(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】自動車のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続及び切断を制御する装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/033 20060101AFI20240319BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20240319BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240319BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240319BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B60R16/033 B
B60R16/03 A
H02J1/00 306M
H02J1/00 306L
H02J1/00 308P
H02J7/00 A
H02J7/34 B
(21)【出願番号】P 2021521134
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 US2019060190
(87)【国際公開番号】W WO2020097282
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-15
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513225866
【氏名又は名称】▲黄▼ 永昇
【氏名又は名称原語表記】HUANG, YUNG-SHENG
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ユン-ション
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0322101(US,A1)
【文献】国際公開第2015/136826(WO,A1)
【文献】特開2016-118127(JP,A)
【文献】特開2008-290598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0030945(US,A1)
【文献】特開2006-029142(JP,A)
【文献】特開2015-063933(JP,A)
【文献】特開2011-230679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/033
B60R 16/03
H02J 1/00
H02J 7/00
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパーキャパシタ(40)と連動してバッテリーユニット(30)によって電力が供給される始動モータ(20)を有し、電気システム(50)を備える自動車(10)に使用される装置であって、
(a)当該装置の動作を制御する制御機能を提供するマイクロコントローラユニット(110)と、
(b)自動車(10)の動作状態を検出し、自動車(10)が始動準備完了状態に設定された時点でスーパーキャパシタ接続イネーブル信号を生成し、自動車(10)が走行停止状態に設定された時点でスーパーキャパシタ接続ディスエーブル信号を生成する動作状態検出ユニット(120)と、
(c)バッテリーユニット(30)とスーパーキャパシタ(40)との間で相互接続され、オン/オフ状態が、マイクロコントローラユニット(110)によって制御されるスイッチングユニット(130)と、
(d)バッテリーユニット(30)とスーパーキャパシタ(40)との間に相互接続され、マイクロコントローラユニット(110)によって作動可能であり、バッテリーユニット(30)によるスーパーキャパシタ(40)の充電を仲介する電圧ブースター(140)と、
(e)バッテリーユニット(30)の現在の出力電圧V
Bを感知するために使用される第1の電圧感知モジュール(151)、及び、スーパーキャパシタ(40)の現在の充電電圧V
Cを感知する第2の電圧感知モジュール(152)と、
を含み、
バッテリーユニット(30)の現在の出力電圧V
Bがスーパーキャパシタ(40)の現在の充電電圧V
Cより大きい場合、マイクロコントローラユニット(110)は、バッテリーユニット(30)を接続して、スーパーキャパシタ(40)を充電し、
バッテリーユニット(30)の現在の出力電圧V
Bがスーパーキャパシタ(40)の現在の充電電圧V
Cよりも低い場合、マイクロコントローラユニット(110)は、電圧ブースター(140)を有効にし、バッテリーユニット(30)を接続し、電圧ブースター(140)を介してスーパーキャパシタ(40)を充電
し、
マイクロコントローラユニット(110)は、
