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特許7456534魚介乾物様風味素材及び魚介乾物様風味素材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】魚介乾物様風味素材及び魚介乾物様風味素材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20240319BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20240319BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240319BHJP
【FI】
A23L27/10 H
A23L27/20 D
A23L27/00 D
A23L27/00 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023059463
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2023-08-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236768
【氏名又は名称】不二製油グループ本社株式会社
(72)【発明者】
【氏名】芝田 宗久
(72)【発明者】
【氏名】井上 量太
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505647(JP,A)
【文献】国際公開第00/030474(WO,A1)
【文献】特開2020-124119(JP,A)
【文献】月刊 フードケミカル,2011年,Vol.27,No.10,pp.45-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23B
A23J
C11B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)及び(B)を含む50℃~100℃未満で加熱処理された加熱処理物を含有する魚介乾物様風味素材。
(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス。
(B)多価不飽和脂肪酸含有素材。
【請求項2】
前記魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量が、(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキスの含有量が、0.1~99質量%であり、(B)多価不飽和脂肪酸含有素材の含有量が0.1~99質量%である、請求項1記載の魚介乾物様風味素材。
【請求項3】
さらに、(C)スモーク風味素材を含む加熱処理物を含有する、請求項1記載の魚介乾物様風味素材。
【請求項4】
前記魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量が、(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキスの含有量が、0.1~99質量%であり、(B)多価不飽和脂肪酸含有素材の含有量が0.1~99質量%であり、(C)スモーク風味素材の含有量が0.1~99質量%である、請求項3記載の魚介乾物様風味素材。
【請求項5】
以下の(A)及び(B)を混合し、50℃~100℃未満で加熱する、魚介乾物様風味素材の製造方法。
(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス。
(B)多価不飽和脂肪酸含有素材。
【請求項6】
さらに、(C)スモーク風味素材を混合し、加熱する、請求項5記載の魚介乾物様風味素材の製造方法。
【請求項7】
前記魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量が、(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキスの含有量が、0.1~99質量%であり、(B)多価不飽和脂肪酸含有素材の含有量が0.1~99質量%である、請求項5記載の魚介乾物様風味素材の製造方法。
【請求項8】
前記魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量が、(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキスの含有量が、0.1~99質量%であり、(B)多価不飽和脂肪酸含有素材の含有量が0.1~99質量%であり、(C)スモーク風味素材の含有量が0.1~99質量%である、請求項6記載の魚介乾物様風味素材の製造方法。
【請求項9】
以下の(A)及び(B)を含む混合物を50℃~100℃未満で加熱する、魚介乾物様風味素材の製造方法。
(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス。
(B)多価不飽和脂肪酸含有素材。
【請求項10】
