(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】発光色素含有粒子及び病理診断用標識剤
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20240319BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240319BHJP
C07D 487/02 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C09K11/06
G01N21/64 F
C07D487/02
(21)【出願番号】P 2021515964
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2020015770
(87)【国際公開番号】W WO2020217985
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019084856
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 理枝
(72)【発明者】
【氏名】中山 慎
(72)【発明者】
【氏名】磯田 武寿
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-044482(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012374(WO,A1)
【文献】特開2015-059806(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154994(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/111952(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/075751(WO,A1)
【文献】特開2007-126551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/00-11/89
G01N21/62-21/74;33/48-33/98
A61K39/00-39/44;49/00-51/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性樹脂と油溶性発光色素とを含有する発光色素含有粒子であって、体積基準の累積粒度分布曲線から得られる粒径D50が、1~100nmの範囲内であり、下記要件(1)及び(2)を満た
し、
前記発光色素含有粒子の体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積10%及び累積90%の粒径をそれぞれ、D10及びD90、としたとき、下記式(3)で表されるスパン値が、1.50~2.20の範囲内であり、前記発光色素含有粒子の濃度1mg/mLの水分散液を、遠心力20000Gで20分間遠心分離をかけたときに、20℃における波長660nmの上澄み液の濁度が1%以下である
ことを特徴とする発光色素含有粒子。
(1)前記発光色素含有粒子の水分散液(発光色素含有粒子1mg/mL)を遠心力20000Gで60分間遠心分離をかけた後に、0.05μmのフィルターでろ過した上澄み液の、20℃における前記油溶性発光色素の分光スペクトルにおける最大の極大吸収波長の吸光度が0.01以下である。
(2)前記発光色素含有粒子1mgをキシレン中1mLに分散させた分散液を遠心力20000Gで60分間遠心分離をかけた後に、0.05μmのフィルターでろ過した上澄み液の、20℃における前記油溶性発光色素の分光スペクトルにおける最大の極大吸収波長の吸光度が0.01以下である。
式(3)
スパン値=(D90-D10)/D50
【請求項2】
前記油溶性発光色素の含有量が、前記親水性樹脂を形成するモノマーと前記油溶性発光色素との総計に対して10~80mol%の範囲内であることを特徴とする請求項
1に記載の発光色素含有粒子。
【請求項3】
前記親水性樹脂が、有機樹脂であることを特徴とする請求項1
又は請求項
2に記載の発光色素含有粒子。
【請求項4】
前記油溶性発光色素のAlogP値が、10.0~60.0の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の発光色素含有粒子。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の発光色素含有粒子を用いることを特徴とする病理診断用標識剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光色素含有粒子及び病理診断用標識剤に関し、より詳しくは、小粒径でありながら、高輝度の発光が可能で、かつ染色機能の良い発光色素含有粒子及びそれを用いる病理診断用標識剤に関する。
【背景技術】
【0002】
病理染色用の発光色素含有粒子は、対象となる細胞やその構成成分であるタンパク質、抗原の種種類によって、粒子の粒径を制御できることと輝度を調整できることが求められる。
【0003】
生体内において目的の分子の挙動を追う際には、分子より小型又はその運動を妨げない大きさ(5~300nm)の範囲内におさまり、顕微鏡で観察できる程度の発光量を放出可能な粒子を使って観察することが望ましい。
【0004】
生体内で目的の分子を発光色素含有粒子等で観察する場合には、対象が数百キロDaのような巨大な分子であっても、タンパク質や薬剤などの構造上の単位であるドメインは100nm以下であり、その挙動を詳しく調べるためには、100nm以下の小粒径の粒子が必要である。
【0005】
一般的に、粒径が大きい粒子(150~200nm)については、粒子の体積が大きいため、粒子を構成する樹脂に対して、十分な量の色素を含有させることが可能であり、輝度も検出感度に対して問題はない(例えば特許文献1参照)。
しかし、小粒径の粒子は、高精度で空間分解能が良い免疫染色をすることができる反面、大粒径の粒子に比べて、体積に対する表面積が大きくなるため、粒子中の色素が粒子を分散させている水中に溶出しやすくなる。また、油溶性色素は一般的に、有機溶媒へ溶解しやすいため、染色操作後に行う透徹においてキシレンなどを使う際に、色素が溶出してしまい、粒子の輝度が低下し、検出感度が下がるという課題があった。
また、小粒径粒子にすることで溶媒中での粒子の凝集は起こりにくくなるが、溶媒中に分散されやすく、溶媒中で粒子が沈降しにくくなる。
【0006】
免疫染色では、発光色素含有粒子の水分散液をスライドガラス上の組織切片や培養細胞の上から垂らして静置した状態で目的の分子を染色する。このとき、水分散液中の発光色素含有粒子が重力で沈降することにより組織切片や培養細胞中の目的の分子と接触して反応し、細胞が染色されるため、沈降しにくい発光色素含有粒子を使った場合には、染色性能が著しく低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、小粒径でありながら、粒子中の色素が溶媒中に溶出しにくく、高輝度の発光が可能な発光色素含有粒子及びそれを用いる病理診断用標識剤を提供することである。また、本発明のさらなる解決課題は、小粒径でありながら、液中で沈降しやすく、染色性能の良い発光色素含有粒子及びそれを用いる病理診断用標識剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、発光色素と樹脂との組み合わせを鋭意検討した結果、親水性樹脂と油溶性発光色素を含有し、体積基準の累積粒度分布曲線から得られる粒径(D50)が1~100nmの範囲内の小粒径の発光色素含有粒子とし、前記発光色素含有粒子の体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積10%及び累積90%の粒径をそれぞれ、D10及びD90、としたとき、(D90-D10)/D50の値を1.50~2.20の範囲内とすることで、水及びキシレン中への色素溶出が少なく、水中で沈降しやすい発光色素含有粒子を見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
1.親水性樹脂と油溶性発光色素とを含有する発光色素含有粒子であって、体積基準の累積粒度分布曲線から得られる粒径D50が、1~100nmの範囲内であり、下記要件(1)及び(2)を満たし、前記発光色素含有粒子の体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積10%及び累積90%の粒径をそれぞれ、D10及びD90、としたとき、下記式(3)で表されるスパン値が、1.50~2.20の範囲内であり、前記発光色素含有粒子の濃度1mg/mLの水分散液を、遠心力20000Gで20分間遠心分離をかけたときに、20℃における波長660nmの上澄み液の濁度が1%以下であることを特徴とする発光色素含有粒子。
【0011】
(1)前記発光色素含有粒子の水分散液(発光色素含有粒子1mg/mL)を遠心力20000Gで60分間遠心分離をかけた後に、0.05μmのフィルターでろ過した上澄み液の、20℃における前記油溶性発光色素の分光スペクトルにおける最大の極大吸収波長の吸光度が0.01以下である。
(2)前記発光色素含有粒子1mgをキシレン中1mLに分散させた分散液を遠心力20000Gで60分間遠心分離をかけた後に、0.05μmのフィルターでろ過した上澄み液の、20℃における前記油溶性発光色素の分光スペクトルにおける最大の極大吸収波長の吸光度が0.01以下である。
式(3)
スパン値=(D90-D10)/D50
【0014】
2.前記油溶性発光色素の含有量が、前記親水性樹脂を形成するモノマーと前記油溶性発光色素との総計に対して10~80mol%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の発光色素含有粒子。
【0015】
3.前記親水性樹脂が、有機樹脂であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の発光色素含有粒子。
【0016】
4.前記油溶性発光色素のAlogP値が、10.0~60.0の範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の発光色素含有粒子。
【0017】
5.第1項から第4項までのいずれか一項に記載の発光色素含有粒子を用いることを特徴とする病理診断用標識剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、小粒径でありながら、粒子中の色素が溶媒中に溶出しにくいため、高輝度の発光が可能な発光色素含有粒子及びそれを用いる病理診断用標識剤を提供することができる。また、小粒径でありながら、液中で沈降しやすく、染色性能の良い発光色素含有粒子及びそれを用いる病理診断用標識剤を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明の発光色素含有粒子は、一般的には親和性がないと思われる油溶性色素と親水性樹脂とを組合わせることにより、粒子に含有される色素量が予想外に多く、高輝度の発光が可能な発光色素含有粒子を作製することができた。
