(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】放射線検出器およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240319BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240319BHJP
【FI】
G01T1/20 L
G01T1/20 G
G01T1/20 E
A61B6/42 500S
(21)【出願番号】P 2020172898
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】500561263
【氏名又は名称】株式会社ジョブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲さき▼ 雅志
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-282018(JP,A)
【文献】特開2006-329905(JP,A)
【文献】特開2009-148547(JP,A)
【文献】特開2004-340667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
A61B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞を有するケースと、このケースの内部に配置されていて放射線を検出する放射線検出素子と、この放射線検出素子から得られる信号を処理して電気信号として出力する半導体素子とを備える放射線検出器において、
一軸方向に沿って移動可能な状態で前記ケースの内部に配置される前記放射線検出素子と、前記ケースの外部に配置されていて動力を発生させる駆動機構と、この駆動機構と前記放射線検出素子とを連結する状態で配置されて前記放射線検出素子を前記ケースの内部で一軸方向に沿って移動させる構成を有する伝達機構とを備えることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記半導体素子が、前記放射線検出素子に固定されていて、前記放射線検出素子とともに一軸方向に沿って移動可能な状態で前記ケースの内部に配置される構成を有する請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記ケースに連結される中空のパイプを備えていて、前記伝達機構が前記パイプの内部に配置される構成を有する請求項1または2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記ケースが内壁面に形成される案内溝を有していて、
一軸方向に沿って移動する前記放射線検出素子を直接または間接に案内する構成を前記案内溝が有する請求項1~3のいずれかに記載の放射線検出器。
【請求項5】
放射線が照射される際に前記放射線検出素子を移動させる制御機構を備える請求項1~4のいずれかに記載の放射線検出器。
【請求項6】
内部に空洞を有するケースと、このケースの内部に配置されていて放射線を検出する放射線検出素子と、この放射線検出素子から得られる信号を処理して電気信号として出力する半導体素子とを備える放射線検出器の制御方法において、
前記ケースの内部に配置されている前記放射線検出素子と前記ケースの外部に配置されている駆動機構とが予め伝達機構により連結されていて、
前記伝達機構に連結されている前記放射線検出素子が、前記ケースの外部の前記駆動機構から伝達される動力により一軸方向に沿って移動しつつ、照射される放射線の検出を行なうことを特徴とする放射線検出器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を検出する放射線検出器およびその製造方法に関するものであり、詳しくは製造コストを抑制できる放射線検出器およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器が種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、口内に配置される歯科用の放射線検出器の構成が開示されている。この放射線検出器は、放射線が入射すると発光するシンチレータと、このシンチレータから得られる光信号を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサとを有している。
【0003】
