(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】脊椎手術のための器具セット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/17 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A61B17/17
(21)【出願番号】P 2020550124
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2019000030
(87)【国際公開番号】W WO2019179653
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】102018002356.8
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018006442.6
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512111500
【氏名又は名称】ジョイマックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】リース,ウルフギャング
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0021147(US,A1)
【文献】特開2008-100051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0288026(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0073998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/00
A61F 2/01
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの拡張器(6、7、8)、ガイドチューブ(4)、及び偏心した内腔を有するガイドロッド(5)を備えた、脊椎手術のための器具セットであって、
前記ガイドチューブ(4)は、前記ガイドロッド(5)の前記空洞に受け入れられ、
前記ガイドロッド(5)は、前記空洞に接続された側方のスロット開口部(5.1)を有し、それによって前記空洞は部分円筒形の溝(5.2)を形成し、
前記スロット開口部(5.1)の幅(B)は、前記溝(5.2)の径(D)よりも小さく、
前記ガイドロッド(5)は、前記ガイドロッド(5)の前記空洞に対して偏心して配置された、遠位の舌部(5.5)を有
し、
ガイドチューブ(4)の断面と同じ断面を有する、長手方向に延びて特に円筒形の空洞(9.1)を備えた、作業スリーブ(9)を備え、
前記作業スリーブ(9)は、その遠位端面に歯列(9.4)を有することを特徴とする、セット。
【請求項2】
前記空洞は、前記ガイドロッド(5)の外面形状(5.3)及び/または前記外面形状(5.3)の中心軸(S)に対して偏心して形成されることを特徴とする、請求項1に記載のセット。
【請求項3】
前記ガイドロッド(5)の遠位の舌部(5.5)は、前記ガイドロッド(5)の中心軸(S)に対して偏心して配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載のセット。
【請求項4】
前記空洞を形成する溝を囲む、前記ガイドロッド(5)の内壁面(5.2.1)は、部分円筒形であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のセット。
【請求項5】
前記ガイドロッド(5)の外壁面(5.3)は、部分円筒形であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のセット。
【請求項6】
前記溝(5.2)のスロット開口部(5.1)は、前記ガイドロッド(5)の中心軸に対して舌部(5.5)の反対側にあることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のセット。
【請求項7】
