭部MHを受け止めて保護可能な前突用拘束面42を構成し、各突出領域40L,40Rにおける内壁部40bが、車両の斜め衝突時若しくはオフセット衝突時に斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを受け止めて保護する斜突用拘束面43L,43Rを構成している。斜突用拘束面43L,43R(内壁部40b)は、膨張完了時のエアバッグ15を上下方向側から見た状態で、後端側を左右の外方に位置させるように、前後方向に対して傾斜して形成されている(
図3,5参照)。
【0030】
また、乗員保護部35の後面側であって、中央側領域39と各突出領域40L,40Rとの境界部位(前突用拘束面42と斜突用拘束面43L,43Rとの境界部位)には、乗員MPの頭部MHを進入させて拘束させるための拘束用凹部44L,44Rが、それぞれ、形成されている(
図5参照)。各拘束用凹部44L,44Rは、上下方向に略沿うとともに、
図4に示すように、乗員保護部35の上下の略全域にわたって、形成されている。具体的には、拘束用凹部44L,44Rは、
図5に示すように、後端44b側を開口させて、ポケット状に前方に凹む構成とされている。この拘束用凹部44L,44Rは、左右方向側から見て、上下に幅広とした略長方形状の外側壁44cと内側壁44dとの上縁相互、下縁相互、前縁相互を、それぞれ、結合(縫着)させることにより、後端44b側を開口させた略ポケット状に、構成されている(
図8参照)。この拘束用凹部44L,44Rは、凹みの先端(前端44a)を、中空部48(ガス貯留部49)の周壁50(後壁部50d)を構成している乗員保護部35の前壁部35c(内周パネル部80における後述する本体部81)に、縫合糸を用いて縫着(連結)されている(
図5参照)。そして、拘束用凹部44L,44Rは、エアバッグ15の膨張完了時には、外側壁44cと内側壁44dとを略全域にわたって接触させるように、後端44b側の開口の口開きを抑制された状態で、前後方向に略沿って配置されることとなる(
図5参照)。この拘束用凹部44L,44Rは、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを進入させて保護するためのものであり、前後方向側の幅寸法(深さ)を、乗員保護部35における中央側領域39の膨張完了時の厚さと略同等として(
図5,8参照)、乗員MPの頭部MHの前側の領域を進入可能な寸法に、設定されている。
【0031】
実施形態のエアバッグ15では、
図1,4~7に示すように、上側膨張部22,下側膨張部24,前側膨張部26は、内部に厚さ規制用のテザー60,61,62を配設させることにより、膨張完了形状を略板状とされている。前側膨張部26内においては、テザー62は、上下方向に略沿った帯状として、取付部18から分岐している上端26a側の領域内において、前壁部26cと後壁部26dとを連結するように配置されている。上側膨張部22内においては、テザー60は、前後方向に略沿った帯状として、前後の中間部位において、上壁部22cと下壁部22dとを連結するように配置されている。下側膨張部24内においては、テザー61は、前後方向に略沿った帯状として、前後の中間部位において、上壁部24cと下壁部24dとを連結するように配置されている。詳細には、上側膨張部22内と下側膨張部24内とに配置されるテザー60,61は、前後で広く厚さ寸法を規制可能に、長さ寸法を、前側膨張部26内に配置されるテザー62よりも大きく設定されている(
図4参照)。各テザー60,61,62は、それぞれ、左右方向側で2箇所に並設されている。乗員保護部35の領域内には、テザーは配設されていないが、
図5に示すように、後壁部35dから延びて凹みの先端(前端44a)を前壁部35cに連結される拘束用凹部44L,44Rが、テザー60,61,62と同様の役目も果たし、前壁部35cと後壁部35dとの離隔距離を規制して、乗員保護部35の膨張完了形状を板状としている。
【0032】
実施形態では、バッグ本体16の膨張完了形状を規制する規制手段は、上述したごとく、中空部48を閉塞する2枚の閉塞パネル部51L,51R(閉塞パネル)から、構成されている。閉塞パネル部51L,51R(閉塞パネル)は、周縁51aを全周にわたって、バッグ本体16側に連結されるようにして、中空部48の左端48a側と右端48b側とを閉塞するように、2箇所に配設されている(