さらに、(C)スモーク風味素材を含む混合物を加熱する、請求項9記載の魚介乾物様風味素材の製造方法。
【請求項11】
請求項1~4何れか1項記載の魚介乾物様風味素材が配合された飲食品。
【請求項12】
請求項1~4何れか1項記載の魚介乾物様風味素材を含有する、飲食品への魚介乾物様風味付与剤。
【請求項13】
請求項1~4何れか1項記載の魚介乾物様風味素材を飲食品に添加する、飲食品に魚介乾物様風味を付与する方法。
【請求項14】
請求項1~4何れか1項記載の魚介乾物様風味素材の飲食品への魚介乾物様風味を付与するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、魚介乾物様風味素材及び魚介乾物様風味素材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
将来の人口増加による動物資源の枯渇への対処法として、植物をベースとする食品などサステナブルな食が注目されている。和食においても同様で、資源保護、動物愛護など様々な観点から、カツオ節など動物性食品を使用しないサステナブルな和食が求められている。
しかし、カツオ節の出汁は和食の根幹(基本)であり、カツオ節なしでは、おいしい和食は成り立たない。日本には古くからカツオ節など動物性の食材を使用しない精進料理が存在し、一定の支持を得ているが、やはりカツオ節など動物性素材の出汁を求める声が大きいのが実情である。カツオ出汁の嗜好性に関して、マウスによる実験で、カツオ節出汁に「やみつき」効果がある結果が得られたことから、ヒトも同様に本能的にカツオ節出汁を求めている可能性が高いとする報告がある(非特許文献1)。
また、日本食がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、バランスが良くヘルシーな日本食は、世界的に注目され、海外での需要も急拡大している。
しかし、需要に反して、海外(特にEU)にカツオ節を輸出するためには、EU HACCPの非常に厳しい基準をクリアした工場で製造されたカツオ節である必要があるが、日本でこの基準を満たしたカツオ節/カツオ節使用食品はない。スペインなどでは、現地にカツオ節工場も作られているが、焙乾に使用する木材の種類が違ったり、EU HACCPの基準を満たすために、焙乾工程が簡素化されたり、様々な理由で日本と同じ品質のカツオ節が手に入らない課題がある。
また、魚介乾物として、カツオ節等の魚節以外のものとして、魚介類の干物がある。この魚介類干物は、保存時間の経過とともに製造直後に有する魚介類干物の良好な風味を消失してしまうという問題もある。
これまで、上記魚節や魚介類干物の風味に関して様々な検討がされてきている。
例えば、グルタミン酸高含有酵母エキスと糖類の加熱組成物を用いることで、魚介類を用いる食品の風味を増強する技術(特許文献1、2)が開示されている。また、酸化多価不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸の加熱組成物を用いることで魚風味を増強する技術(特許文献3)が開示されている。また、スモーク成分をエキス調味料に付与する技術(特許文献4)、後発酵茶茶葉または後発酵茶茶葉抽出物を用いて、枯節風味を付与する技術(特許文献5)が開示されている。また、茶飲料生産工程より産出するスラッジを含有してなる食品における核酸旨味成分保持剤により魚介干物等の食品の旨味を持続させる技術(特許文献6)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-155967号公報
【文献】特開2015-154788号公報
【文献】特表2012-505647号公報
【文献】特開平8-107769号公報
【文献】特開2004-049131号公報
【文献】特開平10-108655号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】日本味と匂学会誌、Vol.16, No2 185-188, 2009年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような問題から、カツオ節等の魚節や魚介類の干物等の魚介類乾物様の風味を付与できる素材が求められている。
しかし、特許文献1~6の技術では、魚節や魚介干物等の魚介類乾物の風味を十分に付与できる素材とはいえず、改良の余地が十分ある。
本発明は、魚節や魚介干物等の魚介乾物様の風味素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題の解決に対し鋭意検討の結果、グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス、及び多価不飽和脂肪酸含有素材を含む加熱処理物が、魚介乾物様風味を有することが見出された。かかる知見に基づき、本実施形態に係る魚介乾物様風味素材が完成された。
【0007】
すなわち本開示は、
(1)以下の(A)及び(B)を含む加熱処理物を含有する魚介乾物様風味素材、
(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス、
(B)多価不飽和脂肪酸含有素材、
