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特許7456651急性骨髄性白血病を処置するためのHCK阻害剤及びBcl-2阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】急性骨髄性白血病を処置するためのHCK阻害剤及びBcl-2阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20240319BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 31/496 20060101ALN20240319BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K45/00
A61K45/06
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/55
A61K31/496
A61K31/5377
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022115616
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2019514827の分割
【原出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2022141846
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】62/394,871
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業「バイオ医薬品評価のための新世代ヒト化マウスの開発」の委託研究開発、及び、平成27年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム「予後不良急性骨髄性白血病の幹細胞を標的とした低分子化合物」の委託研究開発 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 文彦
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 頼子
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/017659(WO,A1)
【文献】特表2019-529423(JP,A)
【文献】Leukemia, 2007, Vol.21, pp.1763-1772
【文献】Oncotarget, 2016.6, Vol.7, No.32, pp.51163-51173
【文献】Molecular Cancer, 2009, Vol.8, #132
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/519
A61K 45/00
A61K 45/06
A61P 35/02
A61P 43/00
A61K 31/55
A61K 31/496
A61K 31/5377
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RK-20449及びRK-20693並びにそれらの薬学的に許容される塩から選択されるHCK阻害剤を含む、急性骨髄性白血病を処置するための組成物であって、対象に、ABT-199又はその薬学的に許容される塩であるBCL-2阻害剤と共同的に投与される組成物。
【請求項2】
前記対象が、FLT3-ITD+急性骨髄性白血病を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記対象が、DNMT3A、IDH2、IDH1、NPM1、TET2、CEBPA、ASXL1、EZH2、SETBP1、SMC3、KIT、NRAS及びWT1から選択される遺伝子に1つ以上の変異を有する細胞により特徴付けられる悪性造血及び/又は非悪性多系統造血を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
AC220、ソラフェニブ、PKC412、CEP-701、UNC2025、MLN518、KW-2449、AMG-925、スニチニブ、SU5614、AC2206、クレノラニブ及びPLX3397から選択されるFLT3-ITD阻害剤と共同的に投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記HCK阻害剤、前記FLT3-ITD阻害剤、及び前記BCL-2阻害剤が、別々の単位剤形で同時に又は逐次的に投与される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記HCK阻害剤が、前記HCK阻害剤、前記BCL-2阻害剤、及び薬学的に許容される担体、アジュバント又は媒体を含む単一の単位剤形で投与される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記単一の単位剤形が、AC220、ソラフェニブ、PKC412、CEP-701、UNC2025、MLN518、KW-2449、AMG-925、スニチニブ、SU5614、AC2206、クレノラニブ及びPLX3397から選択されるFLT3-ITD阻害剤を更に含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記HCK阻害剤が、RK-20449であり、前記BCL-2阻害剤が、ABT-199である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記HCK阻害剤が、RK-20693であり、前記BCL-2阻害剤が、ABT-199である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記FLT3-ITD阻害剤が、AC220である、請求項4又は7に記載の組成物。
【請求項11】
前記HCK阻害剤、及び/又は前記FLT3-ITD阻害剤、及び/又は前記BCL-2阻害剤が、薬学的に許容される塩として各々存在する、請求項4又は7に記載の組成物。
【請求項12】
前記HCK阻害剤、及び/又は前記FLT3-ITD阻害剤、及び/又は前記BCL-2阻害剤が、薬学的に許容される組成物中に各々存在する、請求項4又は7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白血病、例えば急性骨髄性白血病を処置するための化合物、組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年にわたって、白血病幹細胞(LSC)は、ヒト急性骨髄性白血病(AML)の病因並びに化学療法抵抗性及び再発における中心的存在として認識されてきた。原発性ヒトAML LSCにおいてSrcファミリーキナーゼ(SFK)造血細胞キナーゼ、又はHCKは、正常な造血幹細胞(HSC)と比較して過剰に多い。骨髄増殖及び分化におけるHCK、及びLYN及びFGRを含めた他のSFKの重要性が、ノックアウトマウスにおいて実証されてきた。骨髄特異的SFKは、野生型及び変異体キナーゼ受容体(KIT)及びfms様チロシンキナーゼ3(FLT3)シグナル伝達並びにシグナル伝達物質及びトランスクリプション5(STAT5)の活性化因子の活性化に関与する。骨髄特異的SFKは、ブレークポイントクラスター遺伝子-アベルソンマウス白血病融合タンパク質(BCR-ABL)の下流にある細胞外シグナルに調節されるキナーゼ(ERK)経路にも関係し、BCR-ABL+B-ALL(急性リンパ性白血病)のマウスモデルにおいて白血病誘発に関係する。
【0003】
FLT3は、骨髄における造血幹細胞の分化及び生存に重要な役割を演ずるIII型受容体チロシンキナーゼであり、AML及びALLにおいて過剰発現されることが観察された。これらAML患者において様々な機能獲得型変異、例えばFLT3-ITD(内部タンデム重複)、FLT3-D835Y/E/V/H、及びFLT3-K663Qが同定され、その中でFLT3-ITDは、AML発病の約30%の主因であり、予後不良に関連する。変異したFLT3-ITDキナーゼは、Stat5、ERK並びにAKTを含めた下流のシグナル伝達メディエータによるAML芽球生存及び増殖を促進する。従って、FLT3-ITDキナーゼは、FLT3-ITD陽性AMLの有効な創薬標的と思われてきた。
【0004】
多数の小分子阻害剤、例えばスニチニブ、ソラフェニブ、PKC412、CEP-701、UNC2025、MLN518、KW-2449及びAMG-925が、強力なFLT3キナーゼ阻害活性を呈すると報告されてきた。加えて、比較的より選択的な第二世代のFLT3阻害剤、例えばAC2206、クレノラニブ及びPLX3397が、臨床的に評価されており、初期過渡応答を示したが、通常その後抵抗性を速やかに進展させる。
【0005】
遺伝子、例えばNPM1、TET2、WT1、IDH1/2及びDNMT3Aにおける変異がAMLに一般に見られ、次世代配列決定(NGS)を利用する最近の研究は、バリアント対立遺伝子頻度(VAF)に基づいて特定の変異が、他より前に起こることを示唆する。早期の体細胞変異を保有する前白血病細胞が、白血病誘発及び疾患再発に寄与すると考えられている。しかしながら、これらの変異は、白血病誘発に充分でなく、悪性化する運命にある細胞を同定することもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、AMLの原因となる変異の解明及びそれら変異により生成される異常な経路の阻害又は遮断に基づく有効な処置の必要性が存在する。AMLの長期寛解を提供し得る1つの有効な組合せは、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤及びBCL-2阻害剤の組合せで得られる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りに要約される。
1.細胞においてHCK及びBCL-2を共に阻害する方法であって、細胞を、HCK阻害剤及びBCL-2阻害剤、又はその薬学的に許容される組成物と接触させる工程を含む、方法。
2.FLT3-ITD変異を有する細胞を致死させる方法であって、細胞を、HCK阻害剤及びBCL-2阻害剤、又はその薬学的に許容される組成物と接触させる工程を含む、方法。
3.細胞を、FLT3-ITD阻害剤と接触させる工程を更に含む、項目1又は2の方法。
4.HCK阻害剤が、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤である、項目1又は2の方法。
5.急性骨髄性白血病を処置する方法であって、対象に、HCK阻害剤及びBCL-2阻害剤、又はその薬学的に許容される組成物を共同的に投与する工程を含む、方法。
6.対象が、FLT3-ITD+急性骨髄性白血病を有する、項目5の方法。
7.対象が、DNMT3A、IDH2、IDH1、NPM1、TET2、CEBPA、ASXL1、EZH2、SETBP1、SMC3、KIT、NRAS及びWT1から選択される遺伝子に1つ以上の変異を有する細胞により特徴付けられる悪性造血及び/又は非悪性多系統造血を有する、項目5又は6の方法。
8.FLT3-ITD阻害剤を共同的に投与する工程を更に含む、項目5から7のいずれか一項の方法。
9.HCK阻害剤が、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤である、項目5から8のいずれか一項の方法。
10.HCK阻害剤、FLT3-ITD阻害剤及びBCL-2阻害剤が、別々の単位剤形で同時に又は逐次的に投与される、項目8又は9の方法。
11.HCK阻害剤、BCL-2阻害剤、及び薬学的に許容される担体、アジュバント又は媒体を含む単一の単位剤形を投与する工程を含む、項目5から10のいずれか一項の方法。
12.単一の単位剤形が、FLT3-ITD阻害剤を更に含み、又はHCK阻害剤が、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤である、項目11の方法。
13.HCK阻害剤が、RK-20449、RK-20693、RK-24466、RK-20444、RK-20445及びRK-20466から選択される、前の項目のいずれか1つの方法。
14.FLT3-ITD阻害剤が、AC220、ソラフェニブ、PKC412、CEP-701、UNC2025、MLN518、KW-2449、AMG-925、スニチニブ、SU5614、AC2206、クレノラニブ及びPLX3397から選択される、項目3、4、又は7から12のいずれか1つの方法。