図5~7参照)。バッグ本体16は、上述したごとく、取付部18の左右の略中央に配置される流入用開口19の中心を基準として、略左右対称形として、構成されており、すなわち、中空部48の左端48a側と右端48b側とに配置される閉塞パネル部51L,51Rは、バッグ本体16の左右方向側の中央を中心として左右対称となる2箇所に、配設されている。具体的には、実施形態の場合、各閉塞パネル部51L,51Rは、後述する側壁パネル部85L,85Rにおける側壁構成部86L,86Rの中央側領域88L,88Rから、それぞれ、構成されている。すなわち、実施形態では、左端側に配設される閉塞パネル部51Lは、上側膨張部22,下側膨張部24,前側膨張部26,乗員保護部35の左壁部22e,24e,26e,35eと連なって、これらの左壁部22e,24e,26e,35eと一体的に構成され、右端側に配設される閉塞パネル部51Rも、同様に、上側膨張部22,下側膨張部24,前側膨張部26,乗員保護部35の右壁部22f,24f,25f,35fと一体的に構成されている(
図5~7参照)。そして、上述したごとく、これらの閉塞パネル部51L,51Rと、中空部48の周壁50を構成する内周パネル部80の本体部81と、によって囲まれた領域が、乗員保護部35の前面側に形成される排気孔37から排出される膨張用ガスGを貯留可能なガス貯留部49を、構成することとなる。
【0033】
また、実施形態のエアバッグ15では、
図1,2に示すように、左端側に配設される閉塞パネル部51Lに、吸気穴部53が、形成されている。この吸気穴部53は、バッグ本体16の展開膨張時に、ガス貯留部49内に外気を取り込むためのもので、略円形に開口した穴本体54と、穴本体54を閉塞可能な逆止弁機構55と、を備えている。穴本体54は、開口面積を、排気孔37の開口面積よりも小さく設定されており、実施形態の場合、穴本体54は、内径寸法を、排気孔37の内径寸法よりも小さく設定されている(
図11,12参照)。逆止弁機構55は、
図10に示すように、閉塞パネル部51Lの内側において、穴本体54を閉塞可能な大きさに設定されて、対向する2つの縁部56a,56bを穴本体54の周縁において閉塞パネル部51Lに結合されるフラップ材56から、構成されている。詳細には、フラップ材56は、穴本体54を閉塞可能な大きさに設定される略長方形状として、対向する2つの縁部56a,56b(実施形態の場合、長手方向側であって前後方向側の2つの縁部)を、略全長にわたって、閉塞パネル部51Lに、結合される構成である。すなわち、フラップ材56の縁部56a,56bを閉塞パネル部51Lに結合させる結合部位57は、長さ寸法を、穴本体54の内径寸法よりも大きく設定されている。この吸気穴部53では、閉塞パネル部51L(側壁パネル部85L)の折りを解消するようにバッグ本体16が膨張する際に、閉塞パネル部51Lとフラップ材56との間に隙間が生じて、穴本体54が、外気を取り込み可能に開口されることとなり、穴本体54から外気Aが取り込まれることとなる(
図10のA参照)。そして、バッグ本体16の膨張完了時には、ガス貯留部49内に排出された膨張用ガスと取り込まれた外気との内圧によって、フラップ材56が、穴本体54の周縁に押圧されることとなって、穴本体54を閉塞し、穴本体54から外部へのガスの排出を抑制することとなる(
図10のB参照)。吸気穴部53は、実施形態の場合、
図1,2に示すように、閉塞パネル部51Lにおける前下端近傍となる位置に、形成されている。
【0034】
エアバッグ15は、可撓性を有したシート体からなる複数の所定形状の基材の対応する縁部相互を結合させることにより、袋状とされている。具体的には、エアバッグ15を構成する基材は、
図11,12に示すように、外周パネル部65と、内周パネル部80と、側壁パネル部85L,85Rと、を備えている。
【0035】
外周パネル部65は、膨張完了時のエアバッグ15における外周面側に配置されるもので、乗員側パネル69と、上側パネル66と、下側パネル67と、を備えている。
【0036】
上側パネル66は、上側膨張部22の上壁部22cを構成するもので、
