(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/337 20060101AFI20240319BHJP
B41M 5/333 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B41M5/337 212
B41M5/333 220
(21)【出願番号】P 2022162728
(22)【出願日】2022-10-07
【審査請求日】2023-09-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】藤本 かおり
(72)【発明者】
【氏名】播摩 英伸
(72)【発明者】
【氏名】江頭 雄介
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-237234(JP,A)
【文献】特開2007-125744(JP,A)
【文献】特開2009-072948(JP,A)
【文献】特開2013-188987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/337
B41M 5/333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、感熱記録層が積層された感熱記録体であって、
前記感熱記録層は、発色剤と、顕色剤と、保存性向上剤とを含有し、
前記顕色剤として、下記式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物を含有し、
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R
9は、水素原子、アルキル基、又はアルケニル基を示す。)
前記ジフェニルスルホン化合物は、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホンを含有し、
前記保存性向上剤として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、及びトリス(2,6-ジメチル-4-t-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする、感熱記録体。
【請求項2】
前記顕色剤として、さらに、下記式(2)で表されるウレアウレタン化合物を含有する、請求項1に記載の感熱記録体。
【化2】
【請求項3】
前記感熱記録層の全体に対する前記ジフェニルスルホン化合物の含有量が、10質量%以上40質量%以下である、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記感熱記録層の全体に対する前記
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、及びトリス(2,6-ジメチル-4-t-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が、1質量%以上10質量%以下である、請求項1又は2に記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録体に関し、更に詳しくは、発色性及び印字保存性に優れた感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録体は、サーマルヘッド等の加熱によって化学反応により発色し、記録画像が得られるものであり、ファクシミリや自動券売機、科学計測機の記録用媒体としてだけではなく、小売店等のPOSシステムの感熱記録ラベル、レシート用紙等として広範な用途に使用されている。
【0003】
上述のように感熱記録体は広範に利用されている。このため、感熱記録体には様々な性能が求められる。例えば、バーコードリーダでバーコードを読み取る際、バーコードリーダによる読み取りの精度が良好となるような発色性が求められる。また、高温・高湿等の過酷な環境下での長期保存時においても、印字部の発色濃度が低下しにくい優れた印字保存性も求められる。
【0004】
発色性、耐水性、耐地肌発色性等に優れる感熱記録体としては、例えば、支持体上に無色ないし淡色の電子供与性のロイコ系染料と電子受容性の顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、感熱記録層が、顕色剤として4-ヒドロキシ-4'-プロポキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン化合物を含有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1で使用される顕色剤であるジフェニルスルホン化合物を用いた感熱記録体は、高温・高湿等の過酷な環境下で長期間に保存した場合に、印字部の発色濃度が低下する場合があり、印字保存性が低いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、発色性に優れ、さらに発色濃度が低下しにくい印字保存性にも優れた感熱記録体を提供することを目的とする。
なお、明細書において、「発色性」とは、感熱記録体の加熱により無地部が黒色に変化する能力を意味し、「印字保存性」とは、発色した印字部の濃度(発色濃度)が、各種保存条件で低下しにくい能力を意味するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、感熱記録層に、顕色剤として、特定のジフェニルスルホン化合物に加えて、保存性向上剤として、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物を配合することにより、発色性に優れ、さらに発色濃度が低下しにくく、印字保存性にも優れた感熱記録体を提供できることを見出した。本発明は、当該知見に基づき、完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明の一の側面は、基材上に、感熱記録層が積層された感熱記録体を提供する。本発明の感熱記録体において、前記感熱記録層は、発色剤と、顕色剤と、保存性向上剤とを含有する。
【0010】
本発明の感熱記録体は、前記顕色剤として、下記式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物を含有する。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R
9は、水素原子、アルキル基、又はアルケニル基を示す。)
【0011】
本発明の感熱記録体が、前記顕色剤として、上記式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物を含有する構成によれば、発色性に優れる感熱記録体を提供できる。
【0012】
本発明の感熱記録体は、前記保存性向上剤として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、及びトリス(2,6-ジメチル-4-t-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。この構成によれば、印字保存性に優れる感熱記録体を提供できる。
