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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240319BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240319BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20240319BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240319BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240319BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240319BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240319BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01L21/78 V
H01L21/78 L
H01L21/28 301B
H01L29/50 M
H01L29/78 652T
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 658Z
H01L29/78 658G
H01L27/04 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020217984
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102918
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】村上 信吾
(72)【発明者】
【氏名】村上 倫章
(72)【発明者】
【氏名】松谷 哲也
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-176823(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066408(WO,A1)
【文献】特開2001-284290(JP,A)
【文献】特開2003-273403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/28
H01L 29/417
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物半導体からなる基板上にIII族窒化物半導体からなる半導体層を有し、前記基板の裏面に裏面電極を有したウェハをチップ分離する工程を有した半導体装置の製造方法において、
前記裏面電極の厚さは1μm以上であり、
チップ分離を予定しているラインに沿って前記半導体層の表面に第1の割り溝を形成する工程と、
前記第1の割り溝の底面に、前記第1の割り溝よりも幅の狭い第2の割り溝を形成する第2の割り溝形成工程と、
ブレーキングによって前記基板および前記半導体層を前記チップごとに分割する基板分割工程と、
前記第1の割り溝に沿って前記半導体層側から押圧することにより前記裏面電極を前記チップごとに分割する裏面電極分割工程と、
を有し、
前記第1の割り溝の深さは、4μm以上8μm以下とし、
前記第1の割り溝の幅は、80μm以上100μm以下とし、
前記第2の割り溝の深さは、0.2μm以上0.5μm以下とし、
前記第1の割り溝形成領域における前記半導体層と前記基板の厚さの合計は、324μm以下とする、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体層は、pn接合界面を有し、前記第1の割り溝は、前記pn接合界面よりも深くする、ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体層は、複数のpn接合界面を有し、前記第1の割り溝は、複数の前記pn接合界面のうち最も深い前記pn接合界面よりも深くする、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体層は、
前記基板上に形成されたn型のIII族窒化物半導体からなるドリフト層と、
前記ドリフト層上に形成されたp型のIII族窒化物半導体からなるボディ層と、
前記ボディ層上に形成されたn型のIII族窒化物半導体からなるソースコンタクト層と、を有し、
前記第1の割り溝は、前記ドリフト層と前記ボディ層の界面よりも深くする、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
III族窒化物半導体からなる基板上にIII族窒化物半導体からなる半導体層を有し、前記基板の裏面に裏面電極を有したウェハをチップ分離する工程を有した半導体装置の製造方法において、
チップ分離を予定しているラインに沿って前記半導体層の表面に第1の割り溝を形成する工程と、
