(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】第Xa因子のための新規な化学発光基質
(51)【国際特許分類】
C07D 277/66 20060101AFI20240319BHJP
C07K 5/10 20060101ALI20240319BHJP
C12Q 1/66 20060101ALI20240319BHJP
G01N 21/76 20060101ALI20240319BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240319BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C07D277/66 CSP
C07K5/10
C12Q1/66 ZNA
G01N21/76
G01N33/50 T
G01N33/68
(21)【出願番号】P 2021546466
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2019078224
(87)【国際公開番号】W WO2020079155
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-12
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521161727
【氏名又は名称】エンザイヤ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】ENZYRE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヘールデ, ワーンデル ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ゲッフェン, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ステーグス, ダニーク
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502492(JP,A)
【文献】Biolumin. Chemilumin.: Instrum. Appl. ,1985年,Volume 2,Pages 25-39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 277/66
C07K 5/10
C12Q 1/66
G01N 21/76
G01N 33/50
G01N 33/68
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I-3)若しくは(I-4)
【化1】
(式中、
rは、0、1、2又は3であり、
r’は、0、1、2又は3であり、
dは、0、1又は2であり、
gは、0又は1であり、
g’は、0又は1であり、
Xは、NH
2、OH、O(C
1-6アルキル)、(OCH
2CH
2)
1-6OH、(OCH
2CH
2)
1-6O(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)(OCH
2CH
2)
1-6OH、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)(OCH
2CH
2)
1-6O(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)O(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)OH及びNP’(式中、P’はアミン保護基である)から選択される末端部分で
ある)
の化合物又はその生理学的に許容される塩。
【請求項2】
dが、0又は1、好ましくは1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
rが、1若しくは2であるか、又はgが1であり、
好ましくはrが1であり、より好ましくはrが1であり、且つgが1である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(I-3s)又は(I-4s)
【化2】
(式中、r、r’、d、g、g’及びXは、請求項1~3のいずれか一項に定義された通りである)
の、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
一般式(II-3)又は(II-4)
【化3】
(式中、r、r’、d、g、g’及びXは、請求項1~4のいずれか一項に定義された通りである)
の、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
一般式(III-3)又は(III-4)
【化4】
(式中、
dは、0、1又は2であり、
rは、0、1、2又は3であり、
r’は、0、1、2又は3であり、
gは、0又は1であり、
g’は、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、5又は6であり、
pは、0、1、2、3、4、5又は6であり、
sは、0、1、2、3、4、5又は6であり、
aは、0又は1である)
の、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
dが、0若しくは1、好ましくは1であり、及び/又は
rが、1若しくは2、好ましくは1であり、及び/又は
r’が、1若しくは2、好ましくは1であり、及び/又は
gが、0若しくは1、好ましくは1であり、及び/又は
g’が、0若しくは1、好ましくは1であり、及び/又は
mが、0若しくは1であり、及び/又は
pが、1、2若しくは3、好ましくは2であり、及び/又は
sが、1若しくは2、好ましくは1であり、及び/又は
aが1である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
MePEG2-IEGR及びMePEG2-IDGR
【化5】
から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
P’が、トリチル、アリル、ベンジル(Bn)、ベンゾイル(Bz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、2-トリメチルシリルエチルオキシカルボニル、トシル(Ts)、アセチル(Ac)、トリフルオロアセチル、フタルイミド、ベンジリデンアミン及びアリルオキシカルボニル(Alloc)からなる群から、好ましくはベンジル(Bn)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、トシル(Ts)及びアリルオキシカルボニル(Alloc)からなる群から選択され、より好ましくはP’がベンジルオキシカルボニルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
HCl塩、酢酸塩、ギ酸塩、TFA塩及びメシル酸塩から任意選択で選択される酸付加塩、好ましくはHCl塩又はTFA塩、最も好ましくはTFA塩である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物と、ルシフェラーゼ、ATP、Mg
2+源、及び第Xa因子などの凝固因子からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる化合物とを含む組合せ。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物を含み、好ましくはポイントオブケアデバイスである、化学発光を測定するためのデバイス。
【請求項13】
サンプル中の凝固因子を定量する方法であって、
a)前記サンプルを、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物を含む組成物と接触させて、アミノルシフェリンを放出するステップと、
b)前記アミノルシフェリンをルシフェラーゼと接触させるステップと、
c)前記ルシフェラーゼにより発生した相対光強度を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記凝固因子が、第IX因子、第IXa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第VII因子、第VIIa因子、第XI因子、第XIa因子、第XII因子、第XIIa因子、第X因子、第Xa因子、プレカリクレイン及びカリクレインから選択される、
任意選択で、ステップa)の間、前記組成物が、第IX因子、第IXa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第VII因子、第VIIa因子、第XI因子、第XIa因子、第XII因子、第XIIa因子、第X因子、プレカリクレイン及びカリクレインから選択される少なくとも1つのさらなる凝固因子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
サンプル中の抗凝固剤を定量する方法であって、
a)前記サンプルを、第Xa因子と請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物とを含む組成物と接触させて、アミノルシフェリンを放出するステップと、
b)前記アミノルシフェリンをルシフェラーゼと接触させるステップと、
c)前記ルシフェラーゼにより発生した相対光強度を決定するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、血液凝固酵素第Xa因子の監視に適した化学発光基質分子に関する。化学発光基質は、凝固因子のアッセイと、サンプル中の抗凝固剤の定量とに特に有用である。
【0002】
[背景技術]
凝固としても既知の血液の凝固は、液体からゲルへの血液の変換であり、血餅を生じる。凝固は止血過程の一部であり、最終的に過剰な失血を防ぐ。凝固は、血管の内皮層が損なわれた後間もなく始まる。内皮下腔の曝露は、組織因子への血漿第VII因子(FVII)の結合につながり、最終的にフィブリン形成につながる。いわゆる一次止血において、血小板が損傷部位において血栓をすぐに形成する。いわゆる二次止血が同時に起こり、凝固因子が複雑なカスケードで反応してフィブリン線維を形成し、血小板血栓を強化する。凝固は、生物学全体を通じて高度に保存されている。
【0003】
第X因子(FX)は、凝固において重要なタンパク質である。FXは、活性化第X因子(FXa)のチモーゲンである。FXは、因子VII(a)との組織因子(TF)の複合体(FVII(a))によって、又はテナーゼ複合体によって活性化することができる。テナーゼ複合体は、酵素としての活性化第IX因子(FIXa)と、補因子としての活性化FVIII(FVIIIa)と、負電荷を帯びたある一定の百分率のリン脂質を含むリン脂質表面とすべて結合したチモーゲンFXとを含む。テナーゼ複合体はFXをFXaへと変換する。
【0004】
FX又はFXa活性の検出及び定量は、様々な理由で重要である。FXaは、プロトロンビンを切断することにより作用し、活性トロンビンを与え、FXはFXaのチモーゲンであり、したがってFXをFXaに変換することができる。したがって、それらの検出は、血液凝固動態の洞察を与える。FXa活性は、抗凝固活性の尺度として使用することもでき、FXa又はその生成の検出は、プロテインC及びプロテインSのような抗凝固タンパク質の濃度を測定するのに適用することができる。最後に、FXaは、FXaに対するヘパリノイド又は直接経口抗凝固剤(DOAC)化合物のようないくつかの抗凝固薬の読出しとしても使用される。
【0005】
血液凝固因子を定量する方法は周知である(S.S.van Berkel、博士論文第1章、2008、Radboud University Nijmegen参照)。より新しいクラスのアッセイである包括的止血アッセイのための方法がM.van Geffen(博士論文第2章及び第3章、2012、Radboud University Nijmegen)により記述されている。従来、血液凝固因子の定量のためのこれらの既知の方法では、フィブリン形成が読出しとして測定される。或いは、ペプチドに結合されたパラニトロアニリンに基づく、後に開発された発色プローブは、トロンビンなどの酵素又はFXaによりペプチドが切断されると、パラニトロアニリン(pNA)を遊離する。得られた色は定量することができ、酵素活性の尺度である。例は、Chromogenixから市販されているS-2765(Z-D-Arg-Gly-Arg-pNA・2HClである)及びChromogenixから市販されているS-2222(Bz-Ile-Glu-Gly-Arg-pNA・HClを含む)である(IEGRは配列番号1である)。
【0006】
発色試験は不利な点を有し、すなわち、発色試験の方法は光学密度の測定に依存するので、血塊形成のために濁るであろう混合物中で行うことができず、発色の黄色は、血漿の固有の黄色を妨害する。したがって発色試験は、脱線維素血漿中、したがって乏血小板血漿中で行われるべきである。さらに発色試験は、連続的な設定で測定することができないため、サブサンプリングを必要とする。乏血小板血漿(PPP)から多血小板血漿(PRP)、全血へと進むと、生理系は、体内で起こることをさらに表すようになるが、同時に、評価することが技術的により困難になる。
