(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】PET放射性トレーサーとしての[18F]標識ベンゾチアゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 417/04 20060101AFI20240319BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240319BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20240319BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240319BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C07D417/04 CSP
A61K51/04 200
A61K31/4439
A61P25/28
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2021552833
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 IB2020051970
(87)【国際公開番号】W WO2020178795
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-03
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520116713
【氏名又は名称】ファースト・バイオセラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】1ST BIOTHERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジンファ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,スヨン
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502601(JP,A)
【文献】国際公開第2011/045415(WO,A2)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0107153(KR,A)
【文献】国際公開第2010/100144(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/017435(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化7】
[式中、
R
1は、R
2が-Hであるとき、-
18Fもしくは-
11CH
3であるか、または
R
1は、R
2が-
18Fもしくは-
11CH
3であるとき、-Hである]
で示される化合物またはその薬学的に許容し得る塩。
【請求項2】
式(IIA):
【化8】
で示される化合物またはその薬学的に許容し得る塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(IIB):
【化9】
で示される化合物またはその薬学的に許容し得る塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
治療有効量の請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容し得る塩および薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
【請求項5】
神経変性疾患を処置するための
請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
酵素阻害活性を決定する方法であって、
請求項1に記載の化合物を生体試料に適用すること;および
酵素阻害活性を決定するために該化合物を画像化することを含む、方法
において使用するための請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記化合物が、陽電子放出断層撮影(PET)トレーサーとして使用される、請求項6に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
方法が、PET画像化法である、請求項6に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
方法が、AD誘導マウスADモデルまたはアルファ-シヌクレインPFF誘導マウスPDモデルにおいて使用される、請求項6に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
方法が、脳におけるc-ablのアップレギュレーションまたは活性化を決定するために使用される、請求項6に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
方法が、c-abl治療または他の疾患修飾剤のための予測バイオマーカーとしてのコンパニオン診断のためのものである、請求項6に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