本発明の発光色素含有粒子が水中に分散されている場合には、粒子中の油溶性色素は元々水に溶解しにくいため、水中への漏れ出しは少ないと推測される。
本発明の発光色素含有粒子がキシレンなどの有機溶媒中に分散されている場合には、粒子を構成している親水性樹脂の部分が粒子中の油溶性色素とキシレンとの相互作用を阻害するため(油溶性色素の周りを親水性樹脂が取り囲んでいるため)、有機溶媒への油溶性色素の漏れ出しが少ないと推測される。
なお、本発明の発光色素含有粒子は、油溶性色素と親水性樹脂とを組合わせることにより、色素含有量の多い粒子を作製することに成功し、その結果、粒子の密度が大きくなり、小粒径でありながらも、沈降しやすくなったと考えられる。また、本発明の発光色素含有粒子は、親水性樹脂中に油溶性色素が含有されているため、親水性樹脂と親水性色素とを組合わせた粒子に比べて、粒子表面の親水性は低く、適度な親疎水性を有するため、液中での粒子の凝集がさらに起こりにくくなったと推測される。
【0019】
また、本発明は励起光により比較的長時間照射された場合においても、輝度の変動が少ないことから、優れた耐光性を実現できるものと考えられる。
さらに、親水性樹脂は、生体組織との親和性が高いことから好ましい。特に、親水性有機樹脂と油溶性発光色素を使用すれば、親水性有機樹脂中に一度取り込まれた油溶性発光色素は、水中で水溶性樹脂と安定な相互作用を維持すると推察しており、より好ましいと考えている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の発光色素含有粒子は、親水性樹脂と油溶性発光色素とを含有する発光色素含有粒子であって、体積基準の累積粒度分布曲線から得られる粒径D50が、1~100nmの範囲内であり、下記要件(1)及び(2)を満たし、前記発光色素含有粒子の体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積10%及び累積90%の粒径をそれぞれ、D10及びD90、としたとき、下記式(3)で表されるスパン値が、1.50~2.20の範囲内であり、前記発光色素含有粒子の濃度1mg/mLの水分散液を、遠心力20000Gで20分間遠心分離をかけたときに、20℃における波長660nmの上澄み液の濁度が1%以下であることを特徴とする。
(1)前記発光色素含有粒子の水分散液(発光色素含有粒子1mg/mL)を遠心力20000Gで60分間遠心分離をかけた後に、0.05μmのフィルターでろ過した上澄み液の、20℃における前記油溶性発光色素の分光スペクトルにおける最大の極大吸収波長の吸光度が0.01以下である。
(2)前記発光色素含有粒子1mgをキシレン中1mLに分散させた分散液を遠心力20000Gで60分間遠心分離をかけた後に、0.05μmのフィルターでろ過した上澄み液の、20℃における前記油溶性発光色素の分光スペクトルにおける最大の極大吸収波長の吸光度が0.01以下である。
式(3)
スパン値=(D90-D10)/D50
この特徴は、下記各実施態様(形態)に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0021】
本発明の実施態様としては、前記発光色素含有粒子の体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積10%及び累積90%の粒径をそれぞれ、D10及びD90、としたとき、前記式(1)で表されるスパン値が、1.50~2.20の範囲内であり、前記発光色素含有粒子の濃度1mg/mLの水分散液を、遠心力20000Gで20分間遠心分離をかけたときに、20℃における波長660nmの上澄み液の濁度が1%以下であることで粒子の沈降性に優れる。沈降性が低いと細胞への染色に時間がかかり染色効率も悪くなる。
また、多岐にわたる染色形態において濃度消光の発生を抑制し、適切な輝度を確保するとの観点から、油溶性発光色素の含有量が、前記親水性樹脂を形成するモノマーと前記油溶性発光色素との総計に対して10~80mol%の範囲内であることが好ましい。
【0022】
また、油溶性発光色素のAlogP値が、10.0~60.0の範囲内であることは、粒子中に油溶性発光色素を多く含有させることに寄与し、かつ粒子の構成成分である親水性樹脂中において油溶性発光色素の分散性を高くできることから好ましい。
本発明の発光色素含有粒子は、病理診断用標識剤に好適に用いることができる。
【0023】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
なお、本発明では、「樹脂粒子」とは、親水性樹脂で構成される粒子をいう。
【0024】
《発光色素含有粒子の概要》
本発明の発光色素含有粒子は、親水性樹脂と油溶性発光色素とを含有する発光色素含有粒子であって、体積基準の累積粒度分布曲線から得られる粒径D50が、1~100nmの範囲内であり、下記要件(1)及び(2)を満たし、前記発光色素含有粒子の体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積10%及び累積90%の粒径をそれぞれ、D10及びD90、としたとき、下記式(3)で表されるスパン値が、1.50~2.20の範囲内であり、前記発光色素含有粒子の濃度1mg/mLの水分散液を、遠心力20000Gで20分間遠心分離をかけたときに、20℃における波長660nmの上澄み液の濁度が1%以下であることを特徴とする。
(1)前記発光色素含有粒子の水分散液(発光色素含有粒子1mg/mL)を遠心力20000Gで60分間遠心分離をかけた後に、0.05μmのフィルターでろ過した上澄み液の、20℃における前記油溶性発光色素の分光スペクトルにおける最大の極大吸収波長の吸光度が0.01以下である。
(2)前記発光色素含有粒子1mgをキシレン中1mLに分散させた分散液を遠心力20000Gで60分間遠心分離をかけた後に、0.05μmのフィルターでろ過した上澄み液の、20℃における前記油溶性発光色素の分光スペクトルにおける最大の極大吸収波長の吸光度が0.01以下である。
式(3)
スパン値=(D90-D10)/D50
【0025】
本発明の発光色素含有粒子は、油溶性色素と親水性樹脂という性質が異なるもの同士を組み合わせた粒子であることで、水及びキシレンへの色素溶出を抑えることができる。
発光色素含有粒子を構成する樹脂は、本発明の効果を損ねない範囲において、親水性樹脂以外の樹脂が含まれていてもよい。
【0026】
[水への油溶性発光色素の溶出]
本発明の発光色素含有粒子は、上述したように細胞染色時の水中への色素溶出を抑えることができる。具体的な試験方法は、上記要件(1)に記載したとおりである。
水分散液中を遠心分離した後にフィルターろ過した、上記した上澄み液には、発光色素含有粒子から水中に溶出した油溶性発光色素が含まれており、油溶性発光色素の分光スペクトルの最大吸収波長の吸光度を測定することにより、上澄み液中の溶出した油溶性発光色素量を定量できる。
【0027】
0.05μmのフィルターは、水溶媒中の発光色素含有粒子を除くために使用する。このフィルターとしては、タンパク質の吸着が抑えられるメンブレンフィルターが好ましい。例えば、メルクミリポア社製メンブレンフィルター(セルロース混合エステル)を用いることができる。
分光スペクトルは、例えば、分光光度計U-3900(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定することができる。
遠心分離機は、例えば、微量高速冷却遠心機MX-207(トミー精工社製)を用いることができる。
【0028】
[キシレンへの油溶性発光色素溶出]
本発明の発光色素含有粒子は、上述したように透徹時のキシレン中への色素溶出を抑えることができる。具体的な試験方法は、上記要件(2)に記載したとおりである。
キシレン中に発光色素含有粒子を分散させた液を遠心分離した後にフィルターろ過した上澄み液には、発光色素含有粒子からキシレン中に溶出した油溶性発光色素が含まれており、油溶性発光色素の分光スペクトルの最大吸収波長の吸光度を測定することにより、上澄み液中のキシレンへ溶出した油溶性発光色素量を定量できる。
0.05μmのフィルター、分光スペクトルの測定及び遠心分離機は水への油溶性発光色素溶出を測定する場合と同様に使用することができる。
【0029】
[粒径]
本発明の発光色素含有粒子は、体積基準の累積粒度分布曲線から得られる粒径D50が、1~100nmの範囲内である。このように小粒径の発光色素含有粒子を用いることにより、高精度で空間分解能が良い免疫染色をすることができる。
また体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積10%及び累積90%の粒径をそれぞれ、D10及びD90、としたとき、下記式(3)で表されるスパン値が、1.50~2.20の範囲内である。
式(3)
スパン値=(D90-D10)/D50
【0030】
スパン値が2.20より大きい場合には、前記発光色素含有粒子が水分散液中で凝集している可能性が高い。スパン値が1.50未満である場合には、親水性樹脂の重合度がたりないなど、粒子形成が不完全であることが考えられる。
本発明の発光色素含有粒子の粒径及び粒度分布を、堀場製作所製の粒度分布測定装置LA-950V2型を用いて測定することができる。累積粒度分布曲線において積算体積分率が、それぞれ累積10%、累積50%及び累積90%の粒径をそれぞれ、D10、D50及びD90として求めることができる。50%となる粒径を体積基準のメディアン径ともいう。
【0031】
[濁度]
さらに、前記発光色素含有粒子の濃度1mg/mLの水分散液を、遠心力20000Gで20分間遠心分離をかけたときに、20℃における波長660nmの上澄み液の濁度が1%以下である。
本発明の発光色素含有粒子は、微粒子でありながら沈降しやすいため、上澄み液の濁度を低くすることができる。
【0032】
濁度計は、既知の構成のものを使用でき、間欠的又は連続的に自動測定できるものであれば、特に形式は限定されないが、濁度計としては、積分球式、散乱光式、表面反射式等のものを挙げることができる。本発明における濁度は、積分球式電光度法を用いた濁度測定により、20℃において、波長660nm、光路長5mmで得られる数値であり、濁度測定器(型名「WA 2000N」、日本電色工業(株)社製)を用いて測定することができる。
上澄み液の濁度が1%より大きい場合には、粒子の沈降が不十分で水中に分散してしまっていることを表す。
【0033】
