(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】既設管渠の分岐部結合構造およびこれを用いた雨水侵入防止工法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/34 20060101AFI20240319BHJP
F16L 47/28 20060101ALI20240319BHJP
F16L 47/02 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B29C65/34
F16L47/28
F16L47/02
(21)【出願番号】P 2023131666
(22)【出願日】2023-08-10
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505102360
【氏名又は名称】株式会社トラストテクノ
(73)【特許権者】
【識別番号】595053777
【氏名又は名称】吉佳エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】大岡 太郎
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-100771(JP,A)
【文献】特開平10-089583(JP,A)
【文献】登録実用新案第3018961(JP,U)
【文献】特公昭48-39828(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/34
F16L 47/28
F16L 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管渠の本管と取付管の結合構造であって、
前記既設管渠の本管の内周面全周に渡り設けられたライニング材と、
前記既設管渠の本管から各建屋の排水管と接続するための分岐部に取り付けられる取付管と、
前記ライニング材に被覆された前記既設管渠の本管を除去し露出した前記ライニング材および前記取付管を結合するための継手要素とからなり、
前記継手要素は、前記既設管渠から露出した前記ライニング材の外周面に合致する形状のライニング材結合部、および前記取付管を接続するための円筒状の取付管結合部を含み、
前記ライニング材の少なくとも外表面層および前記ライニング材結合部は、ポリエチレン系樹脂を主成分とし、前記ポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化していることを特徴とする結合構造。
【請求項2】
前記継手要素の前記ライニング材結合部は、前記ライニング材との結合部分における前記既設管渠の本管断面が円弧形状であり、円弧の凸面に円筒状の前記取付管結合部が設けられ、円弧の凹面で前記ライニング材の外周面と結合する、請求項1に記載の結合構造。
【請求項3】
前記ライニング材結合部には、前記ライニング材との結合面に電熱線が埋設されている、請求項1に記載の結合構造。
【請求項4】
前記ライニング材結合部は、前記電熱線の発熱により前記ライニング材に含まれるポリエチレン系樹脂と前記継手要素の前記ライニング材結合部に含まれるポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化している、請求項3に記載の結合構造。
【請求項5】
前記継手要素に埋設された前記電熱線には通電装置が接続され、前記通電装置には、前記継手要素の種別毎に発熱条件および冷却条件がプログラムされている、請求項3に記載の結合構造。
【請求項6】
前記継手要素に埋設された前記電熱線には通電装置が接続され、前記通電装置には、前記継手要素の種別毎に発熱条件および冷却条件がプログラムされている、請求項4に記載の結合構造。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の結合構造を用いて、既設管渠の本管の分岐部と取付管を結合するための工法であって、
前記既設管渠の本管の内周面全周に渡り設けられたライニング材に被覆された前記既設管渠を除去する工程と、
前記除去工程により露出した前記ライニング材に継手要素のライニング材結合部を固定する工程と、
前記ライニング材と前記継手要素とを溶着させる工程と、
前記ライニング材における取付管接続部分を削孔する工程と、
前記ライニング材と溶着した前記継手要素の取付管結合部に前記取付管を結合する工程と、を含む工法。
【請求項8】
前記継手要素は、前記ライニング材結合部に埋設された電熱線が通電により発熱することで、前記ライニング材に含まれるポリエチレン系樹脂と、前記継手要素のライニング材結合部に含まれるポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化することを特徴とする、請求項7に記載の工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管渠の分岐部結合構造、およびこれを用いた雨水浸入防止工法に関する。
【背景技術】
【0002】
