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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20240319BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20240319BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20240319BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240319BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B60K1/00
B60K7/00
F16H57/04 G
F16H57/04 K
F16H57/04 N
H02K7/116
H02K9/19 A
H02K9/19 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020535788
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030900
(87)【国際公開番号】W WO2020032026
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018150696
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-132941(JP,A)
【文献】特開2016-60286(JP,A)
【文献】特開2006-240429(JP,A)
【文献】特開2015-72054(JP,A)
【文献】特開2011-79484(JP,A)
【文献】特開2013-135531(JP,A)
【文献】米国特許第4479404(US,A)
【文献】特開平8-98464(JP,A)
【文献】特開2016-56938(JP,A)
【文献】特開2016-53403(JP,A)
【文献】特開2005-73364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B60K 7/00
F16H 57/04
F16H 1/28
H02K 7/116
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸を中心として回転するモータシャフトを有するモータと、
前記モータシャフトの軸方向の端部に接続され、前記モータの動力を出力シャフトに伝達する伝達機構と、
前記モータおよび前記伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられる油路と、を備え、
前記伝達機構は、
軸方向に延び、前記モータシャフトに連結される連結シャフトと、
前記連結シャフトに設けられるサンギアと、
前記サンギアの径方向外側に配置され、前記サンギアと噛み合うプラネタリギアと、
前記プラネタリギアの径方向外側に配置され、前記プラネタリギアと噛み合い、前記ハウジングに固定されるインターナルギアと、
前記プラネタリギア内を軸方向に延び、前記プラネタリギアを回転自在に支持するキャリアピンと、
前記キャリアピンを支持するキャリアと、
前記キャリアと接続され、前記モータ軸と同軸に配置される前記出力シャフトと、を有し、
前記油路は、前記ハウジングの下部に配置され、オイルが溜められる貯油部を有し、
前記貯油部は、
径方向から見て、前記伝達機構と重なる位置に配置されるギア貯油部と、
径方向から見て、前記モータと重なる位置に配置されるモータ貯油部と、を有し、
前記ハウジングは、前記ギア貯油部と前記モータ貯油部とを軸方向に仕切る仕切り壁部を有し、
前記仕切り壁部は、前記仕切り壁部を軸方向に貫通し、前記ギア貯油部と前記モータ貯油部とを繋ぐオイル流通孔を有し、
前記プラネタリギアの前記モータ軸を中心とする回転軌跡が、前記ギア貯油部を通り、
前記仕切り壁部は、前記モータ軸を中心とする環状であり、
前記仕切り壁部の外周部は、前記ハウジングの周壁部の内周面に固定され、
前記インターナルギアは、前記仕切り壁部の内周部に設けられる、
モータユニット。
【請求項2】
請求項に記載のモータユニットであって、
前記仕切り壁部と前記インターナルギアとは、単一の部材の部分であり、一体に設けられる、モータユニット。
【請求項3】
モータ軸を中心として回転するモータシャフトを有するモータと、
前記モータシャフトの軸方向の端部に接続され、前記モータの動力を出力シャフトに伝達する伝達機構と、
前記モータおよび前記伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられる油路と、
前記油路にオイルを循環させるオイルポンプと、
を備え、
前記伝達機構は、
軸方向に延び、前記モータシャフトに連結される連結シャフトと、
前記連結シャフトに設けられるサンギアと、
前記サンギアの径方向外側に配置され、前記サンギアと噛み合うプラネタリギアと、
前記プラネタリギアの径方向外側に配置され、前記プラネタリギアと噛み合い、前記ハウジングに固定されるインターナルギアと、
前記プラネタリギア内を軸方向に延び、前記プラネタリギアを回転自在に支持するキャリアピンと、
前記キャリアピンを支持するキャリアと、
前記キャリアと接続され、前記モータ軸と同軸に配置される前記出力シャフトと、を有し、
前記油路は、前記ハウジングの下部に配置され、オイルが溜められる貯油部を有し、
前記貯油部は、
径方向から見て、前記伝達機構と重なる位置に配置されるギア貯油部と、
径方向から見て、前記モータと重なる位置に配置されるモータ貯油部と、を有し、
前記ハウジングは、前記ギア貯油部と前記モータ貯油部とを軸方向に仕切る仕切り壁部を有し、
前記仕切り壁部は、前記仕切り壁部を軸方向に貫通し、前記ギア貯油部と前記モータ貯油部とを繋ぐオイル流通孔を有し、
前記プラネタリギアの前記モータ軸を中心とする回転軌跡が、前記ギア貯油部を通り、
前記モータシャフトは、筒状であり、
前記連結シャフトは、筒状であり、
前記モータシャフトの内部と前記連結シャフトの内部とは、互いに連通し、
前記油路は、前記オイルポンプと前記モータシャフトの内部とを繋ぐ部分を有する、モータユニット。
【請求項4】
請求項に記載のモータユニットであって、
前記オイルポンプは、電動オイルポンプである、モータユニット。
【請求項5】
請求項またはに記載のモータユニットであって、
前記オイルポンプは、前記モータ貯油部からオイルを吸入する、モータユニット。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のモータユニットであって、
前記ギア貯油部の下面は、前記モータ貯油部の下面よりも上側に位置する、モータユニット。
【請求項7】
モータ軸を中心として回転するモータシャフトを有するモータと、
前記モータシャフトの軸方向の端部に接続され、前記モータの動力を出力シャフトに伝達する伝達機構と、
前記モータおよび前記伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられる油路と、
前記出力シャフトと前記ハウジングとの間に設けられ、前記出力シャフトを前記モータ軸回りに回転自在に支持する第1ベアリングと、
を備え、
前記伝達機構は、
軸方向に延び、前記モータシャフトに連結される連結シャフトと、
前記連結シャフトに設けられるサンギアと、
前記サンギアの径方向外側に配置され、前記サンギアと噛み合うプラネタリギアと、
前記プラネタリギアの径方向外側に配置され、前記プラネタリギアと噛み合い、前記ハウジングに固定されるインターナルギアと、
前記プラネタリギア内を軸方向に延び、前記プラネタリギアを回転自在に支持するキャリアピンと、
前記キャリアピンを支持するキャリアと、
前記キャリアと接続され、前記モータ軸と同軸に配置される前記出力シャフトと、を有し、
前記油路は、前記ハウジングの下部に配置され、オイルが溜められる貯油部を有し、
前記貯油部は、
径方向から見て、前記伝達機構と重なる位置に配置されるギア貯油部と、
径方向から見て、前記モータと重なる位置に配置されるモータ貯油部と、を有し、
前記ハウジングは、前記ギア貯油部と前記モータ貯油部とを軸方向に仕切る仕切り壁部を有し、
前記仕切り壁部は、前記仕切り壁部を軸方向に貫通し、前記ギア貯油部と前記モータ貯油部とを繋ぐオイル流通孔を有し、
前記プラネタリギアの前記モータ軸を中心とする回転軌跡が、前記ギア貯油部を通り、
前記第1ベアリングは、前記プラネタリギアの最も径方向外側に位置する部分よりも径方向内側に位置し、前記プラネタリギアの軸方向位置とは異なる軸方向位置に配置され、
前記ハウジングは、軸方向において前記プラネタリギアと前記第1ベアリングとの間に位置し、前記モータ軸よりも上側に配置されるオイル案内壁部を有し、
前記オイル案内壁部は、軸方向に沿って前記プラネタリギアから前記第1ベアリングに向かうにしたがい下側に位置する傾斜面を有する、モータユニット。
【請求項8】
請求項に記載のモータユニットであって、
前記出力シャフトと前記ハウジングとの間に設けられ、前記出力シャフトと前記ハウジングとの間をシールするオイルシールを備え、
前記オイルシールは、前記第1ベアリングと軸方向に隣り合って配置される、モータユニット。
【請求項9】
請求項またはに記載のモータユニットであって、
前記オイル案内壁部の前記傾斜面は、軸方向に沿って前記プラネタリギアから前記第1ベアリングに向かうにしたがい下側に向けて延びる溝部を有する、モータユニット。
【請求項10】
モータ軸を中心として回転するモータシャフトを有するモータと、
前記モータシャフトの軸方向の端部に接続され、前記モータの動力を出力シャフトに伝達する伝達機構と、
前記モータおよび前記伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられる油路と、
前記モータシャフトを前記モータ軸回りに回転自在に支持する第2ベアリングと、
前記第2ベアリングを保持するベアリングホルダと、
を備え、
前記伝達機構は、
軸方向に延び、前記モータシャフトに連結される連結シャフトと、
前記連結シャフトに設けられるサンギアと、
前記サンギアの径方向外側に配置され、前記サンギアと噛み合うプラネタリギアと、
前記プラネタリギアの径方向外側に配置され、前記プラネタリギアと噛み合い、前記ハウジングに固定されるインターナルギアと、
前記プラネタリギア内を軸方向に延び、前記プラネタリギアを回転自在に支持するキャリアピンと、
前記キャリアピンを支持するキャリアと、
前記キャリアと接続され、前記モータ軸と同軸に配置される前記出力シャフトと、を有し、
前記油路は、前記ハウジングの下部に配置され、オイルが溜められる貯油部を有し、
前記貯油部は、
径方向から見て、前記伝達機構と重なる位置に配置されるギア貯油部と、
径方向から見て、前記モータと重なる位置に配置されるモータ貯油部と、を有し、
前記ハウジングは、前記ギア貯油部と前記モータ貯油部とを軸方向に仕切る仕切り壁部を有し、
前記仕切り壁部は、前記仕切り壁部を軸方向に貫通し、前記ギア貯油部と前記モータ貯油部とを繋ぐオイル流通孔を有し、
前記プラネタリギアの前記モータ軸を中心とする回転軌跡が、前記ギア貯油部を通り、
前記ベアリングホルダは、前記インターナルギアに支持される、モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】



本発明は、モータユニットに関する。本願は、2018年8月9日に日本に出願された特願2018-150696号公報に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。


【背景技術】
【0002】



車両の車軸を回転させるモータユニットが知られる。特許文献1のインホイールモータ駆動装置は、減速部の内部で、歯車および軸等の回転要素が潤滑油に浸漬して、撹拌および掻き上げによる油浴潤滑を実現する。減速部は、例えば遊星減速機である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】



【文献】日本国公開公報:特開2016-169757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】



伝達機構が遊星歯車機構である場合において、伝達機構の部材にオイルを安定して供給する点に改善の余地があった。


【0005】



本発明は、上記事情に鑑みて、伝達機構の部材にオイルを安定して供給できるモータユニットを提供することを目的の一つとする。


【課題を解決するための手段】
【0006】



本発明のモータユニットの一つの態様は、モータ軸を中心として回転するモータシャフトを有するモータと、前記モータシャフトの軸方向の端部に接続され、前記モータの動力を出力シャフトに伝達する伝達機構と、前記モータおよび前記伝達機構を収容するハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられる油路と、を備え、前記伝達機構は、軸方向に延び、前記モータシャフトに連結される連結シャフトと、前記連結シャフトに設けられるサンギアと、前記サンギアの径方向外側に配置され、前記サンギアと噛み合うプラネタリギアと、前記プラネタリギアの径方向外側に配置され、前記プラネタリギアと噛み合い、前記ハウジングに固定されるインターナルギアと、前記プラネタリギア内を軸方向に延び、前記プラネタリギアを回転自在に支持するキャリアピンと、前記キャリアピンを支持するキャリアと、前記キャリアと接続され、前記モータ軸と同軸に配置される前記出力シャフトと、を有し、前記油路は、前記ハウジングの下部に配置され、オイルが溜められる貯油部を有し、前記貯油部は、径方向から見て、前記伝達機構と重なる位置に配置されるギア貯油部と、径方向から見て、前記モータと重なる位置に配置されるモータ貯油部と、を有し、前記ハウジングは、前記ギア貯油部と前記モータ貯油部とを軸方向に仕切る仕切り壁部を有し、前記仕切り壁部は、前記仕切り壁部を軸方向に貫通し、前記ギア貯油部と前記モータ貯油部とを繋ぐオイル流通孔を有し、前記プラネタリギアの前記モータ軸を中心とする回転軌跡が、前記ギア貯油部を通る。