自動車(10)が始動準備完了状態に設定されている時点で、バッテリーユニット(30)がスーパーキャパシタ(40)を充電するよう、バッテリーユニット(30)をスーパーキャパシタ(40)に接続し、
自動車(10)がモータの電源オン状態に設定されている時点で、初期起動のためにスーパーキャパシタ(40)を始動モータ(20)に接続し、始動モータ(20)に瞬間的なサージ電流を供給し、
自動車(10)の走行中、電気システム(50)に定常状態の電圧を供給するためのバッテリーユニット(30)とスーパーキャパシタ(40)の並列構成を維持し、電気システム(50)が過負荷状態にさらされている時点で、スーパーキャパシタ(40)を使用して瞬間的なサージ電流を電気システム(50)に供給し、
自動車(10)が走行停止状態に設定されている時点で、バッテリーユニット(30)をスーパーキャパシタ(40)から切断することを特徴とする自動車のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続及び切断を制御する装置。
【請求項2】
始動準備完了状態は、遠隔制御された自動車のロック解除動作状態であることを特徴とする請求項
1に記載の自動車のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続及び切断を制御する装置。
【請求項3】
始動準備完了状態は、キーによってトリガされる自動車のロック解除動作状態であることを特徴とする請求項
1に記載の自動車のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続及び切断を制御する装置。
【請求項4】
始動準備完了状態は、モータが始動し、電圧が降下した動作状態であることを特徴とする請求項
1に記載の自動車のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続及び切断を制御する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のバッテリー・パワーサプライ技術に関し、特に、自動車のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続及び切断を制御する装置に関する。自動車で使用されるバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続の時点を制御するために車両に適用することができ、自動車が始動準備完了状態になった一時的な時点においてスーパーキャパシタがバッテリーユニットに電気的に接続され、自動車が停止すると、二つの間の電気接続がすぐに切断される。この特徴によって、バッテリーの電源性能が向上し、バッテリーの寿命が延びる。
【背景技術】
【0002】
自動車は、一般的に広く使用されている輸送手段であり、通常はガソリンベースのエンジンを動力源として、バッテリーユニットを動力源とする始動モータを使用して自動車エンジンを始動する。しかしながら、自動車でのバッテリーユニットの使用には問題がある。つまりバッテリーユニットが大きな瞬間サージ電流の状態にあるとき、自動車のエンジンを始動するために始動モータが作動した瞬間、自動車が加速しているとき、または自動車が急な山の斜面を登っているときなど、大きな瞬間的なサージ電流が発生すると、バッテリーユニットが損傷して、バッテリーユニットが急速に劣化して、バッテリーの寿命が短くなる可能性がある。この問題を解決する一つの方法は、バッテリーユニットと並列に接続されたスーパーキャパシタ(ウルトラキャパシタとも呼ばれる)を提供して、これにより、始動モータが、動作するために大きな瞬間サージ電流が必要な場合、バッテリーユニットの代わりにスーパーキャパシタを使用して、必要な瞬間サージ電流を始動モータに供給する。したがって、スーパーキャパシタを使用すると、電源のパフォーマンスが向上して、バッテリーの寿命を延ばすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、始動モータに瞬間的なサージ電流を供給するためにスーパーキャパシタを使用する上記の解決方法では、スーパーキャパシタが固定され、バッテリーユニットに恒久的に接続されるため、スーパーキャパシタがバッテリーユニットによって常に充電されるような問題がある。スーパーキャパシタは、自己放電性を有するため、スーパーキャパシタとバッテリーユニットとの電気的接続時間が長すぎると、スーパーキャパシタは、バッテリーユニットから継続的に電力を引き出し、自己放電特性により充電された電力を放電する。そのため、バッテリーの電力が浪費されたり、バッテリーユニットが損傷したりする可能性がある。
【0004】
上述した問題に鑑みて、自動車産業において実行可能な解決方法が必要とされる。この方法は、バッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気接続に時間がかかりすぎるのを防ぐために使用され、それによって、スーパーキャパシタの自己放電によるバッテリーユニットへの悪影響や損傷を防ぐことができる。
