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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ドリル
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/02 20060101AFI20240319BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B23B51/02 S
B23B51/00 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023543351
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2023000637
【審査請求日】2023-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘児
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/054289(WO,A1)
【文献】特開2003-025125(JP,A)
【文献】実開平05-029615(JP,U)
【文献】特開2003-266223(JP,A)
【文献】国際公開第2009/001681(WO,A1)
【文献】特開昭60-114407(JP,A)
【文献】米国特許第04759667(US,A)
【文献】特開2021-003773(JP,A)
【文献】特開2009-023055(JP,A)
【文献】特開2003-266225(JP,A)
【文献】特開2003-025127(JP,A)
【文献】特開2000-271811(JP,A)
【文献】特開平03-117508(JP,A)
【文献】実開平07-040015(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0268518(US,A1)
【文献】国際公開第2021/038651(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179689(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102741001(CN,A)
【文献】特開2019-005882(JP,A)
【文献】特開2016-172305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00-51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線の周りを回転するドリルであって、
第1逃げ面と、
前記第1逃げ面に対して回転方向の後方に設けられている第1シンニング面と、
前記第1シンニング面に対して前記回転方向の後方に設けられている第2逃げ面と、
前記第2逃げ面に対して前記回転方向の後方に設けられている第2シンニング面とを備え、
前記第1逃げ面は、
第1前方逃げ面部と、
前記第1前方逃げ面部に連なり、前記第1前方逃げ面部に対して傾斜し且つ前記第1前方逃げ面部に対して前記回転方向の後方に設けられている第1後方逃げ面部とを含み、
前記第2逃げ面は、
第2前方逃げ面部と、
前記第2前方逃げ面部に連なり、前記第2前方逃げ面部に対して傾斜し且つ前記第2前方逃げ面部に対して前記回転方向の後方に設けられている第2後方逃げ面部とを含み、
前記第2前方逃げ面部は、前記第1前方逃げ面部および前記第1後方逃げ面部の各々に連なり、
前記第2後方逃げ面部は、前記第1前方逃げ面部に連なり、
前記第1前方逃げ面部と前記第1後方逃げ面部との稜線を第1稜線とし、前記第2前方逃げ面部と前記第2後方逃げ面部との稜線を第2稜線とした場合、
前記ドリルの前端から後端に向かう軸線方向に見て、前記第1稜線に垂直な方向における前記第1稜線と前記第2稜線との間の距離は、0mmより大きく0.03mm以下であり、
前記第1前方逃げ面部と前記第2後方逃げ面部との稜線は、第1チゼル領域を構成しており、
前記第1後方逃げ面部と前記第2前方逃げ面部との稜線は、第2チゼル領域を構成しており、
前記第1前方逃げ面部と前記第2前方逃げ面部との稜線は、前記第1チゼル領域および前記第2チゼル領域の各々に連なる第3チゼル領域を構成しており、
前記第3チゼル領域は、前記前端に設けられており、
前記第1シンニング面と前記第1逃げ面との稜線と、前記第1シンニング面と前記第2逃げ面との稜線とは、第1シンニング稜線を構成し、
前記第2シンニング面と前記第1逃げ面との稜線と、前記第2シンニング面と前記第2逃げ面との稜線とは、第2シンニング稜線を構成し、
前記軸線方向に見て、前記第1稜線に垂直な方向における前記第1シンニング稜線と前記第2シンニング稜線との間の最短距離は、0.04mm以上0.10mm以下である、ドリル。
【請求項2】
前記軸線方向に見て、前記第3チゼル領域の長さは、前記最短距離の23%以上55%以下である、請求項1に記載のドリル。
【請求項3】
前記ドリルの刃径は、3mm以下である、請求項1または請求項2に記載のドリル。
【請求項4】
前記軸線の周りにおいて螺旋状に設けられており且つ前記第1逃げ面に連なる第1切屑排出面と、
前記軸線の周りにおいて螺旋状に設けられており且つ前記第2逃げ面に連なる第2切屑排出面とを備え、
前記第1切屑排出面および前記第2切屑排出面の各々は、切屑排出溝を構成しており、
前記軸線方向における前記第1切屑排出面および前記第2切屑排出面の各々の長さは、前記刃径の2倍以上10倍以下である、請求項3に記載のドリル。
【請求項5】
前記第1逃げ面と前記第1切屑排出面との稜線は、第1切刃を構成しており、
前記第2逃げ面と前記第2切屑排出面との稜線は、第2切刃を構成しており、
前記第1切刃の最外周端において、前記ドリルの半径方向における前記第1切刃のすくい角は、-18°以上-9°以下であり、
前記第2切刃の最外周端において、前記半径方向における前記第2切刃のすくい角は、-18°以上-9°以下である、請求項4に記載のドリル。
【請求項6】
前記軸線方向に見て、前記第1稜線と前記第3チゼル領域とがなす角度は、前記第1稜線と前記第1チゼル領域とがなす角度よりも大きく、且つ前記第1稜線と前記第2チゼル領域とがなす角度よりも大きい、請求項1または請求項2に記載のドリル。
【請求項7】
前記軸線方向に見て、前記第1稜線と前記第3チゼル領域とがなす角度は、50°以上80°以下である、請求項1または請求項2に記載のドリル。
【請求項8】
前記軸線方向に見て、前記第1稜線と前記第1チゼル領域とがなす角度は、40°以上60°以下であり、
前記軸線方向に見て、前記第1稜線と前記第2チゼル領域とがなす角度は、40°以上60°以下である、請求項1または請求項2に記載のドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2017/179689号(特許文献1)には、2つの先端逃げ面を備えたドリルが記載されている。先端逃げ面は、第1先端逃げ面と第2先端逃げ面とを備えている。軸線方向先端側から見て、第1先端逃げ面と第2先端逃げ面との交差稜線は直線状である。軸線方向先端側から見て、2つの先端逃げ面の内、一方の先端逃げ面における交差稜線の他方の先端逃げ面側への延長線と交差稜線との間隔が0.04mm~0.08mmの範囲内である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/179689号
【発明の概要】
【0004】