なお、本発明において、発光色素含有粒子とは、単数又は複数の油溶性発光色素分子が化学的又は物理的な作用により樹脂粒子に固定化された構造を有する物質を総称する用語であり、その形態は特に限定されるものではない。油溶性発光色素は、その全てが親水性樹脂と弱い相互作用で吸着していてもよく、またその一部が親水性樹脂と共有結合で結合していてもよい。粒子中の親水性樹脂と油溶性発光色素の存在状態としては、粒子全体で色素が親水性樹脂中に均一に分散していることが、濃度消光が生じにくいことから好ましい。
【0034】
(親水性樹脂)
本発明において、親水性樹脂とは、主鎖に炭素原子を含む数平均分子量が300以上の親水性樹脂を表す。本発明の親水性樹脂として、好ましくは、親水性の有機樹脂である。具体例としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ(N-ビニルホルムアミド)樹脂、ポリ(N-ビニルイソブチルアミド)樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)樹脂、ポリ(N-ビニルピロリジノン)樹脂、ポリヒドロキシエチルメタクリレート樹脂、ポリオキシエチレンメタクリレート樹脂、ポリエチレングリコールジメチルエーテル樹脂、ポリスチレンスルホン酸樹脂などが好ましい。
【0035】
本発明に係る親水性樹脂は、熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、キシレンのような有機溶媒を用いる透徹工程において油溶性発光色素が溶出しにくいという観点からは、緻密な架橋構造の内部に油溶性発光色素を固定化することができる、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する(のみからなる)親水性樹脂が好ましい。
【0036】
熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン、尿素、グアナミン類(ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどを含む)及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される構成単位を含むものが挙げられる。これらのモノマーは、いずれか一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。所望によりさらに、一種又は二種以上の上記化合物以外のコモノマーを併用してもよい。
熱硬化性樹脂の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。
【0037】
これらの熱硬化性樹脂の原料としては、上述したようなモノマーそのもののみならず、モノマーとホルムアルデヒドやその他の架橋剤等の化合物とをあらかじめ反応させて得られるプレポリマーを用いてもよい。例えば、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂の製造においては一般的に、メラミンとホルムアルデヒドとをアルカリ条件下で縮合して調製されるメチロールメラミンがプレポリマーとして用いられており、当該化合物はさらにアルキルエーテル化(水中での安定性を向上させるためのメチル化、有機溶媒中での溶解性を向上させるためのブチル化等)されたものであってもよい。
【0038】
また、上記の熱硬化性樹脂は、その構成単位に含まれる水素の少なくとも一部が、電荷を持つ置換基、又は共有結合を形成しうる置換基に置き換えられたものでもよい。このような熱硬化性樹脂は、公知の手法により少なくとも一つの水素が上記の置換基に置き換えられた(誘導体化された)モノマーを原料として用いることにより合成することができる。
【0039】
このような熱硬化性樹脂は、公知の手法に従って合成することができる。例えば、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂は、前述したようにしてあらかじめ調製されたメチロールメラミンを、必要に応じて酸等の反応促進剤を添加した上で加熱して重縮合させることにより合成することができる。
【0040】
一方、熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸及びそのアルキルエステル、アクリロニトリル、ならびにこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単官能モノマー(一分子中に重合反応に関与する基、上記の例ではビニル基を一個持つモノマー)から形成される構成単位を含むものが挙げられる。これらのモノマーは、いずれか一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。所望によりさらに、一種又は二種以上の上記化合物以外のコモノマーを併用してもよい。上記の熱可塑性樹脂は、例えばジビニルベンゼンのような多官能モノマー(1分子中に重合反応に関与する基、上記の例ではビニル基を2個以上持つモノマー)から形成される構成単位、つまり架橋部位を含んでいてもよい。例えば、ポリメタクリル酸メチルの架橋物が挙げられる。
【0041】
さらに、上記の熱可塑性樹脂は、本発明における発光色素含有粒子を表面修飾するための官能基を有する構成単位を含んでいてもよい。例えば、エポキシ基を有するメタクリル酸グリシジルのようなモノマーを原料とすることにより、エポキシ基が表面に配向した発光色素含有粒子を調製することができる。このエポキシ基は、過剰のアンモニア水と反応させることによりアミノ基に変換することができる。このようにして形成されるアミノ基には、公知の手法に従って(必要に応じてリンカーとなる分子を介して)、各種の生体分子を導入することができる。
【0042】
本発明において、発光色素含有粒子中の油溶性発光色素の含有量は、次に示す方法によって算出した。
(1)特定の温度下で、メタノール又はエタノール中でのモル吸光係数を測定する(値をεとする)。特定の温度は、メタノール又はエタノールにおいて油溶性発光色素の溶解度が最も高い又は比較的高い温度に設定する。なお、メタノール又はエタノールは、油溶性発光色素に対して溶解度の高い方を選択する。
(2)(1)と同じ温度下で発光色素含有粒子の水中での吸光度を測定し、発光色素含有粒子1gあたりの吸光度の値をAとする。なお、発光色素含有粒子は、表面に生体関連結合性物質等が修飾されており、又は親水性樹脂と油溶性発光色素以外の他の成分を含有するものであっても良い。
(3)(1)のεと(2)のAの値から、発光色素含有粒子1gあたりの油溶性発光色素のモル数C[mol]を算出する。
A/ε=粒子1gあたりの油溶性発光色素量C[mol]
(4)油溶性発光色素の分子量(Md)と(3)のC[mol]の値から、発光色素含有粒子1gあたりの発光色素量D[g]を算出する。
Md×C[mol]=D[g]/粒子1g
【0043】
(5)発光色素含有粒子1gから、発光色素含有粒子1gあたりの油溶性発光色素量D[g]を引いた質量E(=1-D[g])[g]を、親水性樹脂のモノマー単位の分子量(Mp)で除算し、その商を親水性樹脂のモル数Emとして算出する。
なお、親水性樹脂と油溶性発光色素以外にも他の成分が含有されている場合は、それぞれの成分について、当該成分の質量と分子量に基づいて当該成分のモル数を算出し、油溶性発光色素以外の各成分のモル数の総計を「色素以外の成分のモル数」として算出すれば良い。油溶性発光色素以外の各成分の質量を特定することができない場合は、油溶性発光色素以外の各成分の質量の総計を、親水性樹脂のモノマー単位の分子量(Mp)で除算し、その商を「色素以外の成分のモル数」と見なしても良い。
E[g]/Mp=Em[mol]
(6)発光色素含有粒子1gのモル数を算出し、それに対する油溶性発光色素の含有量(mol%)を算出する。
発光色素含有粒子1gのモル数=発光色素含有粒子1gあたりの親水性樹脂のモル数Em[mol]+発光色素含有粒子1gあたりの油溶性発光色素のモル数C[mol]
発光色素含有粒子中の油溶性発光色素の含有量(mol%)=C/(Em+C)×100
【0044】
なお、親水性樹脂と油溶性発光色素以外にも他の成分が含有されている場合は、「色素以外の成分のモル数」を発光色素含有粒子1gのモル数の代わりに使用し、「色素以外の成分のモル数」に対する油溶性発光色素の含有量(mol%)を算出すれば良い。また、発光色素含有粒子に複数種類の油溶性発光色素が含有されている場合は、それぞれの種類の油溶性発光色素について(1)~(3)を行い当該種類の油溶性発光色素のモル数を算出し、各種類の油溶性発光色素のモル数の総計と発光色素含有粒子1gのモル数又は「色素以外の成分のモル数」との比を、油溶性発光色素の含有量(mol%)として算出すれば良い。
【0045】
<油溶性発光色素>
本発明の発光色素含有粒子が含有する発光色素は、油溶性発光色素(以下単に「発光色素」ともいう。)である。油溶性とは広義には水に溶けにくく油に溶けやすいことをいうが、本発明における油溶性とは、室温(20℃)において以下に示す有機溶剤のうちいずれか1つにおいて1質量%以上溶解するものをいう。有機溶剤とは「溶剤ハンドブック」等に記載の有機溶剤を意味し、それらの例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルムなどを挙げることができる。また、本発明においては、特に、メタノール、クロロホルム又はテトラヒドロフランに3質量%以上溶解するものが好ましい
【0046】
本発明で用いる発光色素は、蛍光発光する色素でもリン光発光する色素でもどちらでもよい。発光色素として、例えば、ナフタレンイミド系色素分子、ペリレンイミド系色素分子、フルオレセイン系色素分子、ローダミン系色素分子、カスケード系色素分子、クマリン系色素分子、エオジン系色素分子、NBD系色素分子、ピレン系色素分子、Texas
Red系色素分子、シアニン系色素分子、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、芳香族炭化水素系色素、オキサジン系色素、カルボピロニン系色素、ピロメセン系色素、Alexa Fluor(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(登録商標、インビトロジェン社製)系色素分子、Cy(登録商標、GEヘルスケア社製)系色素分子、DY系色素分子(登録商標、DYOMICS社製)、HiLyte(登録商標、アナスペック社製)系色素分子、DyLight(登録商標、サーモサイエンティフィック社製)系色素分子、ATTO(登録商標、ATTO-TEC社製)系色素分子、MFP(登録商標、Mobitec社製)系色素分子等が挙げられる。
【0047】
具体的には、フルオレセイン、2′,7′ジクロロフルオレセイン、2′,7′ジフルオロフルオレセイン、5-カルボキシ-フルオレセイン、6-カルボキシ-フルオレセイン、5,6-ジカルボキシ-フルオレセイン、6-カルボキシ-24,4′,5′,7,7′-ヘキサクロロフルオレセイン、6-カルボキシ-2′,4,7,7′-テトラクロロフルオレセイン、6-カルボキシ-4′,5′-ジクロロ-2′,7′-ジメトキシフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、5-カルボキシ-ローダミン、6-カルボキシ-ローダミン、5,6-ジカルボキシ-ローダミン、ローダミン6G、テトラメチルローダミン、X-ローダミン、及びAlexa Fluor 350、Alexa Fluor