前記ガイドロッド(5)の遠位の舌部(5.5)は、部分的にアーチ形状の対向する縁部(5.6)を有し、その遠位端は前記舌部(5.5)の先端(5.4)の中に延びることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のセット。
【請求項8】
前記歯列(9.4)は、前記作業スリーブ(9)の周囲の一部の上に延びることを特徴とする、請求項
1~7のいずれか一項に記載のセット。
【請求項9】
前記歯列(9.4)は、前記作業スリーブ(9)の周囲の半分の上に延びることを特徴とする、請求項
8に記載のセット。
【請求項10】
前記歯列(9.4)の歯(9.6)は非対称であることを特徴とする、請求項
1~
9のいずれか一項に記載のセット。
【請求項11】
歯(9.6)の第1の側部(9.6.1)は、前記歯(9.6)の遠位の先端(9.6.3)に向かって傾斜した平坦部Sとして設計されることを特徴とする、請求項
1~
10のいずれか一項に記載のセット。
【請求項12】
第2の側部(9.6.2)は、軸方向に平行に方向付けられることを特徴とする、請求項
1~
11のいずれか一項に記載のセット。
【請求項13】
遠位のリップ部(9.5)は、前記作業スリーブ(9)の周囲の一部の上に延び、
前記歯列(9.4)の歯(9.6)の先端(9.6.3)、及び前記リップ部(9.5)の端面(9.5.1)は、同じ軸方向の高さであることを特徴とする、請求項
1~
12のいずれか一項に記載のセット。
【請求項14】
スタイレット及び/またはガイドワイヤ(3)を備えた中空ニードル(1)を備える、請求項1~
13のいずれか一項に記載のセット。
【請求項15】
前記スタイレット及び/または前記ガイドワイヤ(3)の径は、好ましくは前記中空ニードル(1)の空洞の内腔に適合されることを特徴とする、請求項
14に記載のセット。
【請求項16】
ガイドチューブ(4)及び/または前記ガイドロッドに適合された、または互いに適合された内腔を備えた拡張器(6、7、8)を備える、請求項1~
15のいずれか一項に記載のセット。
【請求項17】
ミリングカッタ(10)またはチゼル(11)である作業ツールを備え、それらの径方向寸法は、詳細には作業チューブ(9)の前記内腔に適合される、請求項1~
16のいずれか一項に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎手術のための器具セットに関し、この器具セットは、軸に対して長手方向に延びた空洞を有するガイドロッドを備え、かつ、このガイドロッドの空洞に受け入れることができるガイドチューブを備える。
【背景技術】
【0002】
手術器具を(人の)体の中に、手術箇所まで挿入するとき、特に手術領域が狭い場合には、たとえX線像であっても、執刀医はこの箇所をすぐに見出さないことがある。そのとき、挿入された器具を部分的または全体的に引き抜く必要、及び可能であれば正しい手術箇所に再挿入する必要があり、それは時間の浪費だけではなく、患者にもストレスが大きい。
【0003】
これは、特に脊椎の椎骨において、例えば骨増殖体すなわち骨の成長を取り除くために適用する。脊椎の椎骨は、神経を押圧し、それによって患者に大きな苦痛をもたらすか、または椎骨突出部(突起)の前部に生じた場合に、運動を制限する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、手術手順の範囲内で、手術箇所すなわち器具セットの器具の遠位端が位置される領域を、器具を体から引き出す必要なく修正することができる器具セットを提供し、かつ、この器具セットによる方法を提案することである。
【0005】
別の発展において、空洞は、ガイドロッドの外面形状及び/またはガイドロッドの外面形状の中心軸に対して、偏心している。さらに、本発明の好ましい実施形態において、ガイドロッドは、ガイドロッドの空洞及び/またはガイドロッドの中心軸に対して偏心して配置された、遠位の舌部を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明は、ガイドチューブが患者の体面から椎体または骨の表面まで挿入された後、偏心して形成された空洞を備えたガイドロッドが、ガイドチューブを覆って患者の体の中に椎体または骨の表面まで挿入されることと、一般的にX線像で、意図する位置に対するガイドカニューレの遠位端の位置を確認することと、意図する手術領域が、椎体または骨におけるガイドチューブの遠位端の位置と適合しない場合に、ガイドロッドの遠位端において偏心して形成された遠位の先端が、椎体または骨の表面に対して押圧されることと、ガイドロッド内のガイドチューブが近位方向に後退されることと、ガイドロッドの空洞を意図する手術領域の上で枢動させるため、または手術領域に近付けるために、ガイドロッドが、中に位置されたガイドチューブと共に、その遠位の先端の周りに枢動されることと、その後ガイドロッド内のガイドチューブは、椎体または骨の表面に向かって遠位方向に動かされることと、を特徴とする方法にも関連する。
