(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ヘッドレスト用表皮材、およびヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
B60N 2/879 20180101AFI20240319BHJP
B60N 2/80 20180101ALI20240319BHJP
【FI】
B60N2/879
B60N2/80
(21)【出願番号】P 2024501636
(86)(22)【出願日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2023030545
【審査請求日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2022136709
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真育
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-218115(JP,A)
【文献】特開2010-023819(JP,A)
【文献】特開2016-022279(JP,A)
【文献】特開2007-195768(JP,A)
【文献】特開2018-140691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0176479(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/879
B60N 2/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表皮片(30,40,50)によって縫製されるとともに、ステー(12)の脚部(13)が突出する底部(11a)を備えたヘッドレスト用表皮材(20)であって、
前記複数の表皮片は、
前記底部を構成する第一表皮片(30)と、
前記第一表皮片に隣接して配置された第二表皮片(50)と、
前記第一表皮片の内面に取付けられたシール表皮片(40)と、を備え、
前記第一表皮片の周縁と前記第二表皮片の周縁とが、発泡樹脂(17)が注入される注入口(23)を除いて縫合された状態に構成されており、
前記第一表皮片は、
前記注入口から前記ヘッドレスト用表皮材の内方に突出する第一突片(31)と、
前記ステーの脚部が挿通される一対の第一挿通孔(32)と、
前記一対の第一挿通孔から前記第一突片の先端縁まで延びる一対の第一スリット(33)と、
前記一対の第一スリットにより形成された第一舌片(34)と、を備え、
前記第二表皮片は、
前記注入口から前記ヘッドレスト用表皮材の内方に突出し、前記第一突片に対向して配置される第二突片(51)を備え、
前記シール表皮片は、前記第一表皮片の内面のうち前記一対の第一スリットおよび前記一対の第一挿通孔が形成された領域よりも広い領域を前記第一表皮片の内側から覆うとともに、前記第一表皮片の内面のうち前記一対の第一スリットの並ぶ方向について前記一対の第一スリットよりも外側の位置に係止されており、
前記シール表皮片は、
前記一対の第一挿通孔と重なる位置に設けられて前記ステーの脚部が挿通される一対の第二挿通孔(41)と、
前記一対の第二挿通孔から延びるとともに、前記一対の第一挿通孔の差渡し寸法よりも幅狭な第二スリット(42)と、
前記一対の第二挿通孔の孔縁部と前記第二スリットとにより形成された第二舌片(43)と、を備える、ヘッドレスト用表皮材。
【請求項2】
前記第二スリットは、前記一対の第二挿通孔のそれぞれから前記第一突片の先端縁とは反対側の端縁まで延びて形成された一対の第二スリットとされており、
前記第二舌片は、前記一対の第二挿通孔の孔縁部と前記一対の第二スリットにより形成されており、
前記第一舌片が外方に引き出された状態であり、且つ、前記第二舌片が撓み変形した状態において、前記第一舌片と前記第二舌片との間に形成された隙間が、前記ステーを挿入するためのステー用開口として構成されている、請求項1に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項3】
前記第二スリット(42a,42b,42c)は、前記一対の第二挿通孔の間に形成されて、前記一対の第二挿通孔を連通して形成されており、
前記第一舌片が外方に引き出された状態において、前記第二スリットが、前記ステーを挿入するためのステー用開口として構成されており、
前記ステーが挿入された状態で前記第一舌片が前記第二スリットを外側から覆う、請求項1に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項4】
前記シール表皮片の1つの側縁(40a)は、前記第一突片の突出方向と交差する方向について前記第一突片の幅寸法と同じ長さ寸法を有するように形成されており、
前記シール表皮片の前記1つの側縁が、前記第一突片の先端縁(31a)と合致して配置されている、請求項1に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項5】
前記シール表皮片は、
前記第一表皮片の内面のうち前記一対の第一スリットの並ぶ方向について前記一対の第一スリットよりも外側の位置において、少なくとも、前記第一表皮片の内面に、前記第一突片の先端縁と重なる部分から、前記一対の第一挿通孔が形成された領域に重なる部分に亘って係止されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項6】
前記シール表皮片は、
前記第一表皮片の内面のうち前記一対の第一スリットの並ぶ方向について前記一対の第一スリットよりも外側の位置において、前記第一表皮片の内面に、前記第一突片の先端縁と重なる部分から、前記第一突片の先端縁と背向する端縁部まで係止されている、請求項5に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項7】
前記第一表皮片と前記シール表皮片とは、縫合されることにより係止されている、請求項5に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項8】
前記第一表皮片と前記シール表皮片との縫合部分の一部が、前記第一表皮片と前記第二表皮片との縫合部分を兼ねている、請求項7に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項9】