図11に示すように、外形形状を、前端側の部位を僅かに狭幅とした略長方形状とされている。下側パネル67は、取付部18における前壁部18c,下壁部18e,後壁部18dと、下側膨張部24の下壁部24dと、を構成するもので、
図11に示すように、取付部18を構成している領域を狭幅とした略帯状とされている。この上側パネル66と下側パネル67とは、ともに、左右対称形とされている。
【0037】
乗員側パネル69は、乗員保護部35において、乗員MP側に配置される後壁部35dを構成するもので、詳細には、各突出領域40L,40Rにおける内壁部40b(斜突用拘束面43L,43R)から、各拘束用凹部44L,44Rを経て、中央側領域39の後壁部39a(前突用拘束面42)にかけてを、構成している。詳細には、乗員側パネル69は、
図12,13のAに示す乗員側パネル用基材72から、構成されている。乗員側パネル用基材72は、各突出領域40L,40Rの内壁部40bを構成する突出領域構成部77L,77Rと、各拘束用凹部44L,44Rを構成する凹部構成部74L,74Rと、中央側領域39の後壁部39aを構成する中央側領域構成部73と、を並設させた略帯状として構成されている。各凹部構成部74L,74Rは、それぞれ、各拘束用凹部44L,44Rの外側壁44c,内側壁44dを構成する外壁構成部75L,75R,内壁構成部76L,76Rを、有するとともに、外壁構成部75L,75R,内壁構成部76L,76Rを、後端側を中央側領域構成部73若しくは突出領域構成部77L,77Rと連ならせて前端側で連結させたような外形形状とされている。そして、各凹部構成部74L,74Rは、外壁構成部75L,75R,内壁構成部76L,76R相互を重ねるように二つ折りして、周縁75a,76a相互を結合させることにより、拘束用凹部44L,44Rを形成することができる(
図13参照)。そして、乗員側パネル69は、
図13のBに示すように、乗員側パネル用基材72において、拘束用凹部44L,44Rを形成した状態から構成される。乗員側パネル用基材72と乗員側パネル69とは、ともに、左右対称形とされている。
【0038】
乗員側パネル69において、中央側領域構成部73は、上下方向側に幅広の略長方形状とされており、拘束用凹部44L,44Rを介して中央側領域構成部73に隣接して配置される各突出領域構成部77L,77Rは、それぞれ、中央側領域構成部73から離れる外縁77c側にかけて僅かに上下に拡開されるような略台形状とされている。すなわち、中央側領域構成部73は、上下方向側の幅寸法を、突出領域構成部77L,77Rにおける外縁77c側の上下方向側の幅寸法よりも小さく設定されている。そして、突出領域構成部77L,77Rは、上縁77a,下縁77bを、中央側領域構成部73にかけて相互に接近させるように、傾斜させて、構成されている。実施形態の場合、乗員側パネル69は、上下方向側においても対称形とされている。
【0039】
内周パネル部80は、膨張完了時におけるエアバッグ15の内周面側に配置されるもので、
図11に示すように、本体部81と、本体部81の前後両端側に配置されて区画壁部30を構成する区画壁構成部82U,82Dと、を備えている。この内周パネル部80は、左右対称形の帯状体とされている。本体部81は、上側膨張部22の下壁部22dと、乗員保護部35の前壁部35cと、下側膨張部24の上壁部24cと、前側膨張部26の後壁部26dと、を、構成している。すなわち、内周パネル部80の本体部81は、中空部48(ガス貯留部49)の周壁50(上壁部50a,下壁部50b,前壁部50c,後壁部50d)を、構成している。
【0040】
側壁パネル部85L,85Rは、膨張完了時のエアバッグ15における左右の側面側を構成する左右一対として、それぞれ、
図12に示すように、略四角形状の側壁構成部86L,86Rと、側壁構成部86L,86Rの前上端側から延びる略長方形状の取付部構成部90L,90Rと、を備えている。側壁パネル部85Lにおける側壁構成部86Lでは、外周縁側となる外周側領域87Lが、上側膨張部22,下側膨張部24,前側膨張部26,乗員保護部35における左壁部22e,24e,26e,35eを構成し、中央側領域88Lが、閉塞パネル部51Lを構成している。同様に、側壁パネル部85Rにおける側壁構成部86Rでは、外周側領域87Rが、上側膨張部22,下側膨張部24,前側膨張部26,乗員保護部35における右壁部22f,24f,26f,35fを構成し、中央側領域88Rが、閉塞パネル部51Rを構成している。各側壁パネル部85L,85Rにおける取付部構成部90L,90Rは、それぞれ、取付部18における左壁部18f,右壁部18gを、構成している。
