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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】脊柱安定化システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A61B17/70
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023140169
(22)【出願日】2023-08-30
【審査請求日】2023-09-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000193612
【氏名又は名称】ミズホ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】土屋 和生
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0125486(US,A1)
【文献】特表2020-512139(JP,A)
【文献】特許第7058709(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊柱の各椎骨に装着されて、脊柱を安定化させる脊柱安定化システムであって、
脊柱の頭尾方向に沿って延びる第1ロッド部材に着脱自在に連結可能な第1コネクタ部材と、
脊柱の頭尾方向に沿って延びる第2ロッド部材に着脱自在に連結可能であって、前記第1コネクタ部材と一体的に連結される第2コネクタ部材と、を備え、
前記第1コネクタ部材と前記第2コネクタ部材とは、前記第1及び第2ロッド部材と直交する軸方向周りを所定範囲内において互いに相対回動自在に一体的に連結され
前記第2コネクタ部材は、前記第1及び第2ロッド部材と直交する方向に延びるシャフト部を有し、
前記第1コネクタ部材は、前記第2コネクタ部材のシャフト部が挿通される挿通孔を有し、
前記第1コネクタ部材の挿通孔の内周面と、前記第2コネクタ部材のシャフト部の外周面との間には、前記第1コネクタ部材に受け入れた前記第1ロッド部材からの押圧により、前記第1コネクタ部材の挿通孔の径方向に沿って移動自在なシム部材が設けられ、
前記シム部材は、前記第1コネクタ部材の挿通孔内にその軸方向から組付可能に構成されることを特徴とする脊柱安定化システム。
【請求項2】
前記シム部材は、前記挿通孔の内周面と対向または当接する位置に配置される支持部を有することを特徴とする請求項に記載の脊柱安定化システム。
【請求項3】
前記第1コネクタ部材は、前記第1ロッド部材を受け入れる溝部の底部に、前記挿通孔に向かって貫通する開口部が設けられ、該開口部内に前記シム部材に設けた支持円弧部が配置されることを特徴とする請求項に記載の脊柱安定化システム。
【請求項4】
前記第1コネクタ部材の挿通孔に対する、前記第2コネクタ部材のシャフト部の軸方向に沿う相対移動範囲、及び軸方向周りの相対回動範囲を規制するピン部材を備えることを特徴とする請求項に記載の脊柱安定化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊柱の各椎骨に装着される種々の体内埋没材により脊柱を安定化させることが可能な脊柱安定化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の背中の正中を大きく切開して、その切開部分から椎弓根スクリューやロッド等を体内に挿入しつつ、脊柱に装着することで、脊柱の安定性を高めたり、脊柱変形を矯正するなど、脊柱を安定化させる外科的治療(例えば、脊柱変形矯正固定術)が行われている。すなわち、この脊柱変形矯正固定術では、チタン合金、コバルトクロム合金などの生体親和材料にて製造された体内埋没材、例えば、脊柱の頭部方向に沿う各椎弓根(各椎体)にそれぞれねじ込ませた椎弓根スクリューや、脊柱の頭尾方向に沿って延び、各椎弓根スクリューに連結されるロッド等によって、脊柱を安定化させている。そこで、前記ロッドの軸方向端部において、コネクタ部材等を使用して、前記ロッドと並列的に新たなロッドを配置することで、2本のロッドによる矯正力アップや強度アップを可能にしたり、脊柱の頭部方向に沿う固定範囲の増大させる術式が採用されている。
【0003】
