(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】抗Axl抗体、抗体断片およびそれらの免疫コンジュゲートならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240319BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240319BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12P21/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022162043
(22)【出願日】2022-10-07
(62)【分割の表示】P 2020119657の分割
【原出願日】2017-04-13
【審査請求日】2022-11-01
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520478172
【氏名又は名称】バイオアトラ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ショート ジェイ エム
(72)【発明者】
【氏名】チャング フウェイ ウェン
(72)【発明者】
【氏名】フレイ ガーハード
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/193430(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/005593(WO,A1)
【文献】特表2014-522639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Axlタンパク質に特異的に結合する抗Axl抗体または抗体断片であって、前記抗体または抗体断片は、H1、H2、およびH3配列を有する3つの重鎖相補性決定領域を含む重鎖可変領域と、L1、L2、およびL3配列を有する3つの軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変領域とを含み、
抗体または抗体断片は、
pH7.4における
Axlへの結合親和性と比較して、
pH6.0においてAxlへのより高い結合親和性を有し、および
抗体相補性決定領域が以下から選択される、抗Axl抗体または抗体断片。
(a) H1がWGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTであり、
(b) H1がTGHTMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLRであり、
(c) H1がTGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSTPLTであり、
(d) H1がTGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVSSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTであり、
(e) H1がTGHTMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSTPLTであり、
(f) H1がWGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVSSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTであり、
(g) H1がWGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSTPLTであり、
(h) H1がTGHTMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVSSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTであり、
(i) H1がTGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTであり、
(j) H1がTGHTMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTであり、
(k) H1がTGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLRであり
(l) H1がWGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLRである。
【請求項2】
H1がWGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項3】
H1がTGHTMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLRである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項4】
H1がTGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSTPLTである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項5】
H1がTGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVSSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項6】
H1がTGHTMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSTPLTである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項7】
H1がWGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVSSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項8】
H1がWGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSTPLTである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項9】
H1がTGHTMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVSSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項10】
H1がTGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項11】
H1がTGHTMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLTである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項12】
H1がTGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLRである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【請求項13】
H1がWGATMN、H2がLIKPSNGGTSYNQKFKG、H3がGHYESYEAMDYWG、L1がKASQDVVSAVA、L2がWQDTRHT、L3がQEHFSPPLRである、請求項1に記載の抗Axl抗体又は抗体断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗Axl抗体、抗体断片ならびにそのような抗体および抗体断片の免疫コンジュゲートならびに診断および治療方法における抗体、抗体断片および免疫コンジュゲートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Axlタンパク質(Ark、UFO、Tyro-7としても公知)は、キナーゼのTyro-3ファミリーにおける受容体チロシンキナーゼである。Tyro-3受容体キナーゼは、細胞外領域中の2つの免疫グロビン様ドメインおよび二重フィブロネクチンIII型リピートと細胞質キナーゼドメインとの組合せを特徴とする。Tyro-3受容体キナーゼについてのリガンドはGas6(成長停止特異的(growth-arrest-specific)6)およびプロテインSであり、これらは43%のアミノ酸配列同一性を示し、類似のドメイン構造を共有する2つのビタミンK依存的タンパク質である。それぞれのタンパク質は、11個のg-カルボキシグルタミン酸残基を含有するN末端Glaドメインとそれに続く4つの上皮成長因子(EGF)様モジュール、および2つのタンデムラミニンGドメインからなるC末端性ホルモン結合グロビン(SHBG)様構造を有する。SHBGドメインは、Tyro-3受容体キナーゼ結合および活性化に必須であり、十分である一方、GIaドメインは負荷電膜リン脂質に結合し、アポトーシス細胞のTyro-3キナーゼ媒介食作用において重要な役割を担う。
【0003】
Axl活性化は、PI-3-キナーゼ/Akt(Franke et al.,Oncogene,vol.22,pp.8983-8998,2003)および他の主要な経路、例えば、Ras/Erkおよびβ-カテニン/TCF(Goruppi et al.,Mol.Cell.Biol.,vol.21,pp.902-915,2001)を介するシグナリングをもたらす。Axlは、一連の正常組織、例として、脳、心臓、骨格筋、器官の嚢およびいくつかの他の器官の結合組織中で弱く発現され、単球中で発現されるがリンパ球中では発現されない。Axlにより誘導されるAktリン酸化は、線維芽細胞(Goruppi et al.,Mol.Cell.Biol.,vol.17,pp.4442-4453 1997)、内皮細胞(Hasanbasic et al.,Am J Physiol Heart Circ Physiol,vol.287,H1207-H1213,2004)、血管平滑筋細胞(Melaragno et al.,J.Mol.Cell.Cardiol.,vol.37,pp.881-887,2004)および神経細胞(Allen et al.,Mol.Endocrinol.,vol.13,pp.191-201,1999)の生存において記載されている。さらに、Axlは、細胞接着および走化性における役割を担う。それというのも、Axlノックアウト動物が血小板インテグリンIIb3の低減した活性化の結果として損傷した血小板凝集物安定化および血栓形成を呈するためである。
【0004】
AxlまたはそのリガンドGas6の機能不全は、種々のヒト癌の病因に関与する。種々の癌タイプ、例えば、乳癌(Meric et al.,Clin.Cancer Res.,vol.8,pp.361-367,2002;Berclaz et al.,Ann.Oncol.,vol.12,pp.819-824,2001)、結腸癌(Chen et al.,Int.J.Cancer,vol.83,pp.579-584,1999;Craven et al.,Int.J.Cancer,vol.60,pp.791-797,1995)、前立腺癌(Jacob et al.,Cancer Detect.Prey.,vol.23,pp.325-332,1999)、肺癌(Wimmel et al.,Eur J Cancer,vol.37,pp.2264-2274,2001)、胃癌(Wu et al.,Anticancer Res.,vol.22,pp.1071-1078,2002)、卵巣癌(Sun et al.,Oncology,vol.66,pp.450-457,2004)、子宮内膜癌(Sun et al.,Ann.Oncol.,vol.14,pp.898-906,2003)、腎臓癌(Chung et al.,DNA Cell Biol.,vol.22,pp.533-540,2003)、肝細胞癌(Tsou et al.,Genomics,vol.50,pp.331-340,1998)、甲状腺癌(Ito et al.,Thyroid,vol.12,pp.971-975,2002;Ito et al.,Thyroid,vol.9,pp.563-567,1999)、およびさらには慢性骨髄性白血病(Janssen et al.,Oncogene,vol.6,pp.2113-2120,1991;Braunger et al.,Oncogene,vol.14,pp.2619-2631 1997;O’Bryan et al.,Mol.Cell.Biol.,vol.11,pp.5016-5031,1991)、急性骨髄性白血病(Rochlitz et al.,Leukemia,vol.13,pp.1352-1358,1999)、骨肉腫(Nakano et al.,J.Biol.Chem.,vol.270,pp.5702-5705,2003)、黒色腫(van Ginkel et al.,Cancer Res.,vol.64,pp.128-134,2004)、および頭頸部扁平上皮癌(Green et al.,Br J.Cancer.,vol.94,pp.1446-5,2006)において、Axl過剰発現が実証されている。
【0005】
近年、ホスホチロシンシグナリングのプロファイリングにより、活性化AxlがNSCLCの原発腫瘍の約5%において検出された(Rikova et al,Cell,vol.131,pp.1190-1203,2007)。Axl発現は標的化学療法薬により誘導され、薬物により誘導されたAxl発現は急性骨髄性白血病における化学療法に対する耐性(Hong et al,Cancer Letters,vol.268,pp.314-324,2008)、ならびに消化管間質腫瘍(Mehadevan,et al,Oncogene,vol.26,pp.3909-3919,2007)および乳癌(Liu et al,Cancer Research,vol.281,pp.6871-6878,2009)におけるイマチニブおよびラパチニブ/ハーセプチンに対する耐性をそれぞれ付与する。
【0006】
さらに、Axlは、腫瘍転移に関連することが同定されている。それというも、Axlは、非侵襲性細胞と比較して侵襲性乳癌細胞系において上方調節されるためである。インビトロで、Axl活性は遊走および侵入に要求されることが見出され、この活性は抗体処理により阻害することができた(国際公開第04/008147号パンフレット)。同様に、Axlのドミナントネガティブ型の発現を介する(Vajkoczy,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Science U.S.A.,vol.103,pp.5799-5804,2005)またはAxlのsiRNA媒介下方調節による(Holland et al.,Cancer Res.,vol.65,pp.9294-9303,2005)インビボでのAxl活性の停止は、ネズミゼノグラフト実験において皮下および同所細胞成長を妨害した。
【0007】
したがって、抗Axlモノクローナル抗体は癌の治療における使用について記載されている。例えば、抗Axl抗体に関する刊行物としては、国際公開第2009/063965号パンフレット、国際公開第2009/062690号パンフレット、国際公開第2011/014457号パンフレット、米国特許出願公開第2014/0227283号明細書、および米国特許第8,853,369号明細書が挙げられる。米国特許出願公開第2014/0227283号明細書は、モノクローナル抗Axl抗体ならびに診断および治療方法におけるその使用を開示している。国際公開第2009/062690号パンフレットは、Axlタンパク質の細胞外ドメインに結合し、少なくとも部分的にAxl活性を阻害し得る抗体を開示している。
【0008】
これらのモノクローナル抗Axl抗体は、患者の身体の任意の位置、例として治療が意図される腫瘍の位置において類似の親和性でAxlに結合する。非腫瘍環境中でのAxlへのこのような抗体の結合は、それらの環境中でAxlの正常機能に対する悪影響を有し、したがって顕著な副作用を引き起こし得ると予測される。本発明は、非腫瘍環境中でのAxlへの結合親和性と比較して腫瘍微小環境中でAxlへの高い結合親和性を有する条件的に活性な抗Axl抗体および抗体断片を提供する。本発明の抗Axl抗体および抗体断片は、当分野において公知のモノクローナル抗Axl抗体と比較して同等または大きな抗癌効力を、低減した副作用で有すると予測される。これは、抗Axl抗体および抗体断片のより高い投与量の投与またはより高頻度の治療も許容し、したがってより有効な治療選択を提供し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は、Axlタンパク質に特異的に結合する単離重鎖可変領域ポリペプチドを提供する。ポリペプチドは、3つの相補性決定領域H1、H2、およびH3配列を含み、
H1配列は、X1GX2X3MX4(配列番号1)であり;
H2配列は、LIKX5SNGGTX6YNQKFKG(配列番号2)であり;
H3配列は、GX7X8X9X10X11X12X13X14DYX15X16(配列番号3)であり、
X1は、TまたはAまたはWであり、
X2は、HまたはAであり、
X3は、TまたはIであり、
X4は、NまたはIであり、
X5は、PまたはNであり、
X6は、SまたはIまたはTであり、
X7は、HまたはDまたはEまたはPまたはRまたはWであり、
X8は、YまたはNであり、
X9は、EまたはAまたはDまたはFまたはGまたはHまたはIまたはLまたはMまたはNまたはRまたはVまたはYであり、
X10は、SまたはDまたはMまたはNまたはQであり、
X11は、YまたはCまたはEまたはPであり、
X12は、FまたはEまたはNまたはSまたはTまたはVであり、
X13は、AまたはDまたはGまたはLまたはYであり、
X14は、MまたはEまたはFであり、
X15は、WまたはAまたはDまたはHまたはLまたはNまたはPまたはRまたはTであり、
X16は、GまたはHである。
【0010】
別の態様において、単離重鎖可変領域ポリペプチドは、3つの相補性決定領域L1、L2、およびL3配列を含み、
L1配列は、KASQDX17X18SX19VX20(配列番号4)であり;
L2配列は、X21X22X23TRX24T(配列番号5)であり;
L3配列は、QEX25X26SX27X28X29X30(配列番号6)であり、
X17は、VまたはDまたはGまたはNまたはWであり、
X18は、SまたはVであり、
X19は、AまたはLまたはMであり、
X20は、AまたはDまたはNまたはQであり、
X21は、WまたはFであり、
X22は、AまたはIまたはNまたはPまたはQであり、
X23は、SまたはDであり、
X24は、HまたはDであり、
X25は、HまたはCまたはFまたはIまたはLまたはQまたはSまたはTまたはVまたはYであり、
X26は、FまたはCまたはDまたはEまたはGまたはNまたはSであり、
X27は、TまたはCまたはPであり、
X28は、PまたはAまたはCまたはDまたはEまたはHまたはKまたはSまたはTまたはVまたはWであり、
X29は、LまたはGまたはRであり、
X30は、TまたはIまたはRである、
単離軽鎖可変領域と組み合わせられている。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の単離重鎖可変領域ポリペプチドを含む抗Axl抗体または抗体断片を提供する。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、場合により、化学療法剤、放射性原子、細胞増殖抑制剤および細胞毒性剤から選択される薬剤にコンジュゲートしている本発明の抗体または抗体断片を含む免疫コンジュゲートを提供する。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、抗体もしくは抗体断片、または免疫コンジュゲートを薬学的に許容可能な担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、抗体もしくは抗体断片、または免疫コンジュゲートを含む診断または治療のためのキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1-1】本発明の抗Axl抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列アラインメントをそれぞれ示す。
【
図1-2】本発明の抗Axl抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列アラインメントをそれぞれ示す。
【
図1-3】本発明の抗Axl抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列アラインメントをそれぞれ示す。
【
図2】pH6.0およびpH7.4におけるAxl細胞外ドメインへの本発明の種々の条件的に活性な抗体の結合(OD450)を示す。これらの条件的に活性な抗体は、pH7.4よりもpH6.0において活性であった。
【
図3】Axl細胞外ドメインに対する本発明の種々の条件的に活性な抗体の選択性を示す。選択性は、pH6.0における結合パートナーに対する結合親和性と、pH7.4における同一の結合パートナーに対する結合親和性の比として計測した。
【
図4】実施例1に記載のとおり、本発明の条件的に活性な抗体が凝集しないことを示すサイズ排除クロマトグラフを示す。
【
図5】実施例1に記載のとおり、ELISAアッセイにより計測された熱ショック前後の本発明の条件的に活性な抗体の熱安定性を示す。
【
図6】実施例1におけるSPRアッセイにより計測された本発明の条件的に活性な抗体の選択性を示す。
【
図7】KREBS緩衝液中でのAxlへの本発明の抗Axl抗体の結合についてのpH依存的結合プロファイルを示す。
【
図8-1】A549細胞を使用し、本発明の抗Axl抗体をpH6.0およびpH7.4において異なる抗体濃度において細胞殺傷に用いた別の細胞殺傷試験の結果を示す。
【
図8-2】A549細胞を使用し、本発明の抗Axl抗体をpH6.0およびpH7.4において異なる抗体濃度において細胞殺傷に用いた別の細胞殺傷試験の結果を示す。
【
図8-3】A549細胞を使用し、本発明の抗Axl抗体をpH6.0およびpH7.4において異なる抗体濃度において細胞殺傷に用いた別の細胞殺傷試験の結果を示す。
【
図9-1】異なる緩衝液中および異なるpHレベルにおける本発明の抗Axl抗体についてのヒトAxlおよびカニクイザルAxlに対する結合親和性を示す。
【
図9-2】異なる緩衝液中および異なるpHレベルにおける本発明の抗Axl抗体についてのヒトAxlおよびカニクイザルAxlに対する結合親和性を示す。
【
図10-1】デュオマイシン(duomycin)にコンジュゲートさせた本発明の抗Axl抗体による異なるpHレベルにおける異なる細胞系の細胞殺傷を示す。
【
図10-2】デュオマイシン(duomycin)にコンジュゲートさせた本発明の抗Axl抗体による異なるpHレベルにおける異なる細胞系の細胞殺傷を示す。
【
図10-3】デュオマイシン(duomycin)にコンジュゲートさせた本発明の抗Axl抗体による異なるpHレベルにおける異なる細胞系の細胞殺傷を示す。
【
図10-4】デュオマイシン(duomycin)にコンジュゲートさせた本発明の抗Axl抗体による異なるpHレベルにおける異なる細胞系の細胞殺傷を示す。
【
図11】ゲムシタビンにコンジュゲートさせた本発明の抗Axl抗体による異なるpHレベルにおけるA549細胞の細胞殺傷を示す。
【
図12】本発明のデュオマイシンコンジュゲート抗Axl抗体によるゼノグラフトマウスの処理の腫瘍体積に対する効果を示す。
【
図13】本発明のデュオマイシンコンジュゲート抗Axl抗体の存在の、そのコンジュゲートの注射後の経時的なカニクイザルの血液中での検出を示す。
【
図14】
図14A:コンジュゲートの注射直前(前(D-3))に開始し、注射3日後(後(D-3))までの経時的なカニクイザルの血液中でのアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の存在の検出を示す。
図14B:コンジュゲートの注射直前(前(D-3))に開始し、注射3日後(後(D-3))までの経時的なカニクイザルの血液中でのアラニンアスパラギン酸トランスアミナーゼ(ALT)の存在の検出を示す。
【
図15】コンジュゲートの注射後のカニクイザルの血液中での経時的なリンパ球数を示す。
【
図16】LCLC103HおよびDU145をそれぞれ受けたマウスのインビボ処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本明細書において提供される実施例の理解を容易にするため、ある高頻度に使用される用語を本明細書において定義する。
【0017】
計測される量との関連で、本明細書において使用される用語「約」は、計測を行い、計測の目的および使用される計測装置の精度に見合うあるレベルのケアを実行する当業者により予測されるその計測される量の通常の変動を指す。特に示されない限り、「約」は、提供される値の+/-10%の変動を指す。
【0018】
本明細書において使用される用語「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位と、その結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総計の強度を指す。特に示されない限り、本明細書において使用される「結合親和性」は、結合ペア(例えば、抗体および抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYについての親和性は、一般に、解離定数(Kd)により表すことができる。親和性は、当分野において公知の一般的方法、例として、本明細書に記載のものにより計測することができる。結合親和性を計測するための具体的な説明および例示的な実施形態を以下に記載する。
【0019】
用語「親和性成熟」は、抗体を参照して使用される場合、変更を保有しない親抗体または抗体断片と比較して1つ以上の超可変領域(HVR)中の1つ以上の変更を有する抗体または抗体断片を指し、そのような変更は、抗原についての抗体または抗体断片の親和性の改善をもたらす。
【0020】
本明細書において使用される用語「アミノ酸」は、アミノ基(--NH2)およびカルボキシル基(--COOH)を好ましくは遊離基として、あるいは縮合後にペプチド結合の一部として含有する任意の有機化合物を指す。「20個の天然にコードされるポリペプチド形成アルファ-アミノ酸」は当分野において理解され、アラニン(alaまたはA)、アルギニン(argまたはR)、アスパラギン(asnまたはN)、アスパラギン酸(aspまたはD)、システイン(cysまたはC)、グルタミン酸(gluまたはE)、グルタミン(ginまたはQ)、グリシン(glyまたはG)、ヒスチジン(hisまたはH)、イソロイシン(ileまたはI)、ロイシン(leuまたはL)、リジン(lysまたはK)、メチオニン(metまたはM)、フェニルアラニン(pheまたはF)、プロリン(proまたはP)、セリン(serまたはS)、スレオニン(thrまたはT)、トリプトファン(tipまたはW)、チロシン(tyrまたはY)、およびバリン(valまたはV)を指す。
【0021】
本明細書において使用される用語「抗血管新生剤」は、血管の発生をある程度遮断し、または妨げる化合物を指す。抗血管新生剤は、例えば、血管新生の促進に関与する成長因子または成長因子受容体に結合する小分子または抗体であり得る。一実施形態において、抗血管新生剤は、血管内皮成長因子(VEGF)に結合する抗体または抗体断片、例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))である。
【0022】
本明細書において使用される用語「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv)が挙げられる。由来する抗体の抗原(例えば、ポリペプチド抗原)に選択的に結合するいくらかの能力を保持するこれらの抗体断片は、当分野において周知の方法(例えば、Harlow and Lane、前掲参照)を使用して作製することができる。
【0023】
本明細書において使用される用語「抗体」は、インタクト免疫グロブリン分子を指す。抗体または抗体断片は、分取量の抗原を免疫親和性クロマトグラフィーにより単離するために使用することができる。このような抗体または抗体断片の種々の他の使用は、疾患(例えば、新生物形成)を診断および/または病期分類するため、ならびに疾患、例えば、新生物形成、自己免疫疾患、AIDS、心血管疾患、感染症などを治療するための治療用途のためのものである。キメラヒト様ヒト化または完全ヒト抗体または抗体断片は、ヒト患者への投与に特に有用である。
【0024】
Fab断片は、抗体分子の一価抗原結合断片からなり、酵素パパインによる完全抗体分子の消化により、インタクト軽鎖および重鎖の一部からなる断片を生じさせて産生することができる。
【0025】
抗体分子のFab’断片は、完全抗体分子をペプシンにより処理し、次いで還元してインタクト軽鎖および重鎖の一部からなる分子を生じさせることにより得ることができる。2つのFab’断片は、この様式で処理される抗体分子ごとに得られる。
【0026】
抗体の(Fab’)2断片は、完全抗体分子を酵素ペプシンにより後続の還元なしで処理することにより得ることができる。(Fab’)2断片は、2つのジスルフィド結合により一緒に保持される2つのFab’断片の二量体である。
【0027】
Fv断片は、2つの鎖として発現される軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された断片として定義される。
【0028】
本明細書において使用される用語「抗Axl抗体」、抗Axl抗体断片および「Axlに結合する抗体または抗体断片」は、抗体または抗体断片がAxlの標的化における診断および/または治療剤として有用であるように十分な親和性でAxlに結合し得る抗体または抗体断片を指す。一実施形態において、非関連非Axlタンパク質への抗Axl抗体または抗体断片の結合の程度は、例えば、放射性免疫アッセイ(RIA)により計測してAxlへの抗体または抗体断片の結合の約10%未満である。ある実施形態において、Axlに結合する抗体または抗体断片は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、または10-8M~10-13M、または10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある実施形態において、抗Axl抗体または抗体断片は、異なる種からのAxl間で保存されるAxlのエピトープに結合する。
【0029】
本明細書において使用される用語「血管新生障害」は、血管新生の任意の機能不全、例として、非新生物形成および新生物形成病態の両方を指す。新生物形成病態としては、限定されるものではないが、下記のもの(例えば、「癌」参照)が挙げられる。非新生物形成障害としては、限定されるものではないが、不所望または異常な肥大、関節炎、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬プラーク、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症プラーク、糖尿病性および他の増殖性網膜症、例として、未熟児網膜症、水晶体後部線維増殖症、血管新生緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、角膜血管新生、角膜移植片血管新生、角膜移植拒絶反応、網膜/脈絡膜血管新生、隅角の血管新生(ルベオーシス)、眼部血管新生疾患、血管再狭窄、動静脈奇形(AVM)、髄膜腫、血管腫、血管線維腫、甲状腺肥大(例として、グレーブス病)、角膜および他の組織移植、慢性炎症、肺炎症、急性肺損傷/ARDS、敗血症、原発性肺高血圧症、悪性肺滲出、脳浮腫(例えば、急性脳卒中/閉鎖性頭部損傷/外傷に伴うもの)、滑膜炎、RAにおけるパンヌス形成、骨化性筋炎、肥大性骨形成、骨関節炎(OA)、難治性腹水、多嚢胞性卵巣、子宮内膜症、サードスペースの体液疾患(膵炎、コンパートメント症候群、火傷、腸疾患)、子宮筋腫、早産、慢性炎症、例えば、IBD(クローン病および潰瘍性大腸炎)、腎同種移植片拒絶反応、炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群、不所望または異常な組織塊成長(非癌性)、血友病性関節、肥厚性瘢痕、発毛阻害、オスラーウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、水晶体後部線維増殖症、強皮症、トラコーマ、血管癒着、滑膜炎、皮膚炎、子癇前症、腹水、心外膜液(例えば、心膜炎などに伴うもの)、および胸膜滲出が挙げられる。
【0030】
本明細書において使用される用語「血管新生」は、既存の血管からの新たな血管、特に、限定されるものではないが、新たな腫瘍供給血管の成長に寄与する全てのAxl関与プロセスを指す。これらのプロセスとしては、複数の細胞イベント、例えば、血管内皮細胞の増殖、生存、遊走および出芽、周囲細胞の誘引および遊走ならびに血管安定化のための基底膜形成、血管灌流、または間質もしくは新生物細胞による血管新生因子の分泌が挙げられ、それらのプロセスは、Axlの非触媒または触媒活性、好ましくは、例として、Axlリン酸化および/またはAxl媒介シグナル伝達により刺激または媒介される。
【0031】