さらに、前記シール表皮片のうち前記第一表皮片と反対側の面に、前記一対の第一スリットの並ぶ方向について前記一対の第一スリットよりも外側の位置に固定された、弾性変形可能な弾性部材(61)を備え、
前記弾性部材の弾発力で前記シール表皮片が前記第一表皮片に押圧されることによって、前記シール表皮片が前記第一表皮片の裏面に係止されている、請求項5に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項10】
さらに、前記シール表皮片のうち前記第一表皮片と反対側の面に、前記第一舌片と重なる領域に固定された弾性変形可能な補強部材(62)を備える、請求項5に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項11】
さらに、前記シール表皮片と前記第一表皮片の対向する面に固定された面ファスナー(71,72)を備え、
前記面ファスナーにより、前記シール表皮片と前記第一表皮片とが係止されている、請求項5に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項12】
さらに、前記シール表皮片と前記第一表皮片の対向する面の一方に接着された両面テープ(81)を備え、
前記両面テープにより、前記シール表皮片と前記第一表皮片とが係止されている、請求項5に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項13】
前記シール表皮片は、前記第一突片の先端縁と合致して配置される側縁が、一対の長辺の一辺として構成される長方形状に形成されている、請求項4に記載のヘッドレスト用表皮材。
【請求項14】
請求項1から3のいずれか1項に記載のヘッドレスト用表皮材と、
前記ヘッドレスト用表皮材の内側に配される部分に構造物が配置されるとともに、前記一対の第一挿通孔および前記一対の第二挿通孔から前記脚部が挿通される前記ステーと、
前記ヘッドレスト用表皮材内に充填された発泡樹脂と、を備えたヘッドレスト(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレスト用表皮材、およびヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の座席に取付けられるヘッドレストは、袋状に縫製された表皮材と、表皮材の内側に充填された発泡樹脂と、表皮材の内側に配されるとともに表皮材の外側に突出する金属製のステーと、を備える。
【0003】
ステーが、1つの金属棒材を例えばU字状などの一筆書き状に屈曲させた形態である場合、表皮材に形成された一対のステー孔の一方からステーの一端部を挿入し、他方のステー孔から表皮材の外部へと上記のステーの一端部を挿通させることにより、表皮材の内側にステーの中間部を配置するとともに、表皮材の外側にステーの両脚部を突出させる構成とすることができる。表皮材にステーが取付けられた後、発泡樹脂を注入するための原料注入口から発泡樹脂を注入した後、発泡樹脂を発泡および硬化させることにより、ヘッドレストが形成される。
【0004】
近時、ステーのうち表皮材の内側に配置される部分に、補強用の金属部材や、ヒータ、スピーカ等の電気部品等の構造物が取付けられる場合がある。このような構成のステーの場合、構造物をステー挿通孔に挿通させることができないので、上記のような手順で表皮材の内側にステーを配置することはできない。
【0005】
そこで、特開平9-56939号公報(特許文献1)に記載されているように、ステーを挿入するための線状切り口を表皮材に設けるとともに、線状切り口を外側から覆い隠す舌片を設ける技術が考えられた。上記の技術によれば、線状切り口からステーおよび構造物を表皮材の内部に挿入し、その後、線状切り口を外側から舌片で覆い、線状切り口が舌片で覆われた状態で原料注入口から発泡樹脂を注入する。これにより、構造物が取付けられたステーをヘッドレストの内部に配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の技術によると、線状切り口を外側から舌片で覆っても、線状切り口と舌片の隙間から発泡樹脂が漏出する恐れがある。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、構造物が取付けられたステーを表皮材の内部に配置するとともに、発泡樹脂の漏出を抑制可能なヘッドレスト用表皮材およびヘッドレストを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、
複数の表皮片によって縫製されるとともに、ステーの脚部が突出する底部を備えたヘッドレスト用表皮材であって、
前記複数の表皮片は、
前記底部を構成する第一表皮片と、
前記第一表皮片に隣接して配置された第二表皮片と、
前記第一表皮片の内面に取付けられたシール表皮片と、を備え、
前記第一表皮片の周縁と前記第二表皮片の周縁とが、発泡樹脂が注入される注入口を除いて縫合された状態に構成されており、
前記第一表皮片は、
前記注入口から前記ヘッドレスト用表皮材の内方に突出する第一突片と、
前記ステーの脚部が挿通される一対の第一挿通孔と、
前記一対の第一挿通孔から前記第一突片の先端縁まで延びる一対の第一スリットと、
前記一対の第一スリットにより形成された第一舌片と、を備え、
前記第二表皮片は、
前記注入口から前記ヘッドレスト用表皮材の内方に突出し、前記第一突片に対向して配置される第二突片を備え、
前記シール表皮片は、前記第一表皮片の内面のうち前記一対の第一スリットおよび前記一対の第一挿通孔が形成された領域よりも広い領域を前記第一表皮片の内側から覆うとともに、前記第一表皮片の内面のうち前記一対の第一スリットの並ぶ方向について前記一対の第一スリットよりも外側の位置に係止されており、
前記シール表皮片は、
前記一対の第一挿通孔と重なる位置に設けられて前記ステーの脚部が挿通される一対の第二挿通孔と、
前記一対の第二挿通孔から延びるとともに、前記一対の第一挿通孔の差渡し寸法よりも幅狭な第二スリットと、
前記一対の第二挿通孔の孔縁部と前記一対の第二スリットとにより形成された第二舌片と、を備える、ヘッドレスト用表皮材にある。
【0010】
また、本開示の他の態様は、
上記のヘッドレスト用表皮材と、
前記ヘッドレスト用表皮材の内側に配される部分に構造物が配置されるとともに、前記一対の第一挿通孔および前記一対の第二挿通孔から前記脚部が挿通される前記ステーと、