(2)前記魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量が、(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキスの含有量が、0.1~99質量%であり、(B)多価不飽和脂肪酸含有素材の含有量が0.1~99質量%である、(1)記載の魚介乾物様風味素材、
(3)さらに、(C)スモーク風味素材を含む加熱処理物を含有する、(1)記載の魚介乾物様風味素材、
(4)前記魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量が、(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキスの含有量が、0.1~99質量%であり、(B)多価不飽和脂肪酸含有素材の含有量が0.1~99質量%であり、(C)スモーク風味素材の含有量が0.1~99質量%である、(3)記載の魚介乾物様風味素材、
(5)以下の(A)及び(B)を混合し、加熱する、魚介乾物様風味素材の製造方法、
(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス、
(B)多価不飽和脂肪酸含有素材、
(6)さらに、(C)スモーク風味素材を混合し、加熱する、(5)記載の魚介乾物様風味素材の製造方法、
(7)前記魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量が、(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキスの含有量が、0.1~99質量%であり、(B)多価不飽和脂肪酸含有素材の含有量が0.1~99質量%である、(5)記載の魚介乾物様風味素材の製造方法、
(8)前記魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量が、(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキスの含有量が、0.1~99質量%であり、(B)多価不飽和脂肪酸含有素材の含有量が0.1~99質量%であり、(C)スモーク風味素材の含有量が0.1~99質量%である、(6)記載の魚介乾物様風味素材の製造方法。
(9)以下の(A)及び(B)を含む混合物を加熱する、魚介乾物様風味素材の製造方法、
(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス、
(B)多価不飽和脂肪酸含有素材、
(10)さらに、(C)スモーク風味素材を含む混合物を加熱する、(9)記載の魚介乾物様風味素材の製造方法、
(11)(1)~(4)何れか1つに記載の魚介乾物様風味素材が配合された飲食品、
(12)(1)~(4)何れか1つに記載の魚介乾物様風味素材を含有する、飲食品への魚介乾物様風味付与剤、
(13)(1)~(4)何れか1つに記載の魚介乾物様風味素材を飲食品に添加する、飲食品に魚介乾物様風味を付与する方法、
(14)(1)~(4)何れか1つに記載の魚介乾物様風味素材の飲食品への魚介乾物様風味を付与するための使用、
である。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態により、魚介乾物様の風味が良好な魚介乾物様風味素材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(魚介乾物様風味素材)
本実施形態に係る魚介乾物様風味素材は以下の(A)及び(B)を含む加熱処理物を含有することを特徴とする。すなわち、
(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス、
(B)多価不飽和脂肪酸含有素材、である。
好ましくは、さらに(C)スモーク風味素材を含む加熱処理物を含有する。
本実施形態に係る魚介乾物様風味素材における魚介乾物様風味としては、魚節の風味、魚節出汁の風味、貝類の出汁の風味、魚介類の干物の風味が例示できる。
魚節として、例えば、鰹節、宗田節、鮪節、鯖節、鯵節、鰯節、サンマ節、うるめ節、アゴ節等の魚節が挙げられる。また、魚節出汁として、例えば、鰹節、宗田節、鮪節、鯖節、鯵節、鰯節、サンマ節、うるめ節、アゴ節等の魚節の出汁が挙げられる。
また、赤貝、ホタテ貝、ハマグリ、アサリ、シジミ等の貝類の出汁、ウナギ、アナゴ等の魚からとった出汁が挙げられる。
また、魚介類の干物は、魚介類を自然乾燥したり、乾燥機で乾燥して得られるものである。魚介類としては、鰹、鰯、うるめ鰯、サンマ、鯖、鯵、鯛、鱈、鮭、ニシン、トビウオ、いか、するめ、たこ、エビ、赤貝、ホタテ貝、ハマグリ、アサリ、シジミ等の貝類、ナマコ等が挙げられる。
【0010】
魚介乾物様風味素材中の、グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス、多価不飽和脂肪酸含有素材、スモーク風味素材は任意の割合で含有させることができる。魚介乾物様風味素材の固形分中のグルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキスの含有量は、好ましくは0.1~99質量%であり、多価不飽和脂肪酸含有素材の含有量が好ましくは0.1~99質量%であり、スモーク風味素材の含有量が好ましくは0.1~99質量%である。