【0005】
本発明の主な目的は、上述した問題に対する実行可能な解決方法を提供することである。これは、バッテリーユニットとスーパーキャパシタが固定され、恒久的にバッテリーユニットに接続されるのを防ぐ。それによって、スーパーキャパシタの自己放電によるバッテリーユニットへの悪影響や損傷を防ぐことができ、さらにバッテリーの電源効率を向上させて、バッテリーの寿命を延ばす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の研究目的は、バッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続の時点をどのように制御するか、つまり、必要なときに、バッテリーユニットは、スーパーキャパシタに接続され、必要ではないときに、二つの間の電気的接続をすぐに切断することにフォーカスされた。
【0007】
上述した問題を解決するために、本発明は、自動車のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続及び切断を制御する装置を提供する。
本発明にかかる装置は、(a)マイクロコントローラユニット(MCU)と、(b)動作状態検出ユニットと、(c)スイッチングユニットと、(d)電圧ブースターと、(e)第1の電圧感知モジュール及び第2の電圧感知モジュールと、を含む。
【0008】
参考態様では、自動車のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続及び切断を制御する方法を提供する。参考態様の方法は、以下のステップを含む。
(a)自動車が始動準備完了状態に設定されている一時的な時点で、バッテリーユニットをスーパーキャパシタに接続し、バッテリーユニットがスーパーキャパシタを充電できるようにするステップ。
(b)自動車がモータの電源オン状態に設定されている時点で、スーパーキャパシタを始動モータに電気的に接続し、初期始動のために始動モータに瞬間的なサージ電流を供給するステップ。
(c)自動車の走行中、電気システムに定常状態の電圧を供給するためのバッテリーユニットとスーパーキャパシタの並列構成を維持し、電気システムが過負荷状態にさらされている時点で、スーパーキャパシタを使用して瞬間的なサージ電流を電気システムに供給するステップ。
(d)自動車が走行停止状態に設定されている一時的な時点で、バッテリーユニットをスーパーキャパシタから切断するステップ。
【発明の効果】
【0009】
総括して、本発明にかかる装置は、スーパーキャパシタが、ユーザが自動車を運転したいときにのみバッテリーユニットに電気的に接続され、自動車が運転を停止するとすぐにバッテリーユニットから切断されることを特徴とする。この特徴は、バッテリーユニットとスーパーキャパシタの間の電気的接続が極端に長くなるのを防ぐのに役立つ。電気的接続時間が長くなったら、自己放電特性により、電源性能が低下したり、バッテリーユニットが損傷したりする可能性がある。したがって、この特徴は、電源のパフォーマンスを向上させて、バッテリーの寿命を延ばすのに役立つ。さらに、スーパーキャパシタは、その自己放電特性により、充電された電力が急速に放電されて無駄になるため、事前に充電することはできない。本発明は、この問題を次のように解決する。
使用者が自動車を運転する準備をしている一時的な時点でのみスーパーキャパシタをバッテリーユニットに電気的に接続する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の自動車のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続および切断を制御する装置の適用を示す概略図である。
【
図2】本発明のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続および切断を制御する装置の実施形態の構造を示す概略図である。
【
図3】本発明のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続および切断を制御する装置によって実行されるプログラムステップを示すフローチャートである。
【
図4】自動車エンジンを始動するために始動モータが最初に作動された時点でのバッテリーユニットの出力電圧の電圧降下の波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、自動車のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続及び切断を制御する方法および装置を提供する。これは、添付の図面を参照して、以下の好ましい実施形態によって完全に詳細に開示される。
【0012】