前記ヘッドレスト用表皮材内に充填された発泡樹脂と、を備えたヘッドレストにある。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、ステー用開口と注入口との間においては、内側に位置するシール表皮片と、外側に位置する第一表皮片との二重構成とされている。さらに、ステー用開口よりも注入口とは反対側においても、内側に位置するシール表皮片と、外側に位置する第一表皮片との二重構成とされている。このように、ステー用開口を中心として、注入口側においても、注入口とは反対側においても、シール表皮片と第一表皮片との二重構成とされている。
【0012】
詳細には、第一表皮片に形成される一対の第一スリットは、シール表皮片によって第一表皮片の内側から覆われている。従って、発泡樹脂が一対の第一スリットに到達することが抑制される。この結果、発泡樹脂が一対の第一スリットから漏出することを、抑制することができる。
【0013】
また、シール表皮片に形成される第二スリットは、第一表皮片によって外側から覆われている。従って、発泡樹脂が第二スリットに到達したとしても、第二スリットの外側には第一表皮片が存在するため、発泡樹脂が第二スリットを介して外部へ漏出することを、抑制することができる。
【0014】
また、注入口が、第一舌片によって覆われるので、発泡樹脂が注入口から漏出することを、抑制することができる。
【0015】
また、本開示の他の態様によれば、構造物が配置されたステーをヘッドレストの内部に配置することができる。また、一対の第一スリットがシール表皮片によって第一表皮片の内側から覆われるので、発泡樹脂が一対の第一スリットに到達することが抑制される。この結果、発泡樹脂が一対の第一スリットから漏出することを、抑制することができる。また、第二スリットの外側には第一表皮片が存在するため、発泡樹脂が第二スリットを介して外部へ漏出することを、抑制することができる。さらに、注入口が、第一舌片によって覆われるので、発泡樹脂が注入口から漏出することを、抑制することができる。
【0016】
なお、請求の範囲に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1のヘッドレストを示す一部切欠斜視図。
【
図2】実施形態1のヘッドレストの製造工程を示すフローチャート。
【
図4】実施形態1の第一表皮片、第二表皮片、およびシール表皮片を示す平面図。
【
図5】実施形態1の第一表皮片とシール表皮片とを縫合した状態を示す平面図。
【
図6】実施形態1のヘッドレスト用表皮材を示す底面図。
【
図8】
図6におけるVIII-VIII線拡大断面図。
【
図9】
図2のフローチャートのS5に示す工程において、第一表皮片の第一舌片とシール表皮片の第二舌片を開いた状態を示す底面図。
【
図11】
図2にフローチャートのS5に示す工程において、ヘッドレスト用表皮材にステーを挿入した状態を示す拡大断面図。
【
図12】実施形態1のヘッドレスト用表皮材においてステーを挿入した後に、第二舌片をヘッドレスト用表皮材の内方に折り込んだ状態を示す底面図。
【
図14】実施形態1のヘッドレスト用表皮材においてステーを挿入した後に、第一舌片をヘッドレスト用表皮材の内方に折り込んだ状態を示す底面図。
【
図16】実施形態1のヘッドレスト用表皮材の内部に発泡樹脂を注入する工程を示す拡大断面図。
【
図17】実施形態2の第一表皮片とシール表皮片とを縫合した状態を示す平面図。
【
図18】実施形態3のヘッドレストの製造工程を示すフローチャート。
【
図19】実施形態3のヘッドレスト用表皮材を示す底面図。
【
図22】実施形態4のヘッドレスト用表皮材における、
図6のVII-VII線断面に相当する拡大断面図。
【
図23】実施形態5のヘッドレスト用表皮材における、
図6のVII-VII線断面に相当する拡大断面図。
【
図24】実施形態6の第一表皮片、第二表皮片、およびシール表皮片を示す平面図。
【
図25】実施形態6のヘッドレスト用表皮材における、第一表皮片の第一舌片を外方に引き出した状態を示す底面図。
【
図26】実施形態6のヘッドレスト用表皮材にステーを挿入した状態を示す拡大断面図。
【
図27】実施形態6のヘッドレスト用表皮材にステーを挿入した後に、第一舌片をヘッドレスト用表皮材の内方に折り込んだ状態を示す拡大断面図。
【
図28】他の実施形態(2)に係るシール用表皮片を示す平面図であり、(a)は、シール用表皮片の短手方向について、第二スリットが一対の第二挿通孔の孔縁部の一方の端部同士を連結する構成であり、(b)は、シール用表皮片の短手方向について、第二スリットが一対の第二挿通孔の孔縁部の他方の端部同士を連結する構成である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
本発明のヘッドレスト用表皮材、およびヘッドレスト用表皮材を用いたヘッドレストに係る実施形態1について以下に説明する。本形態に係るヘッドレストは、例えば車両(図示せず)の車室内に配置されたシート(図示せず)の上部に取付けられる。
【0019】
1.全体構成
図1に示すように、ヘッドレスト10は、パッド部11と、パッド部11の内部に配置されるとともにパッド部11の底部11aから突出するステー12と、を備える。
【0020】
2.ステー12
図3に示すように、ステー12は、金属製の棒材が略U字状に曲げ加工されることにより形成されている。ステー12は、一対の脚部13と、一対の脚部13の一方の端部同士を連結する連結部14と、を備える。ステー12のうち連結部14の近傍には、一対の脚部13に接続されるとともに連結部14にも接続された構造物15が取付けられている。構造物15は、例えば、着座者の頭部を保護するための補強部材とすることができる。構造物15は金属板材からなり、一対の脚部13と、連結部14とを接続可能に三方向に突出する突出部16を備える。各突出部16が、それぞれ、一対の脚部13と、連結部14とに、圧着、溶接,ロウ接等の公知の手法により固定されている。構造物15により、ステー12が補強されるようになっている。ただし、構造物15は、補強部材の他に、ヒータ、スピーカ等の電気部品等、任意の部材を選択することができる。
【0021】
3.パッド部11
パッド部11について、
図1および
図4を参照して説明する。
図1に示すように、パッド部11は、袋状に形成されたヘッドレスト用表皮材20の内部に発泡樹脂17が充填されて構成されている。パッド部11は枕状に形成されている。
【0022】
パッド部11は、ステー12が突出する底部11aと、底部11aの側縁から底部11aと交差する方向に延びるとともに着座者の頭部が接触する正面部11bと、正面部と背向する背面部(図示せず)と、正面部および背面部に交差する側面部11cと、を備える。
