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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】融雪マット
(51)【国際特許分類】
   E01H 5/10 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
E01H5/10 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020163926
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056113
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591062755
【氏名又は名称】東北ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栃沢 耕
(72)【発明者】
【氏名】宇野 亮
(72)【発明者】
【氏名】沼田 勝行
(72)【発明者】
【氏名】金田 実
(72)【発明者】
【氏名】鉢嶺 清円
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-128650(JP,A)
【文献】特開2011-255649(JP,A)
【文献】特開2016-056589(JP,A)
【文献】実開平01-111720(JP,U)
【文献】特開2001-030365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体状の熱媒体が流れる複数の流路を内部に有する流通部と、前記流通部と接続されるとともに前記複数の流路を流れる前記熱媒体を集合させるための集合部とを備え、
前記集合部は、ゴムを用いて形成された集合部本体と、前記集合部本体の内側に配置され前記流路に接続された空隙部と、前記集合部本体と前記空隙部との間に配置され前記ゴムよりも剛性の高い材料を用いて形成された補強部と、
を有し、
前記補強部は、金属材料により板状に形成されると共に、その平面に開孔を有する、
融雪マット。
【請求項2】
請求項1に記載の融雪マットであって、
前記集合部の外側表面には、前記集合部本体が露出している、
融雪マット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の融雪マットであって、
前記補強部は、前記集合部本体の内部に配置された、
融雪マット。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の融雪マットであって、
前記融雪マットを設置した際における上下方向の前記集合部の厚さは、前記流通部の厚さの2倍以上3倍未満に形成された、
融雪マット。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の融雪マットであって、
前記融雪マットを設置した際の上下方向を厚さ方向として、
前記空隙部における前記厚さ方向の中心は、前記流通部の前記厚さ方向の中心よりも下側である、
融雪マット。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の融雪マットであって、
前記融雪マットを設置した際の上下方向を厚さ方向として、
前記空隙部における前記厚さ方向の中心は、前記流通部の前記厚さ方向の中心よりも上側である、
融雪マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、融雪マットに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムヘッダーと、温水マット本体とを有する融雪マットであって、当該ゴムヘッダーの内部の管路から温水マット本体に、雪よりも温度が高い温水が給水されることにより、融雪マットに付着する雪を融解させる融雪マットが記載されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-56589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の融雪マットでは、ゴムヘッダーの内部に設けられた管路を熱媒体が流れることにより、管路からゴムヘッダーの外側に向かって内圧が作用すると、当該内圧によりゴムで形成されたゴムヘッダーが変形する可能性があった。
【0005】
本開示は、集合部の変形を抑制する融雪マットに関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、融雪マットであって、流体状の熱媒体が流れる複数の流路を内部に有する流通部と、前記流通部と接続されるとともに前記複数の流路を流れる前記熱媒体を集合させるための集合部とを備え、前記集合部は、ゴムを用いて形成された集合部本体と、前記集合部本体の内側に配置され前記流路に接続された空隙部と、前記集合部本体と前記空隙部との間に配置され前記ゴムよりも剛性の高い材料を用いて形成された補強部と、を有する。
【0007】
このような構成によれば、集合部において外側表面と空隙部との間に補強部が設けられる。集合部の内部に設けられた空隙部を熱媒体が流れることにより、空隙部から集合部の外側に向かって内圧が作用しても、集合部が変形することが補強部により抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態における融雪マットの全体の構造の例を表した模式図である。
