(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】診断装置、測定装置、診断方法、および診断プログラム
(51)【国際特許分類】
G01F 1/32 20220101AFI20240319BHJP
【FI】
G01F1/32 T
(21)【出願番号】P 2020207116
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魚森 良保
(72)【発明者】
【氏名】菅野 真司
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】上野 円
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-207840(JP,A)
【文献】特開2008-070292(JP,A)
【文献】特開2003-004497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/32-1/325
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦発生体と、前記渦発生体によって発生される渦に応じた少なくとも
2つの検出信号を検出する検出部とを有する渦流量計
の状態を診断する診断装置であって、
前記少なくとも
2つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号の渦周波数に応じた信号成分の
渦周波数により正規化された大きさを
所定の閾値と比較することによって得られる判定結果に基づいて、前記渦流量計の状態を診断する診断部を備える診断装置。
【請求項2】
前記結合信号の渦周波数に応じた信号成分の大きさを渦周波数により正規化する正規化部を備える請求項
1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記結合信号の渦周波数に応じた信号成分の正規化された大きさが、第1閾値以下であるとの前記判定結果に基づいて、前記渦流量計が異常であると診断する請求項
2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記診断部は、前記結合信号の渦周波数に応じた信号成分の正規化された大きさが、第1閾値を超え、かつ第2閾値以下であるとの前記判定結果に基づいて、前記渦流量計が異常となると予知する請求項
3に記載の診断装置。
【請求項5】
前記結合信号の渦周波数に応じた信号成分の正規化された大きさの履歴を用いて、前記第1閾値を学習により生成する学習処理部を更に備える請求項
3または
4に記載の診断装置。
【請求項6】
前記結合信号の前記渦周波数に応じた信号成分の正規化された大きさの時系列データを記憶する時系列データ記憶部と、
前記時系列データを表示するための表示処理を行う表示処理部と
を更に備える請求項
2から
5のいずれか一項に記載の診断装置。
【請求項7】
渦発生体と、前記渦発生体によって発生される渦に応じた少なくとも
2つの検出信号を検出する検出部とを有する渦流量計
の状態を診断する診断装置であって、
前記少なくとも
2つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号の渦周波数に応じた信号成分の大きさを
渦周波数に応じて異なる閾値と比較することにより、実質的に、前記結合信号の渦周波数に応じた信号成分の正規化された大きさを所定の閾値と比較し、前記比較によって得られる判定結果に基づいて、前記渦流量計の状態を診断する診断部を備える診断装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の診断装置と、
前記渦流量計と
を備える測定装置。
【請求項9】
渦発生体と、前記渦発生体によって発生される渦に応じた少なくとも
2つの検出信号を検出する検出部とを有する渦流量計
の状態を診断する診断方法であって、
前記少なくとも
2つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号の渦周波数に応じた信号成分の
渦周波数により正規化された大きさを
所定の閾値と比較することによって得られる判定結果に基づいて、前記渦流量計の状態を診断する
こと
を備える診断方法。
【請求項10】
渦発生体と、前記渦発生体によって発生される渦に応じた少なくとも
2つの検出信号を検出する検出部とを有する渦流量計
の状態を診断する診断方法であって、
前記少なくとも
2つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号の渦周波数に応じた信号成分の大きさを
渦周波数に応じて異なる閾値と比較することにより、実質的に、前記結合信号の渦周波数に応じた信号成分の正規化された大きさを所定の閾値と比較し、前記比較によって得られる判定結果に基づいて、前記渦流量計の状態を診断する
こと
を備える診断方法。
【請求項11】
コンピュータにより実行され、前記コンピュータを、
渦発生体と、前記渦発生体によって発生される渦に応じた少なくとも
2つの検出信号を検出する検出部とを有する渦流量計によって検出された前記少なくとも
2つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号の渦周波数に応じた信号成分の
渦周波数により正規化された大きさを
所定の閾値と比較することによって得られる判定結果に基づいて、前記渦流量計の状態を診断する診断部
として機能させる診断プログラム。
【請求項12】
コンピュータにより実行され、前記コンピュータを、
渦発生体と、前記渦発生体によって発生される渦に応じた少なくとも
2つの検出信号を検出する検出部とを有する渦流量計によって検出された前記少なくとも
2つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号の渦周波数に応じた信号成分の大きさを
渦周波数に応じて異なる閾値と比較することにより、実質的に、前記結合信号の渦周波数に応じた信号成分の正規化された大きさを所定の閾値と比較し、前記比較によって得られる判定結果に基づいて、前記渦流量計の状態を診断する診断部
として機能させる診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置、測定装置、診断方法、および診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、渦流量計を開示する。特許文献1の渦流量計は、管路6に流れる被測定流体が渦発生体7にぶつかることにより発生するカルマン渦による渦発生体7の交番的な微小変形を圧電素子81、82により検出し、単位時間に発生するカルマン渦の数が流速に比例することから、検出した微小変形を用いて被測定流体の流量を測定する(段落0002~0007等)。
【0003】
特許文献2には、「渦発生体によって発生する渦信号を検出する2つの検出部から出力される第1及び第2渦信号を用いて渦流量信号と共に前記第1及び第2渦信号の信号比を出力する渦流量計」について、「前記信号比を前記機器管理ツールで収集して前記渦流量計の詰まりの予知診断をする」ことが記載されている(請求項1)。
【0004】
特許文献3には、「渦信号をデジタル化してこれを高速フ-リエ変換して周波数領域に変換しこの周波数領域に設定された判定手段でノイズの有無を判定するようにした」渦流量計が記載されている(段落0027)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2003-4497号公報
[特許文献2] 特開2008-70292号公報
[特許文献3] 特開平5-79870号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様においては、診断装置を提供する。診断装置は、渦発生体と、渦発生体によって発生される渦に応じた少なくとも1つの検出信号を検出する検出部とを有する渦流量計によって検出された少なくとも1つの検出信号のうちの少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさ、または少なくとも1つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号の少なくとも1つの信号成分の大きさの判定結果を用いて、渦流量計の状態を診断する診断部を備えてよい。