断層撮影などを行わない場合、すなわち放射線検出器と被写体との相対位置関係が撮影時に変化しない、いわゆる単純撮影が行われている。医療では一般撮影とも呼ばれている。一度の撮影操作で一枚の放射線画像を取得することは、単純撮影または一般撮影と呼ばれていた。単純撮影ではシンチレータやイメージセンサは撮影範囲と同じ面積を持ち、これに対応可能な高価なシンチレータや高価なCCDイメージセンサの使用量(面積)が増大する。放射線検出器の製造コストが増大する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は製造コストを抑制できる放射線検出器およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための放射線検出器は、内部に空洞を有するケースと、このケースの内部に配置されていて放射線を検出する放射線検出素子と、この放射線検出素子から得られる信号を処理して電気信号として出力する半導体素子とを備える放射線検出器において、一軸方向に沿って移動可能な状態で前記ケースの内部に配置される前記放射線検出素子と、前記ケースの外部に配置されていて動力を発生させる駆動機構と、この駆動機構と前記放射線検出素子とを連結する状態で配置されて前記放射線検出素子を前記ケースの内部で一軸方向に沿って移動させる構成を有する伝達機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記の目的を達成するための放射線検出器の制御方法は、内部に空洞を有するケースと、このケースの内部に配置されていて放射線を検出する放射線検出素子と、この放射線検出素子から得られる信号を処理して電気信号として出力する半導体素子とを備える放射線検出器の制御方法において、前記ケースの内部に配置されている前記放射線検出素子と前記ケースの外部に配置されている駆動機構とが予め伝達機構により連結されていて、前記伝達機構に連結されている前記放射線検出素子が、前記ケースの外部の前記駆動機構から伝達される動力により一軸方向に沿って移動しつつ、照射される放射線の検出を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放射線検出素子が移動可能に構成されるため、ケースよりも小さく構成される放射線検出素子でケースと同等の範囲で放射線を検出できる。より小さい放射線検出素子を採用できるため、放射線検出器の製造コストを抑制するには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】放射線検出器を斜視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の放射線検出器の内部構造を例示する説明図である。
【
図3】
図2の放射線検出器をAA矢視で例示する説明図である。
【
図4】
図3の放射線検出器をBB矢視で例示する説明図である。
【
図5】
図3の放射線検出素子の変形例を例示する説明図である。
【
図6】
図4の放射線検出器の変形例を例示する説明図である。
【
図7】
図4の放射線検出器をCC矢視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、放射線検出器およびその制御方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。図中では放射線検出素子が移動する移動方向を矢印x、この移動方向xを直角に横断する幅方向を矢印y、上下方向を矢印zで示している。
【0011】
図1および
図2に例示するように放射線検出器1は、内部に空洞を有するケース2と、このケースの内部に配置されている放射線検出素子3と、この放射線検出素子3の下方に配置されている半導体素子4とを備えている。放射線として例えば70keVのX線を使用する場合は、プラスチックなど放射線を透過しやすく(すなわち放射線検出器1での検出対象の放射線の減弱が少なく)、放射線画像撮影に影響の少ない物質でケース2が構成される。放射線を透過しやすい物質は、ケース2の一部のみ、例えば放射線の入射面側かつ放射線画像に寄与する領域に使用されてもよい。一方で放射線の入射に対して反対側となる背面側を含むケース2の一部は、放射線の遮蔽能力の高い物質で構成されてもよい。放射線の遮蔽能力の高い物質とは、例えば鉛、タングステンなどの重金属や、これらの重金属元素を含む化合物や、これらの重金属や化合物を含むプラスチックなどをいう。これにより特に医療用の場合、放射線検出器1の背面側に患者の体の一部が存在する場合は、当該部位の放射線被ばく量を軽減できる。また工業用の場合、放射線検出器1の背面側に配置されている物質から散乱放射線が発生することを抑制できる。被写体をより明瞭に撮影することが可能となる。ケース2の外形は直方体の他、この直方体の角部を丸めて構成した形状等、任意の形状に構成できる。