【0007】
本発明による方法は、原則的に経椎間孔及び層間の両方に使用することができる。
【0008】
上述のように設計されたガイドロッドを備えた、本発明による器具セットによって、原則的にこのガイドロッドの遠位の舌部において偏心した先端を、椎骨または骨の表面に対してしっかりと押圧し、次にこのガイドロッドを舌部の先端の周りに枢動させることを可能にする。それによって、ガイドロッドの空洞及びその中に据えられたガイドチューブも枢動される。そうすることによって、内腔及びカニューレの位置を、不適切な位置から特定の手術箇所に枢動させることができる。必要な場合、このプロセスを複数回繰り返すことができる。
【0009】
この方法は、対応する手術を実施するために執刀医によって実施されるべき、個々の方法ステップを含む。
【0010】
本発明による器具セットの好ましい発展において、空洞はガイドロッドの中に偏心して形成される。
【0011】
さらに、このセットの好ましい実施形態において、ガイドロッドは、空洞に接続された側方のスロット開口部を有することができ、それによってこの空洞は、部分円筒形の溝を形成し、詳細にはスロット開口部の幅は、溝の径よりも小さい。所与のスロット開口部のために、特に後者の特徴は、溝として形成された空洞の中に、軸方向に挿入されたガイドチューブなどの器具が、ガイドロッドの溝から側方に動き出るのを防止する。
【0012】
別の実施形態において、スロット開口部の幅を、溝の径よりも小さくすることができる。
【0013】
別の実施形態において、空洞または溝を囲むガイドロッドの内壁面は、シリンダジャケットまたは部分的にシリンダジャケットの形状であり、及び/または、ガイドロッドの外壁面は、シリンダジャケットケーシングまたは部分的にシリンダジャケットの形状である。これは、ガイドロッドと、ガイドロッドの中に挿入されるか、中にこのロッドが挿入されるか、またはこのガイドロッドを介して挿入される他の器具との互換性を保証する。
【0014】
別の好ましい実施形態において、ガイドロッドの空洞のスロット開口部または溝は、舌部のはす向かいにある。
【0015】
本発明による器具セットの特に好ましい発展は、詳細には長手方向に延びた、少なくともガイドチューブの断面と同じ断面、好ましくはガイドロッドの断面と同じ断面を有する、円筒形の空洞を備えた作業スリーブを特徴とする。
【0016】
好ましい実施形態において、作業スリーブは、この場合においては遠位端面に歯列を有する。この歯列は、作業スリーブの周囲の一部の上に延び、好ましくは作業スリーブの周囲の半分の上に延びる。
【0017】
歯列における歯は、詳細には非対称であり、歯の第1の側面は、歯の遠位の先端に向かって傾斜した平坦部Sとして設計され、その一方で第2の側面は、軸方向に平行に方向付けられる。
【0018】
歯列の反対において、連続した遠位端面を有する舌部は、好ましくは作業スリーブの周囲の一部の上に延びる。詳細には、歯の先端及び舌部の端面は、同じ軸方向高さである。
【0019】
手術セットは、スタイレット及び/またはガイドワイヤを備えた中空ニードルによって、さらに発展され得る。スタイレット及び/またはガイドワイヤの横断寸法は、中空ニードルの空洞の内腔に適合される。ならびに/または、手術セットは、ガイドチューブ及び/またはガイドロッドに、または互いに適合された内腔を備えた拡張器によって、さらに発展され得る。さらに手術セットは、詳細には径方向寸法が作業スリーブの内腔に適合された、ミリングカッタ及びチゼルなどの作業ツールによって発展される。
【0020】
