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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】燃焼装置およびガスタービンシステム
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/28 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
F23R3/28 B
F23R3/28 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023508843
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022008006
(87)【国際公開番号】W WO2022202103
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2021051544
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】内田 正宏
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177989(JP,A)
【文献】米国特許第09126210(US,B1)
【文献】特開2020-038038(JP,A)
【文献】特開2020-118391(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068212(WO,A1)
【文献】特開2014-185831(JP,A)
【文献】特開平09-178128(JP,A)
【文献】特開2011-141112(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115355532(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/22
F23R 3/28
F23R 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と、
前記燃焼室内に臨む水素噴射口を有する水素流路、前記燃焼室内に臨む第1空気噴射口を有する第1空気流路、および、前記燃焼室内に臨む第2空気噴射口を有し、前記第1空気流路と交差する方向に延在する第2空気流路を有する複数の流路群と、
を備え
前記複数の流路群は、前記燃焼室の周方向に互いに間隔を空けて、前記周方向に並設される、
燃焼装置。
【請求項2】
少なくとも1つの前記流路群において、前記水素流路は複数設けられる、
請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記流路群で、前記水素流路は、前記第1空気流路の延在方向および前記第2空気流路の延在方向に対して交差する方向において、前記第1空気流路と前記第2空気流路との間に配置される、
請求項1または2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記流路群において、前記水素流路は、前記第1空気流路および前記第2空気流路の一方の流路が前記燃焼室の軸方向に対して傾く方向に、前記一方の流路に対して並設される、
請求項1または2に記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記燃焼室の端部を塞ぐバーナプレートを備え、
前記バーナプレートには、前記複数の流路群が形成される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記バーナプレートには、複数の前記水素流路と連通するマニホールドが形成される、
請求項5に記載の燃焼装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の燃焼装置を備える、
ガスタービンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼装置およびガスタービンシステムに関する。本出願は2021年3月25日に提出された日本特許出願第2021-051544号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