【0023】
パッド部11の表面はヘッドレスト用表皮材20により形成されている。ヘッドレスト用表皮材20は、複数(本形態では3つ)の表皮片30,40,50が縫製されることにより形成される。
図4に示すように、複数の表皮片30,40,50は、第一表皮片30と、シール表皮片40と、第二表皮片50と、を備える。ただし、表皮片の枚数は限定されず、4つ以上でもよい。
【0024】
第一表皮片30、シール表皮片40、および第二表皮片50は、例えば、ファブリック表皮、ポリウレタンまたは塩化ビニル等樹脂フィルムの二層表皮片を縫製した表皮や、アクリル、ポリエステル等の合成繊維をパイル糸とし、綿、レーヨン等を地経にしたカットパイル織物等が用いられる。
【0025】
第一表皮片30および第二表皮片50は、完成したパッド部11の外側に配置される意匠面35,55と、パッド部11の内側に配置される内面36,56と、を備える。第一表皮片30と第二表皮片50は同じ布地で形成されている。シール表皮片40を構成する布地は特に限定されず、第一表皮片30および第二表皮片50と同じ布地を用いてもよいし、異なる布地を用いてもよい。本形態では、シール表皮片40は第一表皮片30および第二表皮片50と同じ布地を用いている。このため、シール表皮片40も、意匠面45と内面46を備える。シール表皮片40は、後述する第一スリット33から視認しうる部分が意匠面45となるように配置されている。これにより、ヘッドレスト10の見栄えがよくなっている。
【0026】
図4に示すように、パッド部11を構成するヘッドレスト用表皮材20は、第一表皮片30の側縁と、第二表皮片50の側縁とが重ね合わされた状態で、側縁のやや内側の位置に、第一縫い目21に沿って縫合されることにより形成される。これにより、第一表皮片30と第二表皮片50とは隣接して配置されている。
【0027】
4.第一表皮片30
図4(a)に示すように、第一表皮片30は、全体として角が丸められた四角形状をなしている。第一表皮片30のうち、底部11aを構成する部分の周縁部には、周縁部から突出する第一突片31が形成されている。第一突片31は長方形状に形成されている。
【0028】
図4(a)に示すように、第一表皮片30には、第一突片31からやや内側の位置に、第一突片31の先端縁と略平行に並んで、一対の第一挿通孔32が貫通されている。第一挿通孔32の内形状は円形状をなしている。第一挿通孔32の内径寸法は、ステー12の脚部13の外形寸法と同じか、またはやや小さく形成されている。一対の第一挿通孔32の間隔は、一対の脚部13の間隔と略同じに形成されている。一対の第一挿通孔32のそれぞれには、一対の脚部13のそれぞれが挿通されるようになっている。
【0029】
第一表皮片30には、一対の第一挿通孔32のそれぞれの孔縁から、第一突片31の先端縁に延びる一対の第一スリット33が形成されている。第一表皮片30のうち、一対の第一スリット33の間に形成された領域は、第一舌片34とされる。第一舌片34は、自在に撓み変形可能に形成されている。
【0030】
5.シール表皮片40
図4(b)および
図5を参照してシール表皮片40について説明する。
図5に示すように、シール表皮片40の一の側縁40aは、第一表皮片30に形成された第一突片31の先端縁31aと合致して配置される。シール表皮片40は、第一表皮片30の内面36と、シール表皮片40の意匠面45とが対向して配置されている。
【0031】
シール表皮片40は、第一突片31の先端縁31aと合致して配される側縁が長辺である長方形状に形成されている。
図4(b)に示すように、シール表皮片40の側縁のうち、第一突片31の先端縁31aと合致する側縁40aの長さ寸法L2は、第一突片31の先端縁31aの長さ寸法L1と略同じに設定されている。
【0032】
図5に示すように、シール表皮片40は、第一表皮片30のうち一対の第一スリット33および一対の第一挿通孔32が形成された領域よりも広い領域を覆って配置される。シール表皮片40は、第一表皮片30に対して、一対の第一スリット33の並ぶ方向について一対の第一スリット33よりも外側の位置で縫合されている。シール表皮片40および第一表皮片30の双方には、それぞれが縫合された位置に、第二縫い目22が形成されている。
【0033】
シール表皮片40には、第一表皮片30に取付けられた状態で、一対の第一挿通孔32と重なる位置に、一対の第二挿通孔41が形成されている。第二挿通孔41の内形状は円形状に形成されている。第二挿通孔41の内径寸法は、脚部13の外形寸法と同じか、やや小さく形成されている。一対の第二挿通孔41のそれぞれには、一対の脚部13のそれぞれが挿通されるようになっている。
【0034】
シール表皮片40には、一対の第二挿通孔41の孔縁から、第一突片31の先端縁31aと合致する側縁と反対側の端縁まで延びる一対の第二スリット42が形成されている。一対の第二スリット42のそれぞれは、一対の第二挿通孔41のそれぞれの差渡し寸法よりも幅狭に形成されている。シール表皮片40のうち、一対の第二挿通孔41の孔縁部と、一対の第二スリット42と、の間に形成された領域は、第二舌片43とされる。第二舌片43は、自在に撓み変形可能に形成されている。
【0035】
図5に示すように、シール表皮片40が第一表皮片30に取付けられた状態で、第一表皮片30の第一スリット33と、シール表皮片40の第二スリット42とは、略同じ方向に延びる形状に形成されている。これにより、第一スリット33の延長線上に第二スリット42が配置された構成になっている。
【0036】
6.第二表皮片50
図4(c)に示すように、第二表皮片50は、全体として角が丸められた四角形状をなしている。第二表皮片50のうち、パッド部11の底部11aの側縁を構成する周縁部には、周縁部から突出する第二突片51が形成されている。第二突片51は略長方形状に形成されている。第二表皮片50の第二突片51と、第一表皮片30の第一突片31とは、略同一形状に形成されている。すなわち、第一表皮片30の周縁部からの第一突片31の突出寸法と、第二表皮片50の周縁部からの第二突片51の突出寸法は略同じに形成されている。また、突出方向と交差する方向について、第一突片31の先端縁31aの長さ寸法L1と、第二突片51の先端縁51aの長さ寸法L3は略同じに形成されている。
【0037】
7.実施形態の製造工程の一例
続いて、本形態に係るヘッドレスト用表皮材20およびヘッドレスト10の製造工程の一例について、
