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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】情報処理装置及び測定データの保存方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240319BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B66B5/00 E
B66B3/00 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023121023
(22)【出願日】2023-07-25
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 悠児
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
(72)【発明者】
【氏名】水戸 陵人
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-018224(JP,A)
【文献】特開2017-019605(JP,A)
【文献】特開2006-264858(JP,A)
【文献】特開平10-59645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00ー 5/28
B66B 3/00ー 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたエレベータの識別情報、及び、測定対象のエレベータの加速度を検出するセンサが出力した測定データを取得する情報取得部と、
前記識別情報により特定されるエレベータの所定の動作性能である比較性能と、前記測定データから算出される前記所定の動作性能である測定性能とを比較し、前記比較性能と前記測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定する性能判定部と、
少なくとも1つの前記所定の動作性能において前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上である場合、前記測定データを保存してよいか否かの確認入力を要求する確認要求部と、
前記測定データを保存してよいとの確認入力があった場合、前記識別情報により特定されるエレベータと前記測定データとを対応づけて保存する保存制御部と、
を備えている、情報処理装置。
【請求項2】
保守作業員が視認可能な表示部と、
前記表示部の表示を制御する表示制御部と、を備え、
前記確認要求部は、前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上となる動作性能を特定し、
前記表示制御部は、前記確認要求部が要求する確認入力の表示と共に、前記確認要求部により特定された前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上となる動作性能を前記表示部に表示する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記確認要求部で特定された前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上となる動作性能について、前記性能判定部により算出された前記比較性能と前記測定性能との差、及び、前記第1所定値以上となる動作性能における前記比較性能と前記測定性能との値の少なくともいずれか一方を前記表示部に表示する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記性能判定部は、前記比較性能と前記測定性能とを比較し、前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値より大きい第2所定値以上であるか否かをさらに判定し、
前記確認要求部は、前記性能判定部により、少なくとも1つ上記所定の動作性能において前記比較性能と前記測定性能との差が第2所定値以上であると判定された場合、前記確認入力の要求を停止し、
前記保存制御部は、前記確認入力の要求が停止された場合、前記測定データを保存しない、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記保存制御部は、前記測定データを保存してよいとの確認入力があった場合、前記測定データを、前記識別情報により特定されるエレベータと対応づけられて保存されている既存の測定データと区別して保存する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記確認要求部は、少なくとも1つの前記所定の動作性能において前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上である場合、前記識別情報の再入力を要求し、