方法が、神経変性疾患を有する患者に使用される、請求項6に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月7日に出願された米国仮特許出願第62/814,962号の恩典および優先権を主張する。この段落で特定された出願の開示全体は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本開示は、一般に、フッ素-18標識ベンゾチアゾール化合物を含む酵素阻害活性を画像化するための陽電子放出断層撮影(PET)トレーサーとしてのフッ素-18標識ベンゾチアゾール化合物、ならびに診断および画像化のための該化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
陽電子放出断層撮影(PET)は、陽電子を生成する放射性核種によって間接的に放射される一組のガンマ線を検出する核画像診断法である。放射性トレーサーは、PETにおいて、診断ツールとして、かつ、関心対象の分子の組織中濃度を画像化するために使用される。
【0004】
分子画像化バイオマーカーの開発は、治療薬の開発と密接に関係している。潜在的標的の中でも、チロシンキナーゼc-ablは、成長、生存およびストレス反応を包含する広範な細胞プロセスに関与する厳密に調節されている非受容体型プロテインチロシンキナーゼであり(Nat Rev Mol Cell Biol, 2004, 5:33-44)、そして、c-ablは、数種の細胞プロセスの調節に関与し、神経発生を制御することによって中枢神経系の発達に関係している。さらに最近では、様々な実験モデル系からの証拠の増加により、c-ablが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ニーマン・ピック病C型およびタウオパチーなどの神経変性疾患において活性化されることも明らかになっている(Human Molecular Genetics, 2014, Vol. 23, No.11)。
【0005】
最近の研究により、直接リン酸化を通じたアルファ-シヌクレイン凝集の誘導、パーキンの不活性化および神経炎症の誘導など、パーキンソン病(PD)におけるc-ablの重要な役割が明らかになっている。Y412およびY214リン酸化形態によって測定された総c-ablならびに活性化c-ablの発現レベルが、様々な動物モデルのPD発症機序において、より重要なことには、PD患者からの死後の全脳または線条体試料などのヒト検体においてアップレギュレーションされることが知られている。
【0006】
しかしながら、生きているPD患者の黒質または線条体におけるc-ablのレベルがアップレギュレーションされるか否かはまだ調査されていない。PD患者の脳からc-abl発現レベルを調査することによって、PDにおけるc-ablの病態生理学的役割ならびに病期および症状とのその機能的関係性を理解することが重要であろう。
【0007】
本発明は、c-ablをインビトロおよびインビボ画像化研究のためのPETトレーサーとして標的にするために選択的な新たなフッ素-18放射性標識化合物を提供する。
【0008】
式IIAおよびIIBの各コールド化合物のc-abl触媒阻害のIC50は、5nM~20nMの範囲である。本発明者らは、対応するコールド化合物を利用して、PET用の18F放射性トレーサーを合成する。
【0009】
概要
本開示は、c-ablキナーゼ阻害活性を有する化合物、該化合物を含む組成物、および神経変性疾患を処置するのに有用な方法を提供する。
【0010】
ある実施態様では、該化合物は、式(I):
【化1】
[式中、R
1およびR
2は、以下のように定義されるとおりである]
で示される化合物である。
【0011】
別の実施態様では、本発明は、式(I)で示される化合物のエナンチオマー、ジアステレオマーもしくはラセミ体、またはその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0012】
さらに別の実施態様では、本開示は、多様な神経画像化状況で、脳異常、細胞死および神経損傷を可視化するために該化合物を利用する方法を提供する。
【0013】
詳細な説明
以下の説明は、本質的には、単なる例示であり、本開示、適用または使用を限定することを意図するものではない。
【0014】
定義
本明細書において使用する場合、用語「薬学的に許容し得る」は、薬学的調製物における使用に適していることを意味し、このような使用に安全であると一般に考えられているか、このような使用について国または州政府の規制当局により公式に承認されているか、または、動物、より特定すると、ヒトでの使用について米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方に列記されている。
【0015】
本明細書において使用する場合、用語「薬学的に許容し得る担体」は、希釈剤、補助剤、賦形剤もしくは担体、または薬学的に許容し得るかつ本発明の化合物と共に投与される他の成分のことを指す。
【0016】
本明細書において使用する場合、用語「薬学的に許容し得る塩」は、所望の薬理活性を増大させ得る塩のことを指す。薬学的に許容し得る塩の例は、無機酸または有機酸と形成される酸付加塩、金属塩およびアミン塩を包含する。無機酸と形成される酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸との塩を包含する。酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、o-(4-ヒドロキシ-ベンゾイル)-安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタン-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン1-カルボン酸、グルコ-ヘプトン酸、4,4’-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ)酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル-酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシ-ナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸およびムコン酸などの有機酸と形成される酸付加塩の例。金属塩の例は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄および亜鉛イオンとの塩を包含する。アミン塩の例は、アンモニアとの塩、およびカルボン酸と塩を形成するのに十分な強さの有機窒素塩基との塩を包含する。
【0017】
本明細書において使用する場合、用語「治療有効量」は、本発明の化合物に適用される場合、障害もしくは疾患状態または障害もしくは疾患の症状の進行を改善し、緩和し、安定化し、逆転させ、鈍化させまたは遅延させるのに十分な化合物の量を表すことを意図する。ある実施態様では、本発明の方法は、化合物の組み合わせの投与を提供する。このような場合、「治療有効量」は、意図される生物学的効果を引き起こすのに十分な組み合わせにおける本発明の化合物の量である。
【0018】
本明細書において使用する場合、用語「処置(treatment)」または「処置すること(treating)」は、本明細書において使用する場合、疾患もしくは障害の進行もしくは重症度を改善もしくは逆転させること、またはこのような疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状もしくは副作用を改善もしくは逆転させることを意味する。「処置」または「処置すること」は、本明細書において使用する場合、遅延、停止、抑制、妨害または閉塞におけるように、疾患もしくは障害の系、状態もしくは状況の進行を阻害もしくは遮断することも意味する。本発明の目的のために、「処置」または「処置すること」はさらに、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチを意味し、ここで、「有益なまたは所望の臨床結果」は、非限定的に、部分的であるか全体的であるかに関わらず、症状の軽減、障害または疾患の程度の減少、安定化された(すなわち、悪化しない)疾患または障害状態、疾患または障害状態の遅延または鈍化、疾患または障害状態の改善または緩和、および疾患または障害の寛解を包含する。
【0019】
別の実施態様では、式(I)で示される化合物は、プロテインキナーゼc-ablの活性をモジュレートするために使用される。
【0020】
本明細書において使用する場合、用語「モジュレートすること」または「モジュレーション」は、プロテインキナーゼの触媒活性の変更のことを指す。特に、「モジュレートすること」は、プロテインキナーゼが曝露される化合物または塩の濃度に応じた、プロテインキナーゼの触媒活性の活性化もしくは阻害、またはより好ましくは、プロテインキナーゼの触媒活性の阻害のことを指す。用語「触媒活性」は、本明細書において使用する場合、プロテインキナーゼの直接的または間接的な影響下でのチロシン、セリンまたはトレオニンのリン酸化の速度のことを指す。
【0021】
キナーゼ活性の薬理学的阻害剤が分類される3つの主要なクラスは、(1)I型または「DFG-in」ATP競合阻害剤(ATP結合部位においてATPと直接競合する)(すなわち、二重SRrcABL阻害剤ダサチニブ)、(2)II型または「DFG-out」ATP競合阻害剤(ATP結合部位との結合に加えて、キナーゼが不活性化された立体配置(すなわち、活性化ループが、基質結合を遮断するであろう立体配座で配置されている)にある場合にのみアクセス可能である隣接疎水性結合部位にも係合する)(すなわち、イマチニブ、ニロチニブ)、および(3)キナーゼの活性に影響を及ぼすATP結合部位以外の部位で結合する非ATP競合阻害剤(すなわち、GNF-2)である。
【0022】
本明細書において使用する場合、語句「本開示の化合物」は、式(I)で示される任意の化合物、ならびにその包接物、水和物、溶媒和物または多形体を包含する。そして、用語「本開示の化合物」が、その薬学的に許容し得る塩に言及していなくても、この用語は、その塩を包含する。一実施態様では、本開示の化合物は、立体化学的に純粋な化合物、例えば、他の立体異性体を実質的に含まない(例えば、85% ee超、90% ee超、95% ee超、97% ee超、または99% ee超の)化合物を包含する。すなわち、本開示に係る式(I)で示される化合物またはその塩が、互変異性体および/または立体異性体(例えば、幾何異性体および配座異性体)である場合、このような単離された異性体およびそれらの混合物も、本開示の範囲に包含される。本開示の化合物またはその塩が、それらの構造中に不斉炭素を有する場合、それらの活性光学異性体およびそれらのラセミ混合物も、本開示の範囲に含まれる。
【0023】
本明細書において使用する場合、用語「多形体」は、本開示の化合物またはその錯体の固体結晶形態のことを指す。同じ化合物の異なる多形体は、異なる物理的、化学的および/または分光学的性質を呈し得る。異なる物理的性質は、安定性(例えば、熱または光に対する)、圧縮率および密度(処方および製品製造において重要)、ならびに溶解速度(バイオアベイラビリティに影響を及ぼし得る)を包含するが、それらに限定されない。安定性の違いは、化学反応性の変化(例えば、酸化の違い、その結果、剤形は、ある多形体から構成されているとき、別の多形体で構成されているときよりも急速に変色する)または機械的特性の変化(例えば、動力学的に好ましい多形体が熱力学的により安定な多形体に変換するため、錠剤が貯蔵時に崩壊する)またはその両方(例えば、ある多形体の錠剤は、高湿度でより崩壊しやすい)から生じ得る。多形体の異なる物理的性質は、それらの加工に影響を及ぼし得る。例えば、ある多形体は、例えばその粒子の形状またはサイズ分布に起因して、別の多形体よりも、溶媒和物を形成する可能性が高いまたは不純物を濾過もしくは洗浄するのが困難である場合がある。
