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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】慣性センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5691 20120101AFI20240319BHJP
【FI】
G01C19/5691
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021057614
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154534
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 優輝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】川合 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
(72)【発明者】
【氏名】船橋 博文
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-042452(JP,A)
【文献】特開2007-316037(JP,A)
【文献】特開2020-188652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00-19/72
H01L 29/00
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性センサであって、
外径が大きい側の面である表面(2a)と前記表面の反対面である裏面(2b)とを有する薄肉部材であって、環状曲面を備える曲面部(21)と、前記曲面部から前記裏面の側に凹んだ凹部(22)と、前記凹部の前記裏面における底面(22b)から前記裏面の側に突出する底面凸部(23)と、前記底面凸部に設けられ、前記表面と前記裏面とを繋ぐ貫通孔(24)と、前記表面の少なくとも一部を覆う導電層(25)と、を有する微小振動体(2)と、
前記微小振動体の前記底面凸部が挿入される位置決め凹部(43)を有する下部基板(4)に、前記位置決め凹部を囲む枠体状の内枠部(51)と、互いに距離を隔てつつ、前記内枠部を囲む配置とされる複数の電極部(53)とを有してなる上部基板(5)が接合されてなる実装基板(3)と、
前記位置決め凹部に配置され、前記微小振動体の前記底面凸部と前記実装基板とを接合する接合部材(52)と、を備え、
前記微小振動体は、前記曲面部が中空状態となっており、
前記底面は、前記実装基板のうち前記位置決め凹部の周囲の領域に当接しており、
前記底面凸部のうち前記底面とは反対側の先端における面を先端面(23b)として、前記位置決め凹部は、前記先端面とは距離を隔てており、
前記接合部材は、少なくとも一部が前記貫通孔に入り込むと共に、前記導電層と電気的に接続されている、慣性センサ。
【請求項2】
前記導電層は、前記貫通孔の内壁の少なくとも一部を覆うと共に、少なくとも一部が前記貫通孔の内壁のうち前記表面の側の上端と前記裏面の側の下端とを繋ぐように延設されている、請求項1に記載の慣性センサ。
【請求項3】
前記導電層は、前記微小振動体のうち少なくとも複数の前記電極部と向き合うリム(211)の前記表面を覆うと共に、前記表面の側のみを覆っている、請求項1または2に記載の慣性センサ。
【請求項4】
前記接合部材は、前記位置決め凹部を充填している、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の慣性センサ。
【請求項5】
前記底面凸部は、前記底面の側の端部よりも前記先端の外径が小さくなる、テーパー形状または湾曲形状である、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の慣性センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元曲面を有する微小振動体を備える慣性センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転のシステム開発が進められており、この種のシステムでは、高精度の自己位置の推定技術が必要である。例えば、いわゆるレベル3の自動運転向けに、GNSS(Global Navigation Satellite Systemの略)とIMU(Inertial Measurement Unitの略)とを備える自己位置推定システムの開発が進められている。IMUは、例えば、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサから構成される6軸の慣性力センサである。将来的に、いわゆるレベル4以上の自動運転を実現するためには、現状よりもさらに高精度のIMUが求められる。
【0003】
