(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】飲食物の製造装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/14 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A47J27/14 L
(21)【出願番号】P 2020164659
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000136642
【氏名又は名称】株式会社フロンティアエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 弘
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-155535(JP,A)
【文献】特開昭59-194745(JP,A)
【文献】特開2013-226084(JP,A)
【文献】実開昭61-56887(JP,U)
【文献】特開2006-6218(JP,A)
【文献】特開2019-76367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性の飲食物を加圧状態で加熱処理する飲食物の製造装置であって、
飲食物を案内する流路が形成された加熱チューブを備え、ポンプから吐出された飲食物を搬送しながら加熱する加熱ユニットと、
前記加熱ユニット内の飲食物に水頭圧力を加える加圧ユニットと、を有し、
前記加圧ユニットは、
上端流入口および下端流出口が設けられ上下方向を向いて配置され、前記上端流入口から飲食物が滴下され上流側の飲食物との連通を遮断する空間部が形成される非充填チューブと、
下端流入口および上端流出口が設けられ上下方向を向いて配置され、前記非充填チューブの前記下端流出口から吐出された飲食物が前記下端流入口から注入されて充填される充填チューブとからなる加圧チューブ対を、少なくとも一対備え、
前記充填チューブ内の飲食物の自重による水頭圧力を前記加熱ユニット内の飲食物に加える、飲食物の製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の飲食物の製造装置において、
前記加熱ユニットと前記加圧チューブ対との間に上下方向を向いて配置され、前記加熱ユニットから吐出された飲食物が供給される下端流入口および前記非充填チューブに飲食物を吐出する上端流出口が設けられ、内部に飲食物が充填される上流側充填チューブを有する、飲食物の製造装置。
【請求項3】
請求項2記載の飲食物の製造装置において、
前記上流側充填チューブは前記加圧チューブ対に対して上下方向の位置がずれている、飲食物の製造装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の飲食物の製造装置において、
加圧チューブ対を複数対備え、少なくとも一対の加圧チューブ対は他の加圧チューブ対に対して上下方向の位置がずれている、飲食物の製造装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の飲食物の製造装置において、
前記充填チューブと前記非充填チューブは、飲食物を間接的に冷却する冷却媒体が流れる冷却媒体流路を有し、それぞれのチューブにおいて飲食物を冷却する、飲食物の製造装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の飲食物の製造装置において、
前記非充填チューブ内の空間内に圧縮空気を供給し、前記非充填チューブ内の液面の位置を調整する空気供給配管を有する、飲食物の製造装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の飲食物の製造装置において、
前記加熱ユニットは、
複数のリング状の電極、およびそれぞれの前記電極の間に配置される絶縁性の複数の円筒体を有し、飲食物を案内する流路が形成された加熱チューブと、