【0041】
実施形態では、エアバッグ15を構成する外周パネル部65,内周パネル部80,側壁パネル部85L,85R、テザー60,61,62、及び、フラップ材56は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0042】
そして、実施形態のエアバッグ15は、
図4~9に示すように、外周パネル部65における上側パネル66,下側パネル67,乗員側パネル69(乗員側パネル用基材72)、内周パネル部80、及び、側壁パネル部85L,85Rの対応する縁部相互を、縫合糸を用いて縫着(結合)させることにより、袋状とされている。
【0043】
具体的には、上側パネル66の前縁66aは、下側パネル67における前上縁67a、及び、内周パネル部80の区画壁構成部82U,82Dの前縁82aと、結合される。上側パネル66の後縁66bは、乗員側パネル69の上縁69a(中央側領域構成部73の上縁73aと各突出領域構成部77L,77Rの上縁77a)と結合される。上側パネル66の左縁66cは、側壁パネル部85Lにおける側壁構成部86Lの上縁86aと結合され、上側パネル66の右縁66dは、側壁パネル部85Rにおける側壁構成部86Rの上縁86aと結合される。下側パネル67の後縁67bは、乗員側パネル69の下縁69b(中央側領域構成部73の下縁73bと各突出領域構成部77L,77Rの下縁77b)と結合される。下側パネル67の左縁67cは、側壁パネル部85Lにおける取付部構成部90Lの前縁90a,下縁90c,後縁90b、及び、側壁パネル部85Lにおける側壁構成部86Lの前縁86c,下縁86bと結合され、下側パネル67の右縁67dは、同様に、取付部構成部90Rの前縁90a,下縁90c,後縁90b、及び、側壁構成部86Rの前縁86c,下縁86bと結合される。乗員側パネル69の左縁69c,右縁69d(各突出領域構成部77L,77Rの外縁77c)は、それぞれ、側壁パネル部85L,85Rにおける側壁構成部86L,86Rの後縁86dと、結合される。内周パネル部80における本体部81の左縁81a,右縁81bは、それぞれ、各側壁パネル部85L,85Rにおける側壁構成部86L,86Rの外周側領域87L,87Rと中央側領域88L,88Rとの境界部位に、結合される(
図5~7参照)。また、内周パネル部80における区画壁構成部82U,82Dは、後縁82bを相互に結合されるとともに、左縁82cと右縁82dとを、相互に重ねられた状態で、それぞれ、各側壁パネル部85L,85Rにおける側壁構成部86L,86Rの前上端側の領域に、結合されている(
図4,9参照)。
【0044】
実施形態の助手席用エアバッグ装置Mは、内部にリテーナ9を配設させた状態のエアバッグ15を、ケース12内に収納可能に折り畳み、周囲を、破断可能な図示しないラッピングシートにくるんだ状態で、ケース12に収納させ、インフレーター8を、リテーナ9を利用してエアバッグ15の流入用開口19の周縁とともに、ケース12に連結させ、その後、折り畳まれたエアバッグ15とインフレーター8とを保持させたケース12を、車両に搭載されたインパネ1に形成されるエアバッグカバー6に連結させれば、車両に搭載させることができる。
【0045】
実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、車両に搭載した状態で、車両の前面衝突時、斜め衝突時、若しくは、オフセット衝突時に、インフレーター8が作動することとなり、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、ケース12から突出しつつ、