このような高精度のIMUを実現するためのジャイロセンサとしては、BRG(Bird-bath Resonator Gyroscopeの略)が有力視されている。BRGは、ワイングラスモードで振動する三次元曲面を有する微小振動体が実装基板に搭載されてなる(例えば特許文献1)。この微小振動体は、振動の状態を表すQ値が10以上に達するため、従来よりも高精度が見込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2019/0094024号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この微小振動体を用いた慣性センサで高精度を実現するためには、微小振動体のQ値の低下を抑制する必要がある。例えば、文献T.Nagourney,A dissertation in the Univ. of Michigan, 2018によれば、この微小振動体は、表面の電極膜の成膜状態、例えば電極膜によるベース基材の被覆面積が大きいこと等によりQ値が減少することが判明している。また、この微小振動体は、ベースとなる薄肉基材(例えば数十μmの厚みの石英等)やその表面に形成される電極膜に傷が付いたり、電極膜が剥がれたりすると、Q値が低下してしまう。そのため、この微小振動体は、Q値の低下を抑制するため、電極膜の成膜状態を良好にしつつも、実装基板への搭載において傷を付けない取り扱いが求められる。
【0006】
特許文献1に記載のBRGは、実装基板の一部として微小振動体の位置決め用の可動治具が形成されており、微小振動体を実装基板に載置し、可動治具により微小振動体の位置調整を行った後に、微小振動体が接合部材で実装基板に接合されることで製造される。その後、実装基板のうち可動治具の部分は、エッチング等の処理により実装基板から解放され、除去される。
【0007】
しかし、この手法は、実装基板における微小振動体の位置決め精度を確保できるものの、プロセスが多く、製造コストが増大するおそれがある。また、このBRGに用いられる微小振動体は、表裏面の全域に電極膜が形成されており、電極膜の成膜状態がQ値の低下抑制の観点で好ましくない。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、ワイングラスモードで振動可能な微小振動体の電極膜によるQ値の低下を抑制しつつも、実装基板に対して簡便かつ高精度に微小振動体の位置決めが可能な構造の慣性センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の慣性センサは、慣性センサであって、外径が大きい側の面である表面(2a)と表面の反対面である裏面(2b)とを有する薄肉部材であって、環状曲面を備える曲面部(21)と、曲面部から裏面の側に凹んだ凹部(22)と、凹部の裏面における底面(22b)から裏面の側に突出する底面凸部(23)と、底面凸部に設けられ、表面と裏面とを繋ぐ貫通孔(24)と、表面の少なくとも一部を覆う導電層(25)と、を有する微小振動体(2)と、微小振動体の底面凸部が挿入される位置決め凹部(43)を有する下部基板(4)に、位置決め凹部を囲む枠体状の内枠部(51)と、互いに距離を隔てつつ、内枠部を囲む配置とされる複数の電極部(53)とを有してなる上部基板(5)が接合されてなる実装基板(3)と、位置決め凹部に配置され、微小振動体の底面凸部と実装基板とを接合する接合部材(52)と、を備え、微小振動体は、曲面部が中空状態となっており、底面は、実装基板のうち位置決め凹部の周囲の領域に当接しており、底面凸部のうち底面とは反対側の先端における面を先端面(23b)として、位置決め凹部は、先端面とは距離を隔てており、接合部材は、少なくとも一部が貫通孔に入り込むと共に、導電層と電気的に接続されている。
【0010】
これによれば、三次元曲面、三次元曲面から凹んだ凹部および凹部底面から突出する底面凸部を有する微小振動体を備え、微小振動体のうち底面凸部が実装基板の位置決め凹部に挿入されてなる慣性センサとなる。この慣性センサは、微小振動体の底面凸部が実装基板の位置決め凹部に挿入されることで位置決めされるため、微小振動体の実装基板に対する位置決めが、簡便かつ高精度になされる構造である。
【0011】
また、この慣性センサでは、微小振動体は、底面凸部に貫通孔と、表面側を覆う導電層とを有し、接合部材の一部が貫通孔に入り込んで導電層と電気的に接続されている。そのため、微小振動体の裏面については電極膜が設けられる必要がなく、導電層による微小振動体の基材の被覆面積が減少することで、微小振動体のQ値が向上する。
【0012】
よって、この慣性センサは、微小振動体の実装基板に対する位置決めが簡便かつ高精度になされると共に、振動のQ値が高く、高精度な構造となっている。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る慣性センサを示す上面レイアウト図である。
図2】慣性センサに用いられる微小振動体を示す斜視図である。
図3図2のIII-III間の断面構成を示す断面図である。
図4A】微小振動体の形成工程のうち部材の用意工程を示す図である。
図4B図4Aに続く工程を示す図である。
図4C図4Bに続く工程を示す図である。
図4D図4Cに続く工程を示す図である。
図4E図4Dに続く工程を示す図である。
図4F】微小振動体の形成方法の他の一例を示す図であって、導電層の形成工程を示す図である。
図4G図4Fに続く工程を示す図である。
図5図2の微小振動体が搭載される実装基板を示す上面レイアウト図である。
図6図5のVI-VI間の断面構成を示す断面図である。