【発明の効果】
【0007】



本発明の一つの態様のモータユニットによれば、伝達機構の部材にオイルを安定して供給できる。


【図面の簡単な説明】
【0008】



図1図1は、車両に搭載される一実施形態のモータユニットおよび車両駆動装置を示す概略図である。
図2図2は、モータユニットおよび車両駆動装置を示す斜視図である。
図3図3は、モータユニットおよび車両駆動装置を示す側面図である。
図4図4は、モータユニットを示す斜視図である。
図5図5は、モータユニットを示す断面図である。
図6図6は、モータユニットの油路を流れるオイルの向きを模式的に示す図である。
図7図7は、モータユニットの一部を拡大して示す部分断面図である。
図8図8は、モータユニットの一部を拡大して示す部分断面図である。
図9図9は、モータユニットの油路を示す概略図である。
図10図10は、油路を流れるオイルの向きを示す概略図である。
図11図11は、油路を流れるオイルの向きを示す概略図である。
図12図12は、一実施形態の変形例のモータユニットの油路を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】



本実施形態のモータユニット1および車両駆動装置10について、図面を参照して説明する。以下の説明では、各図に示す本実施形態のモータユニット1が水平な路面上に位置する車両100に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。本実施形態では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、モータユニット1が搭載される車両100の前後方向である。本実施形態において、+X側は、車両100の前側であり、-X側は、車両100の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向の両方と直交する方向であって、車両100の左右方向(車幅方向)である。本実施形態において、+Y側は、車両100の左側であり、-Y側は、車両100の右側である。なお、前後方向の位置関係は、本実施形態の位置関係に限らず、+X側が車両100の後側であり、-X側が車両100の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両100の右側であり、-Y側は、車両100の左側である。
【0010】



各図に適宜示すモータ軸J2は、Y軸方向すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J2に平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。軸方向のうち、モータユニット1の後述するモータ20から伝達機構30へ向かう方向を軸方向一方側と呼び、伝達機構30からモータ20へ向かう方向を軸方向他方側と呼ぶ。具体的に本実施形態では、後述する一対のモータユニット1のうち、車両100の左側(+Y側)に位置する一方のモータユニット1においては、軸方向一方側が+Y側であり、軸方向他方側が-Y側である。車両100の右側(-Y側)に位置する他方のモータユニット1においては、軸方向一方側が-Y側であり、軸方向他方側が+Y側である。モータ軸J2を中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。径方向のうち、モータ軸J2に近づく方向を径方向内側と呼び、モータ軸J2から離れる方向を径方向外側と呼ぶ。モータ軸J2を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J2の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本実施形態において「平行な方向」は略平行な方向も含み「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0011】



図1に示すように、車両100は、車軸を回転させる動力発生手段として、2つの車両駆動装置10,101を備える。すなわち、車両100はパワートレインを有し、パワートレインは、2つの車両駆動装置10,101と、バッテリ(図示省略)と、を備える。本実施形態の車両100は、モータを動力発生手段とする電気自動車(EV)である。車両100は、フロント用の車両駆動装置101と、リア用の車両駆動装置10と、を備える。フロント用の車両駆動装置101は、フロント左側の車輪およびフロント右側の車輪を駆動する。リア用の車両駆動装置10は、一対のリア用のモータユニット1を備える。一対のリア用のモータユニット1のうち、一方のモータユニット1はリア左側の車輪を駆動し、他方のモータユニット1はリア右側の車輪を駆動する。
【0012】



リア用の車両駆動装置10は、車両100の車幅方向の略中央部に配置される。車両駆動装置10の2つのモータユニット1は、互いに車幅方向に対向し、車幅方向に並んで配置される。2つのモータユニット1は、車両100の車幅方向の中心軸J1を含みモータ軸J2と垂直な仮想の鉛直面を中心として、互いに面対称(左右対称)の構造を有する。
【0013】



図2および図3に示すように、本実施形態の車両駆動装置10は、モータユニット1と、サブフレーム2と、インバータ3と、インバータケース4と、を備える。サブフレーム2は、車両100に取り付けられる。サブフレーム2は、モータユニット1を支持する。本実施形態ではサブフレーム2が、インバータケース4も支持する。サブフレーム2は、前フレーム部2aと、後フレーム部2bと、一対の横フレーム部2cと、を有する。
【0014】



前フレーム部2aは、軸方向(車幅方向)に延び、モータユニット1に前側から対向する。前フレーム部2aは、モータユニット1の後述するハウジング11に対して、前側から接触する。後フレーム部2bは、軸方向に延び、モータユニット1に後側から対向する。後フレーム部2bは、モータユニット1のハウジング11に対して、後側から接触する。モータユニット1は、前フレーム部2aおよび後フレーム部2bにより、前後方向から挟まれる。
【0015】



一対の横フレーム部2cは、軸方向に互いに間隔をあけて配置される。一対の横フレーム部2cは、前後方向に延び、それぞれモータユニット1に軸方向から対向する。本実施形態の例では、横フレーム部2cが、モータユニット1のハウジング11に対して、軸方向に隙間をあけて対向する。ただしこれに限らず、横フレーム部2cは、モータユニット1のハウジング11に対して、軸方向から接触してもよい。一対のモータユニット1は、軸方向において一対の横フレーム部2c間に配置される。このように、サブフレーム2は、モータユニット1に軸方向および前後方向から対向する部分を有する。
【0016】



インバータ3はモータユニット1と電気的に接続される。本実施形態では、インバータ3が、一対のモータユニット1とそれぞれ電気的に接続される。インバータ3は、モータユニット1の後述するモータ20のステータ26と電気的に接続される。インバータ3は、ステータ26に供給される電力を調整可能である。インバータ3は、図示しない電子制御装置によって制御される。
【0017】



インバータケース4には、インバータ3が収容される。つまりインバータ3は、インバータケース4の内部に配置される。インバータケース4は、インバータ3を収容可能な容器状である。本実施形態の例では、インバータケース4が直方体状である。ただしこれに限らず、インバータケース4は、直方体状以外の形状であってもよい。インバータケース4は、サブフレーム2の上部に配置される。インバータケース4は、サブフレーム2の軸方向の略中央部に配置されて、サブフレーム2に支持される。インバータケース4は、冷却液が流れる水路(図示省略)を有する。インバータケース4の水路は、車両100に設けられる図示しないラジエータと接続される。インバータケース4の水路には、ラジエータで冷却された冷却液が供給される。インバータケース4の水路を冷却液が流れることにより、インバータ3が冷却される。
【0018】



モータユニット1は車両100の車軸を回転させる。図4図9に示すようにモータユニット1は、ハウジング11と、モータ20と、伝達機構30と、オイルシール18と、ベアリングホルダ35と、第1ベアリング15と、第2ベアリング16と、第3ベアリング14と、油路40と、オイルポンプ61,62と、オイルクーラ65と、第1温度センサ70と、第2温度センサ(図示省略)と、回転センサ80と、を備える。第1ベアリング15、第2ベアリング16および第3ベアリング14は、例えばボールベアリング等である。
【0019】



図5に示すように、ハウジング11は、モータ20および伝達機構30を収容する。ハウジング11は、モータ収容部12と、ギア収容部13と、仕切り壁部17と、を有する。モータ収容部12とギア収容部13とは、互いに軸方向に対向し、軸方向に並んで配置される。
【0020】



モータ収容部12は、ハウジング11のうち、モータ20を収容する部分である。モータ収容部12は、軸方向に延びる筒状である。本実施形態ではモータ収容部12が、有底筒状である。モータ収容部12は、軸方向一方側に開口する。モータ収容部12は、周壁部12aと、底壁部12bと、を有する。底壁部12bは、第3ベアリング14を保持する。底壁部12bは、第3ベアリング14を介して、モータシャフト22をモータ軸J2回りに回転自在に支持する。つまり、ハウジング11は、第3ベアリング14を介して、モータシャフト22を回転自在に支持する。
【0021】



ギア収容部13は、ハウジング11のうち、伝達機構30を収容する部分である。ギア収容部13は、軸方向に延びる筒状である。ギア収容部13は、周壁部13aを有する。周壁部13aは、内部に第1ベアリング15およびオイルシール18を保持する。周壁部13aは、第1ベアリング15を介して、出力シャフト38をモータ軸J2回りに回転自在に支持する。つまり、ハウジング11は、第1ベアリング15を介して、出力シャフト38を回転自在に支持する。
【0022】



図7および図8に示すように周壁部13aは、第1筒部13bと、第2筒部13cと、リング板部13dと、第3筒部13eと、テーパ筒部13fと、を有する。第1筒部13bは、軸方向に延びる筒状である。第1筒部13bは、周壁部13aにおいて最も直径が大きい部分を有する。第1筒部13bは、径方向から見て、後述するプラネタリギア33の第2ギア部33b、インターナルギア34および仕切り壁部17と重なって配置される。第1筒部13bは、モータ収容部12と軸方向に対向する。第1筒部13bの軸方向他方側の端部は、モータ収容部12の周壁部12aの軸方向一方側の端部と接触する。
【0023】



第2筒部13cは、軸方向に延びる筒状である。第2筒部13cは、第1筒部13bよりも軸方向一方側に位置する。第2筒部13cの直径は、第1筒部13bの直径よりも小さい。このため第2筒部13cの下部は、第1筒部13bの下部よりも上側に位置する。すなわち、第2筒部13cの内周面のうち下端部は、第1筒部13bの内周面のうち下端部よりも、上側に位置する。第2筒部13cは、径方向から見て、後述するプラネタリギア33の第1ギア部33aおよびサンギア32と重なって配置される。
【0024】



リング板部13dは、モータ軸J2に垂直な方向に広がる板状である。リング板部13dの板面は、軸方向を向く。リング板部13dは、モータ軸J2を中心とする円環板状である。リング板部13dの外周部は、第1筒部13bの軸方向一方側の端部と接続される。リング板部13dの内周部は、第2筒部13cの軸方向他方側の端部と接続される。
【0025】



第3筒部13eは、軸方向に延びる筒状である。第3筒部13eは、第2筒部13cよりも軸方向一方側に位置する。第3筒部13eの直径は、第2筒部13cの直径よりも小さい。第3筒部13eは、周壁部13aにおいて最も直径が小さい部分を有する。このため第3筒部13eの上部は、第2筒部13cの上部よりも下側に位置する。第3筒部13eの径方向内側には、第1ベアリング15およびオイルシール18が設けられる。第3筒部13eの内周部には、第1ベアリング15およびオイルシール18が嵌合する。第3筒部13eは、径方向から見て、第1ベアリング15、オイルシール18および後述する出力シャフト38と重なって配置される。本実施形態の例では、第3筒部13eの軸方向他方側の端部が、径方向から見て第1ベアリング15と重なって配置される。第3筒部13eの軸方向一方側の端部が、径方向から見てオイルシール18と重なって配置される。
【0026】



テーパ筒部13fは、軸方向一方側に向かうにしたがい直径が小さくなるテーパ筒状である。テーパ筒部13fは、軸方向において第2筒部13cと第3筒部13eとの間に配置される。テーパ筒部13fは、径方向において第2筒部13cと第3筒部13eとの間に配置される。テーパ筒部13fの軸方向他方側の端部は、第2筒部13cの軸方向一方側の端部と接続される。テーパ筒部13fの軸方向一方側の端部は、第3筒部13eの軸方向他方側の端部と接続される。テーパ筒部13fは、後述するプラネタリギア33と軸方向に対向する。テーパ筒部13fは、プラネタリギア33の第1ギア部33aの軸方向一方側に配置されて、第1ギア部33aと軸方向に隙間をあけて対向する。
【0027】



