(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】複雑な有機MALDIマトリックスを使用せずにエアロゾル粒子を検出するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0205 20240101AFI20240319BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240319BHJP
G01N 21/63 20060101ALI20240319BHJP
H01J 49/00 20060101ALI20240319BHJP
H01J 49/40 20060101ALI20240319BHJP
H01J 49/16 20060101ALI20240319BHJP
H01J 49/04 20060101ALI20240319BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240319BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240319BHJP
G01N 15/02 20240101ALI20240319BHJP
【FI】
G01N15/0205
G01N27/62 G
G01N21/63 A
H01J49/00 360
H01J49/00 310
H01J49/40
H01J49/16 100
H01J49/04
C12Q1/04
C12M1/34 B
G01N15/02 D
(21)【出願番号】P 2021576553
(86)(22)【出願日】2020-06-27
(86)【国際出願番号】 US2020040023
(87)【国際公開番号】W WO2021061247
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-06-07
(32)【優先日】2019-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520148932
【氏名又は名称】ゼテオ テック、 インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(72)【発明者】
【氏名】マクローリン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ブライデン、ウェイン、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】コール、チャールズ、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ダペン
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05681752(US,A)
【文献】特表2004-520576(JP,A)
【文献】米国特許第06799119(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0116090(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0243728(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0049352(US,A1)
【文献】特表2018-533169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/0205
G01N 27/62
G01N 21/63
H01J 49/00
H01J 49/40
H01J 49/16
H01J 49/04
C12Q 1/04
C12M 1/34
G01N 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオエアロゾル粒子の組成を識別するためのシステム
(100)において、
単一粒子のビームを生成するためのエアロゾルビーム発生器
(103)と、
連続タイミングレーザー発生器(103)であって、
タイミングレーザを発生して上記ビーム内の各粒子にインデックスを付
け、
インデックス付けされた各粒子の粒子サイズ、偏光に基づく粒子形状、および蛍光を光学的に特徴づけ、
インデックス付けされた粒子のうちイオン化すべき粒子を選択するように構成された、上記連続タイミングレーザー発生器と、
上記タイミングレーザーによってトリガーされ、直径が約150μm未満のイオン化領域を具備し、
選択されたインデックス付けされた粒子の各々が上記イオン化領域に到達するときに、IRレーザーパルスおよびUVレーザーパルス
を同時に生成して、
選択されたインデックス付けされた粒子の各々が上記イオン化領域に到達するときに各インデックス付き粒子のイオン化フラグメント
の少なくとも1つおよび各インデックス付き粒子に関連する光
子を生成するように構成され
る、イオン化パルスレーザー発生器と、
各粒子に関連付けられたイオン化フラグメン
トの少なくとも1つを分析
して、選択されたインデックス付き粒子の各々に関連付けられた固有のスペクトルデータを生成するTOFM検出器と
、
データ分析システムであって、
光学データを固有の質量スペクトルデータに組み合わせたデータセットを生成し、
各インデックス付き粒子に関連付けられ、組み合わされた固有のスペクトルデータと、選択されたインデックス付き粒子に固有の、粒子サイズ、偏光による粒子形状、および蛍光のデータとを、データ融合を使用して処理し、選択されたインデックス付き粒子に関連付けられた編集されたスペクトルデータを生成し、
既知の生物物質の知識ベースで構成されるトレーニングデータセットと比較して、バイオエアロゾル粒子の組成を予測するように構成された、上記データ分析システムとを有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
上記IRレーザーパルスは、約1.0マイクロメートルから約1.2マイクロメートルの間の波長によって特徴付けられる請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記UVレーザーパルスは、約250nmから約400nmの間の波長によって特徴付けられる請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
上記IR
レーザーパルスの波長が約1.06マイクロメートルである請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
上記UV
レーザーパルスの波長が約355nmである請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
上記IRレーザー
パルスのパルス幅が約1nsから約10nsの間である請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
上記IRレーザー
パルスのパルス繰り返し周波数が約1kHzである請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
上記イオン化されたフラグメントが、ジピコリン酸、トリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニンのうちの少なくとも1つを含むUV発色団を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
IR発色団が、水、寒天、および炭水化物のうちの少なくとも1つを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
エアロゾルビーム発生器からイオン化パルスレーザーのイオン化領域までの各粒子の移動時間が約1秒未満である請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
上記IRレーザーパルスは、約2.7マイクロメートルおよび約3.3マイクロメートルの間の波長によって特徴付けられる請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
上記IRレーザーパルス
の波長が約2.94マイクロメートルである請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
上記IRレーザーパルスは
、Er:YAGレーザーおよびOPOレーザーのうちの少なくとも1つを使用して生成される請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
上記データ分析システムとデータ通信するように配置された機械学習エンジンを有し、上記データ分析システムは、学習データセット知識ベースを更新し、機械学習方法を使用して組成の予測を随時改善するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
上記
イオン化パルスレーザー発生器の出力密度が約1MW/cm
2から約20MW/cm
2の間である請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
蛍光検出器、LIBS検出器、およびラマン分光計のうちの少なくとも1つを
さらに有する請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
バイオエアロゾル粒子の組成を識別するための方法において、
エアロゾルビーム発生器を使用してエアロゾル粒子のビームを生成するステップと、
連続タイミングレーザ―を使用して、
上記ビーム内の各粒子にインデックスを付
け、
インデックス付けされた各粒子の粒子サイズ、偏光に基づく粒子形状、および蛍光を光学的に特徴づけ、
インデックス付けされた粒子のうちイオン化すべき粒子を選択するステップと、
各インデックス付き粒子の粒子サイズ、
偏光に基づく粒子形状、および蛍光
を光学的に特徴づけ、
かつ、分析するインデックス付き粒子を選択するステップと、
上記連続タイミングレーザ―を使用してイオン化パルスレーザー発生器をトリガーして、選択された各インデックス付き粒子が上記
イオン化パルスレーザー発生器のイオン化領域に到達したときに、
IRレーザーパルスおよびUVレーザーパルスを同時に生成して、選択されたインデックス付けされた粒子の各々が上記イオン化領域に到達するときに各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントの少なくとも1つおよび各インデックス付き粒子に関連する光子を生成するステップ