【0006】
診断部は、結合信号の信号成分の大きさを閾値と比較することによって得られる判定結果に基づいて、渦流量計の状態を診断してよい。
【0007】
診断装置は、結合信号の信号成分の大きさを渦周波数により正規化する正規化部を備えてよい。
【0008】
診断部は、結合信号の信号成分の正規化された大きさが、第1閾値以下であるとの判定結果に基づいて、渦流量計が異常であると診断してよい。
【0009】
診断部は、結合信号の信号成分の正規化された大きさが、第1閾値を超え、かつ第2閾値以下であるとの判定結果に基づいて、渦流量計が異常となると予知してよい。
【0010】
診断装置は、結合信号の信号成分の正規化された大きさの履歴を用いて、第1閾値を学習により生成する学習処理部を更に備えてよい。
【0011】
診断装置は、結合信号の信号成分の正規化された大きさの時系列データを記憶する時系列データ記憶部を備えてよい。診断装置は、時系列データを表示するための表示処理を行う表示処理部を備えてよい。
【0012】
診断部は、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさの変化の判定結果に基づいて、渦流量計の状態を診断してよい。
【0013】
診断部は、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの、渦周波数に応じた信号成分の大きさの変化の判定結果に基づいて、渦流量計の状態を診断してよい。
【0014】
診断装置は、過去における少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの、渦周波数に応じた信号成分の大きさを渦周波数に対応付けた履歴データを記憶する履歴記憶部を備えてよい。診断部は、履歴データに含まれる、診断の対象となる少なくとも1つの対象検出信号の渦周波数に相当する渦周波数に対応づけられた信号成分の大きさと、診断の対象となる少なくとも1つの対象検出信号の信号成分の大きさとの差の判定結果に基づいて、渦流量計の状態を診断してよい。
【0015】
診断装置は、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさを渦周波数により正規化する正規化部を備えてよい。
【0016】
診断部は、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の正規化された大きさが、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれに応じた第1閾値以下であるとの判定結果に基づいて、渦流量計が異常であると診断してよい。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、診断装置と、渦流量計とを備える測定装置を提供する。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、診断方法を提供する。診断方法は、渦発生体と、渦発生体によって発生される渦に応じた少なくとも1つの検出信号を検出する検出部とを有する渦流量計によって検出された少なくとも1つの検出信号のうちの少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさ、または少なくとも1つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号の少なくとも1つの信号成分の大きさを取得することを備えてよい。診断方法は、信号成分の大きさの判定結果を用いて、渦流量計の状態を診断することを備えてよい。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、コンピュータにより実行される診断プログラムを提供する。診断プログラムは、コンピュータを、渦発生体と、渦発生体によって発生される渦に応じた少なくとも1つの検出信号を検出する検出部とを有する渦流量計によって検出された少なくとも1つの検出信号のうちの少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさ、または少なくとも1つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号の少なくとも1つの信号成分の大きさの判定結果を用いて、渦流量計の状態を診断する診断部として機能させてよい。
【0020】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】本実施形態に係る渦流量計10における、渦による振動を検出するための構造、および渦発生体20に発生する応力分布の一例を示す。
【
図3】本実施形態に係る渦流量計10の動作フローを示す。
【
図4】本実施形態に係る診断装置190の構成を示す。
【
図5】本実施形態に係る診断装置190による渦流量計10の診断フローを示す。
【
図6】本実施形態に係る診断装置190による渦流量計10の診断例を示すグラフである。
【
図7】本実施形態に係る診断装置190による渦流量計10の、将来の状態の予測例を示すグラフである。
【
図8】本実施形態に係る診断装置190の学習処理フローを示す。
【
図9】本実施形態の変形例に係る診断装置
990の構成を示す。
【
図10】本実施形態に変形例に係る診断装置
990による渦流量計10の診断フローを示す。
【
図11】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、本実施形態に係る測定装置5の構成を示す。測定装置5は、渦流量計10と、診断装置190とを備える。本実施形態において、渦流量計10は、特許文献1または2に記載の渦流量計と同一または類似の構成をとってよい。渦流量計10は、渦発生体20と、検出部30と、1または複数のチャージコンバータ100a~b(「チャージコンバータ100」とも示す。)と、1または複数のA/Dコンバータ110a~b(「A/Dコンバータ110」とも示す。)と、ゲートアレイ120と、CPU160と、出力回路170と、表示部180とを有する。
【0024】
渦発生体20は、被測定流体を流す管路内に設けられる。検出部30は、管路内を流れる被測定流体が渦発生体20にぶつかることで、渦発生体20によって発生される渦(カルマン渦)に応じた少なくとも1つの検出信号を検出する。本実施形態において、検出部30は、
図2を用いて後述するように、渦発生体20の異なる2箇所に設けた2つの圧電素子によって検出された第1検出信号および第2検出信号を出力する。本実施形態においては、各圧電素子は、渦発生体20における各圧電素子が設けられた箇所における応力に応じた電荷を検出信号として出力する。
【0025】
1または複数のチャージコンバータ100は、検出部30に接続され、少なくとも1つの検出信号の電荷を電圧信号に変換することにより、電圧形式の少なくとも1つの検出信号に変換する。本実施形態においては、チャージコンバータ100aは、第1検出信号を電圧信号に変換し、チャージコンバータ100bは、第2検出信号を電圧信号に変換する。なお、検出部30が電圧形式または電流形式の検出信号を出力する場合には、チャージコンバータ100a~bは不要である。
【0026】
1または複数のA/Dコンバータ110は、1または複数のチャージコンバータ100にそれぞれ接続され、電圧形式の少なくとも1つの検出信号を、デジタル形式の少なくとも1つの検出信号に変換する。本実施形態においては、A/Dコンバータ110aは、第1検出信号をデジタル信号に変換し、A/Dコンバータ110bは、第2検出信号をデジタル信号に変換する。
【0027】