テーパ筒部13fはオイル案内壁部13gを有する。つまりハウジング11は、オイル案内壁部13gを有する。オイル案内壁部13gはモータ軸J2よりも上側に配置される。オイル案内壁部13gは、テーパ筒部13fのうちモータ軸J2よりも上側に位置する部分に配置される。オイル案内壁部13gは軸方向においてプラネタリギア33と第1ベアリング15との間に位置する。
【0028】



オイル案内壁部13gは、傾斜面13hを有する。傾斜面13hは、オイル案内壁部13gにおいて軸方向他方側を向く。傾斜面13hは、オイル案内壁部13gにおいてプラネタリギア33と対向する。傾斜面13hは、軸方向に沿ってプラネタリギア33から第1ベアリング15に向かうにしたがい下側に位置する。つまり傾斜面13hは、軸方向一方側に向かうにしたがい下側に向けて延びる。
【0029】



仕切り壁部17は、モータ軸J2を中心とする環状である。仕切り壁部17は、モータ軸J2に垂直な方向に広がる板状である。仕切り壁部17の板面は、軸方向を向く。本実施形態では、仕切り壁部17が、モータ軸J2を中心とする円環板状である。仕切り壁部17は、ギア収容部13内に配置される。仕切り壁部17は、第2ベアリング16よりも軸方向一方側に位置する。仕切り壁部17は、第1ベアリング15よりも軸方向他方側に位置する。仕切り壁部17の外周部は、周壁部13aの内周面に固定される。仕切り壁部17の径方向外側面(外周面)は、第1筒部13bの内周面と接触する。仕切り壁部17の軸方向一方側を向く面のうち外周部分は、リング板部13dにおいて軸方向他方側を向く面と接触する。仕切り壁部17は、後述する貯油部50のモータ貯油部50aとギア貯油部50bとを軸方向に仕切る。仕切り壁部17によって貯油部50は、モータ貯油部50aとギア貯油部50bとに区画される。
【0030】



仕切り壁部17の内周部は、伝達機構30の後述するインターナルギア34の外周部と接続される。仕切り壁部17の内周部は、インターナルギア34の外周面のうち軸方向一方側の端部と接続される。仕切り壁部17は、仕切り壁部17を軸方向に貫通するオイル流通孔17aを有する。オイル流通孔17aは、仕切り壁部17のうち少なくとも下側の部分に配置される。オイル流通孔17aは、仕切り壁部17に1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。オイル流通孔17aのモータ軸J2に垂直な断面の形状は、例えば円形状および多角形状等である。オイル流通孔17aは、後述するモータ貯油部50aとギア貯油部50bとを繋ぐ。オイル流通孔17aを通して、モータ貯油部50aとギア貯油部50bとが互いに連通する。
【0031】



モータ20は、車両100の車軸を回転させるトルクを出力する。モータ20のトルクは、伝達機構30を介して車軸に伝達される。図5に示すように、モータ20は、ロータ21と、ステータ26と、を有する。ロータ21は、モータシャフト22と、ロータホルダ23と、ロータコア24と、ロータマグネット25と、を有する。つまりモータ20は、モータシャフト22を有する。
【0032】



モータシャフト22は、モータ軸J2を中心として軸方向に延びる。モータシャフト22は、筒状である。モータシャフト22は、軸方向両側に開口する中空のシャフトである。モータシャフト22は、モータ軸J2を中心として回転する。モータシャフト22は、第2ベアリング16および第3ベアリング14によりモータ軸J2回りに回転自在に支持される。第2ベアリング16は、モータシャフト22の軸方向一方側の部分を支持する。第3ベアリング14は、モータシャフト22の軸方向他方側の端部を支持する。
【0033】



モータシャフト22は、凹部22aを有する。凹部22aは、モータシャフト22の軸方向一方側の端面に開口し、この端面から軸方向他方側に窪む。凹部22aは、軸方向に延びる穴状である。凹部22a内には、伝達機構30の後述する連結シャフト31が嵌合する。モータシャフト22のうち、凹部22aよりも軸方向他方側に位置する部分の内径は、凹部22aの内径に比べて小さい。本実施形態では、モータシャフト22の内周面のうち、最も内径が大きい部分が凹部22aである。本実施形態によれば、モータシャフト22の凹部22a以外の部分において、モータシャフト22の肉厚を大きく確保できる。したがって、モータシャフト22の剛性を高められる。
【0034】



ロータホルダ23は、モータシャフト22に固定される。ロータホルダ23は、モータシャフト22の径方向外側に位置する部分を有する。ロータホルダ23は、ロータコア24およびロータマグネット25を保持する。ロータホルダ23は、有底筒状である。ロータホルダ23は、軸方向一方側に開口する。ロータホルダ23は、底部23aと、筒部23bと、センサ支持部23cと、を有する。
【0035】



底部23aは、モータ軸J2を中心として周方向に延びる環状である。本実施形態では、底部23aが、モータ軸J2に対して垂直に広がる板状であり、板面が軸方向を向く。底部23aは、円環板状である。底部23aの内周部は、モータシャフト22の外周部と固定される。底部23aの軸方向位置は、第3ベアリング14の軸方向位置よりも軸方向一方側であり、第2ベアリング16の軸方向位置よりも軸方向他方側である。
【0036】



筒部23bは、軸方向に延びる。筒部23bはモータ軸J2を中心とする円筒状である。筒部23bの内周面と、モータシャフト22の外周面との間には空間が設けられる。筒部23bの内周面のうち、軸方向他方側の端部は、底部23aの外周部と接続される。筒部23bの内径は、底部23aと接続される部分から軸方向一方側に向かうにしたがい大きくなる。筒部23bの内周面は、軸方向一方側に向かうにしたがい内径が大きくなるテーパ面状の部分を有する。径方向から見て、筒部23bの軸方向一方側の端部と、第2ベアリング16とは、重なって配置される。径方向から見て、筒部23bの軸方向他方側の端部と、第3ベアリング14とは、重なって配置される。
【0037】



センサ支持部23cは、底部23aの軸方向他方側を向く板面から軸方向他方側に突出する。センサ支持部23cは、モータ軸J2を中心として軸方向に延びる筒状である。センサ支持部23cは、筒部23bの軸方向他方側の端部よりも軸方向他方側に突出する部分を有する。センサ支持部23cの軸方向他方側の端部には、回転センサ80の後述するレゾルバロータ80aが固定される。図示の例では、センサ支持部23cの外周面に、レゾルバロータ80aが固定される。
【0038】



ロータコア24は、筒部23bの外周面に固定される。ロータコア24は、モータ軸J2を中心として周方向に延びる環状である。本実施形態では、ロータコア24が、軸方向に延びる筒状である。ロータコア24は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。ロータコア24は、ロータコア24の径方向外端部に、ロータコア24を軸方向に貫通する保持孔24aを有する。保持孔24aは、ロータコア24の径方向外端部に、周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。複数の保持孔24aの内部には、ロータマグネット25がそれぞれ保持される。複数のロータマグネット25は、ロータコア24の径方向外端部において周方向に配列する。ロータマグネット25は、ロータコア24の径方向外端部に固定される。なお、ロータマグネット25は、円環状のリングマグネットから構成されていてもよい。
【0039】



ステータ26は、ロータ21と径方向に隙間をあけて対向する。ステータ26は、ロータ21の径方向外側に位置する。ステータ26は、ステータコア27と、インシュレータ(図示省略)と、複数のコイル28と、を有する。ステータコア27は、モータ軸J2を中心として周方向に延びる環状である。本実施形態では、ステータコア27が、軸方向に延びる筒状である。ステータコア27は、モータ収容部12の内周面に固定される。ステータコア27の内周部は、ロータコア24の外周部と径方向に隙間をあけて対向する。ステータコア27は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される積層鋼板である。インシュレータの材料は、例えば樹脂などの絶縁材料である。複数のコイル28は、インシュレータを介してステータコア27に取り付けられる。ステータ26の下側の端部は、油路40の後述する貯油部50に配置される。
【0040】



伝達機構30は、モータシャフト22に接続され、モータ20の動力を出力シャフト38に伝達する。伝達機構30は、モータシャフト22の軸方向一方側の端部に接続される。つまり伝達機構30は、モータシャフト22の軸方向の端部に接続される。伝達機構30は、モータ20の回転を減速してトルクを高め、出力シャフト38の出力軸J4回りの回転として出力する。伝達機構30は減速機構であり、本実施形態では、遊星歯車機構である。出力シャフト38の出力軸J4は、モータ軸J2と同軸に配置される。本実施形態によれば、モータユニット1を小型化できる。
【0041】



伝達機構30は、連結シャフト31と、サンギア32と、プラネタリギア33と、インターナルギア34と、キャリアピン36と、キャリア37と、出力シャフト38と、複数のベアリング39a,39bと、を有する。ベアリング39a,39bは、例えばニードルローラベアリング等である。ベアリング39aは、第4ベアリング39aと言い換えてもよい。ベアリング39bは、第5ベアリング39bと言い換えてもよい。
【0042】



連結シャフト31は、モータ軸J2を中心として軸方向に延びる。連結シャフト31は、筒状である。連結シャフト31は、軸方向両側に開口する中空のシャフトである。連結シャフト31は、モータシャフト22に連結される。連結シャフト31の軸方向他方側の端部が、モータシャフト22の軸方向一方側の端部に接続される。モータシャフト22の内部と連結シャフト31の内部とは、互いに連通する。連結シャフト31の軸方向一方側の端部は、ベアリング39aを介して、出力シャフト38によりモータ軸J2回りに回転自在に支持される。すなわち、連結シャフト31と出力シャフト38とは、ベアリング39aを介して周方向に相互に回転自在である。
【0043】



連結シャフト31は、軸方向他方側の端部が凹部22a内に挿入される。連結シャフト31は、軸方向他方側の端部が凹部22a内に嵌合する。本実施形態では、連結シャフト31の外周面における軸方向他方側の端部のうち軸方向一方側に位置する部分と、凹部22aの内周面のうち軸方向一方側に位置する部分とが、周方向に相互に回転不能に嵌合する。すなわち、連結シャフト31とモータシャフト22とは、周方向に相互に回転不能である。本実施形態によれば、上述した通り凹部22aの内径が大きい。凹部22aの内径が大きい分、凹部22a内に嵌合する連結シャフト31の外径を大きくすることができる。したがって、上述のようにモータシャフト22の剛性を高めつつ、連結シャフト31の剛性も高められる。
【0044】



本実施形態において、連結シャフト31は、軸方向他方側の端部が凹部22aに対して軸方向に移動自在に嵌合する。具体的に、連結シャフト31の軸方向他方側の端部は、凹部22a内にスプライン嵌合する。このため連結シャフト31は、モータシャフト22に対して、軸方向に移動可能である。連結シャフト31の軸方向他方側を向く端面は、凹部22aの軸方向一方側を向く底面に接触し、または隙間をあけて対向する。図示の例では、モータシャフト22の内周面の内径と、連結シャフト31の内周面の内径とが、略同じである。図5図8では図示を省略するが、モータシャフト22の内部と、連結シャフト31の内部との間には、後述する第2オリフィス58が設けられる。
【0045】



