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特許7456636高周波表層加熱電極構造及び高周波表層加熱装置
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  • 特許-高周波表層加熱電極構造及び高周波表層加熱装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】高周波表層加熱電極構造及び高周波表層加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/54 20060101AFI20240319BHJP
   B27M 1/08 20060101ALI20240319BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20240319BHJP
   B29C 65/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H05B6/54
B27M1/08 F
B27M3/00 B
B29C65/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021202310
(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公開番号】P2023087824
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390024394
【氏名又は名称】山本ビニター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰司
(72)【発明者】
【氏名】井口 健治
(72)【発明者】
【氏名】塩田 智大
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-125013(JP,A)
【文献】特開2003-82837(JP,A)
【文献】特開平9-289078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/54
B27M 1/08、3/00
B29C 65/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、前記金属板の一方の主面上の第1の方向に所定間隔を置いて設けられ、前記第1の方向に対して直交する第2の方向に延設された互いに平行な金属製の複数の突条とを備えた負電極と、
互いに隣接する前記突条の間で前記第2の方向と平行に延設され、かつ前記突条の高さと対応した高さ位置に支持された各列の金属棒を有する正電極とを備えた高周波表層加熱電極構造。
【請求項2】
前記金属棒は、互いに隣接する前記突条の間の中間位置で前記第2の方向と平行に延設された請求項1に記載の高周波表層加熱電極構造。
【請求項3】
前記金属棒は、前記突条の高さと等しい高さ位置に支持された請求項1又は2に記載の高周波表層加熱電極構造。
【請求項4】
前記金属板の前記一方の主面に立設され、頂部で前記金属棒を支持する絶縁の支持板を備えた請求項1~3のいずれかに記載の高周波表層加熱電極構造。
【請求項5】
前記第1の方向における前記突条と前記金属棒及び前記支持板との隙間は空気層である請求項4に記載の高周波表層加熱電極構造。
【請求項6】
前記正電極と高周波供給源との間に介設される給電線路を備え、
前記給電線路は、前記金属棒の前記第2の方向における複数位置から前記金属板を貫通して延設される各列の給電棒と、前記複数位置毎に前記各列の給電棒と接続する水平中継板とを備え、
前記金属板は、前記複数位置に対向する位置に前記給電棒を貫通させる貫通孔が穿設されている請求項1~5のいずれかに記載の高周波表層加熱電極構造。
【請求項7】
前記複数位置は、前記金属棒の前記第2の方向における4分の1及び4分の3の2箇所である請求項6に記載の高周波表層加熱電極構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の高周波表層加熱電極構造と、
前記高周波表層加熱電極構造の前記正、負電極間に高周波電力を供給する高周波供給源とを備えた高周波表層加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュ構造等の内側の芯材と表面材とを接着剤を溶融して接着する高周波表層加熱電極構造及び高周波表層加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テーブルの天板、ドア、クローゼットの扉などを加工する方法として、木製の枠や芯板の表面に接着剤を塗布して合板、化粧板などの表面材を積層し(例えばフラッシュ構造)、高周波誘電加熱によって枠や芯板と合板や化粧板とを接着する技術が提案されている(特許文献1)。より具体的には、板状に積層された被加工材を上下で挟んで横方向に搬送するコンベアを備えると共に、搬送路の上下両面側に搬送方向にプラス電極とマイナス電極とを一定ピッチで交互、かつ搬送方向に直交する向きに平行配置したものである。