前記第1の割り溝の底面に、前記第1の割り溝よりも幅の狭い第2の割り溝を形成する第2の割り溝形成工程と、
ブレーキングによって前記基板および前記半導体層を前記チップごとに分割する基板分割工程と、
前記第1の割り溝に沿って前記半導体層側から押圧することにより前記裏面電極を前記チップごとに分割する裏面電極分割工程と、
を有し、
前記半導体層は、複数のpn接合界面を有し、前記第1の割り溝は、複数の前記pn接合界面のうち最も深い前記pn接合界面よりも深くする、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の割り溝の深さは、1.5μm以上とする、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の割り溝形成領域における前記半導体層と前記基板の厚さの合計は、329.5μm以下とする、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体層は、
前記基板上に形成されたn型のIII族窒化物半導体からなるドリフト層と、
前記ドリフト層上に形成されたp型のIII族窒化物半導体からなるボディ層と、
前記ボディ層上に形成されたn型のIII族窒化物半導体からなるソースコンタクト層と、を有し、
前記第1の割り溝は、前記ドリフト層と前記ボディ層の界面よりも深くする、請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記裏面電極の厚さは、1μm以上である、請求項5から請求項8までのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記半導体装置は、トレンチゲート構造の縦型MISFETであり、前記裏面電極はドレイン電極である、請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関するものであり、特にチップに分割する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の作製では、基板上に素子構造を形成した後、ウェハを各チップに分離する工程が必要となる。
【0003】
特許文献1には、サファイア基板上にIII 族窒化物半導体層を有したウェハをチップ分離する方法が記載されている。詳細には、エッチングによってIII 族窒化物半導体層を除去して第1の割り溝を線状に形成し、その第1の割り溝の上からスクライブによってサファイア基板に達する以上の深さ、かつ第1の割り溝よりも狭い幅で第2の割り溝を線状に形成し、その後に第2の割り溝に沿ってウェハを分割することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、SiC基板上にSiC層を有し、SiC基板裏面に電極を有したウェハをチップ分離してショットキーダイオードなどの素子を作製することが記載されている。ここでチップ分離は、SiC層からSiC基板まで至る溝を設け、その溝に沿って分割することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-142763号公報
【文献】特開2004-22878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、GaN基板上にIII 族窒化物半導体層を有し、GaN基板裏面の全面に裏面電極を有したウェハについて、特許文献1、2の方法でチップ分離をすると、裏面電極が割れない場合があり、ウェハを押圧して裏面電極を分割する作業が必要であった。その押圧の際、隣接するチップ同士が干渉し、素子領域に割れや欠けが発生してしまう問題があった。素子領域の割れや欠けは、pn接合界面にかかってしまう可能性が高く、リーク不良となる可能性が高かった。
【0007】
そこで本発明の目的は、III 族窒化物半導体からなる基板上にIII 族窒化物半導体層を有し、基板裏面の全面に裏面電極を有したウェハのチップ分離において、素子領域の割れや欠けを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、III族窒化物半導体からなる基板上にIII族窒化物半導体からなる半導体層を有し、基板の裏面に裏面電極を有したウェハをチップ分離する工程を有した半導体装置の製造方法において、裏面電極の厚さは1μm以上であり、チップ分離を予定しているラインに沿って半導体層の表面に第1の割り溝を形成する工程と、第1の割り溝の底面に、第1の割り溝よりも幅の狭い第2の割り溝を形成する第2の割り溝形成工程と、ブレーキングによって基板および半導体層をチップごとに分割する基板分割工程と、第1の割り溝に沿って半導体層側から押圧することにより裏面電極をチップごとに分割する裏面電極分割工程と、を有し、第1の割り溝の深さは、4μm以上8μm以下とし、第1の割り溝の幅は、80μm以上100μm以下とし、第2の割り溝の深さは、0.2μm以上0.5μm以下とし、第1の割り溝形成領域における半導体層と基板の厚さの合計は、324μm以下とする、ことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0009】