図1は、本発明の自動車10のバッテリーユニットとスーパーキャパシタとの間の電気的接続及び切断を制御するための装置の構造を示す概略図であり、本発明は、符号100によって示される装置として実現される。実際には、自動車10は、バッテリー電源によってエンジン始動する任意の車両であり得て、たとえば、四輪車、三輪車、または二輪オートバイである。自動車10は、エンジン始動のために始動モータ20を使用して車輪を駆動して、バッテリーユニット30を使用して電力を供給して、始動モータ20を作動させる。
また、瞬間的なサージ電流が大きい状態で電源性能が低下したり、バッテリーユニット30が損傷したりすることを防止するために、自動車10は、バッテリーユニット30の代わりに使用されるスーパーキャパシタ(またはウルトラキャパシタと呼ばれる)40をさらに備える。スーパーキャパシタは、エンジン始動時に始動モータ20に瞬間的なサージ電流を供給して、これにより電源性能を改善して、バッテリーの寿命を延ばすことができる。通常、スーパーキャパシタ40は、0.1F(ファラッド)を超える静電容量を有する。さらに、自動車10は、電気システム50を設けて、バッテリーユニット30が、例えば、ヘッドライト、ホーン等及び自動車10の他の部分に電力を供給できるようにする。
【0013】
しかしながら、上述した本発明の技術背景で説明したように、バッテリーユニット30とスーパーキャパシタ40との間の電気的接続が固定されて永続的である場合、電源性能の低下またはバッテリーユニット30への損傷さえ引き起こす問題を引き起こす可能性がある。この問題を解決するために、自動車10は、上記の問題の解決方法となる本発明の装置100を備える。
【0014】
本発明の装置100は、特定の一時的な時点でのバッテリーユニット30とスーパーキャパシタ40との間の電気的接続および切断を制御することができる。つまり自動車10がユーザによって始動準備完了状態に設定された一時的な時点でのみ、バッテリーユニット30がスーパーキャパシタ40に電気的に接続されて、自動車10が走行を停止した一時的な時点で、すなわち、走行停止状態に設定されると、バッテリーユニット30は、スーパーキャパシタ40から直ちに切断される。上記の機能を実施するために、本発明の装置100は、バッテリーユニット30とスーパーキャパシタ40との間の電気的接続および切断を制御するためのスイッチング機構の使用によって特徴づけられる。
【0015】
図2は、本発明の装置100の実施形態の構造を示す概略図である。
図2に示すように、本発明の装置100は、(a)マイクロコントローラユニット(MCU)110と、(b)動作状態検出ユニット120と、(c)スイッチングユニット130と、(d)電圧ブースター140と、(e)第1の電圧感知モジュール151および第2の電圧感知モジュール152を含む一対の電圧感知ユニットと、を備える。本発明の装置100のこれらの構成要素は、それぞれ、以下に詳細に説明される。
【0016】
MCU110は、バッテリーユニット30とスーパーキャパシタ40との間の電気的接続および切断を制御するための本発明の装置100の動作を、制御および監視するために使用される。具体的には、MCU110は、組み込みマイクロプロセッサなどのマイクロプロセッサとともに実施することができる。または、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、PLD(プログラマブルロジックデバイス)、PLA(プログラマブルロジックアレイ)、PAL(プログラマブルアレイロジック)などのカスタマイズされたプログラマブルロジック回路で実施できる。
【0017】
動作状態検出ユニット120は、自動車10の動作状態を検出することができる。すなわち、自動車10が現在、以下の動作状態のいずれかにあるかどうかを検出することができる。(1)始動準備完了状態、(2)モータの電源オン状態、および(3)走行停止状態。動作状態検出ユニット120が始動準備完了状態の発生を検出した時点で、スーパーキャパシタ接続イネーブル信号をMCU110に送信する。動作状態検出ユニット120は、走行停止状態の発生を検出した時点で、スーパーキャパシタ接続ディスエーブル信号をMCU110に送信する。具体的な実施においては、現在市場に出回っている車両には、さまざまな使用方法や操作方法がある可能性があって、始動準備完了状態は、さまざまな方法で実施できる。そのため、この発明では、「始動準備完了状態」という用語は、次の動作状態のいずれかとして定義される。
【0018】
(1)遠隔制御された自動車のロック解除動作状態。これは、本明細書では、自動車10が自動車10のロックを解除するためにユーザによって使用されるリモートコントローラからワイヤレスロック解除信号を受信する時点で発生する動作状態として定義される。
【0019】
(2)キーによってトリガされる自動車のロック解除動作状態。これは、本明細書では、自動車10のロック解除および始動に使用されるキーが、自動車10の制御パネルに設けられたキートリガスイッチにユーザによって所定の位置に挿入されたときの一時的な時点で発生する動作状態として定義される。
【0020】