ゲートアレイ120は、1または複数のA/Dコンバータ110に接続される。ゲートアレイ120は、1または複数のスペクトル分析器125a~b(「スペクトル分析器125」とも示す。)と、加算器130と、スペクトル分析器135と、バンドパスフィルタ140と、シュミットトリガ145と、カウンタ150とを含む。なお、本実施形態においては、これらの回路が1つのゲートアレイ120に実装されるが、これらの各回路のうちの少なくとも1つが別のIC等に実装されてもよく、少なくとも一部がCPU160等においてプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0028】
1または複数のスペクトル分析器125は、1または複数のA/Dコンバータ110に接続される。1または複数のスペクトル分析器125は、1または複数のA/Dコンバータ110からそれぞれ入力されるデジタル形式の検出信号のスペクトル分析を行う。スペクトル分析器125aは、第1検出信号を、渦周波数の測定対象となる全周波数帯(例えば0~15KHz)を分割した複数の周波数のバンド(例えばオクターブバンド)に分解し、各バンドの信号強度を出力する。スペクトル分析器125bは、第2検出信号を複数の周波数のバンドに分解し、各バンドの信号強度を出力する。
【0029】
加算器130は、1または複数のA/Dコンバータ110およびCPU160に接続される。加算器130は、少なくとも1つの検出信号のうちの2以上を、CPU160から設定されるノイズ比を用いて線形結合して、結合信号として出力する。これにより、加算器130は、少なくとも1つの検出信号に含まれるノイズ成分を相殺して除去し、渦によって発生する渦信号の成分を含む結合信号(「渦流量信号SQ」とも示す。)を出力することができる。
【0030】
スペクトル分析器135は、加算器130に接続される。スペクトル分析器135は、渦流量信号SQのスペクトル分析を行う。スペクトル分析器135は、渦流量信号SQを複数の周波数のバンドに分解し、各バンドの信号強度を出力する。そして、スペクトル分析器135は、複数の周波数のバンドのうち、周波数の2乗に比例する感度曲線を基準とした信号強度が最も高い周波数のバンドを、バンドパスフィルタ140の通過周波数帯域としてバンドパスフィルタ140に設定する。ここで、カルマン渦による振動の大きさは、流速の2乗に比例(すなわち渦周波数の2乗に比例)することから、スペクトル分析器135は、周波数の2乗に比例する感度曲線を基準とした場合に信号強度が最大となる周波数のバンドを、カルマン渦によって発生する渦信号が含まれる周波数のバンドであると特定する。なお、スペクトル分析器135は、特許文献2に記載の方法を用いて、カルマン渦によって発生する渦信号が含まれる周波数のバンドを特定してもよい。
【0031】
バンドパスフィルタ140は、加算器130およびスペクトル分析器135に接続される。バンドパスフィルタ140は、渦流量信号SQにおける、スペクトル分析器135から設定された通過周波数帯域内の信号成分を通過させ、帯域外の信号成分を低減または除去する。これにより、バンドパスフィルタ140は、渦流量信号SQのうち周波数の2乗に比例する感度曲線を基準とした信号強度が最も高くなる、単位時間に発生するカルマン渦の数に応じた周波数を有するバンドパス信号を出力する。一例として、このバンドパス信号は、図中(a)に示したように、ほぼサイン波形状を有する信号である。このように、スペクトル分析器135およびバンドパスフィルタ140は、少なくとも1つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号(渦流量信号SQ)から、周波数の2乗に比例する感度曲線を基準とした信号強度が最も高い周波数成分(すなわち渦周波数に応じた周波数成分)を抽出する抽出部として機能する。
【0032】
シュミットトリガ145は、バンドパスフィルタ140に接続される。シュミットトリガ145は、バンドパスフィルタ140を通過した渦流量信号SQを、同一の周波数を有するパルス信号に変換する。カウンタ150は、シュミットトリガ145に接続される。カウンタ150は、シュミットトリガ145が出力するパルス信号をカウントすることにより、単位時間当たりのパルス数(すなわち周波数)を計測する。このように、シュミットトリガ145およびカウンタ150は、スペクトル分析器135およびバンドパスフィルタ140によって抽出された結合信号における、渦周波数に応じた周波数成分の周波数を計測する周波数計測部として機能する。
【0033】
CPU160は、1または複数のスペクトル分析器125と、スペクトル分析器135と、カウンタ150とに接続される。CPU160は、各検出信号のスペクトル分析結果を各スペクトル分析器125から受け取って、スペクトル分析結果に基づいて、ノイズ比を算出するノイズ比演算部として機能する。CPU160は、算出したノイズ比を加算器130へと設定する。
【0034】
また、CPU160は、バンドパスフィルタ140を通過した渦流量信号SQの単位時間当たりのパルス数をカウンタ150から受け取る。CPU160は、流量算出部または流速算出部として機能し、渦流量信号SQの単位時間当たりのパルス数によって表される渦周波数から流量または流速を算出する。CPU160は、算出した流量または流速を出力回路170および表示部180へと出力する。また、CPU160は、スペクトル分析器135によるスペクトル分析結果をスペクトル分析器135から受け取る。
【0035】
出力回路170は、CPU160に接続される。出力回路170は、渦流量計10により測定された流量または流速をCPU160から受け取って、測定された流量または流速を、例えばHART(登録商標)、BRAIN、ファウンデーションフィールドバス(登録商標)、ISA100.11a等で規定される通信プロトコルを用いて、上位の制御装置またはヒューマンインターフェイス装置へと送信する。表示部180は、測定された流量または流速をCPU160から受け取って表示する。
【0036】
診断装置190は、渦流量計10に接続される。診断装置190は、渦流量計10の診断機能を有する専用ハードウェアまたは専用コンピュータによって実現されてよい。これに代えて、診断装置190は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータにより実現されてもよい。また、診断装置190は、インターネット等のネットワークを介して渦流量計10に接続され、渦流量計10の診断と、これに加えて任意で渦流量計10を用いた流量または流速の計測、計測結果の解析、または計測結果に応じた設備の制御等とを行うクラウドサービスを提供するクラウドコンピューティングシステムにより実現されてもよい。診断装置190がコンピュータによって実現される場合、診断装置190は、コンピュータで診断装置190用の診断プログラムを実行することにより、診断装置190の各種機能を提供してもよい。
【0037】
診断装置190は、少なくとも1つの検出信号のうちの少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさ、または少なくとも1つの検出信号のうちの2以上を線形結合した結合信号の少なくとも1つの信号成分の大きさ、すなわち信号成分の振幅または信号強度等、を受け取って判定し、判定結果を用いて渦流量計10の状態を診断する。
【0038】
なお、本実施形態において、診断装置190は、渦流量計10に接続される、渦流量計10とは別体の装置である。これに代えて、診断装置190は、渦流量計10と一体化されて測定装置5として実現されてもよい。また、診断装置190は、渦流量計10における、例えばゲートアレイ120の少なくとも一部またはCPU160の機能の少なくとも一部のような診断に必要なデータを生成する構成要素に対応する構成要素を、渦流量計10と重複して有してもよい。
【0039】
図2は、本実施形態に係る渦流量計10における、(
A)渦による振動を検出するための構造、および、(
B)渦発生体20に発生する応力分布の一例を示す。本実施形態において、渦発生体20は、管路16に垂直に配置される。管路16に流れる被測定流体が渦発生体20にぶつかるとカルマン渦が発生し、そのため渦発生体20には交番的な揚力が加わって微小変形する。