15.BCL-2阻害剤が、AT-101、TW-37、TM-1206、ゴシポール酸(gossypolic acid)、ゴシポロン酸(gossypolonic acid)、アポゴシポール、アポゴシポロン、A385358、ABT-737、ABT-263、ABT-199、WEHI-539、BXI-61、BXI-72、オバトクラックス、JY-1-106及びSAHBペプチドから選択される、前の項目のいずれか1つの方法。
16.BCL-2阻害剤が、ゴシポール、オバトクラックス、ABT-737、ABT-199及びABT-263から選択される、項目15の方法。
17.BCL-2阻害剤が、ABT-199である、項目16の方法。
18.HCK阻害剤が、RK-20449であり、BCL-2阻害剤が、ABT-199である、項目17の方法。
19.HCK阻害剤が、RK-20693であり、BCL-2阻害剤が、ABT-199である、項目17の方法。
20.FLT3-ITD阻害剤が、AC220であり、BCL-2阻害剤が、ABT-199である、項目17の方法。
21.FLT3-ITD阻害剤が、SU5614であり、BCL-2阻害剤が、ABT-737である、項目16の方法。
22.HCK阻害剤、及び/又はFLT3-ITD阻害剤、及び/又はBCL-2阻害剤が、薬学的に許容される塩として各々存在する、前の項目のいずれ1つの方法。
23.HCK阻害剤、及び/又はFLT3-ITD阻害剤、及び/又はBCL-2阻害剤が、薬学的に許容される組成物中に各々存在する、前の項目のいずれか1つの方法。
【0008】
体細胞変異の様々な組合せによって定義される大量のクローン多様性にもかかわらず、SFK及びFLT3-ITDの複数キナーゼ阻害は、in vivoでAMLを効果的に減少させ、BCL2阻害の追加は、抵抗性AMLを相乗的に排除した。ある特定の実施形態において、患者間の大量の異質性及び個々の患者内のクローン多様性にもかかわらず、FLT3-ITD及びHCKの複数キナーゼ阻害剤であるRK-20449、並びにBCL-2の小分子阻害剤であるABT-199の同時投与による抗アポトーシス及びキナーゼシグナル伝達経路の複合阻害により、in vivoでヒトFLT3-ITD+AMLの排除に成功した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】表面形質により仕分けされた患者由来の部分母集団;in vivo細胞運命を決定するためにNSG異種移植を受けた部分母集団の変異プロファイリング、並びに公知の細胞運命を持つ患者由来の部分母集団及びレシピエント由来のヒト多系統造血細胞及びAML細胞に対して実行された単一細胞変異プロファイリングを示す図である。図1Aは、表面形質により仕分けされた患者由来部分母集団の変異プロファイリングを示す。図1Bは、in vivo細胞運命を決定するためにNSG異種移植を受けた部分母集団を示す。多系統造血による再増殖が起こった場合、移植された部分母集団は造血幹細胞(HSC)を含有し、異種移植がAML生着をもたらした場合、移植された部分母集団は白血病開始細胞(LIC)を含有した。図1Cは、公知の細胞運命を持つ患者由来部分母集団及びレシピエント由来ヒト多系統造血細胞及びAML細胞に対して実行された単一細胞変異プロファイリングを示す。
図2-1】2名の患者(患者21及び20)における造血部分母集団の同定を示す図である。
図2-2】2名の患者(患者13及び1)における造血部分母集団の同定を示す図である。図2A図2Dは、4名の患者における造血部分母集団の同定を示す。各患者サンプルにおいて、T及びBリンパ集団並びに固有のCD34及びCD38表面発現を持つ非T非B細胞が同定された。ヒートマップは、各患者から単離した示した部分母集団におけるNPM1、DNMT3A、CEBPA、IDH1、IDH2、TET2及びWT1遺伝子のバリアント対立遺伝子頻度を表す。FLT3-ITD変異は、PCRにより検出された。図2Aは患者21であり、図2Bは患者20であり、図2Cは患者13であり、図2Dは患者1である。
図3-1】患者由来の白血病開始集団及び多系統生着集団、並びに生着したAML及び多系統ヒト造血細胞に存在した体細胞変異の様々な組合せにより定義される多様なサブクローンを示す図である。
図3-2】患者由来の白血病開始集団及び多系統生着集団、並びに生着したAML及び多系統ヒト造血細胞に存在した体細胞変異の様々な組合せにより定義される多様なサブクローンを示す図である。
図3-3】患者由来の白血病開始集団及び多系統生着集団、並びに生着したAML及び多系統ヒト造血細胞に存在した体細胞変異の様々な組合せにより定義される多様なサブクローンを示す図である。表面表現型により単離され、異種移植により機能的に定義された、4名の患者由来の白血病開始集団及び多系統生着集団は、示した遺伝子に対する単一細胞配列決定及びFLT3-ITDに対する単一細胞PCRを受けた。各単一細胞は、長方形の列として表される。示した各遺伝子における変異の有無が、長方形の色により示される。図3Aは患者1であり、図3Bは患者21であり、図3C及び図3Dは患者13であり、図3Eは患者20である。
図4】12例のAML症例において患者及びレシピエント由来AML細胞における9つの遺伝子のバリアント対立遺伝子頻度をヒートマップとして表した図である。「P」は、患者由来AML細胞を指し、「1'」及び「2'」は、それぞれ一次及び二次レシピエント由来AML細胞を示す。空白の四角は、配列が読みとれなかったことを示す。FLT3の配列決定を実行して、非ITD FLT3変異を同定した。患者由来及びレシピエント由来白血病集団の全てが、PCRによりFLT3-ITD陽性であった。
図5】様々な組合せで共存する体細胞変異を持つFLT3-ITD+AML細胞のアポトーシスを誘導し、生存のためにBcl-2に対する依存を増強するin vivoキナーゼ阻害を示す図である。各患者症例は、レシピエントのin vivo RK-20449処置応答により以下の通り分類された:処置したレシピエントの全てが、残留BMヒトCD45+キメラ現象<5%を示した場合、完全奏効(図5A);症例が、完全奏効の基準を満たさないが、レシピエントの全てが、残留BMヒトCD45+<50%を示した場合、良好な奏効(図5B);レシピエントの少なくとも1名が50%を超える残留BMヒトCD45+を示した場合、部分的奏効(図5C)。RK-20449処置レシピエントのヒトAMLキメラ現象のPB時間経過(左のパネル)並びにRK-20449処置及び無処置レシピエントの屠殺時のBM(中央のパネル)及び脾臓(右のパネル)ヒトAMLキメラ現象が示される。処置前のPBヒトAML細胞キメラ現象が、週0で示される。各患者/各処置群のレシピエント数及び処置前/後のAMLキメラ現象が、図8に示される。
図6A】4つの処置群(無処置、ABT-199単独、RK-20449単独、並びにRK-20449及びABT-199)のin vivo処置に対するPB応答の時間経過を示す図である。レシピエントは毎週しゃ血され、時間0は処置前のPBヒトCD45+AMLキメラ現象を表した。RK-20449及びABT-199による複合処置に対して完全奏効を示した9つの症例の最終的なBM及び脾臓ヒトAMLキメラ現象。
図6B】完全奏効を示したAML症例に対するin vivo処置(無処置、ABT-199単独、RK-20449単独、組合せ)後のBM及び脾臓におけるヒトAML細胞キメラ現象を示す図である。各丸は、AML生着レシピエントを表す。
図6C】連続移植により、in vivo処置後のヒトCD45+細胞における残留ヒトAML開始能力が、4つの処置群に対して判定されたことを示す図である。各二次レシピエントに移植されたAML細胞は、各処置群のレシピエントに残存していた2.5%の残留ヒトAML生存細胞から単離された。二次レシピエントのBMにおけるヒトCD45+AML細胞キメラ現象の平均及びSEMが示される。各丸は、二次レシピエントを表す。
図6D】FLT3-ITD及び他のAML関連変異の関係の略図である。前白血病細胞集団は、様々な組合せでDNMT3A、TET2及びCEBPAなどの遺伝子に変異を保有するHSCからなる。これらの許容変異は、悪性転換に対してFLT3-ITDと協同し得るが、リンパ及び骨髄細胞への多系統成熟を妨げない。他方、FLT3-ITDは、FLT3-ITD+AML患者において最も悪性度が高い潜在性を保有する。HSCのレベルでのFLT3-ITDの獲得は、多系統分化能力の消失をもたらし、前白血病HSCをLSCに変換する。より成熟した前駆細胞及び分化した骨髄細胞も、FLT3-ITDを獲得し、LICになり得る。
図7A】患者の臨床的特徴を提供する図である。診断におけるフランス-アメリカ-イギリス分類を示したM0、M1、M2、M4、M5、M5a。MDS、骨髄異形成症候群; AML/MRC、骨髄異形成関連変化を伴う急性骨髄性白血病; MF、骨髄線維症; CMML、慢性骨髄単球性白血病; HSCT、造血幹細胞移植; PB、末梢血;BM、骨髄;IDA、イダルビシン;AraC、シタラビン;uCBT、臍帯血移植;CR、完全奏効;MIT、ミトキサントロン;GVHD、移植片対宿主疾患;PBSCT、動員末梢血幹細胞移植;AZA、アザシチジン;HiDAC、高用量シタラビン;CNS、中枢神経系;GO、ゲムツズマブオゾガミシン;MUD、適合非血縁ドナー;BMT、骨髄移植;MRD、適合血縁ドナー。
図7B】患者の臨床的特徴を提供する図である。診断におけるフランス-アメリカ-イギリス分類を示したM0、M1、M2、M4、M5、M5a。MDS、骨髄異形成症候群; AML/MRC、骨髄異形成関連変化を伴う急性骨髄性白血病; MF、骨髄線維症; CMML、慢性骨髄単球性白血病; HSCT、造血幹細胞移植; PB、末梢血;BM、骨髄;IDA、イダルビシン;AraC、シタラビン;uCBT、臍帯血移植;CR、完全奏効;MIT、ミトキサントロン;GVHD、移植片対宿主疾患;PBSCT、動員末梢血幹細胞移植;AZA、アザシチジン;HiDAC、高用量シタラビン;CNS、中枢神経系;GO、ゲムツズマブオゾガミシン;MUD、適合非血縁ドナー;BMT、骨髄移植;MRD、適合血縁ドナー。
図7C】患者の臨床的特徴を提供する図である。診断におけるフランス-アメリカ-イギリス分類を示したM0、M1、M2、M4、M5、M5a。MDS、骨髄異形成症候群; AML/MRC、骨髄異形成関連変化を伴う急性骨髄性白血病; MF、骨髄線維症; CMML、慢性骨髄単球性白血病; HSCT、造血幹細胞移植; PB、末梢血;BM、骨髄;IDA、イダルビシン;AraC、シタラビン;uCBT、臍帯血移植;CR、完全奏効;MIT、ミトキサントロン;GVHD、移植片対宿主疾患;PBSCT、動員末梢血幹細胞移植;AZA、アザシチジン;HiDAC、高用量シタラビン;CNS、中枢神経系;GO、ゲムツズマブオゾガミシン;MUD、適合非血縁ドナー;BMT、骨髄移植;MRD、適合血縁ドナー。
図7D】患者の臨床的特徴を提供する図である。診断におけるフランス-アメリカ-イギリス分類を示したM0、M1、M2、M4、M5、M5a。MDS、骨髄異形成症候群; AML/MRC、骨髄異形成関連変化を伴う急性骨髄性白血病; MF、骨髄線維症; CMML、慢性骨髄単球性白血病; HSCT、造血幹細胞移植; PB、末梢血;BM、骨髄;IDA、イダルビシン;AraC、シタラビン;uCBT、臍帯血移植;CR、完全奏効;MIT、ミトキサントロン;GVHD、移植片対宿主疾患;PBSCT、動員末梢血幹細胞移植;AZA、アザシチジン;HiDAC、高用量シタラビン;CNS、中枢神経系;GO、ゲムツズマブオゾガミシン;MUD、適合非血縁ドナー;BMT、骨髄移植;MRD、適合血縁ドナー。
図8A】RK-20449単独で処置した、AML生着レシピエントのPB、BM及び脾臓におけるヒトAMLキメラ現象を示す図である。処置前後のPB並びに処置後のBM及び脾臓におけるパーセントヒトCD45+細胞が、ヒトAMLが生着したレシピエントに対して示される。PB、末梢血;BM、骨髄;n、レシピエント数;SEM、平均値の標準誤差;na、利用不能なデータ。応答群:完全、処置した全レシピエントにおいて処置後のBMヒトCD45+<5%;良好、処置したレシピエント1名以外の全てにおいて処置後のBMヒトCD45+<5%;部分的、処置後BMヒトCD45+が、無処置群と比較して統計学的に有意に減少するが、処置したレシピエント1名において>50%である。
図8B】RK-20449単独で処置した、AML生着レシピエントのPB、BM及び脾臓におけるヒトAMLキメラ現象を示す図である。処置前後のPB並びに処置後のBM及び脾臓におけるパーセントヒトCD45+細胞が、ヒトAMLが生着したレシピエントに対して示される。PB、末梢血;BM、骨髄;n、レシピエント数;SEM、平均値の標準誤差;na、利用不能なデータ。応答群:完全、処置した全レシピエントにおいて処置後のBMヒトCD45+<5%;良好、処置したレシピエント1名以外の全てにおいて処置後のBMヒトCD45+<5%;部分的、処置後BMヒトCD45+が、無処置群と比較して統計学的に有意に減少するが、処置したレシピエント1名において>50%である。