本明細書において使用される用語「Axl」は、特に示されない限り、任意の脊椎動物資源、例として、哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)からの任意の天然Axlを指す。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないAxlおよび細胞中でのプロセシングから生じるAxlの任意の形態を包含する。この用語は、Axlの天然存在バリアント、例えば、スプライスバリアントまたはアレルバリアントも包含する。ヒトAxlのアミノ酸配列は当分野において周知であり、公開データベース、例えば、GenBankから利用可能である。
【0032】
本明細書において使用される用語「Axl活性化」は、Axl受容体の活性化、またはリン酸化を指す。一般に、Axl活性化は、シグナル伝達(例えば、Axlまたは基質ポリペプチド中のAxl受容体リン酸化チロシン残基の細胞内キナーゼドメインにより引き起こされるもの)をもたらす。Axl活性化は、目的のAxl受容体へのAxlリガンド(Gas6)結合により媒介され得る。AxlへのGas6結合は、Axlのキナーゼドメインを活性化させ、それによりAxl中のチロシン残基のリン酸化および/または追加の基質ポリペプチド中のチロシン残基のリン酸化をもたらし得る。
【0033】
本明細書において使用される用語「Axl媒介抗アポトーシス」は、ヒト細胞、好ましくは、限定されるものではないが、ヒト癌細胞を、プログラム細胞死(アポトーシス)から妨害する全てのAxl関与プロセスを指す。特にそれは、ヒト細胞、好ましくは、限定されるものではないが、ヒト癌細胞を、成長因子離脱、低酸素、化学療法剤もしくは放射線への曝露、またはFas/Apo-1受容体媒介シグナリングの開始を介するアポトーシスの誘導から妨害し、Axlの非触媒または触媒活性、好ましくは、例として、Axlリン酸化および/またはAxl媒介シグナル伝達により刺激または媒介されるプロセスを指す。
【0034】
本明細書において使用される用語「結合」は、抗体の可変領域またはFvと、抗原との相互作用を指し、その相互作用は抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存する。例えば、抗体可変領域またはFvは、タンパク質全般ではなく特異的タンパク質構造を認識し、それに結合する。本明細書において使用される「特異的に結合すること(specifically binding)」または「特異的に結合すること(binding specifically)」は、抗体可変領域またはFvが、特定の抗原に、他のタンパク質よりも高頻度で急速に長い持続時間および/または大きな親和性で結合し、または会合することを意味する。例えば、抗体可変領域またはFvは、その抗原に、他の抗原に結合するよりも大きな親和性、アビディティで、急速に、および/または長い持続時間、特異的に結合する。別の例では、抗体可変領域またはFvは、細胞表面タンパク質(抗原)に、それが関連タンパク質もしくは他の細胞表面タンパク質に、または多反応性天然抗体により(すなわち、ヒトにおいて天然に見出される種々の抗原に結合することが公知の天然存在抗体により)一般に認識される抗原に結合するよりもかなり大きな親和性で結合する。しかしながら、「特異的に結合する」は、必ずしも排他的結合または別の抗原の非検出結合を要求せず、これは、用語「選択的結合」を意味する。一例において、抗原に結合する抗体可変領域またはFv(または他の結合領域)の「特異的結合」は、抗体可変領域またはFvが、100nM以下、例えば、50nM以下、例えば、20nM以下、例えば、15nM以下、または10nM以下、または5nM以下、2nM以下、または1nM以下の平衡定数(KD)で抗原に結合することを意味する。
【0035】
本明細書において使用される用語「癌」および「癌性」は、典型的には、無秩序な細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的病態を指し、または説明する。癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられる。このような癌のより特定の例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞腫、白血病および他のリンパ球増殖性疾患、ならびに種々のタイプの頭頸部癌が挙げられる。
【0036】
本明細書において使用される用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、ある程度の異常細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、癌である。
【0037】
本明細書において使用される用語「化学療法剤」は、癌の治療において有用な化合物を指す。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボクオン、メツレドパ(meturedopa)、およびウレドパ(uredopa);エチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamine)、例として、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロメラミン(trimethylomelamine);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(例として、合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、および9-アミノカンプトテシン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189およびCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムヌスチン(ranimnustine);抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマIIおよびカリケアマイシンオメガII(例えば、Nicolaou et al.,Angew.Chem.Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)参照);CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤;ジネマイシン、例として、ジネマイシンA;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(例として、ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHC1リポソーム注射剤(DOXIL(登録商標)、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、peg化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、およびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフル(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、および5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えば、メイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミンエンジニアリングナノ粒子配合物(ABRAXANE(商標))、およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル(chloranbucil);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標))、およびカルボプラチン;チューブリン重合の微小管形成を妨害するビンカ、例として、ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))、およびビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMF(登録商標));レチノイド、例えば、レチノイン酸、例として、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナリング経路における遺伝子、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、および上皮成長因子受容体(EGF-R)などの発現を阻害するもの;ワクチン、例えば、THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;チピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えば、オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピキサントロン;EGFR阻害剤(以下の定義参照);チロシンキナーゼ阻害剤(以下の定義参照);セリン-トレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ロナファルニブ(SCH6636、SARASAR(商標));ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体;ならびに上記の2つ以上の組合せ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法の省略形であるCHOP;および5-FUおよびロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を用いる治療レジメンの省略形であるFOLFOXなどが挙げられる。
【0038】
本明細書において定義される化学療法剤としては、癌の成長を促進し得るホルモンの効果を調節し、低減させ、遮断し、または阻害するように作用する「抗ホルモン剤」または「内分泌治療薬」が挙げられる。これらは、ホルモンそれ自体であり得、例として、限定されるものではないが、混合アゴニスト/アンタゴニストプロファイルを有する抗エストロゲン剤、例として、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標))、4-ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(FARESTON(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェン、および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えば、SERM3;アゴニスト特性を有さない純抗エストロゲン剤、例えば、フルベストラント(FASLODEX(登録商標))、およびEM800(このような薬剤は、エストロゲン受容体(ER)二量体化を遮断し、DNA結合を阻害し、ERターンオーバーを増加させ、および/またはERレベルを抑制し得る);アロマターゼ阻害剤、例として、ステロイドアロマターゼ阻害剤、例えば、ホルメスタンおよびエキセメスタン(AROMASIN(登録商標))、および非ステロイドアロマターゼ阻害剤、例えば、アナストラゾール(anastrazole)(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))およびアミノグルテチミド、および他のアロマターゼ阻害剤、例として、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、および4(5)-イミダゾール;黄体形成ホルモン放出モルモンアゴニスト、例として、ロイプロリド(LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、およびトリプテレリン;性ステロイド、例として、プロゲスチン、例えば、酢酸メゲストロールおよび酢酸メドロキシプロゲステロン、エストロゲン、例えば、ジエチルスチルベストロールおよびプレマリン、およびアンドロゲン/レチノイド、例えば、フルオキシメステロン、全てのトランスレチノイン酸およびフェンレチニド;オナプリストン;抗プロゲステロン剤;エストロゲン受容体下方調節剤(ERD);抗エストロゲン剤、例えば、フルタミド、ニルタミドおよびビカルタミド;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体;ならびに上記の2つ以上の組合せが挙げられる。
【0039】
本明細書において使用される用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の資源または種に由来する一方、重鎖および/または軽鎖の残部が異なる資源または種に由来する抗体を指す。
【0040】
本明細書において使用される用語、抗体の「クラス」は、その重鎖により保有される定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。5つの主要な抗体のクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分類することができる。異なる免疫グロブリンのクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0041】
本明細書において使用される用語「条件的に活性な抗体」および「条件的に活性な抗体断片」は、腫瘍微小環境中の条件の値において、非腫瘍微小環境中の同一条件の異なる値と比較して活性である抗体または抗体断片を指す。非腫瘍微小環境中の条件と比較する場合、腫瘍微小環境中の条件としては、より低いpH、より高い濃度の乳酸塩および/またはピルビン酸塩、低酸素、より低い濃度のグルコース、ならびにわずかに高い温度を挙げることができる。例えば、一実施形態において、条件的に活性な抗体または抗体断片は、正常な体温において実質的に不活性であり得るが、腫瘍微小環境中に見出すことができるより高温において活性であり得る。さらに別の実施形態において、条件的に活性な抗体または抗体断片は、腫瘍微小環境中で存在し得る低含酸素環境よりも正常な含酸素血液中で低活性であり得る。当業者に公知の腫瘍微小環境中の他の条件が存在し、それらは抗Axl抗体または抗体断片がその条件の異なる値において異なる活性を有することを誘発し得る本発明における条件としての使用に選択することもできる。
【0042】
本明細書において使用される用語「構成的」は、例えば、Axl活性に適用される場合、リガンドの存在にも他の活性化分子の存在にも依存的でない受容体キナーゼの連続的なシグナリング活性を指す。受容体キナーゼの性質に応じて、活性の全ては構成的であり得、または受容体の活性は、他の分子(例えば、リガンド)の結合によりさらに活性化され得る。受容体キナーゼの活性化をもたらす細胞イベントは、当業者の間で周知である。例えば、活性化としては、より高次の受容体複合体へのオリゴマー化、例えば、二量体化、三量体化などを挙げることができる。複合体は、単一種のタンパク質、すなわち、ホモ複合体を含み得る。あるいは、複合体は、少なくとも2つの異なるタンパク質種、すなわち、ヘテロ複合体を含み得る。複合体形成は、例えば、細胞の表面上の受容体の正常または突然変異形態の過剰発現により引き起こされ得る。複合体形成は、受容体中の1つ以上の特異的突然変異によっても引き起こされ得る。
【0043】
本明細書において使用される用語「細胞増殖抑制剤」は、インビトロまたはインビボのいずれかにおける細胞の成長を停止させる化合物または組成物を指す。したがって、細胞増殖抑制剤は、S期における細胞の割合を顕著に低減させるものであり得る。細胞増殖抑制剤のさらなる例としては、G0/G1停止またはM期停止を誘導することにより細胞周期進行を遮断する薬剤が挙げられる。ヒト化抗Her2抗体トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))は、G0/G1停止を誘導する細胞増殖抑制剤の一例である。古典的M期遮断剤としては、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、およびトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンが挙げられる。G1を停止させるある薬剤、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、およびara-CはS期停止にも波及する。さらなる情報は、Mendelsohn and Israel,eds.,The Molecular Basis of Cancer,Chapter 1、表題“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”、Murakami et al.(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)、例えば、13頁に見出すことができる。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、両方ともイチイ由来する抗癌薬である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の集合を促進し、脱重合を妨害することにより微小管を安定させ、細胞の有糸分裂の阻害をもたらす。
【0044】
本明細書において使用される用語「細胞毒性剤」は、細胞機能を阻害もしくは妨害し、および/または細胞死もしくは破壊を引き起こす、物質を指す。細胞毒性剤としては、限定されるものではないが、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他のインターカレート剤);成長阻害剤;酵素およびその断片、例えば、核酸分解酵素;抗生物質;毒素、例えば、細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらの断片および/またはバリアントを含む);ならびに以下に開示される種々の抗腫瘍または抗癌剤が挙げられる。
【0045】
本明細書において使用される用語「ダイアボディ」は、断片が同一ポリペプチド鎖中の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結している重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む2つの抗原結合部位を有する小分子抗体断片を指す。同一鎖上の2つのドメイン間の対合を許容し得ないほど短鎖のリンカーを使用することにより、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと強制的に対合させ、それが2つの抗原結合部位を作出する。
【0046】
本明細書において使用される用語「検出可能に標識する」は、物理的または化学的手段による直接または間接的のいずれかの検出または計測が試料中のCTCの存在を示す任意の物質を指す。有用な検出可能標識の代表的な例としては、限定されるものではないが、以下のもの:光吸収、蛍光、反射、光散乱、燐光、または発光特性に基づき直接または間接的に検出可能な分子またはイオン;放射性により検出可能な分子またはイオン;核磁気共鳴または常磁性により検出可能な分子またはイオンが挙げられる。光吸収または蛍光に基づき間接的に検出可能な分子の群には、例えば、非光吸収から光吸収分子への、または非蛍光から蛍光分子への適切な基質の変換を引き起こす種々の酵素が含まれる。
【0047】
本明細書において使用される用語「診断」は、疾患または障害に対する対象の感受性の測定、対象が疾患または障害を現在罹患しているか否かに関する決定、疾患または障害を罹患している対象の予後診断(例えば、前転移または転移癌性状態、癌の病期、または治療法に対する癌の応答性の同定)、および治療方針(例えば、治療法の効果または効力に関する情報を提供するための対象病態のモニタリング)を指す。一部の実施形態において、本発明の診断方法は、早期癌の検出において特に有用である。
【0048】
本明細書において使用される用語「診断剤」は、直接または間接的に検出することができ、診断目的のために使用される分子を指す。診断剤は、対象または試料に投与することができる。診断剤は、それ自体で提供することができ、またはビヒクル、例えば、条件的に活性な抗体にコンジュゲートさせることができる。
【0049】
本明細書において使用される用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因し、抗体アイソタイプにより変動する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞毒性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0050】
本明細書において使用される用語、薬剤、例えば、医薬配合物の「有効量」は、投与量において、および必要な期間にわたり、所望の治療または予防結果を達成するために有効な量を指す。
【0051】
本明細書において使用される用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から重鎖のカルボキシル末端へと伸長する。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書において特に規定されない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991に記載のとおりEUインデックスとも呼ばれるEU番号付け系に従う。
【0052】
本明細書において使用される用語「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVRまたは重鎖中のH1~3および軽鎖中のL1~3)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがって、HVRおよびFR配列は、一般に、VH(またはVL)中の以下の配列:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4に出現する。
【0053】
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」、または「完全抗体」は、抗原結合可変領域(VHまたはVL)ならびに軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメインCH1、CH2およびCH3を含む抗体を指す。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、全長抗体は、異なる「クラス」に割り当てることができる。全長抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、それらのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分類することができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニットおよび三次元立体配置は周知である。
【0054】
本明細書において使用される用語「宿主細胞」、「宿主細胞系」、および「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞としては、「形質転換体」および「形質転換細胞」が挙げられ、それらとしては一次形質転換細胞および継代数に関係なくそれに由来する子孫が挙げられる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一でなくてよく、突然変異を含有し得る。元の形質転換細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同一の機能または生物学的活性を有する突然変異体子孫が、本明細書に含まれる。
【0055】
本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生される抗体、またはヒト抗体のレパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト資源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0056】
本明細書において使用される用語「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において、最も一般に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからのものである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda Md.(1991),vols.1-3におけるようなサブグループである。一実施形態において、VLについてのサブグループは、Kabat et al.、前掲におけるようなサブグループカッパIである。一実施形態において、VHについてのサブグループは、Kabat et al.、前掲におけるようなサブグループIIIである。
【0057】
本明細書において使用される用語「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、そのドメイン中ではHVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0058】
本明細書において使用される用語「超可変領域」または「HVR」は、配列が超可変的であり、および/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの領域のそれぞれを指す。一般に、天然四鎖抗体は、6つのHVR;VH中の3つ(H1、H2、H3)、およびVL中の3つ(L1、L2、L3)を含む。HVRは一般に、超可変ループからの、および/または「相補性決定領域」(CDR)からのアミノ酸残基を含み、後者は配列変動性が最も高く、および/または抗原認識に関与する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)において生じる(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.,vol.196,pp.901-917 1987)。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35B、H2の50~65、およびH3の95~102において生じる(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.1991)。VH中のCDR1を除き、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRは、抗原と接触する残基である「特異性決定残基」、または「SDR」も含む。SDRは、短縮型CDR、またはa-CDRと呼ばれるCDRの領域内に含有される。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2、およびa-CDR-H3)は、L1のアミノ酸残基31~34、L2の50~55、L3の89~96、H1の31~35B、H2の50~58、およびH3の95~102において生じる(Almagro and Fransson,Front.Biosci.,vol.13,pp.1619-1633,2008参照)。特に示されない限り、可変ドメイン中のHVR残基および他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書においてKabat et al.、前掲に従って番号付けされる。
【0059】
本明細書において使用される用語「免疫コンジュゲート」は、(1つ以上の)異種分子、例として、限定されるものではないが、細胞毒性剤にコンジュゲートしている抗体である。
【0060】
本明細書において使用される用語「個体」または「対象」は、哺乳動物を指す。哺乳動物としては、限定されるものではないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられる。ある実施形態において、個体または対象は、ヒトである。
【0061】
本明細書において使用される用語「細胞成長または増殖を阻害する」は、細胞成長または増殖を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%だけ減少させることを意味し、細胞死の誘導も含む。
【0062】
本明細書において使用される用語「単離」抗体は、その天然環境の構成成分から分離された抗体である。一部の実施形態において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)により測定して95%または99%超の純度まで精製される。抗体純度の評価方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B,vol.848,pp.79-87,2007参照。
【0063】
本明細書において使用される用語「単離」核酸は、その天然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離核酸は、通常核酸分子を含有する細胞中に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子は、染色体外に、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0064】
本明細書において使用される用語「抗Axl抗体をコードする単離核酸」は、抗体重鎖および軽鎖(またはそれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別個のベクター中のそのような核酸分子、および宿主細胞中の1つ以上の位置に存在するそのような核酸分子を含む。
【0065】
本明細書において使用される用語「リガンド非依存的」は、例えば、受容体シグナリング活性に適用される場合、リガンドの存在に依存的でないシグナリング活性を指す。リガンド非依存的キナーゼ活性を有する受容体は、必ずしも、キナーゼ活性の追加の活性化を産生するためのその受容体へのリガンドの結合を除外しない。
【0066】
本明細書において使用される用語「転移」は、癌細胞が原発腫瘍から分散し、リンパおよび/または血管中に浸透し、血流を介して循環し、体内の他箇所の正常組織中の遠位病巣中で成長する(転移)ことを支持する全てのAxl関与プロセスを指す。特に、これは、転移の基盤をなし、Axlの非触媒または触媒活性、好ましくは、例として、Axlリン酸化および/またはAxl媒介シグナル伝達により刺激または媒介される腫瘍細胞の細胞イベント、例えば、増殖、遊走、足場非依存性、アポトーシスの回避、または血管新生因子の分泌を指す。
【0067】
本明細書において使用される用語「微小環境」は、組織の他の領域または身体の領域と恒常的または一時的な物理的または化学的差異を有する組織または身体の任意の一部または領域を意味する。腫瘍について、本明細書において使用される用語「腫瘍微小環境」は、腫瘍内の非細胞区域および腫瘍組織のすぐ外側の区域であるが、癌細胞自体の細胞内コンパートメントに関連しない、腫瘍が存在する環境を指す。腫瘍および腫瘍微小環境は密接に関連しており、常に相互作用する。腫瘍はその微小環境を変化させ得、微小環境は、いかに腫瘍が成長し、拡散するかに影響を及ぼし得る。典型的には、腫瘍微小環境は、5.8~7.0の範囲、より一般には、6.2~6.8の範囲、最も一般には、6.4~6.8の範囲の低pHを有する。他方で、正常な生理学的pHは、典型的には7.2~7.8の範囲である。腫瘍微小環境は、血漿と比較して低濃度のグルコースおよび他の栄養素を有するが、高濃度の乳酸を有することも公知である。さらに、腫瘍微小環境は、正常の生理学的温度よりも0.3~1℃高い温度を有し得る。腫瘍微小環境は、Gillies et al.,“MRI of the Tumor Microenvironment,”Journal of Magnetic Resonance Imaging,vol.16,pp.430-450,2002に考察されている。用語「非腫瘍微小環境」は、腫瘍以外の部位における微小環境を指す。
【0068】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団をなす個々の抗体が同一であり、および/または同一のエピトープに結合するが、例えば、天然存在の突然変異を含有し、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる可能性のあるバリアント抗体を除き、このようなバリアントは一般に少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を要求するものとして解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用することができるモノクローナル抗体は、種々の技術、例として、限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法により作製することができ、モノクローナル抗体を作製するこのような方法および他の例示的な方法は本明細書に記載されている。
【0069】
本明細書において使用される用語「裸抗体」は、異種部分(例えば、細胞毒性部分)にも放射性標識にもコンジュゲートしていない抗体を指す。裸抗体は、医薬配合物中に存在し得る。
【0070】
本明細書において使用される用語「天然抗体」は、変動する構造を有する天然存在の免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合している2本の同一軽鎖および2本の同一重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端にかけ、それぞれの重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)と、それに続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端にかけ、それぞれの軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)と、それに続く定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づきカッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの一方に割り当てることができる。