【0040】
検出部30は、管路16の外側において、渦発生体20に設けられた1または複数の圧電素子34a~b(「圧電素子34」とも示す。)を含む。本実施形態においては、複数の圧電素子34a~bが、渦発生体20の延伸方向(管路16に垂直な方向)の異なる位置に埋め込まれる等により配置される。第1圧電素子34aは、第2圧電素子34bに対して、管路16からより離れた位置に配置される。各圧電素子34は、各圧電素子34が設けられた箇所における渦発生体20の微小変形を検出し、電荷信号として出力する。単位時間に発生するカルマン渦の数は流速に比例するので、渦流量計10は、検出部30の検出信号を用いて被測定流体の流量を測定することができる。
【0041】
なお、検出部30は、圧電素子34に代えて、他の方法により渦発生体20の微小変形または振動を検出するセンサを有してもよい。また、圧電素子34は、渦発生体20に配置されるのに代えて、カルマン渦による振動を受けるように渦発生体20の下流に配置されてもよい。
【0042】
ここで、各圧電素子34は、カルマン渦による信号だけでなく、管路16の振動等によって発生するノイズも検出する。
図2(
B)は、
図2(
A)に示した渦発生体20の延伸方向の各位置における、カルマン渦による応力と振動等のノイズによる応力との分布(応力分布)の一例を示す。図中Sはカルマン渦による応力分布を示し、Nはノイズの応力分布を示す。図に示したように、これらの応力分布はかなり異なっている。
【0043】
第1圧電素子34aは、第1圧電素子34aが設けられた位置における、カルマン渦による応力に応じた渦信号S1およびノイズによる応力に応じたノイズN1を合わせた第1検出信号を出力する。また、第2圧電素子34bは、第2圧電素子34bが設けられた位置における、カルマン渦による応力に応じた渦信号S2およびノイズによる応力に応じたノイズN2を合わせた第2検出信号を出力する。
【0044】
ここで、第1検出信号をQ1、第2検出信号をQ2とすると、これらの信号は以下の式(1)および(2)で表すことができる。
Q1=S1+N1 (1)
Q2=S2+N2 (2)
【0045】
ここで、S1、S2は渦信号成分、N1、N2はノイズ成分である。第1検出信号および第2検出信号における渦信号成分の比S1/S2と、ノイズ成分の比N1/N2とは
図2(
B)に示したように異なるので、式(2)にノイズ比(N1/N2)を乗算して式(1)から減じることによりノイズ成分を相殺し、以下の式(3)に示す渦流量信号SQを得ることができる。
SQ=Q1-(N1/N2)×Q2
=S1+N1-(N1/N2)(S2+N2)
=S1-(N1/N2)×S2
=S1-γ×S2 (3)
【0046】
ここで、ノイズ比γ=N1/N2が既知の定数であれば、渦流量信号SQはノイズ成分を含まず、渦信号成分S1、S2のみを含むものとなる。本実施形態に係るCPU160は、各スペクトル分析器125から受け取る各検出信号のスペクトル分析結果に基づいて、ノイズ比γを算出する。
【0047】
図3は、本実施形態に係る渦流量計10の動作フローを示す。ステップ300(S300)において、渦流量計10は、検出部30、各チャージコンバータ100、および各A/Dコンバータ110を用いて少なくとも1つの検出信号を取得する。
【0048】
S310において、各スペクトル分析器125は、そのスペクトル分析器125に対応する検出信号のスペクトル分析を行う。各スペクトル分析器125は、特許文献2に記載のバンド増幅器23および24と同様に、渦流量計10が対象とする全周波数帯を分割した複数の周波数帯(バンド)に1対1に対応付けられた複数の増幅器AMP1~nを有し、各増幅器AMPが、検出信号における割り当てられた周波数帯内の信号成分を増幅し、帯域外の信号成分を低減または除去する構成をとってよい。これにより、スペクトル分析器125は、検出信号を周波数帯毎に分割することができる。そして、スペクトル分析器125は、検出信号の、周波数帯毎の信号成分の大きさを算出する。これに代えて、各スペクトル分析器125は、検出信号をフーリエ変換することによって周波数領域の信号に変換することで、周波数帯毎の検出信号の大きさを算出してもよい。
【0049】
S320において、CPU160は、各スペクトル分析器125によるスペクトル分析結果に基づいて、ノイズ比γを算出する。CPU160は、特許文献2に記載の演算手段26と同様にして、ノイズ比γを算出してよい。
【0050】
本実施形態に係るCPU160は、1または複数の圧電素子34のうち、管路16から最も遠い圧電素子34aからの検出信号の周波数帯毎の信号成分の中で、周波数の2乗に比例する感度曲線を基準とした信号強度が最も高い信号成分を除いて次に高い信号成分が含まれる周波数帯を、ノイズが重畳された周波数帯とみなす。そして、CPU160は、ノイズが重畳された周波数帯における、第1検出信号および第2検出信号の比をノイズ比γとして算出する。これに代えて、CPU160は、周波数の2乗に比例する感度曲線を基準とした信号強度が最も高い信号成分を除く他のいずれかの周波数帯を、ノイズが重畳された周波数帯とみなしてノイズ比γを算出してもよい。
【0051】
CPU160は、算出したノイズ比γを加算器130に設定する。なお、CPU160は、ノイズが重畳された周波数帯を特定するために、検出信号の周波数帯毎の信号成分の大きさを、その周波数帯の中心周波数の2乗により除算した値の大小を比較することにより、ノイズが重畳された周波数帯を特定してもよい。また、CPU160は、新たに検出信号を取得する度にノイズ比γを更新するのではなく、例えば一定期間おき等にノイズ比γを更新してよい。
【0052】
S330において、加算器130は、複数の検出信号のうちの2以上を、ノイズ比γを用いて重み付け和をとることによって線形結合して、渦信号の成分を含む渦流量信号SQを生成する。本実施形態において、加算器130は、式(3)で示したように、第2検出信号Q2を-γ倍して第1検出信号Q1に加えることにより、渦流量信号SQを生成する。
【0053】
S340において、スペクトル分析器135は、渦流量信号SQのスペクトル分析を行って、渦流量信号SQを複数の周波数のバンドに分解した各バンドの信号強度を算出する。そして、スペクトル分析器135は、複数の周波数のバンドのうち、周波数の2乗に比例する感度曲線を基準とした信号強度が最も高い周波数のバンドを、バンドパスフィルタ140の通過周波数帯域としてバンドパスフィルタ140に設定する。ここで、スペクトル分析器135は、各バンドの信号強度をそのバンドの中心周波数の2乗により除算した値が最も高いバンドを、バンドパスフィルタ140の通過周波数帯域としてもよい。
【0054】
S350において、バンドパスフィルタ140は、渦流量信号SQにおける、スペクトル分析器135により設定された通過周波数帯域内の信号成分を通過させ、帯域外の信号成分を低減または除去する。S360において、シュミットトリガ145およびカウンタ150は、バンドパスフィルタ140を通過した渦流量信号SQの周波数(渦周波数)を計測する。
【0055】
S370において、CPU160は、シュミットトリガ145およびカウンタ150により計測された渦流量信号SQの周波数から流量または流速を算出する。S380において、出力回路170および表示部180は、算出された流量または流速を出力および表示する。
【0056】
以上に示した渦流量計10は、2つの検出信号Q1およびQ2を、ノイズ比γを用いて線形結合することにより渦流量信号SQを生成した。これに代えて、渦流量計10は、3以上の検出信号を線形結合してノイズ成分を相殺することにより渦流量信号SQを生成してもよい。
【0057】