燃焼器で燃料を燃焼させることによって動力を得るガスタービンシステムが利用されている。ガスタービンシステムとして、例えば、特許文献1に開示されているように、水素を燃料として用いるものがある。水素を燃料として用いることによって、二酸化炭素の排出が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-014400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素の燃焼速度は、天然ガス等の他の燃料の燃焼速度と比べて非常に速い。ゆえに、天然ガス等が燃料として用いられる場合と同様に、燃料と空気を予め混合してバーナから燃焼器の燃焼室に供給すると、水素が燃料として用いられる場合には、逆火(つまり、バーナ内に炎が逆流する現象)が生じやすくなってしまう。また、水素の燃焼により形成される火炎の温度は、他の燃料の燃焼により形成される火炎の温度と比べて高い。ゆえに、火炎によってバーナが溶損しやすくなってしまう。このように、バーナを火炎から保護する必要性が高い。
【0005】
本開示の目的は、バーナを火炎から保護することが可能な燃焼装置およびガスタービンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の燃焼装置は、燃焼室と、燃焼室内に臨む水素噴射口を有する水素流路、燃焼室内に臨む第1空気噴射口を有する第1空気流路、および、燃焼室内に臨む第2空気噴射口を有し、第1空気流路と交差する方向に延在する第2空気流路を有する複数の流路群と、を備え、複数の流路群は、燃焼室の周方向に互いに間隔を空けて、周方向に並設される
【0007】
少なくとも1つの流路群において、水素流路は複数設けられてもよい。
【0008】
少なくとも1つの流路群で、水素流路は、第1空気流路の延在方向および第2空気流路の延在方向に対して交差する方向において、第1空気流路と第2空気流路との間に配置されてもよい。
【0009】
少なくとも1つの流路群において、水素流路は、第1空気流路および第2空気流路の一方の流路が燃焼室の軸方向に対して傾く方向に、一方の流路に対して並設されてもよい。
【0010】
燃焼室の端部を塞ぐバーナプレートを備え、バーナプレートには、複数の流路群が形成されてもよい。
【0011】
バーナプレートには、複数の水素流路と連通するマニホールドが形成されてもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本開示のガスタービンシステムは、上記の燃焼装置を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、バーナを火炎から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の実施形態に係るガスタービンシステムの構成を示す模式図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係るバーナプレートを燃焼室側から見た図である。
図3図3は、図2中のA2-A2断面における断面図である。
図4図4は、第1の変形例に係るバーナプレートを燃焼室側から見た図である。
図5図5は、図4中のA3-A3断面における断面図である。
図6図6は、第2の変形例に係るバーナプレートを燃焼室側から見た図である。
図7図7は、図6中のA4-A4断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るガスタービンシステム1の構成を示す模式図である。図1に示すように、ガスタービンシステム1は、過給機11と、発電機12と、燃焼器13と、バーナ14と、水素タンク15と、流量制御弁16とを備える。
【0017】
ガスタービンシステム1のうち、燃焼器13と、バーナ14と、水素タンク15と、流量制御弁16とが、燃焼装置10に含まれる。
【0018】
過給機11は、圧縮機11aとタービン11bとを有する。圧縮機11aおよびタービン11bは、一体として回転する。圧縮機11aとタービン11bとは、シャフトによって連結されている。
【0019】
圧縮機11aは、燃焼器13と接続される吸気流路21に設けられている。吸気流路21には、燃焼器13に供給される空気が流通する。吸気流路21の上流側の端部には、空気が外部から取り込まれる不図示の吸気口が設けられる。吸気口から取り込まれた空気は、圧縮機11aを通過して、燃焼器13に送られる。圧縮機11aは、空気を圧縮して下流側に吐出する。
【0020】
タービン11bは、燃焼器13と接続される排気流路22に設けられている。排気流路22には、燃焼器13から排出された排気ガスが流通する。排気流路22の下流側の端部には、排気ガスが外部に排出される不図示の排気口が設けられる。燃焼器13から排出された排気ガスは、タービン11bを通過して、排気口に送られる。タービン11bは、排気ガスによって回されることによって、回転動力を生成する。
【0021】
発電機12は、過給機11と接続される。発電機12は、過給機11によって生成された回転動力を用いて発電する。
【0022】