本発明による方法の発展において、外側形状及び/または外側形状の対称軸に偏心して配置された空洞を備えたガイドロッドが、患者の体の中に挿入され、及び/または1つまたは複数の拡張器が、初めにガイドチューブまたはガイドロッドを覆って椎体まで導入され、作業スリーブが、その後挿入される最大径を有する拡張器を覆って挿入される。及び/または、初めに任意選択で皮膚に切開部を作った後に、挿入されたスタイレットを有する中空ニードルが、患者の体の中に椎体まで挿入され、次にスタイレットは取り外され、ガイドワイヤが中空ニードルを介して挿入され、次に、中空ニードルを取り外した後に、ガイドチューブはガイドワイヤを覆って椎体まで挿入されて、最後に方法の別のステップが実施される。
【0021】
本発明による方法は、少なくとも1つの作業器具が作業スリーブを介して椎体または骨の手術箇所まで挿入され、骨増殖体の除去などの実行されることになる手術が、椎骨または骨の表面で実施される点で、または内視鏡のシャフトが作業器具の細長い空洞を介して挿入される点で、さらに発展され得る。
【0022】
初めに内視鏡が、作業スリーブを介して挿入されること、次に作業器具が、内視鏡の細長い空洞を介して椎体または骨の表面まで挿入されること、及び、骨増殖体の除去などの手術ステップが内視鏡を用いて実施されることも、好ましい。
【0023】
器具または器具セットが、椎体または骨の手術箇所に正確に挿入されなかった場合、本発明は、正確な手術箇所を、X線像及び/または内視鏡を用いて、提供される器具の遠位端によって正確に占めることができるよう、枢動によって精確な位置決めを実現可能である。
【0024】
本発明の別の利点及び特徴は、特許請求の範囲、及び以下の説明に見出すことができる。そこでは本発明の実施形態が、図を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】作業スリーブを挿入及び位置決めするための、部分的な器具セットを示す図である。
【
図1a】
図1の部分的な器具セットの、ガイドロッドの装着可能なグリップを示す図である。
【
図2a】ガイドロッドの軸回りに90°の角度だけずらした、ガイドロッドの側面図である。
【
図3】本発明による器具セットの作業スリーブを示す図である。
【
図3a】作業スリーブの遠位端における拡大図である。
【
図4a】作業器具セットのミリングカッタを示す図である。
【
図4b】
図4aのミリングカッタの装着可能なグリップを示す図である。
【
図4c】同じ作業器具セットのチゼルを示す図である。
【
図6】本発明による器具セットの内視鏡部分を示す図である。
【
図7】
図1の器具セットを使用した、方法のシーケンスを示す図である。
【
図7a】閉塞具によって閉じられた中空ニードルの遠位端を、椎骨の手術箇所まで挿入することを含む、第1の方法ステップを示す図である。
【
図7b】閉塞具を取り外した後に、ガイドワイヤを中空ニードルの中に挿入する別の方法ステップを示す図である。
【
図7c】ガイドワイヤを覆ってガイドチューブを挿入するステップを示す図である。
【
図7d】第1の角度位置におけるハンドグリップを備えた、偏心したガイドロッドを、ガイドチューブを覆って挿入した図である。
【
図7e】角度位置を保ちながら、偏心したガイドロッド内で近位方向にガイドチューブを後退させ、それによって、偏心したガイドロッドの先端が椎骨に位置するのを示す図である。
【
図7f】
図7d~
図7e1の向きに対して、ガイドロッドの遠位の先端周りに90°だけ枢動された位置にある、挿入されたガイドチューブを伴う偏心したガイドロッドを示す図である。
【
図7g】椎骨で確認できるまでのガイドチューブの前進、及び
図7fの角度位置における偏心したガイドチューブの後退を示す図である。
【
図7h】偏心したガイドロッドを取り外した後、かつガイドチューブを覆った2つの拡張器を取り外した後の図である。
【
図7j】第2の拡張器を覆って挿入された、ハンドグリップを備えた作業スリーブを示す図である。
【
図7k】他の要素を取り外した後で、椎骨に位置する、ハンドグリップを備えた作業スリーブのみを示す図である。
【
図7l】ウィンググリップを備えたミリングカッタを、作業スリーブの中に挿入するのを示す図である。
【
図7m】中空チューブが設けられたミリングカッタを介して挿入された、内視鏡を示す図である。
【
図7n】ミリングカッタ及び内視鏡を取り外した後の、作業スリーブを介して挿入された、ハンドグリップが設けられたチゼルを示す図である。
【
図7o】ガイドスリーブを作業スリーブの中に挿入し、その後作業スリーブを取り外した図である。