サンギア32は、連結シャフト31に設けられる。サンギア32は、モータ軸J2を中心軸とする外歯ギアである。サンギア32は、凹部22aよりも軸方向一方側に位置する。サンギア32は、連結シャフト31の外周部のうち、軸方向一方側の端部と軸方向他方側の端部との間に位置する中間部分に配置される。本実施形態では、連結シャフト31とサンギア32とが、単一の部材の部分である。サンギア32は、はす歯ギアである。すなわち、サンギア32のギアの歯すじは、軸方向に向かうにしたがいモータ軸J2回りに向けて延びる。径方向から見て、サンギア32のギアの歯すじは、モータ軸J2に対して傾斜して延びる。
【0046】



プラネタリギア33は、サンギア32の径方向外側に配置され、サンギア32と噛み合う。プラネタリギア33は、サンギア32の径方向外側に、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。すなわち、伝達機構30は複数のプラネタリギア33を有する。本実施形態では、伝達機構30が、周方向に互いに等間隔をあけて配置される3つのプラネタリギア33を有する。ただし、伝達機構30が有するプラネタリギア33の数は3つに限らない。
【0047】



プラネタリギア33は、回転軸J3を中心とする環状である。プラネタリギア33は、回転軸J3を中心軸とする外歯ギアである。回転軸J3は、モータ軸J2の径方向外側に位置して、モータ軸J2と平行に延びる。回転軸J3は、キャリアピン36の中心軸でもある。本実施形態では、プラネタリギア33が、軸方向に延びる筒状である。プラネタリギア33は、回転軸J3を中心として回転する。つまりプラネタリギア33は、回転軸J3回りに自転する。プラネタリギア33は、モータ軸J2を中心として回転する。つまりプラネタリギア33は、モータ軸J2回りに公転する。プラネタリギア33は、サンギア32の周囲を自転しつつ公転する。
【0048】



プラネタリギア33は、第1ギア部33aと、第2ギア部33bと、を有する。第1ギア部33aの直径(外径)は、第2ギア部33bの直径よりも大きい。第1ギア部33aは、大径ギア部33aと言い換えてもよい。すなわち本実施形態では、プラネタリギア33が、段付きピニオンタイプである。したがって、伝達機構30により、モータ20の回転の減速比がより高められる。第1ギア部33aは、インターナルギア34よりも径方向外側に位置する部分を有する。第1ギア部33aは、ギア収容部13の周壁部13aの内周面に、径方向内側から隙間をあけて対向する部分を有する。第1ギア部33aは、径方向から見て、第2筒部13cおよびリング板部13dと重なって配置される。第1ギア部33aは、軸方向において仕切り壁部17とテーパ筒部13fとの間に位置する。第1ギア部33aは、軸方向から見て、仕切り壁部17およびテーパ筒部13fと重なる。第1ギア部33aは、仕切り壁部17よりも軸方向一方側に配置される。第1ギア部33aは、仕切り壁部17に軸方向一方側から対向する。第1ギア部33aは、テーパ筒部13fよりも軸方向他方側に配置される。第1ギア部33aは、テーパ筒部13fに軸方向他方側から対向する。
【0049】



第1ギア部33aは、回転軸J3を中心とする筒状である。径方向から見て、第1ギア部33aとサンギア32とは、互いに重なって配置される。第1ギア部33aは、サンギア32と噛み合う。第1ギア部33aの直径は、サンギア32の直径よりも大きい。第1ギア部33aは、はす歯ギアである。すなわち、第1ギア部33aのギアの歯すじは、軸方向に向かうにしたがい回転軸J3回りに向けて延びる。回転軸J3に直交する方向から見て、第1ギア部33aのギアの歯すじは、回転軸J3に対して傾斜して延びる。
【0050】



第2ギア部33bの直径(外径)は、第1ギア部33aの直径よりも小さい。第2ギア部33bは、小径ギア部33bと言い換えてもよい。第2ギア部33bは、回転軸J3を中心とする筒状である。第2ギア部33bは、インターナルギア34と噛み合う。第2ギア部33bは、はす歯ギアである。すなわち、第2ギア部33bのギアの歯すじは、軸方向に向かうにしたがい回転軸J3回りに向けて延びる。回転軸J3に直交する方向から見て、第2ギア部33bのギアの歯すじは、回転軸J3に対して傾斜して延びる。
【0051】



詳しくは、第2ギア部33bは、噛合部33cと、嵌合部33dと、を有する。噛合部33cと嵌合部33dとは、互いに軸方向に並んで配置される。径方向から見て、噛合部33cとインターナルギア34とは、互いに重なって配置される。噛合部33cは、第2ギア部33bにおいてインターナルギア34と噛み合う部分である。つまり第2ギア部33bのギアは、噛合部33cの外周に設けられる。噛合部33cは、嵌合部33dよりも軸方向他方側に位置する。噛合部33cの直径は、第1ギア部33aの直径よりも小さい。本実施形態の例では、噛合部33cの軸方向の長さが、第1ギア部33aの軸方向の長さよりも大きい。径方向から見て、噛合部33cは、モータシャフト22の軸方向一方側の端部、凹部22aおよび連結シャフト31の軸方向他方側の端部と、重なって配置される。
【0052】



嵌合部33dは、第2ギア部33bにおいて第1ギア部33aと嵌合する部分である。本実施形態では、第1ギア部33aの内周部が、嵌合部33dの外周部に対して、軸方向に移動自在に嵌合する。すなわち、第1ギア部33aは、第2ギア部33bに対して軸方向に移動自在に嵌合する部分を有する。具体的に、第1ギア部33aの内周部は、嵌合部33dの外周部に対して、スプライン嵌合する。このため第1ギア部33aは、第2ギア部33bに対して、軸方向に移動可能である。
【0053】



本実施形態では、上述のように連結シャフト31の軸方向他方側の端部が、凹部22a内にスプライン嵌合する。また、プラネタリギア33の第1ギア部33aが、第2ギア部33bとスプライン嵌合する。このため、モータユニット1の製造時において、プラネタリギア33の第1ギア部33aと、連結シャフト31のサンギア32とを噛み合わせた状態としてアセンブリを組み、このアセンブリをモータシャフト22および第2ギア部33bに取り付けることができる。したがって、モータ20と伝達機構30との組み立てが容易である。特に本実施形態のように、サンギア32および第1ギア部33aがはす歯ギアである場合には、上記構成によって、より組み立てが容易となる。
【0054】



インターナルギア34は、モータ軸J2を中心とする環状である。インターナルギア34は、モータ軸J2を中心軸とする内歯ギアである。インターナルギア34は、軸方向に延びる筒状である。インターナルギア34は、プラネタリギア33の径方向外側に配置され、プラネタリギア33と噛み合う。本実施形態では、インターナルギア34が、第2ギア部33bの噛合部33cの径方向外側に配置されて、噛合部33cと噛み合う。インターナルギア34は、はす歯ギアである。すなわち、インターナルギア34のギアの歯すじは、軸方向に向かうにしたがいモータ軸J2回りに向けて延びる。径方向から見て、インターナルギア34のギアの歯すじは、モータ軸J2に対して傾斜して延びる。
【0055】



インターナルギア34は、ハウジング11に固定される。インターナルギア34は、仕切り壁部17に接続される。インターナルギア34は、仕切り壁部17の内周部に設けられる。詳しくは、インターナルギア34の外周部のうち軸方向一方側の端部が、仕切り壁部17の内周部と接続される。本実施形態によれば、仕切り壁部17にインターナルギア34を設けることにより、モータユニット1の構造を簡素化できる。
【0056】



本実施形態では仕切り壁部17とインターナルギア34とが、単一の部材の部分である。本実施形態によれば仕切り壁部17とインターナルギア34とが一体に設けられるので、構造をより簡素化でき、モータユニット1の製造が容易である。また、インターナルギア34の剛性がより高められる。
【0057】



キャリアピン36は、サンギア32および連結シャフト31の径方向外側に配置される。キャリアピン36は、サンギア32の径方向外側に、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。すなわち、伝達機構30は、複数のキャリアピン36を有する。本実施形態では、伝達機構30が、周方向に互いに等間隔をあけて配置される3つのキャリアピン36を有する。
【0058】



キャリアピン36は、回転軸J3を中心として軸方向に延びる筒状である。キャリアピン36は、軸方向両側に開口する中空のピンである。キャリアピン36は、プラネタリギア33の内部に挿入される。キャリアピン36は、プラネタリギア33内を軸方向に延びる。キャリアピン36は、プラネタリギア33を、ベアリング39bを介して回転自在に支持する。つまりキャリアピン36は、プラネタリギア33を回転自在に支持する。キャリアピン36に対してプラネタリギア33は、回転軸J3回りに回転自在である。キャリアピン36は、ベアリング39bを介して、第2ギア部33bを回転自在に支持する。本実施形態では、キャリアピン36と第2ギア部33bとの間に、複数のベアリング39bが軸方向に並んで配置される。
【0059】



キャリア37は、キャリアピン36を支持する。キャリア37は、キャリアピン36と固定される。キャリア37は、プラネタリギア33およびキャリアピン36のモータ軸J2回りの回転(公転)にともない、モータ軸J2回りに回転する。
【0060】



キャリア37は、第1壁部37aと、第2壁部37bと、連結部37cと、を有する。第1壁部37aは、モータ軸J2に垂直な方向に広がる板状である。第1壁部37aの板面は、軸方向を向く。第1壁部37aは、モータ軸J2を中心とする円環板状である。第1壁部37aは、キャリアピン36の軸方向他方側の端部を支持する。第1壁部37aには、複数のキャリアピン36の軸方向他方側の端部が固定される。第1壁部37aは、ベアリングホルダ35の後述するフランジ部35aに、軸方向一方側から対向する。第1壁部37aとフランジ部35aとの間には、空間が設けられる。第1壁部37aは、モータ軸J2上に位置して第1壁部37aを軸方向に貫通する孔37dを有する。孔37d内には、モータシャフト22の軸方向一方側の端部および連結シャフト31の軸方向他方側の端部が挿入される。径方向から見て、第1壁部37aは、モータシャフト22の軸方向一方側の端部および連結シャフト31の軸方向他方側の端部と、重なって配置される。
【0061】



第2壁部37bは、第1壁部37aよりも軸方向一方側に配置される。第1壁部37aおよび第2壁部37bは、互いに軸方向に間隔をあけて配置される。プラネタリギア33は、軸方向において第1壁部37aと第2壁部37bとの間に配置される。第2壁部37bは、モータ軸J2に垂直な方向に広がる板状である。第2壁部37bの板面は、軸方向を向く。第2壁部37bは、モータ軸J2を中心とする円環板状である。第2壁部37bは、キャリアピン36の軸方向一方側の端部を支持する。第2壁部37bには、複数のキャリアピン36の軸方向一方側の端部が固定される。つまり第1壁部37aおよび第2壁部37bは、キャリアピン36の軸方向の両端部を支持する。本実施形態では、第2壁部37bが、サンギア32よりも軸方向一方側に位置する。
【0062】



連結部37cは、軸方向に延び、第1壁部37aと第2壁部37bとを連結する。本実施形態では、連結部37cが、軸方向に延びる板状である。ただしこれに限らず、連結部37cは、軸方向に延びる軸状等であってもよい。連結部37cの板面は、径方向を向く。連結部37cの軸方向他方側の端部は、第1壁部37aの外周部と接続される。連結部37cの軸方向一方側の端部は、第2壁部37bの外周部と接続される。本実施形態では、連結部37cと第1壁部37aとが、単一の部材の部分である。
【0063】



連結部37cは、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態ではキャリア37が、3つの連結部37cを有する。連結部37cは、プラネタリギア33と周方向に隣り合って配置される。複数の連結部37cと複数のプラネタリギア33とは、周方向に交互に配列する。連結部37cは、プラネタリギア33において最も径方向外側に位置する部分よりも、径方向内側に配置される。すなわち、プラネタリギア33は、連結部37cよりも径方向外側に突出する部分を有する。本実施形態では、第1ギア部33aおよび第2ギア部33bのうち、少なくとも第1ギア部33aが、連結部37cよりも径方向外側に突出する。
【0064】