また、渦流量計10は、1つの圧電素子34からの検出信号を用いて流量または流速を測定するものであってもよい。この場合、渦流量計10は、圧電素子34、チャージコンバータ100、およびA/Dコンバータ110を1組有し、スペクトル分析器125および加算器130は有しなくてもよい。スペクトル分析器135およびバンドパスフィルタ140は、1つの検出信号を入力し、その検出信号のうち周波数の2乗に比例する感度曲線を基準とした信号強度が最も高くなる、単位時間に発生するカルマン渦の数に応じた周波数を有するバンドパス信号を出力する。シュミットトリガ145およびカウンタ150は、バンドパスフィルタ140を通過した検出信号の周波数を計測する。このような構成においては、渦流量計10は、検出信号のノイズ成分を相殺しない。しかし、検出信号中にノイズ成分と比較して十分に大きな渦信号成分が含まれていれば、渦流量計10は、圧電素子34を1つのみ有する構成を用いて被測定流体の流量または流速を測定することができる。
【0058】
図4は、本実施形態に係る診断装置190の構成を示す。診断装置190は、取得部400と、測定データ記憶部410と、正規化部420と、診断部430と、時系列データ記憶部440と、診断結果出力部450と、表示装置470と、学習処理部480とを有する。
【0059】
取得部400は、渦流量計10のCPU160に接続される。取得部400は、結合信号(渦流量信号SQ)の信号成分の大きさ、および渦流量計10が計測した渦周波数を含む測定データを渦流量計10から取得する。ここで、診断装置190は、スペクトル分析器135による渦流量信号SQのスペクトル分析結果をCPU160を介して取得することにより、渦流量信号SQが含まれる周波数帯の信号強度を取得してよい。
【0060】
測定データ記憶部410は、取得部400に接続され、取得部400が取得した測定データを格納する。正規化部420は、測定データ記憶部410に接続される。正規化部420は、測定データ記憶部410に格納された測定データに含まれる、渦流量信号SQの信号成分の大きさを渦周波数により正規化する。ここで、前述したように、カルマン渦による振動の大きさは流速の2乗に比例することに起因して、渦流量信号SQの信号成分の大きさは渦周波数の2乗に比例する。そこで、正規化部420は、渦流量信号SQの信号成分の大きさを、渦周波数の2乗で除算することにより、渦周波数に依存しない信号成分の大きさに変換する。
【0061】
診断部430は、正規化部420に接続される。診断部430は、渦流量信号SQの信号成分の正規化された大きさを閾値と比較することによって得られる判定結果に基づいて、渦流量計10の状態を診断する。また、診断部430は、渦流量信号SQの信号成分の正規化された大きさの推移を時系列データ記憶部440から取得して、その推移を用いて将来における渦流量計10の状態を予測する。
【0062】
時系列データ記憶部440は、診断部430に接続される。時系列データ記憶部440は、渦流量信号SQの信号成分の正規化された大きさおよび渦流量計10の状態の診断結果の時系列データを記憶する。
【0063】
診断結果出力部450は、時系列データ記憶部440に接続される。診断結果出力部450は、時系列データ記憶部440に格納された、渦流量計10の状態の診断結果を含む時系列データを出力する。診断結果出力部450は、例えば渦流量計10が配置されたプラント等を制御または管理する上位の装置に対して、渦流量計10の状態の診断結果を含む時系列データを出力してよい。また、診断結果出力部450は、表示処理部460を含んでよい。表示処理部460は、渦流量計10の状態の診断結果を含む時系列データを表示装置470に表示させるための処理(表示画面またはウェブページの生成等)を行う。表示装置470は、診断結果出力部450に接続され、表示処理部460によって生成された表示画面等を表示する。表示装置470は、診断装置190の外部(例えば診断装置190から離れた場所)に設けられ、表示処理部460によって生成された表示画面等をネットワークを介して受信して表示してもよい。
【0064】
学習処理部480は、時系列データ記憶部440に接続される。学習処理部480は、時系列データ記憶部440に格納された、渦流量信号SQの信号成分の正規化された大きさの履歴を用いて、診断部430が使用する閾値等を含む判定基準を学習により生成する。本実施形態において、学習処理部480は、渦流量計10が正常であった期間(正常期間)または異常であった期間(異常期間)の少なくとも1つの入力を受けて、時系列データ記憶部440が格納する時系列データにおける各時点のデータに正常または異常のアノテーションを付加する。そして、学習処理部480は、アノテーションを付加した時系列データを用いて、判定基準を学習により生成する。
【0065】
図5は、本実施形態に係る診断装置190による渦流量計10の診断フローを示す。S500において、取得部400は、渦流量信号SQの信号成分の大きさ、および渦流量計10が計測した渦周波数を含む測定データを渦流量計10から取得して測定データ記憶部410に格納する。取得部400は、測定データを渦流量計10からリアルタイムで順次取得してもよく、渦流量計10に格納された過去のある期間の測定データを一括して取得してもよい。
【0066】
S510において、正規化部420は、測定データ記憶部410に格納された測定データにおける、渦流量信号SQの信号成分の大きさを渦周波数により正規化した指標値を算出する。このような指標値は、渦流量信号SQにおける、渦周波数に依存しない渦流量計10の感度を示すものである。なお、渦流量信号SQの信号成分の大きさは、被測定流体の密度によっても変化する。そこで、被測定流体の密度が変わる場合には、正規化部420は、渦流量信号SQの信号成分の大きさを、被測定流体の密度によって更に正規化してもよい。
【0067】
S520において、診断部430は、渦流量信号SQの信号成分の正規化された大きさを示す指標値が、第1閾値Th1以下であるか否かを判定する。そして、診断部430は、指標値が第1閾値以下であるとの判定結果に基づいて(S520における「Y」)、S530において渦流量計10が異常であると診断する。診断結果出力部450は、渦流量計10が異常であるとの診断結果を出力する。
【0068】
S540において、診断部430は、渦流量信号SQの信号成分の正規化された大きさを示す指標値が、第1閾値Th1を超え、かつ第2閾値Th2以下であるか否かを判定する。そして、診断部430は、指標値が第1閾値Th1を超え、かつ第2閾値Th2以下であるとの判定結果に基づいて(S540における「Y」)、S550において、現時点で渦流量計10が異常とは診断しないものの、後に渦流量計10が異常となると予知する。この状態は、現時点では渦流量計10は異常ではないが、渦流量計10の保守点検が推奨される状態を示す。診断結果出力部450は、後に渦流量計10が異常となるとの予測結果を出力する。
【0069】
診断部430は、指標値が第2閾値Th2を超える場合(S540における「N」)、S560において、渦流量計10は正常であると診断する。診断結果出力部450は、渦流量計10が正常であるとの診断結果を出力する。
【0070】
S570において、表示処理部460は、時系列データ記憶部440に格納された指標値の時系列データを用いて、渦流量計10の将来の状態を予測する。この予測方法については、
図7に関連して後述する。
【0071】
図6は、本実施形態に係る診断装置190による渦流量計10の診断例を示すグラフである。本図は、横軸に時間の経過をとり、縦軸に、渦流量信号SQの信号成分の正規化された大きさを示す指標値をとり、時間の経過に応じた指標値の変化を示す。表示処理部460は、渦流量計10の診断のために、本図のようなグラフを用いて指標値の変化を表示してよい。
【0072】
本実施形態においては、
図2に示したように、渦発生体20と管路16の間には隙間24が設けられている。隙間24に異物が詰まると渦発生体20の振動が抑制されて各検出信号の振幅が小さくなり、最終的にはバンドパスフィルタ140から出力される渦流量信号SQの振幅が、シュミットトリガ145によって検出可能な振幅未満となって渦流量計10が渦周波数を測定することができなくなってしまう。
【0073】
本図に示したように、指標値は、渦流量計10が正常である場合には第2閾値Th2を超えるが、詰まりが進むにつれて徐々に小さくなり、時刻t1において第2閾値Th2以下となる。さらに詰まりが進むと、指標値は更に低下し、時刻t2において第1閾値Th1以下となる。