【0007】
蛍光発生基質の適用は、脱線維素されていない多血小板血漿及び全血における測定を可能にし、したがって、連続監視を可能にしながらアッセイ系を生理系に1ステップ近づけた。上記で引用したVan Berkelの論文は、トロンビン用蛍光発生プローブの開発について論じている。
【0008】
蛍光定量プローブab204711が市販されている(Abcam PLC(英国)製)。この第Xa因子活性アッセイキット(蛍光定量)(ab204711)は、合成基質を切断し、それによって蛍光リーダーにより定量することができるフルオロフォアを放出する第Xa因子の能力を利用する。同様のキットがMerckから入手可能である(カタログ番号MAK238-1KT)。
【0009】
他の市販の基質は、Eurogentec製センソライト(SensoLyte)(登録商標)Rh110第Xa因子アッセイキットであり、基質のFXa切断後に検出することができるフルオロフォアを生成する蛍光発生基質を同じく使用する。センソライト(登録商標)520第Xa因子アッセイキットは5-FAM/QXL(商標)520蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ペプチドを使用し、ここで5-FAMの蛍光は、QXL(商標)520により消光される。インタクトなペプチドをFXaが2つの別々の断片に切断すると、5-FAMの蛍光が回復する。このFRETペプチドは、試験化合物及び細胞成分の自己蛍光からのより少ない妨害を示す。国際公開第2006/072602号は、1つのサンプル中のいくつかの生成物の検出を可能にする、異なる特徴を有する複数の蛍光発生基質の使用について記載している。
【0010】
蛍光発生基質は不利な点を有し、すなわち、凝固系の分析のための商業的プラットホームは蛍光定量分析を一般的にはサポートせず、したがって追加の計装を必要とする。加えて、可能な場合はすべての凝固試験を1つの分析装置で実施して、試験を単純化し、且つ労力を最小化することが望まれている。したがって、包括的アッセイを測定するための別々の機器の使用は、ルーチン法としての機器の適用可能性を低減する。さらに、蛍光シグナルは、内部フィルター効果及び消光効果のために生成物濃度と直線的ではないという欠点を有する。
【0011】
発光基質は、これらの不利な点を有さない。発光基質は、発色基質又は蛍光発生基質よりも敏感であり、複雑なフィルター又は励起源を必要としない。米国特許第5035999号は発光基質に関するが、この発光基質は、水様溶液(血漿など)中の測定に適しておらず、連続測定にも適していない。国際公開第2012096566号は、トロンビン用又はプラスミン用基質に関する。Cosbyら(「Custom enzyme substrates for luciferase-based assays」、Cell Notes、18号、9~11ページ、2007)は発光基質に関するが、この発光基質は、水様溶液(血漿など)中の測定に適しておらず、連続測定にも適していない。乏しい溶解度は、アッセイの生理学的条件を損なう有機共溶媒をしばしば必要とするか、又はより大量のサンプル、若しくはより大量の試薬の添加を必要とする。
【0012】
多くの臨床例(例えば、小児の採血において、家庭状況におけるポイントオブケア監視、救急ヘリコプターを使用したアウトバウンドクリティカルケア状況において)にとって、より小さい反応体積を必要とする、したがって、より少ない血液を必要とする凝固因子用診断試験を有することが望ましいであろう。このシステムは、その設計がかなり単純であるべきであり、且つ高度な技術を必要とすべきではなく、(使い捨ての)オールインワンのポイントオブケアデバイスにおいてこのシステムを適用可能にすべきである。さらに、プローブは、広いダイナミックレンジ、好ましくは既存のアッセイによって実現されるダイナミックレンジの3桁超を可能にすべきである。プローブは、FXaなどのその酵素に特異的であるべきであり、且つ小さいサンプル体積中でその使用を可能にするように敏感であるべきである。リアルタイム測定の可能化は、この新しいプローブが使用され得るアッセイの柔軟性を改善するであろう。
【0013】
上記で示された欠点を有さない、すなわち、より単純であるべきであり、且つ直接的な方法で、好ましくは線形モードで血液凝固因子及び線溶因子の生成を測定可能であるべきである、FXa生成及び/又は他の血液凝固因子若しくはその活性の測定値を測定するための新しいアッセイが必要とされている。本発明の目的は、そのようなアッセイのための基質及び方法を提供することである。
【0014】
[発明の概要]
本発明は、医学に関するアッセイにおける使用のための基質としての新しい分子の分野にあり、特に血液凝固の分野にある。新しい分子は、適切な酵素により切断されると、化学発光物質を放出する。より詳細には、新しい分子は、止血因子の活性を直接測定する新規な方法において使用することができる。より正確には、本発明は、凝固因子を定量するための方法における使用のための分子、又は包括的アッセイにおいてFXa生成を分析するための方法における使用のための分子に関する。定量される凝固因子は、少なくとも凝固促進因子FIX、FVIII、FVII並びに抗凝固因子アンチトロンビン、プロテインC及びプロテインSである。本発明は、Xaに対するヘパリノイド及び直接経口抗凝固剤(DOAC)を定量するための方法にも関する。
【0015】
1つの態様において、本発明は、一般式(I-3)若しくは(I-4)
【化1】
(式中、rは、0、1、2又は3であり、r’は、0、1、2又は3であり、dは、0、1又は2であり、gは、0又は1であり、g’は、0又は1であり、Xは、NH
2、OH、O(C
1-6アルキル)、(OCH
2CH
2)
1-6OH、(OCH
2CH
2)
1-6O(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)(OCH
2CH
2)
1-6OH、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)(OCH
2CH
2)
1-6O(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)O(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)OH及びNP’(式中、P’はアミン保護基である)から選択される末端部分であり、任意選択で、アミノルシフェリン部分は、異なる化学発光アミンによって置き換えられている)の化合物又はその生理学的に許容される塩に関する。
【0016】
別の態様において、本発明は、第1の態様に定義された化合物と、ルシフェラーゼ、ATP、Mg2+源、及び第Xa因子などの凝固因子からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる化合物とを含む組合せに関する。好ましい実施形態において、組合せは、第1の態様の化合物を含む、化学発光を測定するためのデバイスに関する。
【0017】
別の態様において、本発明は、サンプル中の凝固因子を定量する方法であって、a)サンプルを、第1の態様の化合物を含む組成物と接触させて、アミノルシフェリンを放出するステップと、b)アミノルシフェリンをルシフェラーゼと接触させるステップと、c)ルシフェラーゼにより発生した相対光強度を決定するステップとを含む、方法に関する。ステップa)においてFXaが用意されたとき、この方法を使用して、サンプル中の抗凝固剤を定量することができる。
【0018】
[実施形態の説明]
本発明者らは、化学発光化合物の一クラスを止血アッセイにおいて使用して、FXa活性を検出することができるか、又はFXa検出を介して他の因子の活性を間接的に検出することができることを驚くべきことに見出した。したがって、第1の態様において、本発明は、一般式(I-3)若しくは(I-4)
【化2】
(式中、
rは、0、1、2又は3であり、
r’は、0、1、2又は3であり、
dは、0、1又は2であり、
gは、0又は1であり、
g’は、0又は1であり、
Xは、NH
2、OH、O(C
1-6アルキル)、(OCH
2CH
2)
1-6OH、(OCH
2CH
2)
1-6O(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)(OCH
2CH
2)
1-6OH、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)(OCH
2CH
2)
1-6O(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)O(C
1-6アルキル)、NHC(=O)(O)
0-1(C
1-6アルキレン)OH及びNP’(式中、P’はアミン保護基である)から選択される末端部分であり、
任意選択で、アミノルシフェリン部分は、異なる化学発光アミンによって置き換えられており、
任意選択で、カルボン酸部分は、C
1-4アルカノールでエステル化されている)
の化合物又はその生理学的に許容される塩を提供する。そのような化合物は、以下、本発明による化合物と呼ばれる。
【0019】
一般式I-3の化合物は、アミド結合を介して化学発光アミンに結合されたトリペプチドを含む。一般式I-4の化合物は、アミド結合を介して化学発光アミンに結合されたテトラペプチドを含む。Xがアミノ酸を形成している場合、一般式I-3についてはトリペプチドという用語が、一般式I-4についてはテトラペプチドという用語が依然として使用され、テトラペプチドはトリペプチドを含むが、これらの用語が一般にトリペプチド及びテトラペプチドを指す代わりに一般式I-3又はI-4の構造体を指すことが意図されるときは文脈から明らかになる。一般式I-3及びI-4は多くの特徴を共有する。したがって、本明細書において用いられるとき、-3又は-4などの表示がない一般式への言及は、その一般式の-3及び-4バリアントの両方に関することが意図される。例えば、一般式Iは、I-3及びI-4の両方に関し、一般式Isは、I-3s及びI-4sの両方に関する。参照を容易にするため、トリペプチド又はテトラペプチド中に存在するアミノ酸は、化学発光アミンに直接隣接するカチオン性アミノ酸から始まる番号が付けられる。したがって、Xに結合された残基は、一般式I-3では残基3であり、一方、一般式I-4では残基4である。
【0020】
化学発光分子は、当技術分野において既知である。化学発光アミンの例は、ホタルルシフェリン、ラチアルシフェリン、バクテリアルルシフェリン、セレンテラジン、シプリジンルシフェリン又は3-ヒドロキシヒスピジンのアミンなどのルシフェリンのアミンである。化学発光アミンは、好ましくは2-(6-アミノ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-(4/5)-カルボン酸などのホタルルシフェリンのアミノルシフェリン又は任意選択でそのC
1-4アルキルエステル、より好ましくは(4S)-2-(6-アミノ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸又は任意選択のそのC
1-4アルキルエステルなどの2-(6-アミノ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸又は任意選択でそのC
1-4アルキルエステル、最も好ましくは(4S)-2-(6-アミノ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-4-カルボン酸である。
【化3】
【0021】
好ましい実施形態において、一般式(II-3)又は(II-4):
【化4】
(式中、r、r’、d、g、g’及びXは、本明細書の他の場所に定義された通りであり、好ましくはアミノルシフェリン部分の4-カルボン酸はSである)
の、本発明による化合物が提供される。
【0022】
化学発光アミンは、本発明による化合物に含まれているとき、化学発光アミンの対応するルシフェラーゼ酵素に対する基質ではあり得ない。FXaによる切断は、化学発光アミンを遊離し、且つ対応する酵素による変換を可能にして、光子の放出、又は言い換えれば光量子の発生につながる。
【0023】
本発明による化合物はカルボン酸部分を有することができる。任意選択で、カルボン酸部分をC1-4アルカノールでエステル化することができる。C1-4アルカノールの例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノール、ブタン-2-オール及びイソブタノールである。この文脈において、好ましいC1-4アルカノールはメタノールである。C1-4アルカノールは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個又は9個のフッ素などのハロゲン原子で任意選択で置換されており、且つメトキシ又はエトキシで任意選択で置換されている。C1-4アルカノールは、任意選択でビニルアルコール又はアリルアルコールなどの不飽和でもあり得る。本発明による化合物は、そのようなエステル及び遊離酸の混合物、例えば、一般式I-4又は0-4の3位におけるメチルエステルの1:1混合物であり得る。
【0024】
したがって、本発明による化合物は、一般式0:
【化5】