前記電極に電力を供給し、流路を流れる飲食物にジュール熱を発生させる電源ユニットと、を有し、飲食物をジュール熱により加熱する、飲食物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性の飲食物を加圧状態のもとで加熱する加熱ユニットを備えた飲食物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュースやスープ等の流動性の飲食物を搬送しながら、調理温度や殺菌温度にまで加熱処理して飲食物を製造するために、加熱ユニットが使用されている。飲食物が供給されたタンクと加熱ユニットとの間には配管が接続され、配管に設けられたポンプにより飲食物は加熱ユニットに供給される。加熱ユニットにおいて飲食物を100℃以上の温度に加熱するには、加熱ユニット内の圧力を大気圧以上に高める必要がある。そのためには、加熱ユニットよりも下流側の配管に設けられた絞り弁により、加熱ユニット内の圧力を調整する必要がある。
【0003】
しかしながら、固形物を含む流動性の飲食物は、固形物が絞り弁を通過できなかったり、通過させると固形物が砕かれてしまったりするので、固形物を含む飲食物は絞り弁を備えた加熱装置により連続的に搬送しながら加熱処理することはできない。固形物を含む流動性の飲食物としては、コーン粒を含むコーンスープ等の液体スープ、球状に加工したタピオカを含むタピオカティー、果肉片を含むフルーツジュース、カレーやシチュー等の調理ソースがある。
【0004】
さらに、互いに溶け合わない二種類の液体を有する飲食物であっても、加熱ユニットよりも下流側に絞り弁を設けて、加熱ユニット内の圧力を大気圧以上に高めて加熱すると、絞り弁を通過する際に、一方の液体が他方の液体に分散し、乳化液ないし乳濁液となることがある。例えば、油分とエキス分とからなるラーメンスープを、100℃以上の温度で加熱するために、絞り弁を通過させると、油分がエキス分に分散して乳化つまりエマルジョン化される。しかし、ラーメンスープは加熱処理後に乳化液となると、見た目や味が乳化前よりも変化してしまう。このため、ラーメンスープ等のように、互いに溶け合わない少なくとも二種類の液体を有する飲食物においては、加熱しても液体が互いに溶け合わないで分離した状態で保持することが、見た目などの品質を維持するために必要な場合がある。
【0005】
特許文献1は、液体調理ソースを100℃以上の温度で加熱処理するチューブ状殺菌機を備えた調理ソースの製造装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した調理ソースの製造装置においては、チューブ状殺菌器には背圧用タンクが接続されており、背圧用タンク内に流入した飲食物である液体ソースは背圧用タンクに供給される圧縮空気により加圧され、殺菌機の液体ソースには背圧用タンクにより一定の背圧が加えられる。
【0008】
このように、背圧用タンクに液体ソースを供給し、液体ソースに加えられる圧縮空気の圧力により背圧を制御する方式では、背圧用タンクから充填機に液体ソースを供給するに従って背圧用タンク内の液面が変動するので、背圧タンク内の液体ソースの液面の変動に追従するように、圧力調整を行う必要がある。このため、背圧タンクの背圧制御を高精度に行う必要があるという問題点がある。
【0009】
本発明の目的は、配管内の飲食物の水頭圧力を利用することにより、飲食物を加圧し得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の飲食物の製造装置は、流動性の飲食物を加圧状態で加熱処理する飲食物の製造装置であって、飲食物を案内する流路が形成された加熱チューブを備え、ポンプから吐出された飲食物を搬送しながら加熱する加熱ユニットと、前記加熱ユニット内の飲食物に水頭圧力を加える加圧ユニットと、を有し、前記加圧ユニットは、上端流入口および下端流出口が設けられ上下方向を向いて配置され、前記上端流入口から飲食物が滴下され上流側の飲食物との連通を遮断する空間部が形成される非充填チューブと、下端流入口および上端流出口が設けられ上下方向を向いて配置され、前記非充填チューブの前記下端流出口から吐出された飲食物が前記下端流入口から注入されて充填される充填チューブとからなる加圧チューブ対を、少なくとも一対備え、前記充填チューブ内の飲食物の自重による水頭圧力を前記加熱ユニット内の飲食物に加える。
【発明の効果】
【0011】