図2】本実施形態における融雪マットの流入集合管付近の構造の一例を表した模式図である。
図3】本実施形態の融雪マットにおいて、チューブの流路を含み当該流路の長手方向及び上下方向に沿った断面の一例を表した断面図である。
図4】本実施形態における融雪マットの構造の例を表した模式図であって、流入集合管の構成を表した図である。
図5】変形例の融雪マットにおいて、金属材料で形成される補強部の形状の一例を表した図である。
図6】変形例の融雪マットにおいて、金属材料で形成される補強部の形状の一例を表した図である。
図7】変形例の融雪マットにおいて、金属材料で形成される補強部の形状の一例を表した図である。
図8】変形例の融雪マットにおいて、チューブの流路を含み当該流路の長手方向及び上下方向に沿った断面の一例を表した断面図である。
図9】変形例において、融雪マットを設置した際の上下方向を厚さ方向として、空隙部における厚さ方向の中心が、流通部の厚さ方向の中心よりも上側である場合の効果を説明するための説明図である。
図10】変形例における流入集合管の構造を表す。
図11】補強材が外側表面に露出している融雪マットの構造の例を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.構成]
図1は、本実施形態における融雪マット1の全体の構造の例を表した模式図である。また、図2は、融雪マット1の流入集合管20a付近の構造の一例を表した模式図である。
【0010】
融雪マット1は、内部に熱媒体を流通させ、融雪マット1に接触した雪及び融雪マット1の周囲の雪を融解させるために用いられる。また、本実施形態における融雪マット1は、人が歩く場所に設置される例に適用して説明する。例えば、融雪マット1は、歩行者が歩行する際に通行する歩道に設けられ、踏まれる構成であってもよい。
【0011】
なお、以下では、融雪マット1が設置される地面などの設置面をxy平面として、xy平面に直交する方向をz軸として説明する。また、x軸正方向(x軸負側からx軸正側を向く方向)が図の右側を向き、x軸負方向(x軸正側からx軸負側を向く方向)が図の左側を向くように記載する。
【0012】
また、x軸正方向を向いて右方向をy軸正方向(y軸負側からy軸正側を向く方向)とし、x軸正方向を向いて左方向をy軸負方向(y軸正側からy軸負側を向く方向)として説明する。
【0013】
また、xy平面に対して上方向をz軸正方向(z軸負側からz軸正側を向く方向)とし、xy平面に対して下方向をz軸負方向(z軸正側からz軸負側を向く方向)として説明する。なお、以下では流入集合管20a、排出集合管20b及びチューブ10における上下方向を厚さ方向とも記載する。
【0014】
また、以下では、融雪マット1をxy平面に配置した状態を基準として、融雪マット1の各構成の位置及び方向について説明する。
さらに、xy平面に配置した状態で、融雪マット1に対してz軸正側を融雪マット1の表側、融雪マット1に対してz軸負側を融雪マット1の裏側とも記載する。
【0015】
図1及び図2に示すように、融雪マット1は、複数のチューブ10と、流入集合管20aと、排出集合管20bと、を備える。
流入集合管20aは、雪を溶かすために用いられる液体を熱媒体として融雪マット1内に流入させるのに用いられる。ここでいう熱媒体とは、水やエチレングリコールなどの液体が用いられる。熱媒体として用いられる水には、井戸から取得された井戸水も含まれる。また、熱媒体として用いられる水には、河川、側溝、排水溝、工業用水から取得された水が含まれてもよい。なお、流入集合管20aに流入する熱媒体に係る圧力(例えば、水であれば水圧)は、特に設定されないが、例えば、圧力変化が可変となるように構成されていてもよい。言い換えると、熱媒体を融雪マット1に供給するポンプなどの供給装置として、熱媒体を吐出する圧力を変化させることが可能なものを用いてもよい。また、熱媒体が水である場合、水圧が0.4MPa以下、流速が0.1m/s以上であることが好ましい。
【0016】
図1に示すように、流入集合管20aは、流入部201aと、複数の分岐口203aとを有する。
流入集合管20aは、外形が四角柱状に形成されたものであり、内形が四角柱状の長手方向に沿って延び、底面を有する筒状に形成されたものである。流入集合管20aの筒状の内部の空間を形成する表面には、補強層25a及び保護層27aが設けられる。流入集合管20aの内側表面、補強層25a及び保護層27aにより形成された内部空間を以下では、空隙部29aとも記載する。なお、補強層25a、保護層27a及び空隙部29aの詳細については後述する。
【0017】
流入集合管20aの内部に形成される空間は、流入集合管20aにおける長手方向の端部が開孔している。本実施形態では、流入集合管20aの円筒形状のy軸負側に底面を有し、y軸正側が開孔している例に適用して説明する。流入集合管20aの円筒形状が有する開孔を形成する部分を流入部201aとも記載する。
【0018】
複数の分岐口203aは、流入集合管20aにおける四角柱状の側面部分に設けられた開孔であって、流入集合管20aの内部に設けられた空間である空隙部29aと連通する。流入集合管20aにおける複数の分岐口203aが形成される側面は、チューブ10が設けられる面である。本実施形態では、流入集合管20aのx軸正側に複数の分岐口203aが形成される例に適用して説明する。複数の分岐口203aは、流入集合管20aの長手方向にy軸方向に沿って所定の間隔を空けて並んで形成される。さらに複数の分岐口203aは、それぞれ、融雪マット1を配置した際の上記側面における上下方向(z軸方向)の中央に形成されている。複数の分岐口203aの開孔の形状は、特に限定されないが、例えば、円形形状であってもよい。