(式中、r、r’ d、g、g’及びXは、上記で定義された通りであり、Rは、H又はC
1-4アルキルであり、好ましくはRはHである)
により表すこともできる。C
1-4アルキルは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個又は9個のフッ素などのハロゲン原子で任意選択で置換されており、且つメトキシ又はエトキシで任意選択で置換されている。C
1-4アルキルは、任意選択でビニル又はアリルなどの不飽和でもあり得る。
【0025】
本発明による化合物は、生理学的に許容される塩であり得る。そのような塩は、当技術分野において既知であり、当業者は、適した塩形態を選択することができる。この文脈において、生理学的に許容される塩は、本明細書において後に例示されるようにアッセイにおいて基質として依然として使用することができる塩である。生理学的に許容される塩の例は、ナトリウム塩又はカリウム塩などの酸付加塩又はアルカリ塩である。酸付加塩が好ましい。適した酸付加塩は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、メシル酸、トシル酸、又はHBr若しくはHClなどのハロゲン化水素酸の付加により生成された塩である。好ましい実施形態において、HCl塩、酢酸塩、ギ酸塩、TFA塩及びメシル酸塩から任意選択で選択される酸付加塩、好ましくはHCl塩又はTFA塩、最も好ましくはTFA塩である、本発明による化合物が提供される。
【0026】
一般式I-4の化合物の第3の残基は、1、2又は3メチレン単位長であり得る側鎖を有する。これはdが0、1又は2であるからである。第3の残基は、dが0であるときアスパラギン酸であり得、第3の残基は、dが1であるときグルタミン酸であり得る。そのような化合物は良好な結果を示した。したがって、好ましい実施形態において、dが、0又は1、好ましくは1である、本発明による化合物が提供される。
【0027】
一般式Iの第1の残基はカチオン性側鎖を有し、一般式I-3の第3の残基もカチオン性側鎖を有する。これらのカチオン性側鎖は、g又はg’が0であるとき一級アミンに基づき得、g又はg’が1であるときグアニジン部分に基づき得る。gが1である基質は、FXaに対する良好な親和性を有し、したがって、好ましい実施形態において、gは1である。好ましい実施形態において、g’は1である。より好ましい実施形態において、g及びg’は1である。アルギニンではrが1でありgが1であるので、gが1であるとき、rが1であることが好ましい。同様に、リシンではrが2でありgが0であるので、gが0であるとき、rが2であることが好ましい。同様に、g’が1であるとき、r’が1であることが好ましい。同様に、g’が0であるとき、r’が2であることが好ましい。好ましい実施形態において、rが、1若しくは2であるか、又はgが1であり、好ましくはrが1であり、より好ましくはrが1であり、且つgが1である、本発明による化合物が提供される。
【0028】
FXaを含むセリンプロテアーゼ活性の定量にアルギニン及びリシンが好ましい。より速く作用する基質が望ましいとき、アルギニンが好ましい可能性がある。より遅く作用する基質が望ましいとき、リシンが好ましい可能性がある。FXaに対する本発明による化合物の親和性はアッセイパラメータに影響がある。包括的アッセイについては、より低い親和性を有する基質が望ましい。定量的アッセイについては、より高い親和性を有する基質が望ましい。
【0029】
特定のキラリティーを有する基質は、FXaに対する改善された親和性を有することが見出された。好ましくは、第1の残基はLである。側鎖がなく、したがってグリシンと言える第2の残基に対するキラル選好は存在しない。第3の残基に対する一般的な選好は存在しないが、トリペプチドを含む一般式については、第3の残基は好ましくはDであり、一方、テトラペプチドを含む一般式については、第3の残基は好ましくはLである。第4の残基は好ましくはLである。したがって、好ましい実施形態において、本発明による化合物は、Lである第1の残基を有する。より好ましい実施形態において、本発明による化合物は、一般式I-3の化合物であるとき、Lである第1の残基と、Dである第3の残基とを有するか、又は一般式I-4の化合物であるとき、Lである第3及び第4の残基を有する。したがって、好ましい実施形態において、一般式(I-3s)又は(I-4s)
【化6】
(式中、r、r’、d、g、g’及びXは、本明細書の他の場所に定義された通りである)
の、本発明による化合物が提供される。
【0030】
Xは、NH2、OH、O(C1-6アルキル)、(OCH2CH2)1-6OH、(OCH2CH2)1-6O(C1-6アルキル)、NHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキル)、NHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキレン)(OCH2CH2)1-6OH、NHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキレン)(OCH2CH2)1-6O(C1-6アルキル)、NHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキレン)O(C1-6アルキル)、NHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキレン)OH及びNP’(式中、P’はアミン保護基である)から選択される末端部分である。この文脈において、末端部分は、本発明による化合物の末端に必ずしもないが、一般式Iのトリペプチド又はテトラペプチドの末端(一般的にはN末端側)にある。(OCH2CH2)1-6部分を含む末端部分が、良好な水性溶解度を有する本発明による化合物につながることが見出された。したがって、好ましくはXは、(OCH2CH2)1-6OH、(OCH2CH2)1-6O(C1-6アルキル)、NHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキレン)(OCH2CH2)1-6OH又はNHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキレン)(OCH2CH2)1-6O(C1-6アルキル)である。
【0031】
Xが、NHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキル)、NHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキレン)(OCH2CH2)1-6OH、NHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキレン)(OCH2CH2)1-6O(C1-6アルキル)、NHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキレン)O(C1-6アルキル)又はNHC(=O)(O)0-1(C1-6アルキレン)OHであるとき、Xは、NHC(=O)(O)0-1モチーフのために、アミド又はカルバメートを介して本発明による化合物に結合されている。好ましくは、Xは、これらの場合アミドである。したがって、好ましい実施形態において、Xは、NHC(=O)(C1-6アルキル)、NHC(=O)(C1-6アルキレン)(OCH2CH2)1-6OH、NHC(=O)(C1-6アルキレン)(OCH2CH2)1-6O(C1-6アルキル)、NHC(=O)(C1-6アルキレン)O(C1-6アルキル)又はNHC(=O)(C1-6アルキレン)OHであり、より好ましくはXは、NHC(=O)(C1-6アルキレン)(OCH2CH2)1-6OH又はNHC(=O)(C1-6アルキレン)(OCH2CH2)1-6O(C1-6アルキル)である。
【0032】
Xに含まれたとき、C1-6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル、sec-イソペンチル、2-メチルブチル、n-ヘキシル又はイソヘキシルであり得、好ましくはC1-6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル又はイソブチルであり、より好ましくはC1-6アルキルは、メチル、エチル、イソプロピル又はtert-ブチル、最も好ましくはメチルである。
【0033】
Xに含まれたとき、C1-6アルキレンは、メチレン、メチルメチレン、エチレン、n-プロピレン、メチルエチレン、n-ブチレン、1-メチルプロピレン、1,1-ジメチルエチレン、n-ペンチレン、イソペンチレン、2-メチルブチレン、n-ヘキシレン又はイソヘキシレンであり得、好ましくはC1-6アルキレンは、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン又はn-ヘキシレンであり、より好ましくはC1-6アルキレンは、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン又はn-ペンチレン、最も好ましくはメチレンである。
【0034】
Xに含まれたとき、(OCH2CH2)1-6はエチレングリコール繰返しを表す。好ましくは、(OCH2CH2)1-6は、(OCH2CH2)2、(OCH2CH2)3、(OCH2CH2)4又は(OCH2CH2)5、より好ましくは(OCH2CH2)2、(OCH2CH2)3又は(OCH2CH2)4、さらにより好ましくは(OCH2CH2)2又は(OCH2CH2)3、最も好ましくは(OCH2CH2)2である。Xが(OCH2CH2)1-6を含むとき、どのC1-6アルキレンも好ましくはメチレン又はエチレン、より好ましくはメチレンであり、どのC1-6アルキルも好ましくはメチル又はtert-ブチル、より好ましくはメチルである。
【0035】
XはNP’でもあり得る。P’はアミン保護基である。アミン保護基は、当技術分野において既知であり、且つアミン中の窒素原子並びに他の窒素原子を保護することができる。適したアミン保護基の例は、当技術分野において、例えばP.G.M.Wuts及びT.W.GreeneによりGreene’s Protective Groups in Organic Synthesis、第4版、2006(ISBN:978-0-471-69754-1)において詳しく記述されている。当業者は、本発明に従って使用されるべき適した保護基を選択することができるであろう。適したアミン保護基の例は、トリチル、アリル、ベンジル(Bn)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、2-トリメチルシリルエチルオキシカルボニル、トシル(Ts)、アセチル(Ac)、トリフルオロアセチル、フタルイミド、ベンジリデンアミン及びアリルオキシカルボニル(Alloc)である。P’に好ましい基は、トリチル、アリル、ベンジル(Bn)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、トシル(Ts)及びアリルオキシカルボニル(Alloc)である。P’により好ましい基は、アリルオキシカルボニル及びt-ブチルオキシカルボニルである。P’は窒素に常に結合されており、アミン保護基の複数の例が、(当業者に理解されるように)単一のアミン又は窒素原子を保護することができ、アミン保護基は、ピリジン環内の窒素原子など、厳密にアミンではない窒素原子を保護することもできる。P’が結合されている窒素の正しい原子価を保つために水素が付加又は除去されるべきである。したがって、原子価が許せば、NP’をNHP’と交換することができ、NHP’をNP’と交換することができる。好ましい実施形態において、P’が、トリチル、アリル、ベンジル(Bn)、ベンゾイル(Bz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、2-トリメチルシリルエチルオキシカルボニル、トシル(Ts)、アセチル(Ac)、トリフルオロアセチル、フタルイミド、ベンジリデンアミン及びアリルオキシカルボニル(Alloc)からなる群から、好ましくはベンジル(Bn)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、トシル(Ts)及びアリルオキシカルボニル(Alloc)からなる群から選択され、より好ましくはP’がベンジルオキシカルボニルである、本発明による化合物が提供される。
【0036】
好ましい実施形態において、Xは、一般式X-2:
【化7】
(式中、mは、0、1、2、3、4、5又は6であり、pは、0、1、2、3、4、5又は6であり、sは、0、1、2、3、4、5又は6であり、aは、0又は1であり、m、s又はpに含まれたメチレン部分は、メチル、エチル又はイソプロピルで置換することができ、任意選択で、得られたアルキル部分又はアルキレン部分は、1個又は複数のフッ素又は塩素などのハロゲン原子で置換することができる)により表される。したがって、好ましい実施形態において、一般式(III-3)又は(III-4)
【化8】
(式中、
dは、0、1又は2であり、
rは、0、1、2又は3であり、
r’は、0、1、2又は3であり、
gは、0又は1であり、
g’は、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、5又は6であり、