加熱ユニットの下流側に配置された加圧ユニットは、非充填チューブと充填チューブとからなる加圧チューブ対を備えており、充填チューブ内に満たされた流動性の飲食物の水頭圧力が非充填チューブ内の空間部を介して上流側の加熱ユニットに加えられる。これにより、加熱ユニット内の飲食物を大気圧以上に加圧することができ、飲食物を100℃以上に加熱することができる。非充電チューブとこれの下流側に接続される充填チューブからなる加圧チューブ対を追加することにより、充填チューブ内の飲食物の水頭圧力により加熱ユニットに加えられる水頭圧力を高めることができる。これにより、固形物を含む流動性の飲食物を、固形物を砕くことなく、所望の温度まで加熱することができる。さらに、互いに溶け合わない二種類の液体を有する飲食物を乳化させることなく、飲食物を構成する複数種類の液体を互いに溶け合わないで分離した状態として加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態である飲食物の製造装置を示す概略図である。
【
図2】
図1に示された加熱ユニットを構成する3本の加熱チューブの1つを示す拡大断面図である。
【
図5】加圧ユニットの他の変形例を示す概略図である。
【
図6】加圧ユニットのさらに他の変形例を示す概略図である。
【
図7】飲食物の製造装置の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、流動性の飲食物の製造装置を示す概略図である。流動性の飲食物としては、例えば、コーン粒を含むコーンスープ等の液体スープ、球状に加工したタピオカを含むタピオカティー、果肉片を含むフルーツジュース、野菜片、肉片を含むカレーやシチュー等の調理ソース等がある。さらに、流動性の飲食物としては、ラーメンスープのように、互いに溶け合わない二種類の液体を有する飲食物を乳化させることなく、飲食物を構成する複数種類の液体を互いに溶け合わないで分離した状態として加熱することが必要なものがある。このような、流動性の飲食物は加熱ユニットにより加熱処理された後に、冷却処理されて製品化される。
【0014】
図1に示されるように、製造装置10は、予め流動状態に調合されて固形物を含む飲食物、または、互いに溶け合わないで分離した状態に保持する必要がある飲食物が投入されるタンク11と、タンク11から連続的に供給される飲食物Fを搬送しながら加熱処理する加熱ユニット12とを有している。タンク11から加熱ユニット12に飲食物を供給する接続配管13aには、ポンプ14が設けられており、ポンプ14によりタンク11内の飲食物は加熱ユニット12に加圧供給される。ポンプ14としては、飲食物に含まれる固形物を砕かないように、例えば、モーノポンプ等が使用される。ポンプ14が基盤面Bに据え付けられているとすると、タンク11および加熱ユニット12は図示しない支持部材により、ポンプ14よりも高い位置に配置されている。
【0015】
加熱ユニット12はそれぞれ飲食物を案内する流路が形成された3本の加熱チューブ15を有し、加熱チューブ15は相互に接続配管13bにより接続されている。飲食物は上流側の加熱チューブ15から順次温度が高められ、最終段の3本目の加熱チューブ15により、殺菌温度として設定される温度まで加熱される。加熱ユニット12を構成する加熱チューブ15の本数は、3本に限られることなく、飲食物の種類に応じて、任意の本数とすることができる。
【0016】
加熱ユニット12は接続配管13cによりホールドユニット16に接続されており、ホールドユニット16により、加熱後の飲食物は加熱温度に保持された状態で搬送されながら、ホールドユニット16に所定時間保持される。ホールドユニット16は、それぞれ飲食物を案内する流路が形成された2本のホールドチューブ17を有し、2本のホールドチューブ17は接続配管13dにより相互に接続されている。ホールドユニット16を構成するホールドチューブ17の本数は、2本に限られることなく、任意の本数とすることができる。ホールドユニット16は加熱ユニット12よりも高い位置となって、図示しない支持部材により配置されている。
【0017】
それぞれの接続配管13a~13dは、加熱チューブ15の流路23と同様の内径の流路を有しているが、
図1においては、それぞれ1本の線により示されている。
【0018】
図2は