【0019】
本実施形態では、流入集合管20aは、配合剤を含むゴムを基材とする材料により形成される例に適用して説明する。ここでいう、ゴムは、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエン)系ゴム、SBR(スチレンブタジエンゴム)系ゴム、NR(天然ゴム)などの弾性を有するゴムにより形成される。流入集合管20aの材料は、所望の硬さ、伸び、強度、耐候性、耐水性、耐液性、耐寒性、耐摩耗性を有するものが選定される。
【0020】
また、配合剤は、基材に比べ高い熱伝導性及び硬さを有する微粒子である。配合剤には、例えば、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ又は金属などの微粒子が用いられる。なお、配合剤の基材に対して配合させる量は、10wt%に限定されるものではなく、熱伝導性及び硬さを向上させることができる量であれば10wt%よりも多くてもよく、少なくてもよい。
【0021】
配合剤としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの熱伝導性フィラーが用いられてもよい。
流入集合管20aの外側に露出した表面を外側表面とも記載する。流入集合管20aの外側表面は、配合剤を含むゴムを基材とする材料により形成される。なお、流入集合管20aの外側表面の全てが配合剤を含むゴムを基材とする材料により形成されるものに限定されるものではない。一方で、流入集合管20aの上側に露出する面と下側に露出する面とは、配合剤を含むゴムを基材とする材料により形成されることが好ましい。
【0022】
排出集合管20bは、流入集合管20aと基本的な構成は同一である。また、以下では、流入集合管20aの流入部201a、複数の分岐口203aに対応する排出集合管20bの構成をそれぞれ、排出部201b、複数の分岐口203bと表す。
【0023】
なお、流入集合管20aと排出集合管20bとでは、流入集合管20aに対して複数の分岐口203aが配置される位置と、排出集合管20bに対して複数の分岐口203bが配置される位置とが異なる。すなわち、流入集合管20aを流入部201aが手前方向(y軸正方向)に向くように配置した際に、流入集合管20aの分岐口203aは、流入集合管20aのx軸正側の側面に設けられる。
【0024】
これに対して、排出集合管20bを排出部201bが手前方向(y軸正方向)を向くように配置した際に、排出集合管20bの分岐口203bは、排出集合管20bのx軸負側の側面に設けられる。流入集合管20aの分岐口203aと排出集合管20bの分岐口203bとは、互いに対向する向きに配置される。具体的には、流入集合管20aの分岐口203aは、流入集合管20aのx軸正側の側面に設けられ、排出集合管20bの分岐口203bは、排出集合管20bのx軸負側の側面に設けられる。また、流入集合管20aの分岐口203aがx軸正方向を向いて配置され、排出集合管20bの分岐口203bがx軸負方向を向いて配置される。
【0025】
また、融雪マット1において、x軸に沿って流入集合管20aと排出集合管20bとの間に、チューブ10が配置される。分岐口203a及び分岐口203bは、それぞれ、チューブ10の内部に設けられた流路11の両端と接続可能に設けられる。
【0026】
複数のチューブ10は、図1及び図2に示すように、それぞれ帯状の外形形状を有するものである。本実施形態では、流入集合管20aから排出集合管20bに向かう方向、言い換えるとx軸に沿って長手方向を有する板状形状、言い換えると直方体状に形成されたものである例に適用して説明する。複数のチューブ10は、流入集合管20aと排出集合管20bとの間に板状に並んで配置される。すなわち、複数のチューブ10は、同一平面上に並んで配置される。また、チューブ10は、内部に熱媒体が流通する流路11を有する。チューブ10は熱の伝達が可能な材料を用いて形成されている。例えば、内部の流路11を流れる熱媒体の熱をチューブ10の外部へと伝えることができる材料を用いて形成されている。
【0027】
また、チューブ10の上側(z軸正側)の面、つまり融雪マット1を配置した際に上側(z軸正側)になる面は、歩行者により踏まれる可能性がある面である。なお、チューブ10の形状は、上述した形状に限定されるものではなく、流入集合管20aから排出集合管20bに熱媒体を輸送することができるものであればよい。
【0028】
チューブ10は、配合剤を含む弾性体を基材とする材料により形成される。ここでいう、弾性体は、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエン)系ゴム、SBR(スチレンブタジエンゴム)系ゴム、NR(天然ゴム)などの弾性を有する材料により形成される。具体的には、チューブ10を形成する材料は、熱媒体の圧力変化により流路11の径が変化することが可能な弾性率を有することが好ましい。また、チューブ10の材料は、所望の硬さ、伸び、強度、耐候性、耐水性、耐液性、耐寒性、耐摩耗性を有するものが選定される。
【0029】
チューブ10の径は、流路11の内部に熱媒体を通している場合、熱媒体を通していない場合に比べて、圧力変化により120%程度変化する材料であることが好ましい。
また、チューブ10のショア硬さ(HS)が50以上90以下、伸びが250%以上、引張強度が8MPa以上であることが好ましい。
【0030】