であって、上記イオン化領域の直径が約150μm未満である、上記ステップと、
TOF-MS検出器を使用して、各インデックス付き粒子の少なくとも1つのイオン化フラグメントを分析し、各粒子に関連付けられた固有のスペクトルデータを生成するステップと、
データ分析システムを使用して、
光学データを固有の質量スペクトルデータにを組み合わせたデータセットを生成し、
各インデックス付き粒子に関連付けられ、組み合わされた固有のスペクトルデータと、選択されたインデックス付き粒子固有の、粒子サイズ、偏光による粒子形状、および蛍光のデータを、データ融合を使用して処理し、選択されたインデックス付き粒子に関連付けられた編集されたスペクトルデータを生成し、
既知の生物物質の知識ベースで構成されるトレーニングデータセットと比較して、バイオエアロゾル粒子の組成を予測するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項18】
どのインデックス付き粒子を分析するかを選択するステップは、上記インデックス付き粒子の粒子サイズ、
偏光に基づく粒子形状、および蛍
光が所定の閾値を満たすかどうかを決定するステップを有する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記トレーニングデータセット
の上記知識ベースを更新するステップと、
機械学習手法を使用して、時間の経過に伴って組成の予測を改善するステップとをさらに有する請求項
17に記載の方法。
【請求項20】
上記IRレーザーパルスは、約1.0マイクロメートルおよび約1.2マイクロメートルの間の波長によって特徴付けられる請求項17に記載の方法。
【請求項21】
上記IRレーザーパルスは、約2.7マイクロメートルおよび約3.3マイクロメートルの間の波長によって特徴付けられる請求項17に記載の方法。
【請求項22】
イオン化パルスレーザーステップのトリガは、上記インデックス付き粒子の少なくとも1つの測定特性がその特性の予め定められた閾値を満たすときに連続レーザーを使用して開始される請求項17に記載の方法。
【請求項23】
連続タイミングレーザーを使用して各インデックス付き粒子の位置を検出するステップをさらに有する請求項17に記載の方法。
【請求項24】
蛍光検出器、LIBS検出器、およびラマン分光計のうちの少なくとも1つを使用して、各インデックス付き粒子の少なくとも1つのイオン化フラグメントを分析するステップをさらに有する請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年6月24日に提出され、「複雑な有機MALDIマトリックスを使用せずにエアロゾル粒子を検出するための方法とシステム」と題する米国仮出願第62/868,906号に関連し、その利益を主張し、これは、参照によりその全体がここに組み込まれる。
【連邦支援研究開発】
【0002】
該当しない。
【技術分野】
【0003】
本開示は、エアロゾル分析対象粒子の高精度の識別を提供するために、質量分析および1つまたは複数の光学的検出方法を使用する方法およびデバイスに関する。より具体的には、本開示は、限定ではないけれども、飛行時間型質量分析(TOF-MS)、光学単一粒子センサー、および1つまたは複数のセンサーから生成されたデータのデータ融合と機械学習法を使用した分析物粒子の識別が可能なデータ分析システムのうちの少なくとも1つを使用して生物学的エアロゾル分析物を識別するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0004】
エアロゾル化された生物学的および化学的脅威因子からの脅威は、そのような事象から生じる可能性のある生命および財産への潜在的に悲惨な結果のために、依然として米国政府の重要な関心事である。特に懸念される2つの主要な脅威シナリオは、次のとおりである。(1)HVACシステムがエージェントを構造全体に効果的に分散できる閉鎖構造(オフィスビル、空港、大量輸送施設など)内でのエージェントの放出、および(2)町や都市などの居住地域全体でのエージェントの広範囲な地域での放出。放出されたエアロゾル化された薬剤への曝露は、大量の死傷者につながる可能性がある。広範囲の領域での放出では、汚染物質の種類、量、および汚染物質の場所に関するタイムリーな情報がなければ、最初の曝露から市民を保護することは非常に困難である。迅速な是正措置を講じるには、脅威エージェントの構成をリアルタイムで特定するための方法とデバイスが必要である。空気中の分析物エアロゾルのサンプルは、吸入性粒子を捕捉するように設計されたフィルター、サンプリングバッグ、および他の同様の格納物などの適切な手段を使用して捕捉することができる。粒子は、また、その後再エアロゾル化された湿式壁サイクロンまたは同様の装置から得られた液体サンプルから取り出して良い。湿式壁サイクロンの例は、SpinCon II(Innovaprep、ミズーリ州ドレクセル)である。これらのエアロゾル中の粒子は、炭疽菌、エボラウイルス、リシン、およびボツリヌス毒素を含む可能性があるけれども、これらに限定されない。これらの収集方法は、すべて、分析のために生物学的粒子を抽出するための追加の処理を必要とし、危険なエアロゾルを検出および識別するために数時間または数日の遅延をもたらす。
【0005】
分析されるエアロゾル粒子は、周囲空気中に見出される粒子に限定される必要はない。分析対象エアロゾルは、人間または動物の呼気中に見られる呼気粒子(EBP)を含んで良い。健康な成人の呼吸中に吐き出される空気の量は、通常1~2リットルであり、これには約0.5リットルの通常の一回換気量が含まれる。人間は、通常の呼吸、咳、会話、くしゃみなどのさまざまな呼吸活動中に呼気粒子(EBP)を生成する。通常の呼吸中の人工呼吸器を装着した患者からのEBP濃度は、約0.4~約2000粒子/呼吸または0.001~5粒子/mLである可能性がある[1]。さらに、EBPのサイズは5マイクロメートル未満である可能性があり、それらの80%は0.3~1.0マイクロメートルの範囲である可能性がある。呼気の粒子サイズ分布も0.3から2.0マイクロメートルの間になると報告されている。EBPの平均粒子サイズは、通常の呼吸では1マイクロメートル未満、咳では1~125マイクロメートルになる可能性がある。さらに、肺結核患者の25%は、咳をするときに結核菌の3~約600CFU(コロニー形成単位)を吐き出し、この病原体のレベルは主に0.6~3.3マイクロメートルの範囲であった。これらのバクテリアは棒状で、長さは約2~4マイクロメートル、幅は約0.2~0.5マイクロメートルである。
【0006】
生物学的エージェントなどのエアロゾル分析物を検出および分析するための解決策が利用可能であるけれども、リアルタイム分析は可能ではない。1つの解決策では、マイクロ流体技術を使用してサンプルをクリーンアップし、生物学的分析物を濃縮する。例えば、特定の抗体を使用して、生物学的分析物を濃縮および精製することができる。このターゲット固有のソリューションは、分析物のクリーンアップと濃縮に十分な時間があれば、妥当な結果を提供する。他の解決策はターゲット固有であり、ウイルス、毒素、または粒子状化学物質の分析を犠牲にして細菌分析物に対してのみ機能する。この方法では、例えば患者からのサンプルを細菌培養プレートに適用し、8~24時間インキュベートする必要がある。細菌コロニーが成長した後、個々の増幅および精製されたコロニーが収集され、全細胞MALDI TOF質量分析によって測定される。多くの研究がこの技術の精度を調査し、臨床細菌分析物の99%を超える正確な識別を見出した。迅速な臨床細菌識別のための2つの商用システム、すなわちBruker Biotyper(Becton Dickinsonが販売)とShimadzu Vitek MS(bioMerieuxが販売)が開発された。これらのシステムは、16sRNAの「ゴールドスタンダード」と比較して優れた診断結果を提供する。ただし、これらの信頼性の高い臨床結果を達成するには、サンプルを精製するために、培養または抽出ステップ、あるいはその両方が必要である。したがって、サンプリングから生体分析物の識別までの時間は、通常、12時間から1日以上である。このような遅延は、臨床検査室では許容できることがよくあるけれども、生物分析物のリアルタイム識別が必要な生物防御などの他のアプリケーションでは受け入れられないことが多い。生物防御、およびポイントオブケアヘルスケアアプリケーションには、細菌だけでなく、真菌、ウイルス、および生物毒素を含む大きな生物有機分子(タンパク質、ペプチド、脂質など)をリアルタイムで同時に識別する機能が必要である。さらに、臨床応用の分析時間を短縮することで、よりタイムリーな治療と最良の治療コースの特定(たとえば、ウイルス感染と細菌感染の区別)、および治療コースの有効性の評価を可能にすることで、ケアの質と結果を改善できる。
【0007】
リアルタイムエアロゾル粒子検出は、また、多くの商業的用途を有する。たとえば、発酵槽のヘッドスペースを分析して、汚染物質の可能性を調べることができる。食品または医療施設内の空気中の微生物の種分化を知ることがしばしば望まれる。分析物粒子は、ウイルス、細菌、藻類または真菌などの微生物を含む可能性がある。分析物粒子は、また、微生物とタンパク質およびペプチドの混合物を含むかもしれない。
【0008】
細菌、真菌、ウイルス、および毒素を含むエアロゾル分析物粒子の迅速な(またはリアルタイムの)分析および識別を、複雑な有機MALDIマトリックスで粒子を前処理することなく、高精度で提供するための方法および装置が望まれる。
【発明の概要】
【0009】
質量分析および1つまたは複数の光学的検出方法を使用して、エアロゾル分析物粒子のリアルタイムまたはほぼリアルタイムの高精度の識別をもたらす方法および装置がここに開示される。 さらに、本開示は、飛行時間質量分析(TOF-MS)、光学単一粒子センサー、および1つまたは複数のセンサーからのデータのデータ融合が可能なデータ分析システム、および、機械学習ツールを使用した分析物粒子のリアルタイム識別のうちの少なくとも1つを使用して生物学的エアロゾル分析物を識別するための方法およびデバイスに関する。
【0010】