図7図5のVII-VII間の断面構成を示す断面図である。
図8図1のVIII-VIII間の断面構成を示す断面図である。
図9図1のIX-IX間の断面構成を示す断面図である。
図10A図9のXA領域の断面を示す拡大断面図である。
図10B図10Aに相当する図であって、接合部材の他の充填例を示す拡大断面図である。
図11A】慣性センサの製造における微小振動体の搭載工程を示す図であって、部材の用意工程を示す図である。
図11B図11Aに続く工程を示す図である。
図11C図11Bに続く工程を示す図である。
図11D図11Cに続く工程を示す図である。
図11E図11Dに続く工程を示す図である。
図12】微小振動体のうち実装基板との接合部分の他の形状例を示す断面図である。
図13】微小振動体のうち実装基板との接合部分の別の形状例を示す断面図である。
図14】微小振動体のうち実装基板との接合部分のさらに別の形状例を示す断面図である。
図15】微小振動体における導電層の他の形成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(実施形態)
実施形態に係る慣性センサ1について、図1図10Bを参照して説明する。
【0017】
図2では、後述する微小振動体2の構成を分かり易くするため、微小振動体2の外郭のうち図2に示す角度から見えない部分については破線で示している。
【0018】
以下、説明の便宜上、図1に示すように、紙面における左右方向に沿った方向を「x方向」と、同紙面上においてx方向に直交する方向を「y方向」と、xy平面に対する法線方向を「z方向」と、それぞれ称する。図3以降の図中のx、y、z方向は、図1のx、y、z方向にそれぞれ対応するものである。また、本明細書における「上」とは、図中のz方向に沿った方向であって、矢印側を意味し、「下」とは上の反対側を意味する。さらに、本明細書では、例えば図1等に示すように、z方向上側から慣性センサ1または実装基板3を見た状態を「上面視」と称することがある。
【0019】
〔基本構成〕
慣性センサ1は、例えば、図1に示すように、微小振動体2と、実装基板3とを備え、微小振動体2の一部が実装基板3に接合されてなる。慣性センサ1は、ワイングラスモードで振動することが可能な薄肉の微小振動体2と実装基板3のうち後述する複数の電極部53との間における静電容量の変化に基づき、慣性センサ1に印加された角速度を検出する構成となっている。慣性センサ1は、例えば、BRG構造のジャイロセンサであって、自動車等の車両に搭載される用途に適用されると好適であるが、勿論、他の用途にも適用されうる。
【0020】
微小振動体2は、例えば図2に示すように、略半球形の三次元曲面の外形を有する曲面部21と、略半球の曲面部21の頂点側から当該半球の中心側に向かうように凹んだ凹部22と、凹部22からさらに当該中心側に凹むように突出する底面凸部23とを備える。微小振動体2は、例えば、曲面部21が椀状の三次元曲面を有し、その振動のQ値が10以上となっている。曲面部21のうち凹部22とは反対側の端部をリム211として、リム211は、例えば、略円筒形状とされる。微小振動体2は、実装基板3に搭載された際に、リム211が、表面2a側が実装基板3のうち後述する複数の電極部53と向き合うと共に、複数の電極部53の間隔が等間隔となるように搭載される。
【0021】
微小振動体2は、例えば図3に示すように、外径が大きいほうの面を表面2aとし、その反対面を裏面2bとして、裏面2b側において底面凸部23が凹部22の底面22bから突出している。すなわち、微小振動体2は、裏面2b側から見ると、凹部22が曲面部21から突出する第1凸部となっており、凹部22の先端から突出する底面凸部23が第2凸部となる形状である。微小振動体2は、底面凸部23が凹部22よりも裏面2b側の外径が小さくなっている。微小振動体2は、底面凸部23が実装基板3と接合される接合部位であり、実装基板3への搭載時において、リム211を含む曲面部21が他の部材と接触しない中空状態となる部位である。微小振動体2は、実装基板3に搭載されたとき、中空状態のリム211がワイングラスモードで振動可能な構造となっている。
【0022】
微小振動体2は、例えば、底面凸部23のうち表面2aから見た底部、すなわち裏面2bから見た先端部に、表面2aと裏面2bとを繋ぐ貫通孔24が設けられている。微小振動体2は、例えば、表面2aの全域が導電層25により覆われる一方で、裏面2bには導電層25が形成されておらず、薄肉の基材が剥き出しの状態となっている。
【0023】
導電層25は、例えば、限定するものではないが、下地側からCr(クロム)あるいはTi(チタン)と、Au(金)やPt(白金)等の任意の導電性材料との積層膜で構成され、電極膜として機能する。導電層25は、例えば、スパッタリングや蒸着等の真空成膜法により微小振動体2の表面2aに成膜される一方で、裏面2bに成膜されていない。その結果、微小振動体2は、表裏面のいずれにも電極膜を形成する場合に比べて、振動Q値の低下が抑制されている。導電層25は、本実施形態では、貫通孔24の内壁を含め、底面凸部23の表面2a側の壁面全域を覆っており、接合部材52が貫通孔24に入り込んで固化したとき、接合部材52と電気的に接続される構成となっている。
【0024】
