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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】吸着部材付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/71 20110101AFI20240319BHJP
   H01R 43/20 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01R12/71
H01R43/20 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019216201
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021086778
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩祐
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-060005(JP,A)
【文献】登録実用新案第3111892(JP,U)
【文献】特開2013-8679(JP,A)
【文献】特開2019-96586(JP,A)
【文献】特開2018-22559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 24/00-24/86
H01R 43/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オス側コネクタが挿入される第1開口部と前記第1開口部に隣接する第2開口部を有するハウジングと、
前記ハウジングに装着される複数のコンタクトと、
吸着面を有し前記ハウジングに取り付けられる吸着部材とを有し、
前記ハウジングは、前記吸着部材が取り付けられる取付軸を前記第2開口部を形成する前記第1開口部と反対側の第1の壁に有し、
前記吸着部材の前記取付軸への取付部材と前記取付軸とが、前記吸着部材を前記取付軸に取り付けた状態で前記取付軸での前記吸着部材の回転が抑止され、前記オス側コネクタが前記第1開口部に挿入されるときに前記回転が可能になるよう形成され、
前記オス側コネクタが挿入されるとき、前記吸着部材が前記取付軸を中心に回転して前記第2開口部内に収容される、吸着部材付きコネクタ。
【請求項2】
前記オス側コネクタが挿入されるとき、前記オス側コネクタの吸着部材回転部材が前記吸着部材を押し下げる、請求項に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第2開口部内の前記第1開口部側の第2の壁にロック凸部を有し、
前記オス側コネクタが挿入されるとき、前記オス側コネクタの前記吸着部材回転部材の先端のロック爪が前記ロック凸部に係合する、請求項に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記オス側コネクタが挿入されるとき、前記オス側コネクタの前記吸着部材回転部材が、前記第2開口部内の前記第1開口部側の第2の壁で摺動しながら挿入する、請求項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,吸着部材付きコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
上部からソケット等のオス側コネクタが嵌合されるトップタイプのコネクタは、ソケットが挿入される凹状の形状の開口部を有するハウジングと、開口部内に装着される複数のコンタクトとを有する。また、表面実装型のコネクタ等は、ハウジングの底面または下側部に露出されるコンタクトをマザーボードの表面に形成された複数の電極にハンダ付けされる。
【0003】
コネクタをマザーボードに自動実装するため、コネクタは、例えばエンボスキャリアテープに収容された状態で市場取引される。エンボスキャリアテープは、コネクタを一個ずつ収容するバスタブ状のケース部を連成した帯状のキャリアテープ本体と、コネクタが収容されたケース部を被覆する帯状の保護テープとを有する。保護テープは、キャリアテープ本体に剥離可能に貼り合わされる。
【0004】