燃焼器13は、ケーシング13aと、ライナ13bと、燃焼室13cとを有する。ケーシング13aは、略円筒形状を有する。ケーシング13aの内部に、ライナ13bが設けられる。ライナ13bは、略円筒形状を有する。ライナ13bは、ケーシング13aと同軸上に配置される。ライナ13bの内部には、燃焼室13cが形成されている。つまり、ライナ13bの内部空間が燃焼室13cに相当する。燃焼室13cは、略円柱形状の空間である。燃焼室13cには、排気流路22が接続されている。
【0023】
後述するように、燃焼室13cに、水素および空気が供給される。燃焼室13c内では、水素が燃料として用いられ、燃焼が行われる。燃焼室13c内での燃焼により生じた排気ガスは、排気流路22に排出される。ケーシング13aの内面とライナ13bの外面との間には、空間Sが形成されている。空間Sには、吸気流路21が接続されている。空間Sには、吸気流路21を介して圧縮機11aから空気が送られる。ライナ13bの端部(図1中の左側の端部)には、開口が形成される。ライナ13bの端部の開口に、バーナ14が挿通されている。
【0024】
バーナ14は、バーナプレート14aと、複数の水素供給管14bとを有する。バーナプレート14aは、ライナ13bの端部の開口を塞ぐ。つまり、バーナプレート14aは、燃焼室13cの端部を塞ぐ。バーナプレート14aは、円板形状を有する。水素供給管14bは、バーナプレート14aのうち燃焼室13c側に対して逆側の面に接続される。水素供給管14bは、ケーシング13aを貫通して、ケーシング13aの外部まで延在する。図1では、3つの水素供給管14bが示されている。ただし、水素供給管14bの数は限定されない。
【0025】
バーナプレート14aには、図2および図3を参照して後述するように、水素流路(具体的には、後述する水素流路31)と、空気流路(具体的には、後述する第1空気流路32および第2空気流路33)とが形成される。バーナプレート14aに形成される水素流路は、水素供給管14bと連通する。水素供給管14bには、後述するように、水素が送られる。水素供給管14bからバーナプレート14aに送られた水素は、バーナプレート14aの水素流路を通って、燃焼室13cに噴射される。図1中で一点鎖線矢印により示すように、空間Sに送られた空気は、空間Sを通過した後、バーナプレート14aのうち燃焼室13c側に対して逆側の面に到達する。バーナプレート14aに送られた空気は、バーナプレート14aの空気流路を通って燃焼室13cに噴射される。
【0026】
水素タンク15には、水素が貯蔵される。なお、水素タンク15内において、水素は液体であってもよく、気体であってもよい。水素タンク15は、流路23を介して流量制御弁16と接続されている。流量制御弁16は、流路24を介してバーナ14の各水素供給管14bと接続されている。水素タンク15に貯蔵される水素は、流路23、流量制御弁16および流路24を介して、水素供給管14bに供給される。流量制御弁16は、水素タンク15から水素供給管14bに供給される水素の流量を制御(つまり、調整)する。流量制御弁16の開度が調整されることによって、水素タンク15から水素供給管14bへの水素の供給量が調整される。
【0027】
以下では、燃焼室13cの周方向を単に周方向とも呼ぶ。燃焼室13cの径方向を単に径方向とも呼ぶ。燃焼室13cの軸方向を単に軸方向とも呼ぶ。
【0028】
図2は、バーナプレート14aを燃焼室13c側から見た図(具体的には、図1中の矢印A1方向から見た図)である。具体的には、図2では、バーナプレート14aの外周側の一部が示されている。図3は、図2中のA2-A2断面における断面図である。
【0029】
図2および図3に示すように、バーナプレート14aには、水素流路31、第1空気流路32および第2空気流路33を有する流路群30が複数形成されている。複数の流路群30は、周方向に並設される。ただし、隣り合う流路群30の間隔(つまり、周方向の離隔距離)は、図2および図3の例に限定されない。複数の流路群30は、等間隔に並設されてもよく、不等間隔に並設されてもよい。ただし、複数の流路群30の配置は、後述するように、この例に限定されない。
【0030】
水素流路31は、燃焼室13c内に臨む水素噴射口31aを有する。水素噴射口31aは、バーナプレート14aのうち燃焼室13c側の面に設けられる。バーナプレート14aには、複数の水素流路31と連通するマニホールド40が形成される。マニホールド40は、周方向に延在する。マニホールド40は、例えば、環状に形成される。マニホールド40は、各流路群30の水素流路31と連通する。図2の例では、マニホールド40は、複数の流路群30よりも径方向外側に設けられる。ただし、マニホールド40の配置は、この例に限定されない。例えば、マニホールド40は、複数の流路群30よりも径方向内側に設けられてもよい。