【0074】
本実施形態においては、渦流量計10が渦周波数を測定可能な指標値の境界を第1閾値Th1とする。なお、第1閾値Th1は、渦周波数が測定できなくなっているにもかかわらず異常と診断できないことを防ぐべく、ある程度のマージンを持たせた値であってよい。これにより、診断装置190は、隙間24の異物の詰まり等によって渦流量計10が流量または流速を測定できない場合には、渦流量計10の状態が異常であると診断することができる。
【0075】
また、本実施形態においては、診断部430は、第1閾値Th1より大きな第2閾値Th2を用いて、指標値が第1閾値Th1を超える場合であっても第2閾値Th2以下となった場合には、将来の異常発生を予知する。これにより、診断装置190は、渦流量計10が流量または流速を測定できなくなるよりも前に、渦流量計10の保守点検を推奨する旨の診断をすることができ、保守点検の計画を立てることを促すことができる。
【0076】
なお、特許文献2においては、第1検出信号における渦信号成分S1および第2検出信号における渦信号成分S2の線形結合ではなく、信号比SR(=S1/S2)の大きさを判定した結果を用いて詰まりを予測する(段落0017~0018、0039~0044等)。上述したように、隙間24に異物が詰まる等によって渦発生体20の振動が抑制されて各検出信号の振幅が小さくなるのであるから、渦信号成分S1およびS2のいずれも詰まりによって振幅が小さくなる。このため、渦信号成分S1を渦信号成分S2で除算した信号比SRは、渦信号成分S1およびS2の振幅減少がある程度相殺されるので、本実施形態の指標値と比較して詰まりに対する感度が鈍くなる。
【0077】
これに対し、本実施形態においては、渦信号成分S1およびS2を線形結合した渦流量信号SQを渦周波数により正規化した大きさを用いて診断を行うので、より良い感度で渦流量計10の状態を診断することができる。
【0078】
なお、本実施形態においては、診断部430は、渦流量信号SQの信号成分を渦周波数により正規化した大きさを閾値と比較する。これに代えて、診断部430は、渦流量信号SQの正規化しない信号成分を、渦周波数に応じた閾値、すなわち例えば第1閾値または第2閾値に渦周波数の2乗を乗じた閾値、と比較することによって、実質的に渦流量信号SQの信号成分を渦周波数により正規化した大きさと第1閾値または第2閾値とを比較してもよい。
【0079】
図7は、本実施形態に係る診断装置190による渦流量計10の、将来の状態の予測例を示すグラフである。本図は、横軸に時間の経過をとり、縦軸に、渦流量信号SQの信号成分の正規化された大きさを示す指標値をとり、時間の経過に応じた指標値の変化を示す。
【0080】
診断部430は、
図5のS570において、時系列データ記憶部440に格納された、現時刻t1までの指標値の時系列データを用いて、指標値が第2閾値Th2まで低下する時点t2、または指標値が第1閾値Th1まで低下する時点t3の少なくとも1つを予測する。一例として、診断部430は、現時刻t1を末尾とする予め定められた期間(例えば1週間、1ヶ月等)における指標値のトレンドを延長し、延長したトレンドが第2閾値Th2または第1閾値Th1に達する時点t2またはt3を算出する。ここで、診断部430は、指標値のトレンドを、時間の経過の一次関数により近似してよい。これにより、診断部430は、時間の経過に伴って、単位時間当たりにほぼ一定量の異物が蓄積する場合に適した予測を行うことができる。これに代えて、診断部430は、予め定められた期間における指標値の変化を他の関数にフィッティングした結果を用いて、指標値のトレンドを予測してもよい。
【0081】
診断結果出力部450は、渦流量計10の保守点検を推奨する予測時点t2または渦流量計10が異常と診断する予測時点t3の少なくとも一つ、またはこれらの予測時点までの期間長を出力する。表示処理部460は、
図7に例示したトレンドグラフを表示装置470に表示することにより、時点t2および時点t3の予測結果を出力してよい。
【0082】
以上に示した診断装置190によれば、将来保守点検を推奨するであろう時点t2または将来渦流量計10を異常と診断するであろう時点t3を予測して、その予測結果をこれらの事象が発生するよりも十分前に診断装置190の使用者に通知することができる。これにより、診断装置190は、渦流量計10の保守点検をより好ましいタイミングでスケジューリングさせることができ、渦流量計10の可用性を高めることができる。
【0083】
図8は、本実施形態に係る診断装置190の学習処理フローを示す。S800において、学習処理部480は、時系列データ記憶部440に格納された時系列データに対するアノテーションを取得する。このアノテーションは、時系列データ記憶部440に格納された時系列データにおける少なくとも一部の時点について指標値が正常または異常のいずれであるかを示すものである。本実施形態に係る学習処理部480は、第1閾値Th1の学習に用いるために、渦流量計10の正常期間(指標値>第1閾値Th1)または異常期間(指標値≦第1閾値Th1)の少なくとも1つを入力し、正常期間中の各時点における指標値には正常を示すタグを付加し、異常期間中の各時点における指標値には異常を示すタグを付加してよい。
【0084】
例えば、渦流量計10の定期点検または臨時点検等により複数回点検した場合に、渦流量計10がある点検の時点で正常であり、次の点検の時点でも正常であった場合には、これらの点検の間の期間は、渦流量計10が正常であったとみなすことができる。したがって、学習処理部480は、これらの点検の間の期間中、渦流量計10が正常であったことを示すアノテーションの入力を受けてよい。
【0085】
また、渦流量計10がある点検の時点では正常であったが、次の点検の時点では異常であった場合には、前後の点検の間のある時点で渦流量計10が正常から異常に変化し、後の点検までの期間の間、渦流量計10が異常であったとみなすことができる。したがって、学習処理部480は、この期間の間、渦流量計10が異常であったことを示すアノテーションの入力を受けてもよい。ここで、学習処理部480は、正常および異常の境界となる時点を、前後の点検の間を予め定められた比率で分割した時点と決定してもよく、後ろの点検を基準として予め定められた期間前の時点と決定してもよい。
【0086】
同様に、学習処理部480は、渦流量計10の正常期間(指標値>第2閾値Th2)または渦流量計10の保守点検が少なくとも推奨される期間(指標値≦第2閾値Th2)の少なくとも1つを入力して、第2閾値Th2の学習に用いるタグを各時点の指標値に付加してよい。
【0087】
S810において、学習処理部480は、アノテーションを付加した測定データを用いて、渦流量計10の正常または異常を判定するための判定基準を学習する。学習処理部480は、正常とのタグが付加された少なくとも1つの指標値と、異常とのタグが付加された指標値とを収集して学習データとし、この学習データを用いて
図6に示した第1閾値Th1および第2閾値Th2を学習により生成する。
【0088】
一例として、学習処理部480は、指標値を正常または異常と分類する境界となる第1閾値Th1を、サポートベクタマシン(SVM)を用いて学習により生成してもよい。これに代えて、学習処理部480は、指標値を入力とし、正常または異常の分類またはその確率を出力とするニューラルネットワークを学習により生成し、指標値に応じたニューラルネットワークの出力の分布をサンプリングして境界となる第1閾値Th1を決定してもよい。学習処理部480は、その他各種の機械学習の手法を用いて第1閾値Th1を学習により生成してもよい。同様に、学習処理部480は、指標値を正常または保守点検を推奨と分類する境界となる第2閾値Th2を、サポートベクタマシン(SVM)またはその他の機械学習手法を用いて学習により生成してもよい。
【0089】
S820において、学習処理部480は、S810で学習した判定基準(第1閾値Th1および第2閾値Th2)を診断部430に設定する。この設定を受けたことに応じて、診断部430は、学習処理部480により新たに設定された第1閾値Th1および第2閾値Th2を用いて渦流量計10の診断を行う。