底面凸部23の裏面2b側における突出寸法を「底面凸部23の高さh1」として、高さh1は、底面凸部23の先端面が実装基板3に当接しない寸法とされている。また、微小振動体2は、底面凸部23が実装基板3の後述する位置決め凹部43に挿入されることで、簡便かつ高精度に、実装基板3に対する位置決めが可能な構成となっている。微小振動体2のうち凹部22の底面22bは、実装基板3への搭載時に、実装基板3のうち位置決め凹部43の周囲の領域に当接する突き当て部となっている。この詳細については、後述する。
【0025】
微小振動体2は、底面凸部23の底部に貫通孔24が形成されているため、実装基板3への搭載時に、例えば図8等に示すように、接合部材52が貫通孔24を介して底面凸部23の裏面2b側から表面2a側に流れ込むことが可能な形状である。これにより、微小振動体2は、裏面2bに導電層25を有しなくても、貫通孔24に流れ込んだ接合部材52を介して、実装基板3と電気的に接続される構造となっている。
【0026】
微小振動体2は、例えば、石英、ホウケイ酸ガラスなどの添加物含有のガラス、金属ガラス、シリコンやセラミック等の材料で構成される。なお、微小振動体2は、三次元曲面形状とされた曲面部21、凹部22および底面凸部23を形成でき、ワイングラスモードでの振動が可能なものであればよく、前述の材料に限定されない。微小振動体2は、例えば、後述する形成工程により、上記した材料で構成された薄肉基材を加工して形成されることで、曲面部21、凹部22、底面凸部23の厚みが10μm~100μmといった具合のマイクロメートルオーダーの薄肉部材となっている。微小振動体2は、例えば、実装基板3の厚み方向に沿った方向を高さ方向として、高さ方向の寸法が2.5mm、リム211の表面2a側の外径が5mmといったミリサイズの形状となっている。
【0027】
微小振動体2は、例えば、次のような工程により形成される。
【0028】
まず、例えば図4Aに示すように、石英板20、三次元曲面形状を形成するための型Mおよび型Mを冷却するための冷却体Cを用意する。型Mは、例えば、石英板20に三次元曲面形状を形成する際のスペースとなる凹部M1と、凹部M1の中心において、凹部M1の深さ方向に沿って延設され、加工時に石英板20の一部を支える支柱部M2とを備える。型Mは、凹部M1の底面に貫通孔M11が形成されると共に、支柱部M2の先端面に突起部M21が形成されている。冷却体Cは、型Mが嵌め込まれる嵌め込み部C1と、嵌め込み部C1の底面に排気用の排気口C11とを備え、石英板20を加工する際に型Mを冷却する役割を果たす。石英板20は、型Mの凹部M1の全域を覆うように配置される。
【0029】
続けて、例えば図4Bに示すように、石英板20に向けてトーチTから火炎Fを吹きかけ、石英板20を溶融させる。このとき、型Mの凹部M1は、図示しない真空機構により冷却体Cの排気口C11を通じて真空引きされている。これにより、石英板20のうち溶融した部分は、凹部M1の底面に向かって引き延ばされると共に、その中心周辺領域が支柱部M2により支えられた状態となる。その後、石英板20の加熱をやめて冷却することで、石英板20は、略半球形の三次元曲面形状とされた曲面部位201と、曲面部位201の中心近傍で凹むと共に、突起部M21の外形に追従する凹部位202とが形成される。また、石英板20は、凹部M1の外側に位置する部分が、曲面部位201の外周端に位置し、平坦形状とされた端部203となる。
【0030】
次いで、型Mの凹部M1を常圧に戻し、加工後の石英板20を取り外し、例えば図4Cに示すように、任意の硬化性樹脂材料によりなる封止材Eで石英板20を封止する。その後、例えば、図4Dに示すように、封止材Eを端部203側の面から研磨およびCMP(Chemical Mechanical Polishingの略)を行い、封止材Eごと端部203および凹部位202の先端部分を除去する。これにより、石英板20は、環状曲面を有する曲面部21、曲面部21の頂点から凹んだ凹部22、底面凸部23および貫通孔24を有する形状となる。
【0031】
そして、加熱や薬液を用いた溶解等の任意の方法により、封止材Eをすべて除去し、石英板20を取り出す。続いて、例えば、図4Eに示すように、石英板20のうち底面凸部23の外径に対応する内径の凹部J1を有する治具Jを用意し、封止材Eから取り出した石英板20を治具Jにセットする。最後に、例えば、スパッタリング、蒸着等の成膜プロセスにより、上記した加工後の石英板20の表面20aに導電層25を形成する。これにより、石英板20は、外径が大きい側の面である表面20aが導電層25により覆われる一方で、その反対面である裏面20bが剥き出しの状態となる。
【0032】
なお、微小振動体2は、例えば、上記のような製造プロセスにより製造されるが、この製法例に限定されるものではない。例えば、図4Bに示す石英板20を溶融するための熱源は、トーチTによる火炎Fに代わって、火炎Fを用いた場合と同等面積で石英板20を加熱できるヒータであってもよい。また、微小振動体2は、例えば、図4Bに示す工程の後に、図4Fに示すように端部203が残った状態の石英板20の外表面に導電層25を成膜する工程を経て製造されてもよい。この場合、微小振動体2は、図4Gに示すように導電層25を成膜した石英板20を封止材Eで封止して、研磨およびCMPにより端部203を除去した後、最後に封止材Eを除去する工程により得られる。この場合、治具Jを用いることなく、後ほど除去する端部203を用いて石英板20を固定でき、導電層25の真空成膜において石英板20を回転させることで、導電層25の成膜バラつきをより抑制することも可能となる。また、微小振動体2の貫通孔24は、研磨以外の方法により形成されてもよい。例えば、微小振動体2は、図4Aに示す工程で用意する平板状の石英板20として、型Mの突起部M21の先端上に位置する部分にあらかじめ貫通孔24が形成されたものを用意し、図4B以降の工程を経ることで形成されてもよい。このように、微小振動体2の製造工程については、適宜変更されてもよく、他の公知の方法が採用されても構わない。