また、配合剤は、基材に比べ高い熱伝導性及び硬さを有する微粒子である。配合剤には、例えば、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ又は金属などの微粒子が用いられる。なお、配合剤の基材に対して配合させる量は、10wt%に限定されるものではなく、熱伝導性及び硬さを向上させることができる量であれば10wt%よりも多くてもよく、少なくてもよい。
【0031】
配合剤としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの熱伝導性フィラーが用いられてもよい。
また、配合材の基材に対する配合量は0.1wt%以上10wt以下であることが好ましい。当該配合量が0.1wt%以上である場合には、熱伝導性及び硬さを向上することができる。また、当該配合量が10wt%以下である場合には、重さを軽くすることができる。また、融雪マット1全体としての柔軟性を向上させることができ、融雪マット1を長手方向に対して丸める際に丸めやすくなる。以上から、当該配合量が10wt%以下である場合には、軽量化及び柔軟性が向上された結果、運搬性を向上させることができる。
【0032】
すなわち、本実施形態では、チューブ10の基材は流入集合管20a及び排出集合管20bの基材と同様の材料が用いられる例に適用して説明する。
チューブ10は、内部に複数の流路11を有する。流路11は、チューブ10の帯状形状の長手方向に沿ってチューブ10の内部を貫通し、チューブ10の両端部において開孔する管である。なお、流路11の断面形状は、円形形状に形成される。また、流路11の断面形状は円形形状に限定されるものではなく種々の多角形状や楕円形状に形成されてもよい。また、チューブ10が有する流路11の数は、1つであってもよく、複数備えていてもよい。
【0033】
チューブ10は、流路11と分岐口203aとの間、及び、流路11と分岐口203bとの間で、熱媒体の流通が可能に接続されている。当該帯状形状の平面部分が上下方向を向いた状態で、チューブ10における流入集合管20aと対向する端面は、流路11と分岐口203との間で熱媒体の流通が可能な形状を有し、排出集合管20bと対向する端面は、流路11と分岐口203bとの間で熱媒体の流通が可能な形状を有している。
【0034】
また、流入集合管20aは、上側(z軸正側)の表面に、チューブ10の上側表面に向かってx軸正方向に向かうに従って下方向(下り方向)に傾斜する傾斜部23aを有する。同様に、排出集合管20bは、上側(z軸正側)の表面に、チューブ10の上側表面に向かってx軸負方向に向かうに従って下方向(下り方向)に傾斜する傾斜部23bを有する。
【0035】
図3は、チューブ10の流路11を含み当該流路11の長手方向及び上下方向に沿った断面、すなわちxz平面に沿った断面の一例を表した断面図である。
図4は、融雪マット1の構造の例を表した模式図であって、流入集合管20aの構成を表した図である。また、図4は、融雪マット1において、ゴム層21a、傾斜部23a、補強層25a、保護層27a及び空隙部29aの位置関係を表した図である。
【0036】
図3及び図4に示すようにチューブ10が流入集合管20aに挿入されることにより、チューブ10は流入集合管20aに接続される。なお、流路11における両端の近傍領域であって、分岐口203aと接続される部分を連通管13ともいう。また、チューブ10と流入集合管20aとの接続は、流路11が分岐口203aに挿入することによるものに限定されるものではなく、流入集合管20aに流入する熱媒体が、各流路11に流通する形状であればよい。
【0037】
図3及び図4に示すようにxz断面において、流入集合管20aの空隙部29aは、流入集合管20aの基材であるゴム層21a、補強層25a及び保護層27aにより形成された内部空間である。ゴム層21aの内側にゴム層21aを補強する補強層25aが設けられる。なお、ここでいう内側とは、空隙部29aが形成する空間の中心に対して近い側を表し、反対に外側とは、空隙部29aの中心に対して遠い側を表す。また、図4においては、補強層25a、保護層27a及び空隙部29aの位置関係を示すように、ゴム層21aの一部を取り除いた状態で記載している。
【0038】
補強層25aは、ゴム層21aよりも剛性が高い材料が用いられる。すなわち、補強層25aが設けられていない場合に比べて、空隙部29aの内部を通る熱媒体の圧力によりゴム層21aの変形が抑制されるように設けられる。
【0039】
補強層25aの材料としては、いわゆる高強度繊維や合成繊維などの繊維材料が用いられる。具体的には、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン等が用いられてもよい。補強層25aは、繊維材料が布状に編み込まれることにより形成されてもよい。さらに、補強層25aは、繊維材料が布状に編み込まれた状態でそれぞれの繊維同士に分解、ほつれなどの発生が抑制されるように樹脂などで固められていてもよい。
【0040】
補強層25aは、xz断面において、Uの字型に折り曲がった断面形状に形成されている例に適用して説明する。また、補強層25aは、Uの字型に折り曲がった断面形状において、開口している部分、言い換えると層同士が離間している部分が空隙部29aの中心に対してx軸正方向を向くように配置される。
【0041】
本実施形態では、補強層25aの内側にさらに保護層27aが設けられる例に適用して説明する。