【
図7p】内視鏡をガイドスリーブの中に挿入した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示されるように、本発明による器具セットは、実質的に以下の部品を備える。
【0027】
斜角が付いた遠位端1.1、及びグリップ部1.2を備えた中空ニードル1。ハンドグリップ2.1を備えたスタイレット(図示せず)は、中空ニードル1の中に挿入され、中空ニードル1の遠位面において、スタイレットは、中空ニードルの斜角が付いた遠位端1.1と整合される。器具セットはガイドワイヤ3も備え、その径は、中空ニードル1の円筒形空洞の内腔に適合される。セットの他の部分は、中空の円筒形ガイドチューブ4であり、その内腔も、好ましくはガイドワイヤの径に適合される。
【0028】
器具セットの別の重要な部分は、偏心したガイドロッド5であり、その内腔は、ガイドチューブ4の外側形状に適合される。この偏心したガイドロッドは、ガイドロッドの近位端に回転不能に装着させることができるグリップ5.7(
図1a)を含む。別の部分は、第1の拡張器6、第2及び第3の拡張器7、8を含み、第1の拡張器6の空洞は、同様にガイドロッドの外側形状に適合され、第2の拡張器7及び第3の拡張器8の空洞は、それぞれ第1の拡張器6または第2の拡張器7の外側形状に適合される。
【0029】
上述の部分4~7は、それらの遠位端において、円錐形にテーパーが付けられ、それによって内側部分から外側部分への連続的な移行を生じさせる。
【0030】
図2a~
図2dは、本発明による偏心したガイドロッド5を示し、側方スロット開口部5.1が設けられた、部分円筒形の溝5.2を備える。ガイドロッド5の外壁面すなわち外側形状5.3は、
図2c及び
図2dの円筒形の外側形状の対称軸Sを伴う延長の大部分を通して、スロット開口部5.1を除いた部分円筒形である。溝5.2は、対称軸Sに対して偏心している。溝5.2の遠位端において、スロット開口部5.1は、遠位の開口領域5.1.1に併合し、そのためガイドロッド5の遠位端は、やはり対称軸Sに対して偏心している遠位の先端5.4によって形成される。溝5.2を囲むガイドロッド5の、外壁面5.3及び内壁面5.2.1の両方は、側方スロット開口部5.1を除いた部分円筒形である。
【0031】
ガイドロッド5の遠位端領域における縁部5.6は、
図2aの側面図において、凸状アーチ形状で遠位の舌部5.5における遠位の先端5.4の中まで延びる。
図2bは、縁部5.6が僅かに窪んだ形状の断面図を示す。
【0032】
近位端において、ガイドロッド5は、長手方向の壁における側方の平坦部1.5を有し、それによってグリップ部5.7(例えば
図1a)を、ガイドロッド5の近位端に、回転不能だが取り外し可能に接続することができる。
【0033】
対称軸S(
図2c及び
図2d)に対して偏心した溝5.2と、対称軸Sに対して偏心して方向付けられた先端5.4との両方を備えた、偏心したガイドロッド5は、脊椎の椎体6の壁(簡略のため以降は椎骨Wと呼ぶ)に位置する先端5.4の周りにガイドロッド5を枢動させることによって、溝5.2の遠位の開口領域を変位させるために使用される。その位置は、初めに挿入された、ガイドロッド5を一部とする器具セットの器具が正しく挿入されない場合、例えば問題のある骨増殖体を、適切なツールを使用して椎骨から取り除くため、溝5.2の正しい位置決め、及びそれによって決定した椎体の外壁における器具の出入りポイントを修正するために、椎骨Wの外壁における器具の衝撃ポイントを決定する。
【0034】
円筒形の空洞4.1を有するガイドチューブ4(
図1)は、通常は脊椎手術のための器具セットの一部として使用される、実質的なガイドチューブである。ガイドチューブ4は、その延長の大部分を通して円筒形であり、記載したように、円筒形の空洞4.1を有する。遠位端領域4.2は、僅かに円錐形的に内側に延び、その長手方向軸に対して、やはり斜めに延びた遠位開口部4.3を有する、斜角が付いた端部を有する場合がある。
【0035】
図3は、作業スリーブ9を示す。作業スリーブ9の遠位端は、ガイドチューブ4及び任意選択で偏心したガイドロッド5を覆って、任意選択で、その前に使用されたガイドカニューレを覆って挿入された拡張器6、7、8を伴い、作業/手術箇所まで挿入される。それを介して、ガイドカニューレ、ならびに任意選択でガイドロッド及び拡張器を取り外した後で、作業器具が直接挿入されるか、または初めに内視鏡が挿入され、次に、ミリングカッタ、チゼル、プライヤなどの作業器具が、内視鏡の円筒形の空洞を介して挿入される(作業シーケンスについて、