複雑な有機MALDIマトリックスを使用せずにバイオエアロゾル粒子を識別するための例示的な方法が開示され、この方法は、エアロゾルビーム発生器を使用してエアロゾル粒子ビームを生成するステップと、第1のレーザーを使用して、上記ビーム内の各粒子にインデックスを付けるステップと、連続タイミングレーザーを使用して、各インデックス付き粒子の位置を検出するステップと、イオン化パルスレーザーをトリガーして、各インデックス付き粒子がイオン化レーザーのイオン化領域に到達したときに、IRレーザーパルスおよびUVレーザーパルスを同時に生成するステップと、各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントおよび各インデックス付き粒子に関連する光子を生成する光子生成ステップであって、各イオン化フラグメントの分子量は約1kDaから約150kDaの間である、上記光子生成ステップと、少なくとも1つの検出器を使用して、各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントおよび各インデックス付き粒子に関連する光子の少なくとも1つを分析するステップと、各検出器から各インデックス付き粒子に関連付けられた一意のスペクトルデータを生成するステップと、データ融合を使用して一意のスペクトルデータをコンパイルし、コンパイルされたスペクトルデータを生成するステップと、各粒子の組成を決定するステップとを有して良い。上記第1のレーザーおよび上記タイミングレーザーの少なくも1つを使用して、粒子サイズ、粒子形状、および蛍光のうちの少なくとも1つを含む、上記インデックス付き粒子の少なくとも1つの特性を測定して良い。上記イオン化レーザーは、上記インデックス付けされた粒子の少なくとも1つの特性がその特性の所定の閾値を満たすときに、第1のレーザーおよび上記タイミングレーザーの少なくも1つを使用してトリガーされて良い。各粒子の組成は、コンパイルされたスペクトルデータをトレーニングスペクトルデータセットの知識ベースと比較して、組成を予測するステップ、上記トレーニングデータセットの知識ベースを更新するステップ、および、機械学習手法を使用して、時間の経過に伴って組成の上記予測を改善するステップによって決定されて良い。機械学習方法が教師あり機械学習方法を有して良い。上記組成は、教師なし機械学習方法を使用して、ラベル付けされていないエアロゾル粒子を分類し、異常なエアロゾル粒子を識別して良い。上記機械学習方法は、加重主成分分析(PCA)を有して良い。ラベルのないエアロゾル粒子を識別し、異常な粒子の存在(たとえば、空気中の生物学的脅威物質の存在)にフラグを立てて、是正措置を講じて良い。上記IRレーザーパルスは、約1.0マイクロメートルから約1.2マイクロメートルの間の波長によって特徴付けられて良い。上記UVレーザーパルスは、約250nmから約400nmの間の波長によって特徴付けられて良い。上記IRパルスの波長が約1.06マイクロメートルであって良い。上記UVパルスの波長が約355nmであって良い。上記IRレーザーの出力密度は、約1MW/cm2から約20MW/cm2の間であって良い。上記IRレーザーのパルス幅が約1nsから約10nsの間であって良い。上記IRレーザーのパルス繰り返し周波数が約1kHzであって良い。上記検出器は、TOF-MS検出器、蛍光検出器、LIBS検出器、およびラマン分光計のうちの少なくとも1つを有して良い。上記イオン化されたフラグメントが、ジピコリン酸、トリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニンのうちの少なくとも1つを含むUV発色団を有して良い。上記IRレーザーパルスおよびUVレーザーパルスは、Nd:YAGレーザーを使用して生成されて良い。
【0011】
複雑な有機MALDIマトリックスを使用せずに、IR発色団を含むバイオエアロゾル粒子を識別するための例示的な方法が開示され、この方法は、エアロゾルビーム発生器を使用してエアロゾル粒子ビームを生成するステップと、第1のレーザーを使用して、上記ビーム内の各粒子にインデックスを付けるステップと、連続タイミングレーザーを使用して、各インデックス付き粒子の位置を検出するステップと、イオン化パルスレーザーをトリガーして、各インデックス付き粒子がイオン化レーザーのイオン化領域に到達したときに、IRレーザーパルスを生成するステップと、各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントおよび各インデックス付き粒子に関連する光子を生成する光子生成ステップであって、各イオン化フラグメントの分子量は約1kDaから約150kDaの間である、上記光子生成ステップと、少なくとも1つの検出器を使用して、各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントおよび各インデックス付き粒子に関連する光子の少なくとも1つを分析するステップと、各検出器から各インデックス付き粒子に関連付けられた一意のスペクトルデータを生成するステップと、データ融合を使用して一意のスペクトルデータをコンパイルし、コンパイルされたスペクトルデータを生成するステップと、各粒子の組成を決定するステップとを有する。粒子サイズ、粒子形状、および蛍光の少なくとも1つを含む、インデックス付けされた粒子の少なくとも1つの特性は、第1のレーザーおよびタイミングレーザーの少なくとも1つを使用して測定されて良い。イオン化レーザーは、上記第1のレーザーおよび上記タイミングレーザーの少なくとも1つを使用して、インデックス付き粒子の少なくとも1つのプロパティがそのプロパティの所定のしきい値に達したときにトリガーされて良い。IR発色団は、水、寒天、および炭水化物のうちの少なくとも1つを有して良い。各粒子の組成は、コンパイルされたスペクトルデータをトレーニングスペクトルデータセットの知識ベースと比較して、組成を予測するステップ、上記トレーニングデータセットの知識ベースを更新するステップ、および、機械学習手法を使用して、時間の経過に伴って組成の上記予測を改善するステップによって決定されて良い。機械学習方法は教師あり機械学習方法を有して良い。各粒子の組成は、また、教師なし機械学習方法を使用して、ラベル付けされていないエアロゾル粒子を分類し、異常なエアロゾル粒子を識別するステップによって決定されて良い。上記機械学習方法は、加重主成分分析(PCA)を有して良い。ラベルのないエアロゾル粒子を識別し、異常な粒子の存在(たとえば、空気中の生物学的脅威物質の存在)にフラグを立てて、是正措置を講じて良い。エアロゾルビーム発生器からイオン化パルスレーザーのイオン化領域までの各粒子の移動時間は約1秒未満であって良い。上記IRレーザーパルスは、約2.7マイクロメートルおよび約3.3マイクロメートルの間の波長によって特徴付けられて良い。上記IRレーザーパルス波長は約2.94マイクロメートルであって良い。上記IRレーザー出力密度は、約1MW/cm2から約20MW/cm2の間であって良い。上記IRレーザーパルス幅は、約40マイクロ秒から約100マイクロ秒の間であって良い。上記IRレーザーのパルス繰り返し周波数は約1kHzであって良い。 上記検出器は、TOF-MS検出器、蛍光検出器、LIBS検出器、およびラマン分光計のうちの少なくとも1つを有して良い。 IRレーザーパルスおよびUVレーザーパルスは、Er:YAGレーザーおよびOPOレーザーのうちの少なくとも1つを使用して生成して良い。
【0012】
複雑な有機MALDIマトリックスを使用せずにバイオエアロゾル粒子を識別するための例示的なシステムが開示され、このシステムは、単一粒子のビームを生成するためのエアロゾルビーム発生器と、上記ビーム内の各粒子にインデックスを付けるためのタイミングレーザーを生成するための連続タイミングレーザー発生器と、予め定められた条件が満たされたときに上記タイミングレーザーによってトリガーされ、IRレーザーパルスおよびUVレーザーパルスの少なくとも1つを生成して、各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントと各インデックス付き粒子に関連する光子の少なくとも1つを生成するように構成されたパルスイオン化レーザー発生器と、各粒子に関連付けられたイオン化フラグメントと光子の少なくとも1つを分析し、各検出器から各インデックス付き粒子に関連付けられた一意のスペクトルデータを生成するための少なくとも1つの検出器とを有する。上記システムは、さらに、上記データ融合を使用して各粒子に関連する固有のスペクトルデータをコンパイルして、コンパイルされたスペクトルデータを生成するためのデータ分析システムを有して良い。上記システムは、さらに、上記データ分析システムとのデータ通信に配置された機械学習エンジンを有して良い。上記パルスイオン化レーザー出力密度は約1MW/cm2から約20MW/cm2の間であって良い。粒子サイズ、粒子形状、および蛍光の少なくとも1つを含む、上記インデックス付けされた粒子の少なくとも1つの特性は、タイミングレーザーを使用して測定されて良い。上記 イオン化レーザーは、インデックス付き粒子の少なくとも1つのプロパティが当該プロパティの予め定められた閾値に達したときに、タイミングレーザーを使用してトリガーして良い。 複数の連続タイミングレーザー発生器を使用して、エアロゾルビーム内の各粒子にインデックスを付ける機能、パルスイオン化レーザージェネレーターをトリガーする機能、各インデックス付き粒子の少なくとも1つの特性を測定する機能の少なくとも1つを実行して良い。 少なくとも1つの検出器は、TOF-MS検出器、蛍光検出器、LIBS検出器、およびラマン分光計のうちの少なくとも1つを有して良い。
【0013】
本開示の他の特徴および効果は、部分的には、以下の説明および添付の図面に記載され、本開示の異なる態様が説明され、示され、部分的には、当業者であれば、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を検討することにより、または本開示の実施によって理解することができる。本開示の効果は、添付の特許請求の範囲において特に指摘された手段および組み合わせによって実現され達成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の上述の側面および多くの付随する利点は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるようになるので、より容易に把握されるであろう。
【
図1】
図1は、単一粒子エアロゾル分析のための例示的なシステムの模式図である。
【
図2】