このようにして使用されるコネクタ部材としては、例えば、特許文献1に、コネクタシステムであって、第1の脊椎ロッドを受容して固定するように構成された第1の本体部分を有する第1の取付部分であって、前記第1の本体部分から延在し、自由端部で終端する長手方向部材を有する、第1の取付部分と、第2の脊椎ロッドを受容して固定するように構成された第2の本体部分を有する第2の取付部分であって、前記第2の取付部分が、前記第1の取付部分の前記長手方向部材を受容するために、それを通って横方向に延在する開口部を有し、前記第1の取付部分の前記長手方向部材が、前記第2の取付部分の前記開口部を介して受容され、前記第2の取付部分が、前記長手方向部材に沿って並進し、前記第1の取付部分の前記長手方向部材の周りを回転することができる、第2の取付部分と、を備え、前記第2の取付部分が、上面および下面を有するサドルをさらに含み、前記上面が、前記第2の脊椎ロッドに接触するように構成されており、前記下面が、前記第1の取付部分の第1の長手方向部材に接触するように構成され、前記サドルが、前記下面に第1の溝付き表面を含み、前記長手方向部材が、前記第1の溝付き表面と嵌合するように構成された第2の溝付き表面を含むコネクタシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7058709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のコネクタシステムでは、第2の取付部分が、第1の取付部分の長手方向部材の周りを全周に亘って回転自在に連結されるために、術中に、第2の取付部分が第1の取付部分の長手方向部材の周りに、術者の意図に反して大きく回動して安定しないために、連結操作等がスムーズに行われず、操作性に問題があった。しかも、特許文献1に記載のコネクタシステムでは、第2の取付部分がサドルを含んでおり、サドルは、第2の取付部分内に上部または底部から搭載され、すなわち、サドルは、第2の取付部分内に上部または底部から圧入により固定されている。そのために、第1の取付部分及び第2の取付部分を任意の相対位置にて拘束する際、セットスクリューから第1の脊椎ロッドを介してサドルへ伝達される押圧力を相当大きくする必要があり、それが不足すると、第1の取付部分と第2の取付部分との相対位置における固定力が不足する虞がある。
【0006】
言い換えれると、サドルが第2の取付部分内に上部または底部から圧入により固定されているために、セットスクリューから第1の脊椎ロッドを介してサドルへ伝達される押圧力が第1の取付部分の長手方向部材に適切に伝達されず、第1の取付部分と第2の取付部分との相対位置における固定力が不足する虞があり、その結果、脊柱を安定して固定することができず、信頼性が低下する。
【0007】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、術中における操作性を向上させると共に、脊柱の安定化に対して信頼性が向上する脊柱安定化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の発明は、脊柱の各椎骨に装着されて、脊柱を安定化させる脊柱安定化システムであって、脊柱の頭尾方向に沿って延びる第1ロッド部材に着脱自在に連結可能な第1コネクタ部材と、脊柱の頭尾方向に沿って延びる第2ロッド部材に着脱自在に連結可能であって、前記第1コネクタ部材と一体的に連結される第2コネクタ部材と、を備え、前記第1コネクタ部材と前記第2コネクタ部材とは、前記第1及び第2ロッド部材と直交する軸方向周りを所定範囲内において互いに相対回動自在に一体的に連結され、前記第2コネクタ部材は、前記第1及び第2ロッド部材と直交する方向に延びるシャフト部を有し、前記第1コネクタ部材は、前記第2コネクタ部材のシャフト部が挿通される挿通孔を有し、前記第1コネクタ部材の挿通孔の内周面と、前記第2コネクタ部材のシャフト部の外周面との間には、前記第1コネクタ部材に受け入れた前記第1ロッド部材からの押圧により、前記第1コネクタ部材の挿通孔の径方向に沿って移動自在なシム部材が設けられ、前記シム部材は、前記第1コネクタ部材の挿通孔内にその軸方向から組付可能に構成されることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、特に、第1コネクタ部材と第2コネクタ部材とは、第1及び第2ロッド部材と直交する軸方向周りを所定範囲内において互いに相対回動自在に連結されているので、術中に、第1コネクタ部材と第2コネクタ部材とが、術者の意図に反して大きく相対回動することはなく、その操作性を向上させることができる。
なお、第1コネクタ部材と第2コネクタ部材とは、第1及び第2ロッド部材と直交する軸方向周りを約60°の範囲内で相対回動できるように設定される。