本開示に係るドリルは、軸線の周りを回転するドリルであって、第1逃げ面と、第1シンニング面と、第2逃げ面と、第2シンニング面とを備えている。第1シンニング面は、第1逃げ面に対して回転方向の後方に設けられている。第2逃げ面は、第1シンニング面に対して回転方向の後方に設けられている。第2シンニング面は、第2逃げ面に対して回転方向の後方に設けられている。第1逃げ面は、第1前方逃げ面部と、第1後方逃げ面部とを含んでいる。第1後方逃げ面部は、第1前方逃げ面部に連なっている。第1後方逃げ面部は、第1前方逃げ面部に対して傾斜している。第1後方逃げ面部は、第1前方逃げ面部に対して回転方向の後方に設けられている。第2逃げ面は、第2前方逃げ面部と、第2後方逃げ面部とを含んでいる。第2後方逃げ面部は、第2前方逃げ面部に連なっている。第2後方逃げ面部は、第2前方逃げ面部に対して傾斜している。第2後方逃げ面部は、第2前方逃げ面部に対して回転方向の後方に設けられている。第2前方逃げ面部は、第1前方逃げ面部および第1後方逃げ面部の各々に連なっている。第2後方逃げ面部は、第1前方逃げ面部に連なっている。第1前方逃げ面部と第1後方逃げ面部との稜線は、第1稜線とされる。第2前方逃げ面部と第2後方逃げ面部との稜線は、第2稜線とされる。ドリルの前端から後端に向かう軸線方向に見て、第1稜線に垂直な方向における第1稜線と第2稜線との間の距離は、0mmより大きく0.03mm以下である。第1前方逃げ面部と第2後方逃げ面部との稜線は、第1チゼル領域を構成している。第1後方逃げ面部と第2前方逃げ面部との稜線は、第2チゼル領域を構成している。第1前方逃げ面部と第2前方逃げ面部との稜線は、第3チゼル領域を構成している。第3チゼル領域は、第1チゼル領域および第2チゼル領域の各々に連なっている。第3チゼル領域は、前端に設けられている。第1シンニング面と第1逃げ面との稜線と、第1シンニング面と第2逃げ面との稜線とは、第1シンニング稜線を構成している。第2シンニング面と第1逃げ面との稜線と、第2シンニング面と第2逃げ面との稜線とは、第2シンニング稜線を構成している。軸線方向に見て、第1稜線に垂直な方向における第1シンニング稜線と第2シンニング稜線との間の最短距離は、0.04mm以上0.10mm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本実施形態に係るドリルの構成を示す平面模式図である。
図2図2は、本実施形態に係るドリルの構成を示す斜視模式図である。
図3図3は、本実施形態に係るドリルの構成を示す正面模式図である。
図4図4は、図3の領域IVを示す拡大正面模式図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿う断面模式図である。
図6図6は、図3のVI-VI線に沿う断面模式図である。
図7図7は、図6の領域VIIを示す拡大模式図である。
図8図8は、図3の領域VIIIを示す拡大模式図である。
図9図9は、図3の領域IXを示す拡大模式図である。
図10図10は、ドリルが被削材を貫通する直前の状態を示す断面模式図である。
図11図11は、ドリルを用いて被削材に穴が形成された状態を示す断面模式図である。
図12図12は、サンプル1に係るドリルの構成を示す拡大正面模式図である。
図13図13は、サンプル8からサンプル13における穴径の拡大代を示している。
図14図14は、サンプル8からサンプル13おける穴位置度を示している。
図15図15は、サンプル14からサンプル20における穴径の拡大代を示している。
図16図16は、サンプル14からサンプル20における穴位置度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示の目的は、穴加工の精度を向上可能であり且つドリルの強度を向上可能なドリルを提供することである。
【0007】
[本開示の効果]
本開示によれば、穴加工の精度を向上可能であり且つドリルの強度を向上可能なドリルを提供することができる。
【0008】
[実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。
【0009】
(1)本開示に係るドリル100は、軸線Xの周りを回転するドリル100であって、第1逃げ面10と、第1シンニング面13と、第2逃げ面20と、第2シンニング面23とを備えている。第1シンニング面13は、第1逃げ面10に対して回転方向の後方に設けられている。第2逃げ面20は、第1シンニング面13に対して回転方向の後方に設けられている。第2シンニング面23は、第2逃げ面20に対して回転方向の後方に設けられている。第1逃げ面10は、第1前方逃げ面部11と、第1後方逃げ面部12とを含んでいる。第1後方逃げ面部12は、第1前方逃げ面部11に連なっている。第1後方逃げ面部12は、第1前方逃げ面部11に対して傾斜している。第1後方逃げ面部12は、第1前方逃げ面部11に対して回転方向の後方に設けられている。第2逃げ面20は、第2前方逃げ面部21と、第2後方逃げ面部22とを含んでいる。第2後方逃げ面部22は、第2前方逃げ面部21に連なっている。第2後方逃げ面部22は、第2前方逃げ面部21に対して傾斜している。第2後方逃げ面部22は、第2前方逃げ面部21に対して回転方向の後方に設けられている。第2前方逃げ面部21は、第1前方逃げ面部11および第1後方逃げ面部12の各々に連なっている。第2後方逃げ面部22は、第1前方逃げ面部11に連なっている。第1前方逃げ面部11と第1後方逃げ面部12との稜線は、第1稜線71とされる。第2前方逃げ面部21と第2後方逃げ面部22との稜線は、第2稜線72とされる。ドリル100の前端1から後端2に向かう軸線方向101に見て、第1稜線71に垂直な方向における第1稜線71と第2稜線72との間の距離E1は、0mmより大きく0.03mm以下である。第1前方逃げ面部11と第2後方逃げ面部22との稜線は、第1チゼル領域41を構成している。第1後方逃げ面部12と第2前方逃げ面部21との稜線は、第2チゼル領域42を構成している。第1前方逃げ面部11と第2前方逃げ面部21との稜線は、第3チゼル領域43を構成している。第3チゼル領域43は、第1チゼル領域41および第2チゼル領域42の各々に連なっている。第3チゼル領域43は、前端1に設けられている。第1シンニング面13と第1逃げ面10との稜線と、第1シンニング面13と第2逃げ面20との稜線とは、第1シンニング稜線15を構成している。第2シンニング面23と第1逃げ面10との稜線と、第2シンニング面23と第2逃げ面20との稜線とは、第2シンニング稜線25を構成している。軸線方向101に見て、第1稜線71に垂直な方向における第1シンニング稜線15と第2シンニング稜線25との間の最短距離E2は、0.04mm以上0.10mm以下である。
【0010】
(2)上記(1)に係るドリル100によれば、軸線方向101に見て、第3チゼル領域43の長さL3は、最短距離E2の23%以上55%以下であってもよい。
【0011】
(3)上記(1)または(2)に係るドリル100によれば、ドリル100の刃径Dは、3mm以下であってもよい。
【0012】
(4)上記(3)に係るドリル100は、第1切屑排出面19と、第2切屑排出面29とを備えていてもよい。第1切屑排出面19は、軸線Xの周りにおいて螺旋状に設けられていてもよい。第1切屑排出面19は、第1逃げ面10に連なっていてもよい。第2切屑排出面29は、軸線Xの周りにおいて螺旋状に設けられていてもよい。第2切屑排出面29は、第2逃げ面20に連なっていてもよい。第1切屑排出面19および第2切屑排出面29の各々は、切屑排出溝を構成している。軸線方向101における第1切屑排出面19および第2切屑排出面29の各々の長さは、刃径Dの2倍以上10倍以下であってもよい。
【0013】
(5)上記(4)に係るドリル100によれば、第1逃げ面10と第1切屑排出面19との稜線は、第1切刃51を構成していてもよい。第2逃げ面20と第2切屑排出面29との稜線は、第2切刃52を構成していてもよい。第1切刃51の最外周端91において、ドリル100の半径方向における第1切刃51のすくい角θ11は、-18°以上-9°以下であってもよい。第2切刃52の最外周端92において、ドリル100の半径方向における第2切刃52のすくい角θ12は、-18°以上-9°以下であってもよい。
【0014】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに係るドリル100によれば、軸線方向101に見て、第1稜線71と第3チゼル領域43とがなす角度θ3は、第1稜線71と第1チゼル領域41とがなす角度θ1よりも大きく、且つ第1稜線71と第2チゼル領域42とがなす角度θ2よりも大きくてもよい。
【0015】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに係るドリル100によれば、軸線方向101に見て、第1稜線71と第3チゼル領域43とがなす角度θ3は、50°以上80°以下であってもよい。
【0016】