出力シャフト38は、モータ軸J2と同軸に配置される。出力シャフト38の中心軸である出力軸J4は、モータ軸J2と一致して軸方向に延びる。本実施形態では、出力シャフト38が、軸方向に延びる筒状である。出力シャフト38は、キャリア37の軸方向一方側に配置される。出力シャフト38は、キャリア37と接続される。出力シャフト38は、軸方向他方側の端部がキャリア37の第2壁部37bと接続される。本実施形態では、出力シャフト38と第2壁部37bとが、単一の部材の部分であり、一体に設けられる。つまり、出力シャフト38とキャリア37の一部とが、単一の部材の部分である。出力シャフト38は、キャリア37のモータ軸J2回りの回転にともない、モータ軸J2回りに回転する。
【0065】



出力シャフト38の外周面と、ギア収容部13の周壁部13aの内周面との間には、空間が設けられる。出力シャフト38は、第1ベアリング15を介して、周壁部13aに支持される。出力シャフト38は、第1ベアリング15を介して、第3筒部13eに回転自在に支持される。出力シャフト38と第3筒部13eとの間には、第1ベアリング15およびオイルシール18が軸方向に並んで配置される。図示の例では、出力シャフト38の軸方向一方側の端部が、周壁部13aから軸方向一方側に向けて突出する。ただしこれに限らず、出力シャフト38は、周壁部13aから軸方向一方側に突出しなくてもよい。出力シャフト38は、車両100の車軸と直接または間接的に連結される。
【0066】



オイルシール18は、モータ軸J2を中心とする環状である。オイルシール18は、出力軸J4を中心とする円環状である。本実施形態の例では、オイルシール18が、軸方向に延びる筒状である。オイルシール18は、出力シャフト38とハウジング11との間に設けられ、出力シャフト38とハウジング11との間をシールする。オイルシール18は、出力シャフト38の外周面と、ギア収容部13の周壁部13aの内周面との間に設けられ、オイルOを封止する。オイルシール18は、出力シャフト38の外周面および第3筒部13eの内周面に周方向の略全周にわたって接触し、出力シャフト38の外周面と第3筒部13eの内周面との間をシールする。オイルシール18の外周部は、第3筒部13eの内周面に固定される。オイルシール18の内周部は、出力シャフト38の外周面と周方向に摺動自在である。オイルシール18は、第1ベアリング15と軸方向に隣り合って配置される。オイルシール18は、第1ベアリング15の軸方向一方側に配置されて、第1ベアリング15に軸方向一方側から対向する。図示の例では、オイルシール18と第1ベアリング15との間に、軸方向の隙間が設けられる。
【0067】



ベアリングホルダ35は、モータ軸J2を中心とする環状である。ベアリングホルダ35は、フランジ部35aと、ホルダ筒部35bと、を有する。フランジ部35aは、モータ軸J2に垂直な方向に広がる板状である。フランジ部35aの板面は、軸方向を向く。フランジ部35aは、モータ軸J2を中心とする円環板状である。フランジ部35aの外周部は、インターナルギア34の軸方向他方側の端部に固定される。つまりベアリングホルダ35は、インターナルギア34に固定される。ベアリングホルダ35は、インターナルギア34に支持される。ベアリングホルダ35は、インターナルギア34を介して、ハウジング11に支持される。
【0068】



ホルダ筒部35bは、モータ軸J2を中心として軸方向に延びる筒状である。ホルダ筒部35bの軸方向一方側の端部は、フランジ部35aの内周部と接続される。ホルダ筒部35bの内周面と、モータシャフト22の外周面との間には、空間が設けられる。ホルダ筒部35bは、内部に第2ベアリング16を保持する。つまりベアリングホルダ35は、第2ベアリング16を保持する。ホルダ筒部35bは、第2ベアリング16を介して、モータシャフト22を保持する。ベアリングホルダ35は、第2ベアリング16を介して、モータシャフト22をモータ軸J2回りに回転自在に支持する。本実施形態によれば、ハウジング11に固定されるインターナルギア34により、ベアリングホルダ35、第2ベアリング16およびモータシャフト22が支持される。したがって、モータユニット1の構造を簡素化できる。
【0069】



第1ベアリング15は、出力シャフト38とハウジング11との間に設けられ、出力シャフト38をモータ軸J2回りに回転自在に支持する。第1ベアリング15は、モータ軸J2を中心とする環状である。本実施形態では、第1ベアリング15が、ギア収容部13の第3筒部13e内に嵌合する。第1ベアリング15は、径方向から見て、第3筒部13eの軸方向他方側の端部と重なって配置される。第1ベアリング15内には、出力シャフト38が嵌合する。
【0070】



第1ベアリング15は、プラネタリギア33の最も径方向外側に位置する部分よりも径方向内側に位置する。すなわち、第1ベアリング15は、プラネタリギア33の第1ギア部33aのうち最も径方向外側に位置する部分よりも径方向内側に位置する。本実施形態では、第1ベアリング15が、回転軸J3よりも径方向内側に位置する。第1ベアリング15は、プラネタリギア33の軸方向位置とは異なる軸方向位置に配置される。第1ベアリング15は、プラネタリギア33よりも軸方向一方側に配置される。
【0071】



第2ベアリング16は、モータシャフト22をモータ軸J2回りに回転自在に支持する。第2ベアリング16は、モータシャフト22のうち軸方向一方側の部分を回転自在に支持する。第2ベアリング16は、モータ軸J2を中心とする環状である。第2ベアリング16は、ベアリングホルダ35のホルダ筒部35b内に嵌合する。第2ベアリング16内には、モータシャフト22が嵌合する。
【0072】



第3ベアリング14は、モータシャフト22をモータ軸J2回りに回転自在に支持する。第3ベアリング14は、モータシャフト22のうち軸方向他方側の端部を回転自在に支持する。第3ベアリング14は、モータ軸J2を中心とする環状である。第3ベアリング14は、モータ収容部12の底壁部12bにおける筒状部分の内部に嵌合する。第3ベアリング14内には、モータシャフト22が嵌合する。
【0073】



本実施形態において、オイルOの循環構造は、油路40と、オイルポンプ61,62と、を有する。油路40は、ハウジング11の内部に設けられる。オイルポンプ61,62は、油路40にオイルOを循環させる。すなわち本実施形態では、モータユニット1が、油路40にオイルOを循環させる第1オイルポンプ61および第2オイルポンプ62を備える。つまりモータユニット1は、複数のオイルポンプ61,62を備える。第1オイルポンプ61および第2オイルポンプ62は、オイルOを伝達機構30に供給可能である。本実施形態では、第1オイルポンプ61および第2オイルポンプ62が、モータシャフト22の内部を通して、伝達機構30にオイルOを供給可能である。第1オイルポンプ61および第2オイルポンプ62については、別途後述する。
【0074】



油路40は、モータシャフト内油路部41と、連結シャフト内油路部42と、環状油路部43と、第1径方向油路部44と、第2径方向油路部45と、キャリアピン内油路部46と、接続油路部47と、第3径方向油路部48と、第4径方向油路部49と、貯油部50と、インターナルギア内周油路部63と、を有する。
【0075】



図5に示すように、モータシャフト内油路部41は、モータシャフト22の内部を軸方向に延びる。モータシャフト内油路部41は、モータ軸J2上に位置する。モータシャフト内油路部41は、モータシャフト22を軸方向に貫通する貫通孔により構成される。モータシャフト内油路部41は、凹部22aの底面に開口する。すなわち、モータシャフト内油路部41の軸方向一方側の端部は、凹部22aの軸方向一方側を向く底面に開口する。
【0076】



連結シャフト内油路部42は、連結シャフト31の内部を軸方向に延びる。連結シャフト内油路部42は、モータ軸J2上に位置する。連結シャフト内油路部42は、連結シャフト31を軸方向に貫通する貫通孔により構成される。連結シャフト内油路部42は、モータシャフト内油路部41と繋がる。すなわち、連結シャフト内油路部42の軸方向他方側の端部は、モータシャフト内油路部41の軸方向一方側の端部と接続する。本実施形態の例では、連結シャフト内油路部42の内径と、モータシャフト内油路部41の内径とが、略同じである。本実施形態では、上述したようにモータシャフト22に凹部22aが設けられることで、連結シャフト31の外径を大きくできるので、連結シャフト31の内径とモータシャフト22の内径とを、略同じにできる。したがって、モータシャフト22の内部から連結シャフト31の内部に流入するオイルOの圧力損失を小さく抑えることができる。
【0077】



環状油路部43は、連結シャフト31の軸方向他方側の端部の外周面と、凹部22aの内周面との間に配置される。環状油路部43は、周方向に延びる環状である。環状油路部43は、モータ軸J2を中心とする円筒状の空間であり、凹部22a内に設けられる。環状油路部43は、連結シャフト31の軸方向他方側の端部と凹部22aとが嵌合する部分よりも、軸方向他方側に位置する。
【0078】



第1径方向油路部44は、連結シャフト31の軸方向他方側の端部に配置されて径方向に延び、連結シャフト内油路部42および環状油路部43に開口する。第1径方向油路部44は、連結シャフト31の軸方向他方側の端部において、連結シャフト31の内部を径方向に延び、連結シャフト31の内周面と外周面とに開口する貫通孔により構成される。本実施形態では、第1径方向油路部44が、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
【0079】



第2径方向油路部45は、モータシャフト22の軸方向一方側の端部に配置されて径方向に延び、環状油路部43およびモータシャフト22の外周面に開口する。第2径方向油路部45は、モータシャフト22の軸方向一方側の端部において、モータシャフト22の内部を径方向に延び、凹部22aの内周面とモータシャフト22の外周面とに開口する貫通孔により構成される。第2径方向油路部45の径方向外側の端部は、軸方向に沿う第1壁部37aと、フランジ部35aおよび第2ベアリング16と、の間の空間に向けて開口する。本実施形態では、第2径方向油路部45が、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。
【0080】



キャリアピン内油路部46は、キャリアピン36の内部に設けられ、キャリアピン36の軸方向の端面およびキャリアピン36の外周面に開口する。キャリアピン内油路部46は、ピン軸方向油路部46aと、ピン径方向油路部46bと、を有する。
【0081】



ピン軸方向油路部46aは、キャリアピン36の内部を軸方向に延びる。ピン軸方向油路部46aは、回転軸J3上に位置する。ピン軸方向油路部46aは、キャリアピン36を軸方向に貫通する貫通孔により構成される。ピン軸方向油路部46aは、キャリアピン36の軸方向一方側を向く端面および軸方向他方側を向く端面に、それぞれ開口する。
【0082】



ピン径方向油路部46bは、キャリアピン36の内部を回転軸J3に直交する方向に延びる。ピン径方向油路部46bは、ピン軸方向油路部46aおよびキャリアピン36の外周面に開口する。ピン径方向油路部46bは、キャリアピン36の内部を回転軸J3に直交する方向に延び、キャリアピン36の内周面と外周面とに開口する貫通孔により構成される。詳しくは、ピン径方向油路部46bは、キャリアピン36の内部のうち、回転軸J3よりも径方向外側、つまり回転軸J3よりも径方向に沿うモータ軸J2から離れる方向に配置される。すなわち、ピン径方向油路部46bは、ピン軸方向油路部46aと接続する部分から、径方向に沿うモータ軸J2から離れる方向に向けて延びる。本実施形態では、キャリアピン内油路部46が、軸方向に互いに間隔をあけて配置される複数のピン径方向油路部46bを有する。複数のピン径方向油路部46bは、キャリアピン36の外周部に設けられる複数のベアリング39bに向けて、それぞれ開口する。本実施形態によれば、キャリアピン36がモータ軸J2回りに回転(公転)するときの遠心力の作用により、キャリアピン36の内部を流れるオイルOが、ベアリング39bに安定して供給される。
【0083】