保護層27aは、空隙部29aの内部を流通する熱媒体によって、繊維材料により形成された補強層25aが劣化することを抑制するために配置される。具体的には、空隙部29aの内部を流通する熱媒体が補強層25aに接触し、熱媒体の温度や流れの強さ、圧力などにより、補強層25aの繊維材料にほつれなどが生じることを抑制する。保護層27aの材料としては、ゴムなどの弾性体により形成されていてもよい。また、流入集合管20aの基材と同様の材料が用いられてもよい。さらに保護層27aの材料としては、ゴム層21aと加硫接着が可能な材料が用いられてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、ゴム層21aの内側に配置される補強層25a及び保護層27aは、厚みが一様である例に適用して説明する。すなわち、本実施形態では、空隙部29aの内部に配置された補強層25a及び保護層27aが形成する空間の上下方向の中心が空隙部29aの内部空間の上下方向の中心と一致する例に適用して説明する。なお、補強層25a及び保護層27aは、厚みが一様であるものに限定されるものではなく、層の一部の厚みが他の部分と比べて薄く、又は厚く形成されていてもよい。
【0043】
図3に示すように、xz断面における、空隙部29aの上下方向(z軸方向)の中心であって、x軸方向に延びる線を空隙部29aの中心線Lbと表す。
一方、xz断面における、チューブ10の流路11の上下方向(z軸方向)の中心であって、x軸方向に延びる線を流路11の中心線Laと表す。本実施形態では、空隙部29aの中心線Lbと比較して、流路11の中心線Laの方が上側(z軸正側)に位置する。
【0044】
なお、ここでは流入集合管20aとチューブ10との接続について説明したが、排出集合管20bとチューブ10との間でも同様の接続が行われてもよい。
また、流入集合管20a及び排出集合管20bは、それぞれ区別しない場合には、集合部20とも記載する。また、流入集合管20aにおける、ゴム層21a、傾斜部23a、補強層25a、保護層27a、空隙部29aに相当する、排出集合管20bにおける各構成を、ゴム層21b、傾斜部23b、補強層25b、保護層27b、空隙部29bとも記載する。また、流入集合管20aと排出集合管20bとのそれぞれにおける各構成を区別しない場合には、ゴム層21、傾斜部23、補強層25、保護層27、空隙部29とも記載する。なお、ゴム層21が集合部本体としての構成の一例に相当し、補強層25が補強部としての構成の一例に相当し、保護層27が保護部としての構成の一例に相当する。
【0045】
チューブ10における隣接するチューブ10と対向する側面は、融雪マット1を床に配置した際に上側になる面に対して略直交する面である。対向する側面は、チューブ10の帯状形状の長手方向及び厚さ方向に沿った面でもある。言い換えると、チューブ10における隣接するチューブ10と対向する側面は、隣接するチューブ10同士の間を融雪水が融雪マット1の下に排水される間隔が形成される形状を有している。また、隣接するチューブ10同士は、上述の間隔が形成されるように配置される。本実施形態では、対向するチューブ10は上述の間隔を形成するように配置される例に適用して説明する。言い換えると、隣接するチューブ10同士の間隔が、厚さ方向に沿って、狭まることなく、広がることもなく、略変化しない例に適用して説明する。
【0046】
各チューブ10が隣接する間隔、言い換えるとチューブ10同士の帯状形状の短手方向の間隔は、予め決められた範囲である設定間隔範囲に収まるように設定される。ここで、設定間隔範囲は、排水閾値以上であって、歩行閾値以下の範囲が設定される。排水閾値は、各チューブ10の上に存在する水が流れることができる隙間の大きさであり、排水閾値は例えば0.1mmに設定される。歩行閾値は、歩行者が融雪マット1の上を歩行する際に、歩行の妨げとならない隙間の大きさである。歩行閾値は例えば5mmに設定される。
【0047】
本実施形態では、チューブ10同士が隣接する間隔が0.1mm以上5mm以下程度である例に適用して説明する。
また、チューブ10と流入集合管20a及び排出集合管20bとの大きさは、特に限定されないが、本実施形態では、流入集合管20aの上下方向の長さは、チューブ10の上下方向の長さの2倍以上3倍未満の長さに形成される例に適用して説明する。例えば、チューブ10の上下方向の長さが8cmであった場合に、流入集合管20aの上下方向の長さが20cm程度に形成されてもよい。
【0048】
なお、チューブ10が流通部としての構成の一例に相当する。
[2.作用]
<熱媒体の流れ>
次に、融雪マット1内を通過する熱媒体の流れについて、図1を用いて説明する。
【0049】
図1中の矢印Winで示すような向きに、熱媒体は、流入集合管20aの流入部201aから融雪マット1内部へと流入する。
そして、流入部201aから流入した熱媒体は、複数の分岐口203aで分岐する。
【0050】
複数の分岐口203aで分岐した熱媒体は、複数の分岐口203aのそれぞれと接続された複数のチューブ10の内部に設けられた複数の流路11の内部を通過する。
そして、複数のチューブ10のそれぞれと接続された排出集合管20bの各分岐口203bに流入する。排出集合管20bに流入した熱媒体は、排出集合管20bの排出部201bから例えば、矢印Woutで示すような向きに、排出される。
【0051】
なお、排出集合管20bの排出部201bから排出された熱媒体は、そのまま廃棄されてもよい。ここで、井戸水等の地下水を熱媒体として使用する場合には、地中熱が地下水に伝わり、地下水に伝わった熱を融雪に利用することができる。地中熱を元にした熱を融雪に利用することができるため、ヒーターやボイラーなどの加熱装置を必要としない。その結果、加熱装置を設けるための初期費用や、加熱装置を使用するための電力や燃料に係るエネルギー費用を抑えることができる。すなわち、加熱装置に係る費用を削減することができる。
【0052】
<熱媒体との熱交換>