pは、0、1、2、3、4、5又は6であり、
sは、0、1、2、3、4、5又は6であり、
aは、0又は1であり、
m、s又はpに含まれたメチレン部分は、メチル、エチル又はイソプロピルで置換することができ、任意選択で、得られたアルキル部分は、1個又は複数のフッ素又は塩素などのハロゲン原子で置換することができる)
の、本発明による化合物が提供される。正しい原子価を保つために水素原子を付加又は除去することができる。好ましくは、mに含まれたメチレン部分が置換されているとき、mは、1又は2であり、より好ましくは、mに含まれたメチレン部分が置換されているとき、mは2であり、酸素原子に隣接するメチレン部分は、1個又は2個のメチル部分で置換されている。これは、それぞれイソプロポキシ及びtert-ブトキシを形成している。pが、1、2、3、4、5又は6であるとき、mが0、1又は2であることが好ましく、mが2であるとき、酸素原子に隣接するメチレン部分が1個又は2個のメチル部分で置換されていることが好ましい。
【0037】
aは、0又は1である整数であり、したがって、アミド部分をXに導入することができる。aが1である化合物が、その好都合な合成の利用可能性のために好ましい。
【0038】
sは、0、1、2、3、4、5、6又は6である整数である。sが0であり、且つaが1であるとき、Xはカルバメート部分を含む。他の例において、sは、存在するときオリゴエチレングリコール部分と、又は末端アルコール若しくはメチルエーテルとペプチドを結合するリンカー部分を形成することができる。s内のメチレン部分は、メチル、エチル又はメトキシで任意選択で置換することができ、且つ1個又は複数のフッ素又は塩素などのハロゲン原子で任意選択で置換されている。pが、1、2、3、4、5又は6であるとき、sが0、1又は2であることが好ましく、より好ましくは1又は2、より好ましくは1である。pが、1、2、3、4、5又は6であるとき、aが0であり、且つsが0、1又は2であることが好ましく、より好ましくはaが1であり、且つsが1又は2であり、より好ましくは1である。
【0039】
pは、0、1、2、3、4、5、6又は6である整数である。pは、本発明の化合物の水性溶解度に対してプラスの効果を有することができるオリゴエチレングリコール部分を形成することができる。p内のエチレングリコール部分は、メチルで任意選択で置換することができ、且つ1個又は複数のフッ素又は塩素などのハロゲン原子で任意選択で置換されている。pは、好ましくは1、2、3又は4、より好ましくは1、2又は3、さらにより好ましくは2又は3、最も好ましくは2である。
【0040】
好ましい実施形態において、本発明は、一般式III-3又はIII-4
(式中、
dは、0若しくは1、好ましくは1であり、及び/又は
rは、1若しくは2、好ましくは1であり、及び/又は
r’は、1若しくは2、好ましくは1であり、及び/又は
gは、0若しくは1、好ましくは1であり、及び/又は
g’は、0若しくは1、好ましくは1であり、及び/又は
mは、0又は1であり、及び/又は
pは、1、2若しくは3、好ましくは2であり、及び/又は
sは、1若しくは2、好ましくは1であり、及び/又は
aは1である)
の化合物を提供する。
【0041】
表1は、一般式I-4、I-4s、II-4又はIII-4の好ましい実施形態を示す。
【0042】
【0043】
好ましい実施形態において、一般式I-4、I-4s、II-4又はIII-4の化合物は、AE、AF、AG、AH、AM、AN、AO、AP、AU、AV、AW及びAXから選択される。好ましい実施形態において、一般式I-4、I-4s、II-4又はIII-4の化合物は、AE、AF、AG、AH、AM、AN、AO及びAPから選択される。好ましい実施形態において、一般式I-4、I-4s、II-4又はIII-4の化合物は、AE、AF、AG、AM、AN及びAOから選択され、より好ましくはAF、AG、AN及びAOから選択され、さらにより好ましくはAF及びANから選択され、最も好ましくはANである。
【0044】
表2は、一般式I-3、I-3s、II-3又はIII-3の好ましい実施形態を示す。
【0045】
【0046】
表3は、一般式X-2の、Xの好ましい実施形態を示す。
【0047】
【0048】
mが1又は2である表3の実施形態の好ましい実施形態において、mは1である。好ましくは、mが1又は2である表3の実施形態において、mが2であるとき、酸素原子に隣接するメチレン部分は、1個又は2個のメチル部分で置換されている。好ましい実施形態において、Xは、XBO、XBP、XBQ、XBR、XBS、XBT、XBU、XBV、XBW、XBX、XBY、XBZ、XCA、XCB、XCC及びXCDからなる群から、より好ましくはXBO、XBP、XBQ、XBR、XBS、XBT、XBU及びXBVからなる群から、より好ましくはXBO、XBP、XBQ、XBS、XBT及びXBUからなる群から選択され、最も好ましくはXBTである。
【0049】
好ましい実施形態において、一般式I-4、I-4s、II-4又はIII-4の化合物は、AE、AF、AG、AH、AM、AN、AO、AP、AU、AV、AW及びAXから選択され、最も好ましくはANであり、ここで、Xは、XBO、XBP、XBQ、XBR、XBS、XBT、XBU、XBV、XBW、XBX、XBY、XBZ、XCA、XCB、XCC及びXCDからなる群から、より好ましくはXBO、XBP、XBQ、XBR、XBS、XBT、XBU及びXBVからなる群から、より好ましくはXBO、XBP、XBQ、XBS、XBT及びXBUからなる群から選択され、最も好ましくはXBTである。好ましい実施形態において、一般式I-4、I-4s、II-4又はIII-4の化合物は、AE、AF、AG、AH、AM、AN、AO及びAPから選択され、最も好ましくはANであり、ここで、Xは、XBO、XBP、XBQ、XBR、XBS、XBT、XBU、XBV、XBW、XBX、XBY、XBZ、XCA、XCB、XCC及びXCDからなる群から、より好ましくはXBO、XBP、XBQ、XBR、XBS、XBT、XBU及びXBVからなる群から、より好ましくはXBO、XBP、XBQ、XBS、XBT及びXBUからなる群から選択され、最も好ましくはXBTである。好ましい実施形態において、一般式I-4、I-4s、II-4又はIII-4の化合物は、AE、AF、AG、AM、AN及びAOから選択され、最も好ましくはANであり、ここで、Xは、XBO、XBP、XBQ、XBR、XBS、XBT、XBU、XBV、XBW、XBX、XBY、XBZ、XCA、XCB、XCC及びXCDからなる群から、より好ましくはXBO、XBP、XBQ、XBR、XBS、XBT、XBU及びXBVからなる群から、より好ましくはXBO、XBP、XBQ、XBS、XBT及びXBUからなる群から選択され、最も好ましくはXBTである。
【0050】
表4は、本発明による化合物の好ましい実施形態を示す。本発明によるより好ましい化合物は、表4に示された化合物の生理学的に許容される塩、より好ましくは酸付加塩、最も好ましくはTFA塩である。好ましい実施形態において、MePEG2-IEGR、MePEG2-IDGR、MePEG3-IEGR、MePEG3-IDGR、MePEG2-RGR、MePEG2-RGK、MePEG3-RGR及びMePEG3-RGKから選択される、本発明による化合物が提供される。
【0051】
【0052】
より好ましい実施形態において、化合物は、MePEG2-IEGR、MePEG2-IDGR、MePEG3-IEGR、MePEG3-IDGR、MePEG2-RGR及びMePEG3-RGRから選択される。さらにより好ましい実施形態において、化合物は、MePEG2-IEGR、MePEG2-IDGR、MePEG3-IEGR及びMePEG3-IDGRから選択される。最も好ましい実施形態において、MePEG2-IEGR及びMePEG2-IDGR、好ましくはMePEG2-IDGR、より好ましくはTFA塩などのその生理学的に許容される塩から選択される、本発明による化合物が提供される。
【0053】
組合せ
別の態様において、本発明は、本発明による化合物と、ルシフェラーゼ、ATP、Mg2+源、及び第Xa因子などの凝固因子からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる化合物とを含む組合せを提供する。そのような組合せは、以下、本発明による組合せと呼ばれる。好ましくは、組合せは、ルシフェラーゼ、又は第Xa因子などの凝固因子をさらに含み、最も好ましくはルシフェラーゼをさらに含む。好ましい実施形態において、本発明による組合せは、本発明による化合物、ルシフェラーゼ、ATP、Mg2+源、及び第Xa因子などの凝固因子のそれぞれを含む。
【0054】
ルシフェラーゼは、基質としてルシフェリンを使用して生物発光を生じる酸化酵素のクラスの総称である。ルシフェラーゼは外部光源を必要としないが、ルシフェリン及びO2を必要とし、ATPもしばしば必要とする。Mg2+は、ルシフェラーゼの発光収率を増加させることが既知である。ルシフェラーゼ及びそのアッセイは、当技術分野において既知であり、当業者は、本発明による化合物に含まれたルシフェリン基質との組合せに適したルシフェラーゼを選択することができる。ルシフェラーゼは、光量子の放出下、アミノルシフェリンが遊離された後、本発明による化合物に含まれたアミノルシフェリンをその酸化類似体へと変換できるべきである。適したルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ(EC 1.13.12.7)、ウミシイタケ(Renilla)-ルシフェリン2-モノオキシゲナーゼ(EC 1.13.12.5)及びメトリディア(Metridia)ルシフェラーゼ(MetLuc)である。本発明による化合物が2-(6-アミノ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-4,5-ジヒドロチアゾール-(4/5)-カルボン酸部分を含むとき、ルシフェラーゼは好ましくはホタルルシフェラーゼである。ルシフェラーゼは、当技術分野において既知であるか、又はまだ発見若しくは工学されていない任意のルシフェラーゼでもよい。多くのルシフェラーゼが当技術分野において既知である。ルシフェラーゼは、例えばPromega、Sigmaなどの製造者から商業的に得ることができる。ルシフェラーゼは、天然、組換え又は変異ルシフェラーゼでもよい。前記変異ルシフェラーゼは、そのルシフェラーゼ活性を保持する限りにおいて、好ましくは天然(組換え)ルシフェラーゼのルシフェラーゼ活性の少なくとも25%、50%、75%を保持する限りにおいて、1つ又は複数のアミノ酸置換、アミノ酸欠失又はアミノ酸挿入を含む改変ルシフェラーゼでもよい。前記変異ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼ活性を有する限りにおいて、任意の生物由来でもよい。好ましい実施形態において、ルシフェラーゼは、速く作用するルシフェラーゼであり、これは、ルシフェラーゼが定量的情報を与えるべきアッセイに特に適しており、その理由は、ルシフェラーゼの速い作用が、飽和しているか、又はその線形範囲外にあるルシフェラーゼによって引き起こされるおそれのある妨害を低減するからである。
【0055】
ATPは、ルシフェラーゼにより必要とされ、好ましくは、ルシフェラーゼ活性の可能化に適した量で本発明による組合せ中に存在するか、又はルシフェラーゼ活性を可能にする希釈液の調製に適した量で原液中に存在する。適したATP原液は、蒸留水中の1mM溶液であるが、任意の生理学的に許容される溶媒系中の200μM~10mMの範囲内の任意の原液であり得る。
【0056】
ルシフェラーゼにより生成された発光シグナルをマグネシウムイオンが強めることが見出されたため、本発明による組合せはマグネシウムイオンをさらに含んでもよい。しかし、Mn2+などの他の二価カチオンを用いてこの効果を実現することも可能である(Rodionova及びPetushkov、J.Photochem.Photobiol B.、DOI:10.1016/j.jphotobiol.2005.12.014)。Mg2+源はマグネシウムイオンの源であり、ルシフェラーゼの機能を向上させる。Mg2+の好ましい源は、クエン酸マグネシウム、MgSO4、MgCO3、MgO、MgCl2、MgF2、MgI2、MgBr2などのマグネシウム塩及びその水和物である。MgCl2、MgF2、MgI2、MgBr2であるハロゲン化マグネシウム及びその水和物がより好ましい。最も好ましいMg2+源は、MgCl2又はその水和物である。
【0057】