図14,15に示すように、膨張を完了させることとなる。実施形態のエアバッグ15では、乗員保護部35が、左右方向の中央側に配置される前突用拘束面42と、前突用拘束面42の左右両側に配置される斜突用拘束面43L,43Rと、前突用拘束面42と各斜突用拘束面43L,43Rとの間に配置される拘束用凹部44L,44Rと、を備える構成であることから、車両の前突時には、前突用拘束面42によって、前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを受け止めて保護し(
図15参照)、車両の斜め衝突時やオフセット衝突時には、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを、斜突用拘束面43L,43Rによって受け止めつつ、拘束用凹部44L,44R内に進入させるようにして、保護することとなる(
図16参照)。
【0046】
そして、実施形態のエアバッグ15では、膨張完了時に左右方向の側方から見て、中空部48を跨ぐようにして、少なくとも上縁側と下縁側とをバッグ本体16側(上側膨張部22及び下側膨張部24)に連結させる規制手段(閉塞パネル部51L,51R)が、バッグ本体16の左右方向側の中央を中心として左右対称となる複数箇所(実施形態の場合、2箇所)に、配設される構成であることから、膨張初期に、バッグ本体16が、上側膨張部22と下側膨張部24とを離隔させるように展開することを、左右に広い範囲で的確に抑制することができ、バッグ本体16を、左右に広い範囲で略均等に揺動を抑制して、膨張させることができて、膨張を完了させたバッグ本体16により、安定して乗員MPを保護することができる。また、実施形態のエアバッグ15では、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体16が、膨張完了形状を、左右方向に略沿って貫通する中空部48を有する略四角環状として構成されており、膨張完了時に中空部48の後側に配置される後側膨張部を、乗員MPを保護可能な乗員保護部35としている。すなわち、実施形態のエアバッグ15では、乗員保護部35が、略板状として、収納部位としてのケース12側に取り付けられる取付部18と分離して配置されるものの、乗員保護部35の上端35a側と下端35b側とは、膨張完了時に前後方向に略沿うように配置される上側膨張部22と下側膨張部24とにより、支持されることから、乗員保護部35によって、前方移動する乗員MPを安定して受け止めることができる。また、乗員保護部35を支持する上側膨張部22と下側膨張部24とは、規制部材としての閉塞パネル部51L,51Rにより、左右方向で離隔した複数箇所(2箇所)で、相互に連結されていることから、乗員保護部35による乗員受止時に、反力を低下させるような相互に離隔する変形も、左右に広い範囲で規制されることとなる。そのため、取付部18と分離されて間に中空部48を備える構成であっても、前方移動する乗員MPを、乗員保護部35によって安定して拘束することができる。
【0047】
したがって、実施形態のエアバッグ15では、左右に広い範囲で略均等に揺動を抑制して、膨張させることができる。
【0048】
特に、実施形態のエアバッグ15では、上側膨張部22と下側膨張部24とは、それぞれ、膨張完了時の前端22a,24a側を、車体側の部材であるインパネ1やインパネ1の上方に配置されるウィンドシールド4によって支持される構成である。そのため、乗員保護部35は、上側膨張部22,下側膨張部24を介して車体側の部材に支持されることとなり、前方移動する乗員MPを、乗員保護部35によって安定して保護することができる。さらに、膨張完了時のエアバッグ15を左右の側方から見た状態で、上側膨張部22と下側膨張部24とは、乗員保護部35及び前側膨張部26に対して、略直交するように、前後方向に略沿って配置される構成であり、換言すれば、上側膨張部22と下側膨張部24とは、乗員MPの頭部MHの進入方向に略沿って配置される構成であることから、乗員MPの頭部MH(上半身)を受けとめた乗員保護部35が、前方に向かって押圧される際に、座屈するような態様となって、前方に向かう乗員MPの運動エネルギーを安定して吸収することができる。
【0049】