【0011】
グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキスの魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量は、下限がより好ましくは、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、8質量%以上または10質量%以上とすることができる。
また、上限が固形分として、より好ましくは95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下または35質量%以下とすることができる。
より、具体的な例示として、0.1~80質量%、0.5~70質量%、1~60質量%、1~55質量%、2~50質量%、2~40質量%、3~40質量%、4~40質量%、2~35質量%、3~35質量%等が挙げられる。
【0012】
また、多価不飽和脂肪酸含有素材の、魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量は、下限がより好ましくは、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上とすることができる。
また、上限が固形分として、より好ましくは95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下とすることができる。
より、具体的な例示として、0.1~80質量%、0.5~75質量%、1~65質量%、2~60質量%、2~55質量%、3~55質量%等が挙げられる。
【0013】
また、スモーク風味素材の、魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量は、下限がより好ましくは、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、8質量%以上または10質量%以上とすることができる。
また、上限が固形分として、より好ましくは、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下または40質量%以下とすることができる。
より、具体的な例示として、0.1~80質量%、0.5~75質量%、1~65質量%、2~60質量%、4~55質量%、5~55質量%、7~50質量%、8~50質量%、8~45質量%、10~45質量%等が挙げられる。
【0014】
本実施形態に係る魚介乾物様風味素材は、動物性原料がなくとも魚介乾物様風味素材として用いることができる。魚介乾物様風味素材の固形分中の植物性原料の割合は、固形分換算で好ましくは50質量%以上である。より好ましくは55質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上とすることもできる。最も好ましくは100質量%である。
【0015】
(グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス)
グルタチオン含有酵母エキスは、グルタチオン含有酵母を、熱水抽出、酵素分解抽出、自己消化抽出等の公知の方法で抽出して得ることができる。
グルタチオン含有酵母エキスは、乾燥質量当たりのグルタチオン含有量が1質量%以上が好ましく、食用に供されるものである限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、ビール酵母エキス、パン酵母エキス、トルラ酵母エキスなどが挙げられる。
前記グルタチオン含有酵母エキスとしては、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、Bio Springer製の酵母エキス「Springer4101」、三菱商事ライフサイエンス(興人ライフサイエンス)製の酵母エキス「ハイチオンエキスYH-8」、「ハイチオンエキスYH-15」、「ハイチオンエキスYH-D18」、「アロマイルドU-15」、「アジパルスKF」、協和発酵バイオ「グルタイーストエキスN」、オリエンタル酵母製の酵母エキス「酵母エキスBSP-783」、アサヒグループ食品製の酵母エキス「ハイパーミーストAP2515」、味の素株式会社製の「スーパー酵母エキス」などを用いることができる。
また、前記グルタチオン含有酵母エキスと糖類を混合したものを用いることができ、この混合物加熱したものも用いることができる。
糖類としては、単糖類、オリゴ糖、デンプン等を例示することができる。これらを単独で用いても2種以上を併せて用いてもよい。また、このような糖類を含有する液糖を用いることもできる。
また、システイン含有酵母エキスは、上記グルタチオン含有酵母エキスにも含まれ得る。また酵母エキスにシステインを添加したものも含まれる。
【0016】
(多価不飽和脂肪酸含有素材)