令和2年度末における全国の下水道管渠の総延長は約49kmで、標準耐用年数50年を経過した管渠の総延長はその5%である約2.5万kmにのぼる。そして10年後には8.2万km(総延長の17%)、20年後には19万km(総延長の39%)と、今後急速に増加することがわかっており、持続的な下水道機能確保のため、計画的な維持管理および改築が必要である。
【0003】
さらに近年、台風や突発的な集中豪雨により大きな水害が多発している。雨天時に老朽化や破損した汚水管へ雨水が浸入すると、地上に汚水があふれ出すなどの問題が引き起こされる。また、このような浸入箇所では雨の度に下水道処理場への流入量が増加し、下水道処理費用が高額になる。このような事態を防ぐために、雨天時浸入水を防ぐための対策が求められている。
【0004】
特許文献1は、水道管に分岐管等を設ける際に用いられる電気融着継手を開示している。ここで電気融着継手の鞍部と、合成樹脂製の水道管を溶着接合し、分岐管を接続する方法が記載されている。
しかしながら特許文献1は水道管が合成樹脂であることを記載しているに過ぎず、異なる樹脂同士を融着した際に十分な接合強度が得られず、浸入水を防ぐことが難しい。さらに、溶着するそれぞれの素材に応じた適切な加熱時間や加熱温度、そして冷却時間を検討しなければ十分な接合強度を担保した溶着を行うことができないという問題があった。
【0005】
特許文献2は、電熱線を埋設した合成樹脂製継手を開示しているが、本管に対し取付管を一直線上に取り付ける場合にしか適用できないため汎用性が低い。さらに異なる樹脂同士を融着した際に十分な接合強度が得られず、浸入水を防ぐことが難しいという問題や、溶着の際の加熱時間、加熱温度、冷却時間の管理が困難である問題についても依然解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-89583
【文献】特開2002-317894
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水道管の本管に継手要素を介して取付管を取り付ける際、継手要素と本管の溶着にあたり加熱時間や加熱温度、冷却時間の管理が困難であること、本管と継手要素が異なる素材であった場合に、雨天時浸入水を防ぐために十分な接合強度が得るのが難しいという技術的課題を解決するためになされたものである。本発明は、より短工期で簡単に構築可能であり、雨天時に分岐部からの浸入を高精度で防止できる下水管路の分岐部結合構造およびこれを用いた雨水侵入防止工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、既設管渠の本管と取付管の結合構造であって、前記既設管渠の本管の内周面全周に渡りに設けられたライニング材と、前記既設管渠の本管から各建屋の排水管と接続するための分岐部に取り付けられる取付管と、前記ライニング材に被覆された前記既設管渠の本管を除去し露出した前記ライニング材および前記取付管を接続するための継手要素とからなり、前記継手要素は、前記既設管渠から露出した前記ライニング材の外周面に合致する形状のライニング材結合部、および前記取付管を接続するための円筒状の取付管結合部を含み、前記ライニング材の少なくとも外表面層および前記ライニング材結合部は、ポリエチレン系樹脂を主成分とし、前記ポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化していることを特徴とする結合構造に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記継手要素の前記ライニング材結合部は、前記ライニング材との結合部分における前記既設管渠の本管断面が円弧形状であり、円弧の凸面に円筒状の前記取付管結合部が設けられ、円弧の凹面で前記ライニング材の外周面と結合する、請求項1に記載の結合構造に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記ライニング材結合部には、前記ライニング材との結合面に電熱線が埋設されている、請求項1に記載の結合構造に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記ライニング材結合部は、前記電熱線の発熱により前記ライニング材に含まれるポリエチレン系樹脂と前記継手要素の前記ライニング材結合部に含まれるポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化している、請求項3に記載の結合構造に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記継手要素に埋設された前記電熱線には通電装置が接続され、前記通電装置には、前記継手要素の種別毎に発熱条件および冷却条件がプログラムされている、請求項3に記載の結合構造に関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記継手要素に埋設された前記電熱線には通電装置が接続され、前記通電装置には、前記継手要素の種別毎に発熱条件および冷却条件がプログラムされている、請求項4に記載の結合構造に関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6に記載の結合構造を用いて、既設管渠の本管の分岐部と取付管を結合するための工法であって、前記既設管渠の本管の内周面全周に渡り設けられたライニング材に被覆された前記既設管渠を除去する工程と、前記除去工程により露出した前記ライニング材に継手要素のライニング材結合部を固定する工程と、前記ライニング材と前記継手要素とを溶着させる工程と、前記ライニング材における取付管接続部分を削孔する工程と、前記ライニング材と溶着した前記継手要素の取付管結合部に前記取付管を結合する工程と、を含む工法に関する。