前記識別情報の再入力がされた場合、前記性能判定部は、再入力された前記識別情報により特定されるエレベータの前記比較性能と、前記測定性能とを比較し、前記比較性能と前記測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記確認要求部は、少なくとも1つの前記所定の動作性能において前記比較性能と前記測定性能との差が第1所定値以上である場合、前記測定データが、前記比較性能を規定する前記エレベータの走行パラメータである基準走行パラメータと異なる前記走行パラメータを設定して得られた測定データであるか否かの確認入力を求め、
前記保存制御部は、前記測定データが前記基準走行パラメータと異なる前記走行パラメータを設定して得られた測定データであるとの確認入力があった場合、前記識別情報により特定されるエレベータと前記測定データとを対応づけて保存する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
入力されたエレベータの識別情報、及び、測定対象のエレベータの加速度を検出するセンサが出力した測定データを取得する情報取得ステップと、
前記識別情報により特定されるエレベータの所定の動作性能である比較性能と、前記測定データから算出される前記所定の動作性能である測定性能とを比較し、前記比較性能と前記測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定する性能判定ステップと、
少なくとも1つの前記所定の動作性能において前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上である場合、前記測定データを保存してよいか否かの確認入力を要求する確認要求ステップと、
前記測定データを保存してよいとの確認入力があった場合、前記識別情報により特定されるエレベータと前記測定データとを対応づけて保存する保存制御ステップと、
を含む、測定データの保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの測定データの情報処理装置及び測定データの保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの保守作業として、エレベータの振動や騒音を測定する測定作業が行われている。測定作業で得られた測定データは、測定対象のエレベータの情報と共に所定の記憶部に保存され、測定対象のエレベータについての点検の要否の診断等に用いられる。例えば、特許文献1には、測定作業で得られた測定データ等から測定対象のエレベータの識別を自動で行う点検システムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-019605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保守作業としての測定作業では、乗りかご等の振動や騒音を緩和させるために、加速度・速度等の走行パラメータの設定を変更してエレベータを運行し、その状態でエレベータの振動や騒音の測定を行う場合がある。特許文献1に記載の点検システムでは、走行パラメータの設定を変更して測定した測定データでは、測定対象のエレベータの識別が正しく行われない場合があり、測定データを測定対象のエレベータの適正な測定データとして正確に保存できない場合があるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、測定で得た測定データを測定対象のエレベータの適正な測定データとして正確に保存することができる情報処理装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、入力されたエレベータの識別情報、及び、測定対象のエレベータの加速度を検出するセンサが出力した測定データを取得する情報取得部と、前記識別情報により特定されるエレベータの所定の動作性能である比較性能と、前記測定データから算出される前記所定の動作性能である測定性能とを比較し、前記比較性能と前記測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定する性能判定部と、少なくとも1つの前記所定の動作性能において前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上である場合、前記測定データを保存してよいか否かの確認入力を要求する確認要求部と、前記測定データを保存してよいとの確認入力があった場合、前記識別情報により特定されるエレベータと前記測定データとを対応づけて保存する保存制御部と、を備えている。
【0007】
上記の構成によれば、少なくとも1つ所定の動作性能において、識別情報により特定されるエレベータの比較性能と、測定データから算出される測定性能との差が第1所定値以上である場合、確認要求部により、測定データを保存してよいか否かの確認入力が保守作業員に要求される。
【0008】
これにより、保守作業員は、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上である場合、例えば、当該測定データが走行パラメータ(加速度及び速度)を変更したものであるかどうかについて等を確認し、識別情報により特定されるエレベータと測定データとを対応づけて保存してもよいか否かを判断した上で、測定データの保存を指示することができる。その結果、測定で得た測定データを測定対象のエレベータの適正な測定データとして正確に保存することができる。