図8C】RK-20449単独で処置した、AML生着レシピエントのPB、BM及び脾臓におけるヒトAMLキメラ現象を示す図である。処置前後のPB並びに処置後のBM及び脾臓におけるパーセントヒトCD45+細胞が、ヒトAMLが生着したレシピエントに対して示される。PB、末梢血;BM、骨髄;n、レシピエント数;SEM、平均値の標準誤差;na、利用不能なデータ。応答群:完全、処置した全レシピエントにおいて処置後のBMヒトCD45+<5%;良好、処置したレシピエント1名以外の全てにおいて処置後のBMヒトCD45+<5%;部分的、処置後BMヒトCD45+が、無処置群と比較して統計学的に有意に減少するが、処置したレシピエント1名において>50%である。
図8D】RK-20449単独で処置した、AML生着レシピエントのPB、BM及び脾臓におけるヒトAMLキメラ現象を示す図である。処置前後のPB並びに処置後のBM及び脾臓におけるパーセントヒトCD45+細胞が、ヒトAMLが生着したレシピエントに対して示される。PB、末梢血;BM、骨髄;n、レシピエント数;SEM、平均値の標準誤差;na、利用不能なデータ。応答群:完全、処置した全レシピエントにおいて処置後のBMヒトCD45+<5%;良好、処置したレシピエント1名以外の全てにおいて処置後のBMヒトCD45+<5%;部分的、処置後BMヒトCD45+が、無処置群と比較して統計学的に有意に減少するが、処置したレシピエント1名において>50%である。
図9A】ABT-199単独、RK-20449単独又は組合せで処置したAML生着レシピエントのPB、BM及び脾臓におけるヒトAMLキメラ現象を示す図である。処置前後のPB並びに処置後のBM及び脾臓におけるパーセントヒトCD45+細胞が、ヒトAMLが生着したレシピエントに対して示される。無処置及びRK-20449処置レシピエントデータが、比較として図8から複製される。応答群:完全、処置した全レシピエントにおける処置後のBMヒトCD45+<5%;良好、処置したレシピエント1名以外の全てにおいて処置後のBMヒトCD45+<5%。
図9B】ABT-199単独、RK-20449単独又は組合せで処置したAML生着レシピエントのPB、BM及び脾臓におけるヒトAMLキメラ現象を示す図である。処置前後のPB並びに処置後のBM及び脾臓におけるパーセントヒトCD45+細胞が、ヒトAMLが生着したレシピエントに対して示される。無処置及びRK-20449処置レシピエントデータが、比較として図8から複製される。応答群:完全、処置した全レシピエントにおける処置後のBMヒトCD45+<5%;良好、処置したレシピエント1名以外の全てにおいて処置後のBMヒトCD45+<5%。
図10】ABT-199単独、RK-20449単独又は組合せで処置したレシピエントにおける処置前後のPBヒトAMLキメラ現象を比較する統計を示す図である。ヒトAMLが生着したレシピエントの末梢血におけるパーセントヒトCD45+細胞の平均+/-s.e.m.が、示される。n、レシピエント数; p、処置前後のPBヒト%CD45+を比較する対応のある両側t検定; na、統計的有意差を検出するために利用されない。
図11】ABT-199単独、RK-20449単独又は組合せで処置したレシピエントにおけるBM及び脾臓ヒトAMLキメラ現象を比較する統計を示す図である。ヒトAMLが生着したレシピエントにおけるパーセントヒトCD45+細胞の平均+/-s.e.m.が、示される。BM、骨髄;n、レシピエント数;p、示した対間の対応のない両側t検定;na、統計的有意差を検出するために利用されない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
別段の規定がない限り、本明細書において使用される技術及び科学的用語の全ては、本開示の当業者により一般に理解される意味を有する。以下の参照文献は、本開示において使用される用語の多くの一般的定義を当業者に提供する:Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版1994年); The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編、1988年); The Glossary of Genetics、第5版、R, Riegerら(編)、Springer Verlag (1991年);及びHale & Marham、The Harper Collins Dictionary of Biology (1991年)。本明細書では、次に述べる用語は、特に明記しない限り、以下に帰する意味を有する。
【0011】
本開示において、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」、及び「有すること(having)」等は、米国特許法のそれに帰する意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」等を意味することができ、「から本質的になる」又は「本質的になる」は、米国特許法に帰する意味を同様に有し、その用語には制限がなく、列挙されるその基本的又は新規の特徴が、列挙されるそれより多くの存在によって変化されない限り、列挙されるそれより多くの存在が可能になるが、先行技術実施形態を除外する。
【0012】
本明細書に提供される範囲は、範囲内の値の全ての省略表現であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50からなる任意の数、数の組合せ若しくは群の部分的範囲を含むと理解される。
【0013】
特に記述がされている又は文脈から明らかでない限り、本明細書では、用語「又は」は、包括的であると理解される。特に記述がされている又は文脈から明らかでない限り、本明細書では、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、単数又は複数であると理解される。
【0014】
特に記述がされている又は文脈から明らかでない限り、本明細書では、用語「約」は、当業者において正常許容誤差の範囲内、例えば平均の2標準偏差内であると理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内であると理解され得る。文脈から明白でない限り、本明細書に提供される全ての数値は、用語約により修飾される。
【0015】
本明細書では、用語「検出する」とは、検出される分析物の存在、非存在又は量を同定することを指す。用語「排除する」又は「排除」は、検出される分析物の非存在を指す。当業者は、測定方法が、検出のその最低及び最高レベルの限度を本来的に保有すると容易に認める。従って、本明細書では検出されなかった指標は、分析物が全く存在しないことを意味すると解釈されない。それは、検出方法の上限から下限の間に存在しないだけである。
【0016】
「有効量」又は「治療有効量」は、無処置対象と比較して疾患の症状を軽減するのに必要とされる活性薬剤の量を意味する。疾患を治療的処置するための本明細書に開示される活性薬剤の有効量は、投与の手法、対象の年齢、体重及び健康状態を含むがこれに限定されないいくつかの因子に応じて変動する。主治医又は獣医師は、適当な量及び投薬計画を決定することができる。
【0017】
投与が予想される用語「対象」、「患者」又は「個体」には、ヒト(即ち、あらゆる年齢群、例えば、小児対象[例えば、乳児、小児、青年]又は成人対象[例えば、若年成人、中年成人又は老人])の男性若しくは女性)及び/又は他の霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル);商業関連哺乳動物、例えば、牛、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ及び/若しくはイヌを含めた哺乳動物;並びに/又は商業関連鳥類、例えばニワトリ、カモ、ガチョウ、ウズラ及び/若しくはシチメンチョウを含めたトリがあるが、これに限定されない。
【0018】
本明細書では、障害又は状態を「予防する」処置とは、統計サンプルにおいて、無処置の対照サンプルと比較して処置したサンプルにおいて障害若しくは状態の発病若しくは頻度を減少させる、又は発症を遅延させる又は無処置の対照サンプルと比較して障害若しくは状態の1つ以上の症状の重症度を減少させる処置のことを指す。従って、がんの予防は、例えば、統計学的及び/又は臨床的に有意な量により、例えば、無処置の対照集団と比較して予防的処置を受ける患者の集団において検出可能ながん性増殖の数を減少させる、及び/又は無処置の対照集団と対比して処置した集団において検出可能ながん性増殖の出現を遅延させることを含む。感染の予防は、例えば、無処置の対照集団と対比して処置した集団において感染症の診断数を減少させる、及び/又は無処置の対照集団と対比して処置した集団において感染症の症状の発症を遅延させることを含む。痛みの予防は、例えば、無処置の対照集団と対比して処置集団において対象により受ける痛覚の大きさを減少させる、又は別法として遅延させることを含む。
【0019】
用語、「処置する」は、予防的及び/又は治療的処置を含む。用語「予防的又は治療的」処置は、当業者に認識されており、対象組成物の1つ以上を宿主へ投与することを含む。それが、望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患又は他の望ましくない段階)の臨床徴候の前に投与される場合、その処置は、予防的(即ち、望ましくない状態の進展に対して宿主を保護する)であり、一方それが、望ましくない状態の徴候の後に投与される場合、その処置は、治療的(即ち、既存の望ましくない状態又はその副作用を減弱、軽減若しくは安定させることを意図する)である。
【0020】
本明細書では、句「共同的な投与」とは、先に投与された治療的化合物が体内でなお有効でありながら第2の化合物が投与されるように、2つ以上の異なる治療的化合物を投与するあらゆる形態を指す(例えば、2つの化合物が、患者において同時に有効であり、2つの化合物の相乗効果を含み得る)。例えば、異なる治療的化合物は、同じ製剤又は別々の製剤のいずれかで、同時に又は逐次的にかのいずれかで投与され得る。ある特定の実施形態において、異なる治療的化合物は、互いに1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間又は1週間以内に投与され得る。従って、そのような処置を受ける個体は、異なる治療的化合物の複合的な効果の利益を受けることができる。
【0021】
概要
体細胞変異の様々な組合せによって定義される大量のクローン多様性にもかかわらず、SFK及びFLT3-ITDの複数キナーゼ阻害は、in vivoでAMLを効果的に減少させ、BCL2阻害の追加は、抵抗性AMLを相乗的に排除した。ある特定の実施形態において、患者間の大量の異質性及び個々の患者内のクローン多様性にもかかわらず、FLT3-ITD及びHCKの複数キナーゼ阻害剤であるRK-20449、並びにBCL-2の小分子阻害剤であるABT-199の同時投与による抗アポトーシス及びキナーゼシグナル伝達経路の複合阻害により、in vivoでヒトFLT3-ITD+AMLの排除に成功した。
【0022】
単一細胞ゲノム研究をin vivo機能的判定と統合することにより、FLT3-ITD+AMLにおける前白血病幹細胞及び白血病開始細胞のクローン構成を定義する患者特異的変異プロファイルが同定された。変異の中で、FLT3-ITDは、in vivoで最も悪性度が高い潜在性を保有し、前白血病から白血病への移行を区別した。多様な変異が共存しているにもかかわらず、RK-20449は、PDX-モデルにおける白血病細胞集団を、複数のモノクローナル抗体を使用するフローサイトメトリー及び免疫組織化学を使用して検出限界以下に、例えば0.01%未満の残存AML細胞に効果的に低下させた。RK-20449は、白血病細胞生存に対するBCL-2依存も増強させ、BCL-2を共に阻害することは、in vivoでヒト白血病細胞数を検出限界以下に低下させた。複雑な患者特異的変異の状況にもかかわらず、悪性転換及び腫瘍生存に対するこれらの2つの経路を共に阻害することは成功している。
【0023】
更に、HCKの特異的阻害は、本明細書に記述されるFLT3-ITD阻害剤及びBCL2阻害剤の組合せの効力を高めることができる。HCKは、非受容体型チロシンキナーゼであるSrcファミリーのメンバーであり、細胞過程の調節に関係するシグナル伝達経路において多くの役割を演ずる。HCKは、造血起源の細胞、特に骨髄単球性細胞及びBリンパ球において発現される。それは、貪食作用、接着、遊走、細胞膜上の突起形成の調節、リソソームエキソサイトーシス、ポドソーム形成及びアクチン重合に関与する。高レベルのHCKが、慢性骨髄性白血病及び他の血液学的な腫瘍に存在する。HCKは、急性骨髄性白血病の誘発に役割を果たす可能性もある。
【0024】