【0071】
本明細書において使用される用語「添付文書」は、治療用製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すために使用され、適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌および/またはそのような治療用製品の使用に関する注意事項についての情報を含有する。
【0072】
本明細書において使用される用語、参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列をアラインし、最大のパーセント配列同一性を達成するために必要であればギャップを導入した後の、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性決定の目的のためのアラインメントは、当分野の技能の範囲内である種々の手法で、例えば、公的に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、配列をアラインするための適切なパラメータ、例として、比較される配列の全長にわたり最大のアラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のため、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.により著作され、ソースコードは、U.S.Copyright Office,Washington D.C.,20559に利用者向け文書とともに申請されており、米国著作権登録番号TXU510087のもと登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Calif.から公的に利用可能であり、またはソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、例として、デジタルUNIX(登録商標)V4.0D上での使用のためにコンパイルすべきである。全ての配列比較パラメータはALIGN-2プログラムにより設定され、変動しない。
【0073】
アミノ酸配列比較にALIGN-2を用いる状況において、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対する%アミノ酸配列同一性(これは、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有し、または含む所与のアミノ酸配列Aと代替表現することもできる)は、以下のとおり算出される:
100*(X/Y)
(式中、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によりAおよびBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一マッチとしてスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性と等しくないことが認識される。特に具体的に記述されない限り、本明細書において使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して直前の段落に記載のとおりに得られる。
【0074】
本明細書において使用される用語「医薬配合物」は、その中に含有される活性成分の生物学的活性の有効性を許容するような形態であり、配合物が投与される対象に許容不可能な毒性を示す追加の構成成分を含有しない製剤を指す。
【0075】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容可能な担体」は、対象に非毒性である、活性成分以外の医薬配合物中の成分を指す。薬学的に許容可能な担体としては、限定されるものではないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられる。
【0076】
本明細書において使用される用語「精製」および「単離」は、示される分子が同一タイプの他の生物巨大分子の実質的不存在下で存在する本発明による抗体、またはヌクレオチド配列を指す。本明細書において使用される用語「精製」は、好ましくは、少なくとも75重量%、より好ましくは、少なくとも85重量%、いっそうより好ましくは、少なくとも95重量%、最も好ましくは、少なくとも98重量%の同一タイプの生物巨大分子が存在することを意味する。特定のポリペプチドをコードする「単離」核酸分子は、ポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に有さず、核酸分子を指し;しかしながら、分子は、組成物の基本的特徴に悪影響を及ぼさない一部の追加の塩基または部分を含み得る。
【0077】
本明細書において使用される用語「組換え抗体」は、抗体をコードする核酸を含む組換え宿主細胞により発現される抗体(例えば、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体またはそれらの抗原結合性断片)を指す。組換え抗体を産生するための「宿主細胞」の例としては:(1)哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS、骨髄腫細胞(例として、Y0およびNS0細胞)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、HelaおよびVero細胞;(2)昆虫細胞、例えばsf9、sf21およびTn5;(3)植物細胞、例えば、タバコ属(Nicotiana)に属する植物(例えば、タバコ(Nicotiana tabacum));(4)酵母細胞、例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae))またはアスペルギルス属(Aspergillus)(例えば、クロコウジカビ(Aspergillus niger))に属するもの;(5)細菌細胞、例えば、大腸菌(Escherichia.coli)細胞または枯草菌(Bacillus subtilis)細胞などが挙げられる。
【0078】
用語「治療有効量」の本発明の抗体または抗体断片は、任意の医学的治療に適用可能な妥当な利益/リスク比において疾患または疾病を治療するために十分な量の抗体または抗体断片を意味する。しかしながら、本発明の抗体または抗体断片および組成物の総1日使用量は、正当な医学的判断の範囲内で担当医により決定されることが理解される。任意の特定の患者についての具体的な治療有効用量レベルは、種々の因子、例として、治療される障害および障害の重症度;用いられる具体的な抗体または抗体断片の活性;用いられる具体的な組成物、患者の年齢、体重、全身健康状態、性別および食事;用いられる具体的な抗体または抗体断片の投与の時間、投与経路、および排泄速度;治療の持続時間;用いられる具体的な抗体との組合せまたはそれと同時で使用される薬物;ならびに医学分野において周知の同様の因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために要求されるよりも低いレベルにおいて化合物の用量を開始すること、および所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは当分野の技能の範囲内で周知である。
【0079】
本明細書において使用される用語「単鎖Fv」(「scFv」)は、通常、ペプチドコードリンカーにより結合しているVHおよびVLコード遺伝子を含む遺伝子融合物から発現される共有結合しているVH::VLヘテロ二量体である。「dsFv」は、ジスルフィド結合により安定化されるVH::VLヘテロ二量体である。二価および多価抗体断片は、一価scFvの会合により自然に形成し得、またはペプチドリンカーにより一価scFvをカップリングさせることにより生成することができる(例えば、二価sc(Fv)2)。
【0080】
本明細書において使用される用語「治療」、「治療する」または「治療すること」などは、治療される個体の自然経過を変更する試行の臨床的介入を指し、予防のため、または臨床的病変の経過において実施することができる。治療の望ましい効果としては、限定されるものではないが、疾患の発症または再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な任意の病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、疾患状態の改善または軽減、および寛解または予後の改善が挙げられる。一部の実施形態において、本発明の抗体または抗体断片は、疾患の発生を遅延させ、または疾患の進行を減速させるために使用される。
【0081】
本明細書において使用される用語「腫瘍」は、悪性であるか良性であるかに関わらない、全ての新生物性の細胞成長および増殖、ならびに全ての前癌性および癌性の細胞および組織を指す。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」および「腫瘍」は、本明細書において相互に排他的に言及されるわけではない。
【0082】
本明細書において使用される用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は一般に、それぞれのドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む類似の構造を有する(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)参照)。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体または抗体断片は、その抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使用して単離してそれぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.,vol.150,pp.880-887,1993;Clarkson et al.,Nature,vol.352,pp.624-628,1991参照。
【0083】
本明細書において使用される用語「ベクター」は、結合している別の核酸を伝播し得る核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および導入された宿主細胞のゲノム中に取り込まれるベクターを含む。あるベクターは、それらが作動可能に結合している核酸の発現を指向し得る。このようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
【0084】
例示を目的として、種々の例示的実施形態を参照して本発明の原理を説明する。本発明のある実施形態が本明細書において具体的に説明されるが、当業者は、同一原理が他の系および方法において同様に適用可能であり、用いることができることを容易に認識する。本発明の開示される実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、示される任意の特定の実施形態の詳細にその適用が限定されないことを理解すべきである。さらに、本明細書において使用される用語は説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。さらに、ある方法は本明細書においてある順序で提示されるステップを参照して記載されるが、多くの場合、当業者が理解し得るとおり、これらのステップは任意の順序で実施することができ;したがって、新規方法は、本明細書に開示の特定のステップの順に限定されるものではない。
【0085】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明示しない限り、複数形の参照物を含むことに留意しなければならない。さらに、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。用語「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を有する」および「~から構築される」も、互換的に使用することができる。
【0086】
特に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量、特性、例えば分子量、パーセント、比、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合において、用語「約」により、その用語「約」の有無にかかわらず修飾されるものとして理解すべきである。したがって、逆の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載の数値パラメータは近似値であり、その近似値は、本開示により得ることができる求められる所望の特性に応じて変動し得る。少なくとも、および特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する企図としてではなく、それぞれの数値パラメータは、報告された有効数字に照らし、通常の四捨五入法を適用することにより少なくとも解釈すべきである。本開示の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、具体例において記載されている数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、それぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必然的に生じる、ある誤差を本質的に含有する。
【0087】
本明細書に開示のそれぞれの構成成分、化合物、置換基、またはパラメータは、単独で、または本明細書に開示のそれぞれのおよび他のあらゆる構成成分、化合物、置換基、もしくはパラメータの1つ以上との組合せでの使用について開示されているとして解釈すべきであることを理解すべきである。
【0088】
本明細書に開示のそれぞれの構成成分、化合物、置換基、またはパラメータについてのそれぞれの量/値または量/値の範囲は、本明細書に開示の他のあらゆる構成成分、化合物、置換基、またはパラメータについて開示されているそれぞれの量/値、または量/値の範囲との組合せでも開示されているとして解釈すべきであること、および、したがって本明細書に開示の2つ以上の構成成分、化合物、置換基、またはパラメータの量/値、または量/値の範囲の任意の組合せも、本詳細な説明の目的のために互いとの組合せでも開示されていることも理解すべきである。
【0089】
本明細書に開示のそれぞれの範囲のそれぞれの下限値は、同一の構成成分、化合物、置換基、またはパラメータについて本明細書に開示のそれぞれの範囲のそれぞれの上限値との組合せで開示されているものとして解釈すべきであることがさらに理解される。したがって、2つの範囲の開示は、それぞれの範囲のそれぞれの下限値を、それぞれの範囲のそれぞれの上限値と組み合わせることにより導かれる4つの範囲の開示として解釈すべきである。3つの範囲の開示は、それぞれの範囲のそれぞれの下限値を、それぞれの範囲のそれぞれの上限値と組み合わせることにより導かれる9つの範囲の開示などとして解釈すべきである。さらに、本明細書または実施例に開示の構成成分、化合物、置換基、またはパラメータの具体的な量/値は、範囲の下限値または上限値のいずれかの開示として解釈するべきであり、したがって、本出願の他箇所に開示の同一の構成成分、化合物、置換基、またはパラメータについての範囲の他の任意の下限値もしくは上限値または具体的な量/値と組み合わせてその構成成分、化合物、置換基、またはパラメータの範囲を形成し得る。
【0090】
A.抗Axl抗体または抗体断片の領域
一態様において、本発明は、ヒトAxlタンパク質に特異的に結合する単離重鎖可変領域ポリペプチドを提供する。重鎖可変領域ポリペプチドは、3つの相補性決定領域H1、H2、およびH3配列を含み、
H1配列は、X1GX2X3MX4(配列番号1)であり;
H2配列は、LIKX5SNGGTX6YNQKFKG(配列番号2)であり;
H3配列は、GX7X8X9X10X11X12X13X14DYX15X16(配列番号3)であり、
X1は、TまたはAまたはWであり、
X2は、HまたはAであり、
X3は、TまたはIであり、
X4は、NまたはIであり、
X5は、PまたはNであり、
X6は、SまたはIまたはTであり、
X7は、HまたはDまたはEまたはPまたはRまたはWであり、
X8は、YまたはNであり、
X9は、EまたはAまたはDまたはFまたはGまたはHまたはIまたはLまたはMまたはNまたはRまたはVまたはYであり、
X10は、SまたはDまたはMまたはNまたはQであり、
X11は、YまたはCまたはEまたはPであり、
X12は、FまたはEまたはNまたはSまたはTまたはVであり、
X13は、AまたはDまたはGまたはLまたはYであり、
X14は、MまたはEまたはFであり、
X15は、WまたはAまたはDまたはHまたはLまたはNまたはPまたはRまたはTであり、
X16は、GまたはHである。
【0091】
重鎖可変領域のアラインメントを
図1Aに示し、相補性決定領域H1、H2、およびH3に枠を付す。
【0092】
別の態様において、本発明は、ヒトAxlタンパク質に特異的に結合する単離軽鎖可変領域ポリペプチドを提供する。軽鎖可変領域ポリペプチドは、3つの相補性決定領域L1、L2、およびL3配列を含み、
L1配列は、KASQDX17X18SX19VX20(配列番号4)であり;
L2配列は、X21X22X23TRX24T(配列番号5)であり;
L3配列は、QEX25X26SX27X28X29X30(配列番号6)であり、
X17は、VまたはDまたはGまたはNまたはWであり、
X18は、SまたはVであり、
X19は、AまたはLまたはMであり、
X20は、AまたはDまたはNまたはQであり、
X21は、WまたはFであり、
X22は、AまたはIまたはNまたはPまたはQであり、
X23は、SまたはDであり、
X24は、HまたはDであり、
X25は、HまたはCまたはFまたはIまたはLまたはQまたはSまたはTまたはVまたはYであり、
X26は、FまたはCまたはDまたはEまたはGまたはNまたはSであり、
X27は、TまたはCまたはPであり、
X28は、PまたはAまたはCまたはDまたはEまたはHまたはKまたはSまたはTまたはVまたはWであり、
X29は、LまたはGまたはRであり、
X30は、TまたはIまたはRである。
【0093】
軽鎖可変領域のアラインメントを
図1Bに示し、相補性決定領域L1、L2、およびL3に枠を付す。
【0094】
本発明は、これらの単離重鎖可変領域ポリペプチドおよび単離軽鎖可変領域ポリペプチドを、親抗体から、米国特許第8,709,755号明細書に開示の方法を使用して同定した。親抗体(063-hum10F10)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域も
図1A~1Bにアラインして単離重鎖可変領域ポリペプチドおよび単離軽鎖可変領域ポリペプチド中の突然変異を示す。
【0095】
テンプレート抗体中のそれぞれの位置を1つずつランダム化する包括的位置進化(Comprehensive Positional Evolution)(CPE)を使用して野生型抗体をコードするDNAを進化させて突然変異抗体ライブラリーを生成した。ライブラリー中のそれぞれの突然変異抗体は、1つの単一点突然変異のみを有する。ライブラリー中の突然変異抗体は、ELISAによりpH7.4と比べたpH6.0におけるAxlに対する選択的結合親和性についての同時にスクリーニングすることにより生成した。2つの突然変異抗体希釈物:1:3および1:9希釈物を使用した。1:3または1:9希釈物のいずれかのもとでpH6.0とpH7.4とにおける結合親和性の少なくとも1.5の比を有する突然変異抗体を、重鎖および軽鎖可変領域のそれぞれにおいて示される単一点突然変異を有する条件的に活性な抗体として選択する(表1および2)。
【0096】
【0097】
【0098】
別の態様において、本発明は、
図1Aに表される重鎖可変領域および
図1Bに提示される軽鎖可変領域を同定した。一部の重鎖可変領域は、配列番号11~13を有するDNA配列によりコードされる。
図1Aの重鎖可変領域は、配列番号14~67に記載のアミノ酸配列を有する。一部の軽鎖可変領域は、配列番号7~10を有するDNA配列によりコードされる。
図1Bの軽鎖可変領域は、配列番号68~116に記載のアミノ酸配列を有する。これらの重鎖および軽鎖可変領域は、Axlに特異的に結合し得る。これらの重鎖および軽鎖可変領域の1つを含む抗体は、非腫瘍微小環境中のpHよりも腫瘍微小環境中に見出されるpHにおいてAxlに対して高い結合親和性を有することが見出された。
【0099】
本発明は、Axlに特異的に結合し得る、
図1A~1Bに提示され、配列番号9~13を有するDNA配列によりコードされる重鎖および軽鎖可変領域のバリアントも含む。これらのバリアントを誘導するため、重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)(H1~H3)および軽鎖可変領域のCDR(L1~L3)がインタクトのままであるべきことが決定された。
【0100】
これらのバリアントの誘導において、本明細書に記載の方法がガイドとなる。これらの重鎖および軽鎖可変領域のバリアントは、重鎖および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列中に適切な改変を導入することにより、またはペプチド合成により調製することができる。このような改変としては、例えば、抗体または抗体断片のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/またはそれらの残基への挿入、および/またはそれらの残基の置換が挙げられる。欠失、挿入、および置換の任意の組合せを作製して最終構築物に到達し得るが、ただし、最終構築物は、所望の特性の少なくとも1つ、例えば、抗原結合を保有するものとする。
【0101】
置換、挿入、および欠失バリアント
ある実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体または抗体断片バリアントが提供される。置換突然変異誘発のための目的部位としては、CDRおよびフレームワーク領域(FR)が挙げられる。保存的置換を「保存的置換」という見出しで表3に示す。より実質的な変化を、「例示的な置換」という見出しで表3に提供し、アミノ酸側鎖のクラスに関してさらに以下に記載する。アミノ酸置換を目的の抗体または抗体断片に導入することができ、その生成物を、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、または免疫原性の減少についてスクリーニングすることができる。
【0102】
【0103】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0104】
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを別のクラスのものに交換することを伴う。
【0105】
1つのタイプの置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を含む。一般に、さらなる試験のために選択されて得られるバリアントは、親抗体に対してある生物学的特性の改変(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の減少)を有し、および/または親抗体のある生物学的特性を実質的に保持する。例示的な置換バリアントは親和性成熟抗体であり、例えば、ファージディスプレイベースの親和性成熟技術、例えば、本明細書に記載のものを使用して簡便に生成することができる。簡潔に述べると、1つ以上のCDR残基を突然変異させ、バリアント抗体をファージ上でディスプレイさせ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0106】
変更(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するためにCDR中で作製することができる。このような変更は、CDRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で突然変異を受けるコドンによりコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.,vol.207,pp.179-196,2008参照)、および/またはSDR(a-CDR)中で作製することができ、得られるバリアントVHまたはVLを結合親和性について試験する。二次ライブラリーの構築および二次ライブラリーからの再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology,vol.178,pp.1-37,2001)に記載されている。親和性成熟の一部の実施形態において、種々の方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向変異誘発)のいずれかにより、成熟について選択された可変遺伝子中に多様性を導入する。次いで、二次ライブラリーを作出する。次いで、ライブラリーをスクリーニングして所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを同定する。多様性を導入する別の方法はCDR指向アプローチを含み、そのアプローチでは、いくつかのCDR残基(例えば、1回に4~6残基)をランダム化する。例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを使用して抗原結合に関与するCDR残基を具体的に同定することができる。特にCDR-H3およびCDR-L3を標的化することが多い。
【0107】
ある実施形態において、置換、挿入、または欠失は、このような変更が抗原に結合する抗体または抗体断片の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じてよい。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的変更(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)をCDR中で作製することができる。このような変更は、CDRの「ホットスポット」またはSDRの外側であってよい。上記提供されるバリアントVHおよびVL配列のある実施形態において、それぞれのCDRは不変であり、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
【0108】
突然変異誘発のために標的化することができる抗体の残基または領域を同定する有用な方法は、Cunningham and Wells,Science,vol.244,pp.1081-1085,1989により記載されるとおり「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法において、標的残基の残基または群(例えば、荷電残基、例えば、arg、asp、his、lys、およびglu)を同定し、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により置き換えて抗体または抗体断片と抗原との相互作用が影響されるか否かを決定する。さらなる置換を、最初の置換に対して機能的感受性を実証するアミノ酸位置において導入することができる。あるいは、またはさらに、抗体または抗体断片と抗原との間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基および隣接残基を置換の候補として標的化し、または排除することができる。バリアントをスクリーニングしてそれらが所望の特性を含有するか否かを決定することができる。
【0109】
アミノ酸配列挿入としては、1残基~100以上の残基を含有するポリペプチドの長さの範囲であるアミノおよび/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、抗体のNまたはC末端と酵素との融合(例えば、ADEPTのための)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドとの融合が挙げられる。
【0110】
本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列改変が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。非ヒト動物に由来する抗体のVHおよびVL中のCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFR中に簡易にグラフト化することによりヒト化抗体を産生する場合、抗体結合活性は、非ヒト動物に由来する元の抗体のものと比較して低減することが公知である。非ヒト抗体のVHおよびVLのいくつかのアミノ酸残基は、CDR中だけでなく、FR中のものも抗体結合活性に直接または間接的に関連することが考慮される。したがって、ヒト抗体のVHおよびVLのFRに由来する異なるアミノ酸残基によるこれらのアミノ酸残基の置換は、結合活性を低減させる。この問題を解消するため、ヒトCDRがグラフト化される抗体において、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列のうち、抗体への結合に直接関連し、またはCDRのアミノ酸残基と相互作用し、または抗体の三次元構造を維持し、抗原への結合に直接関連するアミノ酸残基を同定することを試行しなければならない。低減した抗原結合活性は、同定されたアミノ酸を非ヒト動物に由来する元の抗体のアミノ酸残基により置き換えることにより増加させることができる。
【0111】
改変および変化は、本発明の抗体の構造中で、およびそれらをコードするDNA配列中で作製することができ、所望の特徴を有する抗体をコードする機能的分子を依然として得る。
【0112】
アミノ酸配列中の変化の作製において、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することができる。タンパク質に対する相互作用的な生物学的機能の付与におけるハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、一般に当分野において理解されている。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特徴が得られるタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそれがタンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定めることが受け入れられる。それぞれのアミノ酸には、それらの疎水性および電荷の特徴に基づきハイドロパシー指数が割り当てられており、それらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)である。
【0113】
本発明のさらなる目的は、本発明の抗体の機能保存的バリアントも包含する。
【0114】
「機能保存的バリアント」は、タンパク質または酵素中の所与のアミノ酸残基が、ポリペプチドの全体的な立体構造および機能を変更せずに変化したもの、例として、限定されるものではないが、類似の特性(例えば、極性、水素結合ポテンシャル、酸性、塩基性、疎水性、芳香族など)を有するアミノ酸によるアミノ酸の置き換えである。保存されることが示されるアミノ酸以外のアミノ酸は、タンパク質中で異なり得、その結果、類似機能の任意の2つのタンパク質間のパーセントタンパク質またはアミノ酸配列類似性が変動し得、例えば、アラインメントスキームに従って、例えば、類似性がMEGALIGNアルゴリズムに基づくCluster法により決定して70~99%であり得る。「機能保存的バリアント」は、BLASTまたはFASTAアルゴリズムにより決定して少なくとも60%、好ましくは、少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも85%、さらに好ましくは、少なくとも90%、いっそうより好ましくは、少なくとも95%のアミノ酸同一性を有し、比較される天然または親タンパク質と同一または実質的に類似の特性または機能を有するポリペプチドも含む。
【0115】
2つのアミノ酸配列は、より短い配列の全長と比べて80%超、好ましくは、85%超、好ましくは、90%超のアミノ酸が同一であり、または約90%超、好ましくは、95%超が類似(機能的に同一)である場合、「実質的に相同」または「実質的に類似」である。好ましくは、類似または相同配列は、例えば、GCG(Genetics Computer Group,Program Manual for the GCG Package,Version 7,Madison,Wis.)パイルアッププログラム、または配列比較アルゴリズム、例えば、BLAST、FASTAなどのいずれかを使用するアラインメントにより同定される。
【0116】
例えば、あるアミノ酸は、活性の認識可能な損失なしでタンパク質構造中で他のアミノ酸により置換することができる。タンパク質の相互作用キャパシティおよび性質がタンパク質の生物学的機能活性を定めるため、あるアミノ酸置換をタンパク質配列中で、および無論、そのDNAコード配列中で作製することができる一方、それにもかかわらず、同様の特性を有するタンパク質を得る。したがって、本発明の抗体もしくは抗体断片の配列、または前記抗体もしくは抗体断片をコードする対応するDNA配列中で種々の変化を、それらの生物学的活性の認識可能な損失なしで作製することができることが企図される。