【0012】
放射線検出素子3は例えば放射線が照射されることで発光するシンチレータで構成される。この実施形態では平面視で移動方向xに短辺を有し幅方向yに長辺を有する略長方形となる状態に放射線検出素子3は形成されている。半導体素子4は例えばシンチレータから伝達される光信号を電気信号に変換する処理を行なうCCDイメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやフォトダイオードで構成される。また半導体素子4は例えば積分型の処理回路を搭載した積分型ASIC(application specific integrated circuit)で構成されてもよい。
【0013】
この実施形態では平面視で略長方形となる形状に形成されていて、放射線検出素子3の下面に貼り付けられる構成を半導体素子4は有している。平面視において放射線検出素子3と半導体素子4とは略同一形状であり略同一の大きさに形成されている。放射線検出素子3の下面と半導体素子4の上面とは光学的に接続されている。
【0014】
放射線検出素子3と半導体素子4との組み合わせは上記に限定されない。例えば放射線検出素子3がCdTe(テルル化カドミウム)系などの半導体、すなわち放射線と電気伝導キャリアの変換が直接行われる半導体(直接変換型半導体)で構成されて、半導体素子4が光子計数型ASICで構成されてもよい。このとき放射線検出素子3と半導体素子4とは電気的に接続されている。
【0015】
CdTe系半導体などの直接変換型半導体で構成される放射線検出素子3は、入射した放射線を光子とみなしてこの光子エネルギに比例した電気信号を出力する構成を有している。光子計数型ASICで構成される半導体素子4は、放射線検出素子3から得られる電気信号を増幅してデジタル化する処理を行なう構成を有している。
【0016】
放射線検出素子3としてシンチレータまたは直接変換型半導体のいずれかが選択されて、これと組み合わせる状態で半導体素子4として積分型ASICまたは光子計数型ASICのいずれかが選択されてもよい。
【0017】
放射線検出素子3と半導体素子4とは必ずしも同一形状かつ同一の大きさでなくてもよい。例えば半導体素子4からの信号読み出し等を行なう領域を半導体素子4が有していてもよい。この場合は放射線検出素子3よりも半導体素子4の方が平面視で大きくなる状態に形成される。半導体素子4は機能を果たしながら、できるだけ小型化するように適宜構成されることが望ましい。
【0018】
図2に例示するように放射線検出器1は、ケース2の外部に配置されていて動力を発生させる駆動機構5と、この駆動機構5と放射線検出素子3とを直接または間接に連結する伝達機構6とを備えている。この実施形態では駆動機構5はモータで構成されている。伝達機構6は例えばラックランドピニオン機構で構成される。この実施形態では一端を放射線検出素子3に連結されて他端にラックを形成されるロッド6aと、モータで構成される駆動機構5に設置されるとともにロッド6aのラックに対応する形状を有するピニオンギア6bとで伝達機構6が構成されている。駆動機構5の動力により、ロッド6aはその軸方向である移動方向xに沿って往復移動が可能な状態に構成されている。
【0019】
放射線検出器1は、内部に空洞を有する駆動機構用ケース7と、この駆動機構用ケース7とケース2とを連結する中空のパイプ8とを備えていてもよい。駆動機構用ケース7には、モータ等の駆動機構5と伝達機構6の一部とが収納される。パイプ8の内部にはロッド6aの少なくとも一部が収納される。
図2では説明のためケース2、駆動機構用ケース7およびパイプ8を破線で示している。
【0020】
図3および
図4に例示するように、半導体素子4から出力される電気信号は信号ケーブル9を介して放射線検出器1の外部に伝達される。この実施形態では、一端を半導体素子4に接続される信号ケーブル9が、パイプ8の内部を通過して駆動機構用ケース7の壁面に形成される接続口10に接続されている。この接続口10には例えば別の信号ケーブル等により放射線画像を作成するコンピュータ等が接続される。また接続口10およびこれに接続される給電線により、半導体素子4や駆動機構5に外部から電気を供給する構成にしてもよい。
【0021】
放射線画像を作成するコンピュータ等と半導体素子4とが無線で接続される構成であってもよい。その際、送受信機は駆動機構用ケース7に配置されることが望ましい。また駆動機構用ケース7の内部に、電源として電池が配置される構成にしてもよい。電池から半導体素子4や駆動機構5や送受信機に電力を供給できるので、これらの電気を供給するための給電線や接続口10が不要となる。このとき駆動機構用ケース7には電池交換用の開閉蓋が形成される。電池が二次電池で構成される場合は、接続口10等を利用して駆動機構用ケース7の外部から電池を充電できる構成としてもよい。