(3)モータが始動し、電圧が降下した動作状態。これは、本明細書では、バッテリーユニット30の出力電圧に電圧降下ΔVが発生したときの一時的な時点で発生する動作状態として定義される。すなわち、初期無負荷電圧V
0は、バッテリーユニット30が始動モータ20に大きな瞬間的なサージ電流を供給するために大きさΔVで低下する。これについては、
図4を参照して以下でより詳細に説明する。
【0021】
動作状態検出ユニット120は、動作状態検出ユニット120が上記動作状態のいずれかの発生を検出した時点で、スーパーキャパシタ接続イネーブル信号を直ちにMCU110に送信する。これにより、MCU110を作動させて、スイッチングユニット130をオン状態にして、バッテリーユニット30をスーパーキャパシタ40に電気的に接続する。一方、動作状態検出ユニット120が走行停止状態の発生を検出した時点、すなわち、自動車10が走行を停止すると、スーパーキャパシタ接続ディスエーブル信号を直ちにMCU110に送信する。それにより、MCU110を始動して、スイッチングユニット130をオフ状態にして、バッテリーユニット30をスーパーキャパシタ40から切断する。
【0022】
図4の波形図は、始動モータ20が始動した後の上述した第3の動作状態にあるバッテリーユニット30の出力電圧の波形変化を示している。
図4に示すように、バッテリーユニット30が無負荷のとき、その無負荷電圧はV
0であると想定される。始動モータ20が作動した瞬間、すなわち、モータスイッチ21がオンになって始動モータ20をバッテリーユニット30に電気的に接続したとき、バッテリーユニット30の出力電圧の波形は、一連の移行フェーズ:P1、P2、P3、P4及びP5を含む。
これらは、それぞれ以下で説明される。
P1:バッテリーユニット30の出力電圧が定格無負荷電圧V
0に等しいときに始動モータ20が作動する前の初期段階である。
P2:始動モータ20が最初に作動され、バッテリーユニット30の出力電圧の急激な電圧降下を引き起こした時の移行点であって、これは、自動車10のロック解除および始動に使用されているときに、リモートコントローラまたはキーのいずれかによってトリガされる。
P3:電圧降下の最低点であって、始動モータ20の最初の始動は、バッテリーユニット30が大きな瞬間的なサージ電流を供給することを必要とするので、始動モータ20の最初の起動によって引き起こされる。
P4:バッテリーユニット30の出力電圧が最低点P3から定格電圧レベルに徐々に戻る移行段階である。
P5:バッテリーユニット30の出力電圧が定格電圧レベルを超えたときに、自動車10が巡航速度で走行していることを示している移行点である。
【0023】
図4に示す波形では、点P2とP3との間の適切な中間点Qは、本発明に従って、始動準備完了状態のトリガ点として選択される。点Qと点P1との間の電圧差は、ΔVによって示される。動作中、動作状態検出ユニット120は、バッテリーユニット30の出力電圧が定格無負荷電圧V
0からトリガ点Qまで低下して、電圧降下ΔVが発生したことを検知すると、速やかにスーパーキャパシタ接続イネーブル信号をMCU110に送信する。
【0024】
スイッチングユニット130は、バッテリーユニット30とスーパーキャパシタ40との間に相互接続されて、そのオン/オフ状態は、MCU110によって制御される。MCU110は、動作状態検出ユニット120からスーパーキャパシタ接続イネーブル信号を受信すると、MCU110はスイッチングユニット130をオン状態にする。一方、MCU110は、動作状態検出ユニット120からスーパーキャパシタ接続ディスエーブル信号を受信すると、スイッチングユニット130をオフ状態にする。スイッチングユニット130がオン状態になると、バッテリーユニット30をスーパーキャパシタ40に電気的に接続することができて、それにより、バッテリーユニット30がスーパーキャパシタ40を充電することを可能にする。一方、スイッチングユニット130がオフ状態になると、バッテリーユニット30をスーパーキャパシタ40から切断することができて、それにより、バッテリーユニット30をスーパーキャパシタ40から隔離することを可能にする。実施においては、スイッチングユニット130は、電気機械式リレー、ソリッドステートリレー(SSR)、またはトランジスタベースの電子スイッチで設けることができる。
【0025】
電圧ブースター140は、バッテリーユニット30とスーパーキャパシタ40との間に相互接続されており、これは、MCU110からブーストイネーブル信号BOOSTを受信したときに作動するように始動することができる。電圧ブースター140は、ブーストイネーブル信号BOOSTによって作動されると、バッテリーユニット30が電圧ブースター140を介してスーパーキャパシタ40を充電することを可能にするステップアップブースト機能を提供することができる。
図2に示されるように、電圧ブースター140は、トランジスタベースのスイッチ141、インダクタ142、ダイオード143、およびコンデンサ144から構成される従来型の回路アーキテクチャで設けられる。この従来型の回路アーキテクチャはよく知られているので、その詳細は本明細書では説明しない。