接続油路部47は、キャリアピン内油路部46においてキャリアピン36の軸方向の端面に開口する部分と、第2径方向油路部45とを接続する。接続油路部47は、ピン軸方向油路部46aの軸方向他方側の端部と、第2径方向油路部45の径方向外側の端部とを繋ぐ。接続油路部47は、軸方向に沿う第1壁部37aと、フランジ部35aおよび第2ベアリング16と、の間に配置される。接続油路部47は、モータ軸J2を中心とする環状の空間(室)である。すなわち、接続油路部47は、軸方向に沿う第1壁部37aと、フランジ部35aおよび第2ベアリング16と、の間に設けられる環状の室により構成される。
【0084】



本実施形態では、モータシャフト内油路部41を流れるオイルOが、連結シャフト内油路部42、第1径方向油路部44、環状油路部43、第2径方向油路部45および接続油路部47を通って、キャリアピン内油路部46に流入する。キャリアピン内油路部46に流入したオイルOは、キャリアピン36の外周面に流出して、キャリアピン36とプラネタリギア33の間に位置するベアリング39bを潤滑および冷却する。本実施形態によれば、油路40が、凹部22a内に配置される環状油路部43を有する。これにより、モータユニット1の製造時において、モータシャフト22の凹部22a内に連結シャフト31の軸方向他方側の端部を嵌合する際に、第1径方向油路部44と第2径方向油路部45とを位置合わせする作業を削減できる。すなわち、第1径方向油路部44と第2径方向油路部45とが環状油路部43を通して繋がるため、第1径方向油路部44の周方向位置と第2径方向油路部45の周方向位置とを一致させなくても、オイルOが連結シャフト31の内部の連結シャフト内油路部42からキャリアピン内油路部46へと安定して供給される。また、第1径方向油路部44の軸方向位置と第2径方向油路部45の軸方向位置とを一致させなくても、上述と同様の効果が得られる。つまり本実施形態によれば、連結シャフト31内から伝達機構30の部材に安定してオイルOを供給できる。
【0085】



第3径方向油路部48は、モータシャフト22の凹部22aよりも軸方向他方側に位置する部分に配置されて径方向に延びる。すなわち、第3径方向油路部48はモータシャフト22のうち軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側に位置する部分に配置される。第3径方向油路部48は、モータシャフト内油路部41およびモータシャフト22の外周面に開口する。第3径方向油路部48は、モータシャフト22の内部を径方向に延びモータシャフト22の内周面と外周面とに開口する貫通孔により構成される。第3径方向油路部48は、軸方向に互いに間隔をあけて配置される第2ベアリング16と第3ベアリング14との間に位置する。第3径方向油路部48はモータシャフト22のうち軸方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。第3径方向油路部48の径方向外側の端部はロータホルダ23の筒部23bの内周面に向けて開口する。径方向から見て、ロータホルダ23、ロータコア24、ロータマグネット25およびステータコア27と、第3径方向油路部48とは、互いに重なって配置される。本実施形態では、第3径方向油路部48が、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態によれば、モータシャフト内油路部41を流れるオイルOが、第3径方向油路部48を通って、ロータ21およびステータ26等のモータ20の各部材に供給される。これにより、モータ20の各部材の冷却および潤滑を安定して行える。
【0086】



第4径方向油路部49は、連結シャフト31のうち凹部22aよりも軸方向一方側に位置する部分に配置されて、径方向に延びる。すなわち、第4径方向油路部49は、連結シャフト31のうち軸方向他方側の端部よりも軸方向一方側に位置する部分に配置される。第4径方向油路部49は、連結シャフト内油路部42および連結シャフト31の外周面に開口する。第4径方向油路部49は、連結シャフト31の内部を径方向に延び、連結シャフト31の内周面と外周面とに開口する貫通孔により構成される。第4径方向油路部49は、軸方向に互いに間隔をあけて配置される第1ベアリング15と第2ベアリング16との間に位置する。第4径方向油路部49は、連結シャフト31のうち軸方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。第4径方向油路部49の径方向外側の端部は、プラネタリギア33に向けて開口する。第4径方向油路部49は、第2ギア部33bの噛合部33cの外周部に向けて開口する。径方向から見て、インターナルギア34およびプラネタリギア33と、第4径方向油路部49とは、互いに重なって配置される。本実施形態では、第4径方向油路部49が、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態によれば、連結シャフト内油路部42を流れるオイルOが、第4径方向油路部49を通って、プラネタリギア33、インターナルギア34およびサンギア32等の伝達機構30の各部材に供給される。これにより、伝達機構30の各部材の潤滑および冷却を安定して行える。
【0087】



本実施形態では上述の通り、モータシャフト22の内部を流れるオイルOが、モータ20および伝達機構30に供給される。本実施形態によれば、モータシャフト22内を通して、モータ20および伝達機構30に安定してオイルOを供給できる。すなわち、オイルOがモータシャフト22内を流通することで広範囲に分散させられて、ハウジング11内の各部材にオイルOを行き渡らせやすくできる。
【0088】



貯油部50は、ハウジング11の下部(底部)に配置される。貯油部50は、ハウジング11内の下側の部分に位置する。貯油部50には、オイルOが溜められる。貯油部50は、モータ貯油部50aと、ギア貯油部50bと、流通油路部と、を有する。モータ貯油部50aは、貯油部50のうち、仕切り壁部17よりも軸方向他方側に位置する部分である。モータ貯油部50aは、径方向から見て、モータ20と重なる位置に配置される。モータ貯油部50aには、ステータ26の下部が配置される。すなわち、ステータ26の下部は、モータ貯油部50aのオイルOに浸漬される。
【0089】



ギア貯油部50bは、貯油部50のうち、仕切り壁部17よりも軸方向一方側に位置する部分である。ギア貯油部50bは、径方向から見て、伝達機構30と重なる位置に配置される。ギア貯油部50bには、プラネタリギア33のモータ軸J2回りの回転軌跡(図7に示す2点鎖線を参照)が配置される。すなわち、プラネタリギア33のモータ軸J2を中心とする回転軌跡が、ギア貯油部50bを通る。詳しくは、プラネタリギア33の第1ギア部33aおよび第2ギア部33bのうち、少なくとも第1ギア部33aのモータ軸J2を中心とする回転軌跡が、ギア貯油部50bを通る。
【0090】



上述したように本実施形態の伝達機構30は、遊星歯車機構である。一般的に、遊星歯車機構は、周方向にギアが広がって配置される。このため、モータ20の回転の遠心力の作用等によりシャフト22,31内から径方向外側へ向けてオイルOを供給するのみでは、遊星歯車機構のギアの外周部分まで、オイルOを安定して供給することは難しい。本実施形態によれば、ハウジング11の下部に貯油部50が設けられており、貯油部50をプラネタリギア33が通過することにより、プラネタリギア33によって貯油部50のオイルOをかき上げることができる。これにより、伝達機構30の各部材にオイルOを安定して供給できる。本実施形態では、段付きピニオンタイプのプラネタリギア33のうち、少なくとも大径の第1ギア部33aによって、オイルOを効率よくかき上げることができる。
【0091】



本実施形態では、モータシャフト22内に供給されたオイルOが、連結シャフト31内を通って、ギア貯油部50bに安定して供給される。すなわち、貯油部50が仕切り壁部17によってギア貯油部50bとモータ貯油部50aとに仕切られているため、ギア貯油部50bにオイルOが溜まりやすくされている。具体的に、モータシャフト内油路部41を流れるオイルOは、連結シャフト内油路部42を通り、連結シャフト31の軸方向一方側の端部の開口部31aから流出して、ベアリング39a等を潤滑しつつ、ギア貯油部50bに供給される。また、連結シャフト内油路部42を流れるオイルOは、第1径方向油路部44、環状油路部43、第2径方向油路部45、接続油路部47、および、インターナルギア34と連結部37cとの径方向の隙間(インターナルギア内周油路部63)等を通り、ギア貯油部50bに供給される。また、第4径方向油路部49から径方向外側に噴出されるオイルOも、プラネタリギア33等を潤滑しつつギア貯油部50bに供給される。ギア貯油部50bに供給されたオイルOは、仕切り壁部17によりギア貯油部50bに保持されて、溜まりやすくされている。これにより、プラネタリギア33によって、ギア貯油部50bのオイルOが安定してかき上げられ、伝達機構30のプラネタリギア33等の部材にオイルOを安定して供給できる。伝達機構30においてギア等の部材の適度な潤滑が行われることで、部材の寿命が延びる。伝達機構30の騒音等を抑制できる。
【0092】



本実施形態では、プラネタリギア33によりギア貯油部50bからかき上げられたオイルOが、オイル案内壁部13gに付着する。オイル案内壁部13gに付着したオイルOは、オイル案内壁部13gの傾斜面13hにより第1ベアリング15およびオイルシール18に向けて案内される。このため、簡素な構造により、第1ベアリング15およびオイルシール18にオイルOを安定して供給できる。オイルOによって第1ベアリング15の潤滑を行うことができ、オイルシール18のシール性を確保できる。
【0093】



流通油路部は、貯油部50においてギア貯油部50bとモータ貯油部50aとを連通させる部分である。流通油路部は、仕切り壁部17を軸方向に貫通するオイル流通孔17aにより構成される。ギア貯油部50bに溜まったオイルOは、流通油路部(オイル流通孔17a)を通して、モータ貯油部50aにも供給される。仕切り壁部17において、オイル流通孔17aの上下方向の位置、大きさ(軸方向に垂直な断面積)および数等を適宜調整することにより、オイル流通孔17aを流通するオイルOの量を制御できる。このため、ギア貯油部50bに貯留されるオイルOを、所望の油量に調整できる。また、モータ貯油部50aにも安定してオイルOを供給でき、モータ20のステータ26等の部材を安定して冷却および潤滑できる。後述するようにオイルポンプ61,62によってモータ貯油部50aからオイルOを吸い上げて、油路40に安定して循環させることができる。つまり、仕切り壁部17により上述の作用効果(機能)が得られつつも、オイル流通孔17aによって、貯油部50内においてオイルOの油量が確保され、かつオイルOがスムーズに流通する。
【0094】



ギア貯油部50bの下面は、モータ貯油部50aの下面よりも上側に位置する。本実施形態によれば、ギア貯油部50bがモータ貯油部50aよりも底上げされているので、ギア貯油部50bにオイルOが速く溜まりやすい。そして、ギア貯油部50bのオイルOにプラネタリギア33が安定して浸かる。このためプラネタリギア33により、オイルOが安定してかき上げられる。また、オイル流通孔17aを通して、ギア貯油部50bからモータ貯油部50aへとオイルOが安定して流れやすくなる。
【0095】



インターナルギア内周油路部63は、インターナルギア34の内周に位置する油路の部分である。インターナルギア内周油路部63は、インターナルギア34と、キャリア37の連結部37cと、の径方向の隙間に位置する。インターナルギア内周油路部63は、軸方向において接続油路部47とギア貯油部50bとの間に配置される。インターナルギア内周油路部63は、径方向において接続油路部47とギア貯油部50bとの間に配置される。
【0096】