【0003】
また、押圧型の高周波表層加熱装置として、盤状に成形されたソリッド状絶縁体の上面に棒状のプラス電極とマイナス電極とを一定ピッチで交互、かつ平行に配設した電極構造を備え、その上面に被加工材を押圧した状態で高周波誘電加熱する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-28706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の高周波誘電加熱装置は、同じ棒状のプラス電極及びマイナス電極を交互に配置して、被加工材を半ピッチ搬送する毎に加熱動作を行うようにして被加工材の表面に過加熱の筋模様が入らないようにしたもので、プラス電極とマイナス電極とを適宜の形状乃至構造にして誘電加熱に供することは記載されていない。
【0006】
また、従来の押圧型の高周波表層加熱装置は、ソリッド状絶縁体の平坦表面にプラス電極とマイナス電極とを交互に配置した構造であるため、電極間に生じる電界の一部が絶縁物内部まで分布し、その分布成分で絶縁物を加熱する分、被加工材に対する加熱効率を制限していた。また、隣接する両電極間にソリッド状絶縁体の界面が直線状に存在するため、両電極間でスパークが生じ易いという課題があった。さらに、棒状の電極の両端には整合器から高周波電力を導入するための給電板が設けられるが、両端の給電板と1台の整合器との距離が互いに均等になるようにして加熱バランスを取る配置構造は必ずしも容易でないという課題があった。また、棒状のプラス電極とマイナス電極の両端は、両端間でのスパークを防ぐために、長手方向に所定の絶縁距離だけ離間させる必要があり、その絶縁距離だけ回路損失及び装置サイズの大型化を招くという課題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、加熱効率及び加熱バランスの向上が可能な高周波表層加熱電極構造及び高周波表層加熱装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る高周波表層加熱電極構造は、金属板と、前記金属板の一方の主面上の第1の方向に所定間隔を置いて設けられ、前記第1の方向に対して直交する第2の方向に延設された互いに平行な金属製の複数の突条とを備えた負電極と、互いに隣接する前記突条の間で前記第2の方向と平行に延設され、かつ前記突条の高さと対応した高さ位置に支持された各列の金属棒を有する正電極とを備えたものである。
【0009】
本発明によれば、正電極を構成する各列の金属棒の周囲を、金属板及び平行な複数の突条からなる、縦断面でいわゆる櫛形をなす負電極で囲む構成としたので、アース回路としての抵抗分を低減でき、その分、加熱効率が向上する。また、負電極に金属板を適用することでアース電位を負電極全体に亘って均一化でき加熱バランスが向上する。なお、各列の電極棒の内、例えば列方向で外側になる金属棒については、互いに隣接する突条の間の中間位置からずらすことで、むしろ電位バランスが図れる。また、金属棒を突条の高さと等しい高さ位置からずらすこと、すなわち対応する高さ位置にして電位の強弱を調整することで、被加工材に応じた表層加熱を施すことが可能となる。
【0010】
また、前記金属棒は、互いに隣接する前記突条の間の中間位置で前記第2の方向と平行に延設されたものである。この構成によれば、標準化、製作作業に適する。
【0011】
また、前記金属棒は、前記突条の高さと等しい高さ位置に支持されたものである。この構成によれば、標準化、製作作業に適する。
【0012】
また、本発明は、前記金属板の前記一方の主面に立設され、頂部で前記金属棒を支持する絶縁製の支持板を備えたものである。この構成によれば、立設された支持板によって金属棒が所定の位置に支持される。
【0013】
また、本発明は、前記第1の方向における前記支柱と前記金属棒との隙間は空気層としたものである。この構成によれば、金属棒の下部に絶縁性の支柱を配置すると共に、支柱と突条との隙間を空気層とすることで、正負電極間の誘電率乃至誘電損を低減することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、前記正電極と高周波供給源との間に介設される給電線路を備え、前記給電線路は、前記金属棒の前記第2の方向における複数位置から前記金属板を貫通して延設される各列の給電棒と、前記複数位置毎に前記各列の給電棒と接続する水平中継板とを備え、前記金属板は、前記複数位置に対向する位置に前記給電棒を貫通させる貫通孔が穿設されたものである。この構成によれば、給電点を金属棒の両端ではなく、金属棒の第2の方向の途中の好適な位置に設定できるので電位の均一化、すなわち加熱バランスが図れ、また、両端に給電点を設ける従来方式に比べて小型化が可能となる。