ある特定の実施形態において、細胞においてHCK及びBCL-2を共に阻害する方法であって、細胞を、HCK阻害剤及びBCL-2阻害剤、又はその薬学的に許容される組成物と接触させる工程を含む、方法が本明細書に提供される。特定の好ましい実施形態において、本方法は、細胞を、FLT3-ITD阻害剤、例えばHCK/FLT3-ITD二重阻害剤と接触させる工程を更に含む。ある特定の実施形態において、細胞はin vitroである。他の実施形態において、細胞はin vivoである。他の実施形態において、細胞は急性骨髄性白血病細胞である。
【0025】
ある特定の実施形態において、FLT3-ITD変異を有する細胞を致死させる方法であって、細胞を、HCK阻害剤及びBCL-2阻害剤、又はその薬学的に許容される組成物と接触させる工程を含む、方法が本明細書に提供される。特定の好ましい実施形態において、本方法は、細胞を、FLT3-ITD阻害剤、例えばHCK/FLT3-ITD二重阻害剤と接触させる工程を更に含む。ある特定の実施形態において、細胞はin vitroである。他の実施形態において、細胞はin vivoである。他の実施形態において、細胞は急性骨髄性白血病細胞である。
【0026】
ある特定の実施形態において、急性骨髄性白血病を処置する方法であって、対象に、HCK阻害剤及びBCL-2阻害剤、又はその薬学的に許容される組成物を共同的に投与する工程を含む、方法が本明細書に提供される。特定の好ましい実施形態において、本方法は、対象にFLT3-ITD阻害剤を共同的に投与する工程を更に含む。他の好ましい実施形態において、HCK阻害剤は、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤である。他の実施形態は、急性骨髄性白血病を処置するためのHCK阻害剤及びBCL-2阻害剤、又は薬学的に許容されるその組成物の治療有効量を含む組成物を提供する。特定の好ましい実施形態において、組成物は、FLT3-ITD阻害剤の治療有効量を更に含む。他の好ましい実施形態において、HCK阻害剤は、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤である。他の実施形態において、急性骨髄性白血病を処置するための医薬の製造における、HCK阻害剤及びBCL-2阻害剤、又は薬学的に許容されるその組成物の治療有効量の使用が本明細書に提供される。特定の好ましい実施形態において、前記使用が、FLT3-ITD阻害剤の治療有効量を更に含み、他の好ましい実施形態において、HCK阻害剤は、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤である。関連する実施形態において、本発明は、HCK阻害剤及びBCL-2阻害剤を共同的に投与することにより急性骨髄性白血病を処置する方法に使用するための医薬の製造における、HCK阻害剤又はBCL-2阻害剤の治療有効量の使用を提供する。特定の好ましい実施形態において、本方法は、FLT3-ITD阻害剤の治療有効量を共同的に投与する工程を更に含み、他の好ましい実施形態において、HCK阻害剤は、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤である。
【0027】
ある特定の実施形態において、細胞においてHCK、FLT3-ITD及びBCL-2を共に阻害する方法であって、細胞を、HCK阻害剤、FLT3-ITD阻害剤及びBCL-2阻害剤、又はその薬学的に許容される組成物と接触させる工程を含む、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態において、HCK阻害剤及びFLT3-ITD阻害剤は、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤として提供される。ある特定の実施形態において、細胞はin vitroである。他の実施形態において、細胞はin vivoである。特定のそのような実施形態において、細胞は急性骨髄性白血病細胞である。
【0028】
ある特定の実施形態において、FLT3-ITD変異を有する細胞を致死させる方法であって、細胞を、HCK阻害剤、FLT3-ITD阻害剤及びBCL-2阻害剤、又はその薬学的に許容される組成物と接触させる工程を含む、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態において、HCK阻害剤及びFLT3-ITD阻害剤は、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤として提供される。ある特定の実施形態において、細胞はin vitroである。他の実施形態において、細胞はin vivoである。特定のそのような実施形態において、細胞は急性骨髄性白血病細胞である。
【0029】
ある特定の実施形態において、急性骨髄性白血病を処置する方法であって、対象に、HCK阻害剤、FLT3-ITD阻害剤及びBCL-2阻害剤、又は薬学的に許容されるその組成物を共同的に投与する工程を含む、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態において、HCK阻害剤及びFLT3-ITD阻害剤は、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤として提供される。他の実施形態は、急性骨髄性白血病を処置するためのHCK阻害剤、FLT3-ITD阻害剤及びBCL-2阻害剤、又は薬学的に許容されるその組成物の治療有効量を含む組成物を提供する。一部の実施形態において、HCK阻害剤及びFLT3-ITD阻害剤は、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤として提供される。他の実施形態において、急性骨髄性白血病を処置するための医薬の製造におけるHCK阻害剤、FLT3-ITD阻害剤及びBCL-2阻害剤、又はその薬学的に許容される組成物の治療有効量の使用が本明細書に提供される。一部の実施形態において、HCK阻害剤及びFLT3-ITD阻害剤は、HCK/FLT3-ITD二重阻害剤として提供される。関連する実施形態において、本発明は、HCK阻害剤、FLT3-ITD阻害剤又はBCL-2阻害剤をHCK阻害剤、FLT3-ITD阻害剤及びBCL-2阻害剤以外と共同的に投与する工程を含む方法において急性骨髄性白血病を処置するための医薬の製造における、HCK阻害剤、FLT3-ITD阻害剤又はBCL-2阻害剤の使用に関する。
【0030】
ある特定の実施形態において、HCK阻害剤は、RK-20449、RK-20693、RK-24466、RK-20444、RK-20445及びRK-20466から選択される。他の実施形態において、HCK阻害剤は、RK-20449、RK-20693、RK-24466、RK-20444、RK-20445、RK-20466、RK-20730、RK-20690、RK-20781、RK-20786、RK-20888、RK-20658、RK-20686、RK-20696、RK-20709、RK-20721、RK-20694、RK-20703、RK-20718、RK-20744、及びWO2014/017659に開示されるHCK阻害活性を有する化合物から選択される。一部の実施形態において、FLT3-ITD阻害剤は、AC220、ソラフェニブ、PKC412、CEP-701、UNC2025、MLN518、KW-2449及びAMG-925、スニチニブ、SU5614、AC2206、クレノラニブ及びPLX3397から選択される。特定の好ましい実施形態において、HCK阻害剤は、RK-20449である。他の実施形態において、FLT3-ITD阻害剤は、AC220である。
【0031】
他の実施形態において、BCL-2阻害剤は、AT-101、TW-37、TM-1206、ゴシポール、ゴシポール酸、ゴシポロン酸、アポゴシポール、アポゴシポロン、A385358、ABT-737、ABT-263、ABT-199、WEHI-539、BXI-61、BXI-72、オバトクラックス、ONT-701、S1、JY-1-106及びSAHB(Bcl-2ドメインの安定化されたα-ヘリックス)ペプチドから選択される。ある特定の実施形態において、BCL-2阻害剤は、ゴシポール、オバトクラックス、ABT-737、ABT-199及びABT-263から選択される。特定の好ましい実施形態において、BCL-2阻害剤は、ABT-199である。
【0032】
本明細書において予想される他のBCL-2阻害剤には、Andersonら、Seminars in Hematology 2014年 51:219~227頁; Bajwaら、Expert Opin Ther. Pat. 2012年 22:37~55頁; Oltersdorf,T.ら、Nature 2005年 435:677~681頁; Tse,C.ら、Cancer Research 2008年 68:3421~3428頁;Souers, A. J.ら、Nature Medicine 2013年 19:202~208頁; Nguyen, M.ら、PNAS 2007年 104:19512~19517頁; Zhang, A.ら、Int'l J. Cancer 2011年 128:1724~1735頁;及びWei, J.ら、J. Med. Chem. 2009年 52:4511~4523頁に開示されるものがあるが、これに限定されない。
【0033】
特定の好ましい実施形態において、HCK阻害剤は、RK-20449であり、BCL-2阻害剤は、ABT-199である。他の実施形態において、HCK阻害剤は、RK-20693であり、BCL-2阻害剤は、ABT-199である。他の実施形態において、FLT3-ITD阻害剤は、AC220であり、BCL-2阻害剤は、ABT-199である。他の実施形態において、FLT3-ITD阻害剤は、SU5614であり、BCL-2阻害剤は、ABT-737である。
【0034】
ある特定の実施形態において、HCKを阻害する有効濃度は、BCL-2を阻害する有効濃度より高い。他の実施形態において、HCKを阻害する有効濃度は、BCL-2を阻害する有効濃度より低い。他の実施形態において、FLT3-ITDを阻害する有効濃度及びHCKを阻害する有効濃度は、実質的に類似している。
【0035】
ある特定の実施形態において、FLT3-ITDを阻害する有効濃度は、BCL-2を阻害する有効濃度より高い。他の実施形態において、FLT3-ITDを阻害する有効濃度は、BCL-2を阻害する有効濃度より低い。他の実施形態において、FLT3-ITDを阻害する有効濃度及びBCL-2を阻害する有効濃度は、実質的に類似している。
【0036】
ある特定の実施形態において、対象は、DNMT3A、IDH2、IDH1、NPM1、TET2、CEBPA、ASXL1、EZH2、SETBP1、SMC3、KIT、NRAS及びWT1から選択される遺伝子に1つ以上の変異を有する細胞により特徴付けられる悪性造血及び/又は非悪性多系統造血を有する。
【0037】
併用療法
本発明は、HCK阻害剤及びBCL-2阻害剤を含み、任意選択でFLT3-ITD阻害剤を伴う共同療法に一般に関する。本発明のある特定の実施形態において、FLT3-ITD及び/又はHCK阻害剤の治療有効量は、BCL-2阻害剤が投与されない場合になると予想される治療有効量未満である。同様に、BCL-2阻害剤の治療有効量は、FLT3-ITD阻害剤及び/又はHCK阻害剤が投与されない場合になると予想される治療有効量未満であり得、HCK阻害剤の治療有効量は、FLT3-ITD阻害剤及び/又はBCL-2阻害剤が投与されない場合になると予想される治療有効量未満であり得る。このように、いずれかの薬剤の高用量に関連する好ましくない副作用が、最小化され得る。他の潜在的利点(服用計画の改善及び/又は薬物費用の減少を含むがこれに限定されない)は、当業者に明らかになろう。FLT3-ITD阻害剤、HCK阻害剤及び/又はBCL-2阻害剤は、互いに別々に、例えば、複数回投与計画の部分として、投与され得る。別法として、2つ以上の阻害剤は、単一剤形の部分であり、例えば、単一組成物に一緒に混合され得る。
【0038】
担体材料と組み合わせて単一剤形を作製し得るFLT3-ITD、HCK、及びBCL-2阻害剤のいずれの量も、処置される宿主及び投与の特定の様式に応じて変動することになる。好ましくは、本発明の組成物は、約0.01~約100mg/kg体重/日のHCK阻害剤の投薬、約0.01~約100mg/kg体重/日のFLT3-ITD阻害剤の投薬及び約0.01~約100mg/kg体重/日のBCL-2阻害剤の投薬が投与され得るように処方されるべきである。また好ましくは、本発明の組成物は、約0.01~約100mg/kg体重/日のHCK阻害剤の投薬及び約0.01~約100mg/kg体重/日のBCL-2阻害剤の投薬が投与され得るように処方されるべきである。ある特定の実施形態において、本明細書に記述されるHCK/FLT3二重阻害剤又はBCL-2阻害剤の治療有効量は、単独で又はAMLを処置するのに有用な他の化合物の治療有効量と組み合わせて投与され得る。ある特定の実施形態において、本明細書に記述されるHCK阻害剤、FLT3-ITD阻害剤又はBCL-2阻害剤の治療有効量は、単独で又はAMLを処置するのに有用な他の化合物の治療有効量と組み合わせて投与され得る。