コネクタの自動実装工程では、自動実装機が、保護シートを剥離しながらエンボスキャリアテープを順送りし、自動実装器の吸引器がコネクタの吸着面を吸着してコネクタをケース部から取り出し、ハンダクリームが塗布されたマザーボード表面の複数の電極上にコネクタの複数のコンタクトを位置合わせして載置する。この状態でマザーボードが高温槽に送られ、ハンダをリフローすることで、コンタクトと電極がハンダ付けされ、コネクタがマザーボード表面に実装される。
【0005】
上記の自動実装では、吸引器が吸着する吸着面をコネクタに設ける必要がある。特にトップタイプのコネクタは、ソケット等が嵌合される開口部がコネクタの上方向に開口しているので、吸着面を有する吸着キャップをハウジングの開口部に取り付けることが行われる。例えば、特許文献1には、そのようなコネクタと吸着キャップの例が記載されている。また、特許文献2、3には、コネクタと吸着テープの例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-8679号公報
【文献】実用新案登録第3025323号公報
【文献】特開平9-232064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているコネクタは、コネクタの開口部に吸着キャップを取り付けて自動実装工程で吸引器が吸着する吸着面を形成する。しかし、トップタイプのコネクタの場合、マザーボードに実装された後、ソケット等のオス側コネクタを開口部に挿入して嵌合するために、吸着キャップを取り外すことが必要である。また、取り外された吸着キャップは通常廃棄される。
【0008】
そこで,本実施の形態の第1の側面の目的は,実装後に吸着部材の取り外しが不要なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態の第1の側面は,オス側コネクタが挿入される第1開口部を有するハウジングと、前記ハウジングに装着される複数のコンタクトと、吸着面を有し前記ハウジングに取り付けられる吸着部材とを有し、前記ハウジングは、前記吸着部材が取り付けられる取付軸を前記第1開口部の外側に有し、前記吸着部材の前記取付軸への取付部材と前記取付軸とが、前記吸着部材を前記取付軸に取り付けた状態で取付軸での前記吸着部材の回転が抑止され、前記オス側コネクタが前記第1開口部に挿入されるときに前記回転が可能になるよう形成された、吸着部材付きコネクタである。
【発明の効果】
【0010】
第1の側面によれば,オス側コネクタが挿入されるとき吸着部材を回転してコネクタ内に収容されるので、実装後に吸着部材の取り外しが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態における吸着部材付きコネクタの斜視図である。
図2】本実施の形態における吸着部材付きコネクタの吸着部材を取り付けてない状態のコネクタの斜視図である。
図3】吸着部材付きコネクタの断面とコネクタを示す図である。
図4】本実施の形態における吸着部材付きコネクタの六面図である。
図5】吸着部材の構成を示す図である。
図6】本実施の形態の吸着部材付きコネクタ1にオス側コネクタを嵌合した状態と嵌合後にオス側コネクタを示す図である。
図7】オス型コネクタであるソケットの一例を示す図である。
図8】ソケットがコネクタに嵌合されるときの3つの状態を示す断面図である。
図9】第2の実施の形態におけるソケットの例を示す斜視図である。
図10】コネクタの吸着部材の回転動作と取付軸の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[吸着部付きコネクタの構成例]
図1は、本実施の形態における吸着部材付きコネクタの斜視図である。図1(1)はコネクタの正面側の斜視図であり、図1(2)はコネクタの背面側の斜視図である。
【0013】
図2は、本実施の形態における吸着部材付きコネクタの吸着部材を取り付けてない状態のコネクタの斜視図である。図2(1)はコネクタの正面側の斜視図であり、図2(2)はコネクタの背面側の斜視図である。
【0014】
図3は、吸着部材付きコネクタの断面とコネクタを示す図である。図3(1)は吸着部材付きコネクタの断面を含む斜視図、(2)は吸着部材付きコネクタの断面図、(3)はコンタクトを示す斜視図である。
【0015】