図7も参照)。
【0036】
作業スリーブ9は、円筒形の空洞9.1を同様に囲む、円筒形のジャケット9.2を有する。この作業スリーブには、その近位端にグリップ部9.3が設けられる。遠位端は、ジャケット9.2の周囲の一部の上に延びた歯列9.4、及びこの歯列の反対側にリップ部9.5を有する。
【0037】
歯列9.4の歯9.6は、非対称である。第1の側面9.6.1は、作業スリーブ9の中心軸A9に対して実質的に軸方向に平行に延び、一方で反対側の第2の側面9.6.2は、軸A9の延長に対して傾斜した平坦部Sとして設計される。リップ部9.5の遠位端面9.5.1は、歯9.6の遠位の先端9.6.3と同じ軸方向高さであり、両側において、湾曲部9.5.2を介して歯列9.4のそれぞれ外側の歯9.6における歯の基部の中に併合する。
【0038】
作業スリーブ9は、歯9.6によって、椎骨または骨の骨材料にしっかりと固定することができ、その一方で遠位のリップ部9.5は、神経などの敏感な体の要素を、特に、作業スリーブ9を介して直接的または間接的に挿入された、椎骨Wまたは骨の表面で作業するためのツールに対して、保護するために使用される。
【0039】
図4は、ミリングカッタ10と呼ばれ、骨増殖体などの骨材料を骨から除去するための、作業ツールを示す。ミリングカッタ10は、全周囲の周りに延びた端面における最前列を備えた、遠位端10.1を有する。遠位端10.1の歯は非対称であり、それによって歯の一方の側面すなわち表の側部は、ミリングカッタの軸A10に対して平行に延び、その一方で他方の側部は、角度を含む。ミリングカッタ9の近位端10.3は円対称ではないが、周囲において1つまたは複数の平坦部10.4が設けられ、それによってスターグリップ10.5(
図4a)をミリングカッタ9の近位端10.3に回転不能に装着することができ、そのためミリングカッタ10のスターグリップを、遠位の歯列10.2によって、骨材料を除去するために回転させることができる。
【0040】
別の作業ツールは、
図4bに示されるようにチゼルであり、傾斜部11.2を有する遠位端11.1を有する。傾斜部11.2によって形成された舌部11.4の遠位端面11.3も、歯状にされるか、またはいくつかの歯(この場合3つの歯)を備える。これも、骨材料を除去するのを可能にする。チゼル11の(回転)運動のために、このチゼルには、その遠位端にグリップ11.5が回転不能に設けられ、このグリップも、必要な場合は非破壊的に取り外すことができる。部分10、11の外径は、好ましくは作業スリーブ9の内腔に適合される。
【0041】
図5はガイドスリーブ12を示し、その遠位端12.1においても傾斜部12.2を有し、この傾斜部によって、側方の舌部12.3が形成される。これは、チゼル11とは対照的に、ツールとして設計されない。グリップ12.5も、ガイドスリーブ12の近位端において回転不能に装着され、このグリップは、必要であれば非破壊的に取り外すことができる。ガイドスリーブ12の外径は、第1の作業スリーブ4の内腔に対応する。
【0042】
図6は、チューブ部13.1及びヘッド部13.2を備えた内視鏡13の概略図である。このヘッド部は、交差性の器具を挿入するために開かれた、軸方向の入口を有する。このヘッド部は、画像再生デバイス(モニタ)及びフラッシュポート13.5のコネクタ13.4のための、角度が付いた装着具も備える。内視鏡の内部、特に内視鏡の円筒形のチューブ部は、特にチューブ部の外径に対して比較的大きい径を有する作業チャネルを有するよう、かつ光導波管またはカメラ、及び光源、ならびにこのチューブ部の一方の側に配置される1つまたは2つのフラッシングチャネルを有するよう、従来の方法で設計される。
【0043】
本発明によるツールセットを使用する方法シーケンスは、実質的に以下のように行われ(
図7)、ツールセットの一部は、ガイドロット5のガイドチューブ4、及び
図1を参照して説明した他の部分を含む。
【0044】
まず、作業することになる椎骨Wに近い患者の皮膚に、切開部を設ける。次に、遠位に斜角が付いた中空ニードル1が、その中に位置されたスタイレットと共に、この切開部を介して、X線像を用いて椎骨Wの手術箇所まで挿入される。次にスタイレットは取り外され、ガイドワイヤ3が中空ニードルを介して中空ニードルの遠位端まで誘導される(