図1に示された加熱ユニット12を構成する3本の加熱チューブ15の1つを示す拡大断面図であり、加熱チューブ15は複数のリング状の通電用の電極21とこれらの間に配置される複数の円筒体22とを有し、内部に飲食物を案内する流路23が形成されている。それぞれの電極21はチタンやステンレス等の導体により形成され、それぞれの円筒体22は樹脂等の絶縁性の材料により形成されている。加熱チューブ15の両端部には流入側と流出側のジョイント部材24、25が設けられ、それぞれのジョイント部材24、25と円筒体22との間にはリング状のアース用の電極26が配置されている。
【0019】
電極21には電源ユニット27がケーブルを介して接続されており、飲食物の流れる方向に隣り合って対をなす電極21が相互に逆極性とするように電源ユニット27から電極21に高周波電流が供給される。電源ユニット27から電極21に供給される電力により、流路23内を流れる飲食物はジュール熱を発生し、ジュール熱により飲食物は加熱される。
図2に示す加熱チューブ15は5つの電極21を有しているが、1本の加熱チューブ15を構成する電極21の数は、飲食物の種類等に応じて任意に設定される。
【0020】
ジュール熱により飲食物を加熱する加熱チューブ15としては、
図2に示したリング状の電極を用いた形態のみならず、絶縁性の横断面が四角形の加熱チューブの内面に相互に対向させて板状の電極を配置した形態の加熱チューブを使用することもできる。
【0021】
図3は加熱ユニットを構成する加熱チューブ15の変形例を示す断面図である。この加熱チューブ15は、内側チューブ31と外側チューブ32の二重管構造であり、内側チューブ31により飲食物を案内する流路33が形成され、内側チューブ31と外側チューブ32の間には媒体循環室34が形成されている。媒体循環室34に加熱媒体Mを供給するために、加熱媒体Mを収容する媒体タンク35は、供給配管36により媒体循環室34に接続されている。媒体タンク35内の加熱媒体Mはポンプ37により媒体循環室34に供給され、流路33を流れる飲食物は、内側チューブ31を介して間接的に加熱される。加熱媒体Mとしては、加熱された液体や蒸気が使用される。
【0022】
コーン粒を含むコーンスープ等のように、固形物を含む飲食物F、または、ラーメンスープのように互いに溶け合わない二種類の液体を有する飲食物Fは、ポンプ14により加熱ユニット12に供給され、加熱ユニット12において殺菌温度にまで加熱される。100℃以上の温度を殺菌温度ないし調理温度として、飲食物を加熱処理するために、加熱ユニット12を構成する加熱チューブ15の流路内の圧力は大気圧以上の圧力に設定される。そのために、ホールドユニット16の下流側には、
図1に示されるように、加圧ユニット40が配置されている。加熱ユニット12よりも下流側に絞り弁を設けることにより、流路を絞って加熱ユニット12内の圧力を大気圧以上に設定することなく、加圧ユニット40により加熱ユニット12内の温度を100℃以上に高めることができる。これにより、絞り弁に飲食物を通過させることがなく、飲食物に含まれる固形物が砕かれたり破損したりすることがない。さらに、互いに溶け合わない二種類の液体を乳化させることなく、加熱することができ、加熱後においても液体を分離した状態に保持することができる。
【0023】
図1に示す加圧ユニット40は、上流側充填チューブ41を有し、さらに非充填チューブ42と充填チューブ43とからなり上流側充填チューブ41に対して下流側に配置される一対の加圧チューブ対44aとを有している。
【0024】
上流側充填チューブ41の下端部には下端流入口45が設けられ、上端部には上端流出口46が設けられている。下端流入口45と上端流出口46との間の流路は飲食物により満たされる充填流路47となっており、充填流路47内の飲食物Fは、ホールドユニット16を介して加熱ユニット12内の飲食物に連なった状態となっている。下端流入口45は接続配管13eによりホールドユニット16の吐出口に接続され、加熱ユニット12により加熱処理された飲食物は、ホールドユニット16を介して上流側充填チューブ41の下端部から注入され、上方に向けて立ち上がるように充填される。このように、上流側充填チューブ41は立ち上がりチューブとなっている。
【0025】