【0013】
本発明の感熱記録体の一の実施形態は、前記顕色剤として、さらに、下記式(2)で表されるウレアウレタン化合物を含有することが好ましい。
【化2】
【0014】
本発明の感熱記録体が、前記顕色剤として、さらに、上記式(2)で表されるウレアウレタン化合物を含有するという構成によれば、さらに、発色性に優れ、さらに発色濃度が低下しにくい印字保存性にも優れる感熱記録体を提供できる。
【0015】
本発明の感熱記録体の他の実施形態において、前記感熱記録層の全体に対する前記ジフェニルスルホン化合物の含有量は、10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。この構成によれば、発色性に優れる感熱記録体を提供できる。
【0016】
本発明の感熱記録体の他の実施形態において、前記感熱記録層の全体に対する前記1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、及びトリス(2,6-ジメチル-4-t-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。この構成によれば、印字保存性に優れる感熱記録体を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発色性に優れ、さらに発色濃度が低下しにくい印字保存性にも優れた感熱記録体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の感熱記録体の一実施形態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の感熱記録体は、基材上に、感熱記録層が積層された積層構造を有する。本発明の感熱記録体において、前記感熱記録層は、発色剤と、顕色剤と、保存性向上剤とを含有する。
【0020】
本発明の感熱記録体は、前記顕色剤として、上記式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物を含有する。
また、本発明の感熱記録体は、前記保存性向上剤として、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物を含有する。
【0021】
以下、本発明の感熱記録体の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の感熱記録体の一実施形態を示す模式的な断面図である。
【0023】
本実施形態の感熱記録体1は、
図1に示すように、シート状の基材2上に、アンダーコート層6、感熱記録層3、中間層4、及び、トップコート層5が、この順で積層された積層構造を有する。
【0024】
本実施形態において、基材2は、感熱記録体1の支持体として機能する。基材2としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等の紙類、合成紙、及び不織布等の多孔質材料を用いることができる。また、透明の合成樹脂フィルム、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等を用いることができる。なお、基材2の厚みは特に限定されないが、基材2の厚みを10μm~100μm程度に調製した場合、塗工性に優れた基材2が得られる。また、透明性に優れた基材2が得られる。
【0025】
本実施形態において、アンダーコート層6は、サーマルヘッドから与えられた熱の放散を防ぐ断熱性や、クッション性等の機能を有する。ただし、基材2として、合成紙を使用した場合は、合成紙自体が断熱性や、クッション性を有するため、アンダーコート層6を設けなくともよい。
【0026】
アンダーコート層6は、例えば、結着剤に、充填剤として中空粒子を添加することにより形成される。
【0027】
このような、断熱性を有するアンダーコート層6を感熱記録体1に設けることにより、印字の感度が向上する。このため、サーマルヘッドの印加電圧の上昇を抑制することができ、その結果として、サーマルヘッドの焼付きを抑制することができる。
【0028】
アンダーコート層6に充填剤として添加される中空粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm~10μmである。このような範囲であれば、アンダーコート層6の断熱性が向上する。ここで、平均粒子径とは、レーザー回折法により測定される重量平均粒子径である。レーザー回折法による平均粒子径の測定は、例えば、マイクロトラック・ベル社製の商品名「MT3300EX-II」を用いて行うことができる。
【0029】
また、中空粒子の中空率は、好ましくは30%~99%である。このような範囲であれば、アンダーコート層6の断熱性が向上する。また、中空粒子は、その中空率は大きいほど、断熱効果が高くなる。このため、発色剤は少ない熱量で有効に発色し得る。つまり、中空率を大きくすると、感熱記録体1の印字品質が向上する。
【0030】
ここで、中空粒子の中空率は、次式で算出される。
中空率={(空隙の体積)/(中空粒子の体積)}×100
【0031】
また、アンダーコート層6における中空粒子の含有割合は、アンダーコート層100質量部に対して、好ましくは40質量部~90質量部である。
【0032】
中空粒子を構成する材料は、例えば、熱可塑性樹脂である。そのような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂等が挙げられる。
【0033】
なお、アンダーコート層6の充填剤として、中空粒子以外を用いてもよい。例えば、焼成カオリン、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリナイト、ケイソウ土、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ポリスチレン樹脂粒子、尿素-ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等を挙げることができる。また、これらの充填剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
アンダーコート層6に含まれる結着剤としては、例えば、アクリル-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリル-ブタジエン-スチレン共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0035】
また、結着剤として、ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子を用いてもよい。
【0036】
中空粒子と結着剤の配合割合(中空粒子/結着剤;乾燥重量比)は、中空粒子の粒子径に応じて適宜選択可能であり、例えば、中空粒子の平均粒子径が1μmの場合は8/2、平均粒子径が10μmの場合は2/8などにすることができ、平均粒子径が1~10μmでは、8/2~2/8の間で適宜調整することができる。