次に、チューブ10の内部と外部との熱交換について説明する。チューブ10の内部に設けられた流路11を熱媒体が通過する。この際、流路11を通過する熱媒体の熱がチューブ10に伝わる。そして、チューブ10の上面に熱が伝わることにより、上面付近に存在する雪に熱が伝わり、雪を融解させる。ここで、チューブ10は、伝熱性の高い配合剤を含んでいるため、配合剤を含んでいない場合と比較して、熱媒体の熱をチューブ10の上面に効率良く伝えることができる。
【0053】
また流入集合管20a及び排出集合管20bにおいても、内部を通過する熱媒体から流入集合管20a及び排出集合管20bの外側へ熱が伝わり雪を融解させる。流入集合管20a及び排出集合管20bにおいても、伝熱性の高い配合剤を含んでいてもよい。
【0054】
[3.効果]
(1)本実施形態の融雪マット1は、少なくとも1つのチューブ10と、集合部20と、補強層25と、を備える。チューブ10は、流体状の熱媒体が流れる流路11を内部に有する。集合部20は、ゴムを用いて形成されるとともに、内部に流路11との間で熱媒体の流通が可能に接続された空隙部29を有する。補強層25は、集合部20における外側表面と空隙部29との間に配置され、集合部20を形成するゴムよりも剛性の高い部材を用いて形成される。
【0055】
このような構成によれば、集合部20において外側表面と空隙部29との間に補強層25が設けられる。集合部20の内部に設けられた空隙部29を熱媒体が流れることにより、空隙部29から集合部20の外側に向かって内圧が作用しても、集合部20が変形することが補強層25により抑制される。
【0056】
(2)本実施形態の融雪マット1は、外側表面に、集合部20を形成するゴムを用いて形成されたゴム層21が設けられる。言い換えると、集合部20の外側表面には、ゴム層21が露出している。
このような構成によれば、外側表面に設けられたゴム層21により、集合部20の内部の補強層25等の構成に衝撃が直接加わることが抑制され、集合部20に変形が生じることを抑制しやすくなる。
【0057】
(3)本実施形態の融雪マット1において、補強層25には、剛性を高める繊維材料が含まれる。
このような構成によれば、補強層25に剛性を高める繊維材料が含まれることにより、ゴム層21が変形することが抑制される。
【0058】
(4)本実施形態の融雪マット1において、集合部20は、補強層25と空隙部29との間に保護層27を有する。
このような構成によれば、保護層27により、空隙部29の内部を流通する熱媒体によって、補強層25が劣化することを抑制することができる。
【0059】
(5)本実施形態の融雪マット1において、融雪マット1を設置した際の上下方向を厚さ方向として、集合部20の厚さ方向の長さは、チューブ10の厚さ方向の長さの2倍以上3倍未満の長さに形成される。
【0060】
このような構成によれば、チューブ10と集合部20との厚さの違いによる段差に、歩行者などが躓いて転倒することを抑制しやすくなる。
(6)また、本実施形態の融雪マット1は、集合部20の上側表面に、チューブ10の上側表面に向かって下方向(下り方向)に傾斜する傾斜部23を有する。当該傾斜部23を有することにより、チューブ10と集合部20との厚さの違いによる段差が抑制され、その結果、歩行者などが躓いて転倒することを抑制しやすくなる。
【0061】
(7)本実施形態の融雪マット1において、融雪マット1を設置した際の上下方向を厚さ方向として、空隙部29における厚さ方向の中心は、チューブ10の厚さ方向の中心よりも上側である。具体的には、流入集合管20aの空隙部29aの中心線Lbと比較して、流路11の中心線Laの方が上側(z軸正側)に位置する。これにより、空隙部29aから流路11に熱媒体が流入する際に、流路11の位置まで、流入集合管20aの空隙部29aに、熱媒体が供給されてから流路11に流れ込みやすくなる。その結果、空隙部29aに熱媒体が供給されやすくなり、空隙部29aの融雪能力を向上させることができる。空隙部29aに高い断熱作用を有する空気が入り込みにくくなり、熱媒体から空隙部29aの上部へと熱が伝わりやすくなり、空隙部29aの融雪能力を向上させやすくなる。なお、流入集合管20aの空隙部29aの中心線Lbと比較して、流路11の中心線Laの方が上側(z軸正側)に位置する例について説明したが、排出集合管20bの空隙部29bの中心線Lbと比較して、流路11の中心線Laの方が上側(z軸正側)に位置する場合についても、流路11を通過した熱媒体が空隙部29bの上部に接触しやすくなり排出集合管20bの融雪能力を向上させやすくなる。
【0062】
(8)本実施形態の融雪マット1において、チューブ10の基材と集合部20の基材は配合剤を含む弾性体を基材とする同様の材料が用いられる。このような構成によれば、チューブ10と集合部20との間で同様の弾性を有するため、シール性(密着性)がよく、それぞれの接続部分において、熱媒体が流出することを抑制しやすくなる。
【0063】
[4.他の実施形態]
(1)上記実施形態の融雪マット1において、補強層25は、樹脂材料や熱可塑性エラストマーで形成されるものであってもよい。このような構成によれば補強層25は、樹脂の特徴である、強度、軽量、耐水性、耐液性、耐候性といった特徴を有する。樹脂材料や熱可塑性エラストマーの例としては、例えばポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)などが用いられてもよい。
【0064】
また、補強層25に用いられる樹脂材料は、集合部20を形成するゴム層21との間で加硫接着が可能な樹脂が用いられてもよい。また、樹脂層に未加硫ゴム材料を加熱成形コートしたものが用いられてもよい。