【0015】
また、前記複数位置は、前記金属棒の前記第2の方向における4分の1及び4分の3の2箇所である。この構成によれば、正極である金属棒の給電位置が最適になることで第2の方向に対する加熱バランスが好適となり、また、整合器の配置位置の自由度が高まる。
【0016】
また、本発明に係る高周波表層加熱装置は、前記高周波表層加熱電極構造と、前記高周波表層加熱電極構造の前記正、負電極間に高周波電力を供給する高周波供給源とを備えたものである。本発明によれば、加熱効率及び加熱バランスの向上した高周波表層加熱装置が提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加熱効率及び加熱バランスを向上させる高周波表層加熱が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る高周波表層加熱装置の一実施形態を示す概略構成図で、(A)は概略斜視図、(B)は正面から見た概略図である。
図2】下電極部の、蓋を除いた状態の電極本体部の斜視図である。
図3図2の平面図である。
図4】高周波表層加熱電極と整合器とを左右方向で接続した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る高周波表層加熱装置1の一実施形態を示す概略構成図で、(A)は概略斜視図、(B)は正面から見た概略図である。図1において、高周波表層加熱装置1は、所定形状、例えば直方体形状の筐体11(図1(B)中、破線で示す。)を備え、この筐体11の内部に上下電極部2,3と、発振器4と、整合器5と、制御回路が搭載された基板等を含む、図略の制御盤とが配置されている。上下電極部2,3には、図略の支持部が設けられている。本実施形態では、必須ではないが、上電極部2の上側には、筐体11に支持され、上電極部2を昇降させる支持部12(図1(B)参照)が備えられている。
【0020】
まず、筐体11の概要を説明する。筐体11は、フレーム(図では見えていない)及び6面の側板によって構成され、少なくとも前面側(y方向)の側板は、上下方向(z方向という)の中央部分を除く上下の側板で構成され、中央部分に開口を形成している。なお、中央部分の開口のサイズは、上電極部2と下電極部3との間の空間サイズに対応している。従って、図略の被加工材は、中央部分の開口から装入されて上下電極部2,3間にセットされ得る。本実施形態では、筐体11の左右方向(x方向)の右側に発振器4が配設され、発振器4の下部左側に整合器5が連接されている。
【0021】
被加工材は、上下電極部2,3の間に押圧された状態で内装されて表層への加熱処理が施される。被加工材としては、テーブルの天板、ドア、クローゼットの扉などであって、木製の枠や芯板の表面(少なくとも一方の面)に接着剤を塗布して合板や化粧板などの表面材を積層した板状のものが採用される。高周波加熱によって接着剤を溶融して芯板と表面材とを接着することで被加工材が製作される。上電極部2は、電極本体部20及び給電線路の構成部材である中継板24、給電板25を備え、下電極部3は、電極本体部30及び給電線路の構成部材である中継板34、給電板35を備える。なお、上下電極部2,3は、同一構造体を空間を隔てて上下に対向配置したものであるので、以下では下電極部3を代表して説明し、上電極部2の説明は省略する。
【0022】
下電極部3の電極本体部30は、筐体11の下半部側であって、筐体11の内側面に対してx、y方向に所要の絶縁距離を置いて、底板301上に配置された直方体形状を有するものである。電極本体部30は、図2図3に示すように、負極側の負電極部31、正極側の正電極部32及び蓋33(図1参照)とを備えて構成されている。
【0023】
図2は、蓋33を除いた状態の電極本体部30の斜視図、図3は、図2の平面図である。これらの図に示すように、負電極部31は、直方体をなす板状の金属板311と、金属板311の主面(ここでは上面)に立設された複数列の突条312とを備える。金属板311は、例えばアルミニウム製で、被加工材の押圧に対して変形しない程度の厚さを有し、別途の補強材を不要としている。突条312は、例えばアルミニウム製で、金属板311の上面のy方向に所定間隔、例えば本実施形態では一定間隔のピッチ(例えば数十mm)を置いて複数本(例えば両側を含めて7本)が互いに平行にx方向に延設されている。突条312は、例えば、z方向の高さ寸法が数十mmで、y方向の幅寸法が10mm程度であり、x方向の延設寸法L-は、被加工材に合わせた適宜のサイズが採用され得るもので、直方体形状を有する。負電極部31は、x方向視で断面櫛形形状を有する。また、金属板311のy方向であって互いに隣接する突条312の立設箇所の中間位置で、かつx方向の所定位置(後述する給電棒322と交差する位置)に、後述する正電極部32への給電路用としての所要径を有する貫通孔31a(図3参照)が穿設されている。