【0009】
本発明の他の態様に係る情報処理装置では、保守作業員が視認可能な表示部と、前記表示部の表示を制御する表示制御部と、を備え、前記確認要求部は、前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上となる動作性能を特定し、前記表示制御部は、前記確認要求部が要求する確認入力の表示と共に、前記確認要求部により特定された前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上となる動作性能を前記表示部に表示してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、表示部には、確認要求部が要求する確認入力と共に、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上となる動作性能も表示される。そのため、保守作業員は、識別情報により特定されるエレベータと測定データとを対応づけて保存するか否かの判断を、表示された動作性能に係る項目のみを確認するだけで行うことができる。これにより、保守作業員の作業負担を軽減することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る情報処理装置では、前記表示制御部は、前記確認要求部で特定された前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上となる動作性能について、前記性能判定部により算出された前記比較性能と前記測定性能との差、及び、前記第1所定値以上となる動作性能における前記比較性能と前記測定性能との値の少なくともいずれか一方を前記表示部に表示してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、表示部には確認要求部により特定された比較性能と測定性能との差が第1所定値以上となる動作性能において、算出された比較性能と測定性能との差、及び、それらの値の少なくともいずれか一方についても表示される。そのため、保守作業員は表示部の表示を確認するのみで、識別情報により特定されるエレベータと測定データとを対応づけて保存するか否かの判断を行うことができる。これにより保守作業員の作業負担を軽減することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る情報処理装置では、前記性能判定部は、前記比較性能と前記測定性能とを比較し、前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値より大きい第2所定値以上であるか否かをさらに判定し、前記確認要求部は、前記性能判定部により、少なくとも1つ上記所定の動作性能において前記比較性能と前記測定性能との差が第2所定値以上であると判定された場合、前記確認入力の要求を停止し、前記保存制御部は、前記確認入力の要求が停止された場合、前記測定データを保存しなくてもよい。
【0014】
比較性能と測定性能との差があまりにも大きい場合は、測定データに誤りがある、または、識別情報が誤入力されている可能性が高い。上記の構成によれば、比較性能と測定性能との差が第1所定値より大きい第2所定値以上である場合、確認入力の要求は行われず測定データは保存されない。そのため、第2所定値を適宜設定することで、誤りがある測定データが保存されること、及び、誤入力された識別情報により特定されたエレベータに対応付けて測定データが保存されることを抑制することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る情報処理装置では、前記保存制御部は、前記測定データを保存してよいとの確認入力があった場合、前記測定データを、前記識別情報により特定されるエレベータと対応づけられて保存されている既存の測定データと区別して保存してもよい。
【0016】
上記の構成によれば、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上である測定データと、識別情報により特定されるエレベータと対応づけられて保存されている既存の測定データとが区別して保存される。これにより、識別情報により特定されるエレベータに対して蓄積される測定データを用いる際、比較性能と測定性能との差が大きかった測定データを必要に応じて含まないで用いることができるので、蓄積データの活用性を高めることができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る情報処理装置では、前記確認要求部は、少なくとも1つの前記所定の動作性能において前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上である場合、前記識別情報の再入力を要求し、前記識別情報の再入力がされた場合、前記性能判定部は、再入力された前記識別情報により特定されるエレベータの前記比較性能と、前記測定性能とを比較し、前記比較性能と前記測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定してもよい。
【0018】