本実施形態に係る多価不飽和脂肪酸含有素材は、多価不飽和脂肪酸が多価不飽和脂肪酸含有素材の固形分中、好ましくは0.01~100質量%含有するものである。下限は好ましくは、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.08質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上または0.5質量%以上とすることができ、上限はより好ましくは50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下または1質量%以下とすることができる。
多価不飽和脂肪酸は、2つ以上の不飽和C-C結合がある脂肪酸である。
好ましい実施形態では多価不飽和脂肪酸は、ω-3多価不飽和脂肪酸である。ω-3多価不飽和脂肪酸としては、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、およびテトラコサヘキサエン酸が挙げられる。より好ましい実施形態では、ω-3脂肪酸は、エイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸である。
多価不飽和脂肪酸含有素材として、例えば、植物油、海藻油、微細藻類油、魚油、海藻粉末、海藻粉末から抽出した抽出物等が例示できる。また、植物油、海藻油、微細藻類油、魚油、海藻粉末、海藻粉末から抽出した抽出物あるいは多価不飽和脂肪酸等を原料として配合して得られる酵母エキスなど、多価不飽和脂肪酸を別途配合して得られる素材も、本実施形態の多価不飽和脂肪酸含有素材に含まれる。
【0017】
植物油としては、例えば、大豆油、菜種油、亜麻仁油等が挙げられる。
海藻油として、褐藻類、紅藻類、緑藻類から得られる油が挙げられる。
褐藻類として、例えば、ヒジキ、ワカメ、メカブ、コンブ、アカモク、モズク等が挙げられる。緑藻類として、クズレビ、アオサ等が挙げられる。紅藻類として、ノリ、テングサ等が挙げられる。
【0018】
(スモーク風味素材)
本実施形態においてスモーク風味素材とは、スモーク風味(燻製風味)が付与された素材である。
例えば、スモーク風味を付与した油脂(スモークオイル)、スモーク風味を付与した酵母エキス、くん液、スモーク酢、スモーク醤油、ソモークソルト、スモークパプリカ、その他、スモーク風味剤を配合した調味料等を用いることができる。
市販品では、スモーク風味を付与した油脂として、例えば、「スモークオイルN-1」(アサヒグループ食品製)、「燻製オリーブオイル」(かずさ燻製工房製)等が挙げられる。また、スモーク風味を付与した酵母エキスとして、例えば、「グリルイーストB/H」(株式会社樋口商会)、「スモークドハイパーミーストA-1387」(アサヒグループ食品株式会社製)等が挙げられる。
これらの中でも、魚介乾物様風味素材にスモーク風味を効果的に付与できる点で、スモーク風味を付与した酵母エキスを用いることが好ましい。
【0019】
(蛋白加水分解物)
また、ある実施形態において、本発明において蛋白加水分解物を用いることができる。蛋白加水分解物としては、蛋白質原料を蛋白質分解酵素で酵素分解した、蛋白酵素加水分解物がある。
また、蛋白質原料を塩酸や硫酸等の酸で加水分解した蛋白酸加水分解物がある。蛋白酵素加水分解物と蛋白酸加水分解物は併用して使用することができる。
蛋白加水分解物としては動物性原料由来、植物性原料由来のどちらのものも用いることができるが、植物性原料由来のものが好ましい。
【0020】
植物性原料由来の蛋白酵素加水分解物は、植物性原料由来の蛋白質原料を蛋白質加水分解酵素(プロテアーゼ)により酵素分解したものである。
植物性原料から蛋白質を抽出,濃縮,又は分離した各種蛋白質原料を用いることができ、該蛋白質原料中の蛋白質含量は乾燥質量換算で、好ましくは50質量%以上である。より好ましくは、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上または90質量%以上とすることもできる。
植物性原料由来の蛋白質原料としては、大豆,エンドウ豆、緑豆等の豆類や、米,小麦,大麦,トウモロコシ等の穀類等、アーモンド、カシューナッツ、クルミ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、マカダミアンナッツ等のナッツ類が挙げられる。
この中でも、植物性原料由来の蛋白質原料の由来として、大豆、エンドウ豆、緑豆等の豆類由来のものが好ましく、大豆由来のものがさらに好ましい。大豆由来の蛋白酵素加水分解物として、例えば、市販の「ハイニュートAM」、「ハイニュートDC6」、「ハイニュートDH」、「ハイニュートD1」、「ハイニュートHKB」等(以上、不二製油株式会社製)を用いることができる。
蛋白加水分解物の魚介乾物様風味素材の固形分中の含有量は、好ましくは、0.1~10質量%である。下限はより好ましくは0.2質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上または0.8質量%以上とすることができる。また、上限がより好ましくは、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、9質量%以下とすることができる。