加圧チューブ対44aの非充填チューブ42の上端部には上端流入口51が設けられ、下端部には下端流出口52が設けられている。上端流入口51と下端流出口52との間の流路は、飲食物Fが溜められる下側の貯留部53とそれよりも上側の空間部54とを形成している。上端流入口51は上側接続配管55により上端流出口46に接続されており、上側接続配管55の位置は、加熱ユニット12およびホールドユニット16の位置よりも高い位置に設定されている。上流側充填チューブ41から吐出された流動性の飲食物は、上端流入口51から液滴状となって非充填チューブ42内に滴下され、空間部54を通過して貯留部53に溜められる。このように、非充填チューブ42は立ち下がりチューブとなっている。
【0026】
空間部54には飲食物が充満されないので、上流側充填チューブ41の充填流路47内の飲食物Fと貯留部53内の飲食物Fは、連なった状態とはならず、
図1に示されるように、空間部54により連通が遮断され、分断される。符号Sは、貯留部53の飲食物Fの液面である。
【0027】
加圧チューブ対44aの充填チューブ43は、非充填チューブ42の下流側に配置されている。充填チューブ43の下端部には下端流入口56が設けられ、上端部には上端流出口57が設けられており、下端流入口56と上端流出口57との間の流路は飲食物により満たされる充填流路58となっている。このように、充填チューブ43は上流側充填チューブ41と同様の構造である。下端流入口56は下側接続管59により非充填チューブ42の下端流出口52に接続されている。したがって、貯留部53内の飲食物は、立ち下がるように、非充填チューブ42の下端流出口52から吐出され、充填チューブ43の下端流入口56から充填流路58に注入され、上方に向けて立ち上がるように充填流路58に充填される。このように、充填チューブ43は上流側充填チューブ41と同様に立ち上がりチューブとなっている。
【0028】
上流側充填チューブ41の上側接続配管55の位置を含めたポンプ14の吐出口からの高さをH1とすると、この長さH1の飲食物Fの重量エネルギーが圧力水頭ないし水頭圧力として、上流側充填チューブ41よりも上流側の部分、つまりホールドユニット16および加熱ユニット12内の飲食物Fに加えられる。これにより、加熱ユニット12内の飲食物には上流側充填チューブ41の水頭圧力が加えられ、加熱ユニット12内は大気圧よりも高くなる。
【0029】
さらに、空間部54が形成される非充填チューブ42を介して充填チューブ43が上流側充填チューブ41に接続されているので、充填流路58内に充満された飲食物の自重による重量エネルギーが水頭圧力として、非充填チューブ42を介して上流側充填チューブ41内の飲食物に加えられる。これにより、上流側充填チューブ41と充填チューブ43内の飲食物の合計の水頭圧が加圧ユニット40よりも上流側の飲食物に加えられる。ポンプ14は、水頭圧力に抗して飲食物を加熱ユニット12に向けて吐出する。
【0030】
空間部54には、充填チューブ43の飲食物の水頭圧力が加わるので、その圧力を上流側充填チューブ41の飲食物に伝達するとともに、貯留部53と空間部54の境界面である液面Sが非充填チューブ42の内部に形成されるように、空間部54内の圧力が設定される。非充填チューブ42内に圧縮空気を供給して空間部54内の圧力を調整するために、上側接続配管55には空気供給配管48が設けられ、空気供給配管48には開閉バルブ49が設けられている。空間部54内の空気の圧力により、液面Sは上端流入口51よりも下側の位置と、下端流出口52との間に設定される。
【0031】
非充填チューブ42の内部にも飲食物を充満させて、3本のチューブ41~43を全て充填チューブとして、全てのチューブ内に飲食物が連なった状態とすると、チューブ41内の飲食物による水頭圧力は、次の下流側のチューブ42内の飲食物による自重により相殺されることになり、3本目のチューブ43内の飲食物の自重による水頭圧力が加熱ユニット12内に加わるのみである。これに対して、2本の充填チューブ41、43の間に非充填チューブ42を配置すると、2本の充填チューブ41、43内の飲食物の自重による水頭圧力を加熱ユニット12に加えることができる。
【0032】
接続配管13eに圧力計P1を設け、下側接続管59に圧力計P2を設けて、それぞれの圧力を測定したところ、圧力計P1の測定値は、圧力計P2の測定値の約2倍であった。
【0033】