【0015】
請求項8に係る発明は、前記継手要素は、前記ライニング材結合部に埋設された電熱線が通電により発熱することで、前記ライニング材に含まれるポリエチレン系樹脂と、前記継手要素のライニング材結合部に含まれるポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化することを特徴とする、請求項7に記載の工法に関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、既設管渠の本管と取付管の結合構造であって、前記既設管渠の本管の内周面全周に渡りに設けられたライニング材と、前記既設管渠の本管から各建屋の排水管と接続するための分岐部に取り付けられる取付管と、前記ライニング材に被覆された前記既設管渠の本管を除去し露出した前記ライニング材および前記取付管を接続するための継手要素とからなり、前記継手要素は、前記既設管渠から露出した前記ライニング材の外周面に合致する形状のライニング材結合部、および前記取付管を接続するための円筒状の取付管結合部を含み、前記ライニング材の少なくとも外表面層および前記ライニング材結合部は、ポリエチレン系樹脂を主成分とし、前記ポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化している結合構造を特徴とする。
本発明の特徴である結合構造は、本管内のライニング材のポリエチレン系樹脂と継手要素のライニング材結合部のポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化することで、取付管削孔部からの浸入水を確実に防ぐことができ、水漏れの虞がない。
このため、請求項1に係る結合構造は、既設管渠の本管の分岐部と取付管の結合部分においてより高い止水性を備えた構造を構築することが出来るという作用効果を奏する。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、前記継手要素の前記ライニング材結合部は、前記ライニング材との結合部分における前記既設管渠の本管断面が円弧形状であり、円弧の凸面に円筒状の前記取付管結合部が設けられ、円弧の凹面で前記ライニング材の外周面と結合することを特徴としているため、継手要素を介して容易に取付管を取り付けることが出来るという作用効果を奏する。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、前記ライニング材結合部には、前記ライニング材との結合面に電熱線が埋設されていることを特徴としているので、溶着のための加熱が容易になるという作用効果を奏する。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、前記ライニング材結合部は、前記電熱線の発熱により前記ライニング材に含まれるポリエチレン系樹脂と前記継手要素の前記ライニング材結合部に含まれるポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化していることを特徴としているので、同一素材を溶着し一体化することで強固に接合し高い止水性を備えるという作用効果を奏する。
【0020】
請求項5及び6に係る発明によれば、前記継手要素に埋設された前記電熱線には通電装置が接続され、前記通電装置には、前記継手要素の種別毎に発熱条件および冷却条件がプログラムされていることを特徴としているので、継手要素の種類に応じて最適な発熱および冷却を行うことが容易になり、溶着による強固な接合が可能になるという作用効果を奏する。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、請求項1乃至6に記載の結合構造を用いて、既設管渠の本管の分岐部と取付管を結合するための工法であって、前記既設管渠の本管の内周面全周に渡り設けられたライニング材に被覆された前記既設管渠を除去する工程と、前記除去工程により露出した前記ライニング材に継手要素のライニング材結合部を固定する工程と、前記ライニング材と前記継手要素とを溶着させる工程と、前記ライニング材における取付管接続部分を削孔する工程と、前記ライニング材と溶着した前記継手要素の取付管結合部に前記取付管を結合する工程とを含んでいるので、短工期で簡単に、止水性の高い結合構造を形成することができるという作用効果を奏する。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、前記継手要素は、前記ライニング材結合部に埋設された電熱線が通電により発熱することで、前記ライニング材に含まれるポリエチレン系樹脂と、前記継手要素のライニング材結合部に含まれるポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化することを特徴としているので、同一素材を溶着し一体化することで強固に接合し、高い止水性が得られるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る既設管渠の本管と取付管の結合構造を示す図である。