【0039】
組成物及び塩
一部の実施形態において、開示された化合物は、薬学的に許容される組成物の形態であり得る。本明細書に記述されるFLT3-ITD阻害剤、及び/又はHCK阻害剤、及び/又はBCL-2阻害剤並びに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が、本明細書に開示される。
【0040】
用語「薬学的に許容される担体、アジュバント又は媒体」とは、それが処方されている化合物の薬理活性を無効にしない非毒性の担体、アジュバント又は媒体のことを指す。本発明の組成物に使用できる薬学的に許容される担体、アジュバント又は媒体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリエチレングリコール及び羊毛脂があるが、これに限定されない。他の薬学的に許容される担体、アジュバント又は媒体には、水、生理食塩水及びジメチルスルホキシド並びに他の疎水性又は親水性溶媒がある。
【0041】
医薬組成物に利用され得る適切な水性、非水系担体の例には、水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びその適切な混合物、植物油(例えばオリーブ油)及び注射可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)がある。適度な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合に必要とされる粒子サイズを維持することにより、及び界面活性剤の使用により維持することができる。
【0042】
これらの組成物は、アジュバント、例えば防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散助剤、滑沢剤及び/又は酸化防止剤を含有することもできる。本明細書に記述される化合物における微生物の活動の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の包含により確実にされ得る。組成物へ等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム等を含めることも望ましい。
【0043】
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、本明細書に記述される化合物を担体及び任意選択で、1つ以上の補助成分と合体させる工程を含む。一般に、製剤は、本明細書に開示される化合物を液状担体若しくは微粉化した固形担体又は両方と均一且つ密接に合体させ、次いで、必要に応じて、産物を成形することにより調製される。
【0044】
そのような医薬組成物の製剤は、当業者に周知である。例えば、Anderson, Philip O.; Knoben, James E.; Troutman, William G編、Handbook of Clinical Drug Data、第10版、McGraw-Hill、2002年; Pratt and Taylor編、Principles of Drug Action、第3版、Churchill Livingston、New York、1990年; Katzung編、Basic and Clinical Pharmacology、第9版、McGraw Hill、2003年;Goodman and Gilman編、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版、McGraw Hill、2001年; Remington's Pharmaceutical Sciences、第20版、Lippincott Williams & Wilkins.、2000年; Martindale、The Extra Pharmacopoeia、第32版(The Pharmaceutical Press、London、1999年)を参照のこと;それら全ては、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。任意の従来通りの賦形剤媒質が、例えば、任意の望ましくない生物学的効果を生む又はさもなければ薬学的に許容される組成物の他の任意の成分と有害な手法で相互作用することにより本明細書に提供される化合物と不適合である場合を除いて、賦形剤の使用は本開示の範囲内にあると予想される。
【0045】
正しい医学判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー性反応等なしに対象組織との接触に使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比に相応する塩のことを指す薬学的に許容される塩が本明細書に提供される。薬学的に許容される塩は当業者に周知である。例えば、Bergeらは、J. Pharmaceutical Sciences (1977年) 66:1~19頁において薬学的に許容される塩について詳細に記述している。本明細書に提供される化合物の薬学的に許容される塩は、適切な無機及び有機酸若しくは塩基に由来するものを含む。薬学的に許容される、無毒の酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸又は有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸若しくはマロン酸と、又は当業者に使用される他の方法、例えばイオン交換を使用することにより形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、よう化水素塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等がある。一部の実施形態において、塩が誘導され得る有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、乳酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等がある。
【0046】
塩は、開示された化合物の単離及び精製の間にin situで、又は別々に、例えば化合物の遊離塩基若しくは遊離酸をそれぞれ適切な塩基若しくは酸と反応させることにより調製され得る。適当な塩基から得られる薬学的に許容される塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びN+(C1-4アルキル)4塩がある。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等がある。更なる薬学的に許容される塩には、適当な場合、対イオン、例えばハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸、硫酸、リン酸、硝酸、より低級のスルホン酸アルキル及びアリールスルホン酸塩を使用して形成される無毒性アンモニウム、四級アンモニウム及びアミン陽イオンがある。有機塩が誘導され得る塩基には、例えば、一級、二級、三級アミン、天然に存在する置換アミン含めた置換アミン、環状アミン、基本的なイオン交換樹脂等、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びエタノールアミンがある。一部の実施形態において、薬学的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウム塩から選択される。
【0047】
投与
本発明の組成物は、経口的、非経口的(皮下、筋肉内、静脈及び皮内を含める)、吸入スプレーにより、局所的、直腸的、経鼻的、口腔的、経膣的又は埋め込み型容器を介して投与され得る。一部の実施形態において、得られた化合物又は組成物は、静脈内及び/又は腹腔内投与可能である。特定の好ましい実施形態において、開示された方法は、FLT3-ITD阻害剤、HCK阻害剤及びBCL-2阻害剤のうち任意の2つ又は3つ全部を経口的若しくは非経口的に投与する工程を含む。
【0048】
本明細書では用語「非経口」は、皮下、静脈、筋肉内、眼内、硝子体内、関節内、滑膜内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、腹腔内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。好ましくは、組成物は、経口的、皮下、腹腔内又は静脈内投与される。本発明の組成物の無菌の注射可能な形態は、水性又は油性の懸濁剤であり得る。これらの懸濁剤は、適切な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用する当業者に公知の技術により処方され得る。無菌の注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の無菌の注射可能な溶液若しくは懸濁剤、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液、であってもよい。利用され得る許容可能な媒体及び溶媒の中には、水、リンガー溶液及び生理食塩水がある。加えて、無菌の固定油が、溶媒又は懸濁媒質として従来通り利用される。
【0049】
本発明の薬学的に許容される組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤又は液剤を含むがこれに限定されない任意の経口的に許容可能な剤形で経口的に投与され得る。経口的使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチがある。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も、一般に添加される。カプセル形態の経口的投与の場合、有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥コーンスターチがある。水性懸濁剤が、経口的使用に必要とされる場合、活性成分は、乳化及び懸濁化剤と組み合わせられる。必要に応じて、特定の甘味剤、調味剤又は着色剤も添加され得る。一部の実施形態において、得られた経口的製剤は、即時放出又は持続/遅延放出用として処方される。一部の実施形態において、組成物は、錠剤、トローチ剤及びパステル剤を含め、口腔又は舌下投与に適している。本明細書において開示される化合物は、マイクロカプセル化された形態でもあり得る。
【0050】
担体材料と組み合わせて単一剤形の組成物を作製し得る本発明の化合物の量は、処置される対象及び投与の特定様式に応じて変動することになる。ある特定の実施形態において、得られた組成物は、化合物の約0.01~約100mg/kg体重/日の投薬がこれら組成物の投与を受ける対象に投与され得るように、処方されるべきである。他の実施形態において、投薬は、約0.5~約100mg/kg体重、又は約1mg~約1000mg/用量、約4~120時間毎、又は特定の薬物の要件に従う。一般に、本発明の医薬組成物は、1日に約1~約6回投与されることになる。
【0051】
一部の実施形態において、化合物は、およそ5mg/kg~およそ10mg/kgの投薬、好ましくはおよそ7.5mg/kgの投薬で経口的投与用として処方される。
【0052】
任意の特定の対象に対する特定の投薬及び処置計画が、利用される特定の化合物の活性、年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与時間、排出率、複合薬、並びに処置する医師の判断及び処置される特定の疾患の重症度を含めた様々な因子によって決まることになることも、理解されるべきである。組成物中の本発明の化合物の量は、組成物中の特定の化合物によって決まることもある。
【0053】
対象の状態の改善に応じて、本発明の化合物、組成物又は組合せの維持用量が、必要に応じて、投与され得る。その後、症状が所望のレベルに軽減された場合、投与量若しくは投与頻度又は両方は、症状に応じて、改善された状態を保つレベルに減少され得る。しかしながら、対象は、疾患症状の任意の再発に応じて長期的には断続的な処置を必要とする場合がある。
【0054】
参照文献による組み込み
各個別の刊行物、特許又は特許出願を参照により組み込むことを特別に及び個別に示す場合と同程度に、本明細書に記載の刊行物、特許及び特許出願の全てを、参照により本明細書に組み込む。一致しない場合、本明細書におけるあらゆる定義を含めて、本出願が支配することになる。
【0055】
[実施例]