【0022】
図4に例示するように半導体素子4を支持する支持部材11が半導体素子4の下面に配置されていてもよい。この支持部材11は放射線検出素子3や半導体素子4とともに一軸方向となる移動方向xに沿って移動可能に構成されている。放射線検出器1が支持部材11を備えていない構成であってもよい。
【0023】
支持部材11または支持部材11の一部が、半導体素子4の制御や信号の入出力のための電気回路を有していてもよい。支持部材11は、例えばPCB(Printed circuit board)で構成されてもよい。このPCBは例えば銅配線とガラスエポキシ樹脂で製造される電子回路基板である。支持部材11には、例えばノイズ除去回路としてのデカップリングキャパシタや、インピーダンスマッチングによる波形整形回路とその構成要素としての抵抗器や、電源安定化回路とその構成要素としての電圧レギュレータICなどを配置できる。これらの回路は、放射線検出器1の小型化を阻害しない範囲で配置される。
【0024】
次に放射線検出器1の動作について説明する。放射線検出器1のケース2がまず口内や装置の隙間などの狭小部に配置される。測定対象である歯や装置を透過する状態でケース2に向けてX線などの放射線が照射される。
【0025】
図3に例示するように駆動機構5を構成するモータの回転により、ロッド6aがその軸方向と一致する一軸方向に沿って移動する。ロッド6aはパイプ8に対して相対的に軸方向に移動する。ロッド6aの前進にともない、放射線検出素子3がケース2の一端(
図3右方側)から他端(
図3左方側)に向かって移動方向xに沿って移動する。半導体素子4に接続されている信号ケーブル9は、半導体素子4が放射線検出素子3とともにケース2の他端まで移動した場合であっても断線しない長さに予め設定されている。
【0026】
ケース2はパイプ8を介して駆動機構用ケース7に固定されている。そのため放射線検出器1の使用時に、駆動機構用ケース7またはパイプ8を固定することでケース2を任意の位置に固定できる。放射線画像の撮影時にケース2等の位置がずれることを抑制できる。狭小部において位置精度良く放射線画像を取得できる。
【0027】
図3では説明のため移動前の放射線検出素子3の位置を破線で示し、ロッド6aおよび放射線検出素子3の移動する向きを白抜き矢印で示している。その後、モータを逆回転させることで、放射線検出素子3が移動前の元の位置に戻る。
【0028】
ケース2よりも小さく構成される放射線検出素子3で、ケース2の全体の大きさに対応する放射線画像を取得することが放射線検出器1は可能となる。
【0029】
図5に例示するように例えば平面視で略長方形に形成される放射線検出素子3の長辺を幅方向yに対して角度θだけ傾けて配置する構成にしてもよい。角度θは例えば0度より大きく10度以下となる範囲で適宜設定できる。この構成によれば放射線検出素子3が複数のピクセルで構成されている場合、ピクセル毎に取得されるデータを、サブピクセル法により再構成することが可能となり、実ピクセルよりも細かい大きさのピクセルサイズの画像取得が可能となる。放射線検出素子3が傾いて配置される場合であっても、放射線検出素子3の移動によりケース2の全体の大きさにほぼ対応する放射線画像を取得できる。
【0030】
図5では放射線検出素子3の傾きに合わせてケース2が、平面視で平行四辺形となる形状に形成されている。この構成によればケース2とほぼ同一の範囲において放射線検出素子3による検出が可能となる。これに限らずケース2は、平面視で長方形に形成されてもよい。
【0031】
放射線検出素子3は放射線が照射されるタイミングに合わせて一軸方向に沿って移動する構成を有していることが望ましい。例えば放射線が1秒間照射される場合には、放射線検出素子3が1秒間でケース2の一端から他端まで移動する構成とすることが望ましい。
【0032】
図3に例示するように放射線が照射されるタイミングに合わせて、放射線検出素子3を移動させる制御機構12を放射線検出器1が備えていてもよい。制御機構12は、例えば駆動機構用ケース7の内部に配置される。
【0033】
制御機構12は例えばモータ等で構成される駆動機構5を制御する構成を有している。また放射線を照射する装置と例えば接続口10を介して接続されていてもよい。
図3では説明のため駆動機構5および接続口10と制御機構12とを接続する信号線を一点鎖線で示している。放射線が照射される際に出力される信号に基づき、制御機構12が駆動機構5を動作させる構成にできる。例えば放射線が0.5秒間照射される場合に、このタイミングに合わせて制御機構12は放射線検出素子3をケース2の内部で一軸方向に沿って移動させる。
