(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】シャッター機能付光ファイバカプラ及びスイッチ機能付光ファイバカプラ
(51)【国際特許分類】
G02B 26/02 20060101AFI20240319BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240319BHJP
G02B 6/35 20060101ALI20240319BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G02B26/02 E
G02B26/08 E
G02B6/35
G02B6/32
(21)【出願番号】P 2020115103
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-06-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業(大規模プロジェクト型)「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】592253736
【氏名又は名称】シグマ光機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】香取 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】高本 将男
(72)【発明者】
【氏名】大前 宣昭
(72)【発明者】
【氏名】多幡 能徳
(72)【発明者】
【氏名】干場 克宣
(72)【発明者】
【氏名】江島 聡
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-303806(JP,A)
【文献】特開2008-129567(JP,A)
【文献】特開平08-271811(JP,A)
【文献】特開2006-251045(JP,A)
【文献】米国特許第06337760(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00 - 26/08
G02B 6/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、光源から発せられた光を集光する集光部と、
前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される光導波路が接続される光導波路取付け部と、
前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される光吸収体が接続される光吸収体取付け部と、
前記ハウジングの中に設けられ、前記集光部にて集光された光を、前記集光部と前記光導波路取付け部又は前記光吸収体取付け部との間において、集光途中で反射させる反射部と、
を備え、
前記ハウジングは気密構造であり、
前記気密構造のハウジングの中には、封入ガスが封入されており、
前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、
前記集光途中の光を前記光導波路へ入射させる入射状態と、前記集光途中の光を前記光吸収体へ入射させる遮光状態とを切り換えること
を特徴とするシャッター機能付光ファイバカプラ。
【請求項2】
前記反射部は、前記集光途中の光を反射させるミラー面を含むこと
を特徴とする請求項1記載のシャッター機能付光ファイバカプラ。
【請求項3】
前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、前記集光途中の光を一方向に反射させること
を特徴とする請求項1又は2に記載のシャッター機能付光ファイバカプラ。
【請求項4】
前記封入ガスは、
前記光導波路取付け部に取り付けられた前記光導波路の端面にある集光点への集塵及び前記反射部の表面劣化の双方を抑制可能なガスを含むこと
を特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のシャッター機能付光ファイバカプラ。
【請求項5】
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、光源から発せられた光を集光する集光部と、
前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される第1光導波路が接続される第1光導波路取付け部と、
前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される第2光導波路が接続される第2光導波路取付け部と、
前記ハウジングの中に設けられ、前記集光部にて集光された光を、前記集光部と前記第1光導波路取付け部又は前記第2光導波路取付け部との間において、集光途中で反射させる反射部と、
を備え、
前記ハウジングは気密構造であり、
前記気密構造のハウジングの中には、封入ガスが封入されており、
前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、
先端部分で前記集光途中の光を
反射させて前記第1光導波路へ入射させる第1入射状態と、前記集光途中の光を前記第2光導波路へ入射させる第2入射状態とを切り換えること
を特徴とするスイッチ機能付光ファイバカプラ。
【請求項6】
前記反射部は、前記集光途中の光を反射させるミラー面を含むこと
を特徴とする請求項5記載のスイッチ機能付光ファイバカプラ。
【請求項7】
前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、前記集光途中の光を一方向に反射させること