【0031】
マニホールド40には、バーナ14の複数の水素供給管14bが接続されている。複数の水素供給管14bからマニホールド40を介して各流路群30の水素流路31に水素が供給される。水素流路31に供給された水素は、水素噴射口31aから燃焼室13cに噴射される。
【0032】
水素流路31は、直線状に形成される。水素流路31は、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側(図2中の時計回り方向)に傾く。燃焼室側軸方向は、燃焼室13cの軸方向のうち燃焼室13cを向く方向である。燃焼室側軸方向に対して周方向に傾くことは、燃焼室側軸方向のベクトルに周方向のベクトルを合成したベクトルの方向に延在すること、または、燃焼室13cに近づくにつれて周方向に進むように傾くことを意味する。つまり、水素流路31の延在方向は、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側に傾く方向である。ゆえに、水素噴射口31aから噴射される水素の噴射方向は、矢印B1により示すように、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側に傾く方向となる。ただし、後述するように、水素流路31の延在方向は、この例に限定されない。なお、水素流路31は、屈曲または湾曲していてもよい。
【0033】
水素流路31の流路断面積は、例えば、水素流路31の延在方向の各位置で一定である。ただし、水素流路31の流路断面積は、水素流路31の延在方向の各位置で一定でなくてもよい。水素流路31の流路断面積が水素噴射口31aにおいて他の部分と比べて小さくなっていると、水素噴射口31aから噴射される水素の噴射速度が高くなり、水素と空気との混合が促進される。
【0034】
第1空気流路32は、燃焼室13c内に臨む第1空気噴射口32aを有する。第1空気噴射口32aは、バーナプレート14aのうち燃焼室13c側の面に設けられる。第1空気流路32は、水素流路31に対して周方向の他側(図2中の反時計回り方向)に設けられる。第1空気噴射口32aは、水素噴射口31aに対して周方向の他側に設けられる。ただし、後述するように、第1空気流路32と水素流路31との位置関係は、この例に限定されない。
【0035】
第1空気流路32は、直線状に形成される。第1空気流路32は、バーナプレート14aを燃焼室13c側から燃焼室13c側に対して逆側まで貫通する。燃焼器13内の空間Sを通ってバーナプレート14aに送られた空気の一部は、第1空気流路32に供給される。第1空気流路32に供給された空気は、第1空気噴射口32aから燃焼室13cに噴射される。
【0036】
第1空気流路32は、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側(図2中の時計回り方向)に傾く。つまり、第1空気流路32の延在方向は、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側に傾く方向である。ゆえに、第1空気噴射口32aから噴射される空気の噴射方向は、矢印B2により示すように、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側に傾く方向となる。ただし、後述するように、第1空気流路32の延在方向は、この例に限定されない。なお、第1空気流路32は、厳密には、湾曲していてもよい。つまり、第1空気流路32の延在方向の各位置で、燃焼室側軸方向に対する第1空気流路32の傾斜角が厳密には多少異なっていてもよい。
【0037】
第1空気流路32の流路断面積は、例えば、第1空気流路32の延在方向の各位置で一定である。ただし、第1空気流路32の流路断面積は、第1空気流路32の延在方向の各位置で一定でなくてもよい。第1空気流路32の流路断面積が第1空気噴射口32aにおいて他の部分と比べて小さくなっていると、第1空気噴射口32aから噴射される空気の噴射速度が高くなり、水素と空気との混合が促進される。
【0038】
第2空気流路33は、燃焼室13c内に臨む第2空気噴射口33aを有する。第2空気噴射口33aは、バーナプレート14aのうち燃焼室13c側の面に設けられる。第2空気流路33は、水素流路31および第1空気流路32よりも径方向内側に設けられる。第2空気噴射口33aは、水素噴射口31aに対して径方向内側に設けられる。第2空気噴射口33aの周方向位置は、第1空気噴射口32aの周方向位置よりも周方向の一側(図2中の時計回り方向)である。第2空気噴射口33aの径方向位置は、第1空気噴射口32aの径方向位置よりも径方向内側である。ただし、後述するように、第2空気流路33と、水素流路31および第1空気流路32との位置関係は、この例に限定されない。