(8)上記(1)から(7)のいずれかに係るドリル100によれば、軸線方向101に見て、第1稜線71と第1チゼル領域41とがなす角度θ1は、40°以上60°以下であってもよい。軸線方向101に見て、第1稜線71と第2チゼル領域42とがなす角度は、40°以上60°以下であってもよい。
【0017】
[実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本開示の実施形態(以降、本実施形態とも称する)の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0018】
まず、本実施形態に係るドリル100の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るドリル100の構成を示す平面模式図である。図1に示されるように本実施形態に係るドリル100は、前端1と、後端2と、第1切刃51と、第1切屑排出面19と、第2切屑排出面29と、外周面9と、シャンク7と、第2逃げ面20と、第2シンニング面23とを主に有している。本実施形態に係るドリル100は、たとえば金属加工用のドリルである。
【0019】
図1に示されるように、第1切屑排出面19は、軸線Xの周りにおいて螺旋状に設けられている。第2切屑排出面29は、軸線Xの周りにおいて螺旋状に設けられている。第1切屑排出面19および第2切屑排出面29の各々は、切屑排出溝を構成する。具体的には、第1切屑排出面19は、第1切屑排出溝93を構成している。第2切屑排出面29は、第2切屑排出溝94を構成している。
【0020】
外周面9は、第1切屑排出面19および第2切屑排出面29の各々に連なっている。外周面9は、第1外周面部16と、第2外周面部26とを有している。第1外周面部16は、軸線Xの周りにおいて螺旋状に設けられている。第2外周面部26は、軸線Xの周りにおいて螺旋状に設けられている。第1切刃51は、ドリル100の前端1に近い位置に設けられている。第2シンニング面23は、第2逃げ面20、第2外周面部26および第1切屑排出面19の各々に連なっている。
【0021】
ドリル100の前端1は、被削材に対向する部分である。ドリル100の後端2は、ドリル100を回転させる工具主軸(図示せず)に対向する部分である。シャンク7は、工具主軸に取り付けられる部分である。軸線Xは、前端1と後端2とを通っている。ドリル100は、軸線Xの周りを回転する。本明細書において、前端1から後端2に向かう方向は、軸線方向101とされる。軸線方向101は、軸線Xに沿う方向である。軸線方向101に垂直であり且つ軸線Xに向かう方向は、径方向内側とされる。反対に、軸線方向101に垂直であり且つ軸線Xから離れる方向は、径方向外側とされる。
【0022】
図1に示されるように、軸線方向101における第1切屑排出面19の長さは、第1長さL1とされる。第1長さL1は、たとえば10mmである。軸線方向101における第2切屑排出面29の長さは、第2長さL2とされる。第2長さL2は、第1長さL1と実質的に同じである。
【0023】
図2は、本実施形態に係るドリル100の構成を示す斜視模式図である。図2に示されるように、本実施形態に係るドリル100は、第1逃げ面10と、第1シンニング面13と、第2切刃52とを有している。第1逃げ面10は、第1切屑排出面19(図1参照)および第1外周面部16に連なっている。第1逃げ面10と第1切屑排出面19との稜線は、第1切刃51を構成している。第1切刃51に近い第1切屑排出面19は、すくい面として機能する。
【0024】
第1シンニング面13は、第1逃げ面10、第1外周面部16および第2切屑排出面29の各々に連なっている。第2逃げ面20は、第1逃げ面10、第1シンニング面13および第2切屑排出面29の各々に連なっている。第2逃げ面20と第2切屑排出面29との稜線は、第2切刃52を構成している。第2切刃52に近い第2切屑排出面29は、すくい面として機能する。
【0025】
図2に示されるように、第1逃げ面10は、第1前方逃げ面部11と、第1後方逃げ面部12とを有している。第1前方逃げ面部11は、たとえば平面状である。第1前方逃げ面部11は、第1切刃51に連なっている。別の観点から言えば、第1前方逃げ面部11と第1切屑排出面19(図1参照)との稜線は、第1切刃51を構成している。第1後方逃げ面部12は、たとえば平面状である。第1後方逃げ面部12は、第1前方逃げ面部11に連なっている。第1前方逃げ面部11と第1後方逃げ面部12との稜線は、第1稜線71とされる。第1稜線71は、たとえば直線状である。
【0026】
第2逃げ面20は、第2前方逃げ面部21と、第2後方逃げ面部22とを有している。第2前方逃げ面部21は、たとえば平面状である。第2前方逃げ面部21は、第2切刃52に連なっている。第2前方逃げ面部21は、たとえば平面状である。第2後方逃げ面部22は、第2前方逃げ面部21に連なっている。第2前方逃げ面部21と第2後方逃げ面部22との稜線は、第2稜線72とされる。第2稜線72は、たとえば直線状である。
【0027】
図2に示されるように、外周面9は、第1マージン面18と、第2マージン面28とを有している。別の観点から言えば、ドリル100は、マージン面を1対のみ有している。第1マージン面18は、第1外周面部16および第1切屑排出面19の各々に連なっている。第1マージン面18と第1切屑排出面19との稜線は、第1リーディングエッジ17を構成している。
【0028】
第2マージン面28は、第2外周面部26、第2逃げ面20および第2切屑排出面29の各々に連なっている。第2マージン面28と第2切屑排出面29との稜線は、第2リーディングエッジ27を構成している。
【0029】
第1外周面部16は、第1逃げ面10、第1シンニング面13および第2切屑排出面29の各々に連なっている。第2外周面部26は、第2逃げ面20、第2シンニング面23および第1切屑排出面19の各々に連なっている。
【0030】
図3は、本実施形態に係るドリル100の構成を示す正面模式図である。図3に示される正面模式図は、軸線方向101に見たドリル100の構成を示している。説明の便宜のため、図3において、シャンク7は図示されていない。図3に示されるように、第1シンニング面13は、第1逃げ面10に対して回転方向後方に設けられている。第2逃げ面20は、第1シンニング面13に対して回転方向後方に設けられている。第2シンニング面23は、第2逃げ面20に対して回転方向後方に設けられている。第1逃げ面10は、第2シンニング面23に対して回転方向後方に設けられている。
【0031】
図3に示されるように、ドリル100は、軸線Xに対して実質的に2回対称であってもよい。第1逃げ面10の外形を軸線Xに対して180°回転させた形状は、第2逃げ面20の外形と実質的に同じであってもよい。同様に、第1シンニング面13の外形を軸線Xに対して180°回転させた形状は、第2シンニング面23の外形と実質的に同じであってもよい。軸線方向101に見て、第2稜線72は、第1稜線71と実質的に平行である。
【0032】
第1前方逃げ面部11は、第2シンニング面23に連なっている。第1前方逃げ面部11と第2シンニング面23との稜線は、第1シンニング切刃61を構成している。第1シンニング切刃61は、第1切刃51に連なっている。第1シンニング切刃61は、第1切刃51に対して径方向内側に設けられている。第1前方逃げ面部11は、第1シンニング面13から離間している。
【0033】
第1後方逃げ面部12は、第1前方逃げ面部11に対して回転方向後方に設けられている。第1後方逃げ面部12は、第1シンニング面13に連なっている。第1後方逃げ面部12と第1シンニング面13との稜線は、第3稜線73とされる。第1後方逃げ面部12は、第2シンニング面23から離間している。
【0034】
第2前方逃げ面部21は、第1シンニング面13に連なっている。第2前方逃げ面部21と第1シンニング面13との稜線は、第2シンニング切刃62を構成している。第2シンニング切刃62は、第2切刃52に連なっている。第2シンニング切刃62は、第2切刃52に対して径方向内側に設けられている。第2前方逃げ面部21は、第2シンニング面23から離間している。
【0035】