【0033】
また、微小振動体2は、Z方向を回転軸として回転対称な略ハーフトロイダル形状とされるが、ワイングラスモードで振動可能な形状であればよく、図示したBRの形状にのみ限定されるものではない。
【0034】
実装基板3は、例えば図5に示すように、下部基板4と、上部基板5とを備え、これらが接合された構成となっている。例えば、実装基板3は、絶縁材料のホウケイ酸ガラスにより構成された下部基板4に、半導体材料のSi(シリコン)により構成された上部基板5を陽極接合することで得られる。実装基板3は、下部基板4のうち微小振動体2が搭載される位置決め凹部43と、これを囲む内枠部51と、内枠部51を囲むように互いに離隔して配置された複数の電極部53と、電極部53を囲むように互いに離隔して配置された外枠部54とを備える。
【0035】
内枠部51は、上面視にて、例えば円環形状となっているが、位置決め凹部43を囲む枠体状であればよく、この形状に限定されない。内枠部51は、例えば図8図9に示すように、その外径および内径が微小振動体2に当接しない寸法となっている。
【0036】
複数の電極部53は、エッチング溝41の外周側の位置において、内枠部51を囲むように互いに離れて配置されている。複数の電極部53は、例えば図5に示すように、上面視にて、内周側および外周側の辺がそれぞれ円弧状となっており、内周側および外周側の辺それぞれを繋げると、径の異なる断続的な円を描く状態となっている。言い換えると、複数の電極部53は、内枠部51を囲む円環を所定間隔で均等に分割した構成となっている。
【0037】
複数の電極部53は、例えば図6に示すように、それぞれ上面に電極膜531が形成されている。複数の電極部53は、例えば、電極膜531に図示しないワイヤが接続され、図示しない外部の回路基板等と電気的に接続されることで、電位の制御が可能となっている。複数の電極部53は、いずれも、例えば図1図8に示すように、微小振動体2が搭載されたとき、微小振動体2のリム211と所定の距離を隔てた状態となり、それぞれが微小振動体2とキャパシタを形成する。つまり、実装基板3は、複数の電極部53を介して、微小振動体2との間の静電容量を検出したり、微小振動体2との間に静電引力を生じさせ、微小振動体2をワイングラスモードで振動させたりすることが可能となっている。
【0038】
なお、実装基板3の「内周側」とは、図5に示すような上面視において、内枠部51に囲まれた内側領域の中心側を意味し、「外周側」とは、内周側とは反対に位置する側を意味する。また、図1等には、実装基板3に16個の電極部53が互いに離れて環を描くように均等配置された例を示しているが、これに限定されるものではなく、電極部53の数や配置については微小振動体2の形状やサイズ等に応じて適宜変更されうる。
【0039】
外枠部54は、上面視にて、内枠部51を囲む1つの枠体形状とされ、例えば図5図7に示すように、上面にAl等によりなる電極膜541を備える。外枠部54は、電極膜541に図示しないワイヤが接続され、図示しない外部の回路基板等と電気的に接続されることで、図示しない外部の電源等により、外枠部54の電位制御が可能となっている。
【0040】
実装基板3は、上面視にて、下部基板4のうち円環形状の内枠部51よりも外周側の位置に、内枠部51を囲む環状のエッチング溝41が形成されている。これにより、微小振動体2が実装基板3に搭載されたとき、微小振動体2は、例えば図8図9に示すように、リム211を含む曲面部21が中空状態となる。また、実装基板3は、下部基板4のうち内枠部51に囲まれた内側領域内に、微小振動体2との接合に用いられる位置決め凹部43が形成されている。
【0041】
実装基板3は、下部基板4のエッチング溝41を跨ぐと共に、位置決め凹部43の内壁や底面の一部または全部を覆うブリッジ配線42を備える。ブリッジ配線42は、例えばAl(アルミニウム)等の導電性材料により構成されると共に、複数の電極部53の間を通過する配置とされ、複数の電極部53とは電気的に独立している。ブリッジ配線42は、例えば、位置決め凹部43を中心として一部が外枠部54に向かって延設されると共に、その延設端部が外枠部54により覆われている。ブリッジ配線42は、例えば図9に示すように、位置決め凹部43を覆う部分が、接合部材52を介して微小振動体2の導電層25と電気的に接続されている。つまり、ブリッジ配線42は、外枠部54と微小振動体2の導電層25とを電気的に接続し、これらを同電位とする役割を果たす。これにより、微小振動体2は、外枠部54の電位調整により、その電位制御がなされる。
【0042】