を特徴とする請求項5又は6に記載のスイッチ機能付光ファイバカプラ。
【請求項8】
前記封入ガスは、
前記第1光導波路取付け部に取り付けられた前記第1光導波路の端面にある第1集光点への集塵、前記第2光導波路取付け部に取り付けられた前記第2光導波路の端面にある第2集光点への集塵及び前記反射部の表面劣化のそれぞれを抑制可能なガスを含むこと
を特徴とする請求項5~7のいずれか1つに記載のスイッチ機能付光ファイバカプラ。
【請求項9】
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、光源から発せられた光を集光する集光部と、
前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される第1光導波路が接続される第1光導波路取付け部と、
前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される第2光導波路が接続される第2光導波路取付け部と、
前記ハウジングの中に設けられ、前記集光部にて集光された光を、前記集光部と前記第1光導波路取付け部又は前記第2光導波路取付け部との間において、集光途中で反射させる反射部と、
前記ハウジングの中に設けられ、前記反射部と一体とされた可動電極と、
前記ハウジングに固定され、前記可動電極から離間した固定電極と、
を備え、
前記ハウジングは気密構造であり、
前記気密構造のハウジングの中には、封入ガスが封入されており、
前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、
先端部分で前記集光途中の光を
反射させて前記第1光導波路へ入射させる第1入射状態と、前記集光途中の光を前記第2光導波路へ入射させる第2入射状態とを
、前記可動電極と前記固定電極との間に電圧が印加されることに伴い切り換えること
を特徴とするスイッチ機能付光ファイバカプラ。
【請求項10】
前記反射部は、前記集光途中の光を反射させるミラー面を含むこと
を特徴とする請求項
9記載のスイッチ機能付光ファイバカプラ。
【請求項11】
前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、前記集光途中の光を一方向に反射させること
を特徴とする請求項
9又は
10に記載のスイッチ機能付光ファイバカプラ。
【請求項12】
前記封入ガスは、
前記第1光導波路取付け部に取り付けられた前記第1光導波路の端面にある第1集光点への集塵、前記第2光導波路取付け部に取り付けられた前記第2光導波路の端面にある第2集光点への集塵及び前記反射部の表面劣化のそれぞれを抑制可能なガスを含むこと
を特徴とする請求項
9~
11のいずれか1つに記載のスイッチ機能付光ファイバカプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、シャッター機能付光ファイバカプラ及びスイッチ機能付光ファイバカプラに関する。
【背景技術】
【0002】
シャッター機能付光ファイバカプラは、レーザー等の光源から発せられた光を、その光路中において、遮光部材(シャッター)を挿抜することで光を断続的に遮光させることが一般的である(特開2005-62831号公報)。このようなシャッター機能付光ファイバカプラでは、メカニカルな遮光部材が高速な挿抜動作を繰り返す。遮光部材は軽量であることが要求されている。
【0003】
また、遮光部材を軽量化する試みもある。例えば、遮光部材と、この遮光部材を駆動する駆動機構とを、MEMSにて構成することが知られている(特開2018-63339号公報)。しかし、MEMSにて構成された遮光部材は微細であり、しかも、遮光部材は光のエネルギーを吸収してしまうため、破損してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-62831号公報
【文献】特開2018-63339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の光スイッチは、メカニカルな遮光部材が高速な挿抜動作を繰り返すため、遮光部材の摺動によって振動が大きくなる、という事情がある。また、遮光部材が摺動するので、耐久性にも乏しい。
【0006】
また、特許文献2に記載の表示装置は、遮光部材及び駆動機構をMEMSで構成するので、振動を小さくできる。しかし、MEMSは微細であり、しかも、微細な遮光部材が光のエネルギーを吸収してしまうため、破損しやすく、耐久性に乏しい、という事情がある。
【0007】
この発明の実施形態は、より微細で振動が少なく、高い耐久性を有するシャッター機能付光ファイバカプラ及びスイッチ機能付光ファイバカプラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1態様に係るシャッター機能付光ファイバカプラは、ハウジングと、前記ハウジングに設けられ、光源から発せられた光を集光する集光部と、前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される光導波路が接続される光導波路取付け部と、前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される光吸収体が接続される光吸収体取付け部と、前記ハウジングの中に設けられ、前記集光部にて集光された光を、前記集光部と前記光導波路取付け部又は前記光吸収体取付け部との間において、集光途中で反射させる反射部と、を備え、前記ハウジングは気密構造であり、前記気密構造のハウジングの中には、封入ガスが封入されており、前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、前記集光途中の光を前記光導波路へ入射させる入射状態と、前記集光途中の光を前記光吸収体へ入射させる遮光状態とを切り換えることを特徴とする。