第2後方逃げ面部22は、第2前方逃げ面部21に対して回転方向後方に設けられている。第2後方逃げ面部22は、第2シンニング面23に連なっている。第2後方逃げ面部22と第2シンニング面23との稜線は、第4稜線74とされる。第2後方逃げ面部22は、第1シンニング面13から離間している。
【0036】
図3に示されるように、軸線方向101に見て、第1外周面部16は、第1シンニング面13に対して径方向外側に設けられている。軸線方向101に見て、第2外周面部26は、第2シンニング面23に対して径方向外側に設けられている。
【0037】
軸線方向101に見て、第1切刃51は曲線状である。具体的には、第1切刃51は円弧状であってもよい。軸線方向101に見て、第1切刃51は回転方向後方に凹んでいる。軸線方向101に見て、第2切刃52は曲線状である。具体的には、第2切刃52は円弧状であってもよい。軸線方向101に見て、第2切刃52は回転方向後方に凹んでいる。
【0038】
第1切刃51の最外周端は、第1最外周端91とされる。第2切刃52の最外周端は、第2最外周端92とされる。軸線方向101に見て、第1最外周端91と第2最外周端92と軸線Xとは、一直線上に並んでいてもよい。軸線方向101に見て、第1最外周端91と軸線Xとの間の距離と、第2最外周端92と軸線Xとの間の距離とは、実質的に同じである。
【0039】
軸線方向101に見て、第1最外周端91と第2最外周端92との間の距離は、ドリル100の刃径Dとされる。刃径Dは、たとえば3mm以下である。刃径Dは、たとえば2mmである。刃径Dの上限は、特に限定されないが、たとえば2mm以下であってもよいし、1mm以下であってもよい。刃径Dの下限は、特に限定されないが、たとえば0.1mm以上であってもよいし、0.5mm以上であってもよい。
【0040】
軸線方向101における第1切屑排出面19の長さ(第1長さL1)は、たとえば刃径Dの2倍以上10倍以下である。第1長さL1は、たとえば刃径Dの3倍以上5倍以下であってもよい。第1長さL1の下限は、特に限定されないが、たとえば刃径Dの2.5倍以上であってもよいし、刃径Dの4倍以上であってもよい。第1長さL1の上限は、特に限定されないが、たとえば刃径Dの8倍以下であってもよいし、刃径Dの6倍以下であってもよい。
【0041】
軸線方向101における第2切屑排出面29の長さ(第2長さL2)は、たとえば刃径Dの2倍以上10倍以下である。第2長さL2は、たとえば刃径Dの3倍以上5倍以下であってもよい。第2長さL2の下限は、特に限定されないが、たとえば刃径Dの2.5倍以上であってもよいし、刃径Dの4倍以上であってもよい。第2長さL2の上限は、特に限定されないが、たとえば刃径Dの8倍以下であってもよいし、刃径Dの6倍以下であってもよい。
【0042】
図3に示されるように、第1切屑排出面19と第2シンニング面23との稜線は、第5稜線75とされる。軸線方向101に見て、第5稜線75は、回転方向前方に凹んでいる。軸線方向101に見て、第1シンニング切刃61上の第1点121において、第5稜線75は、第1シンニング切刃61に重なっている。別の観点から言えば、軸線方向101に見て第5稜線75は、第1点121から、第1シンニング切刃61に対して回転方向前方に延びている。軸線方向101に見て、第1点121を通り且つ第1稜線71に平行な直線は、第1仮想線111とされる。軸線方向101に見て、第1切刃51は、第1仮想線111に対して回転方向前方に設けられている。
【0043】
図3に示されるように、第2切屑排出面29と第1シンニング面13との稜線は、第6稜線76とされる。軸線方向101に見て、第6稜線76は、回転方向前方に凹んでいる。軸線方向101に見て、第2シンニング切刃62上の第2点122において、第6稜線76は、第2シンニング切刃62に重なっている。別の観点から言えば、軸線方向101に見て第6稜線76は、第2点122から、第2シンニング切刃62に対して回転方向前方に延びている。軸線方向101に見て、第2点122を通り且つ第1稜線71に平行な直線は、第2仮想線112とされる。軸線方向101に見て、第2切刃52は、第2仮想線112に対して回転方向前方に設けられている。図3に示されるように、径方向内側に向かう方向であり、且つ軸線方向101に見て第1稜線71に平行な方向は、側面視方向102とされる。
【0044】
図4は、図3の領域IVを示す拡大正面模式図である。図4に示されるように、第2前方逃げ面部21は、第1前方逃げ面部11および第1後方逃げ面部12の各々に連なっている。第2後方逃げ面部22は、第1前方逃げ面部11に連なっている。第2後方逃げ面部22は、第1後方逃げ面部12から離間している。
【0045】
第1前方逃げ面部11と第2後方逃げ面部22との稜線は、第1チゼル領域41を構成している。軸線方向101に見て、第1チゼル領域41は、たとえば直線状である。第1後方逃げ面部12と第2前方逃げ面部21との稜線は、第2チゼル領域42を構成している。軸線方向101に見て、第2チゼル領域42は、たとえば直線状である。第2チゼル領域42は、第1チゼル領域41から離間している。
【0046】
第1前方逃げ面部11と第2前方逃げ面部21との稜線は、第3チゼル領域43を構成している。第3チゼル領域43は、軸線Xと交差していてもよい。第3チゼル領域43は、第1端部81と第2端部82とを有している。第1端部81において、第3チゼル領域43は、第1チゼル領域41および第2稜線72の各々に連なっている。第2端部82は、第1端部81の反対にある。第2端部82において、第3チゼル領域43は、第2チゼル領域42および第1稜線71の各々に連なっている。第3チゼル領域43は、第1チゼル領域41に対して径方向内側に設けられている。第3チゼル領域43は、第2チゼル領域42に対して径方向内側に設けられている。
【0047】
軸線方向101に見て、第2稜線72が延在する方向に延びる直線は、第3仮想線113とされる。軸線方向101に見て、第3仮想線113は、第1稜線71に対して回転方向前方にある。軸線方向101に見て、第1稜線71に垂直な方向において、第1稜線71と第2稜線72との間の距離は、第1距離E1とされる。第1距離E1は、軸線方向101に見た場合における第3仮想線113と第1稜線71との間の距離である。第1距離E1は、0mmより大きく0.03mm以下である。第1距離E1の下限は、特に限定されないが、たとえば0.005mm以上であってもよいし、0.01mm以上であってもよい。第1距離E1の上限は、特に限定されないが、たとえば0.027mm以下であってもよいし、0.023mm以下であってもよい。
【0048】
図4に示されるように、第1シンニング面13と第1逃げ面10との稜線(第3稜線73)と、第1シンニング面13と第2逃げ面20との稜線(第2シンニング切刃62)とは、第1シンニング稜線15を構成している。第1シンニング稜線15は、第2チゼル領域42に連なっている。軸線方向101に見て、第1シンニング稜線15は、径方向内側に凹んでいる。第1シンニング稜線15上に位置し、且つ軸線方向101に見て第1稜線71に垂直な方向において軸線Xに最も近い点は、第3点123とされる。第3点123は、たとえば第3稜線73上に位置している。
【0049】
第2シンニング面23と第1逃げ面10との稜線(第1シンニング切刃61)と、第2シンニング面23と第2逃げ面20との稜線(第4稜線74)とは、第2シンニング稜線25を構成している。第2シンニング稜線25は、第1チゼル領域41に連なっている。軸線方向101に見て、第2シンニング稜線25は、径方向内側に凹んでいる。第2シンニング稜線25上に位置し、且つ軸線方向101に見て第1稜線71に垂直な方向において軸線Xに最も近い点は、第4点124とされる。第4点124は、たとえば第4稜線74上に位置している。
【0050】
軸線方向101に見て、第1稜線71に垂直な方向における第3点123と第4点124との間の距離は、第2距離E2とされる。軸線方向101に見て、第2距離E2は、第1稜線71に垂直な方向における第1シンニング稜線15と第2シンニング稜線25との間の最短距離である。第2距離E2は、0.04mm以上0.10mm以下である。第2距離E2の下限は、特に限定されないが、たとえば0.05mm以上であってもよいし、0.053mm以上であってもよい。第2距離E2の上限は、特に限定されないが、たとえば0.09mm以下であってもよいし、0.085mm以下であってもよい。第2距離E2は、第1距離E1よりも大きい。