【0024】
正電極部32は、正電極となる、例えば銅製の金属棒321と、この横向きの金属棒321を突条312の頂部の高さと対応、ここでは同一高さ位置に下側から支持する絶縁材、例えばポリカーボネート製の支持板32aと、金属棒321への給電路を構成する、例えば銅製の給電棒322とを備える。支持板32aは、金属板311のy方向に向けて互いに隣接する突条312の立設箇所の中間位置に、例えば金属ボルトや樹脂ボルト、接着剤で立設される。支持板32aは、y方向の幅寸法は突条312と同一で、突条312と平行にx方向に延設される。ただし、支持板32aは、図3に示すように、x方向において給電棒322が配置される箇所では区切られている。
【0025】
金属棒321は、支持板32aの頂部に支持される。金属棒321は、x方向視で、高さ方向に薄層の長方形形状を有し、y方向の寸法は、突条312と同一乃至多少大きく設定されている。なお、金属棒321は、x方向視で長方形に限らず、例えば円形でもよい。また、金属棒321は、支持板32aの頂部でx方向に突条312と平行に延設される。金属板311及び突条312のx方向の両端は一致し、金属棒321のx方向の寸法L+は、図3に示すように、突条312のx方向の寸法L-に比して短く、各端部側で、絶縁距離を考慮した所定寸法だけ短く設定されている。以上によれば、突条312の頂部が負電極として、金属棒321の頂部が正電極として機能する。また、従来に比して、正電極である金属棒321を短縮することができ、全体が小型化可能となる。さらに、支持板32aに誘電損の低い樹脂を採用し、また、突条312との間に空気層を介在することで、正負電極間で誘電率乃至誘電損を一層下げることが可能となり、また軽量化、簡易化が図れる。
【0026】
蓋33は、電極本体部30の頂部全面を覆う絶縁材からなる板状体である。蓋33の下面には、突条312及び金属棒321の頂部位置に対応して溝が穿設され、この例では金属棒321全体が溝の奥側に埋まり込む寸法に設計されている。
【0027】
図1(A),(B)に示すように、下電極部3の電極本体部30の蓋33の上面と上電極部2の電極本体部20の蓋23の下面との間で被加工材が挟持され、その状態で高周波表層加熱処理が施される。
【0028】
次いで、給電のための給電棒322及び給電線路構造である中継板34と給電板35について説明する。中継板34及び給電板35は、金属板311と底板301の間の空間に配設される。
【0029】
図2に示すように、給電棒322は、各列の金属棒321のx方向における所定位置で金属棒321の下面に立設される。金属棒321と給電棒322とは一体でもよいし、別体を連結する態様でもよい。給電棒322は、y方向の幅寸法が突条312の幅寸法と同一乃至それ以下に設定されている。金属棒321のx方向について、給電棒322が接続される位置は、本実施形態では、金属棒321のx方向(すなわち電極本体部30のx方向)の寸法を、図1図3に示すように、4等分した際の1/4と3/4の2箇所としている。x方向における1/4と3/4の位置を高周波電力の給電箇所とすることで、x方向における高周波電界強度がより均一化され、給電バランスが図れることで加熱バランスがより均一化される。なお、給電箇所は、前記の2か所の他、x方向で対称となる複数個所でもよい。
【0030】
各列の給電棒322は、同一形状で所定長を有し、金属板311の対応する貫通孔31aを貫通して下方に延設される。各列の給電棒322の下端位置には、図1に示すように、y方向に長尺の中継板34が配置される。各列の給電棒322の下端は、中継板34に接続されている。中継板34は、前記したように、金属棒321のx方向の1/4と3/4の2箇所の下方に配置されると共に、その間の連接部は狭幅に設計されている。なお、上電極部2では、図1(A)に示されるように、各列の給電棒222は、対応する各貫通孔21aを貫通して上方に延設されている。
【0031】
また、中継板34の下方には、所定距離を隔ててx方向に長尺の水平な給電板35が図略の絶縁性支持部材によって支持されている。中継板34と給電板35とは、x方向の2個の給電棒322の中間位置で接続されている。接続位置を2個の給電棒322の中間位置とすることで、金属棒321上の電位バランスが図れる。
【0032】