また、本発明は、III族窒化物半導体からなる基板上にIII族窒化物半導体からなる半導体層を有し、前記基板の裏面に裏面電極を有したウェハをチップ分離する工程を有した半導体装置の製造方法において、チップ分離を予定しているラインに沿って前記半導体層の表面に第1の割り溝を形成する工程と、前記第1の割り溝の底面に、前記第1の割り溝よりも幅の狭い第2の割り溝を形成する第2の割り溝形成工程と、ブレーキングによって前記基板および前記半導体層を前記チップごとに分割する基板分割工程と、前記第1の割り溝に沿って前記半導体層側から押圧することにより前記裏面電極を前記チップごとに分割する裏面電極分割工程と、を有し、前記半導体層は、複数のpn接合界面を有し、前記第1の割り溝は、複数の前記pn接合界面のうち最も深い前記pn接合界面よりも深くする、半導体装置の製造方法である。
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法において、半導体層がpn接合界面を有する場合、第1の割り溝は、pn接合界面よりも深くするとよい。
【0011】
第1の割り溝の深さは、5μm以上とすることが好ましい。
【0012】
また、第1の割り溝形成領域における半導体層と基板の厚さの合計は、324μm以下とすることが好ましい。
【0013】
第1の割り溝の幅は、80μm以上とすることが好ましい。
【0014】
裏面電極の厚さは、1μm以上であることが好ましい。
【0015】
第2の割り溝の深さは、0.2μm以上とすることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、III 族窒化物半導体からなる基板上にIII 族窒化物半導体からなる半導体層を有し、基板の裏面に裏面電極を有した半導体装置において、半導体装置の外周に位置し、半導体層表面からの深さが1.5μm以上の第1の割り溝と、第1の割り溝よりも外側であって半導体装置の側端面に接して位置し、第1の割り溝の底面から所定深さの第2の割り溝と、を有することを特徴とする半導体装置である。
【0017】
また、本発明は、III 族窒化物半導体からなる基板上にIII 族窒化物半導体からなる半導体層を有し、基板の裏面に裏面電極を有した半導体装置において、半導体装置の外周に位置し、半導体層表面から所定深さの第1の割り溝と、第1の割り溝よりも外側であって半導体装置の側端面に接して位置し、第1の割り溝の底面から所定深さの第2の割り溝と、を有し、第1の割り溝形成領域における半導体層と基板の厚さの合計は、329.5μm以下である、ことを特徴とする半導体装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、裏面電極を分割する押圧の際、隣接するチップ同士の干渉が抑制される。そのため、素子領域の割れや欠けを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1の半導体装置の構成を示した図。
図2】実施例1の半導体装置の外周部分の構成を示した図。
図3】実施例1の半導体装置の製造工程を示した図。
図4】実施例1の半導体装置の製造工程を示した図。
図5】第1の割り溝160の深さと不良率の関係を示したグラフ。
図6】第1の割り溝160形成領域における半導体層180および基板110の厚さの合計と不良率の関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1の半導体装置の構成を示した図である。実施例1の半導体装置は、トレンチ構造の縦型FETであり、図1では単位セル分の構造を示している。図1のように、実施例1の半導体装置は、トレンチゲート構造の縦型MISFETであり、基板110と、ドリフト層120と、ボディ層130と、ソースコンタクト層140と、トレンチT1と、リセスR1と、ゲート絶縁膜F1と、ゲート電極G1と、ソース電極S1と、ボディ電極B1と、ドレイン電極D1と、保護膜150を有している。以下、ドリフト層120、ボディ層130、ソースコンタクト層140をまとめて半導体層180と呼ぶことがある。
【0022】
基板110は、Siドープのn-GaNからなる基板である。基板110のSi濃度は1×1017~1×1020/cm3 であり、たとえば1×1018/cm3 である。基板110の厚さは、たとえば320μmである。基板110の厚さを350μm以下とすることで、チップ分離を容易にしている。
【0023】
ドリフト層120は、基板110上に積層されたSiドープのn-GaN層である。ドリフト層120の厚さは1~20μmであり、たとえば9μmである。ドリフト層120のSi濃度は、1×1015~2×1016/cm3 であり、たとえば1×1015/cm3 である。
【0024】