また、実施形態のエアバッグ15では、各規制手段としての閉塞パネル部51L,51Rは、上縁側及び下縁側に加えて、前縁側と後縁側とをバッグ本体16側に連結される構成であることから、各閉塞パネル部51L,51Rが、上側膨張部22と下側膨張部24に加えて、前側膨張部26と後側膨張部(乗員保護部35)とにも、連結されることとなり、バッグ本体16の膨張初期の揺動を、規制手段としての閉塞パネル部51L,51Rによって、一層的確に抑制することができる。
【0050】
さらに、実施形態のエアバッグ15では、規制手段を構成する閉塞パネル部51L,51Rが、中空部48を閉塞するように、周縁を全周にわたってバッグ本体16側に連結される構成であることから、バッグ本体16の膨張初期の揺動を、閉塞パネル部51L,51Rによって、より一層的確に規制することが可能となる。
【0051】
実施形態では、閉塞パネル部51L,51Rは、それぞれ、中空部48の左端48a側と右端48b側とを閉塞するように、2箇所に配設される構成であることから、閉塞パネル部51L,51Rのバッグ本体16側への連結作業を容易に行うことができて、製造が簡便である。特に、実施形態のエアバッグ15では、閉塞パネル部51L,51Rは、バッグ本体16を構成する側壁パネル部85L,85Rの一部から形成されていることから、閉塞パネルを別途バッグ本体に連結させる作業が不要であり、簡便に製造することができる。勿論、閉塞パネル部は、バッグ本体を構成する基材と別体として構成してもよく、さらに、このような点を考慮しなければ、閉塞パネルを、バッグ本体の左右両端よりも内方となる位置(中空部における左右方向の中間部位)に、配設させる構成としてもよい。
【0052】
さらにまた、実施形態のエアバッグ15では、バッグ本体16における内周面側の中空部48の周壁を構成する内周パネル部80に、バッグ本体16内に流入した膨張用ガスGを中空部48側に排出可能な排気孔37が、形成され、バッグ本体16において、内周パネル部80と閉塞パネル部51L,51Rとによって囲まれた領域が、ガス貯留部49として、構成されている。そのため、バッグ本体16の膨張完了後に、ガス貯留部49内に膨張用ガスを排出させて、ガス貯留部49を膨張させることができることから、前方移動する乗員MPを乗員保護部35によって受け止める際に、内圧を高められた状態のガス貯留部49によって、前後方向に圧縮されることに対抗する反力を確保することができて、前方移動する乗員MPを、乗員保護部35とガス貯留部49とによって、一層安定して拘束することができる。
【0053】
特に、実施形態のエアバッグ15では、排気孔37が、内周パネル部80において、乗員保護部35の前面側を構成する領域(乗員保護部35の前壁部35c)に、配設される構成であることから、排気孔37が、取付部18、すなわち、インフレーター8から最も離隔した側に形成されることとなり(
図14参照)、バッグ本体16の膨張途中における排気孔37からの膨張用ガスの排出を抑制でき、バッグ本体16を確実に膨張させた後に、排気孔37からガス貯留部49内に膨張用ガスを排出させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、排気孔を、内周パネル部において、上側膨張部の下面側や下側膨張部の上面側、前側膨張部の後面側を構成する領域に、配設させる構成としてもよい。
【0054】
そして、実施形態のエアバッグ15では、排気孔37が乗員保護部35の前面側に形成されていることから、乗員保護部35によって乗員MPの頭部MHを受け止める際にも、排気孔37からガス貯留部49内へ膨張用ガスを排気させることができる。すなわち、乗員保護部35は、排気孔37から膨張用ガスを排気させつつ、乗員MPの頭部MHを受け止めることなって、適度なクッション性を有した乗員保護部35により、乗員MPの頭部MHを的確に受け止めることができる。また、実施形態のエアバッグ15では、乗員保護部35は、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを進入させて拘束する拘束用凹部44L,44Rを有し、この拘束用凹部44L,44Rは、凹みの先端(前端43a)を、中空部48の内周面(ガス貯留部49の周壁50、乗員保護部35の前壁部35c)に連結させるように、構成されている。そのため、仮に、乗員MPの頭部MHを進入させて拘束した拘束用凹部44L,44Rの周縁の部位が、底付きするような態様となっても、乗員保護部35の前方には、ガス貯留部49が配設される構成であり、換言すれば、乗員保護部35の前方にバッグ本体とは別体として膨張している膨張部が配設されるような態様であることから、このような膨張部(ガス貯留部49)による反力によって、拘束用凹部44L,44R内に進入している乗員MPの頭部MHを、クッション性よく受け止めることができる。