このように、同一寸法の3本のチューブを連結することにより、加熱ユニット12内の圧力を大気圧以上に高めることができるので、固形物を含む流動性の飲食物を、固形物を砕いたり、破壊したりすることなく、100℃以上の温度に加熱することができ、さらに液体を乳化させることなく、加熱することができる。なお、上側接続配管55および下側接続管59は、非充填チューブ42と充填チューブ43の内径と同様の内径の流路を有しているが、
図1および
図4においては、それぞれ1本の線により示されている。
【0034】
例えば、それぞれのチューブ41~43における上述した高さH1を約2mとし、それぞれに水を流すようにした場合には、合計約4m分の水頭圧力を加熱ユニット12に加えることができる。水頭圧力は、高低差が1mにつき、約0.01MPa上昇する。流動性を有する飲食物は、流路内の抵抗や粘性により水頭圧力は影響を受けるが、水よりも重量が大きく、水頭圧力は水の場合よりも高くなる。液体スープ等の流動性を有する飲食物についても、上下方向の長さに応じた自重による静水圧力を水頭圧力とする。
【0035】
それぞれのチューブ41~43の長さを
図1に示した場合と同一としても、加熱ユニット12よりも高い位置に加圧ユニット40を配置すると、水頭圧力を
図1に示した場合よりも高くすることができる。例えば、加熱ユニット12を建物の一階に設置し、加圧ユニット40を建物の二階に設置したり、三階に設置したりすると、水頭圧力を高くすることができる。
【0036】
図1に示した加圧ユニット40は、上流側充填チューブ41と、非充填チューブ42および充填チューブ43とからなる一対の加圧チューブ対44aとを備えているが、接続配管13eを非充填チューブ42の上端流入口51に接続すると、上流側充填チューブ41を省略することができる。その場合は、加熱チューブ対を一対備えた加圧ユニット40となり、加熱ユニット12に加えられる水頭圧力は、1本の充填チューブ43のみとなる。
【0037】
加圧チューブ対を少なくとも一対備えていれば、流路を絞ることなく、加熱ユニット12内の圧力を大気圧以上にすることができ、複数対備えた加圧ユニット40とすると、水頭圧力を高めて加熱ユニット12内の圧力をさらに高めることができる。
【0038】
図4は加圧ユニット40の変形例を示す概略図であり、この加圧ユニット40は、複数の加圧チューブ対44a~44nを有している。それぞれの加圧チューブ対44b~44nの構造は、上述した加圧チューブ対44aと同一であり、加圧チューブ対44bは、非充填チューブ42とこれに接続される下流側の充填チューブ43とを備えている。非充填チューブ42の上端部には上端流入口51が設けられ、下端部には下端流出口52が設けられている。上端流入口51と下端流出口52との間の流路は、飲食物が溜められる下側の貯留部53とそれよりも上側の空間部54とを形成している。上端流入口51は上側接続配管55により上端流出口57に接続されており、加圧チューブ対44aの充填チューブ43から吐出した流動性の飲食物は、加圧チューブ対44bの上端流入口51から液滴状となって非充填チューブ42内に滴下され、空間部54を通過して貯留部53に溜められる。
【0039】
加圧チューブ対44bの充填チューブ43の下端部には下端流入口56が設けられ、上端部には上端流出口57が設けられており、下端流入口56と上端流出口57との間の流路は飲食物により満たされる充填流路58となっている。下端流入口56は下側接続管59により非充填チューブ42の下端流出口52に接続されている。したがって、加圧チューブ対44bにおいて、貯留部53内の飲食物は、立ち下がるように、非充填チューブ42の下端流出口52から吐出され、充填チューブ43の下端流入口56から充填流路58に供給され、上方に向けて立ち上がるように充填流路58に充填される。
【0040】
図4に示される加圧チューブ対44bの上下方向の位置は、加圧チューブ対44aの上下方向の位置とほぼ同一になって示されているが、それぞれの上下方向位置を相互にずらしても良い。非充填チューブ42と充填チューブ43はほぼ同一長さに設定されているが、長さを相違させても良く、上下の位置をずらしても良い。同様に、加圧チューブ対44a、44bを構成する非充填チューブ42と充填チューブ43の長さを相違させても良く、これらの上下の位置をずらしても良い。
【0041】