405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor
532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor
610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor
680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、BODIPY FL、BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、メトキシクマリン、エオジン、NBD、ピレン、Cy5、Cy5.5、Cy7等を挙げることができる。単独でも複数種を混合したものを用いてもよい。特に好ましい発光色素として、ナフタレンイミド系色素分子、ペリレンイミド系色素分子を挙げることができる。
【0048】
本発明に係る発光色素として、ナフタレンイミド系色素分子及びペリレンイミド系色素分子のイミド誘導体を挙げることができる。
これらの色素は、以下(A)及び(B)に示す立体障害を起こす、かさ高い置換基を導入することにより、色素含有量を増やしても濃度消光が抑制され、発光量子収率が向上するという特徴を有している。このため、本発明に好適に用いることができる。以下ペリレンイミド誘導体を例にして説明する。
【0049】
(A)N-フェニルイミド構造のフェニル基のオルト位に比較的大きな置換基Rを導入する。
イミドのカルボニル基とN-フェニルイミド構造のフェニル基のオルト位に比較的大きな置換基との立体障害によりフェニル基がペリレン環に対して垂直に配向するため、オルト位の置換基Rが効果的にπ平面を遮蔽することができる。
【0050】
(B)ペリレン環のベイエリアにオルト置換基Rを持つアリール基を導入する。
ペリレン環のベイエリアの立体的混み合いによりアリール基(この場合フェニル基)がペリレン環に対して垂直に配向するため、オルト位の置換基Rが効果的にπ平面を遮蔽することができる。
【0051】
以下、一般式(A1)又は一般式(B1)で表される構造を有する化合物について説明する。
[一般式(A1)で表される構造を有するイミド誘導体]
【0052】
【0053】
(式中、複数のR1は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が4~30の基を表す。ベンゼン環又はナフタレン環にさらに置換基を有してもよく、*は、ベンゼン環又はナフタレン環に有しても良い置換基の位置を表す。)
【0054】
イミドの窒素原子に置換したフェニル基のオルト位にかさ高い(炭素数4以上)の置換基があることでπ平面(ここではナフタレン環)を遮蔽し、高い発光量子収率を示すことができる。
*に示した位置に有しても良い置換基としては、特に制限されない。
具体的には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基アリール基(例えば、フェニル基、p-クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基等)、ピラゾロトリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2-ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2-ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2-ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジタートブチル基、シクロヘキシルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。
【0055】
また、これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。さらに、これらの置換基同士が結合して環を形成してもよい。隣接する置換基同士が形成する環状構造は、芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。
好ましくは、*の位置には置換基を有しないか、又は置換基がアルキル基、ハロゲン原子シアノ基、二つカルボン酸が縮合したカルボン酸無水物、若しくは基置換基同士が結合した縮合環である。
【0056】
R1は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が4~30の基を表す。
R1で示される置換基は、具体的には、*が有してもよい上記の置換基の中から選ぶことができるが、少なくとも一つは、炭素数が4~30の基である。炭素数が4~30の基であることによって、イミドのカルボニル基とR1との立体障害により窒素原子に置換したフェニル基がナフタレン環に対して垂直に配向するため、オルト位の置換基R1が効果的にπ平面を遮蔽することができる。また、R1は、炭素鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有することが好ましい。より好ましくは、炭素鎖中に酸素原子を有することである。炭素鎖中に酸素原子又は硫黄原子を有するにより、より柔軟な構造となり、R1によるπ平面の遮蔽効果を高めることができる。
【0057】
R1は好ましくは、アルキル基(例えば、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、3-エチルペンチル等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルエチル等)、アルケニル基(例えば、プロぺニル基、ヘキセニル基等)、アルキニル基(例えば、プロピニル基、ヘキシニル基、フェニルエチニル等)、アリール基(例えば、フェニル基、p-クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ベンゾオキサゾリル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、2-エチルブチルオキシ等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、ジエチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2-ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2-ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2-ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基等)フッ化炭化水素基(例えば、デカフルオロブチル基、ペンタフルオロフェニル基等)シリル基(例えば、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)である。
【0058】
R1は嵩高い基であることがより好ましく、アリール基、ヘテロアリール基、2級以上の炭素が含まれるアルキル基(例えば2級炭素:イソブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、コレステリル基、3級炭素:tert-ブチル基、アダマンチル基、[2,2,2]ビシクロオクチル基等)、3級アミノ基(例えば、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等)、3級シリル基(例えば、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)などが挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基の末端にこのようなかさ高い基を有することもできる。
【0059】
[一般式(A2-1)~一般式(A2-6)で表される構造を有するイミド誘導体]
一般式(A1)で表される構造を有するイミド誘導体が、下記一般式(A2-1)~一般式(A2-6)で表される構造を有することが好ましい。
【0060】
【0061】
(式中、複数のR1は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が4~30の基を表す。R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。
【0062】
[一般式(A3)で表される構造を有するイミド誘導体]
一般式(A2-2)で表される構造を有するイミド誘導体が、下記一般式(A3)で表される構造を有することが好ましい。
【0063】
【0064】
(式中、複数のR1は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が4~30の基を表す。複数のR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。)
ペリレンビスイミド誘導体は、高い発光量子収率を示すだけでなく、高い耐光性を示すため望ましい。
【0065】
R5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、一般式(A2)で示したR5と同義である。
R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、一般式(A2)で示したR6と同義である。
【0066】
[一般式(A4)で表される構造を有するイミド誘導体]
一般式(A3)で表される構造を有するイミド誘導体が、下記一般式(A4)で表される構造を有することが好ましい。
【0067】
【0068】
(式中、複数のR1は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が4~30の基を表す。)
ベイエリアがフェノキシ基の場合、溶解性の向上及び波長の長波長化できることから蛍光色素として望ましい。
R1は、それぞれ独立に、水素原子置換基を表し、少なくとも一つは炭素数が4~30の基を表し、炭素鎖中に酸素原子を有していてもよく、一般式(A1)で示したR1と同義である。
【0069】
[一般式(B1)で表される構造を有するイミド誘導体]
本発明のイミド誘導体は、一般式(B1)で表される構造を有することが好ましい。
【0070】
【0071】