【0051】
軸線方向101に見た場合における第3チゼル領域43の長さは、第3長さL3とされる。別の観点から言えば、第3長さL3は、軸線方向101に見た場合における第1端部81と第2端部82との間の距離である。第3長さL3は、第2距離E2の23%以上55%以下である。言い換えれば、第3長さL3を第2距離E2で割った値の百分率(第1値)は、23%以上55%以下である。第1値の下限は、特に限定されないが、たとえば28%以上であってもよいし、35%以上であってもよい。第1値の上限は、特に限定されないが、たとえば50%以下であってもよいし、45%以下であってもよい。
【0052】
図4に示されるように、軸線方向101に見て、第1稜線71に平行であり且つ第1チゼル領域41と交差する直線は、第4仮想線114とされる。軸線方向101に見て、第4仮想線114と第1チゼル領域41とがなす角の内、鋭角である角の角度は、第1角度θ1とされる。別の観点から言えば、第1角度θ1は、軸線方向101に見て第1稜線71と第1チゼル領域41とがなす角度である。
【0053】
第1角度θ1は、たとえば40°以上60°以下である。第1角度θ1の下限は、特に限定されないが、たとえば43°以上であってもよいし、47°以上であってもよい。第1角度θ1の上限は、特に限定されないが、たとえば57°以下であってもよいし、53°以下であってもよい。
【0054】
図4に示されるように、軸線方向101に見て、第1稜線71に平行であり且つ第2チゼル領域42と交差する直線は、第5仮想線115とされる。軸線方向101に見て、第5仮想線115と第2チゼル領域42とがなす角の内、鋭角である角の角度は、第2角度θ2とされる。別の観点から言えば、第2角度θ2は、軸線方向101に見て第1稜線71と第2チゼル領域42とがなす角度である。
【0055】
第2角度θ2は、たとえば40°以上60°以下である。第2角度θ2の下限は、特に限定されないが、たとえば43°以上であってもよいし、47°以上であってもよい。第2角度θ2の上限は、特に限定されないが、たとえば57°以下であってもよいし、53°以下であってもよい。
【0056】
軸線方向101に見て、第1稜線71と第3チゼル領域43とがなす角度は、第3角度θ3とされる。第3角度θ3は、鋭角である。第3角度θ3は、第1角度θ1よりも大きい。別の観点から言えば、軸線方向101に見て、第1チゼル領域41は、第3チゼル領域43に対して回転方向後方に傾斜している。第3角度θ3は、第2角度θ2よりも大きい。別の観点から言えば、軸線方向101に見て、第2チゼル領域42は、第3チゼル領域43に対して回転方向後方に傾斜している。
【0057】
第3角度θ3は、たとえば50°以上80°以下である。第3角度θ3の下限は、特に限定されないが、たとえば55°以上であってもよいし、60°以上であってもよい。第3角度θ3の上限は、特に限定されないが、たとえば75°以下であってもよいし、70°以下であってもよい。
【0058】
図5は、図4のV-V線に沿う断面模式図である。図5に示される断面は、軸線Xを含み且つ軸線方向101に見て第1稜線71に平行な断面である。本明細書において、軸線Xを含み且つ軸線方向101に見て第1稜線71に平行な断面は、第1断面CS1とされる。図5に示されるように、第1断面CS1において、第1前方逃げ面部11は、たとえば直線状である。第1断面CS1において、第1前方逃げ面部11が延在する方向に延びる直線は、第6仮想線116とされる。第1断面CS1において、第2前方逃げ面部21は、たとえば直線状である。第1断面CS1において、第2前方逃げ面部21が延在する方向に延びる直線は、第7仮想線117とされる。
【0059】
第6仮想線116と第7仮想線117とがなす角の内、鈍角となる角の角度は、第4角度θ4とされる。第4角度θ4は、第1前方逃げ面部11と第2前方逃げ面部21とがなす角度である。第4角度θ4は、ドリル100の先端角である。第4角度θ4は、たとえば140°である。第4角度θ4は、120°以上160°以下であってもよい。第1断面CS1において、軸線Xは、第1前方逃げ面部11と第2前方逃げ面部21とがなす角を実質的に二等分している。
【0060】
図6は、図3のVI-VI線に沿う断面模式図である。図6に示される断面は、軸線Xに平行であり且つ第1稜線71に交差している。軸線方向101に見て、図6に示される断面は、第1稜線71に垂直である。別の観点から言えば、図6に示される断面模式図は、側面視方向102(図3参照)に見たドリル100の構成を示している。本明細書において、軸線Xに平行であり且つ第1稜線71に交差している断面は、第2断面CS2とされる。
【0061】
図6に示されるように、第1後方逃げ面部12は、第1前方逃げ面部11に対して傾斜している。具体的には、第2断面CS2において、第1後方逃げ面部12は、第1前方逃げ面部11に対して、軸線方向101に傾斜している。同様に、第2後方逃げ面部22(図3参照)は、第2前方逃げ面部21(図3参照)に対して傾斜している。
【0062】
図6に示されるように、第2断面CS2において、第1前方逃げ面部11および第1後方逃げ面部12の各々は、直線状であってもよい。同様に、軸線Xに平行であり且つ第2稜線72(図3参照)に交差している断面において、第2前方逃げ面部21および第2前方逃げ面部21の各々は、直線状であってもよい。
【0063】
図7は、図6の領域VIIを示す拡大模式図である。図7に示されるように第3チゼル領域43は、ドリル100の前端1に設けられている。側面視方向102に見て、第3チゼル領域43は、軸線Xに実質的に垂直である。側面視方向102に見て、第1チゼル領域41は、第3チゼル領域43に対して軸線方向101に傾斜している。側面視方向102に見て、第3チゼル領域43に対する第1チゼル領域41の傾斜角は、第5角度θ5とされる。第5角度θ5は、たとえば3°以上15°以下である。
【0064】
側面視方向102に見て、第2チゼル領域42は、第3チゼル領域43に対して軸線方向101に傾斜している。側面視方向102に見て、第3チゼル領域43に対する第2チゼル領域42の傾斜角は、第6角度θ6とされる。第6角度θ6は、たとえば3°以上15°以下である。
【0065】
図8は、図3の領域VIIIを示す拡大模式図である。図8に示されるように、軸線方向101に見て、第1最外周端91における第1切刃51の接線は、第1接線131とされる。軸線方向101に見て、第1最外周端91と軸線X(図3参照)とを通る直線は、第8仮想線118とされる。
【0066】
軸線方向101に見て、第1接線131は、第8仮想線118に対して回転方向後方に傾斜している。軸線方向101に見て、第1接線131と第8仮想線118とがなす角の内、鋭角である角の角度は、第1すくい角θ11とされる。別の観点から言えば、第1切刃51の最外周端91において、ドリル100の半径方向における第1切刃51のすくい角は、第1すくい角θ11とされる。第1すくい角θ11は、負である。
【0067】
切刃の最外周端において、ドリル100の半径方向における切刃のすくい角が「正」であるとは、軸線方向101に見て、軸線Xと最外周端とを通る直線に対して、最外周端における切刃の接線がドリル100の回転方向前方に傾斜している状態をいう。反対に、切刃の最外周端において、ドリル100の半径方向における切刃のすくい角が「負」であるとは、軸線方向101に見て、軸線Xと最外周端とを通る直線に対して、最外周端における切刃の接線がドリル100の回転方向後方に傾斜している状態をいう。
【0068】
第1すくい角θ11は、たとえば-18°以上-9°以下である。第1すくい角θ11は、たとえば-14°以上-10°以下であってもよい。第1すくい角θ11の下限は、特に限定されないが、たとえば-16°以上であってもよいし、-13°以上であってもよい。第1すくい角θ11の上限は、特に限定されないが、たとえば-9.5°以下であってもよいし、-11°以下であってもよい。軸線方向101に見て、第1マージン面18は、第1逃げ面10、第1外周面部16および第2外周面部26の各々に対して径方向外側に設けられている。軸線方向101に見て、第1マージン面18は、第1外周面部16に対して回転方向前方に設けられている。
【0069】