図2は、情報量が大きな生物学的イオンを生成するために同時2波長(IRおよびUV)粒子吸収を使用する単一粒子エアロゾル分析の例示的な方法の模式図である。
【
図3】
図3は、固有の赤外線MALDIマトリックスとしてヒドロキシル基IR吸収を使用して、情報量の大きなイオンを生成する単一粒子エアロゾル分析の例示的な方法の模式図である。
【
図4】
図4は、機械学習手法を使用した結核バイオマーカーの識別の模式的なワークフローを示す。
【
図5】
図5は、TBおよび非TBサンプルの陽および陰イオンモードから取得した信号の重み付き主成分分析(PCA)を示す。
【
図6】
図6は、結核および非結核サンプルの陰イオンから抽出された信号を使用したマイクロアレイ(SAM)ベースの特徴選択の有意性分析を示す。
【
図7】
図7は、TBおよび非TBサンプルの陽および陰イオンモードで最適な特徴選択を行うためのサポートベクターマシン(SVM)分析を示す。
【0015】
図中のすべての参照番号、識別子、およびコールアウトは、ここに完全に記載されているかのように、この参照によってここに組み込まれる。図の要素に番号を付けないことは、いかなる権利も放棄することを意図したものではない。番号のない参照は、図や付録の英字で識別されることもある。
【0016】
以下の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付の図面への参照を含む。図面は、例示として、開示されたシステムおよび方法が実施され得る具体的な実施例を示している。「例」または「オプション」として理解されるべきこれらの実施例は、当業者がこの発明を実施することを可能にするのに十分詳細に説明される。この発明の範囲から逸脱することなく、実施例を組み合わせることができ、他の実施例を利用することができ、または構造的または論理的変更を行うことができる。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、この発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的均等物によって定義される。
【0017】
本開示において、エアロゾルは、一般に、空気またはガスに分散された粒子の懸濁相を意味する。エアロゾルの「リアルタイム」分析とは、一般に、分析対象のエアロゾルサンプルが分析装置またはシステムに導入されてから数分以内にエアロゾル分析物を特定する分析方法および装置を意味する。単数表記(英語の「a」または「an」という用語に相当するもの)は、1つまたは複数を含むために使用され、「または」(「or」)という用語は、特に明記されていない限り、非排他的な「または」を指すために使用されている。さらに、ここで使用され、他に定義されていない表現または用語は、説明のみを目的としており、限定を目的としていないことを理解されたい。本開示で別段の定めがない限り、「約」という用語の範囲を解釈するために、開示される値(寸法、動作条件など)に関連する誤差範囲は、本開示で示される値の±10%である。パーセンテージとして開示された値に関連する誤差範囲は、示されたパーセンテージの±1%である。特定の単語の前に使用される「実質的に」(「substantially」)という単語には、「指定された範囲のかなりの部分」、および「指定されたものの大部分ではあるが全部ではない」という意味が含まれる。
【詳細な説明】
【0018】
この発明の具体的な側面は、開示された方法およびシステムの組成、原理、および動作を説明する目的で、以下にかなり詳細に説明されている。しかしながら、様々な修正を行うことができ、この発明の範囲は、記載された例示的な側面に限定されない。
【0019】
例示的なシステム100(
図1)において、エアロゾル粒子、例えば、空気中の生物学的物質を含む粒子は、毎秒数千の粒子の速度で、粒子から破片および材料を除去する適切な入口要素101に送られ、粒子を単一粒子の狭いビームにコリメートするエアロゾルビーム発生器102に流れ込む。ビーム発生器は、差動ポンピングを利用して、チャンバー104内の高真空と互換性のあるレベルに圧力を下げる。粒子は、レーザー発生器103からの連続レーザー(例えば、これに限定されないがIBACおよびPolaranシステム含む市販のレーザー散乱装置)を使用して索引付けされて良い。さらに、連続レーザーを使用して、粒子サイズ、蛍光(自家蛍光)、および偏光(粒子形状)を決定し、特に関心のある粒子を識別することができる。次に、粒子は、一連の集束レンズを通って真空チャンバー104内に移動する。このチャンバーは、高度な飛行時間型質量分析計(TOF-MS)106、および、オプションとして、集光光学部品107を収容することができる。各インデックス付き粒子がチャンバー104の中心に入ると、レーザー発生器108からの高出力レーザーパルスで打たれる。エアロゾル質量分析は、エアロゾル粒子がレーザーによって照射される領域(通常、直径150ミクロン未満)に入るときに発火するためにイオン化レーザー108を必要とする。イオン化レーザー108は持続時間が5ns(ナノ秒)未満のパルスを発射するので、粒子がいつイオン化領域に入り、レーザー108をトリガーするかを予測するために高度な知識が必要である。複数のレーザーを使用して粒子を測定および追跡して粒子がレーザーの視野に入る時間を予測可能にする。例示的なシステムにおいて、発生器103からのレーザーおよびレーザー発生器112からのレーザーの少なくとも1つを使用して、粒子がビーム発生器102を離れるときに粒子にインデックスを付けて検出することができる。レーザービーム108および112の双方は、近接しては整列されるので、トリガーレーザー112は、単一のエアロゾル粒子の経路を予測し、イオン化レーザー108をトリガーするのに十分であり、粒子タイミングハードウェアの複雑さを大幅に軽減する。レーザー108は、また、発生器103からのレーザーを使用してトリガーされて良い。レーザー108は、粒子サイズ、形状、および蛍光の少なくとも1つがその特性の所定の閾値を満たすか超える場合にのみトリガーされて良い。周期的な間隔で周囲空気中のエアロゾル粒子の組成を監視する場合、この方法でのレーザー108の選択的トリガー、およびその後の各粒子のイオン化フラグメントの検査および収集されたデータの分析は、余分なデータの収集とデータ管理を回避するために、制御(または調整)されて良い。タイミング(またはトリガー)レーザー112は、また、粒子の光学的特性(サイズ、形状、および蛍光)を測定するために使用されて良い。これらの測定値を使用して、イオン化する粒子を選択することができ、データを、データ融合法を使用するデータ分析システム110での分析のために、イオン化中に得られる質量スペクトル測定値および他の光学情報と組み合わせることができる。発生器108からのレーザーパルスの強度は、粒子が分解されて構成生化学成分からイオンを生成するように調整することができる。つまり、レーザーは分析対象物分子の少なくとも一部を気化およびイオン化し、特定の質量電荷比(m/z)のイオンを生成する。これらの情報量が大きなイオンは、TOF-MS106に加速され、そこで分析される。さらに、分析物粒子がレーザービームから十分な光エネルギーを吸収すると、それらは高エネルギー状態から低エネルギー状態に遷移するときに特徴的な光子を放出する。発光は、振動状態間の遷移にも関連している可能性がある。発生器108によって生成された高出力レーザーパルスと粒子との相互作用は、また、高次蛍光、レーザー誘起破壊分光法(LIBS)、ラマンスペクトルおよび赤外線スペクトルなどの過渡的な光学的特徴を誘発し得る。チャンバー104は、また、集光光学部品107を含んで良い。各粒子に関連し、TOF-MSおよび光学センサー109を使用して生成された固有のスペクトルデータ、ならびにレーザー装置103および112からの粒子固有のデータ(例えば、粒子サイズ、形状、蛍光)は、データ分析システム110におけるデータ融合を含むデータ処理を受け、各粒子に関連するコンパイルされたスペクトルデータを生成して良い。コンパイルされたスペクトルデータは、組成を予測するために、既知の生物学的物質スペクトルの知識ベースを含むトレーニングデータセットと比較されて良い。システム110は、機械学習エンジン111とデータ通信して、トレーニングデータセットの知識ベースを更新し、時々刻々と組成物の予測を改善することを可能にする。チャンバー104内の圧力は、真空ポンプ105を使用して少なくとも10~5トルに低減される。例示的なシステム100において、ビーム発生器102からレーザー108で衝突されるまでの粒子の移動時間(または滞留時間)は、約1秒未満である。
【0020】
例示的な方法200(
図2)において、エアロゾルビームまたはストリーム中の個々のエアロゾル粒子201は、ステップ202において、約1.0マイクロメートルから約1.2マイクロメートルの間の波長の赤外線(IR)レーザーパルスおよび約250nmから約400nmの波長のUVレーザーパルスに同時に曝露されて良い。バイオエアロゾル粒子を一度に1粒子ずつ分析することの利点は、各粒子が粒子内の構成タンパク質やその他の高分子量分子の「純粋なサンプル」を代表することである。単一の空中浮遊細菌の場合、それはその1つの生物の「純粋な培養」を表す。IRレーザーパルスおよびUVレーザーパルスの波長は、それぞれ、約1.06マイクロメートルおよび約355nmであって良い。たとえば、周波数が3倍(または4倍)のNd:YAGレーザーを変更して、波長が約1.0マイクロメートルから約1.2マイクロメートルのIRレーザーパルスと、波長が約250nmから約400nmのUVレーザーパルスを生成することができる。IRパルスに曝されたときのエアロゾル粒子の急速な加熱は、各粒子を効率的に「ポップオープン」または瞬時に破裂させ、各粒子に特徴的な多数の分子203(イオン化された小さな断片および大きな断片)を生成し得る。約20MW/cm
2から約150MW/cm
2の高IRレーザー出力密度では、熱分解により分子量が約1kDa未満、通常は500Da未満の小さなイオンが生成され(ハードイオン化)、結果のスペクトルの情報量が減少する。IRレーザー出力密度を約1MW/cm
2から約20MW/cm