当業者は、日常の実験だけを使用して、本明細書に記述される特定の手順、実施形態、請求項及び例の多数の等価物を認識する、又は確認することが可能になる。そのような等価物は、本発明の範囲内にあると見なされ、本明細書に添付された特許請求の範囲により網羅された。例えば、当業者に認識される代替物を用いる及び日常の実験だけを使用する反応条件の修飾は、本出願の範囲内であると理解されるべきである。
【0056】
以下の例は、当業者に本発明の方法をいかに製作し、使用するかの完全な開示及び説明を提供するために提示され、本発明者が本発明と考える範囲を制限することを意図しない。特に明記しない限り、本明細書に記述される実験の出発材料は、市販品又は公知の手順から得られ、更なる修飾なしに使用された。
【0057】
全般的な方法
【0058】
化合物
以下の化合物は、例えば、WO2014/017659に開示される方法に従って合成することができる。
RK-20449(別名A 419259):
7-((1R,4R)-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0059】
【化1】
RK-20693:
N-(4-(4-アミノ-7-(trans-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)フェニル)-3-フェニルプロパンアミド
【0060】
【化2】
RK-24466:
7-シクロペンチル-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0061】
【化3】
RK-20444:
1-(4-(4-アミノ-7-シクロペンチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)フェニル)-3-ベンジル尿素
【0062】
【化4】
RK-20445:
N-(4-(4-アミノ-7-シクロペンチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)フェニル)ベンズアミド
【0063】
【化5】
RK-20466:
7-シクロペンチル-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0064】
【化6】
RK-20730:
N-(4-(4-アミノ-7-((1R,4R)-4-(3-メチル-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0065】
【化7】
RK-20690:
7-((1R,4R)-4-(8-メチル-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)シクロヘキシル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0066】
【化8】
RK-20781:
7-(1-(8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)ピペリジン-4-イル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0067】
【化9】
RK-20888:
1-((1S,4S)-4-((8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)アミノ)シクロヘキシル)-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン
【0068】
【化10】
RK-20658:
5-(4-フェノキシフェニル)-7-((1r,4r)-4-(ピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0069】
【化11】
RK-20686:
7-((1R,4R)-4-(3-メチル-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0070】
【化12】
RK20696:
5-(4-フェノキシフェニル)-7-((1S,4S)-4-((ピリジン-3-イルメチル)アミノ)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0071】
【化13】
RK-20709:
7-([1,4'-ビピペリジン]-4-イル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0072】
【化14】
RK-20721:
2-(((1R,4R)-4-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)シクロヘキシル)アミノ)酢酸三塩酸塩
【0073】
【化15】
RK-20694:
5-(4-フェノキシフェニル)-7-((1S,4S-4-((ピリジン-4-イルメチル)アミノ)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0074】
【化16】
RK-20703:
5-(4-フェノキシフェニル)-7-((1S,4S)-4-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0075】
【化17】
RK-20718:
2-(((1S,4S)-4-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)シクロヘキシル)アミノ)酢酸三塩酸塩
【0076】
【化18】
RK-20719:
2-(((1S,4S)-4-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)シクロヘキシル)アミノ)アセトアミド
【0077】
【化19】
RK-20722:
2-(((1R,4R)-4-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)シクロヘキシル)アミノ)アセトアミド
【0078】
【化20】
RK-20752:
N-((1S,4S)-4-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)シクロヘキシル)イソニコチンアミド
【0079】
【化21】
RK-20952:
7-((1R,4R)-4-(4-(tert-ブチル)ピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0080】
【化22】
RK-20618:
N-(4-(4-アミノ-1-((1R,4R)-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0081】
【化23】
RK-20725:
1-((1R,4R)-4-(8-メチル-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)シクロヘキシル)-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン
【0082】
【化24】
RK-20729:
N-(4-(4-アミノ-7-((1S,4S)-4-(3-メチル-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0083】
【化25】
RK-20732:
N-(4-(4-アミノ-7-((1r,4r)-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0084】
【化26】
RK-20746:
N-((1R,4R)-4-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)シクロヘキシル)ピコリンアミド
【0085】
【化27】
RK-20755:
N-((1R,4R)-4-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)シクロヘキシル)ニコチンアミド
【0086】
【化28】
RK-20768:
N-((1R,4R)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)イソニコチンアミド
【0087】
【化29】
RK20770:
N-(4-(4-アミノ-1-((1r,4r)-4-(8-メチル-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)シクロヘキシル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)フェニル)ピコリンアミド
【0088】
【化30】
RK-20775:
N-((1R,4R)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)ニコチンアミド
【0089】
【化31】
RK-20777:
N-((1R,4R)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)ピコリンアミド
【0090】
【化32】
RK-20791:
N-(4-(4-アミノ-1-((1R,4R)-4-(8-メチル-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)シクロヘキシル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)フェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0091】
【化33】
RK-20798:
N-(4-(4-アミノ-1-(1-(8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)ピペリジン-4-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)フェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0092】
【化34】
RK-20819:
N-(4-(4-アミノ-7-((1S,4S)-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0093】
【化35】
RK-20820:
N-(4-(4-アミノ-7-((1R,4R)-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0094】
【化36】
RK-20824:
N-(4-(4-アミノ-1-((1R,4R)-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)フェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0095】
【化37】
RK-20826:
N-(4-(4-アミノ-1-((1R,4R)-4-(3-メチル-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0096】
【化38】
RK-20901:
N-(4-(4-アミノ-7-((1R,4R)-4-(3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0097】
【化39】
RK-20908:
N-(4-(4-アミノ-7-((1s,4s)-4-(3-エチル-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0098】
【化40】
RK-20909:
N-(4-(4-アミノ-7-((1r,4r)-4-(3-エチル-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0099】
【化41】
RK-20918:
N-(4-(4-アミノ-7-((1s,4s)-4-(3-イソプロピル-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0100】
【化42】
RK-20919:
N-(4-(4-アミノ-7-((1R,4R)-4-(3-イソプロピル-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0101】
【化43】
RK-20920:
N-(4-(4-アミノ-7-((1S,4S)-4-(3-メチル-5,6-ジヒドロイミダゾ[1,5-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0102】
【化44】
RK-20921:
N-(4-(4-アミノ-7-((1R,4R)-4-(3-メチル-5,6-ジヒドロイミダゾ[1,5-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0103】
【化45】
RK-20930:
N-(4-(4-アミノ-7-((1S,4S)-4-(2-メチル-6,7-ジヒドロピラゾロ[1,5-a]ピラジン-5(4H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0104】
【化46】
RK-20932:
N-(4-(4-アミノ-7-((1S,4S)-4-(6,7-ジヒドロピラゾロ[1,5-a]ピラジン-5(4H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0105】
【化47】
RK-20942:
N-(4-(4-アミノ-7-((1R,4R)-4-(3-メチル-5,6-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)-2-メトキシフェニル)-1-メチル-1H-インドール-2-カルボキサミド
【0106】
【化48】
RK-20627:
7-((1R,4R)-4-(4-(2-メトキシエチル)ピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0107】
【化49】
RK-20629:
2-(4-((1R,4R)-4-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)シクロヘキシル)ピペラジン-1-イル)エタノール
【0108】
【化50】
RK-20640:
7-((1R,4R)-4-(4-イソプロピルピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0109】
【化51】
RK-20695:
5-(4-フェノキシフェニル)-7-((1R,4R)-4-((ピリジン-4-イルメチル)アミノ)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0110】
【化52】
RK-20697:
5-(4-フェノキシフェニル)-7-((1R,4R)-4-((ピリジン-3-イルメチル)アミノ)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0111】
【化53】
RK-20698:
5-(4-フェノキシフェニル)-7-((1S,4S)-4-((ピリジン-2-イルメチル)アミノ)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0112】
【化54】
RK-20710:
7-((1S,4S)-4-(((1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)メチル)アミノ)シクロヘキシル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0113】
【化55】
RK-20711:
7-((1R,4R)-4-(((1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)メチル)アミノ)シクロヘキシル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0114】
【化56】
RK-20712:
7-((1S,4S)-4-(((1-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)メチル)アミノ)シクロヘキシル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0115】
【化57】
RK-20724:
1-((1S,4S)-4-(8-メチル-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)シクロヘキシル)-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン
【0116】
【化58】
RK-20733:
(S)-3-(((1S,4R)-4-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)シクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-2-オン
【0117】
【化59】
RK-20734:
(S)-3-(((1R,4S)-4-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)シクロヘキシル)アミノ)ピロリジン-2-オン
【0118】
【化60】
RK-20758:
7-((1S,4S)-4-((8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)アミノ)シクロヘキシル)-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0119】
【化61】
RK-20898:
5-(4-フェノキシフェニル)-7-((1R,4R)-4-(3-(トリフルオロメチル)-5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-7(8H)-イル)シクロヘキシル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン
【0120】
【化62】
RK-20620:
1-((1R,4R)-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)シクロヘキシル)-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン
【0121】
【化63】
以下の化合物は市販されている:
AC220(別名キザルチニブ):
N-[5-(1,1-ジメチルエチル)-3-イソオキサゾリル]-N'-[4-[7-[2-(4-モルホリニル)エトキシ]イミダゾ[2,1-b]ベンゾチアゾール-2-イル]フェニル]尿素
【0122】
【化64】
ABT-199(別名ベネトクラックス):
4-[4-[2-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル]メチル]-1-ピペラジニル]-N-[[3-ニトロ-4-[[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル]アミノ]フェニル]スルホニル]-2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルオキシ)ベンズアミド
【0123】
【化65】
【0124】
ヒトサンプル
全ての実験は、理化学研究所及び虎の門病院の研究倫理委員会の承認により実行された。全ての患者サンプルは、書面による同意書と共に虎の門病院で採取された。CBサンプルは、Lonzaから購入した。
マウス
NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtmlWjl/Sz(NSG)マウスは、The Jackson Laboratory (Shultz LDら、J Immunol 2005年、Ishikawa Fら、Blood 2005年)で開発された。マウスは、各機関の施設動物委員会により設置されたガイドラインに従って、理化学研究所及びThe Jackson Laboratoryの動物施設で定義済みのフローラ下で育種され、維持された。
【0125】
フローサイトメトリー
以下のモノクローナル抗体(mAb):マウス抗ヒトCD19、CD3、CD33、CD34、CD38、CD4及びCD45;ラット抗マウスTer119及びCD45(BD Biosciences)が、フローサイトメトリーに使用された。分析は、FACSAriaIII及びFACSCantoII(BD)で実行された。異種間移植用の細胞を得るために、BV786-コンジュゲート抗CD3 mAb、BV605-コンジュゲート抗CD19 mAb、BV421-コンジュゲート抗CD33 mAb、PE-Cy7-コンジュゲート抗CD34 mAb、APC-コンジュゲート抗CD38 mAb、FITC-コンジュゲート抗CD90 mAb及びPE-コンジュゲート抗CD45RA mAbが使用された。単一細胞選別のために、100μmノズルが使用された。
【0126】
移植
NSG新生児は、1.5Gyの全身放射線照射を受けた後に精製したヒト細胞を静脈注射した。ドナー細胞は、ヒトCD34、CD38、CD90、CD45RA、CD3、CD19及びCD33に対するモノクローナル抗体を使用して細胞表面表現型により精製された。NSGレシピエントにおけるヒト細胞の生着レベルは、眼窩後静脈しゃ血及びフローサイトメトリーにより判定された。
【0127】
ゲノム分析
DNAは、DNeasy Blood & Tissue Kit(QIAGEN)を使用して患者サンプル又はレシピエント器官から精製されたヒト細胞から抽出された。FLT3-ITDのPCR検出は、TaKaRa PCR FLT3-ITD Mutation Detection Set (Takara)を使用して実行された。大量のDNA配列が、次世代DNA配列決定(NGS)により決定された。Covaris S220(Covaris Inc.、Wobum、MA USA)で断片化した後、断片化したゲノムDNA(10ng)は、供給元により提供されるプロトコールに従ってKAPA Hyper Prep Kit(KAPA Biosystems、Wilmington、MA)でNGS配列決定ライブラリーに変換された。AML関連遺伝子の標的化配列決定は、供給元により提供されるプロトコールに従って、xGen AML Cancer Panel v1.0 (Integrated DNA Technologies, Inc.、Coralville、IA)によるハイブリダイゼーション捕捉方法により実施された。ハイブリダイゼーション捕捉されたDNAライブラリーは、Illumina Miseq(Illumina、Inc. San Diego、CA)によるペアエンドリード様式(600サイクル)でNGSに供された。得られたDNA配列は、BWAを使用してヒトゲノム配列(hg19)にマッピングされ、次いでGeome Analysis Toolkit内のRealigner Target Creatorで再整列された。Picard内のFix Mate Information並びにGenome Analysis Toolkit (v.1.6-13)内のQuality Score Covariate及びTable Recalibrationによる処理後に、バリアントは、VarScanで検出された。
【0128】
96ウェルプレートにおいて、単一細胞変動分析が、BD FACS Ariaで仕分けされた単一細胞に対して実施された。MALBAC Single Cell WGAキット(Yikon Genomics、Beijin、中国)による単一細胞ゲノム増幅の後、対象の遺伝子の標的領域が、補足情報に記載のPCRにより、都合の良いインデックスを含むプライマーでPCR増幅された。PCR産物は、Illumina Miseqでペアエンドリード様式(600サイクル)で配列決定された。得られたDNA配列は、BWA(v0.7.12)を用いてヒトゲノム配列(hg19)にマッピングされ、SAMtoolsを用いてペアエンドリードを統合した。バリアント検出及び頻度算出は、SAMtools中のmpileupを用いて行われた。
【0129】
in vivo処置
in vivo処置実験は、RK-20449(参考STM 2013)及びABT-199(Souers AJら、Nature Medicine 2013年、Pan Rら、Cancer Discovery 2014年)を使用して、AML生着NSGレシピエントで実行された。レシピエントは、RK-20449を30mg/kg 1日2回腹腔内に、ABT-199を70mg/kg 1日に1回経口的に又はこれらの服用スケジュールでRK-20449及びABT-199両方を投与された。マウスは、それが死にかかった場合又は処置後4~6週間で屠殺され、BM、脾臓及びPBにおけるヒトAMLキメラ現象が、フローサイトメトリーを使用して決定された。二次移植において、各マウスは、屠殺時にAML生着レシピエントに残存していた2.5%の全BMからの7-AAD(-)ヒトCD45+生存細胞を受けて、残留AML生存細胞により生じる再発をシミュレーションした。処置したレシピエントの全て及びそれらの処置前後の生着データが、図8及び9において表にされる。
【0130】
統計分析
数値的なデータは、平均+/-SEMとして示される。誤差は、両側t検定(GraphPad Prism、GraphPad)で調べられた。
【0131】
実施例
【0132】
[実施例1]
FLT3-ITD+白血病サブクローンの評価
骨髄(BM)又は末梢血(PB)サンプルを、FLT3-ITD+AMLである23名の患者から得、その診断、臨床経過及び臨床転帰を、図7に詳述する。大多数の患者は、FLT3-ITD変異に加えて悪い予後因子、例えば、複合染色体異常を有し、及び/又は公知の悪性疾患(誘導不全、複数の幹細胞移植後の再発)を有した。