【0037】
アンダーコート層6の塗布量(乾燥重量)は、好ましくは1g/m2~10g/m2である。
【0038】
アンダーコート層6の厚みは、好ましくは1μm~20μmである。
【0039】
アンダーコート層6の塗布量、及び厚みを上記の範囲に調製すると、アンダーコート層6は適切に断熱性の機能を発揮する。
【0040】
本実施形態において、感熱記録層3は、サーマルヘッド等の加熱によって化学反応により発色し、感熱記録体1に記録画像を形成する層である。本実施形態において、感熱記録層3は、発色剤と、顕色剤と、保存性向上剤と、を含有する。
【0041】
発色剤としては、加熱により発色する発色剤は、サーマルヘッド等の加熱によって化学反応により発色し、本実施形態の感熱記録体1に、記録画像を形成する成分である。加熱により発色する発色剤としては、一般に使用されている公知のロイコ系染料を用いることができる。このロイコ系染料としては、例えば、3-(N-イソブチル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-イソペンチル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-o-クロロアニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エトキシプロピル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-n-プロピル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-p-トルイジノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-8-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-ブロモフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-5-メチル-7-メチルフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン等を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
発色剤の粒子径は、0.1~1.0μmであることが好ましい。発色剤は融解して反応するため、粒子径が大きくなるにつれて反応が鈍化していき、感度特性が低くなる。一方、粒子径が小さくなるにつれて、塗料を乾燥させるときの熱により予期しない温度で発色してしまうリスクが高まる。本実施形態では、発色剤の粒子径を上記のような範囲に設定することにより、発色剤の感度特性および発色温度を適切に調整できる。ここで、粒子径とは、マイクロトラックレーザー解析・散乱式粒度分析機による測定50%平均粒子径をいう。
【0043】
本実施形態では、発色剤は、優れた発色性を得るため、感熱記録層3の全体に対して5~20質量%程度含有することが好ましい。なお、後述する顕色剤は、乾燥重量比で発色剤1に対して1~3の比率で含有させることが好ましい。
【0044】
本実施形態では、感熱記録層3は、前記顕色剤として、下記式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物を含有する。
【化3】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R
9は、水素原子、アルキル基、又はアルケニル基を示す。)
【0045】
上記式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物は、加熱時にフェノール性水酸基が、上記のようなロイコ系染料にプロトンを供給して発色させると共に、ロイコ系染料と分子間水素結合を形成して、発色状態を維持すると考えられる。
【0046】
上記「置換基」としては、水素原子以外の有機基を特に限定なく使用することができ、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基などが挙げられる。
【0047】
上記「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
【0048】
上記「アルキル基」及び「アルキル」としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、イソペンチル基、ターシャリーペンチル基、ネオペンチル基、2,3-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、ノルマルヘキシル基、イソヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、ノルマルヘプチル基、ノルマルオクチル基、ノルマルノニル基、ノルマルデシル、ノルマルウンデシル基、ノルマルドデシル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1~12個のアルキル基が挙げられる。
【0049】
上記「アルケニル基」としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1‐ブテニル基、2‐ブテニル基、2‐メチル‐2‐プロペニル基、1‐メチル‐2‐プロペニル基、2‐メチル‐1‐プロペニル基、ペンテニル基、1‐ヘキセニル基、3,3‐ジメチル‐1‐ブテニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2~6個のアルケニル基が挙げられる。
【0050】
上記「アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、セカンダリーブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ノルマルペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ターシャリーペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3-ジメチルプロピルオキシ基、1-エチルプロピルオキシ基、1-メチルブチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ノルマルヘプチルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1~8個のアルコキシ基が挙げられる。
【0051】
上記「アリール基」及び「アリール」としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10個の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0052】