【0117】
あるアミノ酸は、類似のハイドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸により置換することができ、類似の生物学的活性を有するタンパク質を依然としてもたらす、すなわち、生物学的機能等価タンパク質を依然として得ることが当分野において公知である。
【0118】
上記概略のとおり、したがって、アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。種々の上記の特徴を考慮する例示的な置換は当業者に周知であり、それとしては、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンが挙げられる。
【0119】
グリコシル化バリアント
ある実施形態において、本明細書において提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変更される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作出または除去されるようにアミノ酸配列を変更することにより簡便に達成することができる。
【0120】
抗体がFc領域を含む場合、それに付着している炭水化物を変更することができる。哺乳動物細胞により産生される天然抗体は、典型的には、一般にFc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合により付着している分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH,vol.15,pp.26-32,1997参照。オリゴ糖としては、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」におけるGlcNAcに付着しているフコースを挙げることができる。一部の実施形態において、本発明の抗体中のオリゴ糖の改変は、ある改善された特性を有する抗体バリアントを作出するために作製することができる。
【0121】
一実施形態において、Fc領域に(直接的または間接的に)付着しているフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、このような抗体中のフコース量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコース量は、例えば、国際公開第2008/077546号パンフレットに記載のとおりMALDI-TOF質量分析法により計測してAsn297に付着している全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造)の合計と比較してAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することにより決定される。Asn297は、Fc領域中の297位あたり(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指し;しかしながら、Asn297は、抗体中の軽微な配列変動に起因して297位の約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、294位~300位の間にも位置し得る。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号明細書(Presta,L.);米国特許出願公開第2004/0093621号明細書(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)参照。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関連する刊行物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号明細書;国際公開第2000/61739号パンフレット;国際公開第2001/29246号パンフレット;米国特許出願公開第2003/0115614号明細書;米国特許出願公開第2002/0164328号明細書;米国特許出願公開第2004/0093621号明細書;米国特許出願公開第2004/0132140号明細書;米国特許出願公開第2004/0110704号明細書;米国特許出願公開第2004/0110282号明細書;米国特許出願公開第2004/0109865号明細書;国際公開第2003/085119号パンフレット;国際公開第2003/084570号パンフレット;国際公開第2005/035586号パンフレット;国際公開第2005/035778号パンフレット;国際公開第2005/053742号パンフレット;国際公開第2002/031140号パンフレット;Okazaki et al.J.Mol.Biol.,vol.336,pp.1239-1249,2004;Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.,vol.87,pp.614-622,2004が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生し得る細胞系の例としては、タンパク質フコシル化を欠損するLec13CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.,vol.249,pp.533-545,1986;米国特許出願第2003/0157108A号明細書;および国際公開第2004/056312A1号パンフレット、特に実施例11)、ならびにノックアウト細胞系、例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.,vol.87,pp.614-622,2004;Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,vol.94,pp.680-688,2006;および国際公開第2003/085107号パンフレット参照)が挙げられる。
【0122】
例えば、抗体のFc領域に付着している二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている二分オリゴ糖を有する抗体バリアントがさらに提供される。このような抗体バリアントは、低減したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。このような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第2003/011878号パンフレット;米国特許第6,602,684号明細書;および米国特許出願公開第2005/0123546号明細書に記載されている。Fc領域に付着しているオリゴ糖中の少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。このような抗体バリアントは、改善したCDC機能を有し得る。このような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号パンフレット;国際公開第1998/58964号パンフレット;および国際公開第1999/22764号パンフレットに記載されている。
【0123】
Fc領域バリアント
ある実施形態において、1つ以上のアミノ酸改変を本明細書において提供される抗体のFc領域中に導入し、それによりFc領域バリアントを生成することができる。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置におけるアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4Fc領域)を含み得る。
【0124】
ある実施形態において、本発明は、全てではないが、一部のエフェクター機能を保有する抗体バリアントを企図し、これらは、インビボにおける抗体の半減期が重要である一方で、あるエフェクター機能(例えば、ADCC)が不要または有害である用途に関して望ましい候補となる。インビトロおよび/またはインビボの細胞毒性アッセイを実施してCDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能を保持することを確保することができる。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.,vol.9,pp.457-492,1991の464頁の表5にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号明細書(例えば、Hellstrom et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.83,pp.7059-7063,1986も参照)およびHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.82,pp.1499-1502,1985;米国特許第5,821,337号明細書(Bruggemann et al.,J.Exp.Med.,vol.166,pp.1351-1361,1987も参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,Calif.;およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,Wis.)参照。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性を、例えば、動物モデル、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.95,pp.652-656,1998に開示のものにおいてインビボで評価することができる。C1q結合アッセイを実施して、抗体がC1qに結合し得ず、したがってCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、国際公開第2006/029879号パンフレットおよび国際公開第2005/100402号パンフレットにおけるC1qおよびC3c結合ELISA参照。補体活性化を評価するため、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods,vol.202,pp.163-171,1996;Cragg,M.S.et al.,Blood,vol.101,pp.1045-1052,2003;およびCragg,M.S,and M.J.Glennie,Blood,vol.103,pp.2738-2743,2004参照)。FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期の決定も、当分野において公知の方法を使用して実施することができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.,vol.18,pp.1759-1769,2006参照)。
【0125】
減少したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327および329の1つ以上の置換を有するもの(米国特許第6,737,056号明細書)が挙げられる。このようなFc突然変異体としては、アミノ酸265、269、270、297および327位の2つ以上における置換を有するFc突然変異体、例として、残基265および297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc突然変異体(米国特許第7,332,581号明細書)が挙げられる。
【0126】
FcRに対する改善または縮小した結合を有するある抗体バリアントが記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号明細書、国際公開第2004/056312号パンフレット、およびShields et al.,J.Biol.Chem.,vol.9,pp.6591-6604,2001参照)。
【0127】
ある実施形態において、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、および/または334位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。
【0128】
一部の実施形態において、変更された(すなわち、改善され、または縮小した)C1q結合および/または補体依存性細胞毒性(CDC)をもたらす変更、例えば、米国特許第6,194,551号明細書、国際公開第99/51642号パンフレット、およびIdusogie et al.J.Immunol.,vol.164,pp.4178-4184,2000に記載のものが、Fc領域中で作製される。
【0129】
増加した半減期を有し、胎児への母体IgGの移動を担う(Guyer et al.,J.Immunol.,vol.117,pp.587-593,1976およびKim et al.,J.Immunol.,vol.24,p.249,1994)新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号明細書に記載されている。それらの抗体は、その中にFc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。このようなFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434の1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号明細書)を有するものが挙げられる。Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan & Winter,Nature,vol.322,pp.738-740,1988;米国特許第5,648,260号明細書;米国特許第5,624,821号明細書;および国際公開第94/29351号パンフレットも参照。
【0130】
システインエンジニアリング抗体バリアント
ある実施形態において、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基により置換されているシステインエンジニアリング抗体、例えば、「thioMAb」を作出することが望ましい場合がある。特定の実施形態において、置換残基は抗体のアクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインにより置換することにより、反応性チオール基は、それにより抗体のアクセス可能な部位に位置され、それを使用して抗体を他の部分、例えば、薬物部分またはリンカー-薬物部分とコンジュゲートさせて本明細書においてさらに記載されるとおり免疫コンジュゲートを作出することができる。ある実施形態において、以下の残基のいずれか1つ以上をシステインにより置換することができる:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け);および重鎖Fc領域の5400(EU番号付け)。システインエンジニアリング抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号明細書に記載のとおり生成することができる。
【0131】
抗体誘導体
ある実施形態において、本明細書において提供される抗体または抗体断片は、当分野において公知の容易に利用可能な追加の非タンパク質部分を含有するようにさらに改変することができる。抗体または抗体断片の誘導体化に好適な部分としては、限定されるものではないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して製造上の利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐でも非分岐でもよい。抗体または抗体断片に付着しているポリマーの数は変動し得、2つ以上のポリマーが付着している場合、それらは同一または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、検討事項、例として、限定されるものではないが、改善すべき抗体または抗体断片の特定の特性または機能、その誘導体が規定の条件下で治療法において使用されるか否かなどに基づき決定することができる。
【0132】
別の実施形態において、放射線への曝露により選択的に加熱することができる抗体または抗体断片および非タンパク質部分のコンジュゲートが提供される。一実施形態において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.102,pp.11600-11605,2005)。放射線は任意の波長のものであり得、それとしては、限定されるものではないが、通常の細胞を害することはないが、抗体-非タンパク質部分の近位の細胞が殺滅される温度まで非タンパク質部分を加熱する波長が挙げられる。
【0133】
別の態様において、本発明は、単離重鎖可変領域ポリペプチドまたは単離軽鎖可変領域ポリペプチドを含む抗Axl抗体または抗体断片を提供する。単離重鎖可変領域ポリペプチドは、それぞれ、配列番号1~3を有するH1、H2、およびH3領域を含む。単離軽鎖可変領域ポリペプチドは、それぞれ、配列番号4~6を有するL1、L2、およびL3領域を含む。
【0134】
本発明の抗Axl抗体または抗体断片は、腫瘍微小環境中の条件下で、非腫瘍微小環境中の条件下よりも高いAxlに対する結合親和性を有する。一実施形態において、腫瘍微小環境中の条件および非腫瘍微小環境中の条件は、両方のpHである。したがって、本発明の抗Axl抗体または抗体断片は、約5.~約6.8のpHにおいてAxlに選択的に結合し得るが、正常な生理学的環境中に見出される7.2~7.8のpHにおいてはより低いAxlに対する結合親和性を有する。実施例3~4に示されるとおり、抗Axl抗体または抗体断片は、pH6.0においてpH7.4よりも高い結合親和性を有する。
【0135】
ある実施形態において、本発明の抗Axl抗体または抗体断片は、約≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、または10-8M~10-13M、または10-9M~10-13M)の腫瘍微小環境中の条件下のAxlについての解離定数(Kd)を有する。一実施形態において、腫瘍微小環境中の条件の値におけるAxlについての抗体または抗体断片のKdと、非腫瘍微小環境中の同一条件の異なる値におけるKdとの比は、少なくとも約1.5:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約9:1、少なくとも約10:1、少なくとも約20:1、少なくとも約30:1、少なくとも約50:1、少なくとも約70:1、または少なくとも約100:1である。
【0136】
一実施形態において、Kdは、以下のアッセイを使用する目的抗体のFab型およびその抗原を用いて実施される放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって計測される。抗原についてのFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の滴定系列の存在下で最小濃度の(125I)標識抗原によりFabを平衡化し、次いで、抗Fab抗体コーティングプレートにより結合した抗原を捕捉することにより計測される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)参照)。アッセイ条件を確立するため、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中で5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)により一晩コーティングし、続いてPBS中の2%(w/v)のウシ血清アルブミンにより室温(約23℃)において2~5時間ブロッキングする。非吸着プレート(Nunc番号269620)中で、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、目的のFabの段階希釈物(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における抗VEGF抗体のFab-12の評価と一致する)と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートし;しかしながら、インキュベーションは、平衡への到達を確保するためにより長い時間(例えば、約65時間)継続し得る。その後、混合物を、室温におけるインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))により8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)上で10分間計数する。最大結合の20%以下を与えるそれぞれのFabの濃度を、競合結合アッセイにおける使用のために選択する。
【0137】
別の実施形態によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,N.J.)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、25℃において固定化抗原CM5チップを用いて、約10応答単位(RU)において計測する。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を供給業者の説明書に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性化させる。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)により5μg/ml(約0.2μM)まで希釈してから、約10の応答単位(RU)の結合タンパク質を達成するように5μl/分の流速において注入する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して未反応基をブロッキングする。カイネティクス計測のため、Fabの2倍段階希釈物(0.78nM~500nM)を25℃において、約25μl/分の流速において0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤を有するPBS(PBST)中に注入する。会合速度(kon)および解離速度(koff)を、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して、会合および解離センサーグラムを同時にフィッティングすることにより算出する。平衡解離定数(Kd)を、koff/kon比として算出する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)参照。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによるオン速度が106M-1s-1を超過する場合、オン速度は、分光計、例えば、ストップフロー方式の分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを有する8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)において計測する場合、PBS(pH7.2)中、20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nmのバンドパス)の増加または減少を増加濃度の抗原の存在下で25℃において計測する蛍光消光技術を使用することにより測定することができる。
【0138】
本発明の抗Axl抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体であり得る。一実施形態において、抗Axl抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディまたはF(ab’)2断片および抗体断片から形成される多重特異的抗体を用いる。別の実施形態において、抗体は、本明細書において定義される全長抗体、例えば、インタクトIgG抗体または他の抗体クラスまたはアイソタイプである。ある抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.,vol.9,pp.129-134,2003参照。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthuen,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)参照;国際公開第93/16185号パンフレット;および米国特許第5,571,894号明細書および同第5,587,458号明細書も参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFabおよびF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5,869,046号明細書参照。
【0139】
本発明のダイアボディは、二価または二重特異的であり得る。例えば、ダイアボディの例については、欧州特許第404,097号明細書;国際公開第1993/01161号パンフレット;Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.90,pp.6444-6448,1993参照。トリアボディおよびテトラボディの例も、Hudson et al.,Nat.Med.,vol.9,pp.129-134,2003に記載されている。
【0140】
一部の実施形態において、本発明は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む単一ドメイン抗体断片を含む。ある実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,Mass.;例えば、米国特許第6,248,516B1号明細書参照)。
【0141】
抗体断片は、種々の技術、例として、限定されるものではないが、本明細書に記載のとおりインタクト抗体のタンパク質分解消化および組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)またはファージ)による産生により作製することができる。
【0142】
一部の実施形態において、本発明の抗Axl抗体は、キメラ抗体であり得る。あるキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.81,pp.6851-6855,1984)に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えば、サルに由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、抗体のクラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスに対して変化している「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、それらの抗原結合断片を含む。
【0143】
ある実施形態において、本発明のキメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、このような非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、場合によりヒト定常領域の少なくとも一部も含み得る。一部の実施形態において、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復させ、または改善するために非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基により置換される。
【0144】
ヒト化抗体およびその作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.,vol.13,pp.1619-1633,2008に概説されており、さらに例えば、Riechmann et al.,Nature,vol.332,pp.323-329,1988;Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,vol.86,pp.10029-10033,1989;米国特許第5,821,337号明細書、同第7,527,791号明細書、同第6,982,321号明細書、および同第7,087,409号明細書、Kashmiri et al.,Methods,vol.36,pp.25-34,2005(SDR(a-CDR)グラフト化について記載);Padlan,Mol.Immunol.,vol.28,pp.489-498,1991(「リサーフェイシング」について記載);Dall’Acqua et al.,Methods,vol.36,pp.43-60,2005(「FRシャフリング」について記載);ならびにOsbourn et al.,Methods,vol.36,pp.61-68,2005およびKlimka et al.,Br.J.Cancer,vol.83,pp.252-260,2000(FRシャフリングに対する「誘導選択」アプローチについて記載)に記載されている。
【0145】
ヒト化に使用することができるヒトフレームワーク領域としては、限定されるものではないが、「ベストフィット」法(例えば、Sims et al.J.Immunol.,vol.151,p.2296,1993参照)を使用して選択されるフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループにおけるヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.89,p.4285,1992;およびPresta et al.J.Immunol.,vol.151,p.2623,1993参照)、ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.,vol.13,pp.1619-1633,2008参照);ならびにFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.,vol.272,pp.10678-10684,1997およびRosok et al.,J.Biol.Chem.,vol.271,pp.22611-22618,1996参照)が挙げられる。
【0146】
一部の実施形態において、本発明の抗Axl抗体は、多重特異的抗体、例えば、二重特異的抗体である。多重特異的抗体は、少なくとも2つの異なる部位についての結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある実施形態において、結合特異性のあるものはAxlについてのものであり、他方は別の抗原についてのものである。ある実施形態において、二重特異的抗体は、Axlの2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異的抗体は、Axlを発現する細胞に対して細胞毒性剤を局在化させるために使用することもできる。二重特異的抗体は、全長抗体または抗体断片として調製することができる。
【0147】
多重特異的抗体を作製する技術としては、限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature,vol.305,pp.537-540,1983)、国際公開第93/08829号パンフレット、およびTraunecker et al.,EMBO J.vol.10,pp.3655-3659,1991参照)、ならびに「ノブインホール(knob-in-hole)」エンジニアリング(例えば、米国特許第5,731,168号明細書参照)が挙げられる。多重特異的抗体は、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング(electrostatic steering)効果をエンジニアリングすること(国際公開第2009/089004A1号パンフレット);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号明細書、およびBrennan et al.,Science,vol.229,pp.81-83,1985参照);二重特異的抗体を産生するためにロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,vol.148,pp.1547-1553,1992参照);二重特異的抗体断片を作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.90,pp.6444-6448,1993参照);ならびに単鎖Fv(scFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,vol.152,pp.5368-5374,1994参照);ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol.,vol.147,pp.60-69,1991に記載のとおり三重特異的抗体を調製することにより作製することもできる。
【0148】
3つ以上の機能的抗原結合部位を有するエンジニアリング抗体、例として「オクトパス抗体」も本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576A1号明細書参照)。
【0149】
抗体または抗体断片としては、Axlおよび別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用Fab」または「DAF」も挙げられる(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号明細書参照)。