(式中、R2は、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数のR3は、それぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(B2)で表される構造を有する基を表し、少なくとも1つが、下記一般式(B2)で表される構造を有する基を表す。ナフタレン環にさらに置換基を有してもよく、*は、ナフタレン環に有しても良い置換基の位置を表す。)
【0072】
【0073】
(式中、Arは、アリール環又はヘテロアリール環を表す。R4はフェニル基以外の置換基を表す。一般式(B2)で表される基を二つ以上有する場合は、二つのR4同士が互いに連結していてもよい。Lは、単結合、酸素原子、硫黄原子又は-NR′-を表す。R′は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0074】
Arで表したアリール環又はヘテロアリール環のオルト置換基R4がペリレン環に向かって配向し、効果的にπ平面を遮蔽するため高い量子収率を示すことができる。
Arは、置換基を有しても良いアリール環又はヘテロアリール環を表し、アリール環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ナフタセン環及びピレン環等を挙げることができる。
ヘテロアリール環としては、ピリジン環、ピリミジン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、ピラジン環、トリアゾール環、ピラゾロトリアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、インドール環、キノキサリン環、トリアジン環等を挙げることができる。
Arは、アリール環を表すことが好ましい。
【0075】
R4はフェニル基以外の置換基を表し、一般式(A1)において、*が有してもよい置換基からフェニル基以外の基を選択することができる。
R′で表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、一般式(A1)において、*が有してもよい置換基として挙げたアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基と同義である。
【0076】
R4は、好ましくはアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ネオペンチル基)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基)、フェニル基を除くアリール基(例えばナフチル基、アントリル基)、ヘテロアリール基(例えばピリジル基、カルバゾリル基)、アルケニル基(例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基)、アルキニル基(例えばプロピニル基、ヘキシニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基)、シリル基(例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基)、アルコキシ基(メトキシ基、tert-ブチルオキシ基)又はアリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基)である。
【0077】
[一般式(B3-1)~一般式(B3-4)で表される構造を有するイミド誘導体]
一般式(B1)で表される構造を有するイミド誘導体が、下記一般式(B3-1)~一般式(B3-4)で表される構造を有することが好ましい。
【0078】
【0079】
(式中、R2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。複数のR3は、それぞれ独立に、水素原子又は前記一般式(B2)で表される構造を有する基を表し、少なくとも1つが、前記一般式(B2)で表される構造を有する基を表す。R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。)
【0080】
R2及びR3は、一般式(B1)におけるR2及びR3と同義である。
R8及びR9で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、一般式(A1)において、*が有してもよい置換基として挙げたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基と同義である。
【0081】
[一般式(B4)で表される構造を有するイミド誘導体]
前記一般式(B3-1)で表される構造を有するイミド誘導体が、下記一般式(B4)で表される構造を有することが好ましい。
【0082】
【0083】
(式中、複数のR2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。R4はフェニル基以外の置換基を表す。R4同士が互いに連結していてもよい。R11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。)
ベイエリア4カ所全てがフェノキシ基の場合、置換基R4が、それぞれペリレン環の上下に配向し、遮蔽効果が高まるため望ましい。
R2及びR4は、それぞれ一般式(B1)におけるR2及びR4と同義である。
【0084】
更に、前記一般式(B4)において、R4のいずれか2つがペリレン上を横断し連結していることが望ましい。連結することによりペリレン環同士の相互作用を効果的に阻害し、より高い発光量子収率を示す。
【0085】
さらに、本発明の発光色素として、好ましくは、AlogP値が10.0~60.0の範囲内である発光色素含有粒子色素であり、より好ましくは、15.5~45.0の範囲内である。
【0086】
AlogP値とは、Ghose-Crippen-Viswanadhan octanol-water partition coefficientのことであり、logP値の予想値である。logP値とは、化合物の疎水性を規定する無次元数の指標であり、一般的に、n-オクタノールと水を用いたオクタノール/水の分配係数で表される。値が大きいほど疎水性が高い。本明細書のAlogP値は、非特許文献(Ghose, Arup K.,Vellarkad N.Viswanadhan,and John
J.Wendoloski,The Journal of Physical Chemistry A 1998,102,3762.)に記載の手法を用いて、Schrodinger社の計算ソフトCANVASを使って計算した。
【0087】
AlogP値が10.0以上であると、色素が親水的ではなくなり、樹脂に一旦導入された色素が水中に漏れ出しにくくなることから、発光色素含有粒子の色素含有量が減少しにくく、蛍光発光輝度を維持しやすい。一方、AlogP値が60.0以下であると、色素の疎水性が高すぎることがないため、溶解する有機溶媒の種類を適度に確保でき、また色素を含有する親水性樹脂との混合が適度に可能となるため、粒子中に取り込まれなくなる恐れが小さくなる。
【0088】
本発明の発光色素は、自由体積率が10~70%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、15~60%の範囲内である。自由体積率とは、一定温度・圧力下で、分子自身がもつ単位質量当たりの体積から、その分子の占有している体積を差し引いた残りの体積の比率を表す。自由体積が10~70%の範囲内にある場合には、発光色素が粒子中で凝集しにくいために濃度消光が起こりにくい。本明細書の自由体積率は、Schrodinger社のMaterials Science(Suite)を使って、単位体積に対して、分子が占める占有体積を自由体積率として計算した。
【0089】
また、発光色素の発光波長は用途に応じて所望のものを選択することができる。例えば、病理診断において、エオジン等を用いた形態観察用の染色と同時に発光色素を用いた免疫染色を行う用途が想定される場合は、発光色素からの発光を目視で観察することができ、かつ蛍光を発するエオジンの発光波長と被らないよう、発光色素の発光波長は赤~近赤外とすることが好適である。例えば、励起極大波長が555~620nm、発光極大波長が580~770nmの範囲にある発光色素が好ましい。
【0090】
(例示化合物)
本発明において用いることのできる発光色素の具体例は次のとおりであるが、本発明はこれらの発光色素を用いる実施形態に限定されるものではない。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
本発明の発光色素粒子は、親水性樹脂と発光色素が弱い相互作用で吸着していてもよく、親水性樹脂と発光色素が共有結合で結合していてもよい。
本発明においては、色素どうしの分子内相互作用よりも親水性樹脂と色素の相互作用が強いほうが好ましい。
粒子中の親水性樹脂と色素の存在状態としては、粒子全体で色素が親水性樹脂中に均一に分散していることが好ましい。色素が局在化すると濃度消光が生じやすい。
【0105】
<発光色素含有粒子の製造方法>
本発明の発光色素含有粒子は、発光色素として特定の条件を満たすものを用いた上で、各種の親水性樹脂について公知の重合工程(1)に準じて製造することができる。また、そのような方法により得られた発光色素含有粒子は、さらに修飾工程(2)により、生体関連結合性物質を連結させてもよい。
【0106】
熱硬化性樹脂を用いた発光色素含有粒子は、基本的に乳化重合法に従って製造することができるが、界面活性剤及び重合反応促進剤を用いる次のような重合工程により製造することが好ましい。なお、このような製造方法により得られる発光色素含有粒子において、発光色素の大部分が、望ましくは実質的に全てが樹脂粒子に含有された状態で固定化されるが、一部の発光色素が樹脂粒子の表面に結合又は付着した状態で固定化されることが排除されるものではない。また、発光色素が含有された状態において、どのような化学的又は物理的な作用で発光色素が樹脂粒子に固定化されているかは限定されるものではない。本発明では、重合工程に先立って、樹脂原料と発光色素とをあらかじめ共有結合させたり、樹脂原料に積極的に荷電した置換基を導入したりするための誘導体化工程を設ける必要はない(そのような工程を用いなくても、発光強度や耐光性に優れた発光色素含有粒子が得られる)が、所望によりそのような工程を併用することも排除されるものではない。
【0107】
(1)重合工程
重合工程は、発光色素、樹脂原料(モノマー、オリゴマー又はプレポリマー)、好ましくはさらに界面活性剤及び重合反応促進剤を含有する反応混合物を加熱して樹脂の重合反応を進行させ、発光色素を含有する樹脂粒子を生成させる工程である。
【0108】
反応混合物に含まれる各成分の添加順序は特に限定されるものではない。典型的には、発光色素の溶液に界面活性剤を添加し、続いて樹脂原料を添加し、最後に重合反応促進剤を添加するという順序が用いられる。あるいは、界面活性剤の水溶液に樹脂原料を添加し、続いて重合反応促進剤を添加して樹脂粒子の合成反応を進行させながら、発光色素の溶液を添加するという順序であってもよい。なお、このような重合工程に用いられる、本発明による特定の発光色素の溶液の濃度は、従来の発光色素の溶液の濃度よりも比較的高めの範囲(例えば250~450μM)で調節することができる。