【0009】
この発明の第2態様に係るシャッター機能付光ファイバカプラは、第1態様において、前記反射部は、前記集光途中の光を反射させるミラー面を含むことを特徴とする。
【0010】
この発明の第3態様に係るシャッター機能付光ファイバカプラは、第1態様又は第2態様において、前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、前記集光途中の光を一方向に反射させることを特徴とする。
【0011】
この発明の第4態様に係るシャッター機能付光ファイバカプラは、第1態様~第3態様のいずれか1つにおいて、前記封入ガスは、前記光導波路取付け部に取り付けられた前記光導波路の端面にある集光点への集塵及び前記反射部の表面劣化の双方を抑制可能なガスを含むことを特徴とする。
【0012】
この発明の第5態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、ハウジングと、前記ハウジングに設けられ、光源から発せられた光を集光する集光部と、前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される第1光導波路が接続される第1光導波路取付け部と、前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される第2光導波路が接続される第2光導波路取付け部と、前記ハウジングの中に設けられ、前記集光部にて集光された光を、前記集光部と前記第1光導波路取付け部又は前記第2光導波路取付け部との間において、集光途中で反射させる反射部と、を備え、前記ハウジングは気密構造であり、前記気密構造のハウジングの中には、封入ガスが封入されており、前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、先端部分で前記集光途中の光を反射させて前記第1光導波路へ入射させる第1入射状態と、前記集光途中の光を前記第2光導波路へ入射させる第2入射状態とを切り換えることを特徴とする。
【0013】
この発明の第6態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、第5態様において、前記反射部は、前記集光途中の光を反射させるミラー面を含むことを特徴とする。
【0014】
この発明の第7態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、第5態様又は第6態様において、前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、前記集光途中の光を一方向に反射させることを特徴とする。
【0015】
この発明の第8態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、第5態様~第7態様のいずれか1つにおいて、前記封入ガスは、前記第1光導波路取付け部に取り付けられた前記第1光導波路の端面にある第1集光点への集塵、前記第2光導波路取付け部に取り付けられた前記第2光導波路の端面にある第2集光点への集塵及び前記反射部の表面劣化のそれぞれを抑制可能なガスを含むことを特徴とする。
この発明の第9態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、ハウジングと、前記ハウジングに設けられ、光源から発せられた光を集光する集光部と、前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される第1光導波路が接続される第1光導波路取付け部と、前記ハウジングに設けられ、前記集光部にて集光された光が入射される第2光導波路が接続される第2光導波路取付け部と、前記ハウジングの中に設けられ、前記集光部にて集光された光を、前記集光部と前記第1光導波路取付け部又は前記第2光導波路取付け部との間において、集光途中で反射させる反射部と、前記ハウジングの中に設けられ、前記反射部と一体とされた可動電極と、前記ハウジングに固定され、前記可動電極から離間した固定電極と、を備え、前記ハウジングは気密構造であり、前記気密構造のハウジングの中には、封入ガスが封入されており、前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、先端部分で前記集光途中の光を反射させて前記第1光導波路へ入射させる第1入射状態と、前記集光途中の光を前記第2光導波路へ入射させる第2入射状態とを、前記可動電極と前記固定電極との間に電圧が印加されることに伴い切り換えることを特徴とする。
この発明の第10態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、第9態様において、前記反射部は、前記集光途中の光を反射させるミラー面を含むことを特徴とする。
この発明の第11態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、第9態様又は第10態様において、前記反射部は、前記気密構造のハウジングの中において、前記集光途中の光を一方向に反射させることを特徴とする。