図9は、図3の領域IXを示す拡大模式図である。図9に示されるように、軸線方向101に見て、第2最外周端92における第2切刃52の接線は、第2接線132とされる。軸線方向101に見て、第2最外周端92と軸線X(図3参照)とを通る直線は、第9仮想線119とされる。軸線方向101に見て、第9仮想線119は、第8仮想線118(図8参照)に重なっていてもよい。
【0070】
軸線方向101に見て、第2接線132は、第9仮想線119に対して回転方向後方に傾斜している。軸線方向101に見て、第2接線132と第9仮想線119とがなす角の内、鋭角である角の角度は、第2すくい角θ12とされる。別の観点から言えば、第2切刃52の最外周端92において、ドリル100の半径方向における第2切刃52のすくい角は、第2すくい角θ12とされる。第2すくい角θ12は、負である。第2すくい角θ12は、第1すくい角θ11と実質的に同じである。
【0071】
第2すくい角θ12は、たとえば-18°以上-9°以下である。第2すくい角θ12は、たとえば-14°以上-10°以下であってもよい。第2すくい角θ12の下限は、特に限定されないが、たとえば-16°以上であってもよいし、-13°以上であってもよい。第2すくい角θ12の上限は、特に限定されないが、たとえば-9.5°以下であってもよいし、-11°以下であってもよい。軸線方向101に見て、第2マージン面28は、第2逃げ面20、第1外周面部16および第2外周面部26の各々に対して径方向外側に設けられている。軸線方向101に見て、第2マージン面28は、第2外周面部26に対して回転方向前方に設けられている。
【0072】
次に、本実施形態に係るドリル100の作用効果について説明する。
本実施形態に係るドリル100によれば、第1チゼル領域41と、第2チゼル領域42と、第3チゼル領域43とを有している。第3チゼル領域43は、第1チゼル領域41および第2チゼル領域42の各々に連なっている。第3チゼル領域43は、前端1に設けられている。このため、ドリル100を用いて被削材を加工する場合、第3チゼル領域43が最初に被削材に接する。また、本実施形態に係るドリル100によれば、第1稜線71と第2稜線72との間の距離(第1距離E1)は、0.03mm以下である。軸線方向101に見て、第1稜線71に垂直な方向における第1シンニング稜線15と第2シンニング稜線25との間の最短距離(第2距離E2)は、0.10mm以下である。
【0073】
第1距離E1を0.03mm以下とすることによって、第3チゼル領域43の長さが過度に長くなることを抑制できる。これによって、ドリル100を用いた穴加工の開始直後において、ドリル100と被削材との間の接触面積が過度に大きくなることを抑制できる。このため、ドリル100の食いつき性を向上できる。これによって、穴加工時においてドリル100が振られることを抑制できる。このため、ドリル100を用いて加工した穴における穴径の拡大代および穴位置度の各々を向上できる。結果として、穴加工の精度を向上できる。第2距離E2を0.10mm以下とすることによって、第1チゼル領域41および第2チゼル領域42の各々の長さが、過度に長くなることを抑制できる。これによって、穴加工の初期において、被削材から第1チゼル領域41および第2チゼル領域42の各々へ負荷される力が過度に大きくなることを抑制できる。このため、穴加工時においてドリル100が振られることを抑制できる。結果として、穴加工の精度を向上できる。
【0074】
さらに、本実施形態に係るドリル100によれば、第1距離E1は0mmより大きい。第2距離E2は0.04mm以上である。第1距離E1を0mmより大きくすることによって、ドリル100の前端1の周辺が、過度に鋭くなることを抑制できる。このため、ドリル100の前端1の周辺が欠けることを抑制できる。結果として、ドリル100の強度を向上できる。第2距離E2を0.04mm以上とすることによって、ドリル100の前端1の周辺における肉厚を厚くすることができる。これによって、ドリル100が折れることを抑制できる。結果として、ドリル100の強度を向上できる。
【0075】
本実施形態に係るドリル100によれば、第3チゼル領域43の長さ(第3長さL3)は、第2距離E2の23%以上55%以下であってもよい。これによって、ドリル100を用いて形成した穴の穴位置度を向上できる。
【0076】
本実施形態に係るドリル100によれば、ドリル100の刃径Dは、3mm以下であってもよい。通常、刃径Dの小さいドリル100を用いた加工においては、外部給油によって油性のクーラントを供給することが多い。この場合、内部給油によってクーラントを供給する場合と比較して、ドリル100の温度が高くなりやすい。従って、刃径Dの小さいドリル100においては、ドリル100と被削材との間における摩擦を低減するために、マージン面の数は2個(1対)とされることが多い。この場合、マージン面の数が4個(2対)以上である場合と比較して、ドリル100が振れやすくなる。結果として、穴加工の精度が低下する。本実施形態に係るドリル100によれば、刃径Dが3mm以下である場合においても、穴加工の精度の低下を抑制できる。
【0077】
図10は、ドリル100が被削材を貫通する直前の状態を示す断面模式図である。図10に示されるように、穴加工時にドリル100が被削材99を貫通する直前において、被削材99の残部98が形成される。残部98は、ドリル100の切刃によって切削されない部分である。図11は、ドリル100を用いて被削材99に穴が形成された状態を示す断面模式図である。図10および図11に示されるように、ドリル100が被削材99を貫通する際に、残部98は、ドリル100の加工方向Aに沿った方向の負荷を受ける。当該負荷によって、残部98は塑性変形する。結果として、被削材99においてバリ97が形成される。ドリル100の加工方向Aにおいて、被削材99の表面から最も離れているバリ97上の点と、被削材99の表面との間の距離が、バリ97の高さHとされる。バリ97の高さHは、低いことが好ましい。
【0078】
本実施形態に係るドリル100によれば、第1最外周端91において、ドリル100の半径方向における第1切刃51のすくい角(第1すくい角θ11)は、-18°以上-9°以下であってもよい。第2最外周端92において、ドリル100の半径方向における第2切刃52のすくい角(第2すくい角θ12)は、-18°以上-9°以下であってもよい。第1すくい角θ11および第2すくい角θ12の各々を-18°以上とすることにより、最外周端における切刃の切れ味を向上できる。結果として、バリ97の高さHを低くすることができる。
【0079】
さらに、第1すくい角θ11および第2すくい角θ12の各々を-9°以下とすることによって、最外周端の周辺における切刃の強度が低下することを抑制できる。これによって、ドリル100を用いて複数の穴を加工した後においても、切刃の欠損による切れ味の低下を抑制できる。この結果、ドリル100を用いて複数の穴を加工した後においても、バリの高さHが高くなることを抑制できる。
【実施例1】
【0080】
(サンプル準備)
まず、サンプル1およびサンプル2に係るドリル100が準備された。サンプル1に係るドリル100は、比較例とされた。サンプル2に係るドリル100は、実施例とされた。
【0081】
サンプル1およびサンプル2に係るドリル100において、第1距離E1が変化された。サンプル1に係るドリル100において、第1距離E1は、0.12mmとされた。図12は、サンプル1に係るドリル100の構成を示す拡大正面模式図である。図12に示される拡大正面模式図は、図4に示される拡大正面模式図に対応している。図12に示されるように、サンプル1に係るドリル100は、第1チゼル領域41および第2チゼル領域42を有していなかった。サンプル1に係るドリル100において、第3チゼル領域43の長さ(第3長さL3)を第2距離E2で割った値の百分率(第1値)は、113%とされた。
【0082】
サンプル2に係るドリル100の構成は、本実施形態に係るドリル100の構成とされた(図4参照)。サンプル2に係るドリルにおいて、第1距離E1は、0.02mmとされた。第1値は32%とされた。
【0083】