なお、内枠部51は、例えば図9に示すように、ブリッジ配線42を覆い、ブリッジ配線42および接合部材52を介して導電層25と同電位となっているが、少なくとも導電層25と外枠部54とが同電位になればよく、これに限定されるものではない。例えば、内枠部51は、上面視にて、部分的に分断された断続的な枠体形状、かつブリッジ配線42に当接しない配置とされ、ブリッジ配線42および導電層25とは異なる電位であってもよい。
【0043】
位置決め凹部43は、例えば図8図9に示すように、微小振動体2の底面凸部23が挿入される有底溝である。位置決め凹部43は、例えば、その内径が、微小振動体2の底面凸部23の外形寸法よりもやや大きい寸法とされる。位置決め凹部43は、例えば、その内壁および底面の一部または全部がブリッジ配線42で覆われている。位置決め凹部43は、微小振動体2の底面凸部23が挿入されることで、微小振動体2の実装基板3に対する位置決めを簡便かつ高精度に行うことを可能とする。また、実装基板3は、微小振動体2の底面凸部23が位置決め凹部43に挿入されたとき、位置決め凹部43の周囲の領域が底面22bに当接することで、微小振動体2が傾くことを抑制する。
【0044】
位置決め凹部43は、例えば図10Aに示すように、z方向における寸法、すなわち深さが図3に示す底面凸部23の高さよりも大きくなっている。つまり、位置決め凹部43は、微小振動体2が接合されたとき、底面凸部23の先端面23bとは距離を隔てる寸法となっている。これにより、微小振動体2は、底面凸部23の先端面23bと位置決め凹部43とが接触しないと共に、底面22bが実装基板3のうち位置決め凹部43の周囲の領域に当接し、微小振動体2が実装基板3に対して傾くことが抑制される。その結果、微小振動体2は、リム211と実装基板3の複数の電極部53との距離バラつき、すなわち静電容量のバラつきが低減された搭載状態となる。位置決め凹部43は、底面43aあるいはこれを覆うブリッジ配線42と、底面凸部23とが当接しなければよく、その深さについては底面凸部23の高さh1に応じて適宜変更される。
【0045】
なお、接合部材52は、位置決め凹部43の一部を充填する構成に限定されるものではなく、微小振動体2と実装基板3との接合強度をさらに向上させる観点から、例えば図10Bに示すように、位置決め凹部43をすべて充填していてもよい。接合部材52は、位置決め凹部43から微小振動体2の貫通孔24に流れ込み、導電層25に接触するのに十分な量であればよく、その量については適宜変更されうる。
【0046】
実装基板3は、例えば、次のような工程により製造されうる。
【0047】
まず、例えば、ホウケイ酸ガラスによりなる下部基板4を用意し、バッファードフッ酸を用いたウエットエッチングにより円環状のエッチング溝41と、エッチング溝41に囲まれた領域内に位置決め凹部43とを形成する。その後、エッチング溝41を跨ぐと共に、位置決め凹部43の内壁や底面を覆うブリッジ配線42を、例えばAlのスパッタによる成膜を用いたリフトオフ法により形成する。なお、ブリッジ配線42の厚みは、例えば、0.1μm程度とされる。
【0048】
続けて、例えば、SiによりなるSi基板(後の上部基板5)を用意し、ホウケイ酸ガラスの下部基板4と陽極接合する。次にSi基板に後の内枠部51、複数の電極部53、外枠部54となる領域に区画する溝を公知のエッチング方法により形成する。
【0049】
具体的には、例えば、DRIE(Deep Reactive Ion Etchingの略)によりトレンチエッチングを行って、下部基板4を露出させ、内枠部51、複数の電極部53、外枠部54の各領域を分離させる。これにより、Si基板は、互いに離隔した内枠部51、複数の電極部53、および外枠部54を備える上部基板5となる。また、下部基板4に形成されたエッチング溝41および位置決め凹部43は、このSi基板の区画工程により、上部基板5から露出した状態となる。
【0050】
最後に、例えば、複数の電極部53および外枠部54の上面にスパッタ等により電極膜531、541を形成する。このような工程の結果、上述した構造の実装基板3が得られる。そして、実装基板3は、微小振動体2が搭載される際に、下部基板4の位置決め凹部43内に、接合部材52が配置される。接合部材52は、例えば、AuSn(金錫)、Ag(銀)、Auなどの導電性材料を有してなるペースト状の導電材とされ、シリンジ等を用いて位置決め凹部43内に塗布される。
【0051】
なお、図5等で示す1つの実装基板3は、例えば、ウエハに上記構造の複数の実装基板3となる領域を形成し、ダイシングカット等により個片化することにより得られる。言い換えると、実装基板3の製造については、ウエハレベルでの対応が可能である。
【0052】
以上が、慣性センサ1の基本的な構成である。慣性センサ1は、駆動時には、複数の電極部53の一部と微小振動体2との間に静電引力を生じさせることで、微小振動体2をワイングラスモードで振動させる。慣性センサ1は、微小振動体2が振動状態のときに、外部からコリオリ力が印加されると、微小振動体2が変位してその振動モードの節の位置が変化する。慣性センサ1は、この振動モードの節の変化を微小振動体2と複数の電極部53との静電容量で検出することで、慣性センサ1に働く角速度の検出が可能となっている。
【0053】
〔慣性センサの製造方法〕