これらの図を参照して、本実施の形態の吸着部材付きコネクタの構成について以下説明する。図中X軸Xはコネクタのハウジング10の左右方向を、Y軸Yはハウジングの前後方向を、そして、Z軸Zはハウジングの上下方向に対応する。
【0016】
コネクタ1は、メス型コネクタであり、オス側コネクタ(図示せず)が挿入される第1開口部15を有するハウジング10と、第1開口部15内に装着される複数のコンタクト40を有する。ハウジング10は、例えば絶縁性樹脂の成形により生成される。
【0017】
複数のコンタクト40は、図3(3)に示すように、第1開口部15内に露出される第1コンタクト片41と第2コンタクト片42と、ハウジング10の下部後ろ側に露出される実装片43とを有する。第1コンタクト片41と第2コンタクト片42は、ハウジングの第1開口部15内に形成された第1コンタクト溝24と第2コンタクト溝23内に挿入されてハウジングに装着される。
【0018】
ハウジング10は、前側に設けられた前壁11と、後側に設けられた後壁12と、前壁11と後壁12との間にそれぞれ設けられた右壁13と左壁14を有する。ハウジング10の左右端に設けられた前壁11の間に、外側前壁17がハウジングの前方に、内側前壁16がハウジングの後方にそれぞれ設けられる。第1開口部15は、後壁12と右壁13と左壁14と内側前壁16により形成される。
【0019】
ハウジング10は、上側に吸着面を有する吸着板31を有する吸着部材30が取り付けられる一対の取付軸19を、外側前壁17の上端両側に有し、一対の取付軸19の下側には、前壁11と外側前壁17との間に設けられた一対の前壁窓18を有する。
【0020】
更に、図2(1)に示すとおり、ハウジング10は、外側前壁17と内側前壁16との間に第2開口部20を有する。そして、図1に示すとおり、ハウジングの一対の取付軸19に、吸着部材30の前側に設けられた一対の取付部材32が嵌め込まれて、吸着部材30の吸着板31が水平状態で第2開口部20を塞ぐように取り付けられる。図1の吸着部材30を取付軸19に装着された状態で、吸着部材30の吸着板31の上面が、コネクタのハウジング10の上端に略水平に保持される。
【0021】
取付軸19と吸着部材30の一対の取付部材32の形状は、吸着部材30を取付軸19に取り付けた状態で、取付軸19での吸着部材30の回転が抑止され、後述するオス側コネクタが挿入されるときに取付軸19での吸着部材30の回転が可能になるように構成される。これにより、本実施の形態の吸着部材付きコネクタは、自動実装工程では、自動実装機の吸引器により吸着部材30の吸着板31の表面が吸着される。また、吸着部材付きコネクタは、オス側コネクタが挿入されるときに吸着部材30が取付軸19を中心に回転して第2開口部20内に収容され、実装後に吸着部材30を除去する必要がない。取付軸19と一対の取付部材32の具体的な形状については、後で詳述する。
【0022】
尚、ハウジング10の左右端には、例えば金属材料で形成された補強板25が挿入され、図示しないマザーボードにハンダ付けされる。本実施の形態では、コンタクトの実装片43が、ハウジング10の後壁12の外側に配置され1列のマザーボードにハンダ付けされるため、金属材料の補強板25をマザーボードにハンダ付けして、コネクタ1のマザーボードへの固着力を補強している。
【0023】
また、第1開口部15内には、X軸方向に一列に複数のコンタクト40が装着されるが、複数のコンタクトが2列以上装着されてもよい。
【0024】
図1~3に示したコネクタ1は、内側前壁16の第2開口部20側の壁面に、ロック凸部21とロック傾斜部22が設けられている。このロック機構により、後述するオス側コネクタを第1開口部15内に挿入するとき、オス側コネクタのロック爪がロック凸部21に係合して、コネクタ1とオス側コネクタとの間の嵌合状態をロックする。但し、必ずしもロック凸部21とロック傾斜部22のロック機構が設けられていなくてもよく、吸着部材30は自動実装工程で吸着面を提供し、実装後にオス側コネクタを挿入するときは回転して第2開口部20内に収容される。
【0025】
図4は、本実施の形態における吸着部材付きコネクタの六面図である。図4(1)が正面図、(2)が平面図、(3)が底面図、(4)が右側面図、(5)が背面図であり、左側面図は、右側面図と左右対称であるので省略されている。図4の六面図により、前述のコネクタのハウジング10の第1開口部15、第2開口部20、吸着部材30、外側前壁17、前壁11、コンタクト40などの構成が明らかになる。