本発明による組合せは凝固因子をさらに含むことができる。凝固因子は、止血因子と呼ばれることがあり、当技術分野において周知である。適した凝固因子の例は、セリンプロテアーゼ、特にセリンエンドペプチダーゼ(EC 3.4.21)の群であり、好ましくはトロンビン、FXa、プラスミン、第VIIa因子、第IXa因子、血漿カリクレイン、第XIIa因子、第XIa因子、組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)(好ましくは二本鎖tPA(tc-tPA))、活性化プロテインC及びウロキナーゼ(uPA)(好ましくはtc-uPA)からなる群から選択される。プロトロンビン、FX、FVII、FIX、プレカリクレイン、FXII、FXI、sc-tPA(一本鎖tPA)、プロテインC及びsc-uPAなど、セリンプロテアーゼのチモーゲンも包含される。非常に好ましい実施形態において、止血因子はFXa又はFXである。好ましくは、存在する因子によりFXaを生成することができるか、又は本発明による組合せをさらなる凝固因子を含むサンプルと接触させたときFXaを生成することができるような組合せ中に凝固因子は存在する。そのような場合、サンプルは、カスケードから欠損している凝固因子を供給してFXaを生成し、サンプルとの接触は、FXa生成を可能にする。好ましくは、単一の因子のみを欠損するようなカスケード中に存在するすべての因子が、欠損している因子の予想される濃度に対して過剰に存在する。これにより、サンプルからの因子がその濃度に応じてFXaを生成することが可能となり、その後、FXaは、その濃度に比例する、したがってサンプル中の因子の濃度に比例する発光シグナルを生成することができる。方法に関するセクションでは、そのような組成物を構成することができる方法についてより詳細に説明する。
【0058】
好ましい実施形態において、組合せの物質は、単一の組成物に含まれている。そのような組成物は、添加剤などのさらなる物質を含んでもよい。蒸留水などの水は適した添加剤である。他の適した添加剤は、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)などの緩衝塩である。
【0059】
他の好ましい実施形態において、組合せの物質は、別個の組成物に含まれている。これは、部品のキットの提供に好都合であり得る。好ましい実施形態において、本発明は、本発明による化合物と、ルシフェラーゼ、ATP、Mg2+源、及び第Xa因子などの凝固因子からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる化合物とを含む部品のキットを提供する。
【0060】
特定の実施形態において、本発明は、本発明による化合物を含み、好ましくはポイントオブケアデバイスである、化学発光を測定するためのデバイスを提供する。そのようなデバイスは、以下、本発明によるデバイスと呼ばれる。
【0061】
本発明によるデバイスは、例えば、従来のベンチトップルミノメーター又は手術室内での使用のためのルミノメーターなどのルミノメーターであり得るか、又は光学顕微鏡であり得、好ましくはルミノメーターである。ルミノメーター及び顕微鏡は、当技術分野において既知であり、当業者は、本発明による化合物との使用に適しているルミノメーター又は顕微鏡を選択することができる。本発明によるデバイスは、本発明による化合物又は本発明による組合せを含む使い捨てか、又は使い捨てでないカートリッジ又はインサート又はキュベット又は反応器容積でもあり得る。そのようなデバイスは、好ましくは、従来のルミノメーター又は顕微鏡との使用のために設計される。
【0062】
好ましい実施形態において、本発明によるデバイスはポイントオブケアデバイスである。本明細書において後述するように本発明による方法を使用して測定することができる小さい体積は、本発明による方法をベッドサイド分析、現場での分析又は移動中の分析などのポイントオブケア分析に理想的に適したものにする。好ましいポイントオブケアデバイスは、移動式ルミノメーターを含み、現場で、又は移動中に、又はベッドサイドで得られるか、又は得られたサンプル中の酵素活性の測定に適している。
【0063】
好ましくは、本発明によるデバイスは、分析における使用のための光源を含まない。好ましくは、本発明によるデバイスは、複数のパラメータの同時分析に使用することができる複数の容積又はチャネルを有する。好ましくは、本発明によるデバイスは、高々100、80、60、50、40、30、25、20、15、10、5、4、3、2又は1μLの体積のサンプルを、より好ましくは高々15、10、5、4、3、2又は1μLの体積の、さらにより好ましくは高々5μLの体積のサンプルを分析するように構成されている。好ましくは、本発明によるデバイスは、表示画面又はゲージ若しくはレベルインジケータを介するなどして、その分析出力をリアルタイムで提示するように構成されている。少なくとも2つの異なるアッセイ、好ましくはFVIII活性又はFXa活性などの酵素活性のための定量的アッセイと、血液凝固アッセイなどの包括的アッセイとの同時分析のために本発明によるデバイスが構成されているとき非常に好ましい。
【0064】
方法
さらなる態様において、本発明は、サンプル中の凝固因子を定量する方法であって、
a)サンプルを、本発明による化合物を含む組成物と接触させて、アミノルシフェリンを放出するステップと、
b)アミノルシフェリンをルシフェラーゼと接触させるステップと、
c)ルシフェラーゼにより発生した相対光強度を決定するステップと
を含む、方法を提供する。
【0065】
そのような方法は、以下、本発明によるアッセイと呼ばれる。この文脈において、凝固因子の定量は、凝固因子の活性の定量として理解することができる。チモーゲンの活性が決定されるとき、その対応する酵素の活性はアッセイの一部であることを当業者は理解するであろう。
【0066】
ルシフェラーゼが関与する化学発光の原理は当業者に周知である。ルシフェラーゼが関与する化学発光は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、ATP、及び光子生成のための分子状酸素を典型的に使用し、Mg2+は、反応の発光収率を改善することが既知である。ルシフェラーゼは、ATPへのルシフェリンの結合、並びにルシフェリル-AMP中間体のその後の酸化を触媒する。最終的に、ルシフェラーゼは、酸化されたルシフェリン中間体が再配列してオキシルシフェリンと、高量子効率を有する単一光子とを生成する環境を提供する。そのような発光から生じた光強度は、遊離された発光分子の化学変換又は酵素変換に関与する成分の濃度に依存する。過剰なそのような成分を使用することにより、本発明の方法の発光シグナルは、本明細書において後述するように、関心のある止血因子、例えばFXa又は別の因子による基質の切断による遊離発光分子の生成にのみ依存するようになる。したがって、そのような状況下では、光強度は前記止血因子の生成、例えばFXa生成に比例する。したがって、関心のある凝固因子の濃度はアッセイの光出力に比例するため、本発明によるアッセイの設計を通じて関心のある凝固因子を定量することができる。
【0067】
本発明による化合物を使用することにより、血液凝固因子の生成を測定する発色法又は蛍光発生法に必要とされるような一次導関数の計算を必要とせずに、止血因子の生成、例えばFXa生成を直接的であれ間接的であれ、又はFXa濃度自体を、連続的に、半連続的に、又は直接的な方法で測定することができることを本発明者らは見出した。典型的には、関心のある止血因子により本発明の基質が切断されると、アミノルシフェリンである「発光分子」が遊離され、発光分子は、検出可能な光シグナル(又は「光量子」又は「光子」又は「光単位」)を生成するその後の化学変換又は酵素変換を受けやすい。光量子は不可逆ステップで生成されるため出力シグナルの蓄積がなく、出力シグナルはFXa活性(したがって、おそらくFXa生成に関与する因子の活性)の直接的な尺度である。任意の所与の時点で存在する止血因子の量に正比例するシグナルをリアルタイムで検出することができ、蓄積する光シグナルの一次導関数を計算する必要がないことは、蛍光基質又は発色基質を使用する既存の方法と比べて、本方法の著しい利点である。本方法では、光シグナルのさらなる生成による妨害がない。加えて、外部光源及び光学フィルターは光シグナルの測定に必要とされない。したがって、本発明の方法は先行技術の方法よりも好都合である。
【0068】
サンプルは、対象からのサンプルであり得、好ましくは対象からあらかじめ得られたサンプルである。対象はヒトであり得る。対象は非ヒトであり得る。サンプルは好ましくは流体である。好ましいサンプルは血液又は血液由来である。適したサンプルは、全血、及び乏血小板血漿又は多血小板血漿などの血漿である。最も好ましいサンプルは、対象からあらかじめ得られた乏血小板血漿などの乏血小板血漿である。
【0069】
凝固因子は、当技術分野において周知である。本発明によるアッセイの文脈において、好ましい凝固因子は、第IX因子(FIX)、第IXa因子(FIXa)、第VIII因子(FVIII)、第VIIIa因子(FVIIIa)、第VII因子(FVII)、第VIIa因子(FVIIa)、第XI因子(FXI)、第XIa因子(FXIa)、第XII因子(FXII)、第XIIa因子(FXIIa)、第X因子(FX)及び第Xa因子(FXa)である。FX(a)などの表記は、FX及びFXaの両方又はいずれかを参照する。
【0070】
凝固因子の生理学的役割は、トロンビン生成を最終的に可能にすることである。トロンビンは、そのフィードバック活性化の役割の点から、凝固カスケードの最も重要な構成要素である。ヒトでは、プロセスの一部は一般的には以下の通りである:他の任意の活性化凝固因子よりも多い量のFVIIaが流れている。血管への損傷に続いて、FVII(a)は組織因子(TF)と接触することができ、最終的に活性化複合体(TF-FVIIa)を形成する。TF-FVIIaはFIXを活性化してFIXaを生成し、且つFXを活性化してFXaを生成する。TF-FVIIaによるFXの活性化(FXaを生成する)は、TF-TFPI-FXa複合体内でTF(組織因子)経路阻害剤(TFPI)により、ほとんどすぐに阻害される。FXa及びその補因子FVaはプロトロンビナーゼ複合体を形成し、プロトロンビナーゼ複合体はプロトロンビンをトロンビンに活性化する。次いで、トロンビンは、(FIXとの複合体を形成する)FV及びFVIIIを含む凝固カスケードの他の成分を活性化し、FVIIIを活性化してvWFとの結合から放出し、FVIIIaを生成する。FVIIIaはFIXaの補因子であり、一緒にこれらは「テナーゼ」複合体を形成し、テナーゼ複合体はFXを活性化し、サイクルを継続する。
【0071】
好ましい実施形態において、凝固因子が、第IX因子、第IXa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第VII因子、第VIIa因子、第XI因子、第XIa因子、第XII因子、第XIIa因子、第X因子及び第Xa因子から選択される、本発明によるアッセイが提供される。凝固因子はFXaであるべきであるか、又はFXaの形成に寄与すべきである。
【0072】
例えば、アッセイされる凝固因子がFXaであるときは、凝固因子はFXaである。アッセイされる凝固因子がFXaではないときは、凝固因子はFXaの形成に寄与すべきである。このため、FXが存在すべきである。
【0073】
ある種の組合せにおいて、FXaの生成は、テナーゼ複合体内のFVIII、FIX及びFXのようないくつかの凝固因子又はTF-FVIIa複合体内の組織因子若しくはFVIIaの濃度に比例する。欠損している因子を除くすべての因子が過剰に存在するときは、欠損している因子の活性は、発光出力により決定された最終的なFXa活性に相関し得る。
【0074】
FVIIaによるか、又はTFの存在下のFVIIaによりFXをFXaへと変換することができ、したがってFVIIaがアッセイされるとき、凝固因子はFXであるべきであり、これは、次いで、サンプル中のFVIIaが、過剰なFXをFXaへと変換することができるからである。
【0075】
いわゆるテナーゼ複合体内でFIXa及びFVIIIaによりFXをFXaへと変換することもできる。テナーゼ複合体は、FIXa、FVIIIa、FX、アニオン性リン脂質及びカルシウムからなる。したがって、FIXaがアッセイされるとき、凝固因子はFX又はFVIIIaであるべきであり、好ましくはFX及びFVIIIaの両方が存在すべきであり、より好ましくはアニオン性リン脂質及びカルシウムと共に存在すべきである。したがって、FVIIIaがアッセイされるとき、凝固因子はFX又はFIXaであるべきであり、好ましくはFX及びFIXaの両方が存在すべきであり、より好ましくはアニオン性リン脂質及びカルシウムと共に存在すべきである。ひいては、FXIaによりFIXをFIXaへと変換することができ、したがってFIXがアッセイされるとき、FIXaについて記載された条件に加えてFXIaが好ましくは存在する。当業者は、凝固経路における様々な相互作用を認識しており、どの凝固因子がアッセイされるかに応じて、本発明によるアッセイにおいて存在すべき適した凝固因子を選択することができるであろう。一般に、アッセイされる成分を除いて、凝固経路の成分は過剰に存在すべきである。次いで、アッセイされる凝固因子がサンプルを介して供給され、その基質、補因子又は他の相互作用物質のいずれかが過剰に存在するため、アッセイされる凝固因子の量は、生じて、本発明による化合物を介して最終的に検出されるFXa活性と直接相関することになる。
【0076】
チモーゲンの検出が対応する酵素の検出を一般的には含むこと、及びしたがってチモーゲンの検出がチモーゲン及び対応する活性酵素の両方の検出になることを当業者は理解するであろう。例えば、FVIIの検出は、結果としてFVII及びFVIIaの同時検出になる。
【0077】
包括的アッセイ