上記「ジアルキルアミノ基」において、2つのアルキル基は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0053】
式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物としては、感熱記録体1に優れた発色性を付与できる観点から、下記式(1a)で表される化合物が好ましい。
【化4】
【0054】
式(1a)中、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアルケニル基を示す。ここで、R12が、水素原子の場合、R10、及びR11は、それぞれ独立して、アルキル基、又はアルケニル基を示し、R12が、アルキル基、又はアルケニル基の場合、R10、及びR11は、水素原子を示す。
【0055】
上記式(1a)で表される化合物としては、具体的には、4-ヒドロキシ-4′-n-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4-ヒドロキシ-4'-アリルオキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-エトキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-n-ブトキシジフェニルスルホン等が挙げられる。特に、4-ヒドロキシ-4′-n-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4'-イソプロポキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホンが好ましい。
【0056】
本実施形態において、感熱記録層3は、式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0057】
本実施形態において、感熱記録層3の全体に対する式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物の含有量は、10質量%以上40質量%以下が好ましい。前記ジフェニルスルホン化合物の含有量が10質量%以上である構成は、顕色剤不足に起因して発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止できる点で、好ましい。また、前記ジフェニルスルホン化合物の含有量が40質量%以下である構成は、顕色剤過多(則ち、染料不足)に起因して発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止する点で、好ましい。
【0058】
本実施形態において、感熱記録層3は、顕色剤として、さらに、下記式(2)で表されるウレアウレタン化合物を含有することが好ましい。すなわち、感熱記録層3は、式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物に加えて、下記式(2)で表されるウレアウレタン化合物を含有することが好ましい。
【化5】
【0059】
感熱記録層が、式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物に加えて、式(2)で表されるウレアウレタン化合物を含有することにより、ロイコ系染料との反応効率が高まり、電子移動錯体が生成しやすくなると共に逆反応が起こりにくくなり、感熱記録体の発色性が優れたものになり、さらに発色濃度が低下しにくくなり、印字保存性に優れるものと考えられる。
【0060】
本発明で顕色剤として使用する式(2)で表されるウレアウレタン化合物は、具体的には下記式(2a)~(2c)で表される3種類であり、これらは単独又は2種類以上混合して用いてもよい
【0061】
【0062】
本実施形態において、感熱記録層3の全体に対する式(2)で表されるウレアウレタン化合物の含有量は、1質量%以上20質量%以下が好ましい。前記ウレアウレタン化合物の含有量が1質量%以上である構成は、顕色剤不足に起因して発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止できる点、発色濃度の低下を抑制でき、印字保存性が優れたものになる点で、好ましい。また、前記ウレアウレタン化合物の含有量が20質量%以下である構成は、顕色剤過多(則ち、染料不足)に起因して発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止する点で、好ましい。
【0063】
本実施形態において、感熱記録層3が式(2)で表されるウレアウレタン化合物を含有する場合、式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物に対する式(2)で表されるウレアウレタン化合物の含有割合(ウレアウレタン化合物/ジフェニルスルホン化合物)は、1/20~1/1が好ましい。前記含有割合が、1/1以下である構成は、発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止できる点で、好ましい。また、前記含有割合が、1/20以上である構成は、発色濃度の低下を抑制でき、印字保存性が優れたものになる点で、好ましい。
【0064】
本実施形態において、感熱記録層3は顕色剤として、式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物及び式(2)で表されるウレアウレタン化合物以外の顕色剤(その他の顕色剤)を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
その他の顕色剤としては、例えば、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2’-メチレンビス(4-クロロフェノール)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、ポリ(4-ヒドロキシ安息香酸)、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、2,4-ビス(フェニルスルホニル)フェノール、α-{4-[(4-ヒドロキシフェニル)スルホニル]フェニル}-ω-ヒドロキシポリ(重合度n=1~7)(オキシエチレンオキシエチレンオキシ-p-フェニレンスルホニル-p-フェニレン)、3,5-ビス(α-メチルベンジル)サリチル酸、ビス[4-(n-オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]、4,4’-ビス(p-トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4-ヒドロキシベンゼンスルホンアニリド、2’-(3-フェニルウレイド)ベンゼンスルホンアニリド、N-(2-ヒドロキシフェニル)-2-[(4-ヒドロキシフェニル)チオ]アセトアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[(4-ヒドロキシフェニル)チオ]アセトアミド、4-[[4-[4-[4-[[4-(1-メチルエトキシ)フェニル]スルホニルフェノキシ]ブトキシ]フェニル]スルホニル]フェノール、4-tert-ブチルフェノール・ホルムアルデヒド重縮合物、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、1-フェニル-3-(4-メチルフェニルスルホニル)ウレア等が挙げられる。