【0150】
本発明の抗Axl抗体または抗体断片は、米国特許出願公開第2016/0017040号明細書に詳述されている組換え法および組成物を使用して産生することができる。
【0151】
本発明の抗Axl抗体または抗体断片の物理的/化学的特性および/または生物学的活性は、当分野において公知の種々のアッセイにより試験および計測することができる。これらのアッセイの一部は、米国特許第8,853,369号明細書に記載されている。
【0152】
B.免疫コンジュゲート
別の態様において、本発明はまた、1つ以上の細胞毒性剤、例えば、化学療法剤または化学療法薬、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、または動物起源のタンパク質毒素、酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体にコンジュゲートしている本明細書の抗Axl抗体を含む免疫コンジュゲートを提供する。
【0153】
一実施形態において、免疫コンジュゲートは、抗体が1つ以上の薬物にコンジュゲートしている抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であり、その薬物としては、限定されるものではないが、メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号明細書、同第5,416,064号明細書および欧州特許第0425235B1号明細書参照);アウリスタチン、例えば、モノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号明細書および同第5,780,588号明細書、および同第7,498,298号明細書参照);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号明細書、同第5,714,586号明細書、同第5,739,116号明細書、同第5,767,285号明細書、同第5,770,701号明細書、同第5,770,710号明細書、同第5,773,001号明細書、および同第5,877,296号明細書参照;Hinman et al.,Cancer Res.,vol.53,pp.3336-3342,1993;およびLode et al.,Cancer Res.,vol.58,pp.2925-2928,1998);アントラサイクリン、例えば、ダウノマイシンまたはドキソルビシン(Kratz et al.,Current Med.Chem.,vol.13,pp.477-523,2006;Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters,vol.16,pp.358-362,2006;Torgov et al.,Bioconj.Chem.,vol.16,pp.717-721,2005;Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.97,pp.829-834,2000;Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters,vol.12,vol.1529-1532,2002;King et al.,J.Med.Chem.,vol.45,pp.4336-4343,2002;ならびに米国特許第6,630,579号明細書参照);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン、例えば、デセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセル;トリコテセン;およびCC1065が挙げられる。
【0154】
別の実施形態において、免疫コンジュゲートは、酵素活性毒素またはその断片、例として、限定されるものではないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からのもの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュアヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、またはクルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンにコンジュゲートしている本明細書に記載の抗体を含む。
【0155】
別の実施形態において、免疫コンジュゲートは、放射性コンジュゲートを形成するために放射性原子にコンジュゲートしている本明細書に記載の抗体を含む。放射性コンジュゲートの産生には種々の放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートを検出に使用する場合、それは、シンチグラフィー試験のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、mriとしても公知)用のスピン標識、例えば、ヨウ素-123、さらにヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンを含み得る。
【0156】
抗体および細胞毒性剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジプイミデートHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science,vol.238,pp.1098-,1987に記載のとおり調製することができる。炭素-14により標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026号パンフレット参照。リンカーは、細胞中で細胞毒性薬の放出を容易にする「開裂可能リンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.,vol.52,pp.127-131,1992;米国特許第5,208,020号明細書)を使用することができる。
【0157】
本明細書における免疫コンジュゲートは、限定されるものではないが、架橋試薬、例として、限定されるものではないが、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびに(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,Ill.,U.S.Aから)市販されているSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を用いて調製されるコンジュゲートを明示的に企図する。
【0158】
ADCの例示的な実施形態は、腫瘍細胞を標的化する抗体(Ab)、薬物部分(D)、およびAbをDに付着させるリンカー部分(L)を含む。一部の実施形態において、抗体は、1つ以上のアミノ酸残基、例えば、リジンおよび/またはシステインを介してリンカー部分(L)に付着している。
【0159】
例示的なADCは、式I:Ab-(L-D)pI(式中、pは、1~約20である)を有する。一部の実施形態において、抗体にコンジュゲートされ得る薬物部分の数は、遊離システイン残基の数により限定される。一部の実施形態において、遊離システイン残基は、本明細書に記載の方法により抗体アミノ酸配列中に導入される。式Iの例示的なADCとしては、限定されるものではないが、1、2、3、または4つのエンジニアリングされたシステインアミノ酸を有する抗体が挙げられる(Lyon et al.,Methods in Enzym.,vol.502,pp.123-138,2012)。一部の実施形態において、1つ以上の遊離システイン残基が、エンジニアリングを使用することなく抗体中で既に存在し、その場合、既存の遊離システイン残基を使用して抗体を薬物にコンジュゲートさせることができる。一部の実施形態において、抗体は、1つ以上の遊離システイン残基を生成するために抗体のコンジュゲーション前に還元条件に曝露される。
【0160】
a)例示的なリンカー
「リンカー」(L)は、1つ以上の部分、例えば、薬物部分(D)を抗体(Ab)に結合して免疫コンジュゲート、例えば、式IのADCを形成するために使用することができる二官能性または多官能性部分である。一部の実施形態において、ADCは、薬物におよび抗体に共有結合するための反応性官能基を有するリンカーを使用して調製することができる。例えば、一部の実施形態において、抗体(Ab)のシステインチオールは、リンカーの反応性官能基または薬物-リンカー中間体との結合を形成してADCを作製し得る。
【0161】
一態様において、リンカーは、抗体上に存在する遊離システインと反応して共有結合を形成し得る官能基を有する。このような反応性官能基の非限定的な例としては、マレイミド、ハロアセトアミド、α-ハロアセチル、活性化エステル、例えば、スクシンイミドエステル、4-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、無水物、酸塩化物、塩化スルホニル、イソシアネート、およびイソチオシアネートが挙げられる。例えば、Klussman,et al,Bioconjugate Chemistry,vol.15,pp.765-773,2004の766頁におけるコンジュゲーション法参照。
【0162】
一部の実施形態において、リンカーは、抗体上に存在する求電子基と反応し得る官能基を有する。例示的なそのような求電子基としては、限定されるものではないが、アルデヒドおよびケトンカルボニル基が挙げられる。一部の実施形態において、リンカーの反応性官能基のヘテロ原子が、抗体上の求電子基と反応し、抗体単位への共有結合を形成し得る。非限定的な例示的なこのような反応性官能基としては、限定されるものではないが、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジドが挙げられる。
【0163】
リンカーは、1つ以上のリンカー構成成分を含み得る。例示的なリンカー構成成分としては、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」または「vc」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、および4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「MCC」)が挙げられる。種々のリンカー構成成分が当分野において公知であり、それらの一部が以下に記載される。
【0164】
リンカーは、薬物の放出を容易にする「開裂可能なリンカー」であり得る。開裂可能なリンカーの非限定的な例としては、酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾンを含む)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)リンカー、光不安定性リンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Research,vol.52,pp.127-131,1992;米国特許第5,208,020号明細書)が挙げられる。
【0165】
ある実施形態において、リンカーは、以下の式II:-Aa-Ww-Yy-(式中、Aは、「ストレッチャー単位」であり、aは、0~1の整数であり;Wは、「アミノ酸単位」であり、wは、0~12の整数であり;Yは「スペーサー単位」であり、yは、0、1、または2である)を有する。式IIのリンカーを含むADCは、式I(A):Ab-(Aa-Ww-Yy-D)p(式中、Ab、D、およびpは、式Iについて上記定義のとおりである)を有する。このようなリンカーの例示的な実施形態は、米国特許第7,498,298号に記載されている。
【0166】
一部の実施形態において、リンカー構成成分は、抗体を別のリンカー構成成分にまたは薬物部分に結合させる「ストレッチャー単位」(A)を含む。非限定的な例示的なストレッチャー単位が以下に示される(式中、波線は、抗体、薬物、または追加のリンカー構成成分への共有結合の部位を示す)。
【化1】
【0167】
一部の実施形態において、リンカー構成成分は、「アミノ酸単位」(W)を含む。一部のそのような実施形態において、アミノ酸単位は、プロテアーゼによるリンカーの開裂を可能にし、それにより細胞内プロテアーゼ、例えば、リソソーム酵素への曝露時に免疫コンジュゲートからの薬物の放出を容易にする(Doronina et al.,Nat.Biotechnol.,vol.21,pp.778-784,2003)。例示的なアミノ酸単位としては、限定されるものではないが、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、およびペンタペプチドが挙げられる。例示的なジペプチドとしては、限定されるものではないが、バリン-シトルリン(vcまたはval-cit)、アラニン-フェニルアラニン(afまたはala-phe)、フェニルアラニン-リジン(fkまたはphe-lys);フェニルアラニン-ホモリジン(phe-homolys);およびN-メチル-バリン-シトルリン(Me-val-cit)が挙げられる。例示的なトリペプチドとしては、限定されるものではないが、グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)およびグリシン-グリシン-グリシン(gly-gly-gly)が挙げられる。アミノ酸単位は、天然に生じるアミノ酸残基および/または微量アミノ酸および/または非天然存在アミノ酸類似体、例えば、シトルリンを含み得る。アミノ酸単位は、特定の酵素、例えば、腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C、およびD、またはプラスミンプロテアーゼによる酵素的開裂のために設計および最適化することができる。
【0168】
典型的には、ペプチドタイプリンカーは、2つ以上のアミノ酸および/またはペプチド断片間のペプチド結合を形成することにより調製することができる。このようなペプチド結合は、例えば、脂質相合成法(例えば、E.Schroder and K.Luebke(1965)“The Peptides”,volume 1,pp76-136,Academic Press)に従って調製することができる。
【0169】
一部の実施形態において、リンカー構成成分は、抗体を薬物部分に直接、またはストレッチャー単位および/もしくはアミノ酸単位を介して結合する「スペーサー」単位(Y)を含む。スペーサー単位は、「自己犠牲型(self-immolative)」または「非自己犠牲型」であり得る。「非自己犠牲型」スペーサー単位は、ADCの開裂時にスペーサー単位の一部または全部が薬物部分に結合しているままのものである。非自己犠牲型スペーサー単位の例としては、限定されるものではないが、グリシンスペーサー単位およびグリシン-グリシンスペーサー単位が挙げられる。一部の実施形態において、腫瘍細胞関連プロテアーゼによるグリシン-グリシンスペーサー単位を含有するADCの酵素的開裂が、ADCの残部からのグリシン-グリシン-薬物部分の放出をもたらす。一部のそのような実施形態において、グリシン-グリシン-薬物部分は、腫瘍細胞中で加水分解ステップに供され、したがってグリシン-グリシンスペーサー単位を薬物部分から開裂する。
【0170】
「自己犠牲型」スペーサー単位は、薬物部分の放出を可能にする。ある実施形態において、リンカーのスペーサー単位は、p-アミノベンジル単位を含む。一部のそのような実施形態において、p-アミノベンジルアルコールは、アミド結合を介してアミノ酸単位に付着しており、カルバメート、メチルカルバメート、またはカルボネートが、ベンジルアルコールと薬物との間に作製される(Hamann et al.Expert Opin.Ther.Patents,vol.15,pp.1087-1103,2005)。一部の実施形態において、スペーサー単位は、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)を含む。一部の実施形態において、自己犠牲型リンカーを含むADCは、構造:
【化2】
(式中、Qは、-C
1~C
8アルキル、-O-(C
1~C
8アルキル)、-ハロゲン、-ニトロ、または-シアノであり、mは、0~4範囲の整数であり;Xは、1つ以上の追加のスペーサー単位であり得、または不存在であり得;pは、1~約20の範囲である)を有する。一部の実施形態において、pは、1~10、1~7、1~5、または1~4の範囲である。非限定的な例示的なXスペーサー単位としては、
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、HおよびC
1~C
6アルキルから独立して選択される)が挙げられる。一部の実施形態において、R
1およびR
2は、それぞれ-CH
3である。
【0171】
自己犠牲型スペーサーの他の例としては、限定されるものではないが、PAB基と電子的に類似する芳香族化合物、例えば、2-アミノイミダゾール-5-メタノール誘導体(米国特許第7,375,078号明細書;Hay et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,vol.9,p.2237-,1999)およびオルト-またはパラ-アミノベンジルアセタールが挙げられる。一部の実施形態において、アミド結合加水分解時に環化を受けるスペーサー、例えば、置換および非置換4-アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al.,Chemistry Biology,vol.2,pp.223-,1995)、適切に置換されているビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al.,J.Amer.Chem.Soc.,vol.94,p.5815-,1972)ならびに2-アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry et al,J.Org.Chem.,vol.55,p.5867,1990)を使用することができる。グリシン残基のα-炭素への薬物の結合は、ADCにおいて有用であり得る自己犠牲型スペーサーの別の例である(Kingsbury et al.,J.Med.Chem.,vol.27,p.1447,1984)。
【0172】
一部の実施形態において、リンカーLは、分岐する多官能性リンカー部分を介して2つ以上の薬物部分が抗体に共有結合するための樹状型リンカーであり得る(Sun et al.Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters,vol.12,pp.2213-2215,2002;Sun et al.,Bioorganic&Medicinal Chemistry,vol.11,pp.1761-1768,2003)。樹状リンカーは、ADCの効力に関連する薬物と抗体とのモル比、すなわち、負荷を増加させ得る。したがって、抗体が1つのみの反応性システインチオール基を担持する場合、複数の薬物部分が、樹状リンカーを介して付着され得る。
【0173】
非限定的な例示的リンカーは、式IのADCの関連において以下に示される:
【化4】
(式中、R
1およびR
2は、HおよびC
1~C
6アルキルから独立して選択される)。一部の実施形態において、R
1およびR
2は、それぞれ-CH
3である。
【化5】
(式中、nは、0~12である)。一部の実施形態において、nは、2~10である。一部の実施形態において、nは、4~8である。
【0174】
さらなる非限定的な例示的なADCとしては、構造:
【化6】
それぞれのRは、独立してHまたはC
1~C
6アルキルであり;nは、1~12である)が挙げられる。
【0175】
一部の実施形態において、リンカーは、溶解度および/または反応性をモジュレートする基により置換されている。非限定的な例として、荷電置換基、例えば、スルホネート(-SO3
-)またはアンモニウムは、リンカー試薬の水溶性を増加させ、リンカー試薬と抗体および/もしくは薬物部分とのカップリング反応を容易にし得、またはADCを調製するために用いられる合成経路に応じて、Ab-L(抗体-リンカー中間体)とDとのカップリング反応、もしくはD-L(薬物-リンカー中間体)とAbとのカップリング反応を容易にし得る。一部の実施形態において、リンカーの一部を抗体にカップリングし、リンカーの一部を薬物にカップリングし、次いでAb-(リンカー部分)aを薬物-(リンカー部分)bにカップリングして式IのADCを形成する。
【0176】
本発明の化合物は、限定されるものではないが、以下のリンカー試薬を用いて調製されるADCを明示的に企図する:ビス-マレイミド-トリオキシエチレングリコール(BMPEO)、N-(β-マレイミドプロピルオキシ)-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(BMPS)、N-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミドエステル(EMCS)、N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル(GMBS)、1,6-ヘキサン-ビス-ビニルスルホン(HBVS)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート)(LC-SMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、4-(4-N-マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)、スクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)、スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、スクシンイミジル6-[(ベータ-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート](SMPH)、イミノチオラン(IT)、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにスクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート(SVSB)、ならびに例として、ビス-マレイミド試薬:ジチオビスマレイミドエタン(DTME)、1,4-ビスマレイミドブタン(BMB)、1,4ビスマレイミジル-2,3-ジヒドロキシブタン(BMDB)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、ビスマレイミドエタン(BMOE)、BM(PEG)2(以下に示される)、およびBM(PEG)3(以下に示される);イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジプイミデートHCl)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)。一部の実施形態において、ビス-マレイミド試薬は、チオール含有薬物部分、リンカー、またはリンカー-薬物中間体への抗体中のシステインのチオール基の付着を可能にする。チオール基と反応性である他の官能基としては、限定されるものではないが、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルジスルフィド、イソシアネート、およびイソチオシアネートが挙げられる。
【0177】
ある有用なリンカー試薬は、種々の商業的供給源、例えば、Pierce Biotechnology,Inc.(Rockford,Ill.),Molecular Biosciences Inc.(Boulder,Colo.)から入手し、または当分野において、例えば、Toki et al.,J.Org.Chem.,vol.67,pp.1866-1872,2002;Dubowchik,et al.,Tetrahedron Letters,vol.38,pp.5257-60,1997;Walker,J.Org.Chem.,vol.60,pp.5352-5355,1995;Frisch et al.,Bioconjugate Chem.,vol.7,pp.180-186,1995;米国特許第6,214,345号明細書;国際公開第02/088172号パンフレット;米国特許出願公開第2003130189号明細書;米国特許出願公開第2003096743号明細書;国際公開第03/026577号パンフレット;国際公開第03/043583号パンフレット;および国際公開第04/032828号パンフレットに記載される手順に従って合成することができる
【0178】
炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。例えば、国際公開第94/11026号パンフレット参照。
【0179】
b)例示的な薬物部分
1)メイタンシンおよびメイタンシノイド
一部の実施態様において、免疫コンジュゲートは、1つ以上のメイタンシノイド分子にコンジュゲートしている抗体を含む。メイタンシノイドはメイタンシンの誘導体であり、チューブリン重合を阻害することにより作用する有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカ低木のメイテナス・セラタ(Maytenus serrata)から単離された(米国特許第3896111号明細書)。続いて、ある微生物もメイタンシノイド、例えば、メイタンシノールおよびC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号明細書)。合成メイタンシノールおよびその誘導体および類似体は、例えば、米国特許第4,137,230号明細書;同第4,248,870号明細書;同第4,256,746号明細書;同第4,260,608号明細書;同第4,265,814号明細書;同第4,294,757号明細書;同第4,307,016号明細書;同第4,308,268号明細書;同第4,308,269号明細書;同第4,309,428号明細書;同第4,313,946号明細書;同第4,315,929号明細書;同第4,317,821号明細書;同第4,322,348号明細書;同第4,331,598号明細書;同第4,361,650号明細書;同第4,364,866号明細書;同第4,424,219号明細書;同第4,450,254号明細書;同第4,362,663号明細書;および同第4,371,533号明細書に開示されている。
【0180】
メイタンシノイド薬物部分は、(i)発酵もしくは化学修飾、または発酵産物の誘導体化により調製することが比較的利用しやすく、(ii)抗体への非ジスルフィドリンカーを介するコンジュゲーションに好適な官能基による誘導体化に従い、(iii)血漿中で安定であり、(iv)種々の腫瘍細胞系に対して有効であるため、抗体-薬物コンジュゲートの有力な薬物部分である。
【0181】
メイタンシノイド薬物部分としての使用に好適なあるメイタンシノイドは当分野において公知であり、公知の方法に従って天然の供給源から単離することができ、または遺伝子操作技術を使用して産生することができる(例えば、Yu et al.,PNAS,vol.99,pp.7968-7973,2002参照)。また、メイタンシノイドは、公知の方法に従って合成により調製することもできる。
【0182】
例示的なメイタンシノイド薬物部分としては、限定されるものではないが、修飾芳香環を有するもの、例えば、C-19-デクロロ(米国特許第4,256,746号明細書)(例えば、アンサマイトシンP2の水素化アルミニウムリチウム還元により調製される);C-20-ヒドロキシ(またはC-20-デメチル)+/-C-19-デクロロ(米国特許第4,361,650号明細書および同第4,307,016号明細書)(例えば、ストレプトミセス属(Streptomyces)もしくはアクチノミセス属(Actinomyces)を使用する脱メチル化またはLAHを使用する脱塩素により調製される);およびC-20-デメトキシ、C-20-アシロキシ(-OCOR)、+/-デクロロ(米国特許第4,294,757号明細書)(例えば、アシル塩化物を使用するアシル化により調製される)、ならびに芳香環の他の位置における修飾を有するものが含まれる。
【0183】
例示的なメイタンシノイド薬物部分としては、修飾を有するもの、例えば、C-9-SH(米国特許第4,424,219号明細書)(例えば、メイタンシノールとH2SまたはP2S5との反応により調製される);C-14-アルコキシメチル(デメトキシ/CH2OR)(米国特許第4,331,598号明細書);C-14-ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CH2OHまたはCH2OAc)(米国特許第4,450,254号明細書)(例えば、ノカルディア属(Nocardia)から調製);C-15-ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号明細書)(例えば、ストレプトミセス属(Streptomyces)によるメイタンシノールの変換により調製される);C-15-メトキシ(米国特許第4,313,946号明細書および同第4,315,929号明細書)(例えば、トレウィア・ヌドルフローラ(Trewia nudlflora)から単離される);C-18-N-デメチル(例えば、米国特許第4,362,663号明細書および同第4,322,348号明細書)(ストレプトミセス属(Streptomyces)によるメイタンシノールの脱メチル化により調製される);および4,5-デオキシ(米国特許第4,371,533号明細書)(例えば、メイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により調製される)も挙げられる。
【0184】
メイタンシノイド化合物上の多くの位置が結合位置として有用である。例えば、慣用のカップリング技術を使用してヒドロキシル基との反応によりエステル結合を形成することができる。一部の実施形態において、反応は、ヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルにより修飾されているC-14位、ヒドロキシル基により修飾されているC-15位、およびヒドロキシル基を有するC-20位において生じ得る。一部の実施形態において、結合は、メイタンシノールまたはメイタンシノール類似体のC-3位において形成される。
【0185】
メイタンシノイド薬物部分としては、以下の構造:
【化7】
(式中、波線は、ADCのリンカーへのメイタンシノイド薬物部分の硫黄原子の共有結合を示す)を有するものが挙げられる。それぞれのRは、独立してHまたはC
1-C
6アルキルであり得る。アミド基を硫黄原子に付着しているアルキレン鎖は、メタニル、エタニル、またはプロピルであり得、すなわち、mは、1、2または3である(米国特許第633,410号明細書;米国特許第5,208,020号明細書;Chari et al.,Cancer Res.,vol.52,pp.127-131,1992;Liu et al.,Proc.Nall.Acad.Sci.USA,vol.93,pp.8618-8623,1996)。
【0186】
メイタンシノイド薬物部分の全ての立体異性体、すなわちキラル炭素におけるRおよびS立体配置の任意の組合せが、本発明のADCについて企図される(米国特許第7,276,497号明細書;米国特許第6,913,748号明細書;米国特許第6,441,163号明細書;米国特許第633,410号明細書(RE39151);米国特許第5,208,020号明細書;Widdison et al(2006)J.Med.Chem.49:4392-4408)。一部の実施態様において、メイタンシノイド薬物部分は、以下の立体化学を有する:
【化8】
【0187】
メイタンシノイド薬物部分の例示的な実施態様としては、限定されるものではないが、構造:
【化9】
(式中、波線は、抗体-薬物コンジュゲートのリンカー(L)への薬物の硫黄原子の共有結合を示す)を有するDM1;DM3およびDM4が挙げられる。
【0188】
DM1が抗体のチオール基にBMPEOリンカーを介して結合している例示的な抗体-薬物コンジュゲートは、構造および略記号:
【化10】
(式中、Abは、抗体であり;nは、0、1、または2であり;pは、1~約20である)を有する。一部の実施形態において、pは、1~10であり、pは、1~7であり、pは、1~5であり、またはpは、1~4である。
【0189】
メイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲート、その作製方法およびその治療的使用は、例えば、米国特許第5,208,020号明細書および同第5,416,064号明細書;米国特許出願公開第2005/0276812A1号明細書;および欧州特許第0425235B1号明細書に開示されている。Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.93,pp.8618-8623,1996;およびChari et al.,Cancer Research,vol.52,pp.127-131,1992も参照。
【0190】
一部の実施形態において、抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体の生物学的活性もメイタンシノイド分子の生物学的活性も実質的に縮小させずに、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製することができる。例えば、米国特許第5,208,020号明細書参照。一部の実施形態において、抗体分子当たりコンジュゲートしている平均3~4つのメイタンシノイド分子を有するADCは、抗体の機能にも溶解度にも悪影響を及ぼさずに標的細胞の細胞毒性の向上において効力を示している。一部の例において、毒素/抗体の1つの分子であっても、裸抗体の使用と比べて細胞毒性を向上させることが予測される。