また、シム部材は、従来(特許文献1)にように圧入固定されていないので、第1ロッド部材によるシム部材への押圧力が、シム部材から第2コネクタ部材のシャフト部に適切に伝達され、第1コネクタ部材と第2コネクタ部材との相対位置における固定力が十分なものとなる。
さらに、シム部材を、第1コネクタ部材の挿通孔内にその軸方向から組み付けることができるので、その組付作業が容易となる。
【0010】
請求項の発明は、請求項に記載の発明において、前記シム部材は、前記挿通孔の内周面と対向または当接する位置に配置される支持部を有することを特徴とするものである。
請求項の発明では、支持部により、シム部材の、第2コネクタ部材のシャフト部から離れる、シャフト部の径方向への移動が規制される。
【0012】
請求項の発明は、請求項に記載の発明において、前記第1コネクタ部材は、前記第1ロッド部材を受け入れる溝部の底部に、前記挿通孔に向かって貫通する開口部が設けられ、該開口部内に前記シム部材に設けた支持円弧部が配置されることを特徴とするものである。
請求項の発明では、支持円弧状部が開口部内に配置されるので、第1コネクタ部材の挿通孔内のシム部材の、第2コネクタ部材のシャフト部の軸方向への移動が規制される。
【0013】
請求項の発明は、請求項に記載の発明において、前記第1コネクタ部材の挿通孔に対する、前記第2コネクタ部材のシャフト部の軸方向に沿う相対移動範囲、及び軸方向周りの相対回動範囲を規制するピン部材を備えることを特徴とするものである。
請求項の発明では、ピン部材により、第1コネクタ部材及び第2コネクタ部材においける、シャフト部の軸方向に沿う相対移動範囲、及び軸方向周りの相対回動範囲を規制することができるので、その全体構造を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る脊柱安定化システムでは、術中における操作性を向上させると共に、脊柱の安定化に対して信頼性が向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係る脊柱安定化システムの第1コネクタ部材及び第2コネクタ部材が一体連結されたコネクタ部材の斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る脊柱安定化システムの、第1及び第2ロッド部材を含む、第1コネクタ部材及び第2コネクタ部材が一体連結されたコネクタ部材の縦断面図である。
図3図3は、図2のA―A線に沿う断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る脊柱安定化システムの第1コネクタ部材及び第2コネクタ部材が一体連結されたコネクタ部材の側面図である。
図5図5は、本実施形態に係る脊柱安定化システムの第1コネクタ部材の挿通孔にシム部材を組み付ける様子を示す縦断面図である。
図6図6は、本実施形態に係る脊柱安定化システムの第1コネクタ部材の挿通孔内のシム部材の下方に第2コネクタ部材のシャフト部を組み付ける様子を示す縦断面図である。
図7図7は、本実施形態に係る脊柱安定化システムの第1コネクタ部材のピン用孔にピン部材を挿入する様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図1図7に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係る脊柱安定化システム1は、脊柱のアライメントが不安定な状態を安定化させるものである。本実施形態に係る脊柱安定化システム1は、例えば、種々の体内埋没材により、脊柱をその頭尾方向に沿う複数の椎骨間に亘って固定して、脊柱を安定化させるものである。体内埋没材としては、図1及び図2を参照して、例えば、脊柱の各椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれる複数の椎弓根スクリュー(図示略)と、共に脊柱の頭尾方向に沿って延び、互いに並列的(略平行に)に延びる第1及び第2ロッド部材4、5と、第1ロッド部材4と第2ロッド部材5とを連結するコネクタ部材6と、を備えている。これら椎弓根スクリュー、第1及び第2ロッド部材4、5、コネクタ部材6は、同一材料で形成され、例えば、チタン合金等の生体親和性に優れた材料にて形成されている。
【0017】