【0026】
第1の電圧感知モジュール151は、バッテリーユニット30の現在の出力電圧VBを感知するために使用され、感知されたレベルのVBはMCU110に送られる。同時に、第2の電圧感知モジュール152は、スーパーキャパシタ40の現在の充電電圧VCを感知するために使用され、感知されたレベルのVCはMCU110に送られる。MCU110において、VB及びVCの値は、最初に、組み込みのA/D(アナログからデジタル)変換機能によってデジタル形式に変換されて、次に、VBがVCより大きいかどうかをチェックする。VBがVCよりも大きい場合、MCU110は、電圧ブースター140を無効にしながら、MCU110をオン状態にするだけであり、それによって、バッテリーユニット30がスーパーキャパシタ40を充電することを直接可能にする。一方、VBがVCよりも低い場合、MCU110は、ブーストイネーブル信号BOOSTを電圧ブースター140に出力して、それにより、バッテリーユニット30が、電圧ブースター140を介してスーパーキャパシタ40を充電することを可能にする。
【0027】
さらに、
図2に示される実施形態では、本発明の装置100は、I/O制御ユニット200に外部的にリンクすることができ、これにより、本発明の装置100を、キーボード、ディスプレイユニット、及びBluetooth(登録商標)、4G、Zigbee(登録商標)、UART等の無線ネットワークシステム(図示せず)等に外部的にリンクすることができる。I/O制御ユニット200は、自動車10に関する動作状態情報を表示ユニットに転送して自動車10の動作状態をユーザに通知するか、無線ネットワークシステムを介して、自動車10の運転状況を監督者に通知できるように遠隔に位置する中央管理ステーションに転送することを可能にする。
【0028】
本発明の装置100の動作は、
図3のフローチャートを参照して、以下に詳細に説明される。フローチャートは、バッテリーユニット30とスーパーキャパシタ40との間の電気的接続および切断を制御するための一連のステップを実行する。
【0029】
初期ステップS0において、MCU110は、システムの初期化を実行して、バッテリーユニット30の無負荷電圧を定格電圧V0に設定する。自動車10が使用されていないとき、スイッチングユニット130は通常オフ状態になり、その結果、バッテリーユニット30はスーパーキャパシタ40から切断される。
【0030】
次のステップS1において、MCU110は、動作状態検出ユニット120が、自動車10がユーザによって始動準備完了状態に設定されたことを検出するかどうかをチェックする。Yesの場合、手順は次のステップS2に進み、Noの場合、MCU110は待ちの状態を維持する。始動準備完了状態は、次のいずれかの動作状態になる。(1)遠隔制御された自動車のロック解除動作状態であって、これは、自動車10が、ユーザが自動車10のロックを解除するために使用するリモートコントローラからワイヤレスロック解除信号を受信した一時的な時点で発生する動作状態である。(2)キーによってトリガされる自動車のロック解除動作状態であって、これは、自動車10のロック解除および始動に使用されるキーが、自動車10の制御パネルに設けられたキートリガスイッチにユーザによって所定の位置に挿入されたときの一時的な時点で発生する動作状態である。(3)モータが始動し、電圧が降下した動作状態であって、これは、バッテリーユニット30の出力電圧に電圧降下ΔVが発生する一時的な時点で発生する動作状態である。すなわち、初期の無負荷電圧V0は、バッテリーユニット30が始動モータ20に大きな瞬間的なサージ電流を供給するために、大きさΔVで低下する。動作状態検出ユニット120は、始動準備完了状態の発生を検出した一時的な時点で、速やかにスーパーキャパシタ接続イネーブル信号をMCU110に送信する。その後、次のステップS2に進む。
【0031】
次のステップS2において、MCU110は、バッテリーユニット30の現在の出力電圧VBを、スーパーキャパシタ40の現在の充電電圧VCと比較する。VBのレベルは、第1の電圧感知モジュール151によって検出され、一方、VCのレベルは、第2の電圧感知モジュール152によって検出される。MCU110は、VBがVCより大きいかどうかを比較する。VBがVCより大きい場合、手順はステップS3に進む。それ以外の場合、手順はステップS4に進む。
【0032】
ステップS3において、MCU110は、スイッチング制御信号SWをスイッチングユニット130に送信して、スイッチングユニット130をオン状態にし、これにより、バッテリーユニット30をスーパーキャパシタ40に電気的に接続する。その結果、バッテリーユニット30は、スイッチングユニット130を介してスーパーキャパシタ40を充電することができる。次に、手順はステップS5に進む。
【0033】
ステップS4において、MCU110は、ブーストイネーブル信号BOOSTを電圧ブースター140に送信し、それにより、バッテリーユニット30が、電圧ブースター140を介してスーパーキャパシタ40を充電することを可能にする。次に、手順はステップS5に進む。