【0026】
[吸着部材の構成例]
図5は、吸着部材の構成を示す図である。図5(1)は吸着部材30の前方斜視図と後方斜視図であり、(2)は吸着部材30の六面図である。六面図には、上から背面図、平面図、正面図、底面図及び、左側に左側面図が含まれ、右側側面図は左側側面図と左右対称であるので省略されている。
【0027】
吸着部材30は、通称、吸着キャップと称されるものであり、自動実装工程で自動実装機の吸引器が上から吸着する吸着面を提供する吸着板31と、コネクタ1のハウジング10に設けられた取付軸19を両側から挟み込む一対の取付部材32とを有する。取付部材32は、ハウジングの左右一対の取付軸19を挟み込むため、吸着板31の左右端それぞれに設けられる。取付部材32はそれぞれ一対の片で構成され、一対の片が取付軸19を両側から挟み込むことで、吸着部材30がハウジングの取付軸19に保持される。
【0028】
[吸着部材のコネクタへの取付けと自動実装工程とオス側コネクタとの嵌合について]
図2(1)に示したコネクタ1のハウジング10は、樹脂成形により形成され、複数のコンタクト40がハウジングの第1開口部15内に底面側から装着され、補強板25がハウジング10の左右端に装着される。そして、図2(2)に示されるとおり、吸着部材30のそれぞれ一対の片からなる左右の取付部材32を、ハウジング10の左右の取付軸19に上から圧力をかけて、一対の片で取付軸19に嵌め込むことができ、特に取付治具を使用せずに、吸着部材30を取付軸19に取り付けることができる。
【0029】
図1に示した吸着部材30が取り付けられたコネクタ1は、前述した図示しないエンボスキャリアテープのバスタブ状のケース部に、吸着部材30を上側にして収容され、保護シートでケース部の開口が覆われる。そして、自動実装工程では、エンボスキャリアテープの保護シートを剥がしながら、自動実装機の吸引器が吸着部材30の吸着板31の表面を吸着し、マザーボード表面の複数の電極(ハンダクリーム塗布済)の位置にコネクタ1のハウジングの外に露出される複数のコンタクト40を位置合わせして載置する。この状態で、コネクタ1が載置されたマザーボードが高温槽内に移され、高温状態でのハンダリフローにより、複数のコンタクト40の実装片43がマザーボードの複数の電極にそれぞれハンダ付けされる。
【0030】
図6は、本実施の形態の吸着部材付きコネクタ1にオス側コネクタを嵌合した状態と嵌合後にオス側コネクタを示す図である。図6(1)は、図1の吸着部材30が取り付けられたコネクタ1にオス側コネクタであるソケット50が嵌合された状態を示す図である。また、図6(2)は、嵌合されたソケット50がコネクタ1から抜き取られた状態を示す図である。
【0031】
図6(1)では、ソケット50のソケットハウジング51の先端が、コネクタ1の第1開口部15内に挿入されている。同時に、ソケット50をコネクタ1の第1開口部に挿入する際、ソケット50の吸着部材回転部材54が、コネクタに水平に取り付けられていた吸着部材30の吸着板を押し下げる。図6(2)に示すとおり、その後、ソケット50をコネクタ1から抜き取ると、コネクタの吸着部材30は、第1開口部内に押し下げられ収容されたままとなる。コネクタ1は既にマザーボード(図示せず)にハンダ付け実装済みであるので、吸着部材30が第1開口部内に収容された状態でも支障はない。
【0032】
図7は、オス型コネクタであるソケットの一例を示す図である。図7(1)(2)は、ソケット50の前面斜視図、背面斜視図であり、(3)はソケット50の側面図、(4)はソケットコンタクト部分の断面図である。
【0033】
ソケット50は、ソケットハウジング51と、ソケットハウジングの複数の挿入孔52内にそれぞれ挿入される複数の電線57と、ソケットハウジングの複数の挿入溝53にそれぞれ挿入される複数のソケットコンタクト58を有する。ソケットコンタクト58それぞれは電線57に接続される。ソケットハウジング51は、絶縁性樹脂を成形して生成される。
【0034】