【0191】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するための例示的な結合基としては、例えば、本明細書に記載のものならびに米国特許第5,208,020号明細書;欧州特許第0425235B1号明細書;Chari et al.,Cancer Research,vol.52,pp.127-131、1992;米国特許出願公開第2005/0276812A1号明細書;および米国特許出願公開第2005/016993A1号明細書に開示のものが挙げられる。
【0192】
(2)アウリスタチンおよびドラスタチン
薬物部分としては、ドラスタチン、アウリスタチン、ならびにそれらの類似体および誘導体が挙げられる(米国特許第5,635,483号明細書;米国特許第5,780,588号明細書;米国特許第5,767,237号明細書;米国特許第6,124,431号明細書)。アウリスタチンは、海産軟体動物化合物ドラスタチン-10の誘導体である。任意の特定の理論により拘束されるものではないが、ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管ダイナミクス、GTP加水分解、ならびに核および細胞分裂(Woyke et al.,Antimicrob.Agents and Chemother.,vol.45,pp.3580-3584,2001)を妨げ、抗癌性(米国特許第5,663,149号明細書)および抗真菌活性(Pettit et al.,Antimicrob.Agents Chemother.,vol.42,pp.2961-2965,1998)を有することが示されている。ドラスタチン/アウリスタチン薬物部分は、ペプチド性薬物部分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端を介して抗体に付着させることができる(国際公開第02/088172号パンフレット;Doronina et al.,Nature Biotechnology,vol.21,pp.778-784,2003;Francisco et al.,Blood,vol.102,pp.1458-1465,2003)。
【0193】
例示的なアウリスタチンの実施態様としては、米国特許第7,498,298号明細書および米国特許第7,659,241号明細書に開示のN末端結合モノメチルアウリスタチン薬物部分D
EおよびD
Fが挙げられる:
【化11】
(式中、D
EおよびD
Fの波線は、抗体または抗体-リンカー構成成分への共有結合部位を示し、独立してそれぞれの位置において、
R
2は、HおよびC
1~C
8アルキルから選択され;
R
3は、H、C
1~C
8アルキル、C
3~C
8炭素環、アリール、C
1~C
8アルキル-アリール、C
1~C
8アルキル-(C
3~C
8炭素環)、C
3~C
8複素環およびC
1~C
8アルキル-(C
3~C
8複素環)から選択され;
R
4は、H、C
1~C
8アルキル、C
3~C
8炭素環、アリール、C
1~C
8アルキル-アリール、C
1~C
8アルキル-(C
3~C
8炭素環)、C
3~C
8複素環およびC
1~C
8アルキル-(C
3~C
8複素環)から選択され;
R
5は、Hおよびメチルから選択され;
またはR
4およびR
5は共同で炭素環式環を形成し、式-(CR
aR
b)
n-(式中、R
aおよびR
bは、H、C
1~C
8アルキルおよびC
3~C
8炭素環式化合物から独立して選択され、nは、2、3、4、5および6から選択される)を有し;
R
6は、HおよびC
1~C
8アルキルから選択され;
R
7は、H、C
1~C
8アルキル、C
3~C
8炭素環、アリール、C
1~C
8アルキル-アリール、C
1~C
8アルキル-(C
3~C
8炭素環)、C
3~C
8複素環およびC
1~C
8アルキル-(C
3~C
8複素環)から選択され;
それぞれのR
8は、H、OH、C
1~C
8アルキル、C
3~C
8炭素環およびO-(C
1~C
8アルキル)から独立して選択され;
R
9は、HおよびC
1~C
8アルキルから選択され;
R
10は、アリールまたはC
3~C
8複素環から選択され;
Zは、O、S、NH、またはNR
12であり、R
12は、C
1~C
8アルキルであり;
R
11は、H、C
1~C
20アルキル、アリール、C
3~C
8複素環、-(R
13O)
m-R
14、または(R
13O)
m-CH(R
15)
2から選択され;
mは、1~1000の範囲の整数であり;
R
13は、C
2~C
8アルキルであり;
R
14は、HまたはC
1~C
8アルキルであり;
eのそれぞれの存在は、独立してH、COOH、-(CH
2)
n-N(R
16)
2、-(CH
2)
n-SO
3H、または(CH
2)
n-SO
3-C
1~C
8アルキルであり;
eのそれぞれの存在は、独立してH、C
1~C
8アルキル、または(CH
2)
n-COOHであり;
R
18は、-C(R
8)
2-C(R
8)
2-アリール、-C(R
8)
2-C(R
8)
2(C
3~C
8複素環)、およびC(R
8)
2-C(R
8)
2(C
3~C
8炭素環)から選択され;
nは0~6の範囲の整数である)。
【0194】
一実施態様において、R3、R4およびR7は、独立してイソプロピルまたはsec-ブチルであり、R5は、-Hまたはメチルである。例示的な実施態様において、R3およびR4は、それぞれイソプロピルであり、R5は、-Hであり、R7は、sec-ブチルである。
【0195】
さらに他の実施態様において、R2およびR6は、それぞれメチルであり、R9は-Hである。
【0196】
さらに他の実施態様において、R8のそれぞれの存在は、-OCH3である。
【0197】
例示的な実施態様において、R3およびR4は、それぞれイソプロピルであり、R2およびR6は、それぞれメチルであり、R5は、-Hであり、R7は、sec-ブチルであり、R8のそれぞれの存在は、-OCH3であり、R9は、-Hである。
【0198】
一実施態様において、Zは、-O-またはNH-である。
【0199】
一実施態様において、R10は、アリールである。
【0200】
例示的な実施態様において、R10は、-フェニルである。
【0201】
例示的な実施態様において、Zが-O-である場合、R11は、-H、メチルまたはt-ブチルである。
【0202】
一実施態様において、Zが-NHである場合、R11は、-CH(R15)2であり、R15は、-(CH2)n-N(R16)2であり、R16は、-C1~C8アルキルまたは(CH2)n-COOHである。
【0203】
別の実施態様において、Zが-NHである場合、R11は、-CH(R15)2であり、R15は、-(CH2)n-SO3Hである。
【0204】
式D
Eの例示的なアウリスタチンの実施態様はMMAEであり、式中、波線は、抗体-薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す:
【化12】
【0205】
式D
Eの例示的なアウリスタチンの実施態様はMMAEであり、式中、波線は、抗体-薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す:
【化13】
【0206】
他の例示的な実施態様としては、ペンタペプチドアウリスタチン薬物部分のC末端におけるフェニルアラニンカルボキシ修飾を有するモノメチルバリン化合物(国際公開第2007/008848号パンフレット)およびペンタペプチドアウリスタチン薬物部分のC末端におけるフェニルアラニン側鎖修飾を有するモノメチルバリン化合物(国際公開第2007/008603号パンフレット)が挙げられる。
【0207】
MMAFおよび種々のリンカー構成成分を含む式IのADCの非限定的な例示的な実施態様としては、Ab-MC-PAB-MMAFおよびAb-PAB-MMAFも挙げられる。タンパク質分解により開裂可能でないリンカーにより抗体に付着しているMMAFを含む免疫コンジュゲートは、タンパク質分解により開裂可能なリンカーにより抗体に付着しているMMAFを含む免疫コンジュゲートと同等の活性を保有することが示されている(Doronina et al.,Bioconjugate Chem.,vol.17,pp.114-124,2006参照)。一部のこのような実施形態において、薬物放出は細胞中の抗体分解に影響されると考えられる。
【0208】
典型的には、ペプチドベースの薬物部分は、2つ以上のアミノ酸および/またはペプチド断片間でペプチド結合を形成することにより調製することができる。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野において周知の液相合成法に従って調製することができる(例えば、E.Schroeder and K.Luebke,“The Peptides”,volume 1,pp 76-136,1965,Academic Press参照)。アウリスタチン/ドラスタチン薬物部分は、一部の実施形態において、米国特許第7,498,298号明細書;米国特許第5,635,483号明細書;米国特許第5,780,588号明細書;Pettit et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.111,pp.5463-5465,1998;Pettit et al.,Anti-Cancer Drug Design,vol.13,pp.243-277,1998;Pettit et al.,Synthesis,vol.6,pp.719-725,1996;Pettit et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.vol.15,pp.859-863,1996;およびDoronina,Nat.Biotechnol.,vol.21,pp.778-784,2003の方法に従って調製することができる。
【0209】
一部の実施形態において、式DEのアウリスタチン/ドラスタチン薬物部分、例えば、MMAE、およびDE、例えば、MMAF、ならびにそれらの薬物-リンカー中間体および誘導体、例えば、MC-MMAF、MC-MMAE、MC-vc-PAB-MMAF、およびMC-vc-PAB-MMAEは、米国特許第7,498,298号明細書;Doronina et al.,Bioconjugate Chem.,vol.17,pp.114-124,2006;およびDoronina et al.,Nat.Biotech.,vol.21,pp.778-784,2003に記載の方法を使用して調製し、次いで目的の抗体にコンジュゲートさせることができる。
【0210】
(3)カリケアマイシン
一部の実施態様において、免疫コンジュゲートは、1つ以上のカリケアマイシン分子にコンジュゲートしている抗体を含む。抗生物質のカリケアマイシンファミリー、およびそれらの類似体は、サブピコモル濃度において二本鎖DNA分解を産生し得る(Hinman et al.,Cancer Research,vol.53,pp.3336-3342,1993;Lode et al.,Cancer Research,vol.58,pp.2925-2928,1998)。カリケアマイシンは、細胞内作用部位を有するが、ある例において、細胞膜を容易に通過しない。したがって、抗体媒介内在化を介するこれらの薬剤の細胞取り込みは、一部の実施形態において、それらの細胞毒性効果を大きく向上させ得る。カリケアマイシン薬物部分を有する抗体-薬物コンジュゲートを調製する非限定的な例示的方法は、例えば、米国特許第5,712,374号明細書;米国特許第5,714,586号明細書;米国特許第5,739,116号明細書;および米国特許第5,767,285号明細書に記載されている。
【0211】
(4)ピロロベンゾジアゼピン
一部の実施形態において、ADCは、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)を含む。一部の実施形態において、PDB二量体は特異的DNA配列を認識し、それに結合する。天然産物アントラマイシンであるPBDは、1965年に最初に報告された(Leimgruber et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.87,pp.5793-5795,1965;Leimgruber et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.87,pp.5791-5793,1965)。それ以降、天然存在および類似体の両方の多数のPBDが報告されており(Thurston et al.,Chem.Rev.vol.1994,pp.433-465 1994)、それらとしては、三環式PBD足場の二量体(米国特許第6,884,799号明細書;米国特許第7,049,311号明細書;米国特許第7,067,511号明細書;米国特許第7,265,105号明細書;米国特許第7,511,032号明細書;米国特許第7,528,126号明細書;米国特許第7,557,099号明細書)が挙げられる。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、二量体構造が、B型DNAの副溝との等螺旋性(isohelicity)に適切な三次元形状を付与し、結合部位における滑合をもたらすと考えられる(Kohn,In Antibiotics III.Springer-Verlag,New York,pp.3-11(1975);Hurley and Needham-VanDevanter,Acc.Chem.Res.,vol.19,pp.230-237,1986)。C2アリール置換基を担持する二量体PBD化合物は、細胞毒性剤として有用であることが示されている(Hartley et al Cancer Res.,vol.70,pp.6849-6858,2010;Antonow,J.Med.Chem.vol.53,pp.2927-2941,2010;Howard et al.,Bioorganic and Med.Chem.Letters,vol.19,pp.6463-6466,2009)。
【0212】
PBD二量体は抗体にコンジュゲートされており、得られるADCは、抗癌特性を有することが示されている。非限定的な例示的なPBD二量体上の結合部位としては、5員ピロロ環、PBD単位の間のテザー、およびN10-C11イミン基が挙げられる(国際公開第2009/016516号パンフレット;米国特許出願公開第2009/304710号明細書;米国特許出願公開第2010/047257号明細書;米国特許出願公開第2009/036431号明細書;米国特許出願公開第2011/0256157号明細書;国際公開第2011/130598号パンフレット)。
【0213】
非限定的な例示的ADCのPBD二量体構成成分は、式A:
【化14】
のもの、ならびにその塩および溶媒和物(式中、
波線は、リンカーへの共有結合部位を示し;
点線は、C1とC2との間またはC2とC3との間の二重結合の任意選択の存在を示し;
R
2は、H、OH、=O、=CH
2、CN、R、OR、=CH-R
D、=C(R
D)
2、O-SO
2-R、CO
2RおよびCORから独立して選択され、場合により、ハロまたはジハロからさらに選択され、R
Dは、R、CO
2R、COR、CHO、CO
2H、およびハロから独立して選択され;
R
6およびR
9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH
2、NHR、NRR’、NO
2、Me
3Snおよびハロから独立して選択され;
R
7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH
2、NHR、NRR’、NO
2、Me
3Snおよびハロから独立して選択され;
Qは、O、S、およびNHから独立して選択され、
R
11は、HもしくはRのいずれかであり、またはQがOである場合、SO
3Mであり、Mは、金属陽イオンであり;
RおよびR’は、場合により置換されているC
1~
8アルキル、C
1~
12アルキル、C
3~
8ヘテロシクリル、C
3~
20複素環、およびC
5~
20アリール基からそれぞれ独立して選択され、場合により、基NRR’との関連で、RおよびR’は、それらが付着している窒素原子と一緒になって、場合により置換されている4、5、6、または7員複素環式環を形成し;
R
12、R
16、R
19、およびR
17は、それぞれR
2、R
6、R
9、およびR
7について定義されるとおりであり、
R’’は、C
3~
12アルキレン基であり、その鎖は、1つ以上のヘテロ原子、例えば、O、S、N(H)、NMe、および/または芳香環、例えば、ベンゼンまたはピリジンにより中断されていてよく、それらの環は、場合により置換されており;
XおよびX’は、O、S、およびN(H)から独立して選択される)である。
【0214】
一部の実施形態において、RおよびR’は、場合により置換されているC1~12アルキル、C3~20複素環、およびC5~20アリール基からそれぞれ独立して選択され、場合により、基NRR’との関連で、RおよびR’は、それらが付着している窒素原子と一緒になって、場合により置換されている4、5、6、または7員複素環式環を形成する。一部の実施形態において、R9およびR19は、Hである。一部の実施形態において、R6およびR16は、Hである。
【0215】
一部の実施形態において、R7およびR17は両方とも、OR7Aであり、R7Aは、場合により置換されているC1~4アルキルである。一部の実施形態において、R7Aは、Meである。一部の実施形態において、R7Aは、Ch2Phであり、Phは、フェニル基である。一部の実施形態において、Xは、Oである。一部の実施形態において、R11は、Hである。一部の実施形態において、それぞれの単量体単位中のC2とC3との間に二重結合が存在する。
【0216】
一部の実施形態において、R2およびR12は、HおよびRから独立して選択される。一部の実施形態において、R2およびR12は、独立してRである。一部の実施形態において、R2およびR12は、独立して、場合により置換されているC5~20アリールまたはC5~7アリールまたはC8~10アリールである。一部の実施形態において、R2およびR12は、独立して、場合により置換されているフェニル、チエニル、ナフチル、ピリジル、キノリニル、またはイソキノリニルである。一部の実施形態において、R2およびR12は、=O、=CH2、=CH-RD、および=C(RD)2から独立して選択される。一部の実施形態において、R2およびR12は、それぞれ=CH2である。一部の実施形態において、R2およびR12は、それぞれHである。一部の実施形態において、R2およびR12は、それぞれ=Oである。一部の実施形態において、R2およびR12は、それぞれ=CF2である。一部の実施形態において、R2および/またはR12は、独立して=C(RD)2である。一部の実施形態において、R2および/またはR12は、独立して=CH-RDである。
【0217】
一部の実施形態において、R
2および/またはR
12が=CH-R
Dである場合、それぞれの基は、独立して、以下に示される立体配置のいずれかを有し得る:
【化15】
【0218】
一部の実施形態において、=CH-RDは、立体配置(I)である。一部の実施形態において、R’’は、C3アルキレン基またはC5アルキレン基である。
【0219】
PBD二量体-val-cit-PAB-AbおよびPBD二量体-Phe-Lys-PAB-Abのリンカーは、プロテアーゼ開裂可能である一方、PBD二量体-マレイミド-アセタールのリンカーは、酸不安定性である。
【0220】
PBD二量体およびPBD二量体を含むADCは、当分野において公知の方法に従って調製することができる。例えば、国際公開第2009/016516号パンフレット;米国特許出願公開第2009/304710号明細書;米国特許出願公開第2010/047257号明細書;米国特許出願公開第2009/036431号明細書;米国特許出願公開第2011/0256157号明細書;国際公開第2011/130598号パンフレット参照。
【0221】
(5)アントラサイクリン
一部の実施形態において、ADCは、アントラサイクリンを含み得る。アントラサイクリンは、細胞毒性活性を示す抗生物質化合物である。いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、研究は、アントラサイクリンが多数の異なる機序、例として、1)細胞のDNA中への薬物分子のインターカレーションと、それによるDNA依存的核酸合成の阻害;2)次に細胞巨大分子と反応して細胞への損傷を引き起こすフリーラジカルの薬物による産生、および/または3)薬物分子と細胞膜との相互作用により細胞を殺傷するように機能し得ることを示している(例えば、C.Peterson et al.,“Transport And Storage Of Anthracycline In Experimental Systems And Human Leukemia”in Anthracycline Antibiotics In Cancer Therapy;N.R.Bachur,“Free Radical Damage”id.at pp.97-102参照)。アントラサイクリンは、その細胞毒性潜在性のため、多数の癌、例として、白血病、乳癌、肺癌、卵巣腺癌、および肉腫の治療において使用されている(例えば、P.H-Wiernik,in Anthracycline:Current Status And New Developments p11参照)。
【0222】
非限定的な例示的なアントラサイクリンとしては、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノマイシン、ネモルビシン、およびそれらの誘導体が挙げられる。ダウノルビシンおよびドキソルビシンの免疫コンジュゲートおよびプロドラッグが調製され、研究されている(Kratz et al.,Current Med.Chem.,vol.13,pp.477-523,2006;Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters,vol.16,pp.358-362.1996;Torgov et al.,Bioconj.Chem.,vol.16,pp.717-721,2005;Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.97,pp.829-834,2000;Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters,vol.12,pp.1529-1532,2002;King et al.,J.Med.Chem.,vol.45,pp.4336-4343,2002;欧州特許第0328147号明細書;米国特許第6,630,579号明細書)。抗体-薬物コンジュゲートBR96-ドキソルビシンは、腫瘍関連抗原ルイス-Yと特異的に反応し、第I相および第II相試験において評価されている(Saleh et al.,J.Clin.Oncology,vol.18,pp.2282-2292,2000;Ajani et al.,Cancer Jour.,vol.6,pp.78-81,2000;Tolcher et al.,J.Clin.Oncology,vol.17,pp.478-484,1999)。
【0223】
PNU-159682は、ネモルビシンの強力な代謝産物(または誘導体)である(Quintieri et al.,Clinical Cancer Research,vol.11,pp.1608-1617,2005)。ネモルビシンは、ドキソルビシンのグリコシドアミノ上の2-メトキシモルホリノ基を有するドキソルビシンの半合成類似体であり、臨床評価中であり(Grandi et al.Cancer Treat.Rev.vol.17,pp.133-138,1990;Ripamonti et al.Brit.J.Cancer,vol.65,pp.703-707,1992)、例としては、第II相/第III相治験が挙げられる(Sun et al.,Proceedings of the American Society for Clinical Oncology,vol.22,Abs1448,2003;Quintieri,Proceedings of the American Association of Cancer Research,vol.44:1st Ed,Abs 4649,2003;Pacciarini et al.,Jour.Clin.Oncology,vol.24,p.14116,2006)。
【0224】
アントラサイクリン、例として、PNU-159682は、いくつかの結合部位、および種々のリンカー(米国特許出願公開第2011/0076287号明細書;国際公開第2009/099741号パンフレット;米国特許出願公開第2010/0034837号明細書;国際公開第2010/009124号パンフレット)、例として、本明細書に記載のリンカーを介して抗体にコンジュゲートさせることができる。
【0225】
PNU-159682マレイミドアセタール-Abのリンカーは酸不安定性である一方、PNU-159682-val-cit-PAB-Ab、PNU-159682-val-cit-PAB-スペーサー-Ab、およびPNU-159682-val-cit-PAB-スペーサー(R1R2)-Abのリンカーは、プロテアーゼ開裂可能である。
【0226】
(6)他の薬物部分
薬物部分としては、ゲルダナマイシン(Mandler et al.,J.Nat.Cancer Inst.,vol.92,pp.1573-1581,2000;Mandler et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters,vol.10,pp.1025-1028,2000;Mandler et al.,Bioconjugate Chem.,vol.13,pp.786-791,2002);ならびに酵素活性毒素およびその断片、例として、限定されるものではないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からのもの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンも挙げられる。例えば、国際公開第93/21232号パンフレット参照。
【0227】
薬物部分としては、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ)も挙げられる。
【0228】
ある実施形態において、免疫コンジュゲートは、高放射性の原子を含み得る。種々の放射性同位体が放射性コンジュゲート抗体の産生に利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体が挙げられる。一部の実施形態において、免疫コンジュゲートを検出に使用する場合、それは、シンチグラフィー試験のための放射性原子、例えば、Tc99もしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング(MRI)としても公知)用のスピン標識、例えば、ジルコニウム-89、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄を含み得る。例えば、PETイメージングのためにジルコニウム-89を種々の金属キレート剤に錯化させ、抗体にコンジュゲートさせることができる(国際公開第2011/056983号パンフレット)。
【0229】
放射標識または他の標識は、公知の手法で免疫コンジュゲートに取り込むことができる。例えば、ペプチドは、例えば、1つ以上のフッ素-19原子を1つ以上の水素の代わりに含む好適なアミノ酸前駆体を使用して生合成または化学合成することができる。一部の実施形態において、標識、例えば、Tc99、I123、Re186、Re188、およびIn111を、抗体中のシステイン残基を介して付着させることができる。一部の実施形態において、イットリウム-90は、抗体のリジン残基を介して付着させることができる。一部の実施形態において、IODOGEN法(Fraker et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,vol.80,pp.49-57,1978)を使用してヨウ素-123を取り込むことができる。“Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”(Chatal,CRC Press 1989)は、ある他の方法を記載している。
【0230】
ある実施形態において、免疫コンジュゲートは、プロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートしている抗体を含み得る。一部のこのような実施形態において、プロドラッグ活性化酵素は、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号パンフレット参照)を活性薬物、例えば、抗癌薬に変換する。このような免疫コンジュゲートは、一部の実施形態において、抗体依存的酵素媒介性プロドラッグ療法(「ADEPT」)において有用である。抗体にコンジュゲートさせることができる酵素としては、限定されるものではないが、ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なアルカリホスファターゼ;スルフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌薬5-フルオロウラシルに変換するために有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なプロテアーゼ、例えば、セラチアプロテアーゼ、テルモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、およびカテプシン(例えば、カテプシンBおよびL);D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換するために有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用な炭水化物開裂酵素、例えば、β-ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ;β-ラクタムにより誘導体化されている薬物を遊離薬物に変換するために有用なβ-ラクタマーゼ;ならびにアミン窒素においてフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基によりそれぞれ誘導体化されている薬物を遊離薬物に変換するために有用なペニシリンアミダーゼ、例えば、ペニシリンVアミダーゼおよびペニシリンGアミダーゼが挙げられる。一部の実施形態において、酵素は、当分野において周知の組換えDNA技術により抗体に共有結合させることができる。例えば、Neuberger et al.,Nature,vol.312,pp.604-608,1984参照。
【0231】
c)薬物負荷
薬物負荷は、式Iの分子における抗体当たりの薬物部分の平均数pにより表される。薬物負荷は、抗体当たり1~20個の薬物部分(D)の範囲であり得る。式IのADCは、1~20個の範囲の薬物部分とコンジュゲートしている抗体の集団を含む。コンジュゲーション反応からのADC調製において使用される抗体当たりの薬物部分の平均数は、慣用の手段、例えば、質量分析、ELISAアッセイ、およびHPLCにより特徴付けすることができる。また、pの単位でのADCの定量分布を測定することもできる。一部の例において、pがある値である同種ADCを、他の薬物負荷を有するADCから分離し、精製し、特徴付けることは、逆相HPLCまたは電気泳動のような手段により達成することができる。
【0232】
一部の抗体-薬物コンジュゲートについて、pは、抗体上の付着部位の数により限定され得る。例えば、上記のある例示的な実施形態のように付着がシステインチオールである場合、抗体は、1つのみもしくは数個のシステインチオール基を有し得、または1つのみもしくは数個の反応性が十分なチオール基を有し得、それらによりリンカーを付着させることができる。ある実施形態において、薬物負荷がより高くなると、例えば、p>5になると、ある抗体-薬物コンジュゲートの凝集、不溶性、毒性、または細胞透過性の損失を引き起こし得る。ある実施形態において、ADCについての平均薬物負荷は、1~約8;約2~約6;または約3~約5の範囲である。実際、あるADCについて、抗体当たりの薬物部分の最適な比は、8未満であり得、約2~約5であり得ることが示されている(米国特許第7,498,298号明細書)。
【0233】
ある実施形態において、理論上の最大数よりも少ない薬物部分を、コンジュゲーション反応の間に抗体にコンジュゲートさせる。抗体は、以下に考察されるとおり、例えば、薬物-リンカー中間体ともリンカー試薬とも反応しないリジン残基を含有し得る。一般に、抗体は、薬物部分に結合され得る多くの遊離および反応性システインチオール基を含有せず;実際、抗体中のほとんどのシステインチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在する。ある実施形態において、抗体は、還元剤、例えば、ジチオトレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)により部分または完全還元条件下で還元して反応性システインチオール基を生成することができる。ある実施形態において、抗体を変性条件に供して反応性求核基、例えば、リジンまたはシステインを明らかにする。
【0234】
ADCの負荷(薬物/抗体比)は、様々な手法で、例えば、(i)抗体に対してモル過剰の薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬の限定、(ii)コンジュゲーション反応時間または温度の限定、および(iii)システインチオール修飾のための部分または限定的還元条件により制御することができる。