【0039】
第2空気流路33は、直線状に形成される。第2空気流路33は、バーナプレート14aを燃焼室13c側から燃焼室13c側に対して逆側まで貫通する。燃焼器13内の空間Sを通ってバーナプレート14aに送られた空気の一部は、第2空気流路33に供給される。第2空気流路33に供給された空気は、第2空気噴射口33aから燃焼室13cに噴射される。
【0040】
第2空気流路33は、燃焼室側軸方向に対して周方向の他側(図2中の反時計回り方向)に傾く。つまり、第2空気流路33の延在方向は、燃焼室側軸方向に対して周方向の他側に傾く方向である。ゆえに、第2空気噴射口33aから噴射される空気の噴射方向は、矢印B3により示すように、燃焼室側軸方向に対して周方向の他側に傾く方向となる。ただし、後述するように、第2空気流路33の延在方向は、第1空気流路32の延在方向と交差していればよく、この例に限定されない。なお、第2空気流路33は、厳密には、湾曲していてもよい。つまり、第2空気流路33の延在方向の各位置で、燃焼室側軸方向に対する第2空気流路33の傾斜角が厳密には多少異なっていてもよい。
【0041】
第2空気流路33の流路断面積は、例えば、第2空気流路33の延在方向の各位置で一定である。ただし、第2空気流路33の流路断面積は、第2空気流路33の延在方向の各位置で一定でなくてもよい。第2空気流路33の流路断面積が第2空気噴射口33aにおいて他の部分と比べて小さくなっていると、第2空気噴射口33aから噴射される空気の噴射速度が高くなり、水素と空気との混合が促進される。
【0042】
上記のように、第2空気流路33は、第1空気流路32と交差する方向に延在する。ゆえに、第2空気噴射口33aから噴射される空気の噴射方向は、第1空気噴射口32aから噴射される空気の噴射方向と交差する。具体的には、第1空気流路32は、燃焼室13cに近づくにつれて、燃焼室13cの軸方向と直交する方向において、第2空気噴射口33aに近づく。一方、第2空気流路33は、燃焼室13cに近づくにつれて、燃焼室13cの軸方向と直交する方向において、第1空気噴射口32aに近づく。
【0043】
よって、第1空気噴射口32aから噴射される空気、および、第2空気噴射口33aから噴射される空気は、互いに干渉し、矢印C1により示すように、燃焼室13cの軸方向の中心軸まわりに旋回する。水素噴射口31aから噴射される水素は、矢印C1により示す空気の旋回流に向けて噴射される。ゆえに、水素噴射口31aから噴射される水素は、矢印C1により示す空気の旋回流によって、旋回しながら空気と混合される。
【0044】
以上説明したように、ガスタービンシステム1の燃焼装置10によれば、燃焼室13c内に生じる空気の旋回流によって、水素噴射口31aから噴射される水素が空気と急速に混合される。ゆえに、水素と空気が予め混合された状態で燃焼室13cに供給される場合と比べて、着火位置が燃焼室13cの内部側になる。よって、逆火が抑制される。また、バーナ14の溶損が抑制される。ゆえに、バーナ14を火炎から保護することができる。さらに、燃焼室13c内に生じる空気の旋回流によって、火炎が旋回流の中心側に保持されて安定化される。また、空気の供給量を適宜調整し、火炎の温度を低下させることによって、NOxの排出量の低減も実現される。
【0045】
燃焼装置10では、燃焼室13cの端部を塞ぐバーナプレート14aに、複数の流路群30が形成される。ゆえに、バーナプレート14aを金属積層技術等によって一体成型することによって、複数の流路群30を容易に形成することができる。このようにバーナプレート14aが一体成型されることによって、複数の流路群30を形成する部材がバーナプレート14aと別体である場合と比べ、バーナ14の構造が簡略化され、バーナ14が小型化され、バーナ14の製造コストが低減される。また、部材の接合部分からの水素の漏れが抑制される。また、熱応力による接合部分での割れの発生が抑制される。
【0046】
燃焼装置10では、バーナプレート14aには、複数の水素流路31と連通するマニホールド40が形成される。ゆえに、バーナプレート14aを金属積層技術等によって一体成型することによって、マニホールド40を容易に形成することができる。このようにバーナプレート14aが一体成型されることによって、マニホールド40を形成する部材がバーナプレート14aと別体である場合と比べ、バーナ14の構造が簡略化され、バーナ14が小型化され、バーナ14の製造コストが低減される。また、部材の接合部分からの水素の漏れが抑制される。また、熱応力による接合部分での割れの発生が抑制される。
【0047】
なお、バーナプレート14aを分割した各部分(例えば、周方向に所定角度ずつ分割した各部分)を金属積層技術等によってそれぞれ一体成型し、得られる部材を組み立ててもよい。その場合にも、バーナ14の製造コストが低減され、部材の接合部分からの水素の漏れが抑制され、熱応力による接合部分での割れの発生が抑制される。