上記の構成によれば、少なくとも1つ所定の動作性能において、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上である場合、確認要求部により、識別情報の再入力が保守作業員に要求される。また、識別情報の再入力がされた場合、性能判定部により、再入力された識別情報により特定されるエレベータの比較性能と測定性能との差が第1所定値以上であるか否かが判定される処理が行われる。これにより、識別情報が誤入力された場合であっても、測定で得た測定データを正しい測定対象のエレベータの測定データとして正確に保存することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る情報処理装置では、前記確認要求部は、少なくとも1つの前記所定の動作性能において前記比較性能と前記測定性能との差が第1所定値以上である場合、前記測定データが、前記比較性能を規定する前記エレベータの走行パラメータである基準走行パラメータと異なる前記走行パラメータを設定して得られた測定データであるか否かの確認入力を求め、前記保存制御部は、前記測定データが前記基準走行パラメータと異なる前記走行パラメータを設定して得られた測定データであるとの確認入力があった場合、前記識別情報により特定されるエレベータと前記測定データとを対応づけて保存してもよい。
【0020】
上記の構成によれば、確認要求部により求められる、測定データを保存してよいか否かの確認入力は、測定データが基準走行パラメータと異なる走行パラメータを設定して得られた測定データであるか否かの確認入力により実行される。そのため、保守作業員は当該測定データの走行パラメータが基準走行パラメータと異なるものであるかどうかについて確認することにより、識別情報により特定されるエレベータと測定データとを対応づけて保存するか否かを判断することができる。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る測定データの保存方法は、入力されたエレベータの識別情報、及び、測定対象のエレベータの加速度を検出するセンサが出力した測定データを取得する情報取得ステップと、前記識別情報により特定されるエレベータの所定の動作性能である比較性能と、前記測定データから算出される前記所定の動作性能である測定性能とを比較し、前記比較性能と前記測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定する性能判定ステップと、少なくとも1つの前記所定の動作性能において前記比較性能と前記測定性能との差が前記第1所定値以上である場合、前記測定データを保存してよいか否かの確認入力を要求する確認要求ステップと、前記測定データを保存してよいとの確認入力があった場合、前記識別情報により特定されるエレベータと前記測定データとを対応づけて保存する保存制御ステップと、を含む。
【0022】
本発明の各態様に係る情報処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記情報処理装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記情報処理装置をコンピュータにて実現させる情報処理装置の制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、測定で得た測定データを測定対象のエレベータの適正な測定データとして正確に保存することができる情報処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る情報処理装置を含む保守支援システムの全体構成を示す機能ブロック図である。
図2】上記情報処理装置の表示部の表示例を示す図である。
図3】上記情報処理装置の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明に係る情報処理装置10の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0026】
<保守支援システム概要>
図1は、本発明の実施形態に係る情報処理装置10を含む保守支援システム1の全体構成を示す機能ブロック図である。保守支援システム1は、測定で得た測定データを測定対象のエレベータ2の適正な測定データとして正確に保存するためのシステムである。
【0027】
保守支援システム1の情報処理装置10は、識別情報により特定されるエレベータ2の所定の動作性能である比較性能と、測定データから算出される所定の動作性能である測定性能とを比較する。そして、少なくとも1つの所定の動作性能において比較性能と測定性能との差が第1所定値以上である場合、測定データを保存してよいか否かの確認入力を保守作業員に要求し、保守作業員の確認入力に基づき測定データの保存を実行することで、測定で得た測定データを測定対象のエレベータ2の適正な測定データとして正確に保存することを実現する。
【0028】
<保守支援システム>
図1に示すように、保守支援システム1は、エレベータ2と、情報処理装置10と、サーバ装置50と、を備えている。
【0029】
(エレベータ)