2(ソフトイオン化)に下げると、熱分解効果が低下し、エアロゾル粒子から大きな生体分子フラグメントが生成される可能性がある。IRレーザーの繰り返しレート(パルス周波数または1秒あたりのパルス数)は通常1kHzの範囲であり、パルス幅(IRパルスの持続時間)は約1ナノ秒(ns)から約10nsの間である。ただし、IRレーザーパルスのみを使用してこれらの露出した生体分子をイオン化することは効果的ではなかった。UVパルスは、粒子(UV光を吸収する分子の一部)の固有のUV発色団と相互作用して、質量分析計分析用の特定の質量電荷比(m/z)の大きな生体イオンを生成する。複雑な有機マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)マトリックスを追加する必要はない。MALDIプロセスでは、TOF MSで分析する前に、別の化学物質(溶媒中)がサンプルをコーティングするサンプル処理ステップが必要である。方法200は、この複雑なサンプル処理ステップの必要性を排除する一方で、特に生物学的エアロゾル粒子の場合には、依然として大きな有益なイオンを生成する。これらのイオンは、約1kDaから約150kDaの間の分子量を有するイオンを分析することができるステップ204において、高質量範囲のTOF-MSを使用して分析することができる。結果として得られるスペクトルは、データ融合と機械学習の方法で分析すると、分析物粒子の識別に関連する精度、感度、および特異性が向上する。方法200は、分析対象物のエアロゾルがUV発色団や、紫外線を吸収する傾向がある増殖培地中の多くの外因性化合物で構成されている場合に特に適している。UV発色団は、ジピコリン酸(例えば、細菌の胞子被覆に見られるような)、フェニル基を含むアミノ酸(例えば、トリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニン)などの分子が含まれるが、これらに限定されない。例示的なシステム100を使用して、方法200を実施することができる。
【0021】
周囲空気から収集されたエアロゾル分析物粒子は、通常、かなりの量の水を含む。水と背景の大気粒子、特にタンパク質やDNAなどの生体高分子を含む粒子との強い関連性がある。細菌細胞では、リポ多糖、ペプチドグリカン、およびグリカンが、栄養細胞の乾燥重量の約10%しか占めていない可能性がある。さらに、生物学的粒子に関連する他の多くの化合物は、水と同じ強力なレーザー相互作用を持つヒドロキシル基を大量に含んでいる。大気からサンプリングされたすべての粒子に関連する水(周囲湿度/水分)は、単一粒子TOF-MSのレーザー吸収マトリックスとして使用される可能性がある。大気中のエアロゾル粒子に遍在する水の存在は、広範囲の質量にわたるイオン生成のメカニズムを提供する。先に説明したように、例示的なシステム100において、ビーム発生器102からレーザー108が衝突するまでの粒子の移動時間(または滞留時間)は、約1秒未満である。この短い滞留時間は、例示的な方法300におけるIR発色団の分析を可能にする。この短い通過時間の結果として、薄膜(例えば、単層膜)として粒子310の表面にすでに強く結合されているか、または、その中に含まれる水またはヒドロキシル基としての粒子は蒸発しないけれども、ステップ302においてIRレーザーパルスとの強い相互作用に利用できる。生物学的物質には、通常、赤外線活性ヒドロキシル基を含む高濃度の分子が含まれている。実際、体内のすべての細胞相互作用には、表面を装飾し、細胞材料全体に存在する炭水化物分子間の特定の相互作用が含まれる。さらに、生物学的材料の通常の調製物は、寒天などの増殖培地で汚染されていることが多い。これらの材料(IR発色団)は、ヒドロキシル基の含有量が高いため、IR放射線を強力に吸収する。IRレーザーパルスは、約2.7マイクロメートルから約3.3マイクロメートルの間の波長を有して良い。IRパルスの波長は、約2.94マイクロメートルであって良い。IRレーザーの繰り返しレートは通常1kHzの範囲であり、パルス幅は約40マイクロ秒から約100マイクロ秒の間であって良い。IRレーザー出力密度は、約1MW/cm
2から約20MW/cm
2の間であって良い。水、炭水化物、寒天などのヒドロキシル含有分子の赤外線吸収とIRレーザーラインとの間のオーバーラップも
図3に示されている。IRレーザーパルスは、Pantec Biosolutions AG(Rugell、リヒテンシュタイン)が販売するEr:YAGレーザーモジュールを使用して生成できる。Optical Parametric Oscillator(OPO)も使用できる。レーザーパルスと粒子の間の強い相互作用は、広範囲の質量にわたってイオン303を生成する。これらのイオンは、約1kDaから約150kDaの間の分子量を有するイオンを分析することができるステップ304で高質量範囲のTOF-MSを使用して測定することができる。粒子内に含まれる少量の強く結合した表面水と水分子の自然な結合は、真空中での短い滞留時間と相まって、大きな分子フラグメント(1kDA~150kDa分子量)と非常に有益な質量スペクトルを生成する機会を、他のMALDI化学試薬を必要とせずに、提供する。したがって、メソッド300は、高い(>80%)精度、感度、および特異性でエアロゾル粒子の迅速な検出を可能にする。方法300は、液体窒素または他の手段を使用して粒子を凍結して表面水を凍結し、凍結水の薄膜をMALDITOF-MSのマトリックスとして使用する必要をなくす。また、水滴発生器(直径約50ミクロン)を使用して水滴を生成し、TOF-MSの真空チャンバーに導入したり、直径が約2mmで、ソフトな蒸発/イオン化をもたらす水や溶媒(たとえば、水溶液中の50vol.-%メタノール)の液滴を生成するための音響浮揚装置を使用したりする、より複雑な方法も不要である[3]。大きな分子フラグメントの生成は、IRレーザーパルスを使用したイオン化の前に、水または溶媒-水混合物のスプレーを使用してエアロゾル粒子を処理することによっても改善される可能性がある。メタノール、エタノール、およびイソプロパノールのうちの少なくとも1つを含む有機溶媒を使用して良い。
【0022】
エアロゾル粒子が非生物学的粒子を含み、粒子の化学組成を特定することが望まれる場合、これらの粒子の分析は、小さなイオンを生成するためのハードイオン化によって行われて良い。この目的のために、約20MW/cm2から約150MW/cm2の間のレーザー出力密度を有するIRレーザーパルスを使用して良い。方法200および300は、分子量が1kDa未満、通常は500Da未満のフラグメントを生成するハードイオン化と、分子量が通常1kDaを超えるフラグメントを生成するソフトイオン化との間の切り替えを可能にするように修正して良い。
【0023】
先に説明した例示的な方法において、個々のエアロゾル分析物粒子は、イオン化の前に索引付けされ、少なくとも1つの連続レーザーを使用して追跡される。さらに、連続レーザーを使用して、サイズや形状などの粒子特性を測定することができる。個々の粒子にはインデックスが付けられ、追跡されて、各粒子に関連する質量スペクトルデータと各粒子の光学特性のデータ融合が可能になる。これらの光学特性には、粒子のサイズ、形状、および偏光が含まれて良い。検索付けにより、各粒子のイオン化後に収集された質量スペクトルデータを各粒子に関連付けることができる。次に、エアロゾルビーム内の各粒子に関連する大量のデータをフィルタリングし、データ分析システム110のデータ融合プロトコルを使用して分析して、粒子の組成およびタイプをリアルタイムで、高精度、感度、および特異性で識別することができる。データ融合は、複数のソースからのデータの組み合わせとして定義され、より安価、高品質、またはより関連性の高い情報の観点から改善された情報を取得する。データ融合技術のレビューは、Castanedo[2]によって提供されており、参照によりその全体がここに組み込まれる。
【0024】
例示的な方法200および300において、TOF-MS質量スペクトル分析に加えて、1つまたは複数の光学的検出方法も使用されて良い。なぜなら、分析物エアロゾル粒子は、レーザーパルスから十分な光エネルギーを吸収するとき、高エネルギー状態から低エネルギー状態に遷移し、高次蛍光、レーザー誘起破壊分光法(LIBS)、ラマンスペクトル、赤外線スペクトルなどの一時的な光学的フォトンを放出するからである。したがって、質量分析に加えて、光学センサー/検出器109を使用して、エアロゾル粒子の組成を識別して良い。TOF-MSと光学センサーの両方を使用して収集された測定データは、エアロゾル分析物の組成に関する情報を提供するために、データ融合技術を使用して処理されて良い。1つまたは複数の光学的手法と質量分析を含むさまざまな検出器から情報を収集することにより、データ融合プロトコルを使用して各粒子に関連するデータをフィルタリングおよび分析し、高い精度、感度、特異性をもって、粒子の組成とタイプを迅速に(リアルタイムに近い)特定することができる。インデックス付けされた個々のエアロゾル粒子ごとに、TOF-MS、LIBS、ラマン分光法、および赤外分光法の少なくとも1つを含む各測定からのデータをセンサーデータ融合エンジン108に転送し、ここで、機械学習や深層学習などの人工知能ツールを使用して、粒子を完全に特徴づけて良い。
【0025】
LIBSにおいて、レーザーパルス(例えば、約1064nmの波長を有する高エネルギーNd:YAGレーザーからの)が粒子に集束されて、少量の粒子をアブレートしてプラズマを生成する。分析対象物の粒子は、イオン種と原子種に分解(解離)される。プラズマが冷えると、CCD検出器などの光学検出器を使用して、元素の特徴的な原子輝線を観察できる。別の例示的な光学的検出ツールは、ラマン分光法である。ラマン分光法は、サンプルの識別と定量に使用できる分子振動に関する情報を提供する。この技術は、レーザービーム(例えば、波長が約330~約360nmのUVレーザー源)をサンプルに集束させ、非弾性散乱光を検出することを含む。散乱光の大部分は励起源と同じ周波数であり、レイリーまたは弾性散乱として知られている。入射電磁波とサンプル中の分子の振動エネルギーレベルとの相互作用により、ごく少量の散乱光のエネルギーがレーザー周波数からシフトする。この「シフトされた」光の強度と周波数をプロットすると、サンプルのラマンスペクトルが得られる。蛍光分光法において、分析物分子は特定の波長での照射によって励起され、異なる波長の放射線を放出する。発光スペクトルは、定性分析と定量分析の両方の情報を提供する。適切な波長の光が分子に吸収されると、分子の電子状態は基底状態から、励起された電子状態の1つにおいて多くの振動レベルの1つに変化する。分子がこの励起状態になると、いくつかのプロセスを介して緩和が発生する可能性がある。蛍光はこれらのプロセスの1つであり、光を放出する。蛍光分光法で放出される光の種々の周波数とそれらの相対強度を分析することにより、種々の振動レベルに関連する化学構造を決定できる。トリプトファンなどの生物学的サンプル中の特定のアミノ酸は、高い蛍光量子効率を持っており、これは、これらのアミノ酸を識別するための蛍光分光法の使用に有利である。