この発明の第12態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、第9態様~第11態様のいずれか1つにおいて、前記封入ガスは、前記第1光導波路取付け部に取り付けられた前記第1光導波路の端面にある第1集光点への集塵、前記第2光導波路取付け部に取り付けられた前記第2光導波路の端面にある第2集光点への集塵及び前記反射部の表面劣化のそれぞれを抑制可能なガスを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1態様~第4態様に係るシャッター機能付光ファイバカプラは、ハウジングと、集光部と、光導波路取付け部と、光吸収体と、反射部と、を含む。ハウジングは気密構造であり、この気密構造のハウジングの中には、封入ガスが封入されている。このような気密構造のハウジングの中において、反射部は、集光部にて集光された光を、集光部と光導波路取付け部又は光吸収体との間において、集光途中で反射させる。このように、反射部が、集光途中の光を反射させることで、反射部をより微細に形成することが可能となる。さらに、反射部は、集光途中の光を光導波路へ入射させる入射状態と、集光途中の光を光吸収体へ入射させる遮光状態とを切り換える。これにより、集光部から光導波路への光入射に使われる光ファイバカプラにおいて、シャッター機能を付加することができる。しかも、反射部が微細になることで、シャッター機能付光ファイバカプラは、振動が少なく、高い耐久性が得られる。また、反射部は、光を反射させるので、実質的に光の吸収を伴うことがない。このため、反射部が微細であったとしても、光のエネルギーを吸収する遮光部材と比較して破損し難くなる。この観点からも、第1態様~第4態様に係るシャッター機能付光ファイバカプラには、高い耐久性が得られる。
【0017】
また、第4態様に係るシャッター機能付光ファイバカプラは、封入ガスが、
(1)集光点への集塵
(2)反射部の表面劣化
の双方を抑制可能なガスを含む。このような第4態様に係るシャッター機能付光ファイバカプラによれば、
(3)集光点に付着した塵等に起因した光の散乱
(4)劣化した反射部による光の乱反射
(5)散乱光及び乱反射光に基づく、ハウジングの中での多重散乱の発生
等を、さらに抑制することができる。したがって、動作的な観点及び構造的な観点に加え、光学的な観点からも高い耐久性を確保でき、入射及び遮光(反射)の切り換え動作を、光学的な精度をも劣化させずに、長期間に及んで安定して継続させることが可能となる。
【0018】
第5態様~第12態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、ハウジングと、集光部と、第1光導波路取付け部と、第2光導波路取付け部と、反射部と、を含む。ハウジングは気密構造であり、この気密構造のハウジングの中には、封入ガスが封入されている。このような気密構造のハウジングの中において、反射部は、集光部にて集光された光を、集光部と第1光導波路取付け部又は第2光導波路取付け部との間において、集光途中で反射させる。したがって、第1態様~第4態様と同様に、反射部をより微細に形成することが可能となる。さらに、反射部は、集光途中の光を第1光導波路へ入射させる第1入射状態と、集光途中の光を第2光導波路へ入射させる第2入射状態とを切り換える。これにより、集光部から光導波路への光入射に使われるマルチポート型のスイッチ機能付光ファイバカプラを得ることができる。しかも、反射部が微細になることで、マルチポート型のスイッチ機能付光ファイバカプラは、振動が少なく、高い耐久性が得られる。また、反射部は、光を反射させるので、実質的に光の吸収を伴うことがない。このため、第5態様~第9態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、第1態様~第4態様と同様に高い耐久性が得られる。
【0019】
また、第8態様及び第12態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラは、封入ガスが、
(6)第1集光点への集塵
(7)第2集光点への集塵
(8)反射部の表面劣化
のそれぞれを抑制可能なガスを含む。このような第8態様及び第12態様に係るスイッチ機能付光ファイバカプラによれば、
(9)第1、第2集光点に付着した塵等に起因した光の散乱
(10)劣化した反射部による光の乱反射
(11)散乱光及び乱反射光に基づく、ハウジングの中での多重散乱の発生
等を、さらに抑制することができる。したがって、第4態様と同様に、動作的な観点及び構造的な観点に加え、光学的な観点からも高い耐久性を確保でき、第1入射動作及び第2入射動作の切り換えを、光学的な精度をも劣化させずに、長期間に及んで安定して継続させることが可能となる。
【0020】
したがって、第1態様~第12態様によれば、より微細で振動が少なく、高い耐久性を有するシャッター機能付光ファイバカプラ及びスイッチ機能付光ファイバカプラを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)は、第1実施形態に係るシャッター機能付光ファイバカプラの一例を示す模式平面図である。
図1(b)及び
図1(c)は、第1実施形態に係るシャッター機能付光ファイバカプラの一例を示す模式水平断面図である。
【
図2】
図2は、反射部の一例を示す模式斜視図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、反射部の一例を示す第2水平方向Yの模式側面図である。
図3(c)は、反射部の一例を示す模式平面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、駆動機構の一例を示す模式平面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、反射部の第1動作例を示す模式斜視図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、第2実施形態に係るスイッチ機能付光ファイバカプラの一例を示す模式水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。各図において、共通する部分については共通する参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