エレベータ2は、乗りかご20と、制御盤21と、を備えている。乗りかご20は、例えば、利用者を乗せて塔内を昇降する筐体である。制御盤21は、エレベータ2の運転を制御する。制御盤21は、乗りかご20とは別に設置され、例えば、昇降路内に設置される。制御盤21は、エレベータ2の基準走行パラメータまたは保守作業員により入力される走行パラメータに基づき、エレベータ2を走行させる。走行パラメータは、例えば、加速度及び速度等である。
【0030】
制御盤21は制御部22と、記憶部23と、入力部24と、を備えている。制御部22は制御盤21の各部を統括的に制御する。制御部22の機能は、記憶部23に記憶されたプログラムを、CPUが実行することで実現されてよい。記憶部23は、制御盤21が実行する各種のプログラム、及びプログラムによって使用されるデータを格納している。
【0031】
入力部24は、保守作業員が走行パラメータの入力を行うものである。保守作業員は、保守作業において異音が発生しているなどの不具合がある場合、入力部24に任意の走行パラメータを入力することで、エレベータ2の走行パラメータを変更することができる。
【0032】
制御盤21への走行パラメータの入力は、情報処理装置10を用いて行われてもよい。その場合、例えば、情報処理装置10を制御盤21に無線により接続し、信号を送信することで走行パラメータの入力(変更)が行われてもよい。
【0033】
制御部22は、保守作業の際、基準走行パラメータでエレベータ2を走行させる。制御部22は、入力部24に走行パラメータが入力された場合、入力部24に入力された走行パラメータでエレベータ2を走行させる。
【0034】
(サーバ装置)
サーバ装置50は、情報処理装置10からの情報を処理し、処理した情報を情報処理装置10に送信する。サーバ装置50は、一例としてクラウドコンピューティングにより実現されたサーバ装置であってもよい。情報処理装置10とサーバ装置50とは、図1に示すように、通信ネットワーク60を介して通信可能に接続されている。
【0035】
サーバ装置50は、制御部51と、記憶部52と、を備えている。制御部51は記憶部52に記憶されたプログラムを、CPUが実行することで実現されてよい。記憶部52は、サーバ装置50が実行する各種のプログラム、及びプログラムによって使用されるデータを格納している。
【0036】
また、記憶部52には、動作性能情報521と、第1履歴情報522と、第2履歴情報523と、が保存されている。動作性能情報521は、識別情報と、識別情報で特定されるエレベータ2の所定の動作性能とが対応づけられている情報である。所定の動作性能は、例えば、速度、加速度、走行距離等である。
【0037】
動作性能情報521の所定の動作性能は、各エレベータ2を基準走行パラメータで走行させた際の値であり、例えば、エレベータ2の定格性能に基づいて予め設定された値である。基準走行パラメータは、後述する比較性能を規定するエレベータ2の走行パラメータである。動作性能情報521では、基準走行パラメータ及び所定の動作性能が変更可能に保存されていてもよい。
【0038】
第1履歴情報522及び第2履歴情報523には、各エレベータ2の過去の測定データが蓄積されている。第1履歴情報522には、各エレベータ2を基準走行パラメータで走行させて測定された過去の測定データが蓄積され、第2履歴情報523には、各エレベータ2を基準走行パラメータとは異なる走行パラメータで走行させて測定された過去の測定データが蓄積されている。履歴情報は、測定された走行パラメータごとに新たに作成されてもよい。なお、実際には、識別情報で特定されるエレベータ2ごとに、第1履歴情報522および第2履歴情報523が保存される。
【0039】
制御部51は、情報処理装置10から送信される識別情報を取得し、動作性能情報521に基づき、取得した識別情報に対応づけられたエレベータ2の所定の動作性能を情報処理装置10に送信する。
【0040】
(情報処理装置)
情報処理装置10は、測定で得た測定データを測定対象のエレベータ2と対応づけてサーバ装置50の記憶部52に保存する。情報処理装置10は、例えば、スマートフォンであってもよく、持ち運びが可能なPC(personal computer)であってもよい。情報処理装置10は、制御部11と、記憶部12と、加速度センサ13と、入力部14と、表示部15と、を備えている。
【0041】
加速度センサ13(センサ)は、エレベータ2の加速度を検出する。加速度センサ13は、乗りかご20の加速度を検出することで、エレベータ2の加速度を検出する。エレベータ2の加速度を測定する際、保守作業員は、例えば、情報処理装置10を乗りかご20内に持ち込み、乗りかご20の床に情報処理装置10を置いて乗りかご20の加速度を測定する。
【0042】
加速度センサ13は、検出した加速度の測定データを制御部11に出力する。なお、加速度センサ13は、情報処理装置10に備えられていなくてもよく、乗りかご20に予め設置されていてもよい。
【0043】
入力部14は、保守作業員が、識別情報の入力及び確認入力等を行うものである。例えば、入力部14はタッチパネルであり、各入力は、情報処理装置10の表示部15に重ねられたタッチパネルを介して行われる。
【0044】
表示部15は、保守作業員が視認可能であり、表示制御部115の制御に基づき、各種情報を表示する。表示部15の表示例について詳しくは後述する。