【0034】
ステップS5において、MCU110は、バッテリーユニット30の出力電力によるスーパーキャパシタ40の充電を監督及び監視する。
【0035】
次のステップS6において、MCU110は、自動車10がモータの電源オン状態に設定されているかどうか、すなわち、モータスイッチ21がオン状態になって、始動モータ20をバッテリーユニット30とスーパーキャパシタ40に電気的に接続するかどうかをチェックする。Yesの場合、手順はステップS7に進む。Noの場合、MCU110は待ちの状態を維持する。
【0036】
ステップS7において、始動モータ20が作動する一時的な時点で、始動モータ20は、エンジン始動のために最初に大きな瞬間的なサージ電流を必要とするので、MCU110は、スイッチングユニット130をオン状態に維持する。これにより、スーパーキャパシタ40の充電電圧VCは、エンジン始動のために始動モータ20に大きな瞬間的なサージ電流を供給することができる。その後、自動車10が路上を安定して走行する時、バッテリーユニット30は、スーパーキャパシタ40と常に並列に接続されて、固定された定常状態の電圧を自動車10の電気システム50に供給することができる。電気システム50が過負荷状態にさらされた場合、スーパーキャパシタ40は、電気システム50に大きな瞬間的なサージ電流を供給することができる。
【0037】
次のステップS8において、MCU110は、動作状態検出ユニット120が、自動車10が走行停止状態に設定されていること、すなわち、自動車10が運転を停止したことを検出したかどうかをチェックする。Yesの場合、手順はステップS9に進む。Noの場合、MCU110は、待ちの状態を維持する。
【0038】
ステップS9において、自動車10が走行停止状態に設定された一時的な時点で、MCU110は、スイッチングユニット130を直ちにオフ状態にする。これにより、バッテリーユニット30をスーパーキャパシタ40から迅速に切断する。したがって、バッテリーユニット30とスーパーキャパシタ40との間の電気的接続が過度に長くなり、さもなければ、スーパーキャパシタ40の自己放電特性のために、電源性能の低下またはバッテリーユニット30への損傷さえ引き起こすことを防止する。
【0039】
スイッチングユニット130がオフ状態に戻った後、手順は、第1のステップS1に戻り、ここで、MCU110は、動作状態検出ユニット120が、自動車10が始動準備完了状態に設定されたことを検出するかどうかを再度チェックする。Yesの場合、上記の手順をもう一度繰り返す。
【0040】
前述の動作において、本発明の装置100は、ユーザが自動車10を運転したい場合にのみ、スーパーキャパシタ40がバッテリーユニット30に電気的に接続され、そして、自動車10が走行を停止すると、すぐにバッテリーユニット30から切断することを特徴とする。この機能は、バッテリーユニット30とスーパーキャパシタ40との間の電気的接続が過度に長くなるのを防ぐのに役立ち、そうしないと、自己放電特性のために電源性能の低下またはバッテリーユニット30への損傷さえ引き起こす。したがって、電源性能を改善して、バッテリー寿命を延ばすのに役立つ。さらに、スーパーキャパシタ40は、その自己放電特性により、充電された電気が急速に放電されて無駄になるため、事前に充電することはできない。本発明は、ユーザが自動車10を運転する準備をしている一時的な時点でのみ、スーパーキャパシタ40をバッテリーユニット30に電気的に接続することによってこの問題を解決する。結論として、本発明は、自動車10でのスーパーキャパシタ40の使用によって引き起こされる問題に対する実行可能な解決方法として役立つことができる。
【0041】
本発明は、例示的な好ましい実施形態を使用して説明されてきた。しかしながら、本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されないことを理解されたい。それどころか、それは様々な修正や類似の変更は、本発明の特許保護の範囲に含まれる。当技術分野の当業者が完成させた製品または技術的方法が、本発明の特許請求の範囲で定義されているものとまったく同じであるか、同等の変更である場合、本発明の特許請求の範囲の対象と見なされる。
【符号の説明】
【0042】
10 自動車
20 始動モータ
21 モータスイッチ
30 バッテリーユニット
40 スーパーキャパシタ
50 電気システム
100 本発明の装置
110 マイクロコントローラユニット(MCU)
120 動作状態検出ユニット
130 スイッチングユニット
140 電圧ブースター
141 トランジスタベースのスイッチ
142 インダクタ
143 ダイオード
144 コンデンサ
151 第1の電圧感知モジュール
152 第2の電圧感知モジュール
BOOST ブーストイネーブル信号
SW スイッチング制御信号
200 I/O制御ユニット