ソケット50は、更に、ソケットハウジング51と一体に成形される吸着部材回転部材54を有する。吸着部材回転部材54は、支点部59を介してソケットハウジング51につながっている。そして、吸着部材回転部材54は、ソケット50をコネクタ1に挿入するときに、コネクタ1に取り付けられている吸着部材30の吸着板31を取付軸19を中心に回転させて押し下げ、第1開口部内に収容する機能を有する。
【0035】
更に、図7のソケットの例では、特に、吸着部材回転部材54が、コネクタ1への挿入先端側にロック爪55を、挿入先後端側にロック解除片56をそれぞれ有する。ソケットをコネクタに挿入したとき、ソケットのロック爪55がコネクタ1のロック凸部21に係合して嵌合状態がロックされる。また、ソケットをコネクタから抜くときに、ロック解除片56をソケットハウジング側に絞るとロック爪55が開いてロック凸部21との係合状態が解除される。
【0036】
図8は、ソケットがコネクタに嵌合されるときの3つの状態を示す断面図である。この断面図は、コネクタ1のコンタクト40の間の位置とソケット50のソケットコンタクト58の間の位置でそれぞれのハウジングを切断した図である。
【0037】
図8(1)では、ソケット50のソケットハウジング51の先端部がコネクタ1の第1開口部15内に挿入開始されている。このとき、ソケット50の吸着部材回転部材54の先端が、第2開口部20内に侵入し、コネクタ1に取り付けられた吸着部材30の吸着板31の先端を押し下げ、吸着部材30が取付軸19を中心として回転する。
【0038】
図8(2)では、更に、ソケットハウジング51の先端部がコネクタの第1開口部内に深く挿入されている。このとき、ソケットコンタクト58がコネクタ1内のコンタクト40の第1、第2コンタクト片41,42を開き、同時に、ソケットの吸着部材回転部材54の先端のロック爪55が、コネクタ1のロック傾斜部22に沿って下方に摺動しながら、吸着部材の吸着板31の先端を更に押し下げる。
【0039】
図8(3)では、ソケットハウジング51の先端部がコネクタの第1開口部の底面に達っする。この状態で、ソケットコンタクト58がコネクタのコンタクト40の第1、第2コンタクト片41,42で挟まれて電気的に接続された状態になる。同時に、ソケットのロック爪55がコネクタのロック凸部21に係合し、ソケットとコネクタの嵌合状態がロックされる。
【0040】
図8(3)の嵌合がロックされた状態から、ソケット50をコネクタ1から抜き取るときは、ソケット50のソケットハウジング51とロック解除片56とを指や治具でつまんで、ロック爪55を支点部59を中心に開くことで、ロック爪55とロック凸部21との係合状態を解除してロック状態を解除し、ソケット50を引き抜くことができる。
【0041】
本実施例では、コネクタ1とソケット50に嵌合状態をロックするために、コネクタ1にロック凸部21を設け、ソケット50の吸着部材回転部材54の先端にロック爪55を有する。そして、コネクタの第2開口部20でロック動作が行われる。このような構成を前提に、本実施例では、吸着部材30をコネクタ1の外側前壁17に設けた取付軸19に取り付け、コネクタの自動実装時の吸着面を提供し、実装後ソケット挿入時にソケットの吸着部材回転部材54が、ロック動作を行うと共に吸着部材30を押し下げる動作を行う。これにより、コネクタの第2開口部20のスペースが有効に活用される。
【0042】
[第2の実施の形態とソケットの変形例]
図9は、第2の実施の形態におけるソケットの例を示す斜視図である。第2の実施の形態では、図2(1)や図3と異なり、コネクタ1の第2開口部20内には、ロック凸部21とロック傾斜部22は設けられていない。それに伴い、図9に示すとおり、ソケット50の吸着部材回転部材54は、ロック爪55やロック解除片56を有していない。
【0043】
つまり、第2の実施の形態では、コネクタとソケットの嵌合状態をロックする機能はない。但し、ソケット50の吸着部材回転部材54は、ソケット50をコネクタ1に挿入するとき、吸着部材回転部材54がコネクタ1の内側前壁16の第2開口部側を摺動して挿入される。これにより、ソケットの吸着部材回転部材54とソケットハウジング51とが、コネクタの内側前壁16を挟むようにして嵌合し、コネクタの内側前壁16と後壁12がソケットハウジング51の先端部を挟むように嵌合し、嵌合強度を強くする。それと共に、ソケットをコネクタの第1開口部15内に挿入するとき、ソケットの吸着部材回転部材54が、コネクタの吸着部材30の吸着板31の先端を押し下げて第2開口部20内に収容する。したがって、第2の実施の形態でも、コネクタの第2開口部20のスペースが有効に利用される。