図2を参照して、第1及び第2ロッド部材4、5は、共に並列的に脊柱の頭尾方向に沿って延びる。第1及び第2ロッド部材4、5は、軸方向直交断面が円形状である。第1及び第2ロッド部材4、5の外径は同じである。なお、第1ロッド部材4の外径と、第2ロッド部材5の外径とを相違させてもよい。図示は省略するが、椎弓根スクリューは、脊柱の後方から頭尾方向に沿う複数の椎骨に対して選択的に固定される。椎弓根スクリューは、一椎骨に対して左右一対の椎弓根を介して椎体にそれぞれねじ込まれるものである。椎弓根スクリューは、一般に、ペディクルスクリューとも称される。脊柱の頭尾方向に沿って配置された各椎弓根スクリューは、互いに第2ロッド部材5により連結される。椎弓根スクリューは、第2ロッド部材5を受け入れる溝部を有するロッド受入部と、該ロッド受入部に一体的に連結され、椎骨の椎弓根を介して椎体にねじ込まれるスクリュー部と、を備えている。
【0018】
図1及び図2を参照して、コネクタ部材6は、第1ロッド部材4と、第2ロッド部材5とを連結するものである。コネクタ部材6は、第1コネクタ部材11と、第2コネクタ部材12とが一体的に連結されて構成される。第1コネクタ部材11は、第1ロッド部材4に対して着脱自在に連結可能である。第1コネクタ部材11は、全体としてブロック状に形成される。第1コネクタ部材11は、第1ロッド部材4を受け入れる溝部15と、後述する第2コネクタ部材12のシャフト部31が挿通される挿通孔16と、を備えている。詳しくは、第1コネクタ部材11は、間に上部を開放したU字状の溝部15を有する一対の円弧部17、17を備えている。溝部15は、脊柱への装着状態において、第1及び第2ロッド部材4、5の軸方向に沿って延びる。この溝部15に第1ロッド部材4が受け入れられる。
【0019】
溝部15の下方に挿通孔16が形成される。挿通孔16は、第1及び第2ロッド部材4、5と直交する方向に貫通して延びる。U字状の溝部15が延びる方向と、挿通孔16が延びる方向とは直交している。挿通孔16周りの周壁部であって、その長手方向中間位置の下端には、挿通孔16に向かって貫通するピン用孔18が形成される。図1及び図5を参照して、溝部15の底部には、開口部20が形成される。この開口部20に、後述するシム部材40の支持円弧部42が挿入される。この開口部20は、平面視矩形状に形成される。この開口部20は、挿通孔16に向かって貫通している。図1及び図2を参照して、一対の円弧部17、17の内壁面に、第1雌ねじ部22、22がそれぞれ形成される。この第1雌ねじ部22、22に、第1セットスクリュー24がねじ込まれる。
【0020】
第2コネクタ部材12は、第2ロッド部材5に対して着脱自在に連結可能である。第2コネクタ部材12は、全体としてブロック状に形成される。第2コネクタ部材12は、第2ロッド部材5を受け入れる溝部30と、第1コネクタ部材11の挿通孔16に挿通されるシャフト部31と、を備えている。詳しくは、第2コネクタ部材12は、一側部を開放したC字状の溝部30を備えている。溝部30は、脊柱への装着状態において、第1及び第2ロッド部材4、5の軸方向に沿って延びる。この溝部30に第2ロッド部材5が受け入れられる。第2コネクタ部材12には、その溝部30の開放側とは反対側の他側面の下端からシャフト部31が延びる。シャフト部31は、その軸方向直交断面が円形状に形成される。シャフト部31の長さは、第1コネクタ部材11の挿通孔16の長さと同じである。
【0021】
図2及び図3を参照して、第2コネクタ部材12のシャフト部31の最も下部外周面には、後述するピン部材50の先端が配置される可動域設定凹部34が形成される。可動域設定凹部34は、シャフト部31の外周面を、長手方向に沿う所定距離L、及び周方向に沿う所定角度αの範囲を凹ませて構成される。なお、本実施形態では、可動域設定凹部34は、長手方向に沿う距離Lが約2mm、及び最も下端から周方向に沿って片側の中心角度30°(全体の中心角度αが約60°)の範囲を凹ませて構成される。第2コネクタ部材12の上部壁部には、第2雌ねじ部36が形成される。この第2雌ねじ部36に、第2セットスクリュー38がねじ込まれる。ピン部材50は、第1コネクタ部材11の挿通孔16に対する、第2コネクタ部材12のシャフト部31の軸方向に沿う相対移動範囲、及び軸方向周りの回動範囲を規制するものである。詳しくは、ピン部材50は、第1コネクタ部材11に設けたピン用孔18に挿入される。ピン部材50の先端が第2コネクタ部材12のシャフト部31に設けた可動域設定凹部34内に位置する。
【0022】
図2及び図3を参照して、第1コネクタ部材11の挿通孔16の上部内周面と、第2コネクタ部材12のシャフト部31の上部外周面との間には、シム部材40が配置される。シム部材40は、細長い板状に形成される。シム部材40の上面には、その長手方向中央に支持円弧部42が上方に向かって突設される。支持円弧部42の上面は、図2及び図5に示す断面(シム部材40の長手方向に沿う縦断面)において円弧面42Aに形成される。支持円弧部42の円弧面42Aの曲率は、第1ロッド部材4の曲率と同じである。この支持円弧部42の円弧面42Aに第1ロッド部材4が支持される。