【0065】
このような構成によれば、補強層25をゴム層21と加硫により接着することにより、ゴム層21が補強層25から剥がれることを抑制しやすくなる。
また、補強層25と加硫接着がなされる対象としては、ゴム層21に限定されるものではなく、例えば補強層25の内側に保護層27が配置されている場合には、保護層27と加硫接着がなされた構成であってもよい。また、加硫接着は、各層の全ての範囲においてなされるものに限定されるものではなく、一部の範囲においてなされるものであってもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、融雪マット1の補強層25として高強度繊維や合成繊維などの繊維材料が用いられる例に適用して説明した。しかしながら、融雪マット1の補強層25は、金属材料が用いられ、板状に形成されてもよい。金属材料の板厚は例えば1mm~2mm程度の厚さであってもよい。なお、金属材料としては、アルミニウムが用いられてもよく、鉄にクロムが含まれた合金鋼であるステンレス鋼が用いられてもよい。
【0067】
図10に変形例における流入集合管20aの構造を表す。また、補強層25aの材料として金属材料が用いられた場合、流入集合管20aは、図10に示すような構造を有してもよい。すなわち、流入集合管20aの内部に設けられた空隙部29aにおいて保護層27aを有しない構成であってもよい。言い換えると空隙部29aにおいて、補強層25aが内側表面に露出している構成であってもよい。ここで補強層25aには、ステンレス鋼やアルミニウムなどの金属が用いられることにより、仮に熱媒体として温水が用いられた場合であっても、補強層25aにサビや腐食が発生することが抑制されやすくなる。
【0068】
また、補強層25は、外側表面と空隙部29との間に設けられているため、補強層25は露出していない。仮に図11に示すように、金属製の補強材200を融雪マットの上側表面に配置した場合、当該金属製の補強材200の表面は、降雪時の凍結、着雪、濡れなどにより集合部20の外側表面に用いられるゴムに比べて滑りやすい。また、金属製の補強材200は、露出しているため、歩行者がその上を歩行すると、歩行者の歩行による衝撃が直接金属製の補強材200に伝達するため、補強材200が変形しやすい。
【0069】
これに対して、上記実施形態及び変形例に表した構造では、ゴム層21が補強層25の外側、言い換えると、補強層25の上側にゴム層21が配置されるため、融雪マット1の上を歩行者が歩行したとしても融雪マット1に対する滑りやすさが抑制される。また、ゴム層21がその弾性により補強層25に対する衝撃を抑制するため、補強層25に金属材料が用いられたとしても当該補強層25の変形を抑制しやすくすることができる。
【0070】
変形例における開孔45xを有する補強層45の構造の例を、図5,6,7に示す。
図5,6,7はそれぞれ、z軸正側から負方向にみた補強層45の構造を表した図である。具体的には、図5に示すように補強層45は、板状平面を有するように形成され、当該板状平面に対して断面形状が円形の開孔45xを有してもよい。開孔45xは、x方向及びy方向に沿って並んで配置されてもよい。なお、開孔45xのようにx方向及びy方向に沿って並んで配置されるものに限定されるものではなく、例えば、図6に示す補強層45のように、開孔45xがy方向に対して角度を有する方向に並んで配置されてもよい。すなわち、補強層45に設けられる開孔45xの配置は特に限定されるものではない。
【0071】
また、上記のように開孔45xの断面形状は円形に限定されるものではなく、図7に示す補強層45のように、断面形状が四角形状の開孔45xが設けられた補強層45であってもよい。開孔45xを開孔する方法は特に限定されないが、打ち抜きにより開孔されるものであってもよい。
【0072】
このような構成によれば、開孔45xを有する補強層45によれば、開孔45xを有しない補強層に比べて、補強層の重量を軽量化することができ、その結果、融雪マット1の持ち運びをより容易にすることができる。
【0073】
(3)また、補強層45を挟んで上下方向に位置するゴム層21と保護層27とを有する構成である場合には、開孔45xを通じて、ゴム層21と保護層27とが互いに加硫接着されていてもよい。言い換えると、補強層45は、ゴム層21の内部に配置されている。このような構成によれば、加硫接着により、ゴム層21と保護層27とが接着されることにより、特に補強層45の内側、言い換えると空隙部29の中央に近い側に位置する保護層27が、熱媒体の流通などにより補強層25から剥離することが抑制される。すなわち、保護層27の熱媒体の圧力に対する耐圧性を向上させることができる。その結果、例えば剥離した保護層27が分岐口203aなどに詰まり、熱媒体の流路11への流通の妨げとなることを抑制しやすくなる。
【0074】
(4)上記実施形態の融雪マット1においては、図3に示すように、本実施形態では、空隙部29aの中心線Lbと比較して、流路11の中心線Laの方が上側(z軸正側)に位置する。しかしながら、空隙部29aの中心線Lbと比較して、流路11の中心線Laの方が上側(z軸正側)に位置する構成に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、空隙部29aの中心線Lbと比較して、流路11の中心線Laの方が下側(z軸負側)に位置するものであってもよい。言い換えると、融雪マット1において、融雪マット1を設置した際の上下方向を厚さ方向として、空隙部29aにおける厚さ方向の中心は、チューブ10の厚さ方向の中心よりも上側であってもよい。