【0034】
制御機構12は必須ではない。放射線が予め照射されている状態で、作業者のスイッチ操作等により放射線検出素子3が予め定められる速度でケース2の内部を移動する構成であってもよい。また作業者が放射線を照射させるためのスイッチと同時に放射線検出器1のスイッチを操作して、放射線画像を取得する構成としてもよい。
【0035】
ケースの大きさに合わせて準備された従来のパネル状の放射線検出素子が例えば320ピクセル×2500ピクセルの大きさであったとする。これに対して本発明の放射線検出器1は、放射線検出素子3が移動可能に構成されているため、例えば320ピクセル×20ピクセルの放射線検出素子3により従来と同等の範囲で放射線を検出できる。より小さい放射線検出素子3の採用が可能となるため、放射線検出器1の製造コストを抑制するには有利である。
【0036】
放射線検出素子3および半導体素子4のみが移動する構成であるため、移動する部材は軽量でかつ小型となる。駆動機構5および伝達機構6の小型化や低出力化を実現できる。放射線検出器1の製造コストを抑制するには有利である。放射線検出素子3および半導体素子4とともに支持部材11が移動する構成であっても、上記効果は十分に得られる。
【0037】
駆動機構5がケース2の外部に配置される構成であるため、比較的大型で低コストの駆動機構5を放射線検出器1に利用できる。放射線検出器1の製造コストを抑制するには有利である。
【0038】
またケース2の内部に駆動機構5を配置する必要がないため、ケース2を小型化するには有利である。口内など狭小部において放射線画像の取得が可能となる。医療用に限らず工業用にも放射線検出器1を利用できる。
【0039】
高価でかつ高精度な放射線検出素子3や半導体素子4を、それほど製造コストを増加させることなく放射線検出器1に利用することが可能となる。
【0040】
駆動機構5および伝達機構6の構成は上記に限定されない。放射線検出素子3を一軸方向に沿って移動させることができる構成であればよい。駆動機構5の回転運動を一軸方向に運動に変換するボールスプライン機構で伝達機構6が構成されてもよい。伝達機構6が伸縮シリンダで構成されて、駆動機構5が空気圧や油圧を発生させて伸縮シリンダに供給するポンプで構成されてもよい。また直動型ステッピングモータ等により伝達機構6の一部と駆動機構5とが一体的に構成されてもよい。直動型ステッピングモータは、例えば雄ねじ部を有するモータと雌ねじ部を有するシャフトとで構成される。モータの回転によりシャフトが軸方向に移動する構成を直動型ステッピングモータは有している。
【0041】
図6に例示するように駆動機構5がモータで構成されて、伝達機構6がケース2の内部に配置されるローラ6cと、このローラ6cとモータとに掛け回される環状のベルト体6dとで構成されてもよい。放射線検出素子3および半導体素子4等はベルト体6dの所定の位置に予め固定されている。ベルト体6dの移動にともない放射線検出素子3等が移動方向xに沿って移動する。
【0042】
半導体素子4がケース2の外部に配置される構成であってもよい。例えば半導体素子4が駆動機構用ケース7の内部に配置されて、半導体素子4と放射線検出素子3とが信号ケーブル9で接続される構成にすることができる。放射線検出素子3と半導体素子4とが電気的に接続される場合であっても、半導体素子4または半導体素子4の一部をケース2の外部に配置できる。
【0043】
半導体素子4または半導体素子4の機能の一部がケース2の外部に配置される構成により、ケース2をさらに小型化することができる。また放射線検出素子3のみ、または半導体素子4の機能の一部と放射線検出素子3とがケース2の内部で移動する構成となるため、駆動機構5や伝達機構6のさらなる小型化や低出力化を実現できる。
【0044】
放射線検出器1がパイプ8を備えない構成であってもよい。伝達機構6が、例えばケーシングとロッドからなる伸縮シリンダで構成されて、ケーシングにケース2が固定されてロッドに放射線検出素子3が接続される場合は、パイプ8が不要となる。
【0045】
伝達機構6の少なくとも一部が、フレキシブルプッシュプルケーブルなど柔軟性のある部材で構成されてもよい。このとき柔軟性のある伝達機構6に対応する部分において、パイプ8が柔軟性を有する構成にできる。パイプ8とともに伝達機構6が変形可能な状態となる。フレキシブルプッシュプルケーブルは、例えば筒状のアウターケーシングと、このアウターケーシングの内部に配置されていて軸方向に移動可能に配置されるインナーワイヤーとを有している。そのため例えばインナーワイヤーを伝達機構6として利用して、アウターケーシングをパイプ8として利用する構成としてもよい。