【0044】
[コネクタの吸着部材の回転動作と取付軸の変形例]
図10は、コネクタの吸着部材の回転動作と取付軸の変形例を示す図である。図10中(1-1)(1-2)(1-3)は、取付軸19が六角形の断面を有する例における吸着部材30の回転動作を示す。図10中(2)(3)は取付軸の変形例を示す。いずれも、コネクタ1のハウジング10の取付軸19の部分で切断した断面図である。
【0045】
まず、図10(1-1)(1-2)(1-3)について説明する。この例では、取付軸19の断面は六角形であり、コネクタ1の外側前壁17と垂直面が一致する正四角形の一方の対向する一対の角部を辺19Aとした形状である。一方、吸着部材30の取付部材32は、図中左側の取付部材32がL字型の断面形状を有し、L字型形状の先端部に取付用傾斜32Aを有する。
【0046】
このような形状のコネクタ側の取付軸19と吸着部材30の取付部材32の場合、吸着部材30の取付軸19への取付動作、及び取付軸19を中心とする回転の動作は次のとおりとなる。まず、図10(1-1)において、吸着部材30の取付軸19への取付動作では、吸着部材30の取付部材32を上から取付軸19に押し付けると、取付部材32の取付用傾斜32Aが取付軸19の辺19Aで摺動しながら広げられ、その後取付部材32のL字型形状が取付軸19に係合する。この状態では、吸着部材30の取付部材32の垂直面が取付軸19の垂直面を両側から挟み込み、吸着板31が所定の押し下げ力に抗して吸着板31の水平状態を保持する。
【0047】
次に、図10(1-2)では、図示しないソケットの吸着部材回転部材の押し下げ圧力に負けて、吸着板31の先端が押し下げられ、取付部材32の内側面が取付軸19の辺19Aを両側から挟む状態になっている。更に、図10(1-3)では、吸着部材30の吸着板31が更に押し下げられ、第2開口部20内に収容された状態となる。
【0048】
上記のような取付軸19の形状と吸着部材30の取付部材32の形状により、吸着部材の取付軸への取付部材と取付軸とが、吸着部材を取付軸に取り付けた状態で取付軸での吸着部材の回転が抑止され、オス側コネクタが挿入されるときに回転が可能になる。
【0049】
図10(2)は、取付軸19の第1の変形例である。この取付軸19の断面形状は、正方形の4つの角部を削って辺とした八角形である。このような八角形であっても、一方の対向する一対の辺19Aにより、図19(1-1)~(1-3)と同様の吸着部材30の取付動作と回転動作が可能になる。
【0050】
図10(3)は、取付軸19の第2の変形例である。この取付軸19の断面形状は、縦長の楕円形状である。このような縦長の楕円形状の場合、長径方向の対向する曲面により、吸着部材30の取付軸19への取付部材32と取付軸19とが、吸着部材を取付軸に取り付けた状態で取付軸での吸着部材の回転が抑止され、オス側コネクタが挿入されるときに吸着板が強く押し下げられて回転が可能になる。
【0051】
以上の通り、本実施の形態によれば、吸着部材30がコネクタ1に取り付けられているので、自動実装工程で自動実装機の吸引器が吸着部材の吸着面を吸着して自動実装する。そして、実装後にオス型コネクタがコネクタ1に挿入されるとき、吸着部材30がコネクタの第2開口部に収容されるので、実装後に吸着部材を取り外す必要がない。
【符号の説明】
【0052】
1:コネクタ 10:ハウジング 11:前壁 12:後壁
13:右壁 14:左壁 15:第1開口部 16:内側前壁
17:外側前壁 18:前壁窓 19:取付軸 20:第2開口部
21:ロック凸部 22:ロック傾斜部 23:第2コンタクト溝
24:第1コンタクト溝 25:補強板
30:吸着部材 31:吸着板 32:取付部材
40:コンタクト 41:第1コンタクト片 42:第2コンタクト片
43:実装片
50:ソケット(オス側コネクタ) 51:ソケットハウジング 52:挿入孔
53:挿入溝 54:吸着部材回転部材(ロック係合部) 55:ロック爪
56:ロック解除片 57:電線 58:ソケットコンタクト 59:支点部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10