【
図2】本発明に係る結合構造の継手要素を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る結合構造の継手要素を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る工法の一実施形態において、取付管を接合する部分のライニング材を被覆する既設管渠を、除去した後の本管を示す図である。
【
図5】本発明に係る工法の一実施形態において、本管の取付管接続部分を削孔する工程の、削孔後の本管を示す図である。
【
図6】本発明に係る工法の一実施形態において、ライニング材に継手要素を固定する工程の、固定後の本管を示す図である。
【
図7】本発明に係る工法の一実施形態において、電熱線に通電しライニング材と継手要素とを溶着させる工程を示す図である。
【
図8】本発明に係る工法の一実施形態において、ライニング時と結合した継手要素に取付管を結合する工程の、結合後を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施形態に係る管路分岐部分への浸入水を防止する結合構造及び工法について詳述する。
【0025】
本明細書における管渠は、下水道管路の本管として例示しているが、これに限定されず、本発明に係る結合構造、継手要素及び工法は、例えば、工業用水用の管路、農業用水用の管路などにも適用可能である。また管渠の材質として、コンクリート管、陶管、塩化ビニル管などが挙げられるが、特定の材料に限定されない。
【0026】
<管渠内の本管と取付管の分岐部分の結合構造>
図1は、本発明の一実施形態である既設管渠の本管(1)の分岐部と取付管(3)の結合構造を示す図である。
既設管渠の本管(1)の分岐部と取付管(3)の結合構造であって、既設管渠の本管(1)の内周面全周に渡りに設けられたライニング材(2)と、既設管渠の本管(1)から各建屋の排水管と接合するための分岐部に取り付けられる取付管(3)と、ライニング材(2)に被覆された既設管渠の本管(1)を除去し露出したライニング材(2)および取付管(3)を接続するための継手要素(4)を示している。継手要素(4)は、既設管渠から露出したライニング材(2)の外周面に合致する形状のライニング材結合部(5)、および取付管(3)を接続するための円筒状の取付管結合部(6)とを含んでいる。
【0027】
ライニング材(2)の少なくとも外表面層およびライニング材結合部(5)はポリエチレン系樹脂を主成分としており、ポリエチレン系樹脂として例えば、ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖上低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンやEVA樹脂等が使用される。
【0028】
ライニング材(2)は、必ずしもそのもの全体の材質がポリエチレン系樹脂でなくてもよい。例えば、ライニング材の(一定の厚みをもつ)外表面層のみが、ポリエチレン系樹脂であればよい。ライニング材(2)におけるポリエチレン系樹脂の厚みは、1mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。
【0029】
図2は本発明の一実施形態である、電熱線(7)が埋設された継手要素を示す斜視図であり、
図3は本発明の一実施形態である、電熱線(7)が埋設された継手要素を示す断面図である。ここで用いられる加熱手段は、電熱線に限定されず、当業者が通常使用する他の加熱手段であっても構わない。
継手要素(4)のライニング材結合部(5)は、ライニング材(2)との結合部分における既設管渠の本管断面が円弧形状であり、円弧の凸面に円筒状の取付管結合部(6)が設けられ、円弧の凹面でライニング材(2)の外周面と結合している。
【0030】
<結合構造を用いて管渠の本管と取付管を接続する工法>
図4乃至8はそれぞれ、ライニング材(2)に継手要素(4)を介して取付管(3)を結合する工法を工程毎に示した図である。
【0031】
図4は、本発明に係る工法の一実施形態において、取付管(3)を接続する部分を被覆するライニング材(2)の既設管渠の本管(1)を除去する工程の、除去後の本管を示す。
【0032】
図5は、本発明に係る工法の一実施形態において、本管(1)の取付管接続部分を削孔する工程の、削孔後の本管を示す。
なお、ライニング材(2)の取付管接続部分は、継手要素(4)をライニング材(2)に固定する工程、およびライニング材(2)と継手要素(4)とを溶着させる工程を経た後に削孔しても良い。