重合反応の条件(温度、時間等)は、樹脂の種類、原料混合物の組成などを考慮しながら適切に設定することができる。
【0109】
重合方法としては、公知の重合方法であれば特に限定されるものではない。公知の重合法としては、例えば塊状重合、乳化重合、ソープフリー乳化重合、シード重合、懸濁重合等の方法が挙げられる。塊状重合の場合は、粉砕後、分級することで所望の粒径の樹脂粒子を得ることができる。乳化重合とは、水等の媒体と、媒体に溶解し難いモノマーと乳化剤(界面活性剤)を混合し、そこに媒体に溶解可能な重合開始剤を加えて行う重合法である。得られる粒子径のバラツキが少ないという特徴がある。ソープフリー乳化重合とは、乳化剤を用いない乳化重合である。均一径の粒子が得られるという特徴がある。シード重合とは、重合開始の際に別途で作られた種(シード)粒子を入れて行われる重合である。種粒子として粒子径と粒子径分布、量(個数)を任意に定めて重合することになり、所望の粒子径と粒子径分布を狙って重合できるという特徴がある。懸濁重合とは、モノマーと溶媒の水とを機械的に攪拌して、懸濁させて行う重合方法である。粒子径が小さくかつ整った粒子を得られることが特徴である。
【0110】
具体例としてメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の合成を挙げると、反応温度は通常70~200℃、反応時間は通常20~120分間である。なお、反応温度は発光色素の性能が低下しない温度(耐熱温度範囲内)とすることが適切である。加熱は複数の段階に分けて行ってもよく、例えば、相対的に低温で一定時間反応させた後、昇温して相対的に降温で一定時間反応させるようにしてもよい。
【0111】
重合反応の終了後は、反応液から余剰の樹脂原料、発光色素、界面活性剤等の不純物を除去し、生成した発光色素含有粒子を回収して精製すればよい。例えば、反応液を遠心分離にかけ、不純物が含まれている上澄みを除去した後、超純水を加えて超音波照射して再度分散させて洗浄する。これらの操作は、上澄みに樹脂や発光色素に由来する吸光、蛍光が見られなくなるまで複数回繰り返し行うことが好ましい。
【0112】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、公知の乳化重合用乳化剤を用いることができる。界面活性剤には、アニオン系(陰イオン系)、ノニオン系(非イオン系)、カチオン系(陽イオン系)のものがある。正に荷電した置換基又は部位を有する(カチオン系の)熱硬化性樹脂を合成する場合は、アニオン系又はノニオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。逆に負に荷電した置換基又は部位を有する(アニオン系の)熱硬化性樹脂を合成する場合は、カチオン系又はノニオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。
【0113】
アニオン系の界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(製品名「ネオペレックス」シリーズ、花王株式会社製)が挙げられる。ノニオン系の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系(製品名「エマルゲン」シリーズ、花王株式会社製)の化合物、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)が挙げられる。カチオン系の界面活性剤としては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられる。
【0114】
界面活性剤の添加量を調節することにより、樹脂粒子の粒子径を調節することができるとともに、その粒子径の変動係数が小さい、つまり粒子サイズの揃った発光色素含有粒子を製造することができる。界面活性剤の添加量は、例えば、樹脂原料に対して10~60質量%の割合、あるいは原料混合物全体に対して0.1~3.0質量%である。界面活性剤の添加量を増やすと粒径が小さくなる傾向にあり、逆に界面活性剤の添加量を減らすと粒径が大きくなる傾向にある。
【0115】
(重合反応促進剤)
重合反応促進剤は、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂の重縮合反応を促進するとともに、当該樹脂又は発光色素に含まれるアミノ基のような官能基にプロトン(H+)を付与して荷電させ、静電的相互作用を起こしやすくする機能を有する。熱硬化性樹脂の反応は加温のみでも進行するが、重合反応促進剤を加えるとより低温で進行するので、反応や性能を制御できる範囲で添加することができる。このような重合反応促進剤としては、例えば、ギ酸、酢酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの酸が挙げられる。なお、発光色素がカルボキシ基やスルホ基を有する化合物である場合、当該発光色素も上記の酸と同様にプロトンを供与することもできる。
【0116】
(2)修飾工程
必要に応じて行われる修飾工程は、発光色素含有粒子の用途に応じて、発光色素含有粒子の表面に生体関連結合性物質などを連結するための工程である。
【0117】
本発明の属する技術分野においては、蛍光標識体と生体関連結合性物質などとを連結するための様々な手法が知られており、本発明においてもそのような手法を利用することができる。
【0118】
例えば、カルボキシ基、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、マレイミド基等の反応性官能基同士の間で起きる反応を利用して、蛍光標識体(その表面に存在する一方の反応性官能基)と生体関連結合性物質(その分子中に存在するもう一方の反応性官能基)とを結合させることができる。また、これらが有する官能基同士を直接的に結合することができない場合は、分子の両末端にそれぞれ所定の官能基を有する「リンカー分子」を介して結合させることもできる。このような反応は、必要な試薬類を添加して所定の時間経過させることにより行うことができる。
【0119】
具体例としては、表面にヒドロキシ基を有する発光色素含有粒子にシランカップリング剤(例えばアミノプロピルトリメトキシシラン)を反応させてアミノ基を導入し、一方でストレプトアビジンにチオール基導入試薬(例えばN-スクシミジルSアセチルチオ酢酸)を反応させてチオール基を導入し、最後に、アミノ基とチオール基の両方と反応性を有するマレイミド基を両端に有するPEG(ポリエチレングリコール)系のリンカー分子を反応させて、発光色素含有粒子とストレプトアビジンとを連結させる方法が挙げられる。
【0120】
また、例えばグリシジルメタクリレートを原料モノマーとして用いて樹脂(アクリル系樹脂)を合成した場合、発光色素含有粒子の表面には当該モノマーに由来するエポキシ基が表れている。この発光色素含有粒子にアンモニア水を添加することにより、そのエポキシ基をアミノ基に変換し、さらにそのアミノ基に所望の生体関連結合性物質などを連結させることができる。
【0121】
<発光色素含有粒子の用途>
[病理診断用標識剤]
本発明の病理診断用標識剤は、本発明の発光色素含有粒子を用いることを特徴とする。
本発明の発光色素含有粒子の用途は特に限定されるものではないが、典型的には、試料(組織切片)に含まれる検出対象物質(以下、目的物質ともいう。)を標識し、免疫染色において蛍光観察できるようにするための、病理診断用標識剤としての用途が挙げられる。すなわち、上述したような本発明の発光色素含有粒子は、免疫染色の実施形態に応じた生体関連結合性物質を連結させて、複合体(コンジュゲート)として使用することが好適である。また、本発明の病理診断用標識剤は、培養サンプルに用いることも可能である。
【0122】
検出対象物質は特に限定されるものではないが、病理診断においては一般的に、その目的に応じた抗原などのバイオマーカーが選択される。例えば、乳癌に関する病理診断においてはHER2を検出対象物質とすることができる。その他にも、ペプチド等のタンパク質より小さな単位や、RNAなどのバイオマーカーを検出対象物質とすることができる。また、検出対象物質は、試料に存在するものであれば、生体固有のものでなくても良い。例えば、検出対象物質は、体外から生体内に導入された薬剤であっても良い。
【0123】
生体関連結合性物質は、検出対象物質を特異的に認識可能なものであれば特に限定されるものではないが、第一の例として、検出対象物質と特異的に結合する抗体(一次抗体)が挙げられる。発光色素含有粒子と一次抗体とからなる複合体は、検出対象物質に直接結合して蛍光標識することができる(一次抗体法)。
【0124】
また、生体関連結合性物質は、検出対象物質を特異的に認識可能なものを特異的に認識可能なものであっても良い。例えば、生体関連結合性物質の第二の例として、検出対象物質と特異的に結合する抗体(一次抗体)に結合する抗体(二次抗体)が挙げられる。例えば、一次抗体がウサギから産生した抗体(IgG)である場合、二次抗体は抗ウサギIgG抗体となる。検出対象物質に結合している一次抗体に、発光色素含有粒子と二次抗体とからなる複合体が結合することにより、検出対象物質を間接的に蛍光標識することができる(二次抗体法)。
【0125】
また、生体関連結合性物質は、検出対象物質を特異的に認識可能なものに複合体化された物質を特異的に認識可能なものであり、又は検出対象物質を特異的に認識可能なものを特異的に認識可能なものに複合体化された物質を、特異的に認識可能なものであっても良い。例えば、生体関連結合性物質の第三の例として、アビジン、ストレプトアビジン又はビオチンが挙げられる。この場合、二次抗体は、発光色素含有粒子と複合体化している物質と結合しうる物質と複合体化される。例えば、発光色素含有粒子とアビジン又はストレプトアビジンとの複合体を用いる場合は、二次抗体とビオチンとの複合体が組み合わされて用いられる。検出対象物質に結合している一次抗体に、二次抗体とビオチンとの複合体が結合し、当該複合体にさらに発光色素含有粒子とアビジン又はストレプトアビジンとからなる複合体が結合することにより、検出対象物質を間接的に蛍光標識することができる(ビオチン-アビジン法又はサンドイッチ法)。これとは逆に、発光色素含有粒子とビオチンとの複合体を、二次抗体とアビジン又はストレプトアビジンとの複合体と組み合わせて用いることもできる。
【0126】
一次抗体は、選択された検出対象物質に応じて、それと特異的に結合するものを選択すればよい。例えば、検出対象物質がHER2である場合、一次抗体としては抗HER2モノクローナル抗体を用いることができる。このような一次抗体(モノクローナル抗体)は、マウス、ウサギ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、チキンなどを免疫動物とする一般的な手法により産生することができる。