より具体的な例示として、0.1~15質量%、0.2~12質量%、0.4~10質量%、0.5~10質量%、0.7~10質量%、0.8~9質量%が挙げられる。
【0021】
(その他の原料)
また、ある実施形態において、5'-イノシン酸二ナトリウム、5'-グアニル酸二ナトリウム、5'-アデニル酸二ナトリウム等の核酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン等のアミノ酸やグルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム等のアミノ酸塩を用いることができる。また、核酸及び、アミノ酸やアミノ酸塩を含有するエキスや酵母エキス、発酵調味料等の調味料も用いることができる。核酸の由来としては、例えば、魚介類、キノコ類、酵母エキス、発酵調味料等が挙げられる。
また、ある実施形態においては、キャベツ、ニンジン、ネギ、マッシュルーム、セロリ、ホウレンソウ、椎茸、ジンジャー、ガーリック、オニオン、白菜等の野菜エキスや野菜エキスパウダー、単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール、多糖類等の糖類、澱粉類、食塩、増粘剤、安定剤、清酒等の醸造調味料、コハク酸を含む酵母エキス、食物繊維、蛋白質等を用いることもできる。
【0022】
(魚介乾物様風味素材の製造方法)
本実施形態において、魚介乾物様風味素材の製造方法は、例えば以下の方法が例示できる。
(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス、及び(B)多価不飽和脂肪酸含有素材と、必要により、(C)スモーク風味素材、水を混合し、加熱することにより得ることができる。
水を混合する場合、グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス、多価不飽和脂肪酸含有素材、スモーク風味素材及び水の合計の質量に対して、好ましくは水の含有量が0.1~99質量%になるように混合する。水の含有量は、目的の固形分濃度に応じて設定することができる。例えば、ストレートタイプの出汁用とする場合は加水量を多く設定すれば良い。また、濃縮タイプの出汁用とする場合は加水量を少なく設定すれば良い。
また、別の方法として以下の方法が例示できる。
予め(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス、及び(B)多価不飽和脂肪酸含有素材が混合された混合物を、必要により水を混合して加熱することにより、魚介乾物様風味素材を得ることもできる。また、予め(A)グルタチオン含有酵母エキス及び/またはシステイン含有酵母エキス、(B)多価不飽和脂肪酸含有素材及び(C)スモーク風味素材が混合された混合物を、必要により水を混合して加熱することにより魚介乾物様風味素材を得ることもできる。
また、混合物を加熱した後必要に応じて乾燥することもできる。
混合には、種々の混合機、攪拌機が使用でき、機器には特に制限はない。例えば、ホモミキサー等の各種ミキサー、ニーダー、コロイドミル、プロペラ攪拌機、ブレンダー等が挙げられる。
【0023】
加熱温度は好ましくは、50℃以上である。加熱温度はより好ましくは55℃以上であり、さらに好ましくは60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上とすることもできる。また、上限は好ましくは100℃未満であり、より好ましくは、95℃以下、90℃以下、85℃以下とすることもできる。より具体的な実施形態では、50~100℃未満、50~95℃、50~90℃、60~100℃未満、60~95℃、60~90℃、65~100℃未満、65~95℃、65~90℃、70~100℃未満、70~95℃、75~100℃未満、75~95℃等である。
加熱時間は、好ましくは、1分間以上であり、より好ましくは2分間以上、4分間以上、5分間以上、8分間以上、10分間以上、15分間以上とすることもできる。また、上限は、好ましくは120分間以下であり、より好ましくは100分間以下、90分間以下、80分間以下、70分間以下とすることもできる。より具体的な実施形態では、1~120分間、5~100分間、8~90分間、10~80分間、10~70分間、15~80分間、15~70分間等である。
【0024】
本実施形態に係る魚介乾物様風味素材の形状は、特に限定されず、固形状であっても液状であってもペースト状であってもよい。固形状としては、例えば、粉末、顆粒またはフレーク等の形状が挙げられる。
【0025】
(用途)
本実施形態に係る魚介乾物様風味素材は、そのまま、粉末状、顆粒状またはフレーク状等の固形状の出汁、液状の出汁、ペースト状の出汁として用いることができる。また、本実施形態に係る魚介乾物様風味素材は様々な飲食品に対して配合することが可能である。