第1実施形態
(シャッター機能付光ファイバカプラ)
図1(a)は、第1実施形態に係るシャッター機能付光ファイバカプラの一例を示す模式平面図である。
図1(b)及び
図1(c)は、第1実施形態に係るシャッター機能付光ファイバカプラの一例を示す模式水平断面図である。
図1(a)中の“X”は第1水平方向、“Y”は第1水平方向Xに対して略直交する第2水平方向、“Z”は第1水平方向X及び第2水平方向Yのそれぞれに略垂直に直交する高さ方向を示す。なお、第1水平方向X、第2水平方向Y及び高さ方向Zは“左手系座標”により表示し、全図で共通とする。
【0024】
図1(a)~
図1(c)に示すように、シャッター機能付光ファイバカプラ100は、集光部1と、光導波路取付け部201と、光吸収体取付け部202と、反射部2と、駆動機構3と、ハウジング200と、を含む。ハウジング200は、例えば樹脂性である。シャッター機能付光ファイバカプラ100は、例えば、集光部1から光導波路への光入射に使われる。
【0025】
集光部1は、ハウジング200の第1水平方向Xに沿った側面に設けられている。集光部1は、光を集光する物として、例えば集光レンズ11を有する。集光レンズ11は、光源、例えばレーザー装置300から発せられた光LLを集光する。集光レンズ11は、球面レンズであっても良いし、非球面レンズであってもよい。非球面レンズの例は、放物面、楕円面、双曲面、4次曲面等である。
【0026】
光導波路取付け部201は、ハウジング200の、集光部1と対向した第1水平方向Xに沿った側面に設けられている。光導波路取付け部201には、光導波路、例えば光ファイバ4が取り付けられる。光ファイバ4には、集光レンズ11にて集光された光LLが入射される。
【0027】
光吸収体取付け部202には、ハウジング200の、第2水平方向Yに沿った側面に設けられている。光吸収体取付け部202には、光吸収体5が取り付けられる。光吸収体5は、集光レンズ11にて集光された光のエネルギーを熱に変換する。光吸収体5には、集光レンズ11にて集光された光LLが、反射部2によって反射されて入射される。光吸収体5は、その内部に、例えば光トラップ構造を有する。光吸収体5に入射された光LLは、光トラップ構造によりトラップされる。このため、光LLが光吸収体5で反射して反射部2へ再び戻ることはほとんどない。したがって、光LLは、トラップ構造の中で効率よく熱に変換される。
【0028】
光吸収体5の材料の一例は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属である。Alを主成分とする金属は、熱伝導性が良く、コストも安い。シャッター機能付光ファイバカプラ100の製造コストを低く抑え、シャッター機能付光ファイバカプラ100に汎用性を持たせたい場合には、光吸収体5としてAlを主成分とする金属が選ばれることが良い。Alを主成分とする金属には、上記トラップ構造の他、反射率を低く抑えて光の吸収性を向上させるために、例えば黒アルマイト処理を施してもよい。ただし、黒アルマイトは、赤外線に対する光吸収性に、やや難がある。このため、光源として赤外領域の波長を持つレーザーを用いる場合には、黒アルマイト処理に代えて、赤外線に対する光吸収性に優れた塗料を塗布するようにしても良い。
【0029】
ハウジング200は、例えば気密構造である。気密構造のハウジング200の中には、例えば封入ガス封入されている。
【0030】
反射部2及び駆動機構3は、例えば気密構造のハウジング200の中に設けられ、そして、収容されている。反射部2は、集光レンズ11にて集光された光LLを、気密構造のハウジング200の中において、集光途中で一方向に反射させる。第1実施形態では、集光途中の光は、第1水平方向Xに反射される。駆動機構3は、ハウジング200の中に収容されるとともに、ハウジング200に、例えばネジ(図示せず)によって固定されている。駆動機構3は、反射部2を第1水平方向Xに沿って駆動する。反射部2は、駆動機構3によって、集光レンズ11の光学中心と集光された光LLの集光点とを結ぶ光軸OA上への進出動作(
図1(b))及び光軸OA上からの退避動作(
図1(c))を交互に繰り返す。これにより、反射部2は、ハウジング200の中において、集光途中の光を光ファイバ(光導波路)4へ入射させる入射状態と、集光途中の光を光吸収体5へ入射させる遮光状態とを切り換えることができる。
【0031】
本明細書では、反射部2が光軸OA上にあるときを“第1位置”という(
図1(b))。また、反射部2が光軸OA外にあるときを“第2位置”という。光LLは、例えばレーザー装置300から、第1水平方向X及び第2水平方向Yに広がる水平面と略平行に照射される。シャッター機能付光ファイバカプラ100では、光軸OAは第2水平方向Yと平行である。
【0032】
<反射部>
図2は、反射部の一例を示す模式斜視図である。
図3(a)及び
図3(b)は、反射部の一例を示す第2水平方向Yの模式側面図である。
図3(c)は、反射部の一例を示す模式平面図である。
【0033】
図2~
図3(c)に示すように、反射部2は、主平面220と、側面221と、を有する。反射部2は、立体物であり、故に方向が異なった複数の面を有する。本明細書において、反射部2が“第1位置(
図3(a))”及び“第2位置(
図3(b))”のそれぞれにあるとき、光軸OAの方向と交差しない反射部2の面を“主平面220”という。主平面220は、反射部2が“第1位置”にあるとき、光軸OAの方向と、例えば平行する。