金属板311の周囲4方の端縁には、下方の底板301まで延びる側板302が周設されている。ただし、図1図2では、内部の給電線路構造を説明するために、y方向の両側面は省略している。側板302は金属製であり、中継板34と給電板35の周囲を覆うことで電波漏洩を防止している。側板302のうち、整合器5と対向する面には給電板35を貫通させる開口303(図2参照)が形成されている。
【0033】
なお、金属板311は、底板301及び側板302を介して接地されることで、全面における電位差が抑制される。
【0034】
図1に示すように、上電極部2には給電板25が設けられている。給電板25は、x方向の右側に露出した後、下方に屈曲されて下側の給電板35と接触された状態で、下方の整合器5の出力部(図略)に接続される。なお、上電極部2が昇降可能な態様では、例えば、垂直部251を途中で分割し、かつ上下の一部が重なるように配置し、上側の垂直部251の昇降スライドを下側の垂直部251で接触させながら吸収するようにしてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、図1(B)に示すように、上電極部2を昇降させる昇降機構を備えた支持部12が設けられている。支持部12は、筐体11の内部の上方側位置でx方向に架設された架橋部120に支持され、下部側は上電極部2の天板201と連結されている。支持部12は、天板201を支持する所要本数の昇降ガイド121と、天板201を昇降させる一対のシリンダ122とをx方向に備える。シリンダ122は、公知の機構が採用可能であり、シリンダ筒に内装されたロッドを図略の駆動源(モータ、油圧あるいはエア)からの駆動力で上下へ出没させることで上電極部2を昇降させることが可能となる。上電極部2が昇降して下電極部3との間の隙間寸法を可変調整することで、被加工材の厚さ寸法に対応させて表層加熱処理を施すことができる。
【0036】
次に、図4は、上下電極部2,3と整合器5との給電線路の接続形態を示す概略斜視図である。給電板25,35をそのままx方向の右側に延設させて整合器5の高周波電力の出力部(図示せず)に接続される。なお、上電極部2が昇降可能な態様では、給電板27が昇降する範囲内で、整合器5の出力部である縦板上に接触しつつスライドすることで、あるいはフレキシブルに変形することで接触が維持されるように配置されている。
【0037】
続いて、高周波表層加熱装置1の電気的な構成、動作について簡単に説明する。本装置1は、高周波供給源として、電源部を含む発振器4と、発振器4からの発振電力を負荷にマッチングさせた状態で電力を出力する整合器5とを少なくとも備え、給電線路を介して上下電極部2,3に高周波電力を供給する。発振器4は、電源部で生成された所定の電圧から所定の高周波の電力信号を生成する。整合器5は、電源側から見た出力インピーダンスを負荷側のインピーダンスと整合させ、整合された高周波電力を出力部から給電板25,35に出力する。発振周波数としては、数MHz~数十MHz、例えば、13.56MHz、又は27MHzあるいは40.68MHzが採用可能である。
【0038】
整合器5は、公知であって、少なくとも一方が可変型のコンデンサ(C)及びインダクタンス素子(L)を備え、かつ必要なマッチング用の駆動機構を備える。整合器5は、加熱の進行に応じて変化するであろう負荷側のインピーダンスを、例えば出力・反射レベルセンサを用いた公知の方法で検出するなどし、マッチング制御のための制御回路(プロセッサ及び制御動作プログラム)で自動的にLC調整を行って、マッチング状態の維持を行う。整合器5は、上下電極部2,3の両方をまとめてマッチング制御する態様でもよいし、上下電極部2,3を個別にマッチング制御する態様でもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、金属棒321を、互いに隣接する突条312の間の中間位置に配置する態様としたが、中間位置に限定されず、互いに隣接する突条312の間で中間位置からずらして配置してもよく、これにより被加工材に応じた電極構造が製作できる。さらに、本実施形態では、金属棒321を、突条312の高さと等しい高さ位置に支持する態様としたが、必ずしも等しい高さ位置となるようにしなくてもよく、これにより被加工材に応じた電極構造が製作できる。
【0040】
また、前記実施形態では、上下電極部2,3を備えた装置で説明したが、本発明は、上電極部2及び下電極部3の一方のみを備えた装置にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 高周波表層加熱装置
2 上電極部
3 下電極部
20,30 電極本体部
31 負電極部
311 金属板
312 突条
21a,31a 貫通孔
32 正電極部
321 金属棒
222,322 給電棒
32a 支持板
33 蓋
24,34 中継板
25,35 給電板
4 発振器(高周波供給源)
5 整合器(高周波供給源)
図1
図2
図3
図4