【0065】
本実施形態において、感熱記録層3に含まれる顕色剤の全量に対する式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物と式(2)で表されるウレアウレタン化合物の合計含有量は、特に限定されないが、発色性と印字保存性を向上させる観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。
【0066】
本実施形態において、感熱記録層3に含まれる顕色剤の全量に対する式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物の含有量は、特に限定されないが、発色性と印字保存性を向上させる観点から、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。
【0067】
本実施形態において、感熱記録層3が式(2)で表されるウレアウレタン化合物を含有する場合、感熱記録層3に含まれる顕色剤の全量に対する式(2)で表されるウレアウレタン化合物の含有量は、特に限定されないが、発色性と印字保存性を向上させる観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
【0068】
本実施形態において、感熱記録層3は、保存性向上剤として、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物を含有する。分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物は、フェノール性水酸基が、空気酸化により生じるハイドロパーオキシラジカルを捕捉することにより、ロイコ系染料や顕色剤(式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物、式(2)で表されるウレアウレタン化合物を含む)の酸化分解を防止することにより印字保存性を向上する化合物である。
【0069】
分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物が、分子内に有するフェノール性水酸基の数は、3個以上である限り、限定されないが、例えば、3~5個であり、好ましくは3~4個であり、より好ましくは3個である。
【0070】
分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物としては、具体的には、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、トリス(2,6-ジメチル-4-t-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等が挙げられる。本実施形態において、感熱記録層3は、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0071】
本実施形態において、感熱記録層3の全体に対する分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物の含有量は、特に限定されないが、1質量%以上10質量%以下が好ましい。分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物の含有量が、1質量%以上であるという構成は、本実施形態の感熱記録体1に、優れた印字保存性を付与できる点で、好適である。分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物の含有量が、10質量%以下であるという構成は、本実施形態の感熱記録体1に、優れた発色性を付与できる点で、好適である。
【0072】
本実施形態において、感熱記録層3は保存性向上剤として、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物(その他の保存性向上剤)を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
その他の保存性向上剤としては、例えば、ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4-(2-メチルグリシルオキシ)-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ジエチルチオウレア、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、及び4,4’-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)等が挙げられる。
【0073】
本実施形態において、感熱記録層3に含まれる保存性向上剤の全量に対する分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物の含有量は、特に限定されないが、発色性と印字保存性を向上させる観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。
【0074】
また、感熱記録層3は、必要に応じて、結着剤、増感剤、滑剤、充填剤、顔料等の添加剤を適宜含有してもよい。
【0075】
感熱記録層3に含まれる結着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、カゼイン、ゼラチン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、メチルビニル-無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル等が挙げられる。これらの結着剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0076】
増感剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸アニリド、メチロールステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、1-ベンジルオキシナフタレン、2-ベンジルオキシナフタレン、2,6-ジイソプロピルナフタレン、1,2-ジフェノキシエタン、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェノル)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ(p-クロロベンジル)、シュウ酸ジ(p-メチルベンジル)、シュウ酸ジベンジル、p-ベンジルビフェニル、m-ターフェニル、ジフェニルスルホン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、テレフタル酸ジベンジル、p-トルエンスルホンアミド等の、常温で固体、好ましくは約70℃以上の融点を有するもの等が挙げられる。これらの増感剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0077】
滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、オレイン酸等の脂肪酸類、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス類、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、カルナバワックス等のエステルワックス類、シリコンオイル、鯨油等の油類が挙げられる。これらの滑剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0078】
充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、ホワイトカーボン、酸化亜鉛、酸化珪素、コロイダルシリカ、ポリスチレン樹脂粒子、尿素-ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等が挙げられる。これらの充填剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
本実施形態においては、感熱記録層3上に中間層4を設けることにより、耐水性、耐薬品性、耐可塑剤性等に優れる感熱記録体1を得ることができる。
【0080】
中間層4を構成する材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カゼイン、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、メチルビニル-無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、マレイン酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メチルビニルエーテルポリビニルアルコール等の水系樹脂が挙げられる。なお、「水系樹脂」とは、これらの化合物が水に分散されている、もしくは、水に溶解した樹脂成分という意味である。これらの材料は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0081】
上記樹脂は、水溶性部分を有する樹脂、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)樹脂、あるいは、疎水性のコア粒子を水溶性のシェルポリマーでコーティングしたコアシェル構造の樹脂、例えば、コアシェル型アクリル樹脂等を使用することにより、透明性を向上することができる。
【0082】
コアシェル型の樹脂は、例えば、コアシェル型アクリル樹脂として、「バリアスター(三井化学社製)」の名称で市販されているもの等を使用することができる。
【0083】
中間層4の塗布量(乾燥重量)は、好ましくは0.3g/m2~10g/m2である。
【0084】
トップコート層5は、サーマルヘッドに対する感熱記録体1のサーマルヘッド適性を向上させて、感熱記録層3の発色が順調に行われるようにするものである。具体的には、サーマルヘッドへの付着物の堆積や、感熱記録体1の表面が熱で歪むといった不具合が極力生じないよう、感熱記録層3の発色が行われることをいう。
【0085】
本実施形態では、感熱記録体1のトップコート層5は、弾性粒子等を添加することなく、サーマルヘッドの摩耗を低減してサーマルヘッドその寿命を縮めない役割を担う。これは、いわゆる、サーマルヘッド適性の向上を意味する。また、トップコート層5について、サーマルヘッドに対する耐スティッキング性を向上させる必要がある。ここで、耐スティッキング性とは、サーマルヘッドの熱で感熱記録体の最上層の成分が溶融してサーマルヘッドに粘着することによって生じる不具合が生じにくいことである。より具体的には、感熱記録体に部分的に印字されなかったり、印字面が歪むといった不具合が生じにくいことである。
【0086】
本実施形態のトップコート層5は、その表面に、窪んだ凹部として、水分の蒸発による蒸発孔、及び、亀裂(クラック)を有する。これによって、トップコート層5の表面とサーマルヘッドとの接触面積を低減している。
【0087】
このように、トップコート層5の表面に凹部、特に、亀裂を生じさせるために、トップコート層5を形成する塗液として、疎水性の樹脂粒子を含む塗液を使用している。
【0088】
すなわち、トップコート層5は、結着剤として、疎水性の樹脂粒子のエマルジョン、本実施形態では、疎水性のアクリル樹脂粒子を水分散させたエマルジョンを使用している。
【0089】
このように、トップコート層5の結着剤としては、疎水性の樹脂粒子のエマルジョンを使用し、水溶性高分子は使用していない。
【0090】
水溶性高分子を含む塗液は、塗工して乾燥する際に、凝集しにくく、柔軟性のある塗膜が形成されるため、トップコート層5に収縮による亀裂は生じない。
【0091】
これに対して、疎水性の樹脂粒子のエマルジョンは、塗工して乾燥する際に、蒸発によって疎水性の樹脂粒子同士が凝集して収縮し、トップコート層5の表面に凹部となる亀裂が生じる。
【0092】
この亀裂は、疎水性の樹脂粒子の凝集による収縮によって形成されるので、トップコート層5に止まっており、中間層4には達していない。
【0093】
また、本実施形態では、トップコート層5の表面に、凹部となる水分の蒸発による蒸発孔を形成させるために、感熱記録層3、中間層4、及びトップコート層5の3層を、カーテンコータによって3層同時塗工を行っている。
【0094】
カーテンコータでは、感熱記録層3、中間層4、及びトップコート層5をそれぞれ形成するための各塗液を、複数のスリットのそれぞれから吐出させて積層し、その積層した塗液を連続走行する。このとき、予め基材2上に形成されたアンダーコート層6上に、自由落下させて塗工する。
【0095】
このようなカーテンコータによる3層の同時塗工では、トップコート層5は、乾燥すると、上記のように疎水性の樹脂粒子が凝集し始め亀裂が生じ、亀裂から水蒸気が抜けて、半乾きの中間層4と感熱記録層3が乾燥固化する。中間層4と感熱記録層3の水蒸気は、その大部分が亀裂から放出されるが、一部の水蒸気は、トップコート層5に蒸発孔を形成して放出される。このため、亀裂や蒸発孔は、トップコート層5付近に形成される。
【0096】
本実施形態では、トップコート層5に形成される蒸発孔は、中間層4に止まっている。このため、最上層であるトップコート層5の表面に、油等が付着しても感熱記録層3に達することはなく、感熱記録層3が変色等することがない。
【0097】
トップコート層5は、必要に応じて、結着剤中に、滑剤、架橋剤、分散剤、消泡剤、耐水化剤等の添加剤を添加したものが用いられる。
【0098】