例えば、麺つゆ、天つゆ、鍋つゆ等のつゆ類、ぽん酢、だしの素、吸い物(乾燥粉末品を含む)、味噌汁(乾燥粉末品を含む)、スープ、ラーメンスープ、煮物用調味液、鍋物用調味液、調味酢、たれ類、ドレッシング類、ふりかけ類、魚介類の干物などに対して本実施形態に係る魚介乾物様風味素材を配合することができる。該魚介乾物様風味素材は、各飲食品の製造時の原料として配合することもできるし、製造後の食品に配合することもできる。
本実施形態に係る魚介乾物様風味素材の飲食品に対する配合量は、好ましくは0.01~50質量%であり、より好ましくは0.05~40質量%であり、さらに好ましくは0.1~30質量%である。
【0026】
本実施形態に係る魚介乾物様風味素材は、前記飲食品に、魚介乾物様風味を付与することができ、魚介乾物様風味付与剤として使用することもできる。
【実施例
【0027】
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。尚、例中の部及び%は特に断らない限り質量基準を意味するものとする。
【0028】
(実施例1、比較例1~3)カツオ節様風味素材の検討
表1に示す原材料を混合し、混合物を攪拌加熱装置(Radleys社:リアクションステーションMya4)を用いて95℃、60min、300rpmの条件で加熱撹拌し、魚介干物様風味素材を得た。なお、比較例3については、攪拌加熱装置で攪拌する際、加熱はせず、常温で攪拌してカツオ節様風味素材を得た。
これらのカツオ節様風味素材を以下の風味評価基準で、パネル5名で評価してもらい、パネルの合意により風味評価点を決定した。風味評価は4点または3点の場合、カツオ節様風味素材として合格と判断した。結果を表1に示した。
【0029】
(風味評価基準)
4点:カツオ節様の風味が非常に感じられる。
3点:カツオ節様の風味が感じられる。
2点:カツオ節様の風味があまり感じられない。
1点:カツオ節様の風味が感じられない。
【0030】
(表1)
【0031】
表1に示す通り、実施例1のカツオ節様風味素材はカツオ節様風味が非常に感じられ、良好であった。一方、比較例2や3で、グルタチオン含有酵母エキスや多価不飽和脂肪酸含有素材が配合されないと、カツオ節様風味は感じられなかった。また、比較例3のように各素材を加熱していないと、カツオ節様風味は感じられず、加熱が必要であることが確認された。
【0032】
(実施例2、比較例4~6)カツオ節出汁様風味素材の検討
実施例1、比較例1~3のカツオ節様風味素材を2%に希釈して、カツオ節出汁様風味素材を得た。
このカツオ節出汁様風味素材を以下の風味評価基準で、パネル5名で評価してもらい、パネルの合意により風味評価点を決定した。風味評価は4点または3点の場合、カツオ節出汁様風味素材として合格と判断した。結果を表2に示した。
【0033】
(風味評価基準)
4点:カツオ節出汁様の風味が非常に感じられる。
3点:カツオ節出汁様の風味が感じられる。
2点:カツオ節出汁様の風味があまり感じられない。
1点:カツオ節出汁様の風味が感じられない。
【0034】
(表2)
【0035】
表2に示す通り、実施例2のカツオ節出汁様風味素材はカツオ節出汁様風味が非常に感じられ、良好であった。一方、比較例4~6のカツオ節出汁様風味素材は、カツオ節出汁様風味は感じられなかった。
【0036】
(実施例3、比較例7~9)サバ節様風味素材の検討
表3に示す原材料を混合し、混合物を攪拌加熱装置(Radleys社:リアクションステーションMya4)を用いて90℃、60min、300rpmの条件で加熱撹拌し、サバ節出汁様風味素材を得た。なお、比較例6については、攪拌加熱装置で攪拌する際、加熱はせず、常温で攪拌してサバ出汁様風味素材を得た。
これらのサバ節出汁様風味素材を以下の風味評価基準で、パネル5名で評価してもらい、パネルの合意により風味評価点を決定した。風味評価は4点または3点の場合、サバ節出汁様風味素材として合格と判断した。結果を表3に示した。
【0037】
(風味評価基準)
4点:サバ節出汁様の風味が非常に感じられる。
3点:サバ節出汁様の風味が感じられる。
2点:サバ節出汁様の風味があまり感じられない。
1点:サバ節出汁様の風味が感じられない。
【0038】
(表3)
【0039】
表3に示す通り、実施例3のサバ節様風味素材はサバ節様風味が非常に感じられ、良好であった。一方、比較例7や8で、グルタチオン含有酵母エキスや多価不飽和脂肪酸含有素材が配合されないと、サバ節様風味は感じられなかった。また、比較例9のように各素材を加熱していないと、サバ節様風味は感じられず、加熱が必要であることが確認された。
【0040】
(実施例4、比較例10~12)サバ節出汁様風味素材の検討
実施例3、比較例7~9のサバ節様風味素材を2%に希釈して、サバ節出汁様風味素材を得た。
これらのサバ節出汁様風味素材を以下の風味評価基準で、パネル5名で評価してもらい、パネルの合意により風味評価点を決定した。風味評価は4点または3点の場合、サバ節出汁様風味素材として合格と判断した。結果を表4に示した。
【0041】
(風味評価基準)
4点:サバ節出汁様の風味が非常に感じられる。
3点:サバ節出汁様の風味が感じられる。
2点:サバ節出汁様の風味があまり感じられない。
1点:サバ節出汁様の風味が感じられない。
【0042】
(表4)
【0043】