図7b)。その後、中空ニードル1は取り外され、次にガイドチューブ4が、配置されたガイドワイヤ3を覆って椎骨Wの手術箇所まで挿入される(
図7c)。第1の拡張器6が、次にガイドチューブ4を覆って挿入され得るが、これは以下のケースにはない。
【0045】
この点において、例えば国際公開第2014/146797号または国際公開第2015/022040号を参照されたい。ガイドチューブ4または拡張器6が、説明したように、作業/手術することになる領域における、骨または椎骨Wの外壁に設置された後、別の方法シーケンスが、
図7dに示されるように以下のように進められる。
【0046】
偏心したガイドロッド5は、ガイドチューブ4を覆って遠位方向に、骨または椎骨Wの表面まで挿入され(
図7d及び
図7d1)、次に、例えば骨増殖体などの所望の手術箇所に対する、ガイドチューブ4(及び任意選択で拡張器6)の位置決めが、X線像で確認される。その後のステップにおけるガイドチューブ4の初めの位置決めにおいて、ガイドチューブ及び/またはガイドワイヤを覆って導入されることになる作業スリーブが、対応する骨増殖体を網羅または命中せず、次に挿入することになる作業器具を使用して作業するようにならない場合、ガイドチューブ4は(任意選択で拡張器と共に)椎骨または骨の表面から持ち上げられ、その一方で偏心したガイドロッドの遠位の先端5.4が、椎骨に位置される(
図7e及び
図7e1)。
【0047】
その後、偏心したガイドロッド5は、椎骨Wまたは骨の壁に位置された先端5.4の周りに、レバーまたはグリップ5.7によって所望の方法で枢動され、それによってガイドロッド5の空洞5.2、したがって中に位置されたガイドチューブ4は、例えば椎骨Wまたは骨における骨増殖体の位置など、所望の手術箇所に到達する(
図7e~
図7fの推移、
図7f1)。
【0048】
別のステップにおいて、次にガイドチューブ4は再び前方に、ガイドロッド5内の椎骨/骨Wの壁に当たるまで遠位方向に押し込まれる。ここで、ガイドロッド5とそのグリップ5.7との角度的な整合は保たれる。
【0049】
偏心したガイドロッド5は、次に近位方向に後退され、それによってガイドロッド5の遠位端は椎骨/骨Wの壁から外れ(
図7f~
図7gの推移、
図7g1)、次に中心で取り外される。より大きいチャネルの断面が望ましい場合、体の表面から椎骨/骨まで導く作業チャネルを広げるために、拡張器6、7、8が、任意選択で患者の体の中に、治療することになる椎骨Wまたは骨の作業箇所まで挿入される(
図7h及び
図7i)。
【0050】
作業スリーブ9を、部分4及び任意選択で6、7、8を覆って挿入した後(
図7j)、ガイドチューブ4及び任意選択で拡張器6、7、8(
図7j)などの、他の全てのチューブは取り外される(
図7k)。次に、必要な場合は、
図4のミリングカッタ10または
図4cのチゼル11、または椎骨/骨における手術ステップを実施するためのプライヤなどの作業ツールは、作業スリーブ9を介して手術箇所まで直接挿入される(
図7l~
図7n)。空洞を用いて見ながら、ミリングカッタ10を利用して作業するために、空洞を介して内視鏡を挿入して、その遠位端を手術箇所に近付けることができる。
【0051】
歯が遠位に設けられた第1の作業スリーブ9を取り外した後、
図5を参照して説明した、別様に設計された第2のガイドスリーブを、任意選択でチゼル11及びその取り外し可能なグリップ11.5を覆って挿入でき、次にチゼル11を取り外した後に、内視鏡13(
図7p)を、手術溝における別の作業のための作業ツールに従って、チャネルを介したスリーブを通して挿入することができる。
【0052】
本発明による偏心したガイドロッド5によって、第1の方法ステップにおいて作業器具が精確に挿入されなかった場合に、作業ロッドを椎骨/骨の表面に固定された先端の周りに枢動させることによって、椎骨/骨における手術箇所まで側方にずらすことを実現することが可能である。
【0053】
作業器具10、11、また任意選択で作業器具のためのチャネルを備えた内視鏡13は、対応する手術ステップを任意選択で内視鏡を用いて実施するために、対応する作業スリーブ9を介して挿入することができる。