【0090】
以上に示した診断装置190によれば、渦流量計10から取得した測定データを用いて渦流量計10の状態の判定基準を学習することができる。これにより、診断装置190は、渦流量計10が設置された箇所における管路16および渦発生体20の構造、被測定流体の密度、およびその他の測定環境に応じて判定条件を調整することができる。なお、診断装置190は、学習処理部480を有しない構成をとることもできる。この場合、診断装置190は、予め設定された第1閾値Th1および第2閾値Th2を用いて渦流量計10の状態の診断を行ってよい。
【0091】
図9は、本実施形態の変形例に係る診断装置990の構成を示す。診断装置990は、
図4に示した診断装置190の変形例であり、第1検出信号および第2検出信号を線形結合した結合信号の信号成分の大きさの判定結果を用いて渦流量計10の状態を診断するのに代えて、1または複数の検出信号のうちの少なくとも1つを対象検出信号とし、対象検出信号の信号成分の大きさの判定結果を用いて渦流量計10の状態を診断する。本変形例に係る診断装置990は、
図4に示した診断装置190と類似するので、以下相違点を除き説明を省略する。
【0092】
診断装置990は、取得部900と、測定データ記憶部910と、診断部930と、時系列データ記憶部940と、診断データ出力部950と、表示装置970と、学習処理部980とを有する。取得部900は、渦流量計10に接続される。取得部900は、渦流量計10が検出する少なくとも1つの検出信号のうち、診断装置990による診断処理の対象とする少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさ、および渦流量計10が計測した渦周波数を含む測定データを渦流量計10から取得する。
【0093】
測定データ記憶部910は、取得部900に接続される。測定データ記憶部910は、
図4に示した測定データ記憶部410と同様であり、取得部900が取得した測定データを格納する。
【0094】
診断部930は、測定データ記憶部910に接続される。診断部930は、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさの変化を判定する。診断部930は、この変化の判定結果に基づいて、渦流量計10の状態を診断する。時系列データ記憶部940は、診断部930に接続され、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさおよび渦流量計10の状態の診断結果の時系列データを記憶する。ここで、時系列データ記憶部940は、過去における少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの、渦周波数に応じた信号成分の大きさを渦周波数に対応付けた時系列データを履歴データとして記憶する履歴記憶部として機能する。
【0095】
診断データ出力部950は、時系列データ記憶部940に接続される。診断データ出力部950は、時系列データ記憶部940に格納された、渦流量計10の状態の診断結果を含む時系列データを出力する。診断データ出力部950は、表示処理部960を含んでよい。表示処理部960は、渦流量計10の状態の診断結果を含む時系列データを表示装置970に表示させるための処理を行う。表示装置970は、診断データ出力部950に接続され、表示処理部960によって生成された表示画面等を表示する。
【0096】
学習処理部980は、時系列データ記憶部940に接続される。学習処理部980は、時系列データ記憶部940に格納された、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさの履歴を用いて、診断部930による判定基準を学習により生成する。ここで、学習処理部980は、結合信号の信号成分の大きさに代えて、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさについての判定基準を学習により生成する点を除き、
図4に示した学習処理部480と同様の学習処理を行ってよい。
【0097】
図10は、本変形例に係る診断装置990による渦流量計10の診断フローを示す。本診断フローにおいて、診断装置990内の診断部930は、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさの変化の判定結果に基づいて、渦流量計10の状態を診断する。ここで、診断部930は、1つの対象検出信号を診断の対象としてもよく、2以上の対象検出信号を診断の対象としてもよい。以下、説明の便宜上、診断部930が、1つの対象検出信号を診断の対象とする場合について説明する。
【0098】
S1000において、取得部900は、対象検出信号の信号成分の大きさと、渦流量計10が計測した渦周波数とを含む測定データを渦流量計10から取得する。本実施形態において、取得部900は、一例として、第1検出信号の渦周波数に応じた信号成分の大きさをCPU160から取得してよい。
【0099】
ここで、渦流量計10は、第1検出信号の渦周波数に応じた信号成分の大きさとして、スペクトル分析器125aからCPU160へと出力された第1検出信号における複数の周波数のバンドのそれぞれの信号強度のうち、渦周波数を含む周波数のバンドの信号強度を用いる。これにより、診断装置190は、第1検出信号における渦信号成分の大きさS1を取得することができる。取得部900は、取得した測定データを測定データ記憶部910へと格納する。
【0100】
S1010において、診断部930は、診断の対象となる対象検出信号の信号成分の大きさの変化を算出する。診断部930は、過去における対象検出信号の信号成分の大きさを時系列データ記憶部940から読み出し、過去の値に対する新たに取得された対象検出信号の信号成分の大きさの変化を算出する。
【0101】
ここで、対象検出信号の渦信号成分の大きさは、渦周波数に応じて変化する。そこで、診断部930は、時系列データ記憶部940に格納された履歴データに含まれる対象検出信号の渦周波数に相当する渦周波数に対応づけられた信号成分の大きさと、取得部900が取得した対象検出信号の信号成分の大きさとを用いて変化を算出する。診断部930は、時系列データ記憶部940に格納された履歴データに含まれる、対象検出信号の、渦周波数に相当する周波数に対応づけられた信号成分の大きさのうち、最も直近のものを用いてよく、予め定められた期間(1週間、1ヶ月等)以上前のものを用いてもよく、予め定められた期間の範囲で大きさが最大のものを用いてもよい。また、診断部930は、履歴データに含まれる、対象検出信号の渦周波数近辺に相当する渦周波数に対応づけられた信号成分の大きさを用いてもよい。例えば、診断部930は、履歴データの中から、取得部900が取得した対象検出信号の渦周波数の前後予め定められた周波数幅の範囲に含まれる渦周波数に対応付けられた信号成分の大きさを用いてよい。また、診断部930は、履歴データの中から、取得部900が取得した対象検出信号の渦周波数と同じ周波数バンドに含まれる渦周波数に対応付けられた信号成分の大きさを用いてもよい。
【0102】
また、本実施形態においては、診断部930は、対象検出信号の信号成分の大きさの変化の指標として、過去の値と現在の値との差である変化量を用いる。この変化量は、過去の値から現在の値までの減少量(すなわち、過去の値から現在の値を減じた値)であってよい。これに代えて、診断部930は、対象検出信号の信号成分の大きさの変化の指標として、変化率等の他の指標を用いてもよい。
【0103】
S1020において、診断部930は、S1010において算出した変化量が、第3閾値Th3以上か否かを判定し、この判定結果に基づいて渦流量計10の状態を診断する。変化量が第3閾値Th3以上である場合(S1020における「Y」)、新たに取得された対象検出信号の信号成分の大きさが、その対象検出信号における、同じ渦周波数に対応付けれられた過去の信号成分の大きさと比較して大幅に低下している。そこで、診断部930は、S1030において渦流量計10が異常であると診断する。これに応じて、時系列データ記憶部940は、測定データに診断結果を対応付けて格納し、診断データ出力部950は、異常であるとの診断結果を出力する。