図1~16を参照しつつ説明する。
図2に、本形態に係るヘッドレスト10およびヘッドレスト用表皮材20の製造方法のフローチャートを示す。なお、製造工程は以下の説明に限定されない。
【0038】
図2および
図3に示すように、ステー12を所定の形状に形成する(S1)。また、
図2および
図4に示すように、第一表皮片30、第二表皮片50、およびシール表皮片40を所定の形状に裁断する(S1)。また、
図2および
図5に示すように、第一表皮片30の内面36と、シール表皮片40の意匠面45とが対向するようにして、シール表皮片40を第一表皮片30の内面36に載置する。このとき、第一表皮片30の一対の第一挿通孔32と、シール表皮片40の第二挿通孔41の位置が略整合するように配置するとともに、第一表皮片30の第一突片31の先端縁31aと、シール表皮片40の側縁40aとが合致するように配置する。
【0039】
図2および
図5に示すように、シール表皮片40と、第一表皮片30とを、一対の第一スリット33の並ぶ方向について、一対の第一スリット33よりも外側の位置において縫合する(S2)。これにより、シール表皮片40と第一表皮片30とが仮止めされる。シール表皮片40は、第一突片31の先端縁31aと重なる部分から、第一突片31の先端縁31aと背向する端縁部まで縫合される。これにより、シール表皮片40と第一表皮片30とが縫合された第二縫い目22が、シール表皮片40のうち第一突片31の先端縁31aと重なる部分から、第一突片31の先端縁31aと背向する端縁部まで形成される。ただし、シール表皮片40と、第一表皮片30とを仮止めする工程は省略してもよい。
【0040】
第一表皮片30の意匠面35と、第二表皮片50の意匠面55とを対向させた状態で、第一表皮片30と第二表皮片50とを重ね合わせる。第一表皮片30の側縁と第二表皮片50の側縁とを縫合する(
図2におけるS3)。このとき、第一表皮片30の第一突片31の先端縁31aと、第二表皮片50の第二突片51の先端縁51aと、シール表皮片40のうち第一突片31の先端縁31aと合致して配置された側縁40aの両側縁部を除く領域は、縫合しない。第一突片31の側縁と第二突片51の側縁とが縫合される部分においては、第一表皮片30の第一突片31とシール表皮片40との縫合部分の一部が、第一表皮片30と第二表皮片50の縫合部分を兼ねている。
【0041】
図2に示すように、第一表皮片30、第二表皮片50、およびシール表皮片40を縫合した後、第一表皮片30、および第二表皮片50の意匠面35,55が外側を向くように裏返す(S4)。これによりヘッドレスト用表皮材20が完成する(
図6参照)。なお、
図6は、ヘッドレスト用表皮材20を、
図1に記載された矢線Aから見た図である。この状態で、
図7および8に示すように、第一突片31と第二突片51は、対向した状態に配置されるとともに、ヘッドレスト用表皮材20の内方に突出している。さらに、第一突片31に縫合されたシール表皮片40の側縁40aもヘッドレスト用表皮材20の内方に突出している。第一突片31の先端縁31a、第二突片51の先端縁51a、およびシール表皮片40の側縁40aのうち縫合されていない部分が、発泡樹脂17をヘッドレスト用表皮材20の内部に注入するためのノズル18を挿入する注入口23とされる。換言すると、第一突片31の先端縁31aと、第二突片51の先端縁51aとが、注入口23を除いて縫合された状態に構成されている。
【0042】
図7および8に示すように、シール表皮片40は、第一表皮片30の内側に配置されている。これにより、第一表皮片30の一対の第一スリット33は、シール表皮片40によって、ヘッドレスト用表皮材20の内側から覆われている。
【0043】
図2,9および10に示すように、第一表皮片30の第一舌片34を、撓み変形させつつヘッドレスト用表皮材20の外方に引き出す。また、シール表皮片40の第二舌片43を、撓み変形させつつヘッドレスト用表皮材20の外方に引き出す(S5)。ただし、第二舌片43は、ヘッドレスト用表皮材20の内方に押し込んでもよい。
【0044】
図2,9および10に示すように、第一舌片34と第二舌片43を引き出すことにより、第一舌片34と第二舌片43との間に隙間が形成される。この隙間が、ステー12をヘッドレスト用表皮材20の内部に挿入するためのステー用開口24とされる。
図9に示すように、ステー用開口24は、一対の第一挿通孔32同士、および一対の第二挿通孔41同士をつなぐスリット状に形成されている。ステー用開口24の内形状は、ステー12の外形状と同じか、やや大きく形成されている。
【0045】
図2および
図11に示すように、ヘッドレスト用表皮材20へのステー12の挿入方向について、ステー12の連結部14を前側にして、ステー12をステー用開口24からヘッドレスト用表皮材20の内部に挿入する(S5)。
【0046】
図2,12および13に示すように、ステー12を所定の挿入深さまで挿入した後、第二舌片43をヘッドレスト用表皮材20の内側に挿入する。これにより、ステー用開口24が第二舌片43により塞がれた状態になる(S6)。
図13に示すように、この状態で、ステー12の脚部13は、第二挿通孔41に挿通された状態になる。
【0047】
続いて、
図2,14および15に示すように、第一舌片34を全体的に撓み変形させて、第一突片31を、第二突片51とシール表皮片40との間の隙間に挿入し、シール表皮片40を覆う。この状態で、
図14に示すように、ステー12の脚部13は、第一挿通孔32に挿通された状態になる(S6)。これにより、ステー用開口24は、第二舌片43と、第一舌片34とによって二重に覆われる構成とされる。ステー用開口24と注入口23との間においては、内側に位置するシール表皮片40と、外側に位置する第一表皮片30との二重構成とされている。さらに、ステー用開口24よりも注入口23とは反対側においても、内側に位置するシール表皮片40と、外側に位置する第一表皮片30との二重構成とされている。このように、ステー用開口24を中心として、注入口23側においても、注入口23とは反対側においても、シール表皮片40と第一表皮片30との二重構成とされている。
【0048】
図2および16に示すように、注入口23内にノズル18の先端を挿入する。ノズル18から、ヘッドレスト用表皮材20の内部に、液体状態の発泡樹脂17を所定量注入する。発泡樹脂17が固化する前に、ノズル18を注入口23から抜く。その後、発泡樹脂17を発泡、固化させる(S7)。このとき、第一表皮片30の一対の第一スリット33は、シール表皮片40によって、ヘッドレスト用表皮材20の内側から覆われているので、発泡樹脂17が一対の第一スリット33に到達することが抑制される。これにより、一対の第一スリット33から発泡樹脂17が漏出することが抑制される。