【0024】
本明細書において使用する場合、用語「溶媒和物」は、化学量論量または非化学量論量の非共有結合分子間力により結合している溶媒をさらに含む、本開示に係る化合物またはその塩のことを意味する。好ましい溶媒は、揮発性、非毒性および/または微量でのヒトへの投与に許容されるものである。
【0025】
本明細書において使用する場合、用語「水和物」は、化学量論量または非化学量論量の非共有結合分子間力により結合している水をさらに含む、本開示に係る化合物またはその塩のことを意味する。
【0026】
本明細書において使用する場合、用語「包接物」は、内部に捕捉されたゲスト分子(例えば、溶媒または水)を有する空間(例えば、チャネル)を含有する結晶格子の形態にある、化合物またはその塩のことを意味する。
【0027】
本開示の化合物
本開示は、式(I):
【化2】
[式中、R
1は、R
2が-Hであるとき、-
18Fもしくは-
11CH
3であるか、または、R
1は、R
2が-
18Fもしくは-
11CH
3であるとき、-Hである]
に係る化合物またはその薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0028】
一実施態様では、式(I)で示される化合物は、式(IIA):
【化3】
に係る化合物およびその薬学的に許容し得る塩から選択される。
【0029】
一実施態様では、式(I)で示される化合物は、式(IIB):
【化4】
に係る化合物およびその薬学的に許容し得る塩から選択される。
【0030】
さらに別の実施態様では、治療有効量の式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容し得る塩および薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物が提供される。
【0031】
別の実施態様では、神経変性疾患または障害を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に、治療有効量の式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容し得る塩を投与することを含む、方法が提供される。すなわち、式(I)またはその薬学的に許容し得る塩が有効剤として使用される、式(I)で示される化合物またはその薬学的に許容し得る塩の医療的使用が提供される。
【0032】
一実施態様では、本開示は、フッ素-18標識ベンゾチアゾール化合物を含む酵素阻害活性を画像化するための陽電子放出断層撮影(PET)トレーサーとしてのフッ素-18標識ベンゾチアゾール化合物、ならびに診断および画像化のための該化合物を使用する方法に関する。ある実施態様では、神経変性疾患を処置するための方法であって、それを必要とする被験体に、治療有効量の上記化合物またはその薬学的に許容し得る塩を投与することを含む、方法が提供される。
【0033】
別の実施態様では、酵素阻害活性を決定する方法であって、上記化合物を生体試料に適用すること;および酵素阻害活性を決定するために該化合物を画像化することを含む、方法が提供される。様々な実施態様では、該化合物は、陽電子放出断層撮影(PET)トレーサーとして使用される。該方法は、PET画像化法であることができる。また、該方法は、AD誘導マウスADモデルまたはアルファ-シヌクレインPFF誘導マウスPDモデルにおいて使用することができる。該方法は、脳におけるc-ablのアップレギュレーションまたは活性化を決定するために使用することができる。いくつかの実施態様では、該方法は、c-abl治療または他の疾患修飾剤のための予測バイオマーカーとしてのコンパニオン診断のための方法である。該方法は、神経変性疾患を有する患者に使用することができる。
【実施例】
【0034】
以降、本開示は、当業者が本開示を理解するのを助けるために、実施例によりかなり詳細に説明される。しかしながら、以下の実施例は、例証として提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなくまたはその重要な利点の全てを犠牲にすることなく、様々な変更を行うことができることは明らかである。
【0035】
式(I)の化合物の合成
本開示の例示的な化合物は、スキーム1に説明される。
【化5】
【0036】
実施例1.(1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(6-(フルオロ-18F)-4-メチルピリジン-3-イル)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
工程1)(1S,2S)-N-(6-(6-(ジメチルアミノ)-4-メチルピリジン-3-イル)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2-フルオロシクロプロパン-1-カルボキサミド