【0075】
x軸周りにチューブ10が傾斜した場合の流路11に対する熱媒体の流入の例を図9に表す。例えば、チューブ10の流路11に熱媒体を供給できる液面の高さを高さW0として示す。すなわち、高さW0以下の位置に位置する流路11には熱媒体が供給される。
【0076】
図9において、例えば、傾斜した場合の流路11aを有するチューブ10をチューブ10aとして表す。チューブ10aでは、流路11の一部が傾斜により高さW0よりも高くなると、当該高くなった部分に十分に熱媒体が供給されない。言い換えると、流路11の径全体に熱媒体が供給されず、流路11に隙間が生じる。これにより、流路11の隙間部分の融雪能力は低下する。
【0077】
図9において、さらに傾斜した場合の、流路11bを有するチューブ10をチューブ10bとして表す。チューブ10bでは、熱媒体が供給されない流路11bが生じる。これにより、流路11bには、熱媒体が供給されないため、当該流路11bの融雪能力は更に低下することとなる。
【0078】
上記図8に示した、空隙部29aの中心線Lbと比較して、流路11の中心線Laの方が下側(z軸負側)に位置する構成によれば、空隙部29aに供給された熱媒体は、その相対的な中心線の高さの違いにより、流路11に流れ込みやすい。チューブ10が傾斜した場合であっても流路11に熱媒体を流入させやすく、傾斜によってチューブ10における融雪能力が低下することを抑制しやすくなる。
【0079】
また、流入集合管20aの空隙部29aの中心線Lbと比較して、流路11の中心線Laの方が下側(z軸負側)に位置する構成について上述したが、排出集合管20bの空隙部29bの中心線Lbと比較して、流路11の中心線Laの方が下側(z軸負側)に位置する構成であっても、高さにより、排出集合管20bの空隙部29bに熱媒体が流入しやすくなるため、空隙部29bを有する排出集合管20bの融雪能力を向上しやすくなる。
【0080】
(5)本実施形態の融雪マット1において、チューブ10の表面に配置される表面部材80を更に備えてもよい。
表面部材80としては、例えば、シールなどの貼り付けにより配置されるものであってもよく、塗装によって設けられるものであってもよい。また、チューブ10の表面を加工などにより表面加工することにより設けられるものであってもよい。例えば、凹凸や布目を有する加工、シボ加工などの表面加工がなされてもよい。表面部材80は、レーザーやインクジェットを用いた印刷により設けられるものであってもよい。
【0081】
表面部材80としては、チューブ10の上を歩行する歩行者の転倒のための滑り止め機能を有するものが用いられてもよく、チューブ10の上を歩行する歩行者に対して注意喚起などの情報を表示するものであってもよく、企業のロゴなどの広告効果を有するものであってもよい。滑り止め機能を有するものとしては、例えばローレット加工により表面加工がなされることにより形成されてもよい。
【0082】
(6)上記実施形態では、集合部20の形状は、集合部20の長尺の筒形状の長手方向に直交する断面の形状が四角形である例に適用して説明した。しかしながら、集合部20の形状は、断面が四角形の筒形状に限定されるものではなく、断面が三角形の筒形状や、断面が多角形である筒形状に形成されてもよい。また、集合部20は、断面が円形に形成された円筒形状、断面が楕円に形成された筒形状に形成されてもよい。
【0083】
(7)上記実施形態では、補強層25がxz断面においてUの字形状に折り曲がった断面形状に形成される例に適用して説明した。
しかしながら補強層25のxz断面における形状は、Uの字形状に折り曲がった断面形状に形成されるものに限定されるものではない。
【0084】
具体的には、補強層25は、空隙部29に対して上側の面にのみ形成されるものであってもよく、上側の面と下側の面との両方にのみ形成されるものであってもよい。また、空隙部29に対して上側の面及び下側の面の一方と、補強層25aではx軸負側の側面部分、補強層25bではx軸正側の側面部分とにより形成されるものであってもよい。
【0085】
(8)上記実施形態では、流入集合管20a、排出集合管20b、チューブ10は配合剤を含むゴムを基剤とする材料により形成される例に適用して説明した。しかしながら、流入集合管20a、排出集合管20b、チューブ10は配合剤を含まない材料が用いられてもよい。
【0086】
(9)上記実施形態では、チューブ10は流入集合管20a及び排出集合管20bと同様の材料が用いられる例に適用して説明した。しかしながら、チューブ10と、流入集合管20aと、排出集合管20bとはそれぞれ異なる材料が用いられてもよい。
【0087】
(10)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…融雪マット、10,10a,10b…チューブ(流通部)、11,11a,11b…流路、13…連通管、20…集合部、20a…流入集合管、20b…排出集合管、21,21a,21b…ゴム層(集合部本体)、23,23a,23b…傾斜部、25,25a,25b,45…補強層(補強部)、27,27a,27b…保護層(保護部)、29,29a,29b…空隙部、45x…開孔、80…表面部材、200…補強材、201a…流入部、201b…排出部、203a,203b…分岐口、La…流路の中心線,Lb…空隙部の中心線。
図1
図2
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図5
図6
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図9
図10
図11