【0049】
発泡樹脂17が注入された注入口23は、第一突片31、第二突片51、およびシール表皮片40により覆い隠されるので、注入口23から発泡樹脂17は漏出しないようになっている。詳細には、固化した発泡樹脂17により、第一突片31、第二突片51、およびシール表皮片40がセルフシールされることにより、発泡樹脂17が注入口23から漏出することが抑制されるようになっている。以上により、
図1に示すように、ヘッドレスト10が完成する。
【0050】
8.実施形態の作用効果
続いて、本形態の作用効果について説明する。本形態によれば、第一表皮片30に形成される一対の第一スリット33は、シール表皮片40によって第一表皮片30の内側から覆われている。従って、発泡樹脂17が一対の第一スリット33に到達することが抑制される。この結果、発泡樹脂17が一対の第一スリット33から漏出することを、抑制することができる。
【0051】
また、シール表皮片40に形成される一対の第二スリット42は、第一表皮片30によって外側から覆われている。従って、発泡樹脂17が一対の第二スリット42に到達したとしても、一対の第二スリット42の外側には第一表皮片30が存在するため、発泡樹脂17が一対の第二スリット42を介して外部へ漏出することを、抑制することができる。
【0052】
また、注入口23が、第一舌片34によって覆われるので、発泡樹脂17が注入口23から漏出することを、抑制することができる。
【0053】
また、本形態によれば、シール表皮片40の1つの側縁は、第一突片31の突出方向と交差する方向について第一突片31の幅寸法と同じ長さ寸法を有するように形成されており、シール表皮片40の1つの側縁が、第一突片31の先端縁31aと合致して配置されている。第一突片31の先端縁31aと、シール表皮片40の1つの側縁とを合致して配置することにより、第一突片31とシール表皮片40とを容易に位置合わせすることができる。
【0054】
また、本形態によれば、シール表皮片40は、第一表皮片30の内面36のうち一対の第一スリット33の並ぶ方向について一対の第一スリット33よりも外側の位置において、第一表皮片30の内面36に、第一突片31の先端縁31aと重なる部分から、第一突片31の先端縁31aと背向する端縁部まで係止されている。これにより、発泡樹脂17がヘッドレスト用表皮材20の内側に注入されたときに、シール表皮片40のうち第一突片31の先端縁31aと重なる部分から、第一突片31の先端縁31aと背向する端縁部までの領域が、流動する発泡樹脂17の圧力によって位置ずれすることが抑制される。この結果、発泡樹脂17が一対の第一スリット33、および一対の第二スリット42から漏出することを、抑制できる。
【0055】
また、本形態によれば、第一表皮片30とシール表皮片40とは、縫合されることにより係止されている。本形態によれば、ヘッドレスト用表皮材20を構成する第一表皮片30、第二表皮片50およびシール表皮片40を縫製する工程において、第一表皮片30とシール表皮片40とを縫合することができるので、ヘッドレスト用表皮材20を製造する効率を向上させることができる。また、第一表皮片30とシール表皮片40とが位置ずれすることを抑制できるので、発泡樹脂17が一対の第一スリット33から漏出することを、より一層抑制できる。
【0056】
また、本形態によれば、第一表皮片30とシール表皮片40との縫合部分の一部が、第一表皮片30と第二表皮片50との縫合部分を兼ねている。
【0057】
少なくとも、第一表皮片30と、シール表皮片40と、第二表皮片50とが同一部分において縫合されているので、第一表皮片30と、シール表皮片40と、第二表皮片50とが、流動する発泡樹脂17の圧力によって位置ずれすることを抑制することができる。これにより、発泡樹脂17が一対の第一スリット33から漏出することを、より一層抑制できる。
【0058】
また、本形態によれば、シール表皮片40は、第一突片31の先端縁31aと合致して配置される側縁が、一対の長辺の一辺として構成される長方形状に形成されている。
【0059】
長方形状に形成されたシール表皮片40により、第一表皮片30の一対の第一スリット33の全長に亘って内側から覆うことができる。これにより、一対の第一スリット33から発泡樹脂17が漏出することをさらに抑制できる。
【0060】
また、第一突片31の先端縁31aと、第二突片51の先端縁51aと、シール表皮片40の側縁40aとが合致して配置されるので、第一突片31の先端縁31a、第二突片51の先端縁51a、またはシール表皮片40の側縁40aが、流動する発泡樹脂17の圧力を受けることによって、めくれ上がることが抑制される。これにより、発泡樹脂17が注入口23から漏出することがさらに抑制される。
【0061】
本形態に係るヘッドレスト10は、ヘッドレスト用表皮材20と、ヘッドレスト用表皮材20の内側に配される部分に構造物15が配置されるとともに、一対の第一挿通孔32および一対の第二挿通孔41から脚部13が挿通されるステー12と、ヘッドレスト用表皮材20内に充填された発泡樹脂17と、を備える。本形態によれば、構造物15が配置されたステー12をヘッドレスト用表皮材20の内部に配置することができる。また、一対の第一スリット33がシール表皮片40によって第一表皮片30の内側から覆われるので、発泡樹脂17が一対の第一スリット33に到達することが抑制される。この結果、発泡樹脂17が一対の第一スリット33から漏出することを、抑制することができる。また、一対の第二スリット42の外側には第一表皮片30が存在するため、発泡樹脂17が一対の第二スリット42を介して外部へ漏出することを、抑制することができる。さらに、注入口23が、第一舌片34によって覆われるので、発泡樹脂17が注入口23から漏出することを、抑制することができる。
【0062】
(実施形態2)
次に、実施形態2について
図17を参照して説明する。本形態においては、シール表皮片40は、第一表皮片30の内面36のうち一対の第一スリット33の並ぶ方向について一対の第一スリット33よりも外側の位置において、少なくとも、第一表皮片30の内面36に、第一突片31の先端縁31aと重なる部分から、一対の第一挿通孔32が形成された領域に重なる部分に亘って縫合されている。
【0063】