【0026】
機械学習エンジン111を使用して得られて収集されたスペクトルデータを分析するための機械学習(ML)技術は、遅くて労働集約的である分析物同定のための手動データ処理に有意な改善を提供する。機械学習は一般に人工知能のサブセットであり、時間の経過とともにデータ分析によってパフォーマンスが向上するアルゴリズムで構成されている。教師あり機械学習手法を使用して良い。教師あり学習は、入力と出力のペアの例に基づいて入力を出力にマッピングする関数を学習するタスクで構成される。一連のトレーニング例で構成されるラベル付きトレーニングデータから関数を推測する。機械学習には、特定の機能を事前に特定する必要なしに、複雑なデータセット内の署名を特定できる教師なし学習方法である深層学習方法も含まれる。教師なし機械学習法と半教師あり(教師あり学習と教師なし学習のハイブリッド法)も使用できる。教師なし学習方法は、既存のラベルなしでデータセット内の以前は未知のパターンを見つけるのに役立つタイプ学習を含んで良い。教師なし学習で使用される2つの例示的な方法は、主成分分析とクラスター分析である。クラスター分析は、アルゴリズムの関係を推定するために、共有属性を持つデータセットをグループ化またはセグメント化するための教師なし学習で使用される。クラスター分析は、ラベル付け、分類、または分類されていないデータをグループ化する機械学習のブランチである。クラスター分析は、データの共通性を識別し、新しいデータの各々のそのような共通性の有無に基づいて反応する。このアプローチは、異常なデータポイントを検出するのに役立つ。教師なし学習法を異常検出に使用できる。これは、これまで知られていなかった危険を特定するのに役立つ。たとえば、空気サンプルを定期的に分析して、空気中の粒子の組成を測定し、粒子の特性(サイズ、形状、蛍光など)と、粒子に関連するスペクトルを特定して、「通常の」周囲空気中の粒子のベースラインデータ情報を取得することができる。生物学的脅威物質の大気への放出などのイベント後の大気中の粒子は、ベースラインデータから逸脱し、異常を強調する粒子特性データとスペクトルデータを提供し(異常スペクトルによって証明されるように)、脅威を軽減するために必要な是正措置を取る機会を提供する。先に説明した、コンパイルされたスペクトルデータは、粒子組成を予測するために、既知の生物物質スペクトルの知識ベースを含むトレーニングデータセットと比較することができる。システム110は、機械学習エンジン111とデータ通信して、トレーニングデータセットの知識ベースを更新し、経時的な構成の予測を改善することを可能にすることができる。生物物質の質量スペクトルは、化学物質の質量スペクトルよりも約3桁大きい範囲をカバーしているため、自動化された手法の適用が大幅に複雑になる。
【0027】
さらに、環境汚染物質は、イオン化プロセス(競合イオン化)中にターゲットと競合することによって信号強度を低下させる可能性がある。これは、ターゲットシグネチャとデコンボリューションする必要のあるシグネチャコンポーネント(クラッタ)を導入する。現在の自動化された方法は、ほとんどの場合、環境が乱雑にならないサンプルで非常に純粋なターゲットを検索することに限定されている。開示された例示的な方法は、標的分析物をクラッタから物理的に分離することによって競合イオン化を排除し、シグネチャの曖昧さを排除する(各イベントは、標的またはクラッタのいずれかであると想定される)。高分解能質量分析を使用して結核(TB)バイオマーカーを同定するための例示的なML概略
図400が
図4に示されている。ステップ401で高分解能Orbitrap質量分析計(ThermoFisher Scientific)を使用して、数千の特徴を含む陽および陰イオン信号を取得(または抽出)した。5:1の信号対雑音比を超える質量比率(SNR)が選択された。教師なし次元削減アルゴリズムである加重主成分分析(PCA)をステップ402で使用して、信号の大規模なセットを2つのコンポーネントに減らした。PCAは2D視覚化を提供しました。これは、抽出された信号が2つのクラスのサンプル(TBと非TB)間の本質的な違いを明らかにするかどうかを調査するために使用された。
図5は、19人の喀痰陽性結核患者および17人の非結核患者からの陽および陰イオンモードで抽出された信号のPCAの出力を示している。陽および陰イオン信号は、2つのグループのサンプル、つまり非結核患者と結核患者から収集された。PCAの結果は、各グループのサンプルが一緒にクラスター化する傾向があることを明らかにした。これは、高分解能質量分析から収集された抽出信号を使用して、2つのクラスのサンプルを区別できることを示唆している。ステップ402は、また、TOF-MSを使用して方法200および300から収集されたデータを分析するために使用されて良い。
【0028】
方法400において、マイクロアレイの有意性分析(Significance Analysis of Microarrays:SAM)SAM技術も、また、ステップ403で、ステップ401で抽出された信号に適用されて、強く識別可能な特徴を識別し、そして、2つのクラスのサンプルを区別するための最も強力な特徴を選択した。SAMは、ビッグデータセットを処理し、2つのクラスのサンプル間で最も強力な特徴を識別するように設計された特徴選択アルゴリズムである。SAM分析は、量の変化、統計的有意性、および偽陽性率に基づいて特徴ランキングリストを返した。SAMによって識別された機能は、ステップ404でサポートベクターマシン(SVM)を使用して最適化された。SVMは、教師あり機械学習ベースの分類器であり、これは、トレーニングデータセットを使用して、未知のサンプルを分離超平面の側面に応じて分類できるように、分離超平面を定義する、教師あり機械学習ベースの分類器である。SVMの利点は、高次元データを処理して分析物の組成を予測し、トレーニングデータセットに含まれる知識ベースを継続的に改善する能力に依存する。
【0029】
一例として、陰イオンから抽出された信号を用いたSAMベースの特徴選択が
図6に示されている。データは、(A)アップレギュレーション、(B)ダウンレギュレーション、(C)重要ではない3つのクラスに分類される特徴を有する。非結核(非TB)患者よりも結核(TB)患者で高い信号(アップレギュレーション)は領域Aで表され、領域Bは結核患者で低い信号(ダウンレギュレーション)で表される。全体として、陽イオンモードから抽出された1500を超える特徴(イオン信号)と陰イオンモードから抽出された500を超える特徴は、結核患者でより高いことがわかった。次に、機能の数を最適化するためにSVM分析が実行された。この分析では、比較的少数の被験者(トレーニングデータセット)と比較して数千の信号が、結核関連の信号を特定する可能性を示した。分類アルゴリズムとして、SVMを使用して、精度、感度、および特異度のパーセンテージを計算する混同行列を返すことにより、SAMによって選択された機能を最適化できる。
図7に示すように、陽イオンモードでは、約300の選択された機能が適用されたときに、SVMベースの分類の最高のパフォーマンスが存在した。陰イオンモードでは、約100の選択された機能が適用されたときに、SVMベースの分類の最高のパフォーマンスが見つかった。これらの方法は、結核患者と非結核患者を、89%の精度、100%の感度、81%の特異度で区別することができた。先の例示的な分析方法を使用して、南アフリカのマシフメレレ(Masiphumelele)で収集された患者サンプルの脂質抽出および高分解能質量分析を使用して、複数の結核バイオマーカーを特定した。
【0030】
大気中の生物学的脅威因子の存在を特定するために、空気サンプルを所定の時間間隔で収集し、先に開示した例示的な方法を使用して分析して、データ分析システム110における背景/ベースライン情報の履歴データセット(トレーニングデータセット)を生成することができる。分析は、エンジン111で実行される機械学習アルゴリズムを使用して時間をかけて改善されて良い。背景情報の変動は、保護された領域における大気の通常の挙動をマッピングするためにモデル化されて良い。生物学的、生化学的、または化学的エアロゾル粒子の放出が疑われる場合、先の例示的な方法を使用して空気をサンプリングすると、過去の背景情報から逸脱した情報が得られる。このような脅威の存在の最初の兆候は、通常の背景からの急激な逸脱である。この段階で、個々の粒子の組成に関してアルゴリズムによる決定を行うことができる。したがって、人命を守り、人命の損失を防ぐために、迅速に是正措置を講じることができる。
【0031】
先に開示された例示的な方法および装置は、また、液体サンプルの分析のために使用されて良い。この場合、サンプルのアリコートは、適切な手段を使用してエアロゾル化することができる。例えば、ネブライザーを使用して、空気中の液体サンプルをエアロゾル化することができる。分析物粒子は、また、綿棒から抽出されて良く、または、適切な溶媒を使用して溶解され得る固体サンプルの形態であって良い。次に、サンプルのアリコートを適切な手段を使用してエアロゾル化することができる。例えば、ネブライザーを使用して、空気中の液体サンプルをエアロゾル化することができる。開示された例示的な方法およびデバイスを使用して、細菌に加えて、ウイルスおよび毒素をリアルタイムで識別することができる。1つまたは複数の光学検出器および質量分析から収集されたデータを分析することにより、分析物粒子の生物学的指紋をリアルタイムで取得することができる。
【0032】