【0048】
以下、図4図7を参照して、各変形例に係るガスタービンシステムについて説明する。なお、以下で説明する各変形例に係るガスタービンシステムでは、バーナプレート以外の構成については、上述したガスタービンシステム1と同様なので、説明を省略する。
【0049】
図4は、第1の変形例に係るバーナプレート14aAを燃焼室13c側から見た図である。具体的には、図4では、バーナプレート14aAの外周側の一部が示されている。図5は、図4中のA3-A3断面における断面図である。図4および図5に示すように、第1の変形例に係るガスタービンシステム1Aの燃焼装置10Aは、バーナプレート14aAを備える。
【0050】
バーナプレート14aAでは、上述したバーナプレート14aと比較して、各流路群30において、水素流路31が複数設けられる点が異なる。
【0051】
図4および図5に示すように、バーナプレート14aAに形成される各流路群30は、2つの水素流路31、第1空気流路32および第2空気流路33を有する。上述したバーナプレート14aと同様に、各流路群30において、第1空気流路32は、第2空気流路33に対して径方向外側に位置する。第1空気流路32は、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側(図4中の時計回り方向)に傾く。第2空気流路33は、燃焼室側軸方向に対して周方向の他側(図4中の反時計回り方向)に傾く。第2空気噴射口33aの周方向位置は、第1空気噴射口32aの周方向位置よりも周方向の一側である。第2空気噴射口33aの径方向位置は、第1空気噴射口32aの径方向位置よりも径方向内側である。
【0052】
2つの水素流路31は、ともに、燃焼室13c内に臨む水素噴射口31aを有する。2つの水素流路31は、ともに、マニホールド40と連通する。
【0053】
各流路群30において、一方の水素流路31(図4中の右上側の水素流路31)は、第1空気流路32に対して周方向の一側(図4中の時計回り方向)、かつ、第2空気流路33に対して径方向外側に設けられる。一方の水素流路31の水素噴射口31aは、第1空気噴射口32aに対して周方向の一側、かつ、第2空気噴射口33aに対して径方向外側に設けられる。
【0054】
一方の水素流路31は、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側(図4中の時計回り方向)に傾く。つまり、一方の水素流路31の延在方向は、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側に傾く方向である。ゆえに、一方の水素流路31の水素噴射口31aから噴射される水素の噴射方向は、矢印B1により示すように、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側に傾く方向となる。
【0055】
各流路群30において、他方の水素流路31(図4中の左下側の水素流路31)は、第2空気流路33に対して周方向の他側(図4中の反時計回り方向)、かつ、第1空気流路32に対して径方向内側に設けられる。他方の水素流路31の水素噴射口31aは、第2空気噴射口33aに対して周方向の他側、かつ、第1空気噴射口32aに対して径方向内側に設けられる。
【0056】
他方の水素流路31は、燃焼室側軸方向に対して周方向の他側(図4中の反時計回り方向)に傾く。つまり、他方の水素流路31の延在方向は、燃焼室側軸方向に対して周方向の他側に傾く方向である。ゆえに、他方の水素流路31の水素噴射口31aから噴射される水素の噴射方向は、矢印B4により示すように、燃焼室側軸方向に対して周方向の他側に傾く方向となる。
【0057】
第1の変形例に係る燃焼装置10Aにおいても、上述した燃焼装置10と同様に、第1空気噴射口32aから噴射される空気、および、第2空気噴射口33aから噴射される空気によって、燃焼室13c内に空気の旋回流が生じる。各流路群30において、2つの水素噴射口31aから噴射される水素は、矢印C1により示す空気の旋回流に向けて噴射される。ゆえに、2つの水素噴射口31aから噴射される水素は、矢印C1により示す空気の旋回流によって、旋回しながら空気と混合される。それにより、バーナ14を火炎から保護することができる。さらに、NOxの排出量の低減も実現される。
【0058】
上記のように、第1の変形例に係る燃焼装置10Aでは、各流路群30において、水素流路31が複数(具体的には、2つ)設けられる。それにより、上述した燃焼装置10と比べて、燃焼室13cへの水素の供給量が増大する。
【0059】