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0064】
本形態によれば、発泡樹脂17がヘッドレスト用表皮材20の内側に注入されたときに、シール表皮片40のうち第一突片31の先端縁31aと重なる部分から一対の第一挿通孔32が形成された領域に重なる部分が、流動する発泡樹脂17の圧力によって位置ずれすることが抑制される。これにより、第一表皮片30の一対の第一スリット33からシール表皮片40が位置ずれすることが抑制される。この結果、発泡樹脂17が一対の第一スリット33から漏出することを、抑制できる。
【0065】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るヘッドレスト用表皮材60について、
図18~21を参照して説明する。
図20に示すように、本形態に係るシール表皮片40は、第一表皮片30の内面36のうち、一対の第一スリット33の並ぶ方向について一対の第一スリット33よりも外側の位置において、第一表皮片30の内面36に、第一突片31とシール表皮片40とが重なる部分において、縫合されている。
【0066】
第一表皮片30とシール表皮片40とが縫合される部分は、ヘッドレスト用表皮材60の内方に突出しているので、ヘッドレスト用表皮材60の外部には露出しない。このため、
図19に示すように、ヘッドレスト用表皮材60の底部11aには、第一表皮片30とシール表皮片40とを縫合するための第二縫い目22が露出しない。
【0067】
図19に示すように、シール表皮片40の裏面には、一対の第一スリット33の並ぶ方向について一対の第一スリット33よりも外側の位置に、弾性変形可能な弾性部材61が固定されている。弾性部材61は板状に形成されている。本形態では弾性部材61は、細長くのびる長方形状に形成されている。ただし、弾性部材61の形状は長方形状に限られず、長円形状等、任意の形状とすることができる。弾性部材61は、撓み変形することにより板厚方向に弾発力を加えることが可能に構成される。
【0068】
シール表皮片40と弾性部材61とは、接着剤等の公知の手法により固定されている。本形態では、弾性部材61のうち、第一表皮片30の第一突片31と、第二表皮片50の第二突片51と、シール表皮片40とに重なる部分は、縫合されている(
図20参照)。ただし、弾性部材61は、第一突片31および第二突片51と重ならない位置に配置される構成としてもよい。この場合には、第一表皮片30の第一突片31と、第二表皮片50の第二突片51と、シール表皮片40とが縫合される構成とされる。
【0069】
弾性部材61は、弾性変形可能な樹脂により形成されている。弾性部材61を構成する樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル等、任意の樹脂を適宜に選択できる。
【0070】
図20に示すように、弾性部材61はシール表皮片40の形状に倣って撓み変形する。これにより、弾性部材61はシール表皮片40に対して弾発力を加える。これにより、シール表皮片40は、第一表皮片30の裏面に押付けられる。この結果、シール表皮片40は第一表皮片30の裏面に当接した状態で係止する。このように本形態によれば、シール表皮片40と第一表皮片30とを縫合せずに係止することができるので、第一表皮片30の外面に第二縫い目22が露出しない。この結果、ヘッドレスト用表皮材60の見栄えを向上させることができる。
【0071】
また、
図19および21に示すように、シール表皮片40の裏面には、第一表皮片30の一対の第一スリット33の間の領域であって、第一表皮片30の第一舌片34よりもやや小さな領域に、弾性変形可能な補強部材62が固定されている。本形態では、補強部材62は、長方形状をなす板状に形成されている。補強部材62は、撓み変形することにより板厚方向に弾発力を加えることが可能に構成される。ただし、補強部材62は任意の形状に形成することができる。
【0072】
シール表皮片40と補強部材62とは、接着剤、粘着剤等の公知の手法により固定されている。補強部材62は、弾性変形可能な樹脂により形成されている。補強部材62を構成する樹脂は、弾性部材61を構成する樹脂と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0073】
図18は、本形態に係るヘッドレスト10およびヘッドレスト用表皮材60の製造方法を示すフローチャートである。
図18に示すように、本形態においては、弾性部材、補強部材を所定の形状に形成する(S10)。その後、シール表皮片40の内面36に弾性部材61と補強部材62とを接着する(S11)。上記以外の工程は、上述した
図2に示す実施形態1のヘッドレスト10およびヘッドレスト用表皮材20の製造方法と同一の工程には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0074】
補強部材62により、シール表皮片40が補強されるので、発泡樹脂17がヘッドレスト用表皮材60の内側に注入されたときに、流動する発泡樹脂17の圧力によってシール表皮片40が撓み変形することが抑制される。これにより、シール表皮片40が一対の第一スリット33から位置ずれすることを抑制することができるので、発泡樹脂17が一対の第一スリット33から漏出することを、より一層抑制できる。
【0075】
また、補強部材62の弾発力によって、シール表皮片40が第一表皮片30の内面36に押圧されるので、シール表皮片40と第一表皮片30の密着性が向上する。これにより、発泡樹脂17が一対の第一スリット33へ到達することをさらに抑制できる。さらに、シール表皮片40と密着する第一表皮片30によって一対の第二スリット42が覆われるので、発泡樹脂17が一対の第二スリット42から漏出することもさらに抑制できる。
【0076】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係るヘッドレスト用表皮材70について
図22を参照して説明する。第一表皮片30の裏面のうち、一対の第一スリット33の並ぶ方向について一対の第一スリット33よりも外側の位置には、一方の面ファスナー71が、接着剤等の公知の手法により固定されている。シール表皮片40の意匠面45のうち、一対の第二スリット42の並ぶ方向について一対の第二スリット42よりも外側の位置には、他方の面ファスナー72が、接着剤等の公知の手法により固定されている。第一表皮片30に固定された一方の面ファスナー71と、シール表皮片40に固定された他方の面ファスナー72とが係止することにより、第一表皮片30とシール表皮片40とが係止されている。