ボディ層130は、ドリフト層120上に積層されたMgドープのp-GaN層である。ボディ層130の厚さは0.5~5μmであり、たとえば0.6μmである。ボディ層130のMg濃度は1×1017~5×1019/cm3 であり、たとえば6×1018/cm3 である。
【0025】
ソースコンタクト層140は、ボディ層130上に積層されたSiドープのn-GaN層である。ソースコンタクト層140の厚さは、0.1~1μmであり、たとえば0.4μmである。ソースコンタクト層140のSi濃度は、1×1018~1×1019/cm3 であり、たとえば3×1018/cm3 である。
【0026】
トレンチT1は、ソースコンタクト層140表面の所定位置に形成された溝であり、ソースコンタクト層140およびボディ層130を貫通してドリフト層120に達する深さである。トレンチT1の底面にはドリフト層120が露出し、トレンチT1の側面にはドリフト層120、ボディ層130、ソースコンタクト層140が露出する。このトレンチT1の側面に露出するボディ層130の側面が、実施例1のFETのチャネルとして動作する領域である。
【0027】
ゲート絶縁膜F1は、トレンチT1の底面、側面、ソースコンタクト層140表面(ソース電極S1の形成領域は除く)にわたって連続して膜状に設けられている。ゲート絶縁膜F1は、SiO2 からなる。ゲート絶縁膜F1の厚さは、たとえば80nmである。
【0028】
ゲート電極G1は、ゲート絶縁膜F1を介して、トレンチT1の底面、側面、上面に連続して膜状に設けられている。ゲート電極G1は、TiNからなる。
【0029】
リセスR1は、ソースコンタクト層140表面の所定位置に設けられた溝であり、ソースコンタクト層140を貫通してボディ層130に達する深さである。リセスR1の底面にはボディ層130が露出し、側面にはボディ層130、ソースコンタクト層140が露出する。
【0030】
ボディ電極B1は、リセスR1の底面に設けられていて、リセスR1底面に露出するボディ層130に接している。ボディ電極B1は、Niからなる。
【0031】
ソース電極S1は、ボディ電極B1上、ソースコンタクト層140上にわたって連続的に設けられている。ソース電極S1は、Ti/Alからなる。ここで「/」は積層を示し、A/BはA、Bの順に積層した構造であることを示す。以下、材料の説明において同様である。
【0032】
ドレイン電極(裏面電極)D1は、基板110の裏面に設けられている。ドレイン電極D1は、ソース電極S1と同一材料であり、Ti/AlSi/Ti/TiN/Ti/Ni/Agからなる。厚さは順に、0.03μm、0.3μm、0.02μm、1μm、0.02μm、0.5μm、2μmである。このように、ドレイン電極D1は1μm以上の厚さを有している。
【0033】
保護膜150は、半導体装置の上面全面にわたって設けられている。つまり、ゲート電極G1上、ソース電極S1上、およびソースコンタクト層140上に連続的に設けられている。保護膜150のうち所定の領域にはゲート電極G1、ソース電極S1を露出させる孔(図示しない)が設けられており、その孔を介して保護膜150上に設けられた配線電極(図示しない)とゲート電極G1、ソース電極S1が接続されている。保護膜150は、SiNからなる。厚さは1μmである。
【0034】
半導体装置の外周には、図2に示すように、ウェハのチップ分離のために設けられた第1の割り溝160と、第2の割り溝170が残存しており、階段状の段差となっている。第1の割り溝160は、保護膜150表面から半導体層180に達する深さの段差である。また、第1の割り溝160は、基板110表面に平行な面である底面と、底面に角度を成す側面とを有した四角形状の断面形状である。また、第2の割り溝170は、第1の割り溝160よりも外側であり、半導体装置の側端面に接して位置し、第1の割り溝160の底面から所定の深さの段差である。また第2の割り溝170は、底面を有さず、基板110表面に角度を成す側面のみを有した直角三角形状の断面形状である。第1の割り溝160および第2の割り溝170の深さや幅については後述する。
【0035】
次に、実施例1の半導体装置の製造工程について、図3、4を参照に説明する。なお、図3、4では半導体装置の外周付近のみを図示することとする。
【0036】
まず、基板110上に、MOCVD法によって、ドリフト層120、ボディ層130、ソースコンタクト層140を順に積層して半導体層180を形成する(図3(a)参照)。MOCVD法において、窒素源は、アンモニア、Ga源は、トリメチルガリウム(Ga(CH3 3 :TMG)、n型ドーパントガスは、シラン(SiH4 )、p型ドーパントガスは、シクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C5 5 2 :CP2 Mg)である。キャリアガスは水素である。
【0037】
次に、ソースコンタクト層140表面の所定位置をドライエッチングすることで、トレンチT1およびリセスR1を形成する。トレンチT1の形成後にリセスR1を形成してもよいし、リセスR1の形成後にトレンチT1を形成してもよい。ドライエッチングには、塩素系ガスを用いる。たとえば、Cl2 、SiCl4 、CCl4 、BCl3 である。また、ドライエッチングは、ICPエッチングなど任意の方式を用いることができる。