【0045】
制御部11は情報処理装置10の各部を統括的に制御する。制御部11の機能は、記憶部12に記憶されたプログラムを、CPUが実行することで実現されてよい。制御部11の詳細は後述する。記憶部12は、情報処理装置10が実行する各種のプログラム、及びプログラムによって使用されるデータを格納している。
【0046】
(制御部)
制御部11は、情報取得部111と、性能判定部112と、確認要求部113と、保存制御部114と、表示制御部115と、を備えている。なお、性能判定部112、確認要求部113及び保存制御部114は、情報処理装置10ではなくサーバ装置50が備えていてもよい。
【0047】
情報取得部111は、入力部14により入力されたエレベータ2の識別情報を取得する。識別情報の取得は、カメラの撮影画像から画像認識処理を利用して取得してもよく、識別情報が含まれた2次元コードまたはタグから取得してもよい。また、GPS(Global Positioning System)機能から現在位置を取得することで、現在位置に位置するエレベータ2の識別情報を特定してもよい。
【0048】
情報取得部111は、測定対象のエレベータ2の加速度を検出する加速度センサ13が出力した測定データを取得する。また、情報取得部111は入力部14の入力を受け付ける。
【0049】
性能判定部112は、識別情報により特定されるエレベータ2の所定の動作性能である比較性能と、測定データから算出される所定の動作性能である測定性能とを比較し、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定する。
【0050】
具体的には、性能判定部112は、情報取得部111が取得した識別情報をサーバ装置50に送信する。そして、性能判定部112は、サーバ装置50に送信した識別情報から特定されたエレベータ2の所定の動作性能をサーバ装置50から受け取る。性能判定部112は、サーバ装置50から受け取ったエレベータ2の所定の動作性能を比較性能とする。
【0051】
性能判定部112は、情報取得部111が取得した測定データから所定の動作性能を算出し、測定性能とする。そして、性能判定部112は、比較性能と測定性能とを比較して、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定する。第1所定値は、動作性能ごとに異なる値が設定されていてもよい。
【0052】
さらに、性能判定部112は、比較性能と測定性能とを比較し、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上である場合、比較性能と測定性能との差が第1所定値より大きい第2所定値以上であるか否かを判定する。第2所定値は、動作性能ごとに異なる値が設定されていてもよい。
【0053】
(確認供給部、表示制御部)
確認要求部113は、保守作業員に対して確認入力を要求する。確認入力の要求とは、保守作業員に対して、確認してもらいたい事項についてその確認結果の入力を求めることである。表示制御部115は、保守作業員に求める確認入力の内容に基づき、表示部15の表示を制御する。図2は、情報処理装置10の表示部15の表示例を示す図である。図2に基づき、確認要求部113及び表示制御部115について説明する。
【0054】
確認要求部113は、少なくとも1つの所定の動作性能において比較性能と測定性能との差が第1所定値以上である場合、測定データを保存してよいか否かの確認入力を要求する。具体的には、確認要求部113は、少なくとも1つの所定の動作性能において比較性能と測定性能との差が第1所定値以上である場合、測定データが、基準走行パラメータと異なる走行パラメータを設定して得られた測定データであるか否かの確認入力を求める。すなわち、確認入力では、測定データ測定時の走行パラメータが、基準走行パラメータと異なる走行パラメータであるか否かの確認が求められる。
【0055】
少なくとも1つの所定の動作性能において比較性能と測定性能との差が第1所定値以上である場合、表示制御部115は、例えば図2に示すように、「測定データとデータベースが不一致です」との表示31と共に、確認入力の要求として「設定変更した」との表示32を表示部15に表示する。保守作業員は表示32をタッチすることで、「確認入力」、すなわち、「測定データが基準走行パラメータと異なる走行パラメータで測定した測定データであるため、保存することを承認する入力」を行う。
【0056】
このように、確認要求部113により求められる、測定データを保存してよいか否かの確認入力は、測定データが基準走行パラメータと異なる走行パラメータを設定して得られた測定データであるか否かの確認入力により実行される。そのため、保守作業員は当該測定データの走行パラメータが基準走行パラメータと異なるものであるかどうかについて確認することにより、識別情報により特定されるエレベータ2と測定データとを対応づけて保存するか否かを判断することができる。
【0057】