【0023】
シム部材40には、その支持円弧部42を境とした長手方向両側の部位が、第1コネクタ部材11の挿通孔16から上方への移動を規制する支持部44、44としてそれぞれ形成される。シム部材40の下面は、図3に示す断面(シム部材40の幅方向に沿う縦断面)において円弧面46Aに形成される。この円弧面46Aは、シム部材40の長手方向全域に亘って形成される。この円弧面46Aの曲率は、第2コネクタ部材12のシャフト部31の曲率と同じである。シム部材40の下面である円弧面46Aが、第2コネクタ部材12のシャフト部31の上部外周面と当接可能になる。
【0024】
そして、図5及び図6を参照して、第1コネクタ部材11、第2コネクタ部材12及びシム部材40を組み付けてコネクタ部材6として構成する際には、まず、シム部材40をその支持円弧部42が上方を向く姿勢で、第1コネクタ部材11の挿通孔16にその軸方向から挿入する。このとき、挿通孔16の軸方向全域にシム部材40が配置される。続いて、シム部材40を上方に引き上げ、シム部材40の支持円弧部42を第1コネクタ部材11の開口部20に挿入する。これにより、シム部材40の、挿通孔16の軸方向への移動が規制される。このとき、シム部材40の支持部44、44が、挿通孔16の上部内周面にそれぞれ当接する。
【0025】
続いて、図6及び図7を参照して、シム部材40の下面である円弧面46Aと、第1コネクタ部材11の挿通孔16の下部内周面との間に第2コネクタ部材12のシャフト部31を挿入する。第1コネクタ部材11の挿通孔16の軸方向全域に第2コネクタ部材12のシャフト部31が配置される。これにより、シム部材40の上下方向に沿う移動が規制される。最後に、ピン部材50を、第1コネクタ部材11のピン用孔18に挿入、固定すると共に、ピン部材50の先端を、第2コネクタ部材12のシャフト部31の下部外周面に設けた可動域設定凹部34内に配置する。そして、図1図2及び図4を参照して、第1コネクタ部材11と第2コネクタ部材12とは、シャフト部31の軸方向に沿う所定距離Lの範囲内(本実施形態では所定距離Lが2mmの範囲内)にて相対移動自在に一体的に連結される。また、第1コネクタ部材11と第2コネクタ部材12とは、シャフト部31の軸方向周りを所定角度αの範囲内(本実施形態では所定角度αが60°の範囲内)で相対回動自在に一体的に連結される。
【0026】
次に、図1及び図2を参照しながら、術者が、術中に上述したコネクタ部材6により、第1ロッド部材4と第2ロッド部材5とを連結する際の操作方法を説明する。なお、その際、脊柱の頭尾方向に沿って配置される各椎弓根スクリューが第2ロッド部材5により互い連結されている状態となっている。そしてまず、第2コネクタ部材12の溝部30に第2ロッド部材5を配置し、第2セットスクリュー38を、第2コネクタ部材12の第2雌ねじ部36に螺合(仮締め)して、第2セットスクリュー38の先端面を第2ロッド部材5の外周面に当接させて仮止めする。続いて、第1コネクタ部材11の溝部15に第1ロッド部材4の軸方向端部を配置して、第1セットスクリュー24を、第1コネクタ部材11の一対の円弧部17、17の内周面に設けた第1雌ねじ部22、22に螺合(仮締め)して、第1セットスクリュー24の先端面を第1ロッド部材4の外周面に当接させて仮止めする。このとき、まだ、第1コネクタ部材11と第2コネクタ部材12とは、シャフト部31の軸方向に沿う所定距離Lの範囲内で相対移動自在であり、またシャフト部31の軸方向周りを所定角度αの範囲内で相対回動自在となっている。
【0027】
その際、第1コネクタ部材11が第2コネクタ部材12に対して、過度に、すなわち術者の意図に反して大きく回動できないために、容易に第1コネクタ部材11の溝部15に第1ロッド部材4の軸方向端部を配置して仮止めすることができる。続いて、第1コネクタ部材11と第2コネクタ部材12との相対位置、すなわち、第1コネクタ部材11と第2コネクタ部材12とのシャフト部31の軸方向に沿う相対位置、及びシャフト部31の軸方向周りの相対位置がそれぞれ決定された後、第1セットスクリュー24を本締めすることで、第1ロッド部材4からの押圧力が、シム部材40の支持円弧部42を介して第2コネクタ部材12のシャフト部31に伝達されて、第1コネクタ部材11と第2コネクタ部材12とがその任意の相対位置で拘束される。その後、第2セットスクリュー38を本締めすることで、第2コネクタ部材12の溝部30に第2ロッド部材5が強固に固定される。