図6図8に示す矢印のOF1,OF2,OF3は、ハウジング11内のオイルOの流れを簡略的に表している。OF1は、オイルクーラ65から供給されるオイルOの流れを示す。流れOF1は、例えばステータ26等を冷却する。OF2は、第1オイルポンプ61から供給されるオイルOの流れを示す。流れOF2は、例えばロータ21およびステータ26等を冷却し、サンギア32、プラネタリギア33、インターナルギア34およびベアリング14,15,16,39a,39b等を潤滑する。OF3は、プラネタリギア33のモータ軸J2回りの公転によるオイルかき上げ作用によって供給されるオイルOの流れを示す。流れOF3は、例えばサンギア32、プラネタリギア33、インターナルギア34およびベアリング15,16,39a,39b等を潤滑する。
【0097】



図9に示すように、さらに油路40は、第1油路部51と、第2油路部52と、オイル室53と、第3油路部54と、第1オリフィス55と、キャッチタンク56と、第4油路部57と、第2オリフィス58と、ポンプ収容部59と、ストレーナ60と、を有する。つまり本実施形態のモータユニット1は、第1オリフィス55と、キャッチタンク56と、第2オリフィス58と、ストレーナ60と、を備える。第1オリフィス55、キャッチタンク56、第2オリフィス58およびストレーナ60は、ハウジング11の内部に設けられる。
【0098】



第1油路部51は、第1オイルポンプ61とモータシャフト22の内部とを繋ぐ。すなわち、油路40は、第1オイルポンプ61とモータシャフト22の内部とを繋ぐ部分を有する。第1油路部51は、第1オイルポンプ61とモータシャフト22の内部との間に、逆止弁51aを有する。つまりモータユニット1は、ハウジング11の内部に逆止弁51aを備える。逆止弁51aは、流体の背圧によって弁体が逆流を抑制することで、オイルOを一方向にのみ通す構造である。具体的には、逆止弁51aにより、第1油路部51において第1オイルポンプ61からモータシャフト22へ向けたオイルOの流れは許容されるが、モータシャフト22から第1オイルポンプ61へ向けたオイルOの流れは許容されない。
【0099】



第2油路部52は、第2オイルポンプ62とモータシャフト22の内部とを繋ぐ。すなわち、油路40は、第2オイルポンプ62とモータシャフト22の内部とを繋ぐ部分を有する。本実施形態によれば、オイルポンプ61,62からモータシャフト22および連結シャフト31内にオイルOを安定して供給できる。すなわち、第1オイルポンプ61から第1油路部51を通して、シャフト22,31内にオイルOを圧送できる。第2オイルポンプ62から第2油路部52を通して、シャフト22,31内にオイルOを圧送できる。そして、シャフト22,31内を通して、ギア貯油部50bにオイルOを安定して供給できる。本実施形態では、例えば上述の特許文献1に記載されるような専用のオイルスペースをハウジング内に設ける必要がなく、本実施形態によれば、モータユニット1を小型化できる。
【0100】



第1オイルポンプ61は、ストレーナ60を介して、貯油部50からオイルOを吸入する。第1オイルポンプ61は、モータ貯油部50aからオイルOを吸入する。第1オイルポンプ61は、電動オイルポンプである。本実施形態によれば、電動オイルポンプである第1オイルポンプ61により、第1油路部51を通してモータシャフト22内にオイルOを安定して供給できる。例えば本実施形態と異なり、第1オイルポンプ61が、モータシャフト22に連結された機械式オイルポンプである場合、モータ20の回転が停止している時には、モータシャフト22内にオイルOが供給されない。また、モータ20の回転数が低い時には、モータシャフト22内にオイルが供給されにくい。一方、本実施形態によれば、モータ20の回転が停止している時であっても、例えば車両100のイグニッションをターンオンしたタイミングで第1オイルポンプ61を作動させて、モータシャフト22内にオイルOを供給できる。また、モータ20の回転数が低い時でも、モータシャフト22内に所定量のオイルOを供給できる。そして第1オイルポンプ61により、伝達機構30にオイルOを供給できる。したがって、モータ始動時などにおいて、伝達機構30の部材にかかる負荷を低減できる。また、モータ20の回転が停止している時や、モータ20の回転数が低い時でも、オイルOをギア貯油部50bに安定して供給できる。
【0101】



図2図6に示すように、第1オイルポンプ61は、ハウジング11の上部に配置される。本実施形態によれば、第1オイルポンプ61がハウジング11の上部に配置されるので、第1オイルポンプ61をインバータ3と電気的に接続しやすい。すなわち、インバータ3と第1オイルポンプ61とを接続する配線(図示省略)を取り回しやすく、また配線長さを短くすることができる。また本実施形態では、第1オイルポンプ61が、ハウジング11の内部に設けられる。すなわち、第1オイルポンプ61がビルトインタイプであるので、第1オイルポンプ61および油路40の全体を、ハウジング11内に配置できる。したがって、例えばハウジングの外部において油路や電動オイルポンプからオイル漏れが生じるような不具合を、本実施形態によれば抑制できる。
【0102】



図9に示すように、第2オイルポンプ62は、ストレーナ60を介して、貯油部50からオイルOを吸入する。第2オイルポンプ62は、モータ貯油部50aからオイルOを吸入する。第2オイルポンプ62は、モータシャフト22に連結される機械式オイルポンプである。本実施形態によれば、第2オイルポンプ62により、モータシャフト22内により安定してオイルOを供給できる。図5に示すように、第2オイルポンプ62は、モータ収容部12の底壁部12bに配置される。第2オイルポンプ62は、モータシャフト22の軸方向他方側に、モータシャフト22と同軸に配置される。第2オイルポンプ62は、例えばトロコイドポンプ等である。本実施形態によれば、電動オイルポンプである第1オイルポンプ61を、モータ20の回転状態や温度等に応じて選択的に使用できる。例えば、車両100の走行時等にモータ20の回転数が低速で安定している場合や、モータ20およびオイルOの温度が低い場合などには、第1オイルポンプ(電動オイルポンプ)61の動作を停止させ、第2オイルポンプ(機械式オイルポンプ)62のみによって、モータシャフト22内にオイルOを供給することとしてもよい。
【0103】



第1オイルポンプ61から吐出されるオイルOの吐出量は、第2オイルポンプ62から吐出されるオイルOの吐出量に比べて小さい。言い換えると、第2オイルポンプ62から吐出されるオイルOの吐出量が、第1オイルポンプ61から吐出されるオイルOの吐出量よりも大きい。具体的には、第2オイルポンプ62の吐出口における油路の断面積が、第1オイルポンプ61の吐出口における油路の断面積よりも大きい。本実施形態では、第2オイルポンプ62をメインポンプとして使用し、第1オイルポンプ61をサブポンプとして選択的に使用することができる。
【0104】



第1オイルポンプ61は、オイルOを第2オイルポンプ62に供給可能である。本実施形態では第1オイルポンプ61が、オイル室53を通して、第2オイルポンプ62にオイルOを供給可能である。本実施形態のモータユニット1の制御方法は、モータ20の始動時に、第1オイルポンプ61により第2オイルポンプ62にオイルOを供給させる。一般に、モータの回転が停止している時には、機械式オイルポンプにオイルが供給されない。このため従来では、モータ始動時などにおいて、機械式オイルポンプにかかる負荷が大きかった。一方、本実施形態によれば、モータ20の回転が停止している場合であっても、モータ20の始動時に合わせて、第1オイルポンプ(電動オイルポンプ)61によって、第2オイルポンプ(機械式オイルポンプ)62にオイルOを供給できる。例えば、車両100のイグニッションをターンオンしたタイミングで、第1オイルポンプ61により第2オイルポンプ62にオイルOを供給できる。したがって、モータ始動時などにおいて、第2オイルポンプ62にかかる負荷を低減できる。
【0105】



オイル室53は、モータ収容部12の底壁部12bに配置されて、軸方向に延びる。オイル室53は、モータ軸J2上に位置する。オイル室53は、軸方向においてモータシャフト内油路部41と第2オイルポンプ62との間に位置する空間である。オイル室53は、第2オイルポンプ62の吐出口に対向する。図9に示すように、オイル室53は、第1油路部51と第2油路部52とが接続する部分に配置される。本実施形態によれば、第1油路部51と第2油路部52とがオイル室53で合流するので、例えば各油路部51,52をモータシャフト22内にそれぞれ接続する構成と比べて、油路40の構造を簡素化できる。また本実施形態では、上述したように第1油路部51が逆止弁51aを有するので、第2オイルポンプ62によりモータシャフト22内にオイルOを供給したときに、第1油路部51を通して第1オイルポンプ61にオイルOが逆流することを抑制できる。また、第1油路部51が、第2オイルポンプ62の吸入口ではなく吐出口と対向するオイル室53に接続されるので、第1油路部51を流れるオイルOが、第2オイルポンプ62の上流側に逆流することを抑制できる。
【0106】



第3油路部54は、第1オイルポンプ61とオイルクーラ65とを繋ぐ。すなわち本実施形態では、第1オイルポンプ61から下流側へ向けて油路が分岐する。具体的に、第1オイルポンプ61から吐出されるオイルOは、モータシャフト22内に繋がる第1油路部51と、オイルクーラ65に繋がる第3油路部54とに流入する。第3油路部54は、ハウジング11の上部に配置される。つまり油路40は、第1オイルポンプ61とオイルクーラ65とを繋いでハウジング11の上部に配置される部分を有する。本実施形態によれば、上述のように第1オイルポンプ61がハウジング11の上部に配置され、油路40のうち、第1オイルポンプ61とオイルクーラ65とを繋ぐ部分(つまり第3油路部54)もハウジング11の上部に配置される。したがって、第3油路部54の長さを短く抑えられ、効率よくオイルOを冷却して油路40に循環できる。
【0107】



第1オリフィス55は、第3油路部54に設けられる。第1オリフィス55は、第3油路部54の油路を狭める。具体的に本実施形態では、第1オリフィス55の上流側に位置する油路40の部分の内径に比べて、第1オリフィス55の下流側に位置する油路40の部分の内径が小さい。本実施形態によれば、第1オリフィス55により第3油路部54内の圧力損失が高められるので、第1オイルポンプ61から吐出されるオイルOが第1油路部51に優先的に流される。このため、例えばオイルOを冷却する必要性の低いモータ始動時などにおいて、第1オイルポンプ61からオイルクーラ65へ流れるオイルOの流量に比べて、第1オイルポンプ61からモータシャフト22内へ流れるオイルOの流量を多く確保できる。
【0108】



キャッチタンク56は、モータ20の上部に配置される。キャッチタンク56は、オイルOを一時的に貯留可能である。キャッチタンク56の底壁には、複数の孔が設けられる。キャッチタンク56は、オイルOを貯留して、モータ20に滴下可能である。第4油路部57は、オイルクーラ65とキャッチタンク56とを繋ぐ。本実施形態によれば、オイルクーラ65で冷却されたオイルOが、第4油路部57を通してキャッチタンク56に供給される。キャッチタンク56から冷えたオイルOを滴下することにより、モータ20を効率よく冷却できる。
【0109】



第2オリフィス58は、モータシャフト22の内部と伝達機構30とを繋ぐ部分の油路を狭める。本実施形態によれば、第2オリフィス58により、油路40のうちモータシャフト22の内部と伝達機構30とを繋ぐ部分の圧力損失が高められるので、モータシャフト22内のオイルOが、伝達機構30よりもモータ20に優先的に流される。すなわち、伝達機構30を潤滑させるために要するオイルOの量に比べて、モータ20を冷却するために要するオイルOの量が多いため、モータ20へと優先的にオイルOを流す。これにより、モータ20の各部材を安定して冷却および潤滑できる。
【0110】