【0038】
次に、トレンチT1の底面、側面、およびソースコンタクト層140表面に連続して、ALD法によってSiO2 からなるゲート絶縁膜F1を形成する。ALD法を用いることで、トレンチT1による段差があっても均一な厚さに形成することができる。なお、実施例1では段差被覆性の高さからALD法を用いてゲート絶縁膜F1を形成しているが、スパッタやCVD法などによって形成してもよい。
【0039】
次に、リフトオフ法を用いて、ボディ電極B1、ソース電極S1、ゲート電極G1を形成する。
【0040】
次に、半導体層180、ゲート電極G1、ソース電極S1の上面にわたって保護膜150を形成する。そして、保護膜150のうち、第1の割り溝160を形成する領域、ゲート電極G1上部の領域、およびソース電極S1上部の領域をエッチングにより除去する(図3(b)参照)。第1の割り溝160を形成する領域には半導体層180表面が露出する。次に、保護膜150上に配線電極(図示しない)を形成し、配線電極とゲート電極G1、ソース電極S1を接続する。
【0041】
次に、保護膜150に覆われていない半導体層180表面をドライエッチングし、第1の割り溝160を形成する(図3(c)参照)。第1の割り溝160のパターンは、チップ分離を予定しているラインに沿ったパターンであり、格子状のパターンである。エッチングガスは、たとえばCl2 である。
【0042】
第1の割り溝160の深さ(半導体層180表面からの深さ)は、1.5μm以上とする。チップ分離時の半導体層180の割れや欠けの発生率は、1.5μm以上で低下していくためである。好ましくは4μm以上である。第1の割り溝160の深さが大きくなるほどチップ分離時の半導体層180の割れや欠けの発生率は低減していくが、4μm以上であれば大きく低減することができる。特に好ましくは、5μm以上である。深さ5μm以上で発生率はおよそ下げ止まり、ウェハごとの発生率のばらつきも低減するためである。このように第1の割り溝160の深さを設定することで、チップ分離時の半導体層180の割れや欠けを抑制することができ、割れや欠けの発生のばらつきも抑制することができる。
【0043】
また、第1の割り溝160の深さは、8μm以下とすることが好ましい。第1の割り溝160の深さを8μm以下とすることで、チップ分離時の割れや欠けを抑制しつつ、第1の割り溝160の形成時間を短縮することができる。より好ましくは6μm以下である。
【0044】
第1の割り溝160の深さを1.5μm以上とすることに替えて、あるいは加えて、第1の割り溝160の領域における半導体層180および基板110の厚さの合計を、329.5μm以下としてもよい。この場合も、同様に割れや欠けを抑制することができる。より好ましくは327μm以下、さらに好ましくは324μm以下である。
【0045】
第1の割り溝160の幅は、80μm以上とすることが好ましい。80μm以上とすることで、チップ分離をより容易に行うことができる。ただし、第1の割り溝160の幅が広くなるほど1ウェハ当たりから取れるチップの個数が少なくなるため、第1の割り溝160の幅は100μm以下が好ましい。
【0046】
次に、基板110の裏面全面に、スパッタや蒸着によってドレイン電極D1を形成する(図3(d)参照)。なお、実施例1では、第1の割り溝160形成後、第2の割り溝170形成前にドレイン電極D1を形成しているが、第1の割り溝160形成前にドレイン電極D1を形成してもよいし、第2の割り溝170形成後にドレイン電極D1を形成してもよい。
【0047】
次に、第1の割り溝160の底面に、その第1の割り溝160の延伸方向に沿って第2の割り溝170を形成する(図4(a)参照)。第2の割り溝170は、たとえばスクライブによって形成し、第2の割り溝170の断面形状は二等辺三角形状となる。
【0048】
ここで、第1の割り溝160の深さを1.5μm以上としているため、第2の割り溝170形成時に発生するクラックを浅くすることができ、GaN表面に加わる外力を緩和することができる。その結果、GaN表面のダメージ層を軽減することができる。
【0049】
第2の割り溝170の深さ(第1の割り溝160底面からの深さ)は、0.2μm以上が好ましい。後工程のブレーキングにおいてチップが未分割となるのをより抑制することができる。また、第2の割り溝170の深さは、0.5μm以下が好ましい。第2の割り溝170が深くなると、ソースコンタクト層140表面に割れや欠けが生じる可能性があるためである。
【0050】
また、第2の割り溝170の幅は、第1の割り溝160の幅よりも狭く、かつスクライブ時に刃が第1の割り溝160や保護膜150に当たらない範囲であれば任意である。たとえば、60~80μmである。
【0051】