【0034】
また、反射部2が“第1位置(
図3(a))”にあるとき、光軸OAの方向と交差し、“第2位置(
図3(b))”にあるとき、光軸OAと交差しない面を“側面221”という。主平面220の側面221は、反射部2が“第1位置”にあるとき、光軸OAと交差する。このため、側面221は、光LLを反射することができる。
【0035】
反射部2は、反射面21を有する。反射部2が第1位置にあるとき、反射部2の反射面21は、反射部2の側面221にある。反射面21は、第1位置において、光軸OAと高さ方向Zに略垂直な角度θzで交差し、かつ、光軸OAと第2水平方向Yに0°を超え90°未満の角度θyで交差する。シャッター機能付光ファイバカプラ100では、角度θzが約90°、角度θyが約45°の例を示している。なお、本明細書において、“略”は、実質的な範囲を表現しており、例えば“略垂直”は、厳密な垂直からプラス方向及びマイナス方向それぞれへの許容誤差を含む範囲、と定義する。角度θyが約45°のとき、光LLの反射方向は、ほぼ第1水平方向Xとなる。
【0036】
なお、角度θzは、約90°に限られることはない。反射光が飛んで行く方向に、光吸収体5を配置すれば良いためである。したがって、角度θzは約90°に限らず、角度θzに応じて、光吸収体5を、反射光が入射する位置に配置すれば良い。
【0037】
また、
図2~
図3(c)では、シャッター機能付光ファイバカプラ100が、反射部2を駆動する駆動部材22を、さらに備えた例が示されている。駆動部材22は、駆動機構3によって駆動される。反射面21は、駆動部材22の先端部分23に、駆動部材22の側面221を利用して設けられる。このような反射面21は、例えば、次のようにして得ることができる。
【0038】
まず、駆動部材22の側面221を、角度θyが約45°となるように加工する。これにより、加工された側面221を、反射面21として利用可能な状態とする。次に、加工された側面221を鏡面研磨し、側面221をミラー面とする。このようにして、反射面21を、駆動部材22の側面に得ることができる。
【0039】
駆動部材22の材料の一例は、Alを主成分とする金属である。Alを含む金属によれば、鏡面研磨することにより、ミラー面を得ることが可能である。したがって、Alを主成分とする金属によれば、駆動部材22の側面221が利用した反射部2を得ることができる。
【0040】
また、駆動部材22の表面には、表面コーティングが施されていても良い。なお、駆動部材22の材料が、その表面に自然被膜を形成する金属であった場合、自然被膜も表面コーティングの1つと考えても良い。例えば、駆動部材22の材料が、例えばAlを含む金属である場合、その表面には、自然被膜としてアルミナ被膜が形成される。このようなアルミナ被膜は、表面コーティングの1つである。
【0041】
反射部2を、駆動部材22の側面221を利用して得ることによれば、例えば、反射部2に必要な角度θyを、例えば“立体的な組立て”にて確保する場合と比較して、角度θyを、より簡単な構造にて確保できる、という利点が得られる。この利点より、例えば、高さ方向Zに沿った厚みTzが薄い反射部2を、簡単に得ることもできる(
図3(a)及び
図3(b))。例えば、厚みTzの一例は、1mm以下の有限値である。
【0042】
また、シャッター機能付光ファイバカプラ100に使用される部品の数を削減でき、シャッター機能付光ファイバカプラ100の製造コストの抑制にも有利である。
【0043】
図3(c)に示すように、駆動部材22が駆動され、反射部2が第1水平方向Xに沿って移動している途中、光LLには、反射光LL1及び未反射光LL2の双方が生じる。反射光LL1及び未反射光LL2の双方が生じているときでも、反射部2は、反射光LL1を第1水平方向Xに沿って光吸収体(光吸収体5)へ向けて反射しつつ、未反射光LL2については、第2水平方向Yに沿って光導波路(光ファイバ4)へ導くことができる。したがって、動作中であっても、反射部2は、ハウジング200の中において、光LLの反射方向を一方向、例えば第1水平方向Xに規定することができる。
【0044】
また、光LLの反射は、反射部の先端部分23の、光LLを全て反射可能な最先範囲のみで行われれば良い。最先範囲のみで光LLを反射させることで、駆動部材22の駆動量を最小限に抑えることができ、駆動機構3の小型化及び省電力化を促進できるとともに、シャッター機能付光ファイバカプラ100の微細化にも有利となる。シャッター機能付光ファイバカプラ100は、実施形態では約2cm角であり、メカニカルな光シャッターの約1/3サイズまで微細化された。
【0045】
<駆動機構>
図4(a)及び
図4(b)は、駆動機構の一例を示す模式平面図である。
【0046】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、駆動機構3は、例えば、可動電極31と、固定電極32と、を含む。可動電極31は、第1実施形態では、例えば、駆動部材22と一体となっている。可動電極31である駆動部材22の先端部分23には反射部2が設けられ、反射部2の反射面21は、駆動部材22の側面221が利用される。これにより、第1実施形態では、反射部2、駆動部材22及び駆動機構3のそれぞれが、例えば、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)として一体的に構成される。
【0047】