加圧チューブ対44bは、加圧チューブ対44aの充填チューブ43の上端部に接続される非充填チューブ42と、この非充填チューブ42の下端部に接続される充填チューブ43とを有している。非充填チューブ42の空間部54には、加圧チューブ対44aの非充填チューブ42と同様に、飲食物が充満されないので、加圧チューブ対44aの充填チューブ43の充填流路58内の飲食物と、加圧チューブ対44bの貯留部53の飲食物は、連なった状態とはならず、
図4に示されるように、連通が遮断され、空間部54により分断される。
【0042】
加圧チューブ対44bの充填チューブ43の充填流路58には飲食物が充填されるので、充填チューブ43内の飲食物の重量エネルギーが水頭圧力として、加圧チューブ対44aの水頭圧力に付加される。したがって、上流側充填チューブ41に加えて、二対の加圧チューブ対44a、44bを備えた加圧ユニット40においては、合計3本の充填チューブつまり上流側充填チューブ41と、2本の充填チューブ43の内部の飲食物の重量による水頭圧力が加熱ユニット12内に加えられる。
【0043】
このように二対の加圧チューブ対44a、44bを備えた加圧ユニット40においては、合計5本のチューブが設けられている。非充填チューブ42の内部にも飲食物を充満させて、5本のチューブを全て充填チューブとして、全てのチューブ内の飲食物が連なった状態とすると、上流側の4本のチューブの水頭圧力は相殺され、5本目のチューブ43つまり加圧チューブ対44bの充填チューブ43内の飲食物の自重による水頭圧力が加熱ユニット12内に加わるのみである。これに対して、
図4に示されるように、充填チューブと非充填チューブとを交互に接続すると、3本の充填チューブ内の飲食物の自重による合計の水頭圧力を加熱ユニット12に加えることができる。
【0044】
加圧チューブ対44bの非充填チューブ42内に圧縮空気を供給して空間部54内の圧力を調整するために、上側接続配管55には、加圧チューブ対44aの上側接続配管55と同様に、空気供給配管48が設けられ、空気供給配管48には開閉バルブ49が設けられている。これにより、液面Sは上端流入口51よりも下側の位置と、下端流出口52との間に設定される。なお、空気供給配管48をそれぞれ非充填チューブ42に取り付けて、空間部54に直接圧縮空気を供給するようにしても良い。
【0045】
一対の加圧チューブ対は、非充填チューブ42とこれの下流側に接続される充填チューブ43とにより構成される。複数対の加圧チューブ対を設けると、加熱ユニット12に加えられる水頭圧力を高めることができる。
図4において、加圧チューブ対44nは、第1番目の加圧チューブ対44aに順次連結されたn番目の加圧チューブ対を示し、第3番目から第n-1番目の加圧チューブ対が省略されている。加圧チューブ対44nの構造は、加圧チューブ対44a、44bの構造と同一であり、共通性を有する部材には同一の符号が付されている。
【0046】
加圧チューブ対44a~44nの下側接続管59にそれぞれ圧力計P3~Pnを設けて、それぞれの圧力を測定したところ、圧力計P3の測定値は、加圧チューブ対44b~44nの数の充填チューブ43の合計の水頭圧力の値であり、圧力計P2の測定値は圧力計P3の測定値に加圧チューブ対44aの充填チューブ43の水頭圧力を加えた値であり、圧力計P1の測定値は圧力計P2の測定値に上流側充填チューブ41の水頭圧力を加えた値であった。
【0047】
加圧ユニット40は、加熱ユニット12において所定の温度にまで加熱された飲食物を冷却するための冷却ユニットとして利用することができる。それぞれの充填チューブ41、43と非充填チューブ42は、二重管により形成されており、それぞれのチューブには冷却媒体が流れる冷却媒体流路61が形成されており、冷却媒体供給管62により、上流側のチューブから下流側のチューブの冷却媒体流路61に向けて冷却液等の冷却媒体が供給される。これにより、加圧ユニット40内を流れる飲食物は、冷却媒体によりチューブの管壁を介して間接的に冷却される。冷却された飲食物は、製品供給管63により、包装工程等に搬送される。
図1に示すように、加圧ユニット40を上流側充填チューブ41と一対の加圧チューブ対44aのみとする場合には、加圧チューブ対44aの充填チューブ43の上端流出口57に製品供給管63が接続される。
【0048】