次に、基板110裏面側から第2の割り溝170に沿ってブレーキングブレードを押し当てて、基板110および半導体層180をチップごとに分割する。ここで、ドレイン電極D1は金属であるため延性があり、実施例1のように厚さが1μm以上の場合にはブレーキングで分割することができず、連続したままの状態である(図4(b)参照)。
【0052】
次に、ウェハを半導体層180側から第2の割り溝170に沿って押圧することで、ドレイン電極D1をチップごとに分割する(図4(c)参照)。ここで、実施例1では第1の割り溝160の深さを1.5μm以上としていることから、押圧時に隣接するチップ同士が干渉することは抑制されている。また、第2の割り溝170形成時のGaN表面のダメージ層が軽減されているため、干渉したとしても割れや欠けが生じる範囲を小さくすることができる。
【0053】
以上のように、実施例1の半導体装置の製造方法によれば、チップ分離時のチップの割れや欠けを抑制することができる。
【0054】
次に、実施例1の半導体装置の製造方法に関する実験結果を説明する。
【0055】
(実験1)
図5は、第1の割り溝160の深さと不良率の関係を示したグラフであり、図6は、基板110の裏面から第1の割り溝160底面までの厚さと不良率の関係を示したグラフである。第1の割り溝160の深さは、ソースコンタクト層140表面からの深さである。不良率は、未分割のもの、第2の割り溝170から外れた場所で分割されたもの、チップ分離によってエピタキシャル層(ドリフト層120、ボディ層130、ソースコンタクト層140)に割れや欠けが生じたものを不良として、チップ全体に対する不良のチップの割合を示す。割れや欠けは、顕微鏡を用いて目視により確認した。グラフ中、丸印は各ウェハごとの不良率を示し、×印は平均値を示している。第2の割り溝170形成のスクライブの荷重は40g、チップ分離のブレーキングの食い込み量は70μmとした。
【0056】
図5のように、第1の割り溝160の深さがおよそ1.5μm以上で不良率が低下していくことがわかった。また、第1の割り溝160の深さが4μm以上で不良率は大きく低下することがわかった。また、第1の割り溝160の深さが5μm以上で不良率のばらつきがほぼなくなり、不良率は10%以下に抑えられることがわかった。この結果から、第1の割り溝160の深さは1.5μm以上とするのがよく、好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上であることがわかった。
【0057】
また、図6のように、第1の割り溝160の領域における半導体層180および基板110の厚さの合計が329.5μm以下で不良率が低下していくことがわかった。また、327μm以下で不良率は大きく低下することがわかった。また、324μm以下で不良率のばらつきがほぼなくなり、不良率を10%以下に抑えられることがわかった。この結果から、第1の割り溝160の領域における半導体層180および基板110の厚さの合計は329.5μm以下とするのがよく、好ましくは327μm以下、さらに好ましくは324μm以下であることがわかった。
【0058】
なお、実施例1の半導体装置はFETであったが、本発明は裏面電極を有する構造であればFET以外の半導体装置にも適用することができる。たとえば、pnダイオード、IGBT、HFETなどにも適用することができる。
【0059】
pn接合界面を有する半導体装置の場合、第1の割り溝160の深さは、pn接合界面よりも深くすることが好ましい。pn接合界面が複数存在する場合には、最も深い位置のpn接合界面よりも深くすることが好ましい。チップ分離時のエピタキシャル層の割れや欠けがpn接合界面にかかる可能性が低くなり、半導体装置の不良をさらに抑制することができる。実施例1では、ドリフト層120とボディ層130の界面、およびボディ層130とソースコンタクト層140の界面にpn接合界面が生じているが、ドリフト層120とボディ層130の界面よりも第1の割り溝160を深くするとよい。
【0060】
また、本発明は、裏面電極の厚さがどのような値でも適用できるが、1μm以上の厚さである場合に好適である。裏面電極の厚さが1μm以上である場合、ブレーキングによって裏面電極を分割することが困難であり、押圧によって裏面電極を分割する必要があるが、本発明を用いれば、その押圧の際のチップの割れや欠けを効果的に抑制できる。特に裏面電極の厚さが4μm以上の場合に好適である。
【0061】
また、実施例1の半導体装置は基板材料としてGaNを用いているが、本発明はIII 族窒化物半導体であれば適用でき、たとえばAlGaN、AlN、INGaN、AlGaINなどからなる基板でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、基板裏面に電極を有した各種半導体装置の製造に適用できる。
【符号の説明】
【0063】
110:基板
120:ドリフト層
130:ボディ層
140:ソースコンタクト層
150:保護膜
160:第1の割り溝
170:第2の割り溝
F1:ゲート絶縁膜
G1:ゲート電極
S1:ソース電極
B1:ボディ電極
D1:ドレイン電極
T1:トレンチ
R1:リセス
図1
図2
図3
図4
図5
図6