【0133】
in vivo機能と変異とを結びつけることにより白血病誘発に対するAML関連体細胞変異の寄与を評価するために、以下の実験を実行した:1)患者から単離した、表面表現型に定義された造血細胞部分母集団における集団レベルの変異スクリーニング、2)NSG異種移植によるそれら部分母集団のin vivo運命の機能的判定、及び3)異種移植レシピエントにおいて患者由来クローンを追跡するための単一細胞配列決定(図1A図1B及び図1Cを参照のこと)。
【0134】
正常なヒト造血において、HSC富化CD34+CD38-細胞は、NSGレシピエントに再生着する。本集団内で、CD34+CD38-(CD90-)CD45RA-細胞は、多系統ヒト造血再生着が可能である(図7を参照のこと)。細胞が分化するにつれて、この能力は失われ、CD45RA発現の獲得、その後のCD38発現及びCD34発現の消失を特徴とする。これらの結果は、対応するマーカーの表面表現型が患者の間で広く変動したことを示す(4名の患者の代表的なデータを、図2に示す)。集団レベルの配列決定は、予想した通り、変異の患者間変動を示した。しかしながら、異なる細胞表面表現型を持つ集団の中で変異した対立遺伝子の頻度に固有の差異があった。
【0135】
移植された患者由来の部分母集団を、表面表現型に従ってNSGマウスに仕分けした。例えば、患者21(図2A)及び患者20(図2B)において、CD34+CD38-部分母集団を、正常なヒト造血における原始HSC及びより分化したHPCに対応するCD90-CD45RA-及びCD90-CD45RA+部分母集団に更に再分割した。患者によって、類似の表面表現型を持つ部分母集団は、NSG異種移植によって固有のin vivo運命を示した。患者21由来のCD34+CD38-CD90-CD45RA- HSC表現型部分母集団はin vivoでAMLを開始したが、患者20由来のそれは、多系統生着を示した。患者13由来のCD34+CD38- HSC/HPC表現型部分母集団は、多系統生着を示した(図2C)が、患者1由来のそれは、in vivoでAMLを開始した(図2D)。患者20及び13において、CD34+CD38-CD90-CD45RA+前駆細胞表現型及びCD34-CD33+成熟骨髄表現型部分母集団は、それぞれLICを含有した。FLT3-ITD変異の存在及び非存在は、白血病開始及び多系統生着とそれぞれ相関したが、他の変異は、in vivo細胞運命と分離しなかった。
【0136】
それにもかかわらず、患者間で同じ表面表現型の細胞が、in vivoで固有の挙動を示した。例えば、患者21由来のCD34+CD38-CD90-CD45RA-集団は、NSGマウスにおいてAMLを開始し、従って白血病開始細胞(LIC)を含有した。他方、患者20由来の同じ表現型集団を持つ集団は、NSGマウスにおいて多系統ヒト造血を再構成し、従って多系統生着造血幹細胞を含有した。同様に、患者13由来CD34+CD38-集団は、多系統生着造血幹細胞含有集団であったが、患者1由来CD34+CD38-集団は、白血病開始細胞含有集団であった。
【0137】
歴史的には、造血再増殖機能の差異は、細胞表面表現型によるものと考えられてきたが、ここでは、同じ表面表現型を持つ集団が、患者間で異なる再増殖機能を保有した。従って、複数の変異を持つ集団内のクローン多様性は、バルクの対立遺伝子頻度だけでは正確に特徴付けられないので、変異プロファイリングを、各集団の単一細胞レベルで実行した。それら部分母集団内のクローン構造を定義し、多系統生着機能と対比して白血病開始機能に関連する変異を単一細胞レベルで同定した。
【0138】
患者から単離した、表面表現型を定義した白血病開始細胞含有集団及び多系統生着幹細胞含有集団は、変異の多様な組合せを持つ個別の細胞からなった(図3A及び図3Bを参照のこと)。例えば、患者21由来CD34+CD38-CD90-CD45RA-単一細胞は、4つの固有のサブクローン: FLT3-ITD+/DNMT3A-変異体、FLT3-ITD+/DNMT3A-WT、FLT3 WT/DNMT3A-変異体、又はFLT3-WT/DNMT3A-WTを含有した(図3A)。加えて、変異の頻度における患者間変動性及び個々の細胞におけるそれらの組合せが、白血病開始細胞含有及び多系統生着幹細胞含有集団の中で観察された。患者1白血病開始集団中の全細胞は、FLT3-ITD+であったが、患者13白血病開始集団において128個の単一細胞うち16個だけが、FLT3-ITD+であった(図3A)。同様に、患者13多系統生着幹細胞集団中の全細胞は、FLT3-WTであったが、患者20多系統生着幹細胞集団において117個の単一細胞のうち18個が、FLT3-ITD+であった(図3B)。これらの所見は、多様な変異プロファイルを持つサブクローンからなるヒトAML細胞部分母集団は、NSGレシピエントに移植された場合、固有のin vivo細胞運命(白血病開始又は多系統生着)を有することを実証する。
【0139】
NSGレシピエントにおいて生着した、AML患者由来の白血病及び多系統造血細胞も評価した。個々の生着したヒト白血病細胞及びヒト多系統造血細胞中の変異をプロファイルすることにより、白血病開始クローン及び前白血病幹細胞クローンを、患者由来白血病開始細胞含有及び多系統生着集団に存在する様々なサブクローンの中でそれぞれ同定した。その後、個々のクローンに存在する変異を公知のin vivo細胞運命と比較することにより、白血病開始に寄与する変異を決定した。驚くべきことに、3つの症例(患者1、13及び21)において、FLT3-ITD+単一細胞の頻度又は親白血病開始集団の細胞表面表現型に関係なく、白血病開始集団で移植されたレシピエント中の全ヒト細胞が、FLT3-ITD+であった。加えて、一次及び二次レシピエントにおいて生着したFLT3-ITD+AML細胞の中にDNMT3A WT(患者1、20及び21)、NPM1 WT(患者13)及びTET2 WT(患者13)サブクローンが存在し、このことは、FLT3-ITDが白血病誘発と最も強く結びついており、他の変異は必須でないことを示した(図3Aを参照のこと)。
【0140】
これは、PDXモデルに限られた観察ではなかった。患者13において、白血病開始CD34-CD33+集団におけるFLT3-ITD+単一細胞の頻度は、初期診断から再発まで実質的に増大したが、FLT3-ITD+サブクローンの中でもNPM1 WT及びTET2 WTサブクローンは存続し、このことは、FLT-ITDが、患者における再発に関連する最も悪性度が高い潜在性を付与することを示した(図3Aを参照のこと)。他方、前白血病(多系統生着)集団がFLT3-ITDサブクローンを含有する患者20においても、多系統生着集団で移植したレシピエントにおいて生着した全ヒト細胞は、FLT3 WTであった(図3Bを参照のこと)。更に、レシピエントにおいて生着した多系統ヒト造血細胞にDNMT3A変異(患者21)、NPM1変異(患者13)及びTET2変異(患者13)サブクローンが存在し、このことは、これらの変異が多系統造血を妨げないことを示した。NPM1及びTET2変異の両方を保有する単一細胞も、CD19+B細胞に分化した(図3Bを参照のこと)。これらの所見は、FLT3-ITD変異が、協同的役割を果たす他の変異と共に最も悪性度が高い潜在性を付与することを示し、FLT3-ITD変異の獲得が、表面表現型及び共存する変異にかかわらずAML開始能力を付与することを強く示唆する。
【0141】
[実施例2]
多様な変異を持つヒトFLT3-ITD+AMLサブクローンにおけるキナーゼ阻害の効果
これらの検討は、NSG PDXモデルを使用して、変異したキナーゼ単独の阻害がin vivoでAMLを排除するかどうか調べた。FLT3-ITD変異を持つ患者由来細胞は、in vivoで生着し、AMLを開始するが、個々のFLT3-ITD+細胞は、他の複数の変異を様々な組合せで保有する。これらの変異は、FLT3-ITDと協同して治療応答性に寄与し得、ヒトAML細胞の変異の複雑さを反映するPDXモデルは、共存する複数の変異の寄与を調べるのに必要である。従って、AML関連体細胞変異の頻度を、新生児のNSG異種移植を使用して、開示されたPDXモデルにおいて評価し、同じ組の変異が、患者由来白血病開始集団及びレシピエントにおける生着したAML細胞に存在した(図4を参照のこと)。更に、単一細胞配列決定は、NSG PDXモデルが、様々な組合せの変異を持つ複数の白血病開始サブクローンの生着を可能にすることを実証した(図3A及び図3Bを参照のこと)。FLT3経路単独の標的化がin vivoで、複数の変異を保有するヒトAML細胞の減少をもたらし得る程度を、以下の通りに調べた。RK-20449は、ヒトAML細胞を効果的に標的するSrcファミリーキナーゼHCK及びFLT3のピロロ-ピリミジン-誘導体複数キナーゼ阻害剤である。従って、RK-20449を、19名のFLT3-ITD+AML患者由来AMLが生着した58匹のNSGマウスに投与し、結果を図8に示す。
【0142】
5名の患者において、応答は、完全であった(処置した全レシピエントが、残留BMヒトCD45+キメラ現象<5%を示した) (図5Aを参照のこと)。これらの患者において、RK-20449によって直接標的されない複数の変異が存在するにもかかわらず、RK-20449は、処置した全てのレシピエント(患者1: DNMT3A、CEBPA、TET2;患者2: IDH1;患者15: CEBPA、n-Ras;患者16: WT1)においてAML細胞をBM、脾臓並びにPBにおいてフローサイトメトリー及び免疫組織化学に基づいて0.01%未満、例えば約0.05%~約0.01%まで排除した。11個の更なる症例において、RK-20449単独は、試験した大多数のレシピエントの脾臓において完全奏効をもたらした(図5Bを参照のこと)。全体として、試験した19症例全てにおいて、FLT3-ITD+ヒトAML細胞は、単一薬剤RK-20449に対してin vivoで有意な応答を示し;しかしながら、残留AML細胞が、19症例のうちの14個において少なくとも1匹の処置マウスのBMに観察された(図5C及び図5Dを参照のこと)。従って、FLT3-ITD+AML細胞における複数キナーゼ阻害抵抗性の機序が、評価された。
【0143】
[実施例3]
in vivoでのFLT3-ITD+AML細胞に対するキナーゼ及び抗アポトーシス経路の複合阻害の効果
キナーゼ阻害単独ではBM及び脾臓においてヒトAML細胞を完全に根絶しなかった症例由来のAMLが生着したレシピエントを、ABT-199と組み合わせてRK-20449で処置した。データ及び統計については図9図11を参照のこと。処置したレシピエントのPB hCD45+AML細胞キメラ現象の時間的経過は、処置の型に関連した周辺応答の率及び程度における差異を例示する(図6Aを参照のこと)。大多数の症例において、BCL-2阻害剤ABT-199単独によるアポトーシス誘導は、僅かな応答をもたらした。それに対し、12症例全てにおいて、組合せ処置は、PB、BM及び脾臓においてヒトAMLキメラ現象を有意に減少させた。更に、12症例のうちの9つにおいて、キナーゼ及び抗アポトーシス経路の複合阻害は、in vivoで他の共存している変異を標的することなくヒトAML細胞を検出限界以下に排除した(図6B及び図8を参照のこと)。
【0144】
残留ヒトAML生存細胞は、RK-20449/ABT-199組合せ処置に対して完全奏効を示した大部分のレシピエントにおいて機能的に判定するにはあまりに少なかった。AML幹細胞に対する組合せ処置の効果を判定するために、ヒトAML細胞を、完全奏効を示したが、比較的高い残留BMヒトCD45キメラ現象がある症例から単離し、NSGマウスへの連続移植を実行した(図6Cを参照のこと)。処置後に残存した白血病開始能力を、処置した各マウスから残留ヒトCD45+AML生存細胞を単離し、二次NSGレシピエントに予め決めた画分を移植することにより比較した。RK-20449単独及びABT-199単独で処置したBMは、移植された全二次レシピエントにおいてAMLを開始するのに十分な生存LSCを含有した。それに対し、組合せ処置により処置したレシピエントからの残留AML細胞で移植された23匹のマウスの中で、わずか1匹が生着し、このことは、RK-20449及びABT-199による組合せ処置が、in vivoでLICの頻度をより効果的に減少させたことを示した。
【0145】
本発明は特定の実施形態を参照して開示されているが、本発明の他の実施形態及び変形が、本発明の真の精神及び範囲を逸脱することなく他の当業者により考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのような実施形態及び同等の変形の全てを含むと解釈されることを意図する。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10
図11