【0077】
本形態によれば、面ファスナー71,72という簡易な手法により、シール表皮片40と第一表皮片30とを係止させることができる。これにより、シール表皮片40と第一表皮片30とを縫合せずに係止することができるので、第一表皮片30の外面に第二縫い目22が露出しない。この結果、ヘッドレスト用表皮材70の見栄えを向上させることができる。
【0078】
(実施形態5)
次に、実施形態5に係るヘッドレスト用表皮材80について
図23を参照して説明する。第一表皮片30の裏面のうち、一対の第一スリット33の並ぶ方向について一対の第一スリット33よりも外側の領域と、シール表皮片40の意匠面45のうち、一対の第二スリット42の並ぶ方向について一対の第二スリット42よりも外側の領域とは、両面テープ81により貼着されている。これにより、第一表皮片30とシール表皮片40とが係止されている。
【0079】
本形態によれば、両面テープ81という簡易な手法により、シール表皮片40と第一表皮片30とを係止させることができる。これにより、シール表皮片40と第一表皮片30とを縫合せずに係止することができるので、第一表皮片30の外面に第二縫い目22が露出しない。この結果、ヘッドレスト用表皮材80の見栄えを向上させることができる。
【0080】
(実施形態6)
次に、実施形態6に係るヘッドレスト用表皮材90について
図24~
図27を参照して説明する。
【0081】
図24に示すように、本形態に係るシール表皮片40bは、一対の第二挿通孔41の孔縁から延びる第二スリット42aを有する。第二スリット42aは、一対の第二挿通孔41の間の位置に形成されている。第二スリット42aにより、一対の第二挿通孔41は連通されている。シール表皮片40bの短手方向について、第二スリット42aは、一対の第二挿通孔41の中央付近同士を連結している。第二スリット42aは、一対の第二挿通孔41のそれぞれの差渡し寸法よりも幅狭に形成されている。一対の第二挿通孔41の孔縁部と、第二スリット42aと、により一対の第二舌片43aが形成されている。
【0082】
一対の第二舌片43aは撓み変形可能に形成されている。一対の第二舌片43aは、互いに独立に、ヘッドレスト用表皮材90の外方または内方に撓み変形することができる。一対の第二舌片43aが撓み変形することにより、ヘッドレスト用表皮材90の内部と外部とが連通する。これにより、ヘッドレスト用表皮材90の内部にステー12を挿入することができる。このように、本形態に係る第二スリット42aが、ステー12を挿入するためのステー用開口24aとして構成される(
図26参照)。
【0083】
続いて、
図25~
図27を参照して、本形態に係るヘッドレスト用表皮材90の製造工程の一例について説明する。
【0084】
図25に示すように、第一舌片34をヘッドレスト用表皮材90の外方に引き出す。すると、シール表皮片40bの第二スリット42aおよび第二舌片43aが露出する。第二舌片43aは撓み変形可能に形成されており、第二舌片43aが撓み変形することで拡開した第二スリット42aが、ステー12をヘッドレスト用表皮材90の内部に挿入するためのステー用開口24aとされる。
【0085】
図26に示すように、ヘッドレスト用表皮材90へのステー12の挿入方向について、ステー12の連結部14を前側にしてステー12をステー用開口24aからヘッドレスト用表皮材90の内部へ挿入する。
【0086】
詳細には図示しないが、ステー12の連結部14が第二舌片43aと接触すると、第二舌片43aがステー12に押されて撓み変形し、拡開した第二スリット42aからステー12の連結部14がヘッドレスト用表皮材90の内部に進入する。ステー12の連結部14がステー用開口24aを通過した後、第二舌片43aは復帰変形する。
図26は、第二舌片43aが復帰変形した後の状態を示す。
【0087】
続いて、
図27に示すように、第一舌片34を全体的に撓み変形させて、第一突片31を、第二突片51とシール表皮片40bとの間の隙間に挿入し、シール表皮片40bを覆う。これにより、ステー用開口24a(第二スリット42a)は、第一舌片34によって覆われる構成とされる。
【0088】
本形態によれば、シール表皮片40bに形成される第二スリット42aは、第一表皮片30によって外側から覆われている。従って、発泡樹脂17が第二スリット42aに到達したとしても、第二スリット42aの外側には第一表皮片30が存在するため、発泡樹脂17が第二スリット42aを介して外部へ漏出することを、抑制することができる。
【0089】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【0090】
(1) 第一表皮片30と、シール表皮片40とが係止する構造として、縫合(実施形態1および2)、弾性部材61による押圧(実施形態3)、面ファスナー71,72(実施形態4)、両面テープ81(実施形態5)を例示したが、これに限られず、任意の係止構造を採用することができる。
【0091】
(2) 実施形態6に係る第二スリット42aは、シール表皮片40bの短手方向について、一対の第二挿通孔41の中央付近を連結する構成としたが、これに限られない。例えば、
図28(a)に示すように、第二スリット42bは、シール表皮片40cの短手方向について一方の側縁40a側に位置する、一対の第二挿通孔41の孔縁部同士を連結する構成としてもよい。また、
図28(b)に示すように、第二スリット42cは、シール表皮片40dの短手方向について一方の側縁40aと反対側に位置する、一対の第二挿通孔41の孔縁部同士を連結する構成としてもよい。
【要約】
ステー(12)の脚部(13)が突出する底部(11a)を備えたヘッドレスト用表皮材(20)であって、底部(11a)を構成する第一表皮片(30)と、第一表皮片(30)の内面(36)に取付けられたシール表皮片(40)と、を備え、第一表皮片(30)は、ヘッドレスト用表皮材(20)の内方に突出する第一突片(31)と、ステー(12)の脚部(13)が挿通される一対の第一挿通孔(32)と、一対の第一挿通孔(32)から第一突片(31)の先端縁(31a)まで延びる一対の第一スリット(33)と、一対の第一スリット(33)により形成された第一舌片(34)と、を備え、シール表皮片(40)は、第一表皮片(30)の内面(36)のうち一対の第一スリット(33)および一対の第一挿通孔(32)が形成された領域よりも広い領域を覆う、ヘッドレスト用表皮材(20)。