表4に示す通り、実施例4のサバ節出汁様風味素材はサバ節出汁様風味が非常に感じられ、良好であった。一方、比較例10~12のサバ節出汁様風味素材は、カツオ節出汁様風味は感じられなかった。
【0044】
(実施例5、比較例13~15)アサリ干物様風味素材の検討
表5に示す原材料を混合し、混合物を攪拌加熱装置(Radleys社:リアクションステーションMya4)を用いて80℃、60min、300rpmの条件で加熱撹拌し、アサリ干物様風味素材を得た。なお、比較例9については、攪拌加熱装置で攪拌する際、加熱はせず、常温で攪拌してアサリ干物様風味素材を得た。
これらのアサリ干物様風味素材を以下の風味評価基準で、パネル5名で評価してもらい、パネルの合意により風味評価点を決定した。風味評価は4点または3点の場合、アサリ干物様風味素材として合格と判断した。結果を表5に示した。
【0045】
(風味評価基準)
4点:アサリ干物様の風味が非常に感じられる。
3点:アサリ干物様の風味が感じられる。
2点:アサリ干物様の風味があまり感じられない。
1点:アサリ干物様の風味が感じられない。
【0046】
(表5)
【0047】
表5に示す通り、実施例5のアサリ干物様風味素材はアサリ干物様風味が非常に感じられ、良好であった。一方、比較例13や14で、グルタチオン含有酵母エキスや多価不飽和脂肪酸含有素材が配合されないと、アサリ干物様風味は感じられなかった。また、比較例15のように各素材を加熱していないと、アサリ干物様風味は感じられず、加熱が必要であることが確認された。
【0048】
(実施例6、比較例16~18)アサリ出汁様風味素材の検討
実施例5、比較例13~15のアサリ干物様風味素材を2%に希釈して、アサリ出汁様風味素材を得た。
これらのアサリ出汁様風味素材を以下の風味評価基準で、パネル5名で評価してもらい、パネルの合意により風味評価点を決定した。風味評価は4点または3点の場合、アサリ出汁様風味素材として合格と判断した。結果を表6に示した。
【0049】
(風味評価基準)
4点:アサリ出汁様の風味が非常に感じられる。
3点:アサリ出汁様の風味が感じられる。
2点:アサリ出汁様の風味があまり感じられない。
1点:アサリ出汁様の風味が感じられない。
【0050】
(表6)
【0051】
表6に示す通り、実施例6のアサリ出汁様風味素材はアサリ出汁様風味が非常に感じられ、良好であった。一方、比較例16~18のアサリ出汁様風味素材は、アサリ出汁様風味は感じられなかった。
【0052】
(実施例7、比較例19~21)白身魚干物様風味素材
表7に示す原材料を混合し、混合物を攪拌加熱装置(Radleys社:リアクションステーションMya4)を用いて80℃、60min、300rpmの条件で加熱撹拌し、アサリ干物様風味素材を得た。なお、比較例9については、攪拌加熱装置で攪拌する際、加熱はせず、常温で攪拌して白身魚干物様風味素材を得た。
これらの白身魚干物様風味素材を以下の風味評価基準で、パネル5名で評価してもらい、パネルの合意により風味評価点を決定した。風味評価は4点または3点の場合、白身魚干物様風味素材として合格と判断した。結果を表7に示した。
【0053】
(風味評価基準)
4点:白身魚干物様の風味が非常に感じられる。
3点:白身魚干物様の風味が感じられる。
2点:白身魚干物様の風味があまり感じられない。
1点:白身魚干物様の風味が感じられない。
【0054】
(表7)
【0055】
表7に示す通り、実施例7の白身魚干物様風味素材は白身魚干物様風味が非常に感じられ、良好であった。一方、比較例19や20で、グルタチオン含有酵母エキスや多価不飽和脂肪酸含有素材が配合されないと、白身魚干物様風味は感じられなかった。また、比較例21のように各素材を加熱していないと、白身魚干物様風味は感じられず、加熱が必要であることが確認された。
【0056】
(実施例8、比較例22~24)ウナギまたはアナゴ出汁様風味素材の検討
実施例7、比較例19~21の白身魚干物様風味素材を2%に希釈して、白身魚出汁様風味素材を得た。特に実施例7では、白身魚としてウナギまたはアナゴ様の出汁の風味を呈していたことからウナギまたはアナゴ出汁様風味について評価した。
以下の風味評価基準で、パネル5名で評価してもらい、パネルの合意により風味評価点を決定した。風味評価は4点または3点の場合、ウナギまたはアナゴ出汁様風味素材として合格と判断した。結果を表6に示した。
【0057】
(風味評価基準)
4点:ウナギまたはアナゴ出汁様の風味が非常に感じられる。
3点:ウナギまたはアナゴ出汁様の風味が感じられる。
2点:ウナギまたはアナゴ出汁様の風味があまり感じられない。
1点:ウナギまたはアナゴ出汁様の風味が感じられない。
【0058】
(表8)
【0059】
表8に示す通り、実施例8のウナギまたはアナゴ出汁様風味素材はウナギまたはアナゴ出汁様風味が非常に感じられ、良好であった。一方、比較例22~24のウナギまたはアナゴ出汁様風味素材は、ウナギまたはアナゴ出汁様風味は感じられなかった。
【要約】
【課題】
本発明は、魚節や魚介干物等の魚介乾物様の風味素材を提供することを目的とする。
【解決手段】
グルタチオン含有酵母エキス及び多価不飽和脂肪酸含有素材を含む加熱処理物が、魚介乾物様風味を有することが見出された。
【選択図】なし