加圧チューブ対の数を多くした場合であって、上流側の加圧チューブ対において製品化可能な温度まで冷却されるのであれば、飲食物の種類によっては、上流側の加圧チューブ対のみに冷却媒体を供給すようにもできる。ただし、加圧ユニット40の前後に冷却ユニットを配置する場合には、加圧ユニット40において飲食物を冷却する必要はない。
【0049】
図5は加圧ユニット40の変形例であり、上流側充填チューブ41と、加圧チューブ対44aとの上下の位置がずれている。このように、上下の位置をずらすと、それぞれのチューブの長さ自体を
図1に示したチューブと同一としても、上流側充填チューブ41の内部の飲食物の自重による水頭圧力と、充填チューブ43の内部の飲食物の自重による水頭圧力とを、それぞれ高さH2の飲食物の重量エネルギーとすることができる。
【0050】
図5に示されるように、非充填チューブ42には飲食物Fの液面Sを検出するために、下側の液面センサ64と、上側の液面センサ65が設けられている。それぞれの液面センサ64、65は、例えば、飲食物Fを検出するとオン信号を出力し、検出しないときにはオフ信号を出力する。両方の液面センサ64、65がオフ信号を出力しているときは、液面Sが液面センサ64の位置よりも下側となっている状態であり、空間部54内の空気の圧力を下げるために、空間部54内の空気は外部に排出される。一方、両方の液面センサ64、65がオン信号を出力しているときは、液面Sが液面センサ65の位置よりも上側となっている状態であり、空間部54内の空気の圧力を高めるために、空間部54内に圧縮空気が供給される。
図5に示されるように、液面Sが両方の液面センサ64、65の間の位置となっているときには、空間部54内の圧力はその時の状態に保持される。
【0051】
空間部54内の液面Sの位置を検出して、液面Sを所定の範囲内に保持する形態としては、
図5に示した形態に限られず、1つの液面センサにより液面Sを検出するようにしても良い。
図1および
図4に示した加圧ユニット40においても同様の液面センサを設けて液面Sの位置を保持することができる。
【0052】
図6はさらに他の加圧ユニット40の変形例であり、上流側充填チューブ41と加圧チューブ対44aに対して、加圧チューブ対44bは上下方向の位置がずれており、一対の加圧チューブ対44bは他の加圧チューブ対44aに対して上下方向の位置がずれている。この場合には、上流側充填チューブ41と2本の充填チューブ43からなる3本のチューブの内部の飲食物の自重による水頭圧力を、それぞれ高さH2の飲食物の重量エネルギーとすることができる。
【0053】
図7は製造装置10の変形例を示す概略図であり、加熱ユニット12は1つの加熱チューブ15により形成されている。さらに、ホールドユニット16も1つのホールドチューブ17により形成されており、ホールドチューブ17はほぼ垂直に配置されている。加圧ユニット40は、上述した上流側充填チューブ41を有しておらず、1つの加圧チューブ対44aにより形成されている。このように、充填チューブ43の充填流路58に充満された飲食物の自重による重量エネルギーが、非充填チューブ42の空間部54およびホールドチューブ17内の飲食物を介して加熱ユニット12内の飲食物に加えられる。さらに、加熱ユニット12を構成する加熱チューブ15の数は飲食物に応じて任意に設定することができ、ホールドチューブ17の数も任意に設定することができる。
【0054】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、非充填チューブ42と充填チューブ43は同一内径となっているが、相互に内径を相違させても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 製造装置
11 タンク
12 加熱ユニット
14 ポンプ
15 加熱チューブ
16 ホールドユニット
21 電極
22 円筒体
23 流路
27 電源ユニット
31 内側チューブ
32 外側チューブ
33 流路
34 媒体循環室
35 媒体タンク
36 供給配管
37 ポンプ
40 加圧ユニット
41 上流側充填チューブ
42 非充填チューブ
43 充填チューブ
44a~44n 加圧チューブ対
48 空気供給配管
51 上端流入口
52 下端流出口
53 貯留部
54 空間部
55 上側接続配管
56 下端流入口
57 上端流出口
58 充填流路
59 下側接続管
61 冷却媒体流路
62 冷却媒体供給管
63 製品供給管
64,65 液面センサ