【0055】
さらに、実施形態のエアバッグ15では、左側に配置される閉塞パネル部51Lに、バッグ本体16の展開膨張時において、ガス貯留部49内に外気Aを取り込み可能な吸気穴部53が、形成される構成であることから、エアバッグ15の展開膨張時に、ガス貯留部49内に、外気Aを安定して取り込むことができ、ガス貯留部49が真空状態となることを確実に抑制できる。なお、このような点を考慮しなければ、閉塞パネル部に、吸気穴部を設けない構成としてもよい。エアバッグは、基材の周縁を、縫合糸を用いて縫着させることにより形成されていることから、吸気穴部を設けない構成としても、縫目に生じる穴から外気が進入することとなって、ガス貯留部は完全な真空状態とはならないが、吸気穴部を設ければ、ガス貯留部内に確実に外気を取り込むことができて、好ましい。
【0056】
さらにまた、実施形態のエアバッグ15では、吸気穴部53に、外部へのガスの排出を抑制可能な逆止弁機構55を配設させていることから、バッグ本体16の膨張完了後において、排気孔37を経てガス貯留部49内に排出される膨張用ガスが、ガス貯留部49の外へ排気されることを抑制でき、ガス貯留部49の内圧を安定して保持することが可能となる。勿論、このような点を考慮しなければ、吸気穴部に逆止弁機構を設けず、吸気穴部として、単に、閉塞パネル部に、開口を設ける構成としてもよい。なお、実施形態のエアバッグ15では、吸気穴部53を、閉塞パネル部51Lの中央ではなく、前下端近傍となる位置に配設させている構成であることから、閉塞パネル部の中央に設ける場合と比較して、閉塞パネル部に生じるテンションの影響を受け難く、安定して開閉させることができる。勿論、吸気穴部の配置位置は、実施形態に限定されるものではない。また、実施形態では、吸気穴部53は、左側の閉塞パネル部51Lのみに形成されているが、もちろん、左側に加えて、右側の閉塞パネル部にも、配設させる構成としてもよい。
【0057】
なお、実施形態のエアバッグ15では、規制手段として、中空部48の左端48a側と右端48b側とを塞ぐ閉塞パネル部51L,51Rが使用されているが、中空部をガス貯留部として利用することを考慮しなければ、規制手段を帯状のシート体から構成し、中空部を跨ぐように、上下方向に略沿って配設させて上側膨張部と下側膨張部とに連結させる構成としてもよく、さらには、規制手段を十字形状のシート体から構成し、上側膨張部と下側膨張部に加えて、前側膨張部と後側膨張部(乗員保護部)にも、連結させる構成としてもよい。また、規制手段の配置数も、2箇所に限定されるものではなく、左右対称となる位置であれば、例えば、左右方向の中央を含めた3箇所に配置させる構成でもよく、勿論、4箇所以上に配置させる構成としてもよい。勿論、規制手段は、中空部の左右両端側に配設させなくともよい。
【0058】
実施形態のエアバッグ15では、膨張完了状態において、中空部48にも膨張用ガスを流入させる構成であり、この中空部48を膨張部位とすれば、エアバッグ15を、中央に中空部を貫通させた略四角筒形状の一次膨張部と、中空部からなる二次膨張部と、を備える構成として、見ることもできる。
【0059】
なお、実施形態では、助手席用のエアバッグ15を例にとり、説明しているが、本発明を適用可能なエアバッグは、助手席用に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
12…ケース(収納部位)、15…エアバッグ、16…バッグ本体、18…取付部、22…上側膨張部、24…下側膨張部、26…前側膨張部、35…乗員保護部(後側膨張部)、35c…前壁部、37…排気孔、48…中空部、48a…左端、48b…右端、49…ガス貯留部、50…周壁、51L,51R…閉塞パネル部(規制手段)、51a…周縁、53…吸気穴部、MP…乗員、M…助手席用エアバッグ装置。