【0104】
変化量が第3閾値Th3未満である場合(S1020における「N」)、新たに取得された対象検出信号の信号成分の大きさが、その対象検出信号における、同じ渦周波数に対応付けれられた過去の信号成分の大きさと比較してあまり低下していない。そこで、診断部930は、S1040において渦流量計10が正常であると診断する。これに応じて、時系列データ記憶部940は、測定データに診断結果を対応付けて格納し、診断データ出力部950は、正常であるとの診断結果を出力する。
【0105】
以上に示した診断フローにおいては、診断装置990は、1つの対象検出信号を用いて渦流量計10を診断する。これに代えて、診断装置990は、2以上の対象検出信号を用いて渦流量計10を診断してもよい。すなわち、取得部900は、2以上の対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさを含む測定データを渦流量計10から取得し、診断部930は、2以上の対象検出信号のそれぞれの、渦周波数に応じた信号成分の大きさの変化の判定結果に基づいて、渦流量計10の状態を診断する。
【0106】
ここで、診断部930は、S1020において、2以上の対象検出信号のうち、少なくとも1つの対象検出信号についての変化量が、その対象検出信号に応じた第3閾値Th3以上である場合に渦流量計10が異常と診断してよい。これに代えて、診断部930は、S1020において、2以上の対象検出信号の全てについて、変化量が、各対象検出信号に応じた第3閾値Th3以上である場合に渦流量計10が異常と診断してもよい。この場合において、第3閾値Th3は、対象検出信号毎に異なる値をとってもよい。
【0107】
以上に示した診断装置990によれば、対象検出信号の信号成分の大きさの変化の判定結果に基づいて渦流量計10の状態を診断することができるので、2以上の検出信号を線形結合した結合信号を用いなくてもよい。このため、診断装置990は、流量または流速の測定のために結合信号を生成しない渦流量計10、または、診断用に結合信号を外部に出力する機能を有しない渦流量計10の診断を行うことができる。
【0108】
なお、以上に示した診断装置990によれば、履歴データに含まれる、対象検出信号の渦周波数に相当する渦周波数に対応付けられた信号成分の大きさを用いて診断を行う。これに代えて、診断装置990は、
図4に示した診断装置190が渦流量信号SQの信号成分の大きさを渦周波数により正規化するのと同様に、新たに取得された対象検出信号および履歴データに含まれる対象検出信号の信号成分の大きさを渦周波数により正規化して診断に用いてもよい。
【0109】
この場合、診断装置990は、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の大きさを渦周波数により正規化する、
図4に示した正規化部420と同様の正規化部を備えてよい。そして、診断部930は、
図4に示した診断部430が渦流量信号SQを判定するのと同様に、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれの信号成分の正規化された大きさが、少なくとも1つの対象検出信号のそれぞれに応じた第1閾値以下であるとの判定結果に基づいて、渦流量計が異常であると診断してよい。このような診断部930は、
図4に示した診断部430と同様に、渦流量計10が異常となると予知してもよい。この場合、診断装置990は、履歴データに含まれる、新たに取得された対象検出信号の渦周波数とは異なる渦周波数に対応付けられた信号成分の大きさを用いて診断を行うことができる。
【0110】
また、診断装置990は、対象検出信号の信号成分の大きさの変化の判定結果に基づいて渦流量計10の状態を診断するのに代えて、対象検出信号の代わりに渦流量信号SQの信号成分の大きさの変化の判定結果に基づいて渦流量計10の状態を診断してもよい。この場合、診断装置990は、渦流量信号SQを正規化しなくてよく、
図9および
図10に示した方法と同様にして、取得部900が取得した渦流量信号SQにおける渦周波数に対応する信号成分の大きさと、履歴データに記録した過去の渦流量信号SQにおけるその渦周波数に対応づけられた信号成分の大きさとを用いて信号成分の大きさの変化を算出する。
【0111】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0112】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0113】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0114】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のコンピュータ等のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0115】
図11は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0116】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0117】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0118】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0119】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0120】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0121】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0122】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0123】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0124】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0125】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0126】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0127】
5 測定装置、10 渦流量計、16 管路、20 渦発生体、24 隙間、30 検出部、34a~b 圧電素子、100a~b チャージコンバータ、110a~b A/Dコンバータ、120 ゲートアレイ、125a~b スペクトル分析器、130 加算器、135 スペクトル分析器、140 バンドパスフィルタ、145 シュミットトリガ、150 カウンタ、160 CPU、170 出力回路、180 表示部、190 診断装置、400 取得部、410 測定データ記憶部、420 正規化部、430 診断部、440 時系列データ記憶部、450 診断結果出力部、460 表示処理部、470 表示装置、480 学習処理部、900 取得部、910 測定データ記憶部、930 診断部、940 時系列データ記憶部、950 診断データ出力部、960 表示処理部、970 表示装置、980 学習処理部、990 診断装置、2200 コンピュータ、2201 DVD-ROM、2210 ホストコントローラ、2212 CPU、2214 RAM、2216 グラフィックコントローラ、2218 ディスプレイデバイス、2220 入/出力コントローラ、2222 通信インターフェイス、2224 ハードディスクドライブ、2226 DVD-ROMドライブ、2230 ROM、2240 入/出力チップ、2242 キーボード