ポンプ収容部59には、第1オイルポンプ61が収容される。ポンプ収容部59は、ハウジング11の壁部内に設けられる空間(室)である。本実施形態では、第1オイルポンプ61が略円柱状であり、第1オイルポンプ61を収容するポンプ収容部59は、略円柱状の空間である。ポンプ収容部59は、軸方向に延びる円柱穴状である。ただしこれに限らず、ポンプ収容部59は、円柱穴状以外の形状であってもよい。ポンプ収容部59は、ハウジング11の上部に配置される。ポンプ収容部59には、第1オイルポンプ61の少なくとも一部が収容される。ポンプ収容部59の内径は、ポンプ収容部59に収容される第1オイルポンプ61の部分の外径よりも、大きい。ポンプ収容部59には、オイルOが溜められる。本実施形態によれば、第1オイルポンプ61付近の油路40の配置スペースを小さく抑えつつ、第1オイルポンプ61で効率よく油路40にオイルOを循環させることができる。
【0111】



ストレーナ60は、オイルOから不純物を回収する。ストレーナ60は、少なくとも一部が貯油部50に配置される。ストレーナ60は、少なくとも一部が貯油部50のオイルOに浸漬される。ストレーナ60は、少なくとも一部がモータ貯油部50a内に配置される。ただしこれに限らず、ストレーナ60は、例えば、第1オイルポンプ61および第2オイルポンプ62と、貯油部50との間に位置する油路40の部分に設けられてもよい。第1オイルポンプ61は、貯油部50からストレーナ60を通してオイルOを吸入する。本実施形態では、第2オイルポンプ62も、貯油部50からストレーナ60を通してオイルOを吸入する。第1オイルポンプ61は、貯油部50からストレーナ60を通して吸入したオイルOを、オイルクーラ65へ送る。本実施形態によれば、ストレーナ60でオイルO内の固形成分等の不純物を回収し取り除くことができる。したがって、モータ20および伝達機構30等が安定して動作する。第1オイルポンプ61がオイルクーラ65へオイルOを圧送するので、オイルOの冷却効率が高められ、モータ20および伝達機構30の冷却および潤滑が効率よく行える。
【0112】



オイルクーラ65は、内部に冷却液が流れる水路を有する。オイルクーラ65は、インバータケース4と配管やホース等により接続される。オイルクーラ65は、インバータケース4内を流れる冷却液を内部に受け入れ可能である。オイルクーラ65には、油路40の一部が配置される。オイルクーラ65の水路を流れる冷却液と、油路40の一部を流れるオイルOとの間で熱交換が行われることにより、オイルOが冷却される。つまり、オイルクーラ65は、オイルOを冷却する。本実施形態によれば、オイルクーラ65により、油路40を循環するオイルOの温度を下げることができる。したがって、冷却されたオイルOにより、モータ20および伝達機構30等を効率よく冷却できる。また、オイルクーラ65は、オイルクーラ65の外部に露出する複数のフィン部を有する。複数のフィン部を介して、外気とオイルOとの間で熱交換が行われることにより、オイルOが冷却される。
【0113】



図2図6に示すように、オイルクーラ65は、ハウジング11のうち鉛直方向の路面とは反対側の上部に配置される。つまりオイルクーラ65は、ハウジング11の上部に配置される。なお、路面とは、車両100が走行しまたは停止する道路等の上面であり、つまり車両100が位置する道路等の上面である。本実施形態のように、車両100にサブフレーム2、モータユニット1およびインバータケース4が設けられる場合において、インバータケース4は、例えば路面からの水の浸入等を考慮して、サブフレーム2の上部に配置される。本実施形態によれば、モータユニット1のオイルクーラ65がハウジング11の上部(頂部)に配置されるので、オイルクーラ65をインバータケース4と接続しやすい。すなわち、オイルクーラ65とインバータケース4とを配管やホース等で接続しやすく、インバータ3を冷却した冷却液をオイルクーラ65に引き込みやすい。また、オイルクーラ65で冷却されたオイルOを、ハウジング11の上部から滴下等によりモータ20に供給しやすい。
【0114】



本実施形態では、第1オイルポンプ61が、オイルクーラ65と車両100の前後方向に並ぶ。本実施形態のように、2つのモータユニット1がサブフレーム2内に設置されるツインモータタイプでは、モータユニット1における車両100の前後方向および車幅方向(軸方向)において、部材の配置スペースを確保しにくい。具体的に、モータユニット1は、車両100の前後方向からサブフレーム2に挟まれるため、モータユニット1と前後方向に隣り合う領域には、部材を設置するスペースが確保できない。また、モータユニット1の車幅方向には、別のモータユニット1、車軸およびサブフレーム2の一部等が配置されるため、モータユニット1と車幅方向に隣り合う領域には、部材を設置するスペースが確保できない。そこで本実施形態のように、第1オイルポンプ61およびオイルクーラ65がモータユニット1の上部に配置され、これらの部材が車両100の前後方向に並ぶ構成であると、第1オイルポンプ61およびオイルクーラ65を配置するスペースを容易に確保しやすい。なお、本実施形態の例では、オイルクーラ65の上下方向の位置と、第1オイルポンプ61の上下方向の位置と、インバータケース4の上下方向の位置とが、互いに略同じである。車両100の前後方向において、オイルクーラ65とインバータケース4との間に、第1オイルポンプ61が配置される。
【0115】



図3に示すように、オイルクーラ65は、少なくとも一部がサブフレーム2よりも上側に配置される。本実施形態によれば、オイルクーラ65がサブフレーム2よりも上側に突出して配置されるので、オイルクーラ65とインバータケース4とをより配管接続しやすい。なお本実施形態においては、オイルクーラ65の全体が、サブフレーム2よりも上側に配置される。
【0116】



図9に示すように、第1温度センサ70は、モータ20に設けられる。本実施形態では、第1温度センサ70が、ステータ26の温度を検知する。つまり第1温度センサ70は、モータ20の温度を検知する。第1温度センサ70は、例えばサーミスタ等である。第1温度センサ70は、例えばインバータ3と電気的に接続される。本実施形態によれば、モータ20の温度が所定値以上となった場合に、第1オイルポンプ61を動作させて、モータ20等をオイルOで冷却することができる。
【0117】



特に図示しないが、第2温度センサは、油路40の一部に配置される。第2温度センサは、例えば貯油部50に配置される。第2温度センサは、例えばモータ貯油部50aに配置される。第2温度センサは、オイルOの温度を検知する。第2温度センサは、例えばインバータ3と電気的に接続される。本実施形態によれば、油路40のオイルOの温度が所定値以上となった場合に、第1オイルポンプ61を動作させて、油路40にオイルOを循環させることにより、オイルOを冷却して、モータユニット1の各部材をオイルOで冷却することができる。
【0118】



図5図9に示すように、回転センサ80は、モータ20の軸方向の端部に設けられる。本実施形態では、回転センサ80が、モータ20の軸方向他方側の端部に配置される。径方向から見て、回転センサ80と第3ベアリング14とは、互いに重なって配置される。回転センサ80は、モータ20の回転を検知する。本実施形態では、回転センサ80がレゾルバである。回転センサ80は、レゾルバロータ80aと、レゾルバステータ80bと、を有する。レゾルバロータ80aは、ロータ21に固定される。本実施形態では、レゾルバロータ80aが、ロータホルダ23のセンサ支持部23cに固定される。レゾルバステータ80bは、ハウジング11に固定される。本実施形態では、レゾルバステータ80bが、モータ収容部12の底壁部12bに固定される。回転センサ80は、インバータ3と電気的に接続される。本実施形態によれば、モータ20の回転数が所定値以上となった場合に、第1オイルポンプ61を動作させて、油路40にオイルOを循環させることにより、各部材をオイルOで冷却することができる。
【0119】



図10に示す白抜きの矢印は、第1オイルポンプ61および第2オイルポンプ62が動作している場合の、油路40を循環するオイルOの流れを簡略的に表している。例えば、モータ始動時、車両100の走行時等においてモータ20の負荷が所定値以上に大きい場合、モータ20の温度が所定値以上に高い場合、および、オイルOの温度が所定値以上に高い場合などには、インバータ3が第1オイルポンプ61を動作させる。図11に示す白抜きの矢印は、第1オイルポンプ61の動作を停止させ、第2オイルポンプ62が動作している場合の、油路40を循環するオイルOの流れを簡略的に表している。例えば、車両100の走行時等においてモータ20の負荷が所定値以下に小さい場合、モータ20の温度が所定値以下に低い場合、および、オイルOの温度が所定値以下に低い場合などには、インバータ3が第1オイルポンプ61の動作を停止させる。
【0120】



なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0121】



前述の実施形態では、モータユニット1が、車両100のリア用のモータユニットであるが、これに限らない。モータユニット1は、車両100のフロント用のモータユニットであってもよい。また、サブフレーム2の形状は、前述の実施形態で説明した形状に限らない。
【0122】



前述の実施形態では、第2オイルポンプ62が機械式オイルポンプである例を挙げたが、これに限らない。第2オイルポンプ62は、電動オイルポンプであってもよい。この場合、電動オイルポンプである第1オイルポンプ61および第2オイルポンプ62を、モータ20の回転状態や負荷、モータ20の温度およびオイルOの温度等に応じて選択的に適宜使用できる。例えば、モータ20の負荷が所定値以上に大きい場合は、第2オイルポンプ62を使用し、モータ20の負荷が所定値以下に小さい場合は、第1オイルポンプ61を使用してもよい。なおこの場合、第2オイルポンプ62は、ハウジング11の上部に配置されることが好ましい。
【0123】



図12は、前述の実施形態のモータユニット1の変形例を示す。この変形例のように、モータユニット1が、第2オイルポンプ62を備えていなくてもよい。また、第1油路部51に逆止弁51aが設けられなくてもよい。この場合、前述の実施形態で説明した作用効果が得られつつ、モータユニット1の構造を簡素化できる。
【0124】



前述の実施形態では、モータユニット1が、第1温度センサ70および第2温度センサを備える例を挙げたが、これに限らない。モータユニット1が、第1温度センサ70および第2温度センサのいずれかを備えなくてもよい。また、第1温度センサ70が複数設けられてもよい。第2温度センサが複数設けられてもよい。
【0125】



前述の実施形態ではオイル案内壁部13gの傾斜面13hがテーパ筒部13fの内周面の一部を構成する曲面であるがこれに限らない。例えば、傾斜面13hが図示しない溝部を有していてもよい。傾斜面13hの溝部は軸方向に沿ってプラネタリギア33から第1ベアリング15に向かうにしたがい下側に向けて延びる。この場合、傾斜面13hの溝部によってオイルOが第1ベアリング15およびオイルシール18へよりスムーズに案内される。
【0126】



前述の実施形態では、モータユニット1が、1つのモータ20と、1つの伝達機構30と、を備える例を挙げたが、これに限らない。モータユニット1が、1つのモータ20と、2つの伝達機構30と、を備えてもよい。この場合、モータシャフト22の軸方向の両端部に、伝達機構30がそれぞれ接続される。
【0127】



前述の実施形態では、モータユニット1および車両駆動装置10が、電気自動車(EV)に搭載される例を挙げたが、これに限らない。モータユニット1および車両駆動装置10は、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)やハイブリッド自動車(HEV)等に搭載されてもよい。
【0128】



その他本発明の趣旨から逸脱しない範囲において前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は前述した実施形態によって限定されず特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0129】



1…モータユニット、11…ハウジング、13g…オイル案内壁部、13h…傾斜面、15…第1ベアリング、16…第2ベアリング、17…仕切り壁部、17a…オイル流通孔、18…オイルシール、20…モータ、22…モータシャフト、30…伝達機構、31…連結シャフト、32…サンギア、33…プラネタリギア、34…インターナルギア、35…ベアリングホルダ、36…キャリアピン、37…キャリア、38…出力シャフト、40…油路、50…貯油部、50a…モータ貯油部、50b…ギア貯油部、51…第1油路部、52…第2油路部、61…第1オイルポンプ(オイルポンプ)、J2…モータ軸、O…オイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12