サンプル1およびサンプル2に係るドリル100において、刃径Dは2mmとされた。第1切屑排出面19および第2切屑排出面29の各々の長さは、刃径Dの5倍とされた。第2距離E2は0.07mmとされた。第1すくい角θ11および第2すくい角θ12の各々(以下、単にすくい角とも称する)は、-12°とされた。
【0084】
(評価方法)
次に、サンプル1およびサンプル2に係るドリル100を用いて、穴径の拡大代および穴位置度が評価された。具体的には、サンプル1およびサンプル2に係るドリル100を用いて、被削材に穴が形成された。形成された穴の径が測定された。形成された穴の径からドリル100の刃径を差し引いた値が、穴径の拡大代とされた。穴の中心の目標位置と、形成された穴の中心の位置との間の距離の2倍の値が、穴位置度とされた。
【0085】
穴径の拡大代および穴位置度の評価において、被削材はSCM415とされた。SCM415は、JIS(Japanese Industrial Standards) G 4053:2016に規定される合金鋼である。穴の深さは6mmとされた。切削速度は38m/分とされた。送り量は0.04mm/回転とされた。
【0086】
(評価結果)
【0087】
【表1】
【0088】
表1は、サンプル1およびサンプル2における穴径の拡大代および穴位置度を示している。表1に示されるように、サンプル2における穴径の拡大代は、サンプル1における穴径の拡大代よりも小さかった。サンプル2における穴位置度は、サンプル1における穴位置度よりも小さかった。
【0089】
以上の結果より、実施例に係るドリル100は、比較例に係るドリル100と比較して、穴径の拡大代および穴位置度の各々を低減可能であることが確認された。
【実施例2】
【0090】
(サンプル準備)
次に、サンプル3からサンプル7に係るドリル100が準備された。サンプル3、サンプル6およびサンプル7に係るドリル100は、比較例とされた。サンプル4およびサンプル5に係るドリル100は、実施例とされた。
【0091】
サンプル3からサンプル7に係るドリル100において、第1距離E1が変化された。サンプル3からサンプル7に係るドリル100において、第1距離E1は0mm以上0.10mm以下とされた。第1値は、0%以上113%以下とされた。
【0092】
サンプル3からサンプル7に係るドリル100において、刃径Dは2mmとされた。第1切屑排出面19および第2切屑排出面29の各々の長さは、刃径Dの5倍とされた。第2距離E2は0.08mmとされた。すくい角は-12°とされた。
【0093】
(評価方法)
次に、サンプル3からサンプル7に係るドリル100を用いて、食いつき形状が評価された。具体的には、サンプル3からサンプル7に係るドリル100を用いて、穴が被削材に形成された。穴の深さは0.3mm程度とされた。被削材におけるドリル100が接触した部分において、ドリル100が接触した痕の形状(食いつき形状)が確認された。ドリル100の食いつき性が良好である場合、食いつき形状は円形になる。食いつき形状の評価において、被削材はSCM415とされた。切削速度は38m/分とされた。送り量は0.04mm/回転とされた。
【0094】
サンプル3からサンプル7に係るドリル100を用いて、穴径の拡大代および穴位置度が評価された。具体的には、上述の評価方法を用いて、穴径の拡大代および穴位置度の各々が測定された。
【0095】
サンプル3からサンプル7に係るドリル100の各々の加工穴数が評価された。具体的には、サンプル3からサンプル7に係るドリル100を用いて、被削材に複数の穴が形成された。穴の数は、最大600個とされた。ドリル100の破損が確認された場合においては、破損が確認されるまでに形成された穴の数が加工穴数として測定された。ドリル100の破損が確認されなかった場合においては、加工穴数は600個とされた。加工穴数の評価において、被削材はSCM415とされた。穴の深さは6mmとされた。切削速度は38m/分とされた。送り量は0.04mm/回転とされた。
【0096】
(評価結果)
【0097】
【表2】
【0098】
表2は、サンプル3からサンプル7における食いつき形状、穴径の拡大代、穴位置度および加工穴数を示している。表2に示されるように、第1距離E1が0.03mm以下である場合(サンプル3から5)において、食いつき形状は円形であった。第1距離E1が0.05mm以上である場合(サンプル6および7)において、食いつき形状は異形状であった。具体的には、食いつき形状が三角形状であった。
【0099】
表2に示されるように、第1距離E1が0.03mm以下である場合(サンプル3から5)において、穴径の拡大代は0.018mm以下であった。穴位置度は0.016mm以下であった。第1距離E1が0.05mm以上である場合(サンプル6および7)において、穴径の拡大代は0.028mm以上であった。穴位置度は0.021mm以上であった。
【0100】
表2に示されるように、第1距離E1が0mmである場合(サンプル3)において、加工穴数は126個であった。具体的には、サンプル3において、ドリル100の前端1の周辺に欠損が確認された。第1距離E1が0mmより大きい場合(サンプル4から7)において、加工穴数は600個であった。言い換えれば、サンプル4から7において、ドリル100の破損は確認されなかった。
【0101】
以上の結果より、実施例に係るドリル100は、比較例に係るドリル100と比較して、食いつき性を向上可能であり、且つ穴径の拡大代および穴位置度の各々を低減可能であり、且つドリル100の強度を向上可能であることが確認された。
【実施例3】
【0102】
(サンプル準備)
次に、サンプル8からサンプル13に係るドリル100が準備された。サンプル8およびサンプル13に係るドリル100は、比較例とされた。サンプル9からサンプル12に係るドリル100は、実施例とされた。
【0103】
サンプル8からサンプル13に係るドリル100において、第2距離E2が変化された。サンプル8からサンプル13に係るドリル100において、第2距離E2は0.030mm以上0.110mm以下とされた。第1値は、20%以上74%以下とされた。
【0104】
サンプル8からサンプル13に係るドリル100において、刃径Dは2mmとされた。第1切屑排出面19および第2切屑排出面29の各々の長さは、刃径Dの5倍とされた。第1距離E1は0.02mmとされた。すくい角は-12°とされた。
【0105】
(評価方法)
次に、サンプル8からサンプル13に係るドリル100を用いて、穴径の拡大代、穴位置度および加工穴数が評価された。具体的には、上述の評価方法を用いて穴径の拡大代、穴位置度および加工穴数が測定された。
【0106】
(評価結果)
【0107】
【表3】
【0108】
表3は、サンプル8からサンプル13における穴径の拡大代、穴位置度および加工穴数を示している。図13は、サンプル8からサンプル13における穴径の拡大代を示している。図13において、横軸は第2距離E2を示している。縦軸は穴径の拡大代を示している。図13において、P8で示される点は、サンプル8における穴径の拡大代を示している。同様に、P9からP13で示される点は、サンプル9からサンプル13における穴径の拡大代を示している。
【0109】
図14は、サンプル8からサンプル13おける穴位置度を示している。図14において、横軸は第2距離E2を示している。縦軸は、穴位置度を示している。図14において、P8で示される点は、サンプル8における穴位置度を示している。同様に、P9からP13で示される点は、サンプル9からサンプル13における穴位置度を示している。
【0110】
表3、図13および図14に示されるように、第2距離E2が0.100mm以下である場合(サンプル8から12)において、穴径の拡大代は0.016mm以下であった。穴位置度は、0.028mm以下であった。第2距離E2が0.110mm以上である場合(サンプル13)において、穴径の拡大代は0.019mmであった。穴位置度は0.035mmであった。
【0111】
表3に示されるように、第2距離E2が0.03mmである場合(サンプル8)において、加工穴数は180個であった。具体的には、サンプル8において、ドリル100の折損が確認された。第2距離E2が0.04mm以上である場合(サンプル9からサンプル13)において、加工穴数は600個であった。言い換えれば、サンプル9からサンプル13において、ドリル100の破損は確認されなかった。
【0112】