【0127】
二次抗体は、選択された一次抗体に応じて、それと結合するものを選択すればよい。例えば、一次抗体がウサギ抗HER2モノクローナル抗体である場合、二次抗体としては抗ウサギIgG抗体を用いることができる。このような二次抗体も一般的な手法により産生することができる。
その他にも、検出対象物質を核酸分子とし、それに対応する生体関連結合性物質として、当該核酸分子と相補的な塩基配列を有する核酸分子を用いることも可能である。
【0128】
発光色素含有粒子に生体関連結合性物質が連結した複合体は、公知のいかなる手法によって作製されたものであってもよい。例えば、アミンとカルボン酸の反応によるアミド化、マレイミドとチオールの反応によるスルフィド化、アルデヒドとアミンの反応によるイミン化、エポキシとアミンの反応によるアミノ化を利用することができる。このような反応に関与する官能基は、樹脂粒子の表面にあらかじめ存在するもの(樹脂の原料モノマーに由来する官能基)であってもよいし、樹脂粒子の表面に存在する官能基を公知の手法に従って変換した官能基や、表面修飾等により導入された官能基であってもよい。必要に応じて適切なリンカー分子を利用してもよい。
【0129】
したがって、本発明の別の側面において、本発明の発光色素含有粒子を使用した組織免疫染色用キットが提供される。このキットは少なくとも、本発明の発光色素含有粒子、発光色素含有粒子に生体関連結合性物質が連結された複合体、又は当該複合体を調製するための発光色素含有粒子、生体関連結合性物質及び試薬類を含む。このキットはさらに、必要に応じて、一次抗体、二次抗体、前記生体関連結合性物質(例えばストレプトアビジン)と組み合わせて用いられる他の生体関連結合性物質(例えばビオチン)、所望の複合体を形成するための試薬類、その他の免疫組織染色に用いられる試薬類などを含んでいてもよい。
【0130】
(目的物質検出方法)
本発明の発光色素含有粒子を用いた蛍光標識剤は、例えば、情報性を高めるために免疫染色と形態観察染色を併用する生体物質検出方法、より具体的には、(1)蛍光標識体を用いて組織切片を免疫染色する工程(免疫染色工程)と、(2)形態観察用の染色剤を用いて組織切片を形態観察染色する工程(形態観察染色工程)と、(3)染色後の組織切片を蛍光観察する工程(蛍光観察工程)、とを含む生体物質検出方法において使用することができる。なお、(1)の免疫染色工程及び(2)の形態観察染色工程はどちらを先におこなってもよい。
【0131】
通常、上記の生体物質検出方法の工程(1)に先だって、常法に従って、組織切片の脱パラフィン処理、及び抗原の賦活化処理が行われる。
免疫染色工程(1)は、前述したような蛍光標識剤(発光色素含有粒子及び生体関連結合性物質の複合体)の形態に応じて、検出対象物質を適切に標識することができるよう、必要な物質を順次組織切片に添加して反応させればよい。
【0132】
形態観察染色工程(2)は、常法に従って行うことができる。組織標本の形態観察に関しては、細胞質・間質・各種線維・赤血球・角化細胞が赤~濃赤色に染色される、エオジンを用いた染色が標準的に用いられている。また、細胞核・石灰部・軟骨組織・細菌・粘液が青藍色~淡青色に染色される、ヘマトキシリンを用いた染色も標準的に用いられている(これら2つの染色を同時に行う方法はヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)として知られている)。
通常、工程(1)及び(2)の後、工程(3)の前に、エタノールに浸漬する脱水処理、キシレン等の有機溶媒に浸漬する透徹処理、封入剤を用いる封入処理などが行われる。
【0133】
蛍光観察工程(3)では、上記工程により免疫染色及び形態観察染色が施された組織切片に、用いられている発光色素に応じた適切な波長を有する励起光を照射することにより、その蛍光標識体が発する蛍光を観察する。このような工程により、その組織切片内に存在する抗原等の所定の生体分子を検出することができ、分子標的薬(例えばヒト化抗HER2モノクローナル抗体である抗体医薬「ハーセプチン」(商標))の適用の適否を判定するための情報として利用することができる。
【0134】
励起光の照射には、一般的な蛍光観察と同様の照射手段を用いればよく、例えば、蛍光顕微鏡が備えるレーザ光源から、必要に応じて所定の波長を選択的に透過させるフィルターを用いて、適切な波長及び出力の励起光を染色された組織切片に照射すればよい。蛍光観察は、蛍光顕微鏡の鏡筒から行ってもよいし、蛍光顕微鏡に設置されたカメラが撮影した画像を別途表示手段(モニタ等)に表示して行ってもよい。発光色素によるが、蛍光顕微鏡の鏡筒からの目視によっては十分に蛍光を観察することができない場合であっても、カメラによる画像の撮影を通じて蛍光を観察することが可能な場合もある。必要に応じて所定の波長を選択的に透過させるフィルターを用いてもよい。
【0135】
なお、本発明においては同一の組織切片に対して免疫染色及び形態観察染色の両方が施されているが、形態観察染色による像を観察する際には、免疫染色用の発光色素を励起させるための励起光を照射する必要はなく、光学顕微鏡と同様の観察条件下で観察すればよい。
【0136】
本発明の発光色素含有粒子によるHER2タンパク質検出感度の信頼性については、FISH(Fluorescence in situ hybridization)法によるFISHスコアと相関をとることで検証することができる。FISH法は、蛍光物質をつけたプローブを目的の遺伝子とハイブリダイゼーションさせて蛍光顕微鏡で観察する実験法であり、HER2タンパク質検出方法として一般的に知られている。本発明の発光色素含有粒子を用いて得られるHER2タンパク質に対する発光色素含有粒子数とFISHスコアと相関値が高い方が、検出感度に信頼性が高いことを示している。
【実施例】
【0137】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0138】
[発光色素含有粒子の作製]
比較例に用いた化合物A~Cの構造を以下に示す。
【化22】
【0139】
[実施例の発光色素含有粒子の作製]
<発光色素含有粒子No.1~37の作製>
各実施例の発光色素含有粒子No.1~37を、下記表に示す所定の条件に従って作製した。
発光色素(表I及びIIに記載の種類)50μmolを、表I及びIIに記載の溶解溶媒0.2mLに溶解した溶液に、界面活性剤(表I及びIIに記載の種類)を0.5vol%になるように水20mLを加えた。この溶液をホットスターラー上で撹拌しながら、表1に記載の溶解温度まで昇温させたのちに、樹脂(表I及びIIに記載の種類と量)を加えた。
【0140】
溶液に、添加剤(表I及びIIに記載の種類と量)を加え、発光色素含有粒子を作製した。得られた分散液を遠心分離にかけて(20000Gで90分間)粒子を回収し、超純水で洗浄して精製した。
遠心分離後の上澄み除去及び超純水への再分散による処理を5回繰り返した。
【0141】
洗浄後の樹脂粒子0.1mgをエタノール1.5mL中に分散し、アミノプロピルトリメトキシシラン「LS-3150」(信越化学工業株式会社製)2μLを加えて8時間、撹拌しながら室温で反応させて表面アミノ化処理を行った。表面がアミノ化された樹脂粒子の濃度を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整し、この溶液にリンカー試薬「SM(PEG)12」(サーモサイエンティフィック社製、cat.No.22112)を最終濃度10mMとなるよう添加、混合して、撹拌しながら室温で1時間反応させた。反応液を10000Gで20分間の遠心分離にかけ、上澄みを除去した後、EDTAを2mM含有したPBSを加えて沈降物を分散させ、同一条件で再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、末端にマレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された樹脂粒子を得た。
【0142】
チオール基を導入したストレプトアビジンは以下のようにして作製した。まず、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業株式会社製)の水溶液40μLに、64mg/mLに調整したN-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA、pirce社製)の水溶液70μLを加え、室温で1時間より反応させることにより、ストレプトアビジンのアミノ基に対して保護されたチオール基(-NH-CO-CH2-S-CO-CH3)を導入した。続いて、ヒドロキシルアミン処理により、保護されたチオール基から遊離のチオール基(-SH)を生成させて、ストレプトアビジンにチオール基(-SH)を導入する処理を完了させた。この溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)に通して脱塩し、チオール基を導入したストレプトアビジンを得た。
【0143】
調製した末端に、マレイミド基を有するPEG鎖で表面修飾された発光色素含有メラミン粒子と、調製したチオール基を導入したストレプトアビジンとを、EDTAを2mM含有するPBS中で混合し、1時間反応させることで、樹脂粒子にPEG鎖を介してストレプトアビジンを結合させた。この反応液に10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応物を除去し、ストレプトアビジン修飾発光色素含有メラミン樹脂粒子を得た。
【0144】
[比較例の発光色素含有粒子の作製]
<発光色素含有粒子No.38~46の作製>
上記発光色素含有粒子No.1~37と同様の方法で、表I及びIIに記載の、発光色素、溶解溶媒、溶解温度、界面活性剤の種類、及び樹脂と添加剤のそれぞれ種類と量に変えて作製した。
【0145】
<発光色素含有粒子No.47及び48の作製>
比較例の発光色素含有粒子No.47及び48を、下記表に示す所定の条件に従って作製した。
発光色素(表IIに記載の種類と量)と3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM903)3mLを溶解溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の中で混合し、オルガノアルコキシシラン化合物を得た。
【0146】
得られたオルガノアルコキシシラン化合物0.6mLを、99%エタノール48mL、テトラエトキシシラン(TEOS)0.6mL、超純水2mL、及び28質量%のアンモニア水2.0mLと5℃で3時間混合した。
【0147】
上記工程で作製した混合液を10000Gで20分間遠心分離し、上澄みを除去した。この沈殿に対して、エタノールを加えて、沈殿物を分散させ、再度遠心分離をするリンスを行った。さらに同様のリンスを2回繰り返し、発光色素含有シリカ粒子を得た。
【0148】