次に、本実施形態の慣性センサ1の製造方法について図11A図11Eを参照して説明するが、微小振動体2および実装基板3自体の製造については上記したため、ここでは、微小振動体2を実装基板3に接合する工程について主に説明する。
【0054】
なお、図11A図11Eは、図8に示す断面図に相当するものである。また、図11C図11Eでは、見易くするため、後述するピックアップ機構300の一部のみを簡易的に示すと共に、コレット302の内部を破線で示している。
【0055】
まず、図11Aに示すように、例えば、上記の方法により製造した微小振動体2および実装基板3を用意する。その後、例えば、図11Bに示すように、位置決め凹部43内に接合部材52を配置する。接合部材52としては、例えば、AuペーストやAgペースト等の導電性の接合材料が用いられ、シリンジ等を用いた塗布により配置される。
【0056】
そして、例えば、実装基板3を図示しないマウンタ装置の吸着面に載置し、真空吸着により実装基板3を固定する。なお、この図示しないマウンタ装置は、吸着面を加熱可能な加熱機構を備えた構成となっている。
【0057】
続いて、例えば図11Cに示すように、微小振動体2のうち凹部22のうち表面2a側の底部22aにピックアップ機構300の一部を挿入し、真空吸着により微小振動体2を把持する。ピックアップ機構300は、例えば、台座部301と、略円筒形状のコレット302とを備え、台座部301が図示しない搬送部および真空機構に接続されており、コレット302による真空吸着と、吸着した物体の搬送とが可能な構成となっている。ピックアップ機構300は、例えば、コレット302の最大径が凹部22の内径よりも小さくされ、コレット302の先端部の外径が他の部分よりも小さくなっている。また、ピックアップ機構300は、コレット302の長さが微小振動体2の凹部22の深さよりも大きく、コレット302を微小振動体2の凹部22に挿入した際に、コレット302が微小振動体2の底部22a以外に当接しない構成となっている。これにより、微小振動体2を搬送する際に、微小振動体2の導電層25や基材に傷が生じることが抑止される。
【0058】
一方、図示しないマウンタ装置により実装基板3を吸着した状態で加熱し、接合部材52を溶融もしくは軟化させておく。そして、例えば図11Dに示すように、上記のピックアップ機構300を用いて、微小振動体2の底部22aを真空吸着により把持しつつ、微小振動体2の底面凸部23を実装基板3の位置決め凹部43に挿入する。これにより、実装基板3に対する微小振動体2の位置決めが簡便かつ高精度になされると共に、その後の面内方向、すなわちxy平面上における微小振動体2の位置ズレが抑制される効果が得られる。
【0059】
続けて、微小振動体2を実装基板3側に近づけていき、微小振動体2の先端面23bを接合部材52に接触させる。これにより、溶融した接合部材52は、その一部が微小振動体2の貫通孔24に入り込み、表面2a側を覆う導電層25と接触した状態となる。また、微小振動体2は、底面凸部23の先端面23bが位置決め凹部43に当接しないため、実装基板3に対して傾くことが抑制される。
【0060】
微小振動体2の実装基板3に対する位置合わせについては、例えば、微小振動体2および実装基板3を撮像し、公知の画像処理技術によりエッジ検出により特徴点を抽出することで、相対位置を調整するといった方法で行うことができる。
【0061】
また、位置決め凹部43は、前述したように、微小振動体2の底面凸部23の外径に対応した内径寸法とされている。そのため、画像処理技術による微小振動体2と実装基板3との相対位置調整に加え、位置決め凹部43への微小振動体2の嵌め込みにより、簡便かつ高精度に、実装基板3に対する微小振動体2の位置合わせ精度を確保することが可能となっている。
【0062】
その後、図示しないマウンタ装置等の吸着面の温度を下げ、溶融した接合部材52を固化させることで微小振動体2と実装基板3とを接合する。そして、例えば図11Eに示すように、コレット302の内部を常圧に戻して微小振動体2の真空吸着を解除し、ピックアップ機構300を退避させ、コレット302を微小振動体2の凹部22から抜き出す。
【0063】
続いて、図示しないマウンタ装置等による吸着を解除し、微小振動体2が接合された実装基板3を吸着面から取り外す。そして、実装基板3を図示しない回路基板等に搭載し、実装基板3の電極膜531、541にワイヤボンディングをし、回路基板等と実装基板3の電極部53および外枠部54とを電気的に接続する。最後に、例えば、実装基板3あるいは実装基板3が取り付けられる外部の部材に、図示しないキャップ材を真空環境で取り付け、微小振動体2を実装基板3と図示しないキャップ材とによりなる内部空間に気密封止する。このような工程により、実施形態に係る慣性センサ1を製造することができる。
【0064】
以上が、本実施形態の慣性センサ1の基本的な製造方法である。なお、ここでは、微小振動体2を把持する方法として凹部22の底部22aを真空吸着する場合を代表例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、コレット302の構成を変更し、凹部22の表面2a側の側壁を真空吸着することで把持してもよいし、機械的に当該側壁を2か所以上で押圧することで把持しても構わない。
【0065】