好ましい実施形態の1つのクラスでは、凝固経路のすべての成分が存在する。そのようなアッセイは、包括的アッセイと本明細書では呼ばれ、好ましくは、サンプル自体により供給された凝固因子を使用して事前に作成される。したがって、包括的アッセイにおいて、好ましくは凝固経路の成分は、生理系で見出される比に似た比で存在する。包括的アッセイに好ましいサンプルは、全血、及び多血小板血漿又は乏血小板血漿などの血漿、より好ましくは血漿、最も好ましくは乏血小板血漿である。包括的止血アッセイは、好ましくはFXIIa、FXIa又はFIXaなどの活性凝固因子、組織因子(TF)及び/又はカルシウムの血漿への添加、より好ましくはTF及び/又はカルシウムの添加、最も好ましくはTF及びカルシウムの両方の添加により開始され、これは、FXa生成とその後に続くトロンビン生成及びその後の血塊形成につながる。開始後、トロンビンがカスケードの伝播及び停止に必要とされる。そのような包括的設計におけるFXa濃度の測定は、凝固カスケードのサンプルの能力に関する情報を与える。
【0078】
ステップa)-アミノルシフェリンの放出
ステップa)において、サンプルを、本発明による化合物を含む組成物と接触させて、アミノルシフェリンを放出する。FXaは、本発明による化合物に含まれたペプチドを認識することができ、発光部分からペプチドを切断して、アミノルシフェリンを放出する。したがって、FXaがアッセイされる凝固因子であるとき、ステップa)の間、他の凝固因子が存在する必要はない。非常に好ましい実施形態において、ステップa)の間、カルシウム及びリン脂質が存在する。カルシウム及びリン脂質は、テナーゼ複合体の形成に適しているべきである。このリン脂質は好ましくはアニオン性リン脂質である。
【0079】
凝固因子活性のための条件は、当技術分野において既知であり、接触が好ましくは行われるのはこの状況下である。一例は、生理学的に許容される緩衝液、例えばBSAなどの1%血清アルブミンを任意選択で含むトリス緩衝液の使用である。適したトリス緩衝液の一例はトリス緩衝生理食塩水(TBS;50mMトリス-HCl、150mM NaCl;pH7.4)である。本発明による基質の濃度は、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45又は50μM以上、より好ましくは少なくとも30μMなど、少なくとも20又は30μMである。本発明による基質の濃度は、好ましくは高々5000、4000、3000、2000、1750、1500、1250、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60μM又はそれ未満、より好ましくは高々2500又は200μM又は1750μM又は1500μM又は1250μM又は1000μM又は900μM又は800μM又は700μM又は600μM又は500μM又はそれ未満、さらにより好ましくは高々750μMなど、高々2000又は750μM又はそれ未満である。
【0080】
このステップは、アッセイされる凝固因子の存在を発光出力と関連させるものであり、したがってルシフェラーゼの基質がこのステップにおいて放出される。この文脈において、放出は、例えばカルボン酸がSである一般式II-4に示されたアミノルシフェリン部分の加水分解と解釈されるべきである。基質に応じて、他の発光部分も放出することができる。化学発光基質は、本発明による化合物に含まれているとき、さらなる変換に利用可能ではないため、放出は、化学発光基質をステップb)におけるその後の変換に利用可能にするものである。
【0081】
好ましい実施形態において、アッセイされる凝固因子が、第IX因子、第IXa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第VII因子、第VIIa因子、第XI因子、第XIa因子、第XII因子、第XIIa因子、第X因子、第Xa因子、プレカリクレイン及びカリクレインから選択される、好ましくは第IX因子、第IXa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第X因子及び第Xa因子から選択される、
【0082】
任意選択で、ステップa)の間、組成物が、第IX因子、第IXa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第VII因子、第VIIa因子、第XI因子、第XIa因子、第XII因子、第XIIa因子、第X因子、プレカリクレイン及びカリクレインから選択される、好ましくは第IX因子、第IXa因子、第VIII因子、第VIIIa因子及び第X因子から選択される少なくとも1つのさらなる凝固因子を含む、本発明によるアッセイが提供される。上述のように凝固因子はFXaであるべきであるか、又はFXaの形成に寄与すべきである。さらなる凝固因子はFXaの生成に寄与すべきである。
【0083】
いわゆるテナーゼ複合体内でFIXa及びFVIIIaによりFXをFXaへと変換することができる。テナーゼ複合体は、FIXa、FVIIIa、FX、アニオン性リン脂質及びカルシウムからなる。したがって、FIXaがアッセイされるとき、凝固因子は、FX又はFVIIIaのうちのいずれか1つであり得、次いで、さらなる凝固因子は、どちらの因子が既に選択される凝固因子ではないかに応じて、好ましくはFX又はFVIIIaのいずれかである。したがって、FVIIIaがアッセイされるとき、凝固因子は、FX又はFIXaのうちのいずれか1つであるべきであり、さらなる凝固因子は、どちらの因子が既に選択される凝固因子ではないかに応じて、好ましくはFX又はFIXaのいずれかであるべきである。当業者は、凝固経路における様々な相互作用を認識しており、どの凝固因子がアッセイされるかに応じて、本発明によるアッセイにおいて存在すべき適した凝固因子及びさらなる凝固因子を選択することができるであろう。
【0084】
ステップb)-ルシフェラーゼによるアミノルシフェリンの酸化
ステップb)において、アミノルシフェリンをルシフェラーゼと接触させる。この接触の目的は、放出されたアミノルシフェリンからなど、ステップa)において放出された化学発光分子から光量子を発生させることである。化学発光基質を変換して光量子を生成する方法は当技術分野において確立されており、この接触の間にさらなる物質も存在すると、ルシフェラーゼ、好ましくはホタルルシフェラーゼはより機能的になることができる。したがって、好ましい実施形態において、ステップb)は、放出された化学発光分子をATPと接触させるステップをさらに含む。好ましい実施形態において、ステップb)は、放出された化学発光分子をMg2+と接触させるステップをさらに含む。非常に好ましい実施形態において、ステップb)は、放出された化学発光分子をATP及びMg2+と接触させるステップをさらに含む。ステップb)の間にATPも存在するとき、ATPは、約50~1000μMの最終濃度で、好ましくは約250~500μMの、より好ましくは約333μMなど約300~400μMの最終濃度で存在することができる。ステップb)の間にMg2+が存在するとき、Mg2+は、約1~30μMの最終濃度で存在することができ、Mg2+は、好ましくは約4~12mMの、より好ましくは約8.3mMなど約6~10mMの最終濃度で存在する。ルシフェラーゼは、好ましくは約0.05~50mg/mLで、より好ましくは約0.1~10mg/mLで、さらにより好ましくは約0.9mg/mLでなど約0.5~5mg/mLで存在する。
【0085】
ステップa)及びステップb)を同時に及び/又は同じ反応体積中で実施することができる。好ましい実施形態において、ステップa)及びステップb)は同じ反応体積中で実施され、反応体積は、ステップa)及びb)の両方に必要なすべての試薬を好ましくは同時に含む。これにより、放出された化学発光分子をルシフェラーゼにより遅滞なく変換することが可能となる。
【0086】
ステップc)-相対光強度の決定
ステップc)において、発光シグナルが決定される。これは、当技術分野において既知である任意の方法で、例えばルミノメーターを使用して行うことができる。決定された光強度は、アッセイされる凝固因子を定量するための基礎として使用される。これは、本明細書において先述したように、そして実施例5及び6に例示されるように、凝固因子の濃度は、相対光単位(RLU)として好ましくは表された相対光強度に相関するからである。いくつかの実施形態において、相対光強度は、基準値又は検量曲線と比較される。そのような検量曲線は、例えば実施例に示されるように、既知量のアッセイされる凝固因子を使用して好ましくは作成された。基準値は、所定の値などの設定値であり得るか、又は対照サンプルによるアッセイ結果であり得る。この文脈において、対照サンプルは、好ましくは、ある種の仕様を満たすことが既知であるサンプル、若しくは健常対象から(あらかじめ)得られたサンプルであり、又は対照サンプルは正常プール血漿である。
【0087】
相対光強度は、実際のルシフェラーゼ活性を直接表し、ひいては、放出される発光基質の実際の量を直接表し、ひいては、FXa活性を直接表す。上述のように、ひいては、FXa活性は、他の凝固因子の活性を直接表すことができる。したがって、相対光強度は、関与する酵素及び基質の一定のkaのために、アッセイされる凝固因子の量に関する直接的な情報を与える。これは、蛍光発生アッセイ又は発色アッセイなどの蓄積するアッセイとは対照的である。蛍光発生アッセイ又は発色アッセイについては、変換率を決定するために傾きを計算しなければならない。発光アッセイでは、(例えばRLUの)平坦な出力が変換率を直接示す。好ましい実施形態において、ステップc)は、ステップc)において決定された任意のシグナルの導関数を決定するステップを含まない。より好ましい実施形態において、ステップc)は、ルシフェラーゼにより発生した相対光強度の一次導関数を決定するステップを含まない。この文脈において、ルシフェラーゼにより発生した光強度は、本発明による化合物から放出されるアミノルシフェリンなどの発光分子から生じた相対光強度に関する。発光は、当技術分野において既知の方法による波長で測定することができる。適した波長の例は、360~630nmの間の波長である。
【0088】
したがって、ある時点で決定された相対光強度は、凝固因子活性に関する関連情報を直接与える。それでも、設定期間の間の、又はある一定の条件が満たされるまでの相対光強度の決定は、アッセイの動態に関する関連情報を与えることができる。これは、出力が一般的にはベル型曲線になる上述のような包括的アッセイに特に有用である。したがって、好ましい実施形態において、ステップc)は、ある期間にわたりルシフェラーゼにより発生した相対光強度を決定するステップを含む。この期間は、好ましくは高々150、120、90、80、70、60、55、50、45、40、35、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1分又はそれ未満、より好ましくは高々35、30、15又は10分又はそれ未満である。期間は、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55又は60秒、より好ましくは少なくとも30秒など少なくとも10、20又は30秒である。
【0089】
サンプル中の抗凝固剤を定量する方法
本発明によるアッセイを改変して、抗凝固剤の定量を可能にすることができる。したがって、本発明は、サンプル中の抗凝固剤を定量する方法であって、
a)サンプルを、第Xa因子と本発明による化合物とを含む組成物と接触させて、アミノルシフェリンを放出するステップと、
b)アミノルシフェリンをルシフェラーゼと接触させるステップと、
c)ルシフェラーゼにより発生した相対光強度を決定するステップと
を含む、方法も提供する。
【0090】
この方法は、FXa活性の阻害を定量する方法であり、以下、本発明による阻害アッセイと呼ばれる。上述のような本発明によるアッセイとの違いは、この方法ではFXaもステップa)において用意されることである。この結果は、本発明による化合物からアミノルシフェリンを放出するFXa活性の結果として、FXaの阻害剤が存在しないとき既知量の発光シグナルが生成されることである。したがって、発光出力のいかなる減少も、抗凝固剤が存在するときなど、FXa阻害に帰因させることができる。アッセイされる好ましい抗凝固剤は、直接作用型抗凝固剤(DOAC)、ヘパリン及びヘパリノイドである。好ましいDOACは、リバーロキサバン(CAS 366789-02-8)、アピキサバン(CAS 503612-47-3)及びエドキサバン(CAS 480449-70-5)など、FXaに対するものである。
【0091】
論じたように、FXaはステップa)において既に用意されている。FXaのこの用意は、FXaの直接的な用意であり得るか、又はFXaを生成することができる組成物の用意であり得る。そのような組成物は、当技術分野において既知である。好ましくは、FXaを生成することができる組成物の用意をステップa)が含むとき、組成物は、一定量又は既知量のFXaを生成する。
【0092】
ステップb)及びc)は実質的に異ならず、したがって上述されている。抗凝固剤の定量のためのこの方法において使用されるステップc)については、基準値が、既知量のアッセイされる抗凝固剤によるFXa阻害が使用された検量曲線であるとき特に、基準値との比較が好ましい可能性がある。これは実施例4及び
図4に例示される。
【0093】