【0235】
2つ以上の求核基が薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬と反応する場合、得られる生成物は、抗体に付着している1つ以上の薬物部分の分布を有するADCの混合物であることが理解される。抗体当たりの薬物の平均数は、抗体に特異的であり、薬物に特異的である二重ELISA抗体アッセイにより混合物から算出することができる。個々のADCは、質量分析法により混合物中で同定し、HPLC、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィーにより分離することができる(例えば、McDonagh et al.,Prot.Engr.Design & Selection, vol.19,pp.299-307,2006;Hamblett et al.,Clin.Cancer Res.,vol.10,pp.7063-7070,2004参照)。ある実施形態において、単一の負荷値を有する同種ADCを、電気泳動またはクロマトグラフィーによりコンジュゲーション混合物から単離することができる。
【0236】
d)免疫コンジュゲートを調製するある方法
式IのADCである免疫コンジュゲートは、当業者に公知の有機化学反応、条件、および試薬を用いるいくつかの経路、例として、(1)抗体の求核基を二価リンカー試薬と反応させて共有結合を介してAb-Lを形成し、次いで薬物部分Dと反応させることと;ならびに(2)薬物部分の求核基を二価リンカー試薬と反応させて共有結合を介してD-Lを形成し、次いで抗体の求核基と反応させることにより調製することができる。後者の経路を介して式IのADCを調製する例示的な方法は、米国特許第7,498,298号明細書に記載されている。
【0237】
抗体上の求核基としては、限定されるものではないが、(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えば、リジン、(iii)側鎖チオール基、例えば、システイン、および(iv)抗体がグリコシル化される糖ヒドロキシルまたはアミノ基が挙げられる。アミン、チオール、およびヒドロキシル基は求核性であり、リンカー部分およびリンカー試薬上の求電子基、例として、(i)活性エステル、例えば、NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート、および酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハロゲン化物、例えば、ハロアセトアミド;ならびに(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル、およびマレイミド基と反応して共有結合を形成し得る。ある抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、抗体が完全にまたは部分的に還元されるように、還元剤、例えば、DTT(ジチオトレイトール)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)による処理によりリンカー試薬とのコンジュゲーションに対して反応性とすることができる。したがって、それぞれのシステイン架橋は、理論上、2つの反応性チオール求核剤を形成する。追加の求核基は、リジン残基の修飾を介して、例えば、リジン残基を2-イミノチオラン(Traut試薬)と反応させてアミンをチオールに変換させることにより抗体中に導入することができる。反応性チオール基も、1、2、3、4つ以上のシステイン残基を導入することにより(例えば、1つ以上の非天然システインアミノ酸残基を含むバリアント抗体を調製することにより)抗体中に導入することができる。
【0238】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、抗体上の求電子基、例えば、アルデヒドまたはケトンカルボニル基と、リンカー試薬または薬物上の求核基との間の反応によっても産生することができる。リンカー試薬上の有用な求核基としては、限定されるものではないが、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジドが挙げられる。一実施形態において、抗体は、リンカー試薬または薬物上の求核置換基と反応し得る求電子部分を導入するように修飾される。別の実施形態において、グリコシル化抗体の糖を、例えば、過ヨウ素酸塩酸化試薬により酸化してリンカー試薬または薬物部分のアミン基と反応し得るアルデヒド基またはケトン基を形成することができる。得られるイミンシッフ塩基群は、安定した結合を形成し得、または例えば、ホウ化水素試薬により還元して安定したアミン結合を形成することができる。一実施形態において、グリコシル化抗体の炭水化物部分と、ガラクトースオキシダーゼまたはメタ過ヨウ素酸ナトリウムのいずれかとの反応は、薬物上の適切な基と反応し得る抗体中のカルボニル(アルデヒドおよびケトン)基を生じさせ得る(Hermanson,Bioconjugate Techniques)。別の実施形態において、N末端セリンまたはトレオニン残基を含有する抗体はメタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応し、第1のアミノ酸の代わりにアルデヒドを産生し得る(Geoghegan & Stroh,Bioconjugate Chem.,vol.3,pp.138-146,1992;米国特許第5,362,852号明細書)。このようなアルデヒドは、薬物部分またはリンカー求核剤と反応させることができる。
【0239】
薬物部分上の例示的な求核基としては、限定されるものではないが、リンカー部分およびリンカー試薬上の求電子基、例として、(i)活性エステル、例えば、NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート、および酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハロゲン化物、例えば、ハロアセトアミド;(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル、およびマレイミド基と反応して共有結合を形成し得るアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジド基が挙げられる。
【0240】
ADCを調製するために使用することができる非限定的な例示的な架橋試薬は、本明細書において「例示的なリンカー」と題されるセクションに記載される。このような架橋試薬を使用して2つの部分、例として、タンパク質性部分および化学部分を結合させる方法は、当分野において公知である。一部の実施形態において、抗体および細胞毒性剤を含む融合タンパク質は、例えば、組換え技術またはペプチド合成により作製することができる。組換えDNA分子は、互いに隣接しており、またはコンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域によって隔離されている、コンジュゲートの抗体および細胞毒性部分をコードする領域を含み得る。
【0241】
さらに別の実施形態において、抗体は、腫瘍のプレターゲティングにおいて利用するために「受容体」(例えば、ストレプトアビジン)にコンジュゲートさせることができ、その腫瘍のプレターゲティングにおいては、抗体-受容体コンジュゲートを患者に投与し、次いでクリアリング剤を使用して血液循環から非結合コンジュゲートを除去し、次いで細胞毒性剤(例えば、薬物または放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートしている「リガンド」(例えば、アビジン)を投与する。
【0242】
C.診断および検出のための方法および組成物
ある実施形態において、本明細書において提供される抗Axl抗体または抗体断片のいずれも、生物学的試料中のAxlの存在の検出に使用することができる。本明細書において使用される用語「検出すること」は、定量または定性的検出を包含する。ある実施形態において、生物学的試料は、細胞または組織、例えば、乳房、膵臓、食道、肺および/または脳細胞または組織を含む。
【0243】
本発明のさらなる態様は、Axlレベルが体内の少なくとも1つの場所において正常な生理学的レベルから増加または減少する癌または別の疾患を診断および/またはモニタリングするための本発明の抗Axl抗体に関する。
【0244】
好ましい実施形態において、本発明の抗体または抗体断片は、検出可能な分子または物質、例えば、上記の蛍光分子、放射性分子または当分野において公知の任意の他の標識により標識することができる。例えば、本発明の抗体は、放射性分子により標識することができる。例えば、好適な放射性分子としては、限定されるものではないが、シンチグラフィー試験に使用される放射性原子、例えば、123I、124I、111In、186Re、および188Reが挙げられる。本発明の抗体または抗体断片は、核磁気共鳴(NMR)イメージング用のスピン標識、例えば、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄により標識することもできる。抗体の投与後、患者内の放射性標識抗体の分布を検出する。任意の好適な公知の方法を使用することができる。一部の非限定的な例としては、コンピュータ断層撮影(CT)、ポジトロン放出断層撮影(PET)、磁気共鳴イメージング(MRI)、蛍光、化学発光および超音波診断が挙げられる。
【0245】
本発明の抗体または抗体断片は、Axl過剰発現に関連する癌および疾患の診断および病期分類に有用であり得る。Axl過剰発現に関連する癌としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、膵臓癌、グリア細胞腫瘍、例えば、膠芽細胞腫および神経線維腫症、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、黒色腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)、腎臓癌(renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞腫、肉腫、血液癌(白血病)、星状細胞腫、および種々のタイプの頭頸部癌または他のAxl発現または過剰発現の過剰増殖性疾患を挙げることができる。
【0246】
本発明の抗体または抗体断片は、Axl発現が増加または減少する癌以外の疾患の診断に有用であり得る。(可溶性または細胞Axl形態の両方をそのような診断に使用することができる。典型的には、このような診断法は、患者から得られる生物学的試料の使用を含む。本明細書において使用される用語「生物学的試料」は、診断またはモニタリングアッセイにおいて使用することができる対象から得られる種々の試料タイプを包含する。生物学的試料としては、限定されるものではないが、生物起源の血液ならびに他の液体試料、固体組織試料、例えば、生検標本または組織培養物またはそれに由来する細胞、およびその子孫が挙げられる。例えば、生物学的試料としては、Axl過剰発現に関連する癌、および好ましい実施形態において、神経膠腫、胃癌、肺癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌および子宮内膜癌を有すると疑われる個体から回収される組織試料から得られる細胞が挙げられる。生物学的試料は、臨床試料、培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生物学的体液、および組織試料を包含する。
【0247】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の抗体を使用して対象からの細胞上のAxlを検出することにより対象におけるAxl過剰発現に関連する癌を診断する方法である。特に、前記方法は、
(a)対象の生物学的試料を、本発明による抗体または抗体断片と、抗体または抗体断片がAxlを発現する生物学的試料の細胞との複合体を形成するのに好適な条件下で接触させるステップ;ならびに
(b)前記複合体を検出および/または定量するステップ(前記複合体の検出は、Axl過剰発現に関連する癌を示す)
を含み得る。
【0248】
癌の進行をモニタリングするため、方法による方法を異なる時点において繰り返して試料への抗体結合が増加または減少するか否かを決定することができ、それから、癌が進行、退縮または安定しているか否かを決定することができる。
【0249】
特定の実施形態において、本発明は、Axlの発現もしくは過剰発現またはAxlの可溶性形態の減少もしくは増加に関連する疾患を診断する方法である。このような疾患の例としては、ヒト免疫障害、血栓疾患(血栓症およびアテローム血栓症)、および心血管疾患を挙げることができる。
【0250】
一実施形態において、診断または検出の方法において使用される抗Axl抗体または抗体断片が提供される。さらなる態様において、生物学的試料中のAxlの存在を検出する方法が提供される。さらなる態様において、生物学的試料中のAxlの量を定量する方法が提供される。ある実施形態において、本方法は、生物学的試料を、本明細書に記載の抗Axl抗体または抗体断片と、Axlへの抗Axl抗体または抗体断片の結合を許容する条件下で接触させること、および抗Axl抗体または抗体断片とAxlとの間で複合体が形成されるか否かを検出することを含む。このような方法は、インビトロまたはインビボで実施することができる。一実施形態において、抗Axl抗体または抗体断片は、治療法に適格の対象を選択するために使用される。一部の実施形態において、治療法は、対象への抗Axl抗体または抗体断片の投与を含む。
【0251】
ある実施形態において、標識抗Axl抗体または抗体断片が提供される。標識としては、限定されるものではないが、直接検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色団、高電子密度、化学発光、および放射性標識)、および間接的に、例えば、酵素反応または分子相互作用を介して検出される酵素またはリガンドのような部分が挙げられる。例示的な標識としては、限定されるものではないが、放射性同位体32P、14C、125I、3H、および131I、フルオロフォア、例えば希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号明細書)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素、例えば、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼとカップリングしている複素環オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカルなどが挙げられる。
【0252】
D.医薬配合物
抗Axl抗体または抗体断片は、細胞殺傷活性を有する。この細胞殺傷活性は、複数の異なる細胞系のタイプに及ぶ。さらに、これらの抗原または抗体断片は、細胞毒性剤にコンジュゲートされると腫瘍サイズを低減させ得、低減した毒性を示し得る。本出願の実施例3および6~9参照。したがって、抗Axl抗体、その断片または免疫コンジュゲートは、Axl発現に関連する増殖性疾患の治療に有用であり得る。抗体、断片または免疫コンジュゲートは、単独で、または任意の好適な薬剤または他の慣用の治療との組合せで使用することができる。
【0253】
抗Axl抗体または抗体断片は、AxlおよびまたはGas6発現、過剰発現または活性化に関連する過剰増殖性疾患を治療するために使用することができる。Axl発現についての要求以外の、治療することができる癌のタイプまたは組織に対する特定の限定は存在しない。例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、膵臓癌、グリア細胞腫瘍、例えば、膠芽細胞腫および神経線維腫症、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、黒色腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞腫、肉腫、血液癌(白血病)、星状細胞腫、および種々のタイプの頭頸部癌が挙げられる。より好ましい癌は、膠芽細胞腫、胃癌、肺癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌および子宮内膜癌である。
【0254】
抗Axl抗体または抗体断片は自然免疫応答の強力な活性化因子であり、したがって、ヒト免疫障害、例えば、敗血症の治療において使用することができる。本発明の抗Axl抗体または抗体断片は、免疫化、例えば、ワクチンのためのアジュバントとして、ならびに例えば、細菌、ウイルスおよび寄生虫に対する抗感染剤として使用することもできる。
【0255】
抗Axl抗体または抗体断片は、血栓疾患、例えば、静脈および動脈血栓症ならびにアテローム血栓症から保護し、それを予防し、または治療するために使用することができる。抗Axl抗体または抗体断片は、心血管疾患から保護し、それを予防し、または治療するため、ならびにウイルス、例えば、ラッサおよびエボラウイルスの侵入を予防し、または阻害するため、ならびにウイルス感染を治療するために使用することもできる。
【0256】
本明細書に記載の治療方法の実施形態のそれぞれにおいて、抗Axlモノクローナル抗体、抗体断片または抗Axlモノクローナル免疫コンジュゲートは、治療が求められる疾患または障害の管理に関連する慣用の方法と一致する様式で送達することができる。本明細書の開示によれば、有効量の抗体、抗体断片または免疫コンジュゲートを、そのような治療が必要とされる対象に、疾患または障害を予防または治療するために十分な期間および条件下で投与する。したがって、本発明の一態様は、Axlの発現に関連する疾患の治療が必要とされる対象に治療有効量の本発明の抗体、抗体断片または免疫コンジュゲートを投与することを含む、Axlの発現に関連する疾患を治療する方法に関する。
【0257】
投与のため、抗Axlモノクローナル抗体、抗体断片または免疫コンジュゲートを、医薬組成物として配合することができる。抗Axlモノクローナル抗体、抗体断片または抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物は、医薬組成物を調製する公知の方法に従って配合することができる。このような方法において、治療分子は、典型的には、薬学的に許容可能な担体を含有する混合物、溶液または組成物と組み合わせる。
【0258】
薬学的に許容可能な担体は、レシピエント患者により寛容され得る材料である。無菌リン酸緩衝生理食塩水は、薬学的に許容可能な担体の一例である。他の好適な薬学的に許容可能な担体は、当業者に周知である(例えば、Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,19th ed.1995)参照)。配合物は、1つ以上の賦形剤、保存剤、安定剤、緩衝剤、バイアル表面上のタンパク質損失を防止するためのアルブミンなどをさらに含み得る。
【0259】
医薬組成物の形態、投与経路、投与量およびレジメンは、通常、治療すべき病態、疾病の重症度、患者の年齢、体重および性別などに依存する。これらの検討事項は、当業者が考慮して好適な医薬組成物を配合することができる。本発明の医薬組成物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下または眼内投与用などに配合することができる。
【0260】
好ましくは、医薬組成物は、注射され得る配合物のために薬学的に許容可能なビヒクルを含有する。これらは、特定の等張無菌生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウムもしくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムなどまたはそのような塩の混合物)、または例えば、無菌水もしくは生理食塩水の添加時に注射液の構成を可能とする乾燥、特に凍結乾燥組成物中で存在し得る。
【0261】
一部の実施形態において、「安定剤」として公知であることもある等張化剤は、組成物中の液体の等張性を調整または維持するために存在する。大型荷電生体分子、例えば、タンパク質および抗体とともに使用される場合、それらは、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それにより分子間および分子内相互作用の潜在性を減少させ得るため「安定剤」と称されることが多い。等張化剤は、医薬組成物の0.1重量%~25重量%、好ましくは1~5%の任意の量で存在し得る。好ましい等張化剤としては、多価糖アルコール、好ましくは三価またはより高級の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールが挙げられる。
【0262】
追加の賦形剤としては、以下の1つ以上として機能し得る薬剤が挙げられる:(1)増量剤、(2)溶解度向上剤、(3)安定剤および(4)および変性または容器壁への接着を防止する薬剤。このような賦形剤としては、多価糖アルコール(上記列挙);アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなど;有機糖または糖アルコール、例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えばイノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;単糖(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース);二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖(例えば、ラフィノース);ならびに多糖(例えば、デキストリンまたはデキストラン)を挙げることができる。
【0263】
非イオン性界面活性剤または洗浄剤(「湿潤剤」としても公知)は、治療剤を溶解させるのに役立ち、および撹拌誘導性凝集から治療タンパク質を保護するために用いることができ、さらにそれにより、活性治療タンパク質または抗体の変性を引き起こさずに剪断表面応力への配合物の曝露を可能とする。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、好ましくは、約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの濃度範囲で存在し得る。
【0264】
好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用することができる陰イオン性洗浄剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムが挙げられる。陽イオン性洗浄剤としては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0265】
投与に使用される用量は、種々のパラメータに応じて、特に、使用される投与方式、関連病変、または代替的に所望の治療期間に応じて適合させることができる。医薬組成物を調製するため、有効量の抗体または抗体断片を、薬学的に許容可能な担体または水性媒体中で溶解または分散させることができる。
【0266】
注射使用に好適な剤形としては、無菌水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む配合物;および無菌注射液または分散液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。全ての場合において、剤形は無菌でなければならず、容易な注射針通過性(syringeability)が存在する程度に流動性でなければならない。これは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、微生物、例えば、細菌および真菌の汚染作用から保存しなければならない。
【0267】
遊離塩基または薬理学的に許容可能な塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤と好適に混合された水中で調製することができる。分散液も、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、およびその混合物中で、ならびに油中で調製することができる。通常の保存および使用の条件下で、これらの製剤は微生物の成長を防止するための保存剤を含有する。
【0268】
抗体または抗体断片は、中性または塩形態の組成物に配合することができる。薬学的に許容可能な塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)が挙げられ、それは無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸、または例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩も、無機塩基、例えば、水酸化カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは鉄、および例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から誘導することができる。
【0269】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であってもよい。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用により、分散液の場合には要求される粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射組成物の吸収延長は、その組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによりもたらすことができる。
【0270】
無菌注射液は、要求量の活性化合物を適切な溶媒中に、必要であれば上記に列挙された他の成分の1つ以上とともに取り込み、次いで滅菌濾過することにより調製される。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基礎分散媒体および上記に列挙されるものから要求される他の成分を含有する無菌ビヒクル中に取り込むことにより調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製法は、活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末を予め滅菌濾過されたその溶液から生じさせる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0271】
直接注射のためのより濃縮され、または高度に濃縮された溶液の調製も企図され、溶媒としてのジメチルスルホキシド(DMSO)の使用は極めて急速な浸透をもたらし、高濃度の活性薬剤を小さな腫瘍区域に送達することが想定される。
【0272】
配合時、液剤は投与配合物と適合性の様式で、治療有効であるような量で投与される。配合物は、種々の投与剤形で、例えば、上記のタイプの注射液で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなどを用いることもできる。
【0273】
水溶液中での非経口投与のため、例えば、液剤は、必要であれば好適に緩衝化すべきであり、液体希釈剤は、まず、十分な生理食塩水またはグルコースにより等張とすべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に好適である。これに関連して、用いることができる無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知である。例えば、1投与量を1mlの等張NaCl溶液中で溶解させることができ、1000mlの皮下点滴療法用液体に添加し、または提案される注入部位に注射することができる(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035-1038 and 1570-1580参照)。投与量のいくらかの変動が、治療される対象の病態に応じて必然的に生じる。投与責任者は、いずれのイベントにおいても、個々の対象に適切な用量を決定する。
【0274】
抗体または抗体断片は、治療混合物内に1用量あたり0.0001~10.0ミリグラム、または約0.001~5ミリグラム、または約0.001~1ミリグラム、または約0.001~0.1ミリグラム、または約0.1~1.0またはさらには約10ミリグラムを送達するように配合することができる。複数回用量を選択される時間間隔において投与することもできる。
【0275】
非経口投与、例えば、静脈内または筋肉内注射用に配合された化合物に加えて、他の薬学的に許容可能な形態としては、例えば、錠剤または経口投与用の他の固形剤;徐放性カプセル剤;および現在使用されている任意の他の形態が挙げられる。
【0276】
ある実施態様において、リポソームおよび/またはナノ粒子の使用が、宿主細胞中への抗体または抗体断片の導入のために企図される。リポソームおよび/またはナノ粒子の形成および使用は、当業者に公知である。
【0277】
ナノカプセル剤は、一般に、安定した再現性のある手法で化合物を捕捉し得る。細胞内へのポリマーの過剰負荷に起因する副作用を回避するため、このような超微細粒子(サイズは約0.1μm)が、インビボで分解し得るポリマーを使用して一般に設計される。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が本発明における使用のために企図され、このような粒子は容易に作製することができる。
【0278】
リポソームは、水性媒体中で分散するリン脂質から形成され、多重膜同心円状二層小胞(多層膜ベシクル(MLV)とも称される)を自発的に形成する。MLVは、一般に25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、コア中で水溶液を含有する200~500Åの範囲の直径を有する小さな一枚膜ベシクル(SUV)の形成をもたらす。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度および二価陽イオンの存在に依存する。
【0279】
本明細書に記載の抗Axl抗体または抗体断片を含有する医薬配合物は、所望の純度の程度を有するそのような抗体または抗体断片を1つ以上の任意選択の薬学的に許容可能な担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することにより、凍結乾燥配合物または水溶液の形態で調製される。薬学的に許容可能な担体は、一般に、用いられる投与量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、それとしては、限定されるものではないが、緩衝液、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;酸化防止剤、例として、アスコルビン酸およびメチオニン;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免役グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;単糖、二糖、および他の炭水化物、例として、グルコース、マンノース、もしくはデキストリン;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0280】
本明細書における例示的な薬学的に許容可能な担体としては、介在性薬物分散剤、例えば、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)がさらに挙げられる。ある例示的なsHASEGPおよび使用方法、例として、rHuPH20は、米国特許出願公開第2005/0260186号明細書および同第2006/0104968号明細書に記載されている。一態様において、sHASEGPは、1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼ、例えば、コンドロイチナーゼと組み合わされる。
【0281】
例示的な凍結乾燥抗体配合物は、米国特許第6,267,958号明細書に記載されている。水性抗体配合物としては、米国特許第6,171,586号明細書および国際公開第2006/044908号パンフレットに記載のものが挙げられ、後者の配合物はヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0282】
本明細書における配合物は、治療される特定の適応症に対する必要に応じて、2つ以上の活性成分も含有し得る。好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する成分を単一配合物中で組み合わせることができる。例えば、EGFRアンタゴニスト(例えば、エルロチニブ)、抗アンドロゲン剤(例えば、抗VEGF抗体であり得るVEGFアンタゴニスト)または化学療法剤(例えば、タキソイドまたは白金剤)を、本発明の抗Axl抗体、抗体断片または免疫コンジュゲートに加えて提供することが望ましい場合がある。このような活性成分は、意図される目的のために有効である量の組合せで好適に存在する。
【0283】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術により、または界面重合により調製されるマイクロカプセル中にカプセル封入することができる。例えば、それぞれ、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)中またはマクロエマルション中の、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルを用いることができる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示される。