可動電極31及び固定電極32それぞれの平面形状の一例は、インターディジット形である。可動電極31は、第1水平方向Xに沿って延びた複数の第1フィン状部位311を有する。可動電極31と同様に、固定電極32も、第1水平方向Xに沿って延びた複数の第2フィン状部位321を有する。これらの第1フィン状部位311及び第2フィン状部位321は、互いに嵌り合うように、第1水平方向X及び第2水平方向Yによって規定される水平面に沿って、可動電極31及び固定電極32のそれぞれに設けられている。可動電極31の材料の一例は、駆動部材22の説明において説明したように、Alを主成分とする金属である。そして、固定電極32の材料の一例もまた、Alを主成分とする金属である。
【0048】
可動電極31と固定電極32との間に電圧Vを印加すると、
図4(b)に示すように、例えば静電気力が働き、可動電極31は、固定電極32に引き寄せられる。これにより、反射部2は“第2位置の状態”をとり、集光部1で集光された光(光軸OAのみ図示)は、反射部2によって反射されることなく、光導波路、例えば光ファイバ4に向けて入射される。
【0049】
反対に、可動電極31と固定電極32との間に電圧Vを印加しない状態では、
図4(a)に示すように、可動電極31は、固定電極32から離れた初期状態の位置となり、反射部2は“第1位置の状態”をとる。これにより、集光部1で集光された光(光軸OAのみ図示)は、反射部2によって反射され、光吸収体、例えば光吸収体5に向けて入射される。
【0050】
また、可動電極31は、MEMSとして構成されており、微細で軽い。このため、可動電極31は、例えば静電気力によって、上記“第1位置”及び“第2位置”への相互の移動動作を、高速に行うことができる。しかも、可動電極31は、固定電極32と摺動することもない。したがって、スイッチング時の振動を、摺動を伴うメカニカルなシャッターと比較して、より少なくすることができる。振動が少ないシャッター機能付光ファイバカプラは、例えば、光格子時計ような高精度なセンサ機構に対して振動の影響を与えないので、特に有用である。また、摺動せず振動が少ないシャッターは、摺動を伴うメカニカルなシャッターと比較して、摩擦部分が無いため、高い耐久性を得ることができる。例えば、摺動を伴うメカニカルなシャッターを、光格子時計に用いるような数回/秒程度で24時間動作する高速動作のシャッターに用いた場合、その寿命は約100日である。これに対し、シャッター機能付光ファイバカプラ100によれば、その寿命は約5年に延長することが可能である。しかも、摩擦部分がないため、摩擦部分があるメカニカルなシャッターと比較して、潤滑油等も必要ない。したがって、摩擦に伴う目視不可能な微細な粉塵や油煙等、光学的な測定精度に影響を与える外乱要素も減らすことができる。このようなシャッター機能付光ファイバカプラ100は、光格子時計の小型軽量化、安定動作の実現を促進でき、例えば、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)に代わる超高精度時間インフラの構築にも貢献できる。
【0051】
<シャッター機能付光ファイバカプラから得られる代表的な技術的利点>
シャッター機能付光ファイバカプラ100は、反射部2と、駆動機構3と、を含む。反射部2は、集光された光LLを反射させる。駆動機構3は、反射部2を、光軸OA上の第1位置及び光軸OA外の第2位置に交互駆動する。反射部2は、光軸OAの方向と交差しない主平面220と、光軸OAの方向と交差する側面221と、を有する。主平面220は、第1位置及び第2位置のそれぞれにおいて、光軸OAと交差しない。また、側面221は、第1位置において光軸OAと交差し、第2位置において光軸OAと交差しない。そして、反射部2が第1位置にあるとき、反射部2の反射面21は、主平面220の側面221に位置する。これにより、光軸OAの方向は、反射部2が第1位置にあるか、第2位置にあるかによって変化させることができ、シャッター機能付光ファイバカプラとして機能させることができる。
【0052】
また、反射部2は、集光された光LLを反射させるので、光LLの実質的な吸収を伴うことがない。したがって、光路上に、光LLを吸収する遮光部材を挿抜する場合と比較して、反射部2は破損し難くなる。したがって、第1実施形態に係るシャッター機能付光ファイバカプラ100によれば、装置の耐久性の更なる向上が可能なシャッター機能付光ファイバカプラ100を提供できる。
【0053】
さらに、シャッター機能付光ファイバカプラ100は、光吸収体5を含む。反射部2は、反射させた光LLの反射先を、光吸収体5にほぼ限定できる。このため、シャッター機能付光ファイバカプラ100では、発熱する箇所を光吸収体5にほぼ限定できる。したがって、シャッター機能付光ファイバカプラ100の排熱設計は、効率的に行うことができる。また、シャッター機能付光ファイバカプラ100が用いられた光システムでは、その全体設計及びその排熱設計を、シャッター機能付光ファイバカプラ100が用いられていない光システムと比較して、より効率的に行うことも可能となる。
【0054】
また、第1実施形態では、ハウジング200を気密構造とし、気密構造のハウジング200の中には、封入ガスが封入されている。封入ガスの1つの例は、
(1)光導波路取付け部201に取り付けられた光ファイバ4(光導波路)の、ハウジング側端面にある集光点への集塵
(2)反射部2の表面劣化
の双方を抑制可能なガスを含むガスである。反射部2の表面劣化は、反射部2の表面に表面コーティングがある場合、表面コーティング劣化を含む。このような集塵及び劣化を抑制可能なガスの例は、不活性なガスを含むガスである。不活性なガスの例としては、窒素(N2)ガス、希ガスである。希ガスとしては、例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガス等が選ばれると良い。不活性なガスは、これらのガスの混合ガスであっても良い。