結着剤である樹脂としては、例えば、アクリル樹脂などが挙げられる。滑剤としては、例えば、ポリエチレン、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。架橋剤としては、例えば、炭酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0099】
充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリナイト、ケイソウ土、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ポリスチレン樹脂粒子、尿素-ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等が挙げられる。これらの充填剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。なお、トップコート層5に含有される充填剤の粒子径は、1.0μm以下であることが好ましい。
【0100】
本実施形態では、トップコート層5を形成するための塗液として、疎水性のアクリル樹脂を水分散させたエマルジョンと、滑剤としてのポリエチレンワックスと、顔料として炭酸カルシウムとを、4:3:3の乾燥時の質量比率で配合した水分散懸濁液を使用して感熱記録体1が製造される。
【0101】
トップコート層5の塗布量(乾燥重量)は、1g/m2とする。
【0102】
本実施形態によれば、上記のように、感熱記録体1の最上層であるトップコート層5の表面には、凹部となる亀裂及び水分の蒸発孔が形成されているので、トップコート層5の表面は凹凸となる。これによって、トップコート層5とサーマルヘッドとの接触面積が減少し、サーマルヘッドの摩耗が軽減されてサーマルヘッド適性が向上すると共に、耐スティッキング性が向上する。
【0103】
トップコート層5の厚みは、例えば、1μm未満に調整される。本実施形態では、0.8μm程度に調整される。これによって、トップコート層5の表面から感熱記録層3までの距離が短いので、サーマルヘッドからの熱が、感熱記録層3に効率的に伝導する。また、厚みが薄いため、コストの低減に寄与する。
【0104】
更に、トップコート層5の表面の亀裂は、トップコート層5の内部である厚み方向に進展しているので、亀裂によってトップコート層5の厚み方向に直交する方向、すなわち、横方向に分断されることになる。これにより、サーマルヘッドからの熱の横方向への放熱が抑制される。その結果、サーマルヘッドからの熱が厚み方向に位置する下層の感熱記録層3に効率的に伝導する。
【0105】
トップコート層5とサーマルヘッドとの接触面積を減少させるためには、大略円形である水分の蒸発孔は、その平均直径が、2μm以上であるのが好ましい。
【0106】
この蒸発孔の平均直径は、電子顕微鏡(SEM)によって、トップコート層5の表面を観察し、単位面積、例えば、1mm2当たりの蒸発孔の直径を計測して算出する。また、蒸発孔の個数は、例えば、平均直径が5μm以上の蒸発孔が、1mm2当たり、30個以上であるのが好ましく、40個以上であるのが更に好ましい。
【0107】
本実施形態の感熱記録体1では、トップコート層5の配合等を調整することによって、例えば、トップコート層5の表面を、多数の蒸発孔と少数の亀裂を有する表面とすることができる。あるいは、トップコート層5の表面を、亀裂のない多数の蒸発孔だけの表面とすることもできる。
【0108】
本実施形態では、感熱記録層3、中間層4、及びトップコート層5の3層をカーテンコータによって多層同時塗工したが、多層同時塗工に限らず、各感熱記録層3、中間層4、及びトップコート層5を個別に順次形成してもよい。
【0109】
本実施形態では、基材2上に、アンダーコート層6及び中間層4を形成したが、本発明の他の実施形態として、アンダーコート層6及び中間層4の少なくともいずれか一方の層を省略してもよい。
【0110】
上記実施形態の感熱記録体は、上記構成の感熱記録層を有するため、発色性に優れ、さらに発色濃度が低下しにくく、印字保存性にも優れる。
【0111】
本実施形態の感熱記録体の0.104mj/dotにおける印字部の動感度(OD値)は、発色性に優れる観点から、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは0.9以上である。
【0112】
本実施形態の感熱記録体の0.144mj/dotにおける印字部の動感度(OD値)は、発色性に優れる観点から、好ましくは1.3以上であり、より好ましくは1.4以上である。
【0113】
本実施形態の感熱記録体を0.171mj/dotで印字した後、23℃の条件下で水に24時間浸漬後、乾燥させた印字部の発色濃度(OD値)は、印字保存性に優れる観点から、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.3以上である。
【0114】
本実施形態の感熱記録体を0.171mj/dotで印字した後、1%の次亜塩素酸水溶液に15分浸漬後、乾燥させた印字部の発色濃度(OD値)は、印字保存性に優れる観点から、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.25以上である。
【0115】
本実施形態の感熱記録体を0.171mj/dotで印字した後、70℃100%RHの条件下に24時間静置した印字部の発色濃度(OD値)は、印字保存性に優れる観点から、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.1以上である。
【0116】
本実施形態の感熱記録体を0.104mj/dotで印字した後、40℃乾燥の条件下に3日間静置した印字部の発色濃度(OD値)は、印字保存性に優れる観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.55以上である。
【0117】
本実施形態の感熱記録体を0.104mj/dotで印字した後、40℃乾燥の条件下に7日間静置した印字部の発色濃度(OD値)は、印字保存性に優れる観点から、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.45以上である。
【0118】
上記動感度(OD値)及び発色濃度(OD値)は、後掲の実施例で測定されるものであり、それぞれ値が高いほど発色性、印字保存性に優れることを示すものである。
【実施例】
【0119】
以下の実施例、比較例において、感熱記録層に、ジフェニルスルホン化合物及び分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物を含有する感熱記録体を作製し、発色性、耐水性、耐薬品性(耐次亜塩素酸性)、耐湿熱性、経時印字保存性の評価を行った。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0120】
(実施例1~4、比較例1~3)
(感熱記録体の作製)
<アンダーコート層>