上記では、各流路群30において、水素流路31が2つ設けられる例を説明した。ただし、流路群30において、水素流路31が3つ以上設けられてもよい。また、一部の流路群30のみにおいて、水素流路31が複数設けられてもよい。少なくとも1つの流路群30において、水素流路31が複数設けられれば、上記の燃焼装置10Aと同様の効果が奏される。
【0060】
図6は、第2の変形例に係るバーナプレート14aBを燃焼室13c側から見た図である。具体的には、図6では、バーナプレート14aBの外周側の一部が示されている。図7は、図6中のA4-A4断面における断面図である。図6および図7に示すように、第2の変形例に係るガスタービンシステム1Bの燃焼装置10Bは、バーナプレート14aBを備える。
【0061】
バーナプレート14aBでは、上述したバーナプレート14aと比較して、各流路群30における水素流路31と第1空気流路32と第2空気流路33との位置関係が異なる。
【0062】
図6および図7に示すように、バーナプレート14aBに形成される各流路群30は、水素流路31、第1空気流路32および第2空気流路33を有する。上述したバーナプレート14aと同様に、各流路群30において、第1空気流路32は、第2空気流路33に対して径方向外側に位置する。第1空気流路32は、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側(図6中の時計回り方向)に傾く。第2空気流路33は、燃焼室側軸方向に対して周方向の他側(図6中の反時計回り方向)に傾く。第2空気噴射口33aの周方向位置は、第1空気噴射口32aの周方向位置よりも周方向の一側である。第2空気噴射口33aの径方向位置は、第1空気噴射口32aの径方向位置よりも径方向内側である。
【0063】
第2の変形例では、水素流路31は、径方向において、第1空気流路32と第2空気流路33との間に配置される。水素流路31は、第1空気流路32および第2空気流路33と径方向に離隔する。水素噴射口31aは、径方向において、第1空気噴射口32aと第2空気噴射口33aとの間に配置される。水素噴射口31aは、第1空気噴射口32aおよび第2空気噴射口33aと径方向に離隔する。
【0064】
水素流路31は、燃焼室13cの軸方向に延在する。つまり、水素流路31の延在方向は、燃焼室13cの軸方向である。ゆえに、水素噴射口31aから噴射される水素の噴射方向は、図7中で矢印B1により示すように、燃焼室13cの軸方向となる。水素噴射口31aの中心は、周方向において、第1空気噴射口32aの中心と第2空気噴射口33aの中心との中央付近に配置される。
【0065】
第2の変形例に係る燃焼装置10Bにおいても、上述した燃焼装置10と同様に、第1空気噴射口32aから噴射される空気、および、第2空気噴射口33aから噴射される空気によって、燃焼室13c内に空気の旋回流が生じる。水素噴射口31aから噴射される水素は、矢印C1により示す空気の旋回流に向けて噴射される。ゆえに、水素噴射口31aから噴射される水素は、矢印C1により示す空気の旋回流によって、旋回しながら空気と混合される。それにより、バーナ14を火炎から保護することができる。さらに、NOxの排出量の低減も実現される。
【0066】
上記のように、第2の変形例に係る燃焼装置10Bでは、各流路群30で、水素流路31は、第1空気流路32の延在方向および第2空気流路33の延在方向に対して交差する方向(具体的には、径方向)において、第1空気流路32と第2空気流路33との間に配置される。それにより、上述した燃焼装置10と比べて、第1空気流路32または第2空気流路33と水素流路31との干渉が抑制される。ゆえに、水素流路31の配置の自由度が向上する。
【0067】
例えば、上記の例のように、水素流路31の延在方向と、第1空気噴射口32aおよび第2空気噴射口33aに対する水素噴射口31aの位置とを設定することによって、矢印C1により示す空気の旋回流の中央付近に向けて水素噴射口31aから水素を噴射させることができる。それにより、水素噴射口31aから噴射された水素が空気の旋回流を外れにくくなる。ゆえに、水素噴射口31aから噴射される水素を空気と適切に混合させることができる。
【0068】
上記では、各流路群30で、水素流路31が、第1空気流路32の延在方向および第2空気流路33の延在方向に対して交差する方向(具体的には、径方向)において、第1空気流路32と第2空気流路33との間に配置される例を説明した。ただし、一部の流路群30のみで、水素流路31が、第1空気流路32の延在方向および第2空気流路33の延在方向に対して交差する方向において、第1空気流路32と第2空気流路33との間に配置されてもよい。少なくとも1つの流路群30で、水素流路31が、第1空気流路32の延在方向および第2空気流路33の延在方向に対して交差する方向において、第1空気流路32と第2空気流路33との間に配置されれば、上記の燃焼装置10Bと同様の効果が奏される。