本実施形態によれば、曲面部21、凹部22、底面凸部23および貫通孔24を有し、表面2aの側のみが導電層25に覆われた微小振動体2が実装基板3に搭載された構成の慣性センサ1となる。この慣性センサ1は、表面2aの側にのみ電極膜を有する構成であるため、表裏面の全域を電極膜で覆う構成に比べて、導電層25による薄肉基材の被覆面積が小さく、微小振動体2のQ値が向上する効果が得られる。また、実施形態に係る慣性センサ1は、実装基板3に位置決め凹部43が設けられ、微小振動体2の底面凸部23が挿入されることで、これらの相対位置が決める構造である。そのため、この慣性センサ1は、単に画像処理技術による位置合わせを行う場合よりも、簡便かつ高精度に、実装基板3に対する微小振動体2の位置決めが可能な構造となっている。
【0066】
したがって、実施形態に係る慣性センサ1は、微小振動体2の位置決めが簡便かつ高精度になされつつ、微小振動体2のQ値が大きく、高精度が実現される構造である。
【0067】
(他の実施形態)
本発明は、実施例に準拠して記述されたが、本発明は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範疇や思想範囲に入るものである。
【0068】
(1)例えば、微小振動体2は、図12に示すように、底面凸部23が底面22b側の端部よりもその反対側の先端の外径が小さくなる傾斜面を有するテーパー形状であってもよい。例えば、図4Aに示す型Mの突起部M21の高さを大きくしつつ、その先端が根本よりも細くなる形状とすることで、底面凸部23をテーパー形状とすることができる。
【0069】
また、微小振動体2は、例えば図13に示すように、底面凸部23の裏面2b側の外表面が、底面22bから先端面23bに向かって連続的に湾曲した湾曲形状とされることで、その先端の外径が小さくなる形状であってもよい。例えば、図4Aに示す型Mの突起部M21の高さを小さくしつつ、その先端が根本よりも細くなる形状とすることで、底面凸部23を上記の湾曲形状とすることができる。
【0070】
上記のように底面凸部23の外形がテーパー形状や湾曲形状である場合、寸法誤差などにより、底面凸部23のうち底面22b側の外径が位置決め凹部43の内径に対して多少大きいときであっても、底面凸部23の挿入が容易となる。その結果、微小振動体2は、凹部22の底面22bが実装基板3と確実に当接し、実装基板3に対する位置決めがより安定する効果が得られる形状となる。なお、図12図13は、微小振動体2のうち底面凸部23を含む一領域を拡大して示す図であって、見易くするため、底面凸部23およびその近傍の凹部22の一部以外の構成については省略した拡大断面図である。これは、後述する図14についても同様である。
【0071】
このように、微小振動体2は、位置決め凹部43に挿入可能な底面凸部23を有し、かつ、その先端面23bが位置決め凹部43に当接しない構成であればよく、底面凸部23の形状については適宜変更されてもよい。例えば、底面凸部23は、テーパー形状や湾曲形状等に限定されず、底面22bに対する法線方向、すなわちz方向下側に沿って延設された略円筒形状であってもよい。
【0072】
(2)導電層25は、例えば、図3図12に示すように、貫通孔24の内壁の一部または全部を覆っていてもよいし、図14に示すように、貫通孔24の内壁を覆っていなくてもよい。前者の場合、導電層25は、少なくとも一部が、貫通孔24の内壁のうち表面2a側の上端と先端面23b側の下端とを繋ぐように延設されると、微小振動体2の接合時に接合部材52とより確実に接触する。その結果、微小振動体2と実装基板3との電気的な接続がより安定する効果が得られる。
【0073】
また、導電層25は、少なくとも、実装基板3の複数の電極部53と向き合うリム211の表面2a、および底面凸部23の内壁面を覆い、これらが電気的に接続されていればよく、必ずしも表面2aの全域を覆っていなくてもよい。導電層25は、例えば図15に示すように、表面2aの一部のみを覆うパターン形状であってもよい。例えば、導電層25は、リム211を覆う部分と、凹部22および底面凸部23の内壁面を覆う部分とが幅狭部分で接続されたパターン形状とされうる。この場合、導電層25による微小振動体2の基材の被覆面積がさらに小さくなり、Q値の低下をより抑制される構成の微小振動体2となる。
【0074】
上記パターン形状の導電層25を有する微小振動体2は、例えば、図4Aに示す平板状の石英板20として、凹部M1側にパターン形状の導電層25が形成されたものを用意し、図4Bないし図4Eの工程を行うことで形成することができる。なお、図15では、微小振動体2を構成する導電層25のパターン形状の一例を分かり易くするため、微小振動体2のうち曲面部21の一部を省略して示すと共に、図2と同様に、図15で示す角度で見えない部分の外郭を破線で示している。
【符号の説明】
【0075】
2・・・微小振動体、2a・・・表面、2b・・・裏面、21・・・曲面部、
22・・・凹部、22b・・・底面、23・・・底面凸部、23b・・・先端面、
24・・・貫通孔、25・・・導電層、3・・・実装基板、4・・・下部基板、
43・・・位置決め凹部、5・・・上部基板、51・・・内枠部、53・・・電極部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12
図13
図14
図15