確認要求部113は、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上となる動作性能を特定する。その場合、表示制御部115は、確認要求部113が要求する確認入力の表示32と共に、確認要求部113により特定された比較性能と測定性能との差が第1所定値以上となる動作性能を示す表示を表示部15に表示する。例えば、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上となる動作性能が速度及び加速度である場合、図2に示すように表示33において、一致しないデータとして速度及び加速度が表示される。
【0058】
このように、表示部15には、確認要求部113が要求する確認入力と共に、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上となる動作性能も表示される。そのため保守作業員は、識別情報により特定されるエレベータ2と測定データとを対応づけて保存するか否かの判断を、表示された動作性能に係る項目のみを確認するだけで行うことができる。これにより、保守作業員の作業負担を軽減することができる。
【0059】
また、表示制御部115は、確認要求部113で特定された比較性能と測定性能との差が第1所定値以上となる動作性能について、性能判定部112により算出された比較性能と測定性能との差、及び、第1所定値以上となる動作性能における比較性能と測定性能との値の少なくともいずれか一方を表示部15に表示する。
【0060】
例えば、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上となる動作性能が速度及び加速度である場合、表示部15には速度及び加速度について、測定データ(測定性能)及びデータベース(比較性能)の値が表示される(表示34)。なお、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上となる動作性能が2つ以上ある場合は、図2に示すように表示36に示すスクロールを操作することで、表示部15に表示しきれなかった動作性能の値(図2では加速度の値)が表示されるようになっていてもよい。
【0061】
これにより、保守作業員は表示部15の表示を確認するのみで、識別情報により特定されるエレベータ2と測定データとを対応づけて保存するか否かの判断を行うことができるので、保守作業員の作業負担を軽減することができる。
【0062】
確認要求部113は、少なくとも1つの所定の動作性能において比較性能と測定性能との差が第1所定値以上である場合、識別情報の再入力を要求する。このとき、表示制御部115は、図2に示すように、識別情報の再入力の要求として、「識別情報再入力」との表示35を表示部15に表示する。例えば、表示35をタッチすると、識別情報を再度入力できるキーが表示され、保守作業員は、識別情報を再度入力することができる。
【0063】
識別情報の再入力がされた場合、性能判定部112は、再入力された識別情報により特定されるエレベータ2の比較性能と、測定性能とを比較し、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定する。これにより、識別情報が誤入力された場合であっても、測定で得た測定データを正しい測定対象のエレベータ2と比較することができる。
【0064】
また、確認要求部113は、性能判定部112により、少なくとも1つ所定の動作性能において比較性能と測定性能との差が第2所定値以上であると判定された場合、確認入力の要求を停止する。
【0065】
(保存制御部)
保存制御部114は、測定データを保存してよいとの確認入力があった場合、識別情報により特定されるエレベータ2と測定データとを対応づけて記憶部52に保存する。具体的には、測定データが基準走行パラメータと異なる走行パラメータを設定して得られた測定データであるとの確認入力があった場合、保存制御部114は、測定データを、識別情報により特定されるエレベータ2と対応づけられて保存されている既存の測定データと区別して、識別情報により特定されるエレベータ2と測定データとを対応づけて記憶部52に保存する。
【0066】
例えば、保存制御部114は、図2において、表示32にタッチがあった場合、測定データを、識別情報により特定されるエレベータ2と対応づけ、既存の測定データ(第1履歴情報522)と区別して、第2履歴情報523に保存する。これにより、識別情報により特定されるエレベータ2に対して蓄積される測定データを用いる際、比較性能と測定性能との差が大きかった測定データを必要に応じて含まないで用いることができるので、蓄積データの活用性を高めることができる。
【0067】
また、保存制御部114は、確認入力の要求が停止された場合、測定データを保存しない。確認入力の要求は性能判定部112により、少なくとも1つ所定の動作性能において比較性能と測定性能との差が第2所定値以上であると判定された場合に停止される。比較性能と測定性能との差があまりにも大きい場合は、測定データに誤りがある、または、識別情報が誤入力されている可能性が高い。そのため、第2所定値を適宜設定することで、誤りがある測定データが保存されること、及び、誤入力された識別情報により特定されたエレベータ2に対応付けて測定データが保存されることを抑制することができる。
【0068】
<情報処理装置の動作の一例>