密閉管に、化合物1(906mg、2.5mmol)、化合物2(430mg、2.0mmol)、(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)-ジクロロパラジウム(II)(44mg、0.06mmol)、炭酸セシウム(39mg、0.12mmol)およびジオキサン/水(6mL/2mL)を加え、次いで、密閉して、100℃に2時間加熱した。反応混合物をRTに冷まし、Celiteパッドに通して濾過し、次いで、EAで抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残留物を与えた。残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(EA:Hex=3:1)によって精製して、化合物3(ベージュ色の固体、収量533mg、72%)を与えた。
【0037】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.06 (s, 1H), 7.76 - 7.72 (m, 2H), 7.36 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.26 (s, 1H), 6.43 (s, 1H), 4.95 - 4.78 (m, 1H), 3.13 (s, 6H), 2.25 (s, 3H), 2.03 - 1.98 (m, 1H), 1.33 - 1.21 (m, 2H); LCMS (エレクトロスプレー) m/z 371.16 (M+H)+
【0038】
工程2)5-(2-((1S,2S)-2-フルオロシクロプロパン-1-カルボキサミド)ベンゾ[d]チアゾール-6-イル)-N,N,N,4-テトラメチルピリジン-2-アミニウムトリフルオロメタンスルホナート
脱水トルエン(3mL)中の化合物3(110mg、0.30mmol)の溶液に、メチルトリフルオロメタンスルホナート(39μL、0.36mmol)を加えた。混合物をRTで一晩撹拌した。反応混合物を濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(DCM中10%MeOH)によって精製して、化合物4(白色の固体、収量95mg、60%)を与えた。
【0039】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.80 (NH, 1H), 8.51 (s, 1H), 8.10-8.05 (m 2H), 7.85 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 5.12 - 4.93 (m, 1H), 3.60 (s, 9H), 2.43 (s, 3H), 2.24 - 2.19 (m, 1H), 1.71-1.70 (m, 1H), 1.33 - 1.28 (m, 1H) ; 19F NMR (376 MHz, DMSO-d6) δ -77.74, -219.79;LCMS (エレクトロスプレー) m/z 385.25 (M+H)+
【0040】
工程3)(1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(6-(フルオロ-18F)-4-メチルピリジン-3-イル)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
陰イオン交換樹脂(QMA)に[18F]フッ化物水溶液(6.3mCi)を通過させた。エタノール(1mL)中のK222/KOM錯体10mgの溶液を使用して、[18F]フッ化物を反応バイアルに溶出させた。N2ガス下100℃で加熱することによって溶液を濃縮乾固した。乾燥させたK222/K-[18F]錯体に、DMSO 0.4mLに溶解させた化合物4前駆体(5mg)を加えた。溶液を100℃で10分間加熱し、次いで、ラジオTLCによって実施例1を検出した(37%)。
【0041】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.76 (NH,1H), 8.118.12 (d, J=5.2 Hz, 1H), 8.01(s, 1H), 7.84 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.41-7.36 (m, 2H), 5.14 - 4.97 (m, 1H), 2.26-2.25 (m, 1H) ,2.25 (s, 3H), 1.79-1.72 (m, 1H), 1.33-1.29 (m, 1H); LCMS (エレクトロスプレー) m/z 345.10 (M+H)+
【0042】
実施例2.(1S,2S)-2-フルオロ-N-(6-(2-(フルオロ-
18F)-4-メチルピリジン-3-イル)ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)シクロプロパン-1-カルボキサミド
合成法は、実施例1と同じである。
【化6】
【0043】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.79 (NH,1H), 8.11 (s, 1H), 8.04 (s, 1H), 7.83 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.46 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.20(s, 1H), 5.14 - 4.97 (m, 1H), 2.34 (s, 3H), 2.26-2.22 (m, 1H), 1.79-1.72 (m, 1H), 1.33-1.29 (m, 1H); LCMS (エレクトロスプレー) m/z 345.10(M+H)+