好ましい実施形態において、本発明は、ステップc)が、ある期間にわたりルシフェラーゼにより発生した相対光強度を決定するステップを含む本発明によるアッセイ若しくは本発明による阻害アッセイ、及び/又はルシフェラーゼにより発生した相対光強度の一次導関数を決定するステップを含まない本発明によるアッセイ若しくは本発明による阻害アッセイを提供する。
【0094】
全体で、本発明は、試験サンプル中の止血因子の生成を監視する改善された敏感な方法を提供する。本発明の方法は、1種又は複数種の止血因子の生成を測定するための光学的なポイントオブケアデバイスの設計を可能にする。
【0095】
一般的な定義
好ましい実施形態において、本発明による化合物及び組成物は、本発明による方法における使用のためのもの、又は本発明による使用のためのものである。本明細書に記載の各実施形態は、特に記載のない限り互いに組み合わせられてもよい。
【0096】
構造式又は化学名がキラル中心を有すると当業者に理解されるが、各キラル中心のキラリティーは示されないとき、ラセミ混合物(任意のエナンチオマー過剰率を有する)、純粋なRエナンチオマー及び純粋なSエナンチオマーのいずれかの3つすべてが個々に参照される。
【0097】
本発明において提供される化合物及び使用のための化合物は、任意選択で置換することができる。適した任意選択の置換は、ハロゲンによる-Hの置換えである。好ましいハロゲンは、F、Cl、Br及びIである。さらなる適した任意選択の置換は、-NH2、-OH、=O、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルケン、ハロアルケン、アルキン、ハロアルキン及びシクロアルキルによる1個又は複数の-Hの置換である。アルキル基は、一般式CnH2n+1を有し、代わりに線状又は分枝状でもよい。非置換のアルキル基は、環状部分をさらに含んでもよく、したがって同時一般式CnH2n-1を有してもよい。任意選択で、アルキル基は、本文書においてさらに指定された1個又は複数の置換基で置換されている。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、t-ブチル、1-ヘキシル、1-ドデシルなどが含まれる。本出願全体にわたり、原子の原子価は常に満たされるべきであり、必要に応じてHを付加又は除去することができる。最も好ましくは、任意選択の置換は、F、Cl、CH3、CH2CH3、OCH3又はOCH2CH3による1個、2個又は3個の-Hの置換である。
【0098】
物質のパラメータが本発明の文脈において論じられる場合は常に、特に指定のない限り、パラメータは生理学的条件下で決定、測定又は明示されることが想定される。生理学的条件は、当業者に既知であり、水性溶媒系、大気圧、6~8の間のpH値、室温~約37℃(約20℃~約40℃)の範囲の温度、及び適した濃度の緩衝塩又は他の成分を含む。電荷が平衡にしばしば関連することが理解される。電荷を運ぶ又は持つと言われる部分は、部分がそのような電荷を持たない又は運ばない状態よりもしばしば、部分がそのような電荷を持つ又は運ぶ状態で見出される部分である。したがって、当業者に理解されるように、電荷を帯びることが本開示において示されている原子が特定の条件下で電荷を帯びないこともあり、中性の部分が特定の条件下で電荷を帯びることもある。
【0099】
本発明の文脈において、評価されるパラメータの減少又は増加は、評価されるパラメータに対応する値の少なくとも5%の変化を意味する。より好ましくは、値の減少又は増加は、少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%又は100%の変化を意味する。この後者の場合、これは、パラメータに関連する検出可能な値がもはや存在しない場合であり得る。
【0100】
本文書及びその特許請求の範囲において、「を含む(to comprise)」という動詞及びその活用形は、その非限定的な意味で使用されて、この語の後に続く項目が含まれるが具体的に述べられない項目が除外されないことを意味する。「止血(Hemostasis)」及び「止血(Haemostasis)」は、本明細書において同義で用いられ得る。加えて、要素のうちのただ1つが存在することが文脈により明確に要求されていない限り、不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、1つを超える要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「a」又は「an」は「少なくとも1つの」を通常は意味する。「約」又は「およそ」という語は、数値と共に使用された場合(例えば約10)、数値が数値の1%だけより多い又はより少ない(10の)所与の値でもよいことを好ましくは意味する。加えて、「なる(to consist)」という動詞は、本発明の組成物が、具体的に記載された成分の他に本発明の特有の特徴を変化させない(1つ又は複数の)追加の成分を含んでもよいことを意味する「から本質的になる(to consist essentially of)」によって置き換えられてもよい。
【0101】
本明細書に引用されたすべての特許及び参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0102】
本発明の文脈において、細胞又はサンプルは、対象から得られたサンプルからの細胞又はサンプルであり得る。そのような得られたサンプルは、対象からあらかじめ得られたサンプルであり得る。そのようなサンプルはヒト対象から得ることができる。そのようなサンプルは非ヒト対象から得ることができる。
【0103】
以下は、本発明において参照される配列である:
配列番号1 IEGR 配列番号2 IDGR
配列番号3 IEGK 配列番号4 IDGK
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1A】本発明による化合物の合成。A)共有Gly-Arg/Gly-Ornコアへの合成。
【
図1B】B)ペプチドコアIle-Glu-Gly-Argを有する前駆体への共有コアの変換。
【
図1C】C)MePEG2-IEGRへのIle-Glu-Gly-Arg中間体の変換。
【
図2】1.6nMのFXa濃度における酵素FXa及びその基質MePEG2-IEGRのミカエリス-メンテン速度式。V
max=468000RLU及びK
M=619μMが決定され、K
cat=V
max/[FXa]=1.05×10
14s
-1が導かれた。
【
図3A】基質MePEG2-IEGRは、FXa以外のセリンプロテアーゼとの最小限の交差反応性を有する。A)80nm FXaは、1,000,000RLUのシグナルを与え、52nMトロンビンは約30,000RLUを与え、8nMプラスミンは約8,000RLUを与え、193IU/mL tPA(線溶を促進する通常の濃度)は約6,000RLUを与え、145nM FXIIaは約500RLUを与えた。tPA以外の濃度は、活性化後のヒト血漿中の濃度の代表である。
【
図3B】B)y軸が対数目盛に変換されたパネルAの一部のより詳細な図。
【
図4】アピキサバンは、基質MePEG2-IEGRの変換を阻害する。100pg/mL~100mg/mLアピキサバンの存在下のFXa(4nM)は、10~1000ng/ml範囲内の阻害を明らかにする。
【
図5A】カスケード関与物の過剰な成分を含むがFVIIIのない反応混合物を用意することにより、FXa活性に基づいてサンプル中のFVIII活性が決定された。したがって、FXa活性によって引き起こされた発光はFVIII活性の尺度になる。A)正常プール血漿の百分率として表された異なるFVIII濃度において測定されたRLU。
【
図5B】B)パネルA中の結果の検量線。検量は、y=30331+4376x及びr2=0.9935の線形回帰を有する。
【
図6A】カスケード関与物の過剰な成分を含むがFIXのない反応混合物を用意することにより、FXa活性に基づいてサンプル中のFIX活性が決定された。したがって、FXa活性によって引き起こされた発光はFIX活性の尺度になる。A)正常プール血漿の百分率として表された異なるFIX濃度において測定されたRLU。
【
図6B】B)パネルA中の結果の検量線。検量は、y=97471+8547x及びr
2=0.9872の線形回帰を有する。
【
図7】高組織因子濃度及び低組織因子濃度(7pM又は0.28pM)を使用した包括的止血アッセイにおけるFXa活性化。
【
図8A】A)化学発光リーダーを用いて速度論的に測定された生データ。
【
図8B】B)この例は、一定時点、この場合は3分を使用して検量曲線を作成している。
【
図8C】C)この例は、各キャリブレーターの0.5~3分の間の傾きを計算して検量曲線を作成している。
【
図9A】A)31個のFVIII臨床サンプルを測定するために利用された4本の検量曲線の重ね合せ。組み合わせられたこれら4本の検量曲線の平均R
2値は0.9810であった。
【
図9B】B)組換えPEG化FVIII生成物を含むサンプルを使用した化学発光に基づくアッセイ並びに発色FVIIIアッセイの両方における臨床サンプルの回収。
【
図9C】C)B)と同様だが、組換え全長FVIII生成物を含むサンプルを使用した。
【
図10A】A)様々なFIXレベルを含むキャリブレーターを用いて、化学発光リーダーを用いて速度論的に測定された生データ。
【実施例】
【0105】
実施例1-本発明による基質の用意
図1Aに示されたように、重要な中間体A1を経由して基質を合成した。この中間体の合成は、ベンゾチアゾール1からニトリル2への収率91%の変換から始まった。還元は、順相及び逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーの後、純粋なアニリン3を収率54%で与えた。ピリジン中のPCl
3を用いてFmoc-Orn(Boc)-OH(4)とのカップリングを実施した。Fmoc脱保護後、化合物6がうまく得られた。8へのFmoc-Gly-OH 7との6のペプチドカップリング及びBoc脱保護は、これら2つのステップを通じて収率84%で9を与えた。1,3-ビス(tert-ブトキシカルボニル)-2-(トリフルオロメタンスルホニル)グアニジンとの反応は、フラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製後、良好な収率及び純度でグアニジン10を与えた。他のアミノ酸が存在する一般式I-3又はI-4の化合物の用意については、前記他のアミノ酸を用いて上記のプロトコルが繰り返されるか、又は化合物8が化合物10へと変換されない。
【0106】
図1Bに示されたように、Fmoc脱保護及びFmoc-Glu(OtBu)-OH 12との即座のさらなるカップリングは、2つのステップを通じて収率72%で13を与えた。このシーケンスの、ただし今回はFmoc-Ile-OH 15を使用した繰返しは、2つのステップを通じて収率78%でテトラペプチド16を与えた。重要なビルディングブロックA1へのFmoc脱保護は収率95%で進んだ。他のアミノ酸が存在する一般式I-3又はI-4の化合物の用意については、前記他のアミノ酸を用いて上記のプロトコルが繰り返される。
【0107】
図1Cに示されたように、収率93%の18への[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸17とのA1のペプチドカップリングにより合成を続けた。他の部分Xについては、適切な試薬を使用して同様のカップリングを実施することができる。d-システイン19とのカップリングは、逆相分取クロマトグラフィーによる精製後、アミノルシフェリン20を収率76%で与えた。トリフルオロ酢酸を使用することにより保護基の除去を実施し、その後、ジエチルエーテル中の研和により、MePEG2-IEGRと名付けられた生成物を単離した。
【0108】
実施例2-本発明による基質の速度論的挙動
酵素FXa及びその基質MePEG2-IEGR(これらの例ではTFA塩を使用した)についてミカエリス-メンテン速度式を決定した。以下の組成物を氷上のマイクロバイアル中で調製した:
組成物1:
160μLトリス緩衝生理食塩水(TBS) 50mMトリス-HCl、150mM NaCl(pH7.4)
4μL ATP(最終濃度333μM)
4μL MgCl2(最終濃度8.3mM)
12μLルシフェラーゼ(最終濃度0.9mg/ml)
基質組成物2a~g:
30μL基質濃度でマイクロバイアルを準備し、2000、1333、1000、666、333、167及び66μMの最終濃度に至った。
酵素組成物3:
FXa(Coachrom、16nM)組成物を氷上のマイクロバイアル中で調製した
続いて、以下の組成物を白色の384ウェルプレート内で合わせた:
組成物1 24μL
組成物2a~g 3μL
組成物3 3μL
続いてウェルプレートを37℃恒温のFlexstation 3(Molecular Devices)内に置いた。発光放射波長を1500msの積分時間で30分の間、30秒毎に1秒間測定した。
【0109】
結果が
図2に示されている。1.6nMのFXa濃度においてV
max=468000RLU及びK
M=619μMが決定され、K
cat=V
max/[FXa]=1.05×10
14s
-1が導かれた。
【0110】
実施例3-交差反応性