【0046】
測定対象物においてケース2が配置される狭小部の形状や狭小部までの経路が複雑であっても、パイプ8等が柔軟性を有する場合は、パイプ8等を適宜変形させることでケース2を目的の位置に配置しやすくなる。パイプ8および伝達機構6は、一部が柔軟性を有していて残りの部分が柔軟性を有していない状態に構成されてもよく、軸方向の全体に渡り柔軟性を有する状態に構成されてもよい。いずれの場合であっても、駆動機構用ケース7に対するケース2の位置を設定する際の自由度を向上できる。そのため従来は配置できなかった場所にケース2を配置して、放射線の検出を行なうことが可能となる。
【0047】
図6に例示するように放射線検出器1が、放射線検出素子3の移動速度または移動距離を直接または間接に検出する変位センサ13を備えていてもよい。変位センサ13は例えば伝達機構6を構成するロッド6aやベルト体6d等の移動速度を測定するリニアエンコーダや、駆動機構5を構成するモータ等の回転速度を測定するロータリーエンコーダ等で構成できる。
【0048】
放射線画像を作成する際には、放射線検出素子3で検出した複数のフレームデータからケース2とほぼ同等の大きさの画像を作成する。放射線検出素子3の移動速度が変化する場合であっても、変位センサ13を備えていれば移動速度に応じたフレームデータの加算を行える。放射線画像の歪みを補正できるので適切な放射線画像を得やすくなる。
【0049】
また放射線検出素子3を移動させる際の加減速区間で得られるフレームデータについて、移動速度の変化の影響を補正できる。そのため移動方向xにおけるケース2の両端近傍のフレームデータが、放射線画像の作成に利用可能となる。歪みを抑制しつつケース2の外形とほぼ同じ範囲の放射線画像を取得できるので、ケース2を更に小型化することが可能となる。ケース2の小型化のために、変位センサ13はケース2の外部に配置されることが望ましい。
【0050】
図7に例示するようにケース2が、その内壁面に形成される案内溝14を有する構成にしてもよい。この実施形態ではケース2が、ケース上部2aとケース下部2bとを張り合わせて構成される。ケース2は移動方向xに沿って上下に二つに分割されている。ケース下部2bの上端近傍でありケース上部2aと対向する部分に案内溝14が形成されている。ケース2の内壁面であり幅方向yにおける両側に形成される一対の案内溝14は、移動方向xと平行となる状態でケース2の内部に形成されている。
【0051】
案内溝14が形成される場所は上記に限定されない。ケース2の内壁面の他の部分に案内溝14が形成されてもよい。例えばケース2の内壁面の幅方向yの両側に形成される側面や、上下方向zの下方となる下面に案内溝14が形成されてもよい。ケース2の内側の下面に案内溝14が形成される場合は、この案内溝14に挿入される突出部が放射線検出素子3に直接または間接的に設置される。
【0052】
案内溝14はケース2を切削して形成されることが望ましい。つまり案内溝14はケース2と同一の材料で構成される。別途案内レール等の部材をケース2の内部に配置する必要がないので、ケース2を小型化するには有利である。
【0053】
図7に例示するように案内溝14に支持部材11の縁部が摺動可能な状態で挟み込まれる状態となる。放射線検出素子3は案内溝14により間接的に案内される。放射線検出素子3または半導体素子4の縁部が案内溝14に直接配置される構成であってもよい。
【0054】
放射線検出素子3および半導体素子4は、ケース2の内壁面であって案内溝14以外の部分とは接触しない構成とすることが望ましい。放射線検出素子3の移動をスムーズに行なうには有利である。ケース2が案内溝14を有さず、放射線検出素子3および半導体素子4がケース2の内壁面に接触しない状態で伝達機構6により支持される構成としてもよい。
【0055】
この実施形態では伝達機構6を構成するロッド6aが支持部材11に固定されている。放射線検出素子3または半導体素子4にロッド6aが固定される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 放射線検出器
2 ケース
2a ケース上部
2b ケース下部
3 放射線検出素子
4 半導体素子
5 駆動機構
6 伝達機構
6a ロッド
6b ピニオンギア
6c ローラ
6d ベルト体
7 駆動機構用ケース
8 パイプ
9 信号ケーブル
10 接続口
11 支持部材
12 制御機構
13 変位センサ
14 案内溝
x 移動方向
y 幅方向
z 上下方向
θ (放射線検出素子の傾きの)角度