開示された例示的な方法は、特に生物学的エアロゾル粒子の場合に依然として大きな有益なイオンを生成しながら、MALDI TOFーMSに関連する複雑なサンプル処理ステップを使用する必要性を取り除く。さらに、大きな分子フラグメントの生成は、IRレーザーパルスを使用してイオン化する前に、水または溶媒-水混合物のスプレーを使用してエアロゾル粒子を処理することによっても改善され得る(例えば、方法300において)。メタノール、エタノール、およびイソプロパノールのうちの少なくとも1つを有する有機溶媒を使用することができる。MALDIプロセスでは、TOF-MSで分析する前に、別の化学物質(通常は溶媒中の複雑な有機分子)がサンプルをコーティングするサンプル処理ステップが必要である。方法200および300は、MALDIマトリックス(有機溶媒などの単純なマトリックス)コーティングステップを可能にするように修正することができる。MALDI技術と高質量範囲飛行時間型(TOF)質量分析を組み合わせることで、大きなペプチド成分の直接分析や、「全細胞」の生物学的識別を可能にする完全なタンパク質も可能になる。「音響コーターを使用したエアロゾル粒子のコーティング」と題された、本出願人の国際出願PCT/US2016/48395は、従来のMALDI TOF質量分析を説明し、複雑な有機MALDIマトリックスの例を提供し、エアロゾル飛行時間型質量分析計で分析する前に、バイオエアロゾル粒子にMALDIマトリックス溶液のコーティングを適用するための方法およびデバイスを開示し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0033】
要約は、37C.F.R.§1.72(b)に準拠して、読者が大まかな把握から技術的開示の性質と要点を迅速に判断できるようにするために提供されている。特許請求の範囲または意味を解釈または制限するために使用されるべきではない。
【0034】
本開示は、それを実施する好ましい形態に関連して説明されてきたけれども、当業者は、本開示の精神から逸脱することなく、それに多くの修正を加えることができることを理解するであろう。したがって、本開示の範囲が先の説明によって制限されることを意図するものではない。
【0035】
本開示の本質から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることも理解されたい。このような変更も暗黙的に説明に含まれている。それらは依然としてこの開示の範囲内にある。この開示は、独立して、そしてシステム全体として、そして方法および装置モードの両方において、開示の多くの側面をカバーする特許をもたらすことを意図していることを理解されたい。
【0036】
さらに、本開示および特許請求の範囲の様々な要素のそれぞれは、また、様々な方法で達成されて良い。この開示は、任意の装置実装のバリエーション、方法またはプロセスの実装、あるいはこれらの任意の要素の単なるバリエーションであろうと、そのような各バリエーションを包含すると理解されるべきである。
【0037】
特に、各要素の単語は、機能または結果のみが同じであっても、同等の装置用語または方法用語によって表現され得ることを理解されたい。このような同等の、より広い、またはさらに一般的な用語は、各要素または動作の説明に含まれると見なす必要がある。このような用語は、この開示が権利を与えられている暗黙的に広い範囲を明示するために必要な場合に置き換えることができる。すべての動作は、その動作をとるための手段として、またはその動作を引き起こす要素として表現される可能性があることを理解する必要がある。同様に、開示される各物理的要素は、その物理的要素が促進する動作の開示を包含すると理解されるべきである。
【0038】
さらに、使用される各用語に関して、本出願におけるその利用がそのような解釈と矛盾しない限り、例えば、技術者によって認識されている標準的な技術辞書とランダムハウスウェブスターのUnabridgedDictionaryの最新版の少なくとも1つに含まれている、共通の辞書定義は、各用語およびすべての定義、代替用語、および同義語について、ここに組み込まれるものとして理解されるべきである。
【0039】
さらに、「有する」(comprising、comprise)という移行句の使用は、従来のクレーム解釈に従って、本明細書の「オープンエンド」クレームを維持するために使用される。したがって、文脈上別段の必要がない限り、「有する」は、記載された要素またはステップあるいは要素またはステップのグループを含むことを意味することを意図しているけれども、他の要素またはステップあるいは要素またはステップのグループを除外することを意味するものではない。そのような用語は出願人に法的に許容される最も広い範囲を提供するための最も広範な態様で解釈されるべきである。
以下のここで記載した技術的特徴を列挙する。
[技術的特徴1]
バイオエアロゾル粒子の組成を特定する方法において、
エアロゾルビーム発生器を使用してエアロゾル粒子ビームを生成するステップと、
第1のレーザーを使用して、上記ビーム内の各粒子にインデックスを付けるステップと、
連続タイミングレーザーを使用して、各インデックス付き粒子の位置を検出するステップと、
イオン化パルスレーザーをトリガーして、各インデックス付き粒子がイオン化レーザーのイオン化領域に到達したときに、IRレーザーパルスおよびUVレーザーパルスを同時に生成するステップと、
各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントおよび各インデックス付き粒子に関連する光子を生成する光子生成ステップであって、各イオン化フラグメントの分子量は約1kDaから約150kDaの間である、上記光子生成ステップと、
少なくとも1つの検出器を使用して、各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントおよび各インデックス付き粒子に関連する光子の少なくとも1つを分析するステップと、
各検出器から各インデックス付き粒子に関連付けられた一意のスペクトルデータを生成するステップと、
データ融合を使用して一意のスペクトルデータをコンパイルし、コンパイルされたスペクトルデータを生成するステップと、
各粒子の組成を決定するステップとを有することを特徴とする方法。
[技術的特徴2]
上記第1のレーザーを使用して、粒子サイズ、粒子形状、および蛍光のうちの少なくとも1つを含む、上記インデックス付き粒子の少なくとも1つの特性を測定するステップをさらに有する技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴3]
タイミングレーザーを使用して、粒子サイズ、粒子形状、および蛍光のうちの少なくとも1つを含む、インデックス付けされた粒子の少なくとも1つの特性を測定するステップをさらに有する技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴4]
上記イオン化レーザーをトリガーするステップは、上記インデックス付けされた粒子の少なくとも1つの特性がその特性の所定の閾値を満たすときに、第1のレーザーを使用して開始される技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴5]
上記イオン化レーザーをトリガーするステップは、インデックス付き粒子の少なくとも1つの特性がその特性の所定の閾値を満たすときに、タイミングレーザーを使用して開始される技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴6]
上記組成を決定するステップは、
コンパイルされたスペクトルデータをトレーニングスペクトルデータセットの知識ベースと比較して、組成を予測するステップ、
上記トレーニングデータセットの知識ベースを更新するステップ、および、
機械学習手法を使用して、時間の経過に伴って組成の上記予測を改善するステップ
の少なくとも1つを有する技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴7]
上記機械学習方法が教師あり機械学習方法を有する技術的特徴6に記載の方法。
[技術的特徴8]
上記組成を決定するステップは、教師なし機械学習方法を使用して、ラベル付けされていないエアロゾル粒子を分類し、異常なエアロゾル粒子を識別するステップを有する技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴9]
上記機械学習方法が、加重主成分分析(PCA)を有する技術的特徴8に記載の方法。
[技術的特徴10]
上記IRレーザーパルスは、約1.0マイクロメートルから約1.2マイクロメートルの間の波長によって特徴付けられる技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴11]
上記UVレーザーパルスは、約250nmから約400nmの間の波長によって特徴付けられる技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴12]
上記IRパルスの波長が約1.06マイクロメートルである技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴13]
上記UVパルスの波長が約355nmである技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴14]
上記IRレーザーの出力密度は、約1MW/cm
2
から約20MW/cm
2
の間である技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴15]
上記IRレーザーのパルス幅が約1nsから約10nsの間である技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴16]
上記IRレーザーのパルス繰り返し周波数が約1kHzである技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴17]
上記少なくとも1つの検出器がTOFーMS検出器を有する技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴18]
上記少なくとも1つの検出器が、TOF-MS検出器、蛍光検出器、LIBS検出器、およびラマン分光計のうちの少なくとも1つを有する技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴19]
上記イオン化されたフラグメントが、ジピコリン酸、トリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニンのうちの少なくとも1つを含むUV発色団を有する技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴20]
上記IRレーザーパルスおよびUVレーザーパルスは、Nd:YAGレーザーを使用して生成される技術的特徴1に記載の方法。
[技術的特徴21]
IR発色団を有するバイオエアロゾル粒子の組成を特定する方法において、
エアロゾルビーム発生器を使用してエアロゾル粒子ビームを生成するステップと、