以上の結果より、実施例に係るドリル100は、比較例に係るドリル100と比較して、穴径の拡大代および穴位置度の各々を低減可能であり、且つドリル100の強度を向上可能であることが確認された。
【実施例4】
【0113】
(サンプル準備)
次に、サンプル14からサンプル20に係るドリル100が準備された。サンプル14、サンプル15およびサンプル20に係るドリル100は、比較例とされた。サンプル16からサンプル19に係るドリル100は、実施例とされた。
【0114】
サンプル14からサンプル20に係るドリル100において、第3チゼル領域43の長さを第2距離E2で割った値(第1値)が変化された。サンプル14からサンプル20に係るドリル100において、第1値は、15%以上75%以下とされた。第2距離E2は、0.030mm以上0.150mm以下とされた。
【0115】
サンプル14からサンプル20に係るドリル100において、刃径Dは2mmとされた。第1切屑排出面19および第2切屑排出面29の各々の長さは、刃径Dの5倍とされた。第1距離E1は0.02mmとされた。すくい角は、-12°とされた。
【0116】
(評価方法)
次に、サンプル14からサンプル20に係るドリル100を用いて、穴径の拡大代、穴位置度および加工穴数が評価された。具体的には、上述の評価方法を用いて、穴径の拡大代、穴位置度および加工穴数が測定された。
【0117】
(評価結果)
【0118】
【表4】
【0119】
表4は、サンプル14からサンプル20における穴径の拡大代、穴位置度および加工穴数を示している。図15は、サンプル14からサンプル20における穴径の拡大代を示している。図15において、横軸は第1値を示している。縦軸は穴径の拡大代を示している。図15において、P14で示される点は、サンプル14における穴径の拡大代を示している。同様に、P15からP20で示される点は、サンプル15からサンプル20における穴径の拡大代を示している。
【0120】
図16は、サンプル14からサンプル20における穴位置度を示している。図16において、横軸は第1値を示している。縦軸は穴位置度を示している。図16において、P14で示される点は、サンプル14における穴位置度を示している。同様に、P15からP20で示される点の各々は、サンプル15からサンプル20における穴位置度を示している。
【0121】
表4および図15に示されるように、第1値が23%以上65%以下である場合(サンプル15から19)における穴径の拡大代は、第1値が23%未満または65%より大きい場合(サンプル14およびサンプル20)における穴径の拡大代よりも小さかった。表4および図16に示されるように、第1値が23%以上55%以下である場合(サンプル16から19)における穴位置度は、第1値が23%未満または55%より大きい場合(サンプル14、サンプル15およびサンプル20)における穴位置度よりも小さかった。
【0122】
以上の結果より、実施例に係るドリル100は、比較例に係るドリル100と比較して、穴位置度を低減可能であることが確認された。
【実施例5】
【0123】
(サンプル準備)
次に、サンプル21からサンプル27に係るドリル100が準備された。サンプル21およびサンプル27に係るドリル100は、比較例とされた。サンプル22からサンプル26に係るドリル100は、実施例とされた。
【0124】
サンプル21からサンプル27に係るドリル100において、すくい角が変化された。サンプル21からサンプル27に係るドリル100において、すくい角は-24°以上-6°以下とされた。
【0125】
サンプル21からサンプル27に係るドリル100において、刃径Dは2mmとされた。第1切屑排出面19および第2切屑排出面29の各々の長さは、刃径Dの5倍とされた。第1距離E1は0.02mmとされた。第2距離E2は0.08mmとされた。第1値は28%とされた。
【0126】
(評価方法)
次に、サンプル21からサンプル27に係るドリル100を用いて、300個の穴を加工した後におけるバリの高さH(図11参照)が測定された。具体的には、ドリル100の加工方向において、被削材99の表面から最も離れているバリ97上の点と、被削材99の表面との間の距離が、バリの高さHとして測定された。バリの高さHの評価において、被削材はSCM415とされた。穴の深さは6mmとされた。切削速度は38m/分とされた。送り量は0.04mm/回転とされた。
【0127】
サンプル21からサンプル27に係るドリル100を用いて、穴径の拡大代、穴位置度および加工穴数が評価された。具体的には、上述の評価方法を用いて、穴径の拡大代、穴位置度および加工穴数が測定された。
【0128】
(評価結果)
【0129】
【表5】
【0130】
表5は、サンプル21からサンプル27に係るドリル100における穴径の拡大代、穴位置度、バリの高さHおよび加工穴数を示している。
【0131】
表5に示されるように、すくい角が-18°以上-9°以下である場合(サンプル22からサンプル26)におけるバリの高さHは、すくい角が-18°より小さいまたは-9°より大きい場合(サンプル21およびサンプル27)におけるバリの高さHよりも小さかった。
【0132】
以上の結果より、実施例に係るドリル100は、比較例に係るドリル100と比較して、バリの高さHを低減可能であることが確認された。
【0133】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0134】
1 前端、2 後端、7 シャンク、9 外周面、10 第1逃げ面、11 第1前方逃げ面部、12 第1後方逃げ面部、13 第1シンニング面、15 第1シンニング稜線、16 第1外周面部、17 第1リーディングエッジ、18 第1マージン面、19 第1切屑排出面、20 第2逃げ面、21 第2前方逃げ面部、22 第2後方逃げ面部、23 第2シンニング面、25 第2シンニング稜線、26 第2外周面部、27 第2リーディングエッジ、28 第2マージン面、29 第2切屑排出面、41 第1チゼル領域、42 第2チゼル領域、43 第3チゼル領域、51 第1切刃、52 第2切刃、61 第1シンニング切刃、62 第2シンニング切刃、71 第1稜線、72 第2稜線、73 第3稜線、74 第4稜線、75 第5稜線、76 第6稜線、81 第1端部、82 第2端部、91 第1最外周端、92 第2最外周端、93 第1切屑排出溝、94 第2切屑排出溝、97 バリ、98 残部、99 被削材、100 ドリル、101 軸線方向、102 側面視方向、111 第1仮想線、112 第2仮想線、113 第3仮想線、114 第4仮想線、115 第5仮想線、116 第6仮想線、117 第7仮想線、118 第8仮想線、119 第9仮想線、121 第1点、122 第2点、123 第3点、124 第4点、131 第1接線、132 第2接線、A 加工方向、CS1 第1断面、CS2 第2断面、D 刃径、E1 第1距離(距離)、E2 第2距離(最短距離)、H 高さ、L1 第1長さ、L2 第2長さ、L3 第3長さ、X 軸線、θ1 第1角度、θ2 第2角度、θ3 第3角度、θ4 第4角度、θ5 第5角度、θ6 第6角度、θ11 第1すくい角、θ12 第2すくい角。
【要約】
第1逃げ面は、第1前方逃げ面部と、第1後方逃げ面部とを含んでいる。第2逃げ面は、第2前方逃げ面部と、第2後方逃げ面部とを含んでいる。第1前方逃げ面部と第1後方逃げ面部との稜線は、第1稜線とされる。第2前方逃げ面部と第2後方逃げ面部との稜線は、第2稜線とされる。軸線方向に見て、第1稜線に垂直な方向における第1稜線と第2稜線との間の距離は、0mmより大きく0.03mm以下である。第1シンニング面と第1逃げ面との稜線と、第1シンニング面と第2逃げ面との稜線とは、第1シンニング稜線を構成している。第2シンニング面と第1逃げ面との稜線と、第2シンニング面と第2逃げ面との稜線とは、第2シンニング稜線を構成している。軸線方向に見て、第1稜線に垂直な方向における第1シンニング稜線と第2シンニング稜線との間の最短距離は、0.04mm以上0.10mm以下である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
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図16