【0055】
封入ガスとして、上記ガスを用いた場合、
(3)集光点に付着した塵等に起因した光の散乱
(4)劣化した反射部2による光の乱反射
(5)散乱光及び乱反射光に基づく、ハウジング200の中での多重散乱の発生
等を、さらに抑制することができる。したがって、動作的な観点及び構造的な観点に加え、光学的な観点からも高い耐久性を確保することができる。これは、短波長の光に対して、入射動作及び遮光(反射)動作の切り換え動作を行う際に有利な利点である。短波長の光の範囲としては、例えば200nm~600nmの範囲を挙げることができる。波長が200nm~600nmの範囲には、例えば光格子時計の魔法波長、原子を冷却するレーザー冷却の冷却波長等が含まれ得る。このようなシャッター機能付光ファイバカプラによれば、短波長の光に対し、入射及び遮光(反射)の切り換え動作を行っても、光学的な精度をも劣化させずに、長期間に及んで安定して継続させることが可能である。例えば、切り換え動作を1回/1秒と仮定した場合、連続動作寿命は、メカニカルなシャッターでは約1000万回であったところ、約1億5000万回~1億6000万回(約5年間の連続稼働)まで向上させることも可能となる。
【0056】
第2実施形態
(スイッチ機能付光ファイバカプラ)
図6(a)及び
図6(b)は、第2実施形態に係るスイッチ機能付光ファイバカプラの一例を示す模式水平断面図である。
【0057】
図6(a)及び
図6(b)に示すように、第2実施形態に係るスイッチ機能付光ファイバカプラ100bでは、反射部2が第1位置にあるとき、反射部2は、集光された光LLを第1光導波路(例えば第1光ファイバ4a)に向けて反射し、反射部2が第2位置にあるとき、集光された光LLは、反射部2によって反射されずに、第2光導波路(例えば第2光ファイバ4b)に向けて入射される。第1光ファイバ4aは、第1光導波路取付け部201aに取り付けられる。第2光ファイバ4bは、第2光導波路取付け部201bに取り付けられる。第2実施形態によれば、集光部1から光導波路への光入射に使われるマルチポート型のスイッチ機能付光ファイバカプラ100bを得ることができる。
【0058】
スイッチ機能付光ファイバカプラ100bによれば、レーザー装置300からの光LLの光路方向を、第1光ファイバ4a又は第2光ファイバ4bのいずれかに切り換えることができる。
【0059】
この発明の実施形態に係る光ファイバカプラは、第1実施形態のようなシャッター機能付光ファイバカプラ100だけでなく、第2実施形態のようにマルチポート型のスイッチ機能付光ファイバカプラ100bにも応用することができる。しかも、スイッチ機能付光ファイバカプラ100bは、反射部2が微細になることで、振動が少なく、高い耐久性が得られる。また、反射部2は、光を反射させるので、実質的に光の吸収を伴うことがない。このため、シャッター機能付光ファイバカプラ100と同様に、高い耐久性を得ることができる。
【0060】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ハウジング200を気密構造とし、気密構造のハウジング200の中に、封入ガスを封入することが可能である。第2実施形態における封入ガスの1つの例は、
(6)第1光導波路取付け部201aに取り付けられた第1光ファイバ4a(第1光導波路)の、ハウジング側端面にある第1集光点への集塵
(7)第2光導波路取付け部201bに取り付けられた第2光ファイバ4b(第2光導波路)の、ハウジング側端面にある第2集光点への集塵
(8)反射部2の表面劣化
のそれぞれを抑制可能なガスを含むガスである。このようなガスは、第1実施形態と同様である。
【0061】
このようなスイッチ機能付光ファイバカプラ100bによれば、
(9)第1、第2集光点に付着した塵等に起因した光の散乱
(10)劣化した反射部2による光の乱反射
(11)散乱光及び乱反射光に基づく、ハウジング200の中での多重散乱の発生
等を、さらに抑制することができる。したがって、第1実施形態と同様に、動作的な観点及び構造的な観点に加え、光学的な観点からも高い耐久性を確保でき、第1入射動作及び第2入射動作の切り換えを、光学的な精度をも劣化させずに、長期間に及んで安定して継続させることができる。
【0062】
以上、この発明の実施形態のいくつかを説明したが、上記実施形態のいくつかは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この発明の実施形態は、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記いくつかの実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
100 :シャッター機能付光ファイバカプラ(第1実施形態)
100b:スイッチ機能付光ファイバカプラ(第2実施形態)
200 :ハウジング
201 :光導波路取付け部
201a:第1光導波路取付け部
201b:第2光導波路取付け部
202 :光吸収体取付け部
300 :レーザー装置(光源)
1 :集光部
11 :集光レンズ
2 :反射部
21 :反射面(ミラー面)
22 :駆動部材
220 :主平面
221 :側面
23 :先端部分
3 :駆動機構
31 :可動電極
311 :第1フィン状部位
32 :固定電極
321 :第2フィン状部位
4 :光ファイバ(光導波路)
4a :第1光ファイバ(第1光導波路)
4b :第2光ファイバ(第2光導波路)
5 :光吸収体
X :第1水平方向
Y :第2水平方向
Z :高さ方向
LL :光
LL1 :反射光
LL2 :未反射光
OA :光軸
θz :角度
θy :角度
Tz :厚み
V :電圧