【0284】
徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の好適な例としては、抗体または抗体断片を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、そのマトリクスは、成形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態であり得る。
【0285】
インビボ投与に使用すべき配合物は、一般に無菌性である。無菌状態は、例えば、滅菌濾過膜に通す濾過により容易に達成することができる。
【0286】
E.治療方法および組成物
本明細書において提供される抗Axl抗体または抗体断片のいずれも、治療方法において使用することができる。一態様において、医薬品として使用される抗Axl抗体または抗体断片が提供される。さらなる態様において、癌(例えば、乳癌、非小細胞肺癌、膵臓癌、脳腫瘍、膵臓、脳、腎臓、卵巣、胃、白血病、子宮内膜、結腸、前立腺、甲状腺、肝臓の癌、骨肉腫、および/または黒色腫)の治療において使用される抗Axl抗体または抗体断片が提供される。ある実施形態において、治療の方法において使用される抗Axl抗体または抗体断片が提供される。ある実施形態において、本発明は、個体に有効量の抗Axl抗体または抗体断片を投与することを含む、癌を有する個体を治療する方法において使用される抗Axl抗体または抗体断片を提供する。ある実施形態において、本発明は、個体に有効量の抗Axl抗体または抗体断片を投与することを含む、免疫障害(例えば、自己免疫障害)、心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症、高血圧、血栓症)、感染性疾患(例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス)または糖尿病を有する個体を治療する方法において使用される抗Axl抗体または抗体断片を提供する。1つのそのような実施形態において、本方法は、個体に有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、下記のものを投与することをさらに含む。さらなる実施形態において、本発明は、血管新生の阻害、細胞増殖の阻害、免疫機能の阻害、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)の阻害、腫瘍血管系(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)の阻害、および/または腫瘍間質機能の阻害において使用される抗Axl抗体または抗体断片を提供する。
【0287】
ある実施形態において、本発明は、個体に有効の抗Axl抗体または抗体断片を投与して血管新生を阻害し、細胞増殖を阻害し、免疫機能を阻害し、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)を阻害し、腫瘍血管系発生(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)を阻害し、および/または腫瘍間質機能を阻害することを含む、個体において血管新生を阻害し、細胞増殖を阻害し、免疫機能を阻害し、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)を阻害し、腫瘍血管系(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)を阻害し、および/または腫瘍間質機能を阻害する方法において使用される抗Axl抗体または抗体断片を提供する。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、好ましくは、ヒトである。
【0288】
さらなる態様において、本発明は、医薬品の製造または調製における抗Axl抗体または抗体断片の使用を提供する。一実施形態において、医薬品は、癌(一部の実施形態において、乳癌、非小細胞肺癌、膵臓癌、脳腫瘍、膵臓、脳、腎臓、卵巣、胃、白血病、子宮内膜、結腸、前立腺、甲状腺、肝臓の癌、骨肉腫、および/または黒色腫)の治療用である。さらなる実施形態において、医薬品は、癌を有する個体に有効量の医薬品を投与することを含む、癌を治療する方法において使用される。さらなる実施形態において、医薬品は、個体に有効量の抗Axl抗体または抗体断片を投与することを含む、免疫障害(例えば、自己免疫障害)、心血管障害(例えば、アテローム動脈硬化症、高血圧、血栓症)、感染性疾患(例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス)または糖尿病を治療する方法において使用される。1つのそのような実施形態において、本方法は、個体に有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、下記のものを投与することをさらに含む。さらなる実施形態において、医薬品は、血管新生の阻害、細胞増殖の阻害、免疫機能の阻害、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)の阻害、腫瘍血管系(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)の阻害、および/または腫瘍間質機能の阻害用である。さらなる実施形態において、医薬品は、個体に有効量の医薬品を投与して血管新生を阻害し、細胞増殖を阻害し、免疫機能を促進し、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)を誘導し、腫瘍血管系発生(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)を阻害し、および/または腫瘍間質機能を阻害することを含む、個体において血管新生を阻害し、細胞増殖を阻害し、免疫機能を阻害し、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)を阻害し、腫瘍血管系(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)を阻害し、および/または腫瘍間質機能を阻害する方法において使用される。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0289】
さらなる態様において、本発明は、癌を治療する方法を提供する。一実施形態において、本方法は、そのような癌を有する個体に有効量の抗Axl抗体または抗体断片を投与することを含む。1つのそのような実施形態において、本方法は、個体に有効量の下記の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0290】
さらなる態様において、本発明は、免疫障害(例えば、自己免疫障害)、心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症、高血圧、血栓症)、感染性疾患(例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス)または糖尿病を治療する方法を提供する。1つのそのような実施形態において、本方法は、個体に有効量の少なくとも1つの下記の追加の治療剤を投与することをさらに含む。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0291】
さらなる態様において、本発明は、個体において血管新生を阻害し、細胞増殖を阻害し、免疫機能を阻害し、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)を阻害し、腫瘍血管系(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)を阻害し、および/または腫瘍間質機能を阻害する方法を提供する。一実施形態において、本方法は、個体に有効量の抗Axl抗体または抗体断片を投与して血管新生を阻害し、細胞増殖を阻害し、免疫機能を促進し、炎症性サイトカイン分泌(例えば、腫瘍関連マクロファージからのもの)を誘導し、腫瘍血管系発生(例えば、腫瘍内血管系または腫瘍関連血管系)を阻害し、および/または腫瘍間質機能を阻害することを含む。一実施形態において、「個体」は、ヒトである。
【0292】
さらなる態様において、本発明は、例えば、上記治療方法のいずれかにおいて使用される、本明細書において提供される抗Axl抗体または抗体断片のいずれかを含む医薬配合物を提供する。一実施形態において、医薬配合物は、本明細書において提供される抗Axl抗体または抗体断片のいずれかおよび薬学的に許容可能な担体を含む。別の実施形態において、医薬配合物は、本明細書において提供される抗Axl抗体または抗体断片のいずれかおよび少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、下記のものを含む。
【0293】
それぞれのおよび全ての上記治療において、本発明の抗体または抗体断片は、単独で、免疫コンジュゲートとして、または他の薬剤との組合せで治療法において使用することができる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与することができる。ある実施形態において、追加の治療剤は、抗血管新生剤である。ある実施形態において、追加の治療剤は、VEGFアンタゴニスト(一部の実施形態において、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)である。ある実施形態において、追加の治療剤は、EGFRアンタゴニスト(一部の実施形態において、エルロチニブ)である。ある実施形態において、追加の治療剤は、化学療法剤および/または細胞増殖抑制剤である。ある実施形態において、追加の治療剤は、タキソイド(例えば、パクリタキセル)および/または白金剤(例えば、カルボ白金(carboplatinum))である。ある実施形態において、追加の治療剤は、患者の免疫または免疫系を向上させる薬剤である。
【0294】
上記のこのような併用療法は、併用投与(同一または別個の配合物中に2つ以上の治療剤が含まれる)、および別個の投与を包含し、別個の投与の場合、抗体または抗体断片の投与は、追加の治療剤および/またはアジュバントの投与前、投与と同時に、および/または投与後に行うことができる。抗体または抗体断片は、放射線療法との組合せで使用することもできる。
【0295】
抗体または抗体断片は、良好な医療行為と一致する様式で、配合し、投薬し、投与することができる。これに関連する検討事項の因子としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床病態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および医師に公知の他の因子が挙げられる。抗体または抗体断片は、必ずしもそうである必要はないが、場合により、当該の障害を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤とともに配合される。このような他の薬剤の有効量は、配合物中の抗体または抗体断片の量、障害または治療のタイプ、および上記で考察される他の因子に依存する。これらは一般に、本明細書に記載のものと同一の投与量および投与経路で、もしくは本明細書に記載の投与量の約1~99%で使用され、または実験的/臨床的に適切と判断される任意の投与量で、および任意の経路により使用される。
【0296】
疾患の予防または治療について、抗体または抗体断片の適切な投与量(単独で、または1つ以上の他の追加の治療剤との組合せで使用される場合)は、治療すべき疾患のタイプ、抗体または抗体断片のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体または抗体断片が予防または治療目的で投与されるか否か、前治療、患者の病歴および抗体または抗体断片に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存する。抗体または抗体断片は好適に、1回で、または一連の治療にわたり患者に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、例えば、1回以上の別個の投与によるものであるか、連続注入によるものであるかにかかわらず、約1μg/kg~40mg/kgの抗体または抗体断片が、患者への投与のための初回候補投与量であり得る。1つの典型的な1日投与量は、上記因子に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であり得る。数日間以上にわたる反復投与については、病態に応じて、治療は一般に疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続される。このような用量は、断続的に、例えば、毎週または3週間毎(例えば、患者が約2~約20回、または例えば、約6回の用量の抗体または抗体断片を受容するように)投与することができる。より高い初回負荷用量、次いで1回以上のより低い用量を投与することができる。しかしながら、他の投与量レジメンが有用であり得る。この治療法の進行は、慣用の技術およびアッセイにより容易にモニタリングされる。
【0297】
上記配合物または治療方法のいずれも、抗Axl抗体の代わりに、またはそれに加えて本発明の抗体断片または免疫コンジュゲートを使用して実施することができることが理解される。
【0298】
腫瘍を撲滅するための宿主の免疫機能の向上は、関心が増加している主題である。慣用の方法としては、(i)APC増強、例えば、(a)外来MHCアロ抗原をコードするDNAの腫瘍中への注射、または(b)腫瘍の免疫抗原認識の確率を増加させる遺伝子(例えば、免疫刺激サイトカイン、GM-CSF、共刺激分子B7.1、B7.2)による生検採取腫瘍細胞の形質移入、(iii)養子細胞免疫療法、または活性化腫瘍特異的T細胞による治療が挙げられる。養子細胞免疫療法は、腫瘍浸潤宿主Tリンパ球を単離し、例えば、IL-2または腫瘍またはその両方による刺激を介してインビトロでその集団を拡大することを含む。さらに、機能不全の単離T細胞を、抗PD-L1抗体のインビトロ適用により活性化することもできる。次いで、こうして活性化されたT細胞を宿主に再投与することができる。これらの方法の1つ以上を、本発明の抗体、抗体断片または免疫コンジュゲートの投与との組合せで使用することができる。
【0299】
癌のための慣習的な治療法としては、以下のもの:(i)放射線療法(例えば、ラジオセラピー、X線療法、放射線照射)または癌細胞を殺傷し、腫瘍を縮小させるためのイオン化放射線の使用が挙げられる。放射線療法は、外部ビームラジオセラピー(EBRT)を介して外部から、または小線源療法を介して内部から施与することができ;(ii)一般に急速に分裂する細胞に影響を及ぼす化学療法、または細胞毒性薬の適用;(iii)癌細胞の調節不全タンパク質に特異的に影響を及ぼす標的療法、または薬剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブ、ゲフィニチブ;モノクローナル抗体、光線力学的療法);(iv)免疫療法、または宿主免疫応答の向上(例えば、ワクチン);(v)ホルモン療法、またはホルモンの遮断(例えば、腫瘍がホルモン感受性である場合)、(vi)血管新生阻害剤、または血管形成および成長の遮断、ならびに(vii)苦痛緩和ケア、または疼痛、悪心、嘔吐、下痢および出血を低減させるためのケアの質の改善に指向される治療が挙げられる。鎮痛剤、例えば、モルヒネおよびオキシコドン、制吐剤、例えば、オンダンセトロンおよびアプレピタントは、より侵襲的な治療レジメンを可能とし得る。
【0300】
癌の治療において、癌免疫の治療のための既に記載されている慣用の治療のいずれも、抗Axl抗体または抗体断片の投与前、投与後または投与と同時に実施することができる。さらに、抗Axl抗体または抗体断片は、慣用の癌治療、例えば、腫瘍結合抗体(例えば、モノクローナル抗体、毒素コンジュゲートモノクローナル抗体)および/または化学療法剤の投与前、投与後または投与と同時に投与することができる。
【0301】
F.製品およびキット
本発明の別の態様において、上記障害の治療、予防および/または診断に有用な材料を含有する製品が提供される。製品は、容器および容器上または容器に伴うラベルまたは添付文書を含む。好適な容器としては、例えば、瓶、バイアル、注射器、IV溶液バッグなどが挙げられる。容器は、種々の材料、例えばガラスまたはプラスチックから形成することができる。容器は、組成物それ自体、または病態の治療、予防、および/もしくは診断に有効な別の組成物との組合せである組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針により貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の抗体または抗体断片である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選択される病態の治療に使用されることを示す。さらに、製品は、(a)抗体または抗体断片を含む組成物を中に含有する第1の容器;および(b)さらなる細胞毒性剤または他の治療剤を含む組成物を中に含有する第2の容器を含み得る。本発明のこの実施形態における製品は、組成物を特定の病態を治療するために使用することができることを示す添付文書をさらに含み得る。あるいは、またはさらに、製品は、薬学的に許容可能な緩衝液、例えば、注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液およびデキストロース溶液を含む第2(または第3)の容器をさらに含み得る。これは、商業的および使用者の見地から望ましい他の材料、例として、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針および注射器をさらに含み得る。
【0302】
上記製品のいずれも、抗Axl抗体に代えて、またはそれに加えて本発明の免疫コンジュゲートを含み得ることが理解される。
【0303】
最後に、本発明はまた、少なくとも1つの本発明の抗体または抗体断片を含むキットを提供する。本発明のポリペプチド、抗体もしくは抗体断片、または抗体薬物コンジュゲートを含有するキットは、Axl発現(増加または減少)の検出において、または治療もしくは診断アッセイにおいて使用される。本発明のキットは、固体担体、例えば、組織培養プレートまたはビーズ(例えば、sepharoseビーズ)にカップリングしている抗体を含有し得る。例えば、ELISAまたはウェスタンブロットにおける、インビトロでのAxlの検出および定量のための抗体を含有するキットを提供することができる。検出に有用なこのような抗体は、標識、例えば、蛍光または放射標識とともに提供することができる。
【0304】
キットは、その使用に関する説明書をさらに含有する。一部の実施形態において、説明書は、U.S.Food and Drug Administrationによりインビトロ診断キットに要求される説明書を含む。一部の実施形態において、キットは、試料中の脳脊髄液の存在または不存在を、前記試料中のAxlの存在または不存在に基づき診断するための説明書をさらに含む。一部の実施形態において、キットは、1つ以上の抗体または抗体断片を含む。他の実施形態において、キットは、1つ以上の酵素、酵素阻害剤または酵素活性化剤をさらに含む。さらに他の実施形態において、キットは、1つ以上のクロマトグラフィー化合物をさらに含む。さらに他の実施形態において、キットは、分光光度アッセイ用の試料を調製するために使用される1つ以上の化合物をさらに含む。さらなる実施形態において、キットは、指示薬の強度、色スペクトル、または他の物理的属性に従ってAxlの存在または不存在を解釈するための比較参照材料をさらに含む。
【0305】
以下の実施例は、限定されるものではないが、本開示の軟ゼラチンカプセル剤の説明のためのものである。当分野において通常見出され、当業者に明らかである種々の条件およびパラメータの他の好適な改変および適合が本開示の範囲内である。
【実施例】
【0306】
実施例1:Axlに対する条件的に活性な抗体
Axlは、条件的に活性な抗体によりアクセス可能な細胞外ドメインを有する膜貫通チロシンキナーゼである。この細胞表面タンパク質は、甲状腺癌組織中で高度に発現され、多くの他の癌、例えば、骨髄増殖性障害、前立腺癌細胞、または乳癌において過剰発現される。Axlタンパク質の細胞外ドメインに対する条件的に活性な抗体が本明細書において発見された。
【0307】
Axlに対する野生型抗体(
図1Aの063-hum10F10-HCの重鎖可変領域および
図1Bの063-hum10F10-HCの軽鎖可変領域を有する)を、テンプレート抗体として選択した。テンプレート抗体中のそれぞれの位置を1つずつランダム化する方法である包括的位置進化(CPE)を使用して野生型抗体をコードするDNAを進化させて突然変異抗体ライブラリーを生成した。ライブラリー中のそれぞれの突然変異抗体は、1つのみの単一点突然変異を有する。ELISAにより測定してpH7.4と比べてpH6.0においてAxlに対する選択結合親和性についての同時スクリーニングにより、ライブラリー中の突然変異抗体を生成した。
【0308】
同時に、突然変異抗体の発現レベルも、製造プロセスにおけるより高いフィールドの目的のために最適化した。FLAGタグを使用してスクリーニングを血清中で行った。それというのも、スクリーニングについて偽陽性を引き起こし得る血清中のヒト抗体が存在したためである。スクリーニング緩衝液は、炭酸塩緩衝液(リンガーを有するKrebs緩衝液-PBSと異なるが標準的な緩衝液)であった。生成された条件的に活性な抗体は、両方とも野生型抗体と比較してpH6.0においてAxlに対する高い親和性を有するが、pHG7.4においてAxlに対する低い親和性を有することが見出された。選択された突然変異抗体(scFv)の一部を
図2に表し、pH7.4よりもpH6.0において活性が高かった一方、pH6.0とpH7.4との活性比は少なくとも11倍であった(
図3)。
【0309】
さらに、これらの条件的に活性な活性は全て、以下の表4に示されるとおり高い発現レベルを有し、列「クローン」は抗体を示し、発現レベル「mg/ml」を第2の列に示す。
【0310】
これらの抗体のクローンをサービス提供業者に要求される発現レベル(「オーダー量」、予測発現レベル)で送付した。しかしながら、これらの抗体の実際の発現レベル(「送達量」)は極めて高く、予測発現レベルを超過した。
【0311】
【0312】
条件的に活性な抗体は、テンプレートとしてのBAP063.9-13-1抗体を使用して
図4において実証されるとおり緩衝液中で凝集を示さなかった。BAP063.9-13-1抗体をサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。
図4において、1つのみのピークが検出され、抗体がほとんど凝集せず、または全く凝集しないことを実証した。
【0313】
条件的に活性な抗体を、表面プラズモン表面(SPR)も使用してアッセイしてAxlに対するオンおよびオフ速度を計測した。SPRアッセイは、条件的に活性な抗体についてのオンおよびオフ速度を計測することが公知であった。SPRアッセイは、重炭酸塩の存在下で実施した。条件的に活性な抗体のインビボのオンおよびオフ速度(動物およびヒトにおけるもの)は、条件的に活性な抗体に極めて重要な特徴である。
【0314】
条件的に活性な抗体は、陰性対照(pH6.0およびpH7.4の両方において類似の結合親和性を有するBAP063 10F10)と比較してpH6.0において高い結合親和性およびpH7.4において低い結合親和性を有することが観察された(
図5)。さらに、室温から60℃への温度上昇は、ELISAアッセイ結果を有意に変更しなかった(
図5)。ELISAアッセイは、それらの条件的に活性な抗体がpH7.4と比較してpH6.0において高度に選択的であることも示した(
図6A~6Bは、一例として1つの抗体を示す)。
【0315】
条件的に活性な生物抗体を表5にまとめる。これらの抗体の2つを、scFvとして発現させた(BAP063.9-13.3およびBAP063.9-48.3)。1時間の60℃において抗体のインキュベーションは、抗体のほとんどの親和性を変化させなかった(「熱安定性」)。
【0316】
条件的に活性な抗体は、本発明によりCTCの表面上のAxlタンパク質を検出するために使用することができる。
【0317】
【0318】
実施例2:抗Axl抗体のpH依存的結合親和性
本発明の抗Axl抗体の一部を、異なるpHレベルにおいて緩衝液中で試験した。緩衝液の1つのタイプは、1%のウシ血清アルブミン(BSA)が存在するKREBS緩衝液であった。KREBS緩衝液は、5~7.4の範囲のpHを有するように滴定した。ELISAアッセイ(OD
450)を使用してAxlについての抗体の結合親和性を計測し、結果を
図7に提示する。2つの対照抗体(BAP063-3831およびBAP063-3818)は、pHの変化により有意に影響されなかった結合親和性を有するため、条件的に活性でなかった。他方、本発明の抗Axl抗体は、Axlについてのその結合親和性がpHに依存的であったため、条件的に活性であった(
図7)。
【0319】
実施例3:抗Axl抗体による細胞殺傷
A549細胞を使用して本発明の抗Axl抗体の細胞殺傷活性を試験した。結果を
図8A~8Eに示す。細胞殺傷活性を2つのpHレベル:6.0および7.4において計測し、腫瘍微小環境中のpHおよび正常の生理学的pHをそれぞれ表した。種々の抗体濃度における細胞殺傷の割合を
図8A~8Eに示す。
【0320】
2つの試験は、一貫した細胞殺傷結果を与えた。陰性対照(抗Axlヒト化WT)は、A549細胞についてpH6.0およびpH7.4において類似の細胞殺傷活性を示した(
図8A)。対照的に、本発明の抗Axl抗体は、特に、抗体がA549細胞を飽和しない低い抗体濃度においてpH7.4における細胞殺傷活性と比較してpH6.0において有意に高い細胞殺傷活性を示した(
図8B~8E)。
【0321】
実施例4:抗Axl抗体によるcyno-Axlに対する結合親和性
本発明の抗Axl抗体によるcyno-Axlに対する結合親和性を計測し、6.0および7.4のpHにおいて2つの異なる緩衝液中でヒトAxl(hAxl)の結合親和性と比較した。結果を
図9A~9Dに示す。cyno-Axlは、非ヒト霊長類、すなわち、サル類カニクイザル(cynomolgus macaques)からのAxlタンパク質である。
【0322】
対照(BA-3831-WT)は、2つの緩衝液中でpH6.0および7.4の両方においてヒトAxl(hAxl)およびカニクイザルAxl(cyno-Axl)の両方に対して類似の結合親和性を示した(
図9A)。本発明の抗Axl抗体は、2つの緩衝液の一方でhAxlおよびcyno-Axlについての類似の結合親和性プロファイルを示し、すなわち、pH6.0におけるcyno-Axlに対する結合親和性と比較してpH7.4におけるcyno-Axlに対する結合親和性が低かった(
図9B~9D)。他方の緩衝液中のpH6.0およびpH7.0における結合親和性の差異は、有意でなかった。
【0323】
実施例5:デュオマイシンにコンジュゲートしている抗Axl抗体の細胞毒性
デュオマイシンは、タンパク質合成を停止させることにより細胞成長を阻害するため、細胞毒性である。本発明の抗Axl抗体の1つ、BAP063.9 4007をデュオマイシンにコンジュゲートさせた。2つの対照BAP063humWTおよびB12(抗B12抗体)をこの試験に使用し、それらも両方ともデュオマイシンにコンジュゲートさせた。
【0324】
いくつかの細胞系を、pH6.0および7.4において3つのデュオマイシンコンジュゲート抗体(BAP063.9 4007、BAP063humWT、およびB12)により処理した(
図10A~10H)。本発明のデュオマイシンコンジュゲート抗体BAP063.9 4007は、細胞系DU145(前立腺癌細胞)、MDA-MD-231(乳癌細胞)、PL45(膵臓癌細胞)、およびA549(腺癌細胞)に対して、pH6.0においてpH7.4における同一細胞に対する細胞毒性と比較して有意に高い細胞毒性を示した。
【0325】
実施例6:モデル毒素にコンジュゲートしている抗Axl抗体
本発明の抗Axl抗体をモデル毒素(例えば、ゲムシタビン)にコンジュゲートさせて条件的に活性な抗体-薬物コンジュゲート(CAB-Axl-ADC)を産生した。最初にCAB-Axl-ADCを試験して条件的細胞殺傷活性が薬物コンジュゲーションプロセスにより変更されないことを確認した。この試験は、CAB-Axl-ADCがpH7.4よりもpH6.0において有意に多くの細胞を殺傷することを示した(
図11)。
【0326】
次いで、CAB-Axl-ADCを、MiaPaCa2ゼノグラフト腫瘍を担持するマウスに、1mg/kgの用量において3週間、週2回注射した。裸CAB(コンジュゲーションなしの抗Axl抗体)、ビヒクル、毒素単独(非コンジュゲートゲムシタビン)、対照ADC、親和性一致抗Axl ADC(AM ADC)を含めたいくつかの対照をこの試験において使用した。試験は、CAB-Axl-ADC(CAB ADC)およびAM ADCが対照と比較して有意に大きな腫瘍のサイズ低減を提供することを示した(
図12)。非コンジュゲート抗Axl抗体は、腫瘍のサイズを低減させなかった。この試験は、毒素にコンジュゲートしている抗Axl抗体が、腫瘍サイズ低減において親和性一致抗体と同程度に有効であることを示した。
【0327】
実施例7:サル類カニクイザル(cynomolgus macaques)における抗Axl抗体薬物コンジュゲートの血清濃度
本発明の抗Axl抗体の薬物(デュオマイシン)コンジュゲート(CAB-ADC)を、サル類の雄および雌カニクイザル(cynomolgus macaques)中に3つの用量:0.1、1、および10mg/kgにおいて注射した。裸抗Axl抗体を対照として使用した。親和性一致抗体薬物コンジュゲート(AM-ADC)も対照として使用した。抗体の血清濃度を1週間の期間にわたり計測した(168時間、
図13A~13B参照)。CAB-ADCは、サル血清中でAM-ADC対照よりも長く持続した(
図13B)。雄および雌サル間の有意差は存在しなかった(
図13A~13B)。
【0328】
実施例8:サル類カニクイザル(cynomolgus macaques)における抗Axl抗体薬物コンジュゲートの毒性
本発明のCAB-ADCの毒性をサル類カニクイザル(cynomolgus macaques)において試験した。アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼ(ALT)は、Food and Drug Administration(FDA)による薬物の肝臓毒性の指標として使用されている。血清ASTおよびALTレベルを雄および雌サルの両方で計測した(
図14A~14B)。10mg/kg投与の3日後において、ビヒクル(PBS)は血清中のASTレベルの変更もALTレベルの変更も引き起こさなかった一方、一致抗体薬物コンジュゲート(AM)は極めて高いASTおよびALTレベルを示した。CAB-ADCは、AM対照と比較して有意に低減したASTおよびALTレベルを示した。これは、本発明の抗Axl抗体薬物コンジュゲートが一致抗体薬物コンジュゲートAMに対して有意に低減した肝臓毒性を有することを示した。
【0329】
本発明の抗Axl抗体薬物コンジュゲートは、サルにおいてより小さな炎症を引き起こすことも見出された(
図15)。CAB、AMおよびPBSの注射後のサルの血液中のリンパ球数をまとめた。顕著な炎症を引き起こしたAMと比較して、本発明の抗Axl抗体薬物コンジュゲート(CAB-ADC)は、サルにおいて軽度の炎症のみを引き起こした。
【0330】
実施例9:マウスにおけるインビボ実験
マウスに、腫瘍に発達する2つの腫瘍細胞系(LCLC103HまたはDU145)の一方を移植した。抗腫瘍薬モノメチルアウリスタチンE(MMAE)による処理後の腫瘍サイズを計測した。LCLC103Hを受容したマウスについて、マウスを単回用量のビヒクル(陰性対照として)、CAB抗Axl抗体コンジュゲートMMAE ADC(CAB Axl-MMAE)、または非CAB抗Axl抗体コンジュゲートMMAE ADCC(非CAB Axl-MMAE)により処理した、
図16A。ADCにより処理したマウス中の腫瘍は縮小した一方、ビヒクルにより処理したマウス中の腫瘍は成長し続けた。
【0331】
さらに、DU145を受容したマウスを、ビヒクル(陰性対照)またはCAB抗Axl抗体コンジュゲートMMAE ADC(CAB Axl-MMAE)により2つの異なる濃度(6mg/kgおよび10mg/kg)において処理した。腫瘍体積を経時的に計測した。腫瘍は、陰性対照群(ビヒクル)において成長し続けた一方、ADCにより処理したマウスにおいては腫瘍成長は減速した(
図16B)。
【0332】
しかしながら、本発明の多数の特徴および利点を、本発明の構造および機能の詳細と一緒に上記の詳細な説明において記載してきたが、本開示は、説明のためのものにすぎず、変更を詳細に、特に本発明の原理内でパーツの形状、サイズおよび配置の事項において、添付の特許請求の範囲が表現される用語の広義の一般的意味により示される完全な程度に作製することができることを理解すべきである。
【0333】
本明細書に挙げられる全ての文献は、参照により全体として、あるいはそれらが特に依存する開示を提供するために本明細書に組み込まれる。本出願人らは、任意の開示実施形態を公的に提供する意図はなく、任意の開示の改変または変更が特許請求の範囲の範囲内に文字通り収まり得ない程度で、それらは、均等論のもと、その一部とみなされる。
【配列表】