図3は、情報処理装置10の動作の一例を示すフロー図である。図3に基づき、情報処理装置10の動作の一例について説明する。まず、エレベータ2を走行させ、情報取得部111がその測定データを取得する(ステップS1、情報取得ステップ)。なお、測定時のエレベータ2の走行は、例えば、乗りかご20内に備えられた、行先階ボタンが設けられた操作盤を利用してエレベータ2を操作することで行われる。情報取得部111は、保守作業員が入力した識別情報を取得する(ステップS2、情報取得ステップ)。
【0069】
性能判定部112は、測定データから測定性能を算出し(ステップS3)、動作性能情報521からの比較性能と測定性能との差が第1所定値以上か否かを判定する(ステップS4、性能判定ステップ)。比較性能と測定性能との差が第1所定値未満であった場合(ステップS4でNO)、保存制御部114は、識別情報により特定されるエレベータ2と測定データとを対応づけて第1履歴情報522に保存する(ステップS5)。
【0070】
比較性能と測定性能との差が第1所定値以上であった場合(ステップS4でYES)、性能判定部112は、動作性能情報521からの比較性能と測定性能との差が第2所定値以上か否かを判定する(ステップS6)。比較性能と測定性能との差が第2所定値以上であった場合(ステップS6でYES)、測定データの保存を行わず処理を終了する。
【0071】
比較性能と測定性能との差が第2所定値未満であった場合(ステップS6でNO)、確認要求部113は、確認入力及び識別情報の再入力の要求を行う(ステップS7、確認要求ステップ)。その後、保存制御部114は、測定データを保存してもよいとの確認入力があったか否かを判定する(ステップS8)。
【0072】
測定データを保存してもよいとの確認入力があった場合(ステップS8でYES)、保存制御部114は、測定データを、既存のデータと区別して、識別情報により特定されるエレベータ2と測定データとを対応づけて第2履歴情報523に保存する(ステップS9、保存制御ステップ)。
【0073】
測定データを保存してもよいとの確認入力がなかった場合(ステップS8でNO)、性能判定部112は、識別情報の再入力があったか否かを判定する(ステップS10)。識別情報の再入力があった場合(ステップS10でYES)、ステップS4の処理に戻り性能判定部112は、再入力された識別情報により特定されるエレベータ2の比較性能と、測定性能とを比較し、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定する。識別情報の再入力がなかった場合(ステップS10でNO)、測定データの保存を行わず、処理を終了する。
【0074】
上述に示す情報処理装置10の動作処理(測定データの保存処理)により、保守作業員は、確認入力が要求された場合、当該測定データが走行パラメータを基準走行パラメータから変更したものであるかどうかについて等を確認し、識別情報により特定されるエレベータ2と測定データとを対応づけて保存してもよいか否かを判断した上で、測定データの保存を指示することができる。その結果、測定で得た測定データを測定対象のエレベータ2の適正な測定データとして正確に保存することができる。
【0075】
また、保守作業時では保守作業員は、一度に複数台のエレベータ2を調査する。情報処理装置10であれば、複数の測定データを取扱う場合であっても、確実に測定対象のエレベータ2の適正な測定データとして正確に保存することができる。
【0076】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部11に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0077】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0078】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0079】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0080】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0081】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 保守支援システム
2 エレベータ
10 情報処理装置
13 加速度センサ(センサ)
15 表示部
20 乗りかご
111 情報取得部
112 性能判定部
113 確認要求部
114 保存制御部
115 表示制御部
【要約】
【課題】測定データを測定対象のエレベータの適正な測定データとして正確に保存する。
【解決手段】情報処理装置(10)は、識別情報及び測定データを取得する情報取得部(111)と、識別情報により特定されるエレベータ(2)の比較性能と、測定データから算出される測定性能とを比較し、比較性能と測定性能との差が第1所定値以上であるか否かを判定する性能判定部(112)と、測定データを保存してよいか否かの確認入力を要求する確認要求部(113)と、識別情報により特定されるエレベータ(2)と測定データとを対応づけて保存する保存制御部(114)と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3