得られた発光色素含有シリカ粒子を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有してPBSを用いて3nMに調整し、この溶液に最終濃度10mMとなるようにSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、スクシンイミジル-[(N-マレイミドプロピオンアミド)-ドデカンエチレングリコール]エステル)を混合し、5℃で1時間反応させた。
【0149】
この混合液を、10000Gで20分遠心分離を行い、上澄みを除去した後に、EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行うことで、末端にマレイミド基がついた発光色素含有シリカ粒子を得た。
【0150】
発光色素含有シリカ粒子に結合可能なストレプトアビジンを以下のように調製した。
まず、1mg/mLに調整したストレプトアビジン(和光純薬工業社製)40μLを210μLのボレートバッファーに加えた後、64mg/mLに調整した2-イミノチオラン塩酸塩(シグマアルドリッチ社製)70μLを加え、室温で1時間反応させた。これにより、ストレプトアビジンのアミノ基に対してチオール基(-NH-C(=NH2+Cl-)-CH2-CH2-CH2-SH)を導入した。
【0151】
このストレプトアビジン溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columns:フナコシ)により脱塩し、上記シリカ粒子に結合可能なストレプトアビジンを得た。このストレプトアビジン全量(0.04mg含有)とEDTAを2mM含有したPBSを用いて上記0.67nMに調整したシリカ粒子740μLとを混合し、室温で1時間反応させた。
【0152】
10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルタで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムを用いて未反応ストレプトアビジン等を除去し、ストレプトアビジン修飾発光色素含有シリカ粒子を得た。なお、表IIでは、樹脂の欄にシリカ粒子を用いたことを示した。
【0153】
(粒径の測定)
上記作製した各発光色素含有粒子の体積基準の累積粒度分布曲線から得られる粒径(D
10、D50、D90)を堀場製作所製の粒度分布測定装置LA-950V2型を用いて測定した。また、下記式(3)で表されるスパン値を求めた。
【0154】
式(3)
スパン値=(D90-D10)/D50
以上作成した発光色素含有粒子1~48の一覧を表I及びIIに示す。なお以下の表で「体積基準の累積粒度分布曲線から得られる粒径D50」は、「体積基準の粒径D50」と略記した。
【0155】
【0156】
【0157】
上記作製した発光色素含有粒子のそれぞれについて、以下の測定を行った。
(水分散液の上澄み液の最大吸収波長の吸光度)
前述した装置を用い、それぞれ発光色素含有粒子の水分散液(発光色素含有粒子1mg/mL)を遠心力20000Gで60分間遠心分離をかけた後に、0.05μmのフィルターでろ過した上澄み液の、20℃における前記発光色素の分光スペクトルにおける最大の極大吸収波長の吸光度を測定した。
【0158】
(キシレン中に分散させた分散液の上澄み液の最大吸収波長の吸光度)
前述した装置を用い、それぞれ発光色素含有粒子1mgをキシレン中1mLに分散させた分散液を遠心力20000Gで60分間遠心分離をかけた後に、0.05μmのフィルターでろ過した上澄み液の、20℃における前記発光色素の分光スペクトルにおける最大の極大吸収波長の吸光度を測定した。
【0159】
(水分散液の上澄み液の濁度)
前述した装置を用い、それぞれ発光色素含有粒子の濃度1mg/mLの水分散液を、遠心力20000Gで20分間遠心分離をかけたときに、20℃における波長660nmの上澄み液の濁度を測定した。
【0160】
<組織染色工程>
[免疫組織染色]
上記で作製した発光色素含有粒子を含む組織染色用染色剤を用いて、ヒト乳房組織の免疫染色を行った。ここで組織染色用染色剤は、1%BSA含有PBS緩衝液等の緩衝液を用いた。染色切片は組織アレイスライド(コスモ・バイオ社製、品番CB-A712)を用いた。
染色切片はあらかじめパスビジョンHER2 DNAプローブキット(アボット社製)を用いて、各スポット当りのFISHスコアを算出した。このFISHスコアは、アボットジャパ ン社製HER2遺伝子キット パスビジョン®HER2 DNAプローブキットに添付されている文書に記載の手順に従って算出した。
【0161】
組織アレイスライドを脱パラフィン処理後、水に置換洗浄し、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)中で15分間オートクレーブ処理することで、抗原の賦活化処理を行った。抗原の賦活化処理後の組織アレイスライドを、PBS緩衝液を用いて洗浄後、1%BSA含有PBS緩衝液で0.05nMに稀釈した抗HER2ウサギモノクローナル抗体(4B5)を組織切片と2時間反応させた。PBSで洗浄後、1%BSA含有PBS緩衝液で稀釈したビオチン標識抗ウサギ抗体と、30分間反応させた。さらに、上記組織染色用染色剤を用いて、すなわち上記製造したストレプトアビジンを有する色素樹脂粒子と2時間反応させ、その後洗浄を行うことにより、免疫組織化学染色切片が得られた。得られた免疫組織化学染色切片を4%中性パラホルムアルデヒド水系緩衝液に10分間浸漬することにより、固定処理を行った。
【0162】
[形態染色]
上記で固定処理した免疫組織化学染色切片に対してHE染色を行い、染色後の切片をエタノールに浸漬することにより脱水し、脱水切片をさらにキシレンに浸漬し風乾させることにより透徹を行ったところ、二重染色切片が得られた。なお、形態染色としてHE染色を行なっても、後述の耐光性評価に影響は無い。
【0163】
[封入]
上記形態染色を行なったものについて、キシレン系封入剤であるエンテランニュー(メルク社製)を滴下し、カバーガラスを被せ封入した。
【0164】
<組織サンプルの評価>
顕微鏡観察及び画像取得時の励起波長条件は、励起575~600nmでは視野中心部付近の照射光強度が900W/cm2、励起450~490nmでは視野中心部付近の照射光強度が900W/cm2、励起365nmでは視野中心部付近の照射光強度が500W/cm2、励起345~395nmでは視野中心部付近の照射光強度が500W/cm2、になるようにした。なお、照射光強度は対物40倍レンズ装着時の光エネルギー値をアドバンテスト社製パワーメータ8230で測定し、40倍レンズ照射視野面積(約φ450μm)で割ることで算出している。画像取得時の露光時間は画像の輝度が飽和しないよう任意に設定し画像を取得した。例えば1000m秒で測定を行なった。なお、取得画像は補正を加えず、輝度値がフルレンジでリニアとなるようにした。
【0165】
形態観察用染色像を用いた画像処理により、細胞の形状(細胞膜の位置)を特定し、免疫染色像と重ねあわせて、細胞膜上に発現しているHER2タンパク質を標識したストレプトアビジン修飾発光色素含有粒子を表す輝点を発光色素含有粒子数として抽出して計測した。細胞膜上の輝点のうち輝度が所定の値以上のものは、その輝点の輝度を発光色素含有粒子数1粒子あたりの輝度で除して発光色素含有粒子数に換算した。
【0166】
単位面積(100μm2)あたりの発光色素含有粒子数の平均値、あるいは、1枚の染色スライドあたり5視野においてそれぞれ100個ずつ選択した細胞における1細胞あたりの発光色素含有粒子数の平均値を測定した。
【0167】
さらに、発光色素の含有量は前述の方法で測定した。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影し、発光色素含有粒子の断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径(面積円相当径)として測定した。
以上の結果を表III及びIVに示す。
【0168】
【0169】
【0170】
表III及び表IVより、本発明の発光色素含有粒子は、平均粒径が小さくても、単位体積当たりの発光色素含有量が多く、発光輝度が高いことと、FISH法との相関係数が大きく、染色性能が良いことが分かる。
具体的には、下記のとおりである。
【0171】
1.発光色素含有粒子No.38~No.41からは、粒径が100nmを超えると、発光色素の水への溶出量が増加し、単位面積あたりの発光色素含有粒子数が著しく減少し、FISH法との相関係数も小さくなることが分かる。また、粒径が増大するに連れて、単位面積あたりの発光色素含有粒子数が減少し、FISH法との相関係数が小さくなることが伺われる。
2.発光色素含有粒子No.42~No.44は、親水性色素を使用しているため、発光色素が水に溶出しやすく、また、遠心後には凝集しやすくスパン値が大きいとともに、分散しやすい(沈降しにくい)ことから、単位面積あたりの発光色素含有粒子数が少なく、FISH法との相関係数も小さいことが分かる。
【0172】
3.親水性樹脂の代わりにポリスチレン樹脂を用いた、発光色素含有粒子No45及びNo.46は、No.12、No.30に比べ、キシレンへの溶出量が多いことから、単位面積あたりの輝点数、単位面積あたりの発光色素含有粒子数ともに少なく、FISH法との相関係数も小さいことが分かる。また、発光色素含有粒子No45、No.46は、発光色素含有粒子No.12、No.30に比べ、スパン値が大きく凝集しやすいことが伺われる。
4.表面修飾したシリカ粒子を用いた発光色素含有粒子No.47及びNo.48はNo.9、No.16に比べ粒子が水やキシレン中に溶出しやすく、また、遠心後には凝集しやすくスパン値が大きいとともに、分散しやすい(沈降しにくい)ことから、単位面積あたりの発光色素含有粒子数が遥かに少なく、FISH法との相関係数も遥かに小さいことが分かる。
【0173】
5.AlogP値が10.0未満の発光色素は、発光色素含有量が少ない(20mol%を下回る)。原因としては、親水性が高いことから水中に漏れ出すことが推察される(段落0087参照)。
6.AlogP値が60.0を超えるものは、発光色素含有量が更に少ない(10mol%を下回る)。そのため単位面積あたりの発光色素含有粒子数が著しく減少する。原因としては、疎水性が高いことから発光色素含有粒子中に取り込まれないことが推察される(段落0087参照)。
7.以上により、本発明の発光色素含有粒子は単位面積当たりの発光色素含有粒子数が多く、FISH法との相関係数も高いことから、小粒径でありながらも発光輝度が高く且つ沈降しにくく、染色性能が優れ信頼性の高い染色方法であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の発光色素含有粒子は、小粒径でありながら、粒子中の色素が溶媒中に溶出しにくく、高輝度の発光が可能であり、さらに、液中で沈降しやすく、染色性能に優れているため、病理診断用標識剤に好ましく適用することができる。