第1のレーザーを使用して、上記ビーム内の各粒子にインデックスを付けるステップと、
連続タイミングレーザーを使用して、各インデックス付き粒子の位置を検出するステップと、
イオン化パルスレーザーをトリガーして、各インデックス付き粒子がイオン化レーザーのイオン化領域に到達したときに、IRレーザーパルスを生成するステップと、
各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントおよび各インデックス付き粒子に関連する光子を生成する光子生成ステップであって、各イオン化フラグメントの分子量は約1kDaから約150kDaの間である、上記光子生成ステップと、
少なくとも1つの検出器を使用して、各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントおよび各インデックス付き粒子に関連する光子の少なくとも1つを分析するステップと、
各検出器から各インデックス付き粒子に関連付けられた一意のスペクトルデータを生成するステップと、
データ融合を使用して一意のスペクトルデータをコンパイルし、コンパイルされたスペクトルデータを生成するステップと、
各粒子の組成を決定するステップとを有することを特徴とする方法。
[技術的特徴22]
IR発色団が、水、寒天、および炭水化物のうちの少なくとも1つを有する技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴23]
上記第1のレーザーを使用して、粒子サイズ、粒子形状、および蛍光のうちの少なくとも1つを含む、上記インデックス付き粒子の少なくとも1つの特性を測定するステップをさらに有する技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴24]
タイミングレーザーを使用して、粒子サイズ、粒子形状、および蛍光のうちの少なくとも1つを含む、インデックス付けされた粒子の少なくとも1つの特性を測定するステップをさらに有する技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴25]
上記イオン化レーザーをトリガーするステップは、上記インデックス付けされた粒子の少なくとも1つの特性がその特性の所定の閾値を満たすときに、第1のレーザーを使用して開始される技術的特徴23に記載の方法。
[技術的特徴26]
上記イオン化レーザーをトリガーするステップは、インデックス付き粒子の少なくとも1つの特性がその特性の所定の閾値を満たすときに、タイミングレーザーを使用して開始される技術的特徴24に記載の方法。
[技術的特徴27]
組成を決定するステップは、
コンパイルされたスペクトルデータをトレーニングスペクトルデータセットの知識ベースと比較して、組成を予測するステップ、
上記トレーニングデータセットの知識ベースを更新するステップ、および、
機械学習手法を使用して、時間の経過に伴って組成の上記予測を改善するステップ
の少なくとも1つを有する技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴28]
機械学習方法が教師あり機械学習方法を有する技術的特徴27に記載の方法。
[技術的特徴29]
上記組成を決定するステップは、教師なし機械学習方法を使用して、ラベル付けされていないエアロゾル粒子を分類し、異常なエアロゾル粒子を識別するステップを有する技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴30]
上記機械学習方法が、加重主成分分析(PCA)を有する技術的特徴29に記載の方法。
[技術的特徴31]
エアロゾルビーム発生器からイオン化パルスレーザーのイオン化領域までの各粒子の移動時間が約1秒未満である技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴32]
上記IRレーザーパルスは、約2.7マイクロメートルおよび約3.3マイクロメートルの間の波長によって特徴付けられる技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴33]
上記IRレーザーパルス波長が約2.94マイクロメートルである技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴34]
上記IRレーザー出力密度は、約1MW/cm
2
から約20MW/cm
2
の間である技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴35]
上記IRレーザーパルス幅は、約40マイクロ秒から約100マイクロ秒の間である技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴36]
上記IRレーザーパルスは、上記Er:YAGレーザーおよびOPOレーザーのうちの少なくとも1つを使用して生成される技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴37]
上記少なくとも1つの検出器が、TOF-MS検出器、蛍光検出器、LIBS検出器、およびラマン分光計のうちの少なくとも1つを有する技術的特徴21に記載の方法。
[技術的特徴38]
バイオエアロゾル粒子の組成を識別するためのシステムにおいて、
単一粒子のビームを生成するためのエアロゾルビーム発生器と、
上記ビーム内の各粒子にインデックスを付けるためのタイミングレーザーを生成するための連続タイミングレーザー発生器と、
上記タイミングレーザーによってトリガーされ、IRレーザーパルスおよびUVレーザーパルスの少なくとも1つを生成して、各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントと各インデックス付き粒子に関連する光子の少なくとも1つを生成するように構成されたパルスイオン化レーザー発生器と、
各粒子に関連付けられたイオン化フラグメントと光子の少なくとも1つを分析し、各検出器から各インデックス付き粒子に関連付けられた一意のスペクトルデータを生成するための少なくとも1つの検出器とを有することを特徴とするシステム。
[技術的特徴39]
上記データ融合を使用して各粒子に関連する固有のスペクトルデータをコンパイルして、コンパイルされたスペクトルデータを生成するためのデータ分析システムをさらに有する技術的特徴38に記載のシステム。
[技術的特徴40]
上記データ分析システムとのデータ通信に配置された機械学習エンジンをさらに有する技術的特徴39に記載のシステム。
[技術的特徴41]
上記パルスイオン化レーザー出力密度が約1MW/cm
2
から約20MW/cm
2
の間である技術的特徴38に記載のシステム。
[技術的特徴42]
上記少なくとも1つの検出器が、TOF-MS検出器、蛍光検出器、LIBS検出器、およびラマン分光計のうちの少なくとも1つを有する技術的特徴38に記載のシステム。
[技術的特徴43]
バイオエアロゾル粒子の組成を識別するための方法において、
エアロゾルビーム発生器を使用してエアロゾル粒子ビームを生成するステップと、
上記ビーム内の各粒子にインデックスを付けるステップと、
各インデックス付き粒子の粒子サイズ、粒子形状、および蛍光の少なくとも1つを測定し、分析するインデックス付き粒子を選択するステップと、
選択された各インデックス付き粒子がイオン化レーザーのイオン化領域に到達したときに、上記イオン化パルスレーザーをトリガーするステップと、
各イオン化フラグメントの分子量が約1kDaから約150kDaの間である、各インデックス付き粒子のイオン化フラグメントを生成するステップと、
TOF-MS検出器を使用して、各インデックス付き粒子の少なくとも1つのイオン化フラグメントを分析し、各粒子に関連付けられた固有のスペクトルデータを生成するステップと、
上記固有のスペクトルデータを使用して各粒子の組成を決定するステップとを有することを特徴とする方法。
[技術的特徴44]
どのインデックス付き粒子を分析するかを選択するステップは、上記インデックス付き粒子の粒子サイズ、粒子形状、および蛍光のうちの少なくとも1つが所定の閾値を満たすかどうかを決定するステップを有する技術的特徴43に記載の方法。
[技術的特徴45]
上記インデックス付けステップ、上記測定ステップ、および上記トリガーステップの各々が、1つまたは複数のレーザービームを使用して実行される技術的特徴43に記載の方法。
[技術的特徴46]
上記組成を決定するステップは、
データ融合を使用して各粒子の固有のスペクトルデータをコンパイルし、コンパイルされたスペクトルデータを生成するステップと、
上記コンパイルされたスペクトルデータをトレーニングスペクトルデータセット知識ベースと比較して、組成を予測するステップとのうちの少なくとも1つを有する技術的特徴43に記載の方法。
[技術的特徴47]
上記トレーニングデータセット知識ベースを更新するステップと、
機械学習手法を使用して、時間の経過に伴って組成の予測を改善するステップとをさらに有する技術的特徴46に記載の方法。
[技術的特徴48]
上記IRレーザーパルスは、約1.0マイクロメートルおよび約1.2マイクロメートルの間の波長によって特徴付けられる技術的特徴43に記載の方法。
[技術的特徴49]
上記IRレーザーパルスは、約2.7マイクロメートルおよび約3.3マイクロメートルの間の波長によって特徴付けられる技術的特徴43に記載の方法。
【0040】
[参考文献]
1. Wan G-H, Wu C-L, Chen Y-F, Huang S-H, Wang Y-L, et al. (2014), "Particle Size Concentration Distribution and Influences on Exhaled Breath Particles in Mechanically Ventilated Patients," PLoS ONE 9(1): e87088.
2. Castanedo, F., "A Review of Data Fusion Techniques," The Scientific World Journal, 2013.
3. Warschat, C. et al., "Mass Spectrometry of Levitated Droplets by Thermally Unconfined Infrared-Laser Desorption," Anal. Chem. 2015, 87, 8323ー8327.