【0069】
なお、上述した燃焼装置10のように、少なくとも1つの流路群30において、水素流路31が、第1空気流路32および第2空気流路33の一方の流路が燃焼室13cの軸方向に対して傾く方向に、当該一方の流路に対して並設されてもよい。例えば、図2の例では、第1空気流路32は、燃焼室13cの軸方向に対して周方向に傾く。そして、水素流路31は、第1空気流路32に対して周方向に並設されている。このような場合においても、水素噴射口31aから噴射される水素が、空気の旋回流によって、旋回しながら空気と混合されることが実現される。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
上記では、ガスタービンシステム1、ガスタービンシステム1Aおよびガスタービンシステム1Bにおいて、過給機11によって生成された回転動力が発電機12を駆動させるエネルギとして利用される例を説明した。ただし、ガスタービンシステム1、ガスタービンシステム1Aおよびガスタービンシステム1Bにおいて、過給機11によって生成された回転動力が他の用途(例えば、船舶等の移動体を駆動させる目的等)に利用されてもよい。
【0072】
上記では、第1空気流路32の延在方向が、燃焼室側軸方向に対して周方向の一側(図2中の時計回り方向)に傾く方向である例を説明した。ただし、第1空気流路32の延在方向は、上記の例に限定されない。例えば、第1空気流路32の延在方向は、燃焼室側軸方向に対して径方向に傾いていてもよい。各流路群30の間で、第1空気流路32の延在方向が異なっていてもよい。
【0073】
第2空気流路33の延在方向も、第1空気流路32の延在方向と同様に、上記の例に限定されない。例えば、第2空気流路33の延在方向は、燃焼室側軸方向に対して径方向に傾いていてもよい。ただし、第2空気流路33の延在方向は、第1空気流路32の延在方向と交差する。各流路群30の間で、第2空気流路33の延在方向が異なっていてもよい。
【0074】
水素流路31の延在方向も、第1空気流路32の延在方向と同様に、上記の例に限定されない。例えば、水素流路31の延在方向は、燃焼室側軸方向に対して径方向に傾いていてもよい。また、例えば、ガスタービンシステム1またはガスタービンシステム1Aにおいて、水素流路31の延在方向は、第1空気流路32および第2空気流路33のいずれの延在方向とも一致していなくてもよい。また、例えば、ガスタービンシステム1Bにおいて、水素流路31の延在方向は、第1空気流路32または第2空気流路33の延在方向と一致していてもよい。各流路群30の間で、水素流路31の延在方向が異なっていてもよい。
【0075】
上記では、各図面を参照して、各流路群30における水素流路31と第1空気流路32と第2空気流路33との位置関係の例を説明した。ただし、各流路群30における水素流路31と第1空気流路32と第2空気流路33との位置関係は、この例に限定されない。例えば、第2空気流路33が、第1空気流路32よりも径方向外側に設けられてもよい。各流路群30の間で、水素流路31と第1空気流路32と第2空気流路33との位置関係が異なっていてもよい。
【0076】
上記では、複数の流路群30が燃焼室13cの周方向に並設される例を説明した。ただし、複数の流路群30の配置は、この例に限定されない。例えば、周方向に並設された複数の流路群30が、燃焼室13cの径方向に並設されていてもよい。
【0077】
上記では、燃焼室13cの形状が略円柱形状である例を説明した。ただし、燃焼室13cの形状は、この例に限定されない。例えば、燃焼室13cは、略円筒形状の空間であってもよい。バーナプレート14a、バーナプレート14aAおよびバーナプレート14aBの形状は、燃焼室13cの形状に応じて適宜変更され得る。
【0078】
上記で説明した図1の例では、圧縮機11aから燃焼器13に送られた空気は、ライナ13bの外周面とケーシング13aの内周面との間を通った後に燃焼室13cに送られる。ただし、圧縮機11aから燃焼器13に送られた空気の経路はこの例(つまり、ターンフロー型)に限定されない。
【符号の説明】
【0079】
1:ガスタービンシステム 1A:ガスタービンシステム 1B:ガスタービンシステム 10:燃焼装置 10A:燃焼装置 10B:燃焼装置 13c:燃焼室 14a:バーナプレート 14aA:バーナプレート 14aB:バーナプレート 30:流路群 31:水素流路 31a:水素噴射口 32:第1空気流路 32a:第1空気噴射口 33:第2空気流路 33a:第2空気噴射口 40:マニホールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7