【0028】
以上説明した、本実施形態に係る脊柱安定化システム1によれば、第1コネクタ部材11と第2コネクタ部材12とは、第1及び第2ロッド部材4、5と直交する軸方向、すなわち第2コネクタ部材12のシャフト部31の軸方向周りを所定範囲内において互いに相対回動自在に一体的に連結される。これにより、術中に、第1コネクタ部材11と第2コネクタ部材12とが、過度に相対回動、すなわち、術者の意図に反して大きく相対回動することはなく、その操作性を向上させることができる。
【0029】
また、本実施形態に係る脊柱安定化システム1では、第1コネクタ部材11の挿通孔16の内周面と、第2コネクタ部材12のシャフト部31の外周面との間には、第1コネクタ部材11の溝部15に受け入れた第1ロッド部材4からの押圧により、第1コネクタ部材11の挿通孔16の径方向に沿って移動自在なシム部材40が設けられる。これにより、第1コネクタ部材11の溝部15内における、第1セットスクリュー24による第1ロッド部材4からシム部材40への押圧力が、適切にシム部材40から第2コネクタ部材12のシャフト部31に伝達されるので、第1コネクタ部材11と第2コネクタ部材12との相対位置における固定力が十分なものとなる。
【0030】
さらに、本実施形態に係る脊柱安定化システム1では、シム部材40は、支持円弧部42の長手方向両側に設けられ、第1コネクタ部材11の挿通孔16の内周面と対向または当接する位置に配置される支持部44、44を有する。この支持部44、44により、シム部材40の、第2コネクタ部材12のシャフト部31から離れる、シャフト部31の径方向への移動が規制されるので、シム部材40を第1コネクタ部材11の挿通孔16内に安定して保持することができる。
【0031】
さらにまた、本実施形態に係る脊柱安定化システム1では、シム部材40は、第1コネクタ部材11の挿通孔16内にその軸方向から組付可能であるので、その組付作業が容易となる。
【0032】
さらにまた、本実施形態に係る脊柱安定化システム1では、第1コネクタ部材11は、第1ロッド部材4を受け入れる溝部15の底部に、挿通孔16に向かって貫通する開口部20が設けられ、該開口部20内にシム部材40に設けた支持円弧部42が配置される。これにより、シム部材40の、第2コネクタ部材12のシャフト部31の軸方向に沿う移動が規制されるので、シム部材40を第1コネクタ部材11の挿通孔16内に安定して保持することができる。
【0033】
さらにまた、本実施形態に係る脊柱安定化システム1では、第1コネクタ部材11の挿通孔16に対する、第2コネクタ部材12のシャフト部31の軸方向に沿う移動範囲、及び軸方向周りの回動範囲を規制するピン部材50を備える。これにより、第1コネクタ部材11及び第2コネクタ部材12を含むコネクタ部材6全体の構造を簡素化することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、第1コネクタ部材11に第1ロッド部材4が連結され、第2コネクタ部材12に第2ロッド部材5が連結されているが、第1コネクタ部材11に第2ロッド部材5を連結して、第2コネクタ部材12に第1ロッド部材4を連結してもよい。また、本実施形態では、第2コネクタ部材12には、C字状の溝部30が設けられているが、第1コネクタ部材11と同様にU字状の溝部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 脊柱安定化システム,4 第1ロッド部材,5 第2ロッド部材,6 コネクタ部材,11 第1コネクタ部材,12 第2コネクタ部材,15 溝部,16 挿通孔,20 開口部,31 シャフト部,40 シム部材,42 支持円弧部,44 支持部,50 ピン部材
【要約】
【課題】術中における操作性を向上させる脊柱安定化システムを提供する。
【解決手段】脊柱安定化システム1は、脊柱の頭尾方向に沿って延びる第1ロッド部材に着脱自在に連結可能な第1コネクタ部材11と、脊柱の頭尾方向に沿って延びる第2ロッド部材に着脱自在に連結可能であって、第1コネクタ部材11と一体的に連結される第2コネクタ部材12と、を備え、第1コネクタ部材11と第2コネクタ部材12とは、第1及び第2ロッド部材と直交する軸方向周りを所定範囲内において互いに相対回動自在に一体的に連結される。これにより、術中における操作性を向上させることができる。
【選択図】図1
図1
図2
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図7