交差反応性を決定するために、ヒト血漿中の代表的な濃度の様々な凝固酵素を使用してアッセイを実施した。凝固酵素の選ばれた濃度は、活性化後のin vivoで予想される濃度と同等である。組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)については、これは線溶を促進する通常の濃度である。
【0111】
80nm FXaの濃度は1,000,000RLUのシグナルを与えた。他の凝固酵素は以下のシグナルを生じた:52nMトロンビンは約30,000RLUを与え、8nMプラスミンは約8,000RLUを与え、193IU/mL tPAは約6,000RLUを与え、145nM FXIIaは約500RLUを与えた(
図3)。これらのデータは、本発明による基質がFXaにより優先的に切断されることを示す。
【0112】
実施例4-抗凝固活性の定量
抗凝固剤の一例として、アピキサバン(CAS番号503612-47-3)をFXa及びMePEG2-IEGRの混合物中に異なる濃度で加えた。アピキサバンは、静脈血栓塞栓性事象の治療のための、経口的に摂取される抗凝固剤である。アピキサバンは、直接的なFXa阻害剤である。
図4は、100pg/mL~最大100mg/mLアピキサバンの存在下のFXa(4nM)により、基質の変換に対するアピキサバンの阻害を示す。FXa活性に対する阻害効果が10~1000ng/ml範囲内で示されている。
【0113】
実施例5-定量的FVIIIアッセイ
この発光FVIIIアッセイは2ステップの活性アッセイであり、サンプルからの一定量のFVIIIの活性化をもたらし、続いて、FX活性化、したがって本発明による基質の安定した変換をもたらす。発光因子アッセイは、光子の速い減衰時間のために安定した基質変換をもたらし、一方、発色基質又は蛍光基質はシグナルを蓄積(例えば405nmにおいて)し、シグナルを経時的に増加させる(OD/分)。発色基質又は蛍光基質のアッセイについては、変換率を決定するために傾きを計算しなければならない。発光アッセイでは、(RLUの)平坦な出力が変換率を直接示し、これは本発明の方法を非常に好都合にする。
【0114】
アッセイにおいて、トロンビンを加えてFVIIIを活性化する。活性化因子VIIIは、第IXa因子、リン脂質(PLP)及びカルシウムとの酵素複合体を形成する。この複合体は、第X因子をFXaへと活性化し、FXは、アッセイにおいて一定濃度で及び過剰に供給される。FXaは、本発明による基質に作用してルシフェラーゼの基質を遊離し、発光活性をもたらす。したがって、発光活性は第VIII因子活性の量に直接関連し、これは、一定量の第IXa因子の存在下の制限因子である。次いで、生成された第Xa因子は、本発明の特異的第Xa因子発光基質に対するその活性により正確に測定される。第Xa因子は基質を切断し、光子の放出をもたらす。生成された光子の量(相対光単位RLUとして表される)は、第Xa因子活性、したがって第VIII因子の量に正比例する。そのようなアッセイの発色類似体は市販されている(例えばHyphen Biomed製BIOPHEN第VIII因子アッセイ、カタログ番号221402)。この例との重要な違いは、発色基質の代わりに、本発明による基質がATP、Mg2+及びルシフェラーゼと共に使用されることである。
【0115】
異なる量のFVIII(正常プール血漿(NPP)又はその希釈液を使用)をアッセイにおいて使用した。サンプルをFXの溶液と混合した。37℃で約2分のインキュベーションの後、蒸留水中のFIXa、トロンビン、カルシウム及びリン脂質の溶液を加え、その後、反応物を37℃で約3分間インキュベートした。次いで、MePEG2-IEGR(この場合はTFA塩)をFXaの基質として加え、その後、ルシフェラーゼ、ATP及びMg
2+の従来の混合物を使用して発光を決定した。
図5Aは、NPP百分率として表された加えられたFVIIIに対する、サンプル中に存在するFVIII活性に依存するFXa活性のRLUを示す。
図5Bは、付随する検量線を示す。検量は、y=30331+4376x及びr
2=0.9935の線形回帰を有する。
【0116】
実施例5.1-詳細なFVIIIアッセイ
試薬
試薬1(R1):
試験又は検量曲線に使用された希釈血漿サンプル。サンプルは、50mMイミダゾール及び100mM NaClを含む緩衝液(pH7.4)で希釈される。
【0117】
試薬2(R2):
ヒト第IXa因子、ヒトトロンビン、カルシウム、フィブリン重合阻害剤としてのGly-Pro-Arg-Pro及び合成リン脂質(28%ホスファチジルセリン)。リン脂質及びカルシウムは4~8℃で保管される。他の成分は-80℃で保管される。試薬混合物は、50mMイミダゾール及び100mM NaClを含む緩衝液(pH7.4)中で調製される。
【0118】
試薬3(R3):
ヒト第X因子、ATP、マグネシウム、第Xa因子に特異的な発光基質(この例ではMePEG2-IEGRを使用した)及びPromega製組換えルシフェラーゼUltra-Glo。ルシフェラーゼはQuantiLumルシフェラーゼと交換することができ、いずれのタイプも適用することができる。マグネシウムは4~8℃で保管される。個々の成分は、水性溶液中、-80℃で保管される。試薬混合物は、50mMイミダゾール及び100mM NaClを含む緩衝液(pH7.4)中で調製される。
【0119】
検量曲線サンプルの調製
表5は、FVIIIアッセイのための検量サンプルの調製を示す。検量曲線の準備のために、以下の希釈血漿サンプルが、表5に示されているように混合される。384ウェルアッセイプレートにおいて、3μLの希釈サンプル又はキャリブレーターが10μL試験体積に使用される。未知試料は100%サンプルと同じように調製される。
【0120】
【0121】
タンパク質試薬の調製
表6及び表7は、それぞれ試薬2又は3の調製について記載している。これらの体積は、10μL又は30μLの最終的な試験体積に対する384ウェルプレート中の1つの反応物又は1つのサンプルを表す。各ウェルにおける最終濃度が表8に記載されている。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
手順
試験は、37℃で化学発光リーダーを使用して実施される。37℃でインキュベートされた384ウェルマイクロプレートに3つの混合物が別々に分注される。表9は、ただ1つのウェルの分配を示す。試験中、反応物が混合され、相対光単位(RLU)強度が20分間、速度論的に測定される。最終結果の取扱い方は以下で説明される。
【0126】
【0127】
検量曲線
化学発光に基づく定量的FVIIIアッセイを検量して、第VIII因子を分析することができる。アッセイは、表5に示されたダイナミックレンジをカバーする。速度論的データを使用して検量曲線を作成するための少なくとも2つの方法が存在する。第1の選択肢は、生データを観察した後に時点を設定するものである。個々のキャリブレーターサンプルの曲線がプラトーを形成するとき、非常に適した時点が考慮されている。第2の選択肢は、およそ0.5~3分の間の傾きを決定するものである。検量曲線は、いずれの方法についても両対数でプロットされる。
【0128】
図に示された検量曲線は、10μLの最終的な試験体積でFlex3 Station(molecular devices、米国)で得られた。この図(生データ)に基づいて、上述の2つの選択肢を使用して、最終的な検量曲線を作成した。
【0129】
この定量的アッセイのより早いバージョンは、30μLでQuantiLumルシフェラーゼ(Promega)を用いてほとんど実施した。10μL構造に使用したUltra-Gloルシフェラーゼと同じ環境でこのルシフェラーゼが同じ強度を達成しないことを考えると、後者はインポートノートである。したがって、
図1~
図3と
図4~
図6は一対一で比較することができない。
図4~
図6は、30μLアッセイ構造で得られた結果を視覚化している。FVIII補充療法を受けている31人の血友病患者の臨床サンプルで、このアッセイの検証を実施した。22サンプルが組換えPEG化FVIII生成物を含んでおり、そのうちの3つを1%未満FVIIIに割り当て、1%未満FVIIIとして回収した。10サンプルが組換え全長FVIII生成物を含んでおり、そのうちの1つを1%未満FVIIIに割り当て、1%未満FVIIIとして回収した。これらのサンプルをゴールデンスタンダード試験並びに発光に基づくFVIIIアッセイの両方で測定した。検証に利用されたゴールデンスタンダードアッセイは、ウシ因子を含む発色FVIIIアッセイであった。
【0130】
実施例6-定量的FIXアッセイ
実施例5と同じ戦略を用いて、発光FIXアッセイを設計した。アッセイ設計は上述のFVIIIアッセイと同等であるが、FIXaの代わりに過剰量のFXIaを用意することにより、FIXにより特異的に感作されている。FIXは、FXIaにより切断されてFIXaを生成することができるチモーゲンである。Ca2+、膜リン脂質及びFVIIIaの存在下で、FIXaはFXを加水分解してFXaを生成する。反応混合物中、このカスケードの因子は、アッセイされるFIXを除いて過剰に存在していた。したがって、反応混合物に加えられたFIXの量は、相関量のFXaをもたらし、ひいては、検出可能な発光をもたらす。そのようなアッセイの発色類似体は市販されている(例えばHyphen Biomed製BIOPHEN第IX因子アッセイ、カタログ番号221802)。この例との重要な違いは、発色基質の代わりに、本発明による基質がMg2+及びATP及びルシフェリンと一緒に使用されることである。
【0131】
異なる量のFIX(NPP又はその希釈液を使用)を反応混合物に加え、その後、発光を決定した。
図6Aは、NPP百分率として表された加えられたFIXに対する、サンプル中に存在するFIX活性に依存するFXa活性のRLUを示す。
図6Bは、付随する検量線を示す。検量は、y=97471+8547x及びr
2=0.9872の線形回帰を有する。
【0132】
実施例6.1-詳細なFIXアッセイ
試薬
試薬4(R4):
試験又は検量曲線に使用された希釈血漿サンプル。サンプルは、50mMイミダゾール及び100mM NaCl緩衝液を含む緩衝液(pH7.4)に希釈される。
【0133】
試薬5(R5):
組換えヒト第VIII因子、ヒト第XIa因子、ヒトトロンビン、合成リン脂質(28%)、カルシウム及びフィブリン重合阻害剤としてのGly-Pro-Arg-Pro。個々の成分は、水性溶液中、-80℃で保管される。試薬混合物は、50mMイミダゾール及び100mM NaCl緩衝液を含む緩衝液(pH7.4)中で調製される。
【0134】
試薬6(R6):
ヒト第X因子、ATP、マグネシウム、第Xa因子に特異的な発光基質(この例ではMePEG2-IEGRを使用した)及びPromega製組換えルシフェラーゼQuantilum。ルシフェラーゼはUltra-Gloルシフェラーゼと交換することができ、いずれのタイプも適用することができる。マグネシウムは4~8℃で保管される。個々の成分は、水性溶液中、-80℃で保管される。試薬混合物は、50mMイミダゾール及び100mM NaClを含む緩衝液(pH7.4)中で調製される。
【0135】
検量曲線サンプルの調製
検量曲線の準備のために、以下の希釈血漿サンプルが、表6に示されているように混合される。384ウェルアッセイプレートにおいて、6μLの希釈サンプル又はキャリブレーターが30μL試験体積に使用される。未知試料は100%サンプルと同じように調製される。
【0136】
【0137】
タンパク質試薬の調製
表7及び表8は、試薬を調製する方法を示す。これらの体積は、30μLの最終的な試験体積に対する384ウェルプレート中の1サンプル又は1ウェルを表す。1つのサンプル中の各成分の最終濃度が表9に示されている。
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
手順
試験は、37℃で化学発光リーダーを使用して実施される。37℃でインキュベートされた384ウェルマイクロプレートに4つの混合物が別々に分注される。表10は、ただ1つのウェルの分配を示す。試験中、相対光単位(RLU)強度が速度論的に測定される。
【0142】
【0143】
検量曲線
第IX因子又は治療濃縮物のアッセイのためにFIX発光試験を検量することができる。示されたダイナミックレンジをカバーする血漿キャリブレーターが表6に示されており、これらを使用して検量曲線を作成することができる。まず生データが目視で評価され、その後、検量曲線を作成するために用いられる適した時点が選択される。検量曲線は両対数でプロットされる。
【0144】
図に示された検量曲線はFlex3 Station(molecular devices、米国)で得られた。この図(生データ)に基づいて、上述の2つの選択肢を使用して、最終的な検量曲線を作成した。
【0145】
実施例7-FXa生成アッセイ
基質を包括的止血アッセイにおいて同じく使用した。ここで、組織因子、リン脂質及びカルシウムにより開始されると、凝固過程においてFXの活性化により乏血小板血漿中でFXaが生成される。FXa生成アッセイは、血漿への組織因子及びカルシウムの添加により開始され、FXa生成とその後に続くトロンビン生成及びその後の血塊形成につながる。FXa生成及びそれに続く生理学的阻害剤による阻害はベル型曲線につながる(
図7)。異なる用量の組織因子を使用した:7pM又は0.28pM。そのような包括的設計におけるFXa濃度の測定は、第Xa因子のレベルにおける凝固カスケードの能力に関する情報を与える。
【配列表】