【0033】
図6は、本発明に係る工法の一実施形態において、溶着時に継手要素(4)とライニング材(2)がずれることを防ぐため、固定具(8)を用いて継手要素(4)をライニング材(2)に固定する工程を示す。ライニング材結合部(5)をライニング材(2)の削孔位置に密着させ、固定具(8)をライニング材(2)に巻き付けることにより固定する。 ここで、固定具の一例としてラッシングベルトを用いた固定方法が挙げられるがこれに限定されず、固定方法は当業者が通常用いる固定方法であればよい。
【0034】
図7は、本発明に係る工法の一実施形態において、通電装置(9)からの電力をライニング材結合部(5)に埋設された電熱線(図示せず)に印可することで加熱し溶着を行う工程を示す。
通電装置(9)はコネクタ(10)を介して電熱線に接続され得る。一例として継手要素(4)にはライニング材(2)およびライニング材結合部(5)の素材や継手要素の種別毎にバーコードが付属し、そのバーコードをバーコードリーダーで読み取ることにより通電装置は素材に応じた加熱条件、冷却条件を選択しうる。加熱条件は設定電圧、溶着時間を含み得、冷却条件は冷却時間を含み得る。通電装置は表示画面を有していても良く、表示画面には加熱条件や冷却条件、設定溶着時間の残り時間が表示されてもよい。一実施例として通電装置はEFコントローラーELEKTRA(エレクトラ)1000(RITMO社製)を用いてもよい。電熱線および通電装置は、これらによる加熱手段以外の当業者が利用しうる加熱手段に代替可能である。
素材やライニング材管径に応じた時間および電圧で加熱を行うことにより、ライニング材(2)およびライニング材結合部(5)のポリエチレン系樹脂同士が溶着により一体化し、強固に接合される。
【0035】
図8は、本発明に係る工法の一実施形態において、自然冷却完了後、取付管結合部(6)に取付管(3)を結合する工程を示す。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の結合構造及び工法の効果を確認する試験例について詳細に説明する。
【0037】
継手要素のライニング材結合部とライニング材との接合強度および密着度を確認するため、耐衝撃試験、耐荷重試験および水密性試験を行った。
試験は、本発明の一実施例であるポリエチレン系樹脂を主成分とするライニング材および継手要素を用いて行われた。
【0038】
<耐衝撃試験1>
継手要素のライニング材結合部側面に対し、ハンマーを用いた打撃を加えた。結果、衝撃による剥離は見られなかった。
【0039】
<耐衝撃試験2>
継手要素のライニング材結合部底面に対し、バールを用いた打撃を加えた。結果、衝撃による剥離は見られなかった。
【0040】
<耐荷重試験>
継手要素側面より垂直方向に、110kgの荷重を加えた。結果、荷重による剥離は見られなかった。
【0041】
<水密性試験>
継手要素のライニング材結合部分とライニング材の間の溶着面内側の空間に注水し、溶着面の内側まで水を満たして0.05MPaおよび0.10MPaの水圧をそれぞれ3分間加え続けた。その後、継手要素のライニング材結合部外縁における溶着状態を確認した。
0.05MPaの内水圧を加えたが、溶着面の剥離および漏水は見られなかった。
0.10MPaの内水圧を加えたが、溶着面の剥離および漏水は見られなかった。
最後に継手要素とライニング材の接合部分を開口して確認した結果、溶着部分の剥離、破損、漏水は見られなかった。
以上の耐性試験により、継手要素とライニング材は高い接合強度および止水性を備えていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る結合構造は、下水道用管渠の他、工業用水用の管路、農業用水用の管路等、幅広い種類の管渠に適用可能であり、尚且つ本発明に係る工法は、管渠の分岐部分への浸入水を防止する結合構造を形成できることから、分岐部分への浸入水を防止するための管渠や既設管渠の更生工法として最適な管渠結合構造、継手要素及び工法を提供できる。
【符号の説明】
【0043】
1 既設管渠の本管
2 ライニング材
3 取付管
4 継手要素
5 ライニング材結合部
6 取付管結合部
7 電熱線
8 固定具
9 通電装置
10 コネクタ
【要約】
【課題】水道管の本管に継手要素を介して取付管を取り付ける際、本管と継手要素が異なる素材の場合、十分な接合強度を得るのが難しく、継手要素と本管の溶着時の加熱時間や加熱温度、冷却時間の管理が困難であった。
【解決手段】既設管渠の本管の内周面全周に渡りに設けられたライニング材と、既設管渠の本管の分岐部に取り付けられる取付管と、ライニング材に被覆された既設管渠の本管を除去し露出したライニング材および取付管を接続するための継手要素とからなり、継手要素は、既設管渠から露出したライニング材の外周面に合致する形状のライニング材結合部、および取付管を接続するための円筒状の取付管結合部を含み、ライニング材の少なくとも外表面層およびライニング材結合部は、ポリエチレン系樹脂を主成分とし、ポリエチレン系樹脂同士が溶着し一体化していることを特徴とする、結合構造並びにこれを用いた雨水浸入防止工法。
【選択図】
図1