基材である坪量70g/m2の上質紙(厚さ:80μm)上に、中空粒子(固形分濃度26.5%、ローペイクHP-1055:ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社)70質量部、変性スチレンブタジエンラテックス(固形分濃度49%)10質量部、水20質量部の割合になった組成物を混合攪拌させたアンダーコート層用塗液を塗布し、乾燥させて、乾燥時の塗布量が3.0g/m2であり、厚さが5μmのアンダーコート層を形成した。
【0121】
<感熱記録層>
表1に示す感熱記録層形成用の塗液を調製し、調製した感熱記録層形成用の塗液を、上述のアンダーコート層上に、塗布量が、乾燥重量で4.0g/m2となるように塗布した後、乾燥を行うことにより、アンダーコート層上に厚さが3.5μmの感熱記録層を形成した。なお、表1において、各配合材料の数値は、乾燥時における重量比率を示している。
【0122】
また、配合材料として、ロイコ系染料は、粒子径が0.6~0.7μmの3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオロランを使用し、顕色剤1は、4-ヒドロキシ-4′-n-プロポキシジフェニルスルホン(商品名「トミラックKN」、エーピーアイコーポレーション社製)を使用し、顕色剤2は、上記式(2)で表されるウレアウレタン化合物(商品名「UU」、ケミプロ化成社製)を使用した。また、保存性向上剤1は、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン(商品名「DH37」、(株)ADEKA社製)を使用し、保存性向上剤2は、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン(商品名「DH43」、(株)ADEKA社製)を使用し、保存性向上剤3は、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)(商品名「ヨシノックスBB」、三菱ケミカル社製)を使用した。
【0123】
また、結着剤は、スチレンアクリル共重合体エマルジョンを使用し、顔料として、炭酸カルシウム(ヘキサメタリン酸ナトリウム5%水溶液に分散させることにより固形分濃度が30%の分散液にしたもの)を使用し、滑剤として、ステアリン酸亜鉛エマルジョンを使用した。
【0124】
<中間層>
アクリルエマルジョン(固形分濃度30%)液を、上述の感熱記録層上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.6g/m2であり、厚さが1.5μmの中間層を形成した。
【0125】
<トップコート層>
アクリルエマルジョン(固形分濃度20%)が40質量部、炭酸カルシウムが5質量部、ポリエチレンワックス(固形分濃度40%)が15質量部、水が40質量部の割合になったものを混合攪拌させて得た液を、中間層上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.0g/m2であり、厚さが0.9μmのトップコート層を形成した。
【0126】
以上の方法により、実施例1~4、及び比較例1~3の感熱記録体を作製した。
【0127】
【0128】
(動感度評価)
動感度試験では、各実施例及び各比較例における各感熱記録体に対して、印字エネルギーを異ならせて印字を行い、それぞれの印字エネルギーにおける光学濃度(印字部のOD値)を測定した。この測定結果から、各実施例及び各比較例における各感熱記録体の動感度を評価した。以下、動感度試験の手順について説明する。
【0129】
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシュミレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0V、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギー0.104mJ/dot、及び0.144mJ/dotの各条件で印字を行い、当該印字エネルギー条件における光学濃度(OD値)を、分光光度計(X-rite社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
【0130】
上記の試験による測定結果を表2に示す。表2の測定結果において、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合、より発色しており、数値が小さい場合、発色が不十分であることを示す。例えば、印字エネルギーが小さいにも関わらず、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合は、「発色性は良好である」と評価される。一方、印字エネルギーが大きいにも関わらず、光学濃度(OD値)の数値が小さい場合は、「発色性は不良である」と評価される。つまり、動感度試験は、発色性の評価である。
【0131】
(耐水性評価)
耐水性評価では、各実施例及び各比較例における各感熱記録体を水中に浸漬した印字部について、光学濃度(印字部のOD値)を測定した。この測定結果から、各実施例及び各比較例における各感熱記録体の耐水性を評価した。以下、耐水性評価の手順について説明する。なお、上記の光学濃度には、発色濃度の意義が含まれる。以下、耐水性試験、耐次亜塩素酸性試験、耐湿熱性試験、経時印字保存性試験における光学濃度も、同様である。
【0132】
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシュミレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0V、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギー0.171mJ/dotの条件で印字を行った。
【0133】
印字した感熱記録体のサンプルを23℃の条件下で水に24時間浸漬後、乾燥させた。
【0134】
試験前、及び上記試験後の感熱記録体のサンプルにおける印字部の光学濃度(印字部のOD値)を、分光光度計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
【0135】
上記の試験による測定結果を表2に示す。表2の測定結果において、印字部における光学濃度(OD値)は、数値が大きい場合(つまり、光の反射率が少ない)、より発色濃度が維持されており(発色具合の黒色が維持されている)、数値が小さい場合(つまり、光の反射率が大きい)、発色濃度が低下していることを示す。すなわち、感熱記録体を水中に浸漬したときの、印字部の発色濃度低下の程度を表すことになる。このため、印字部の耐水性評価は、水浸漬によって発色部分が消えないことによって確認できる。具体的には、印字部は、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合、耐水性に優れることを意味する。
【0136】
(耐次亜塩素酸性評価)
耐次亜塩素酸性評価では、各実施例及び各比較例における各感熱記録体を次亜塩素酸水溶液中に浸漬した印字部について、光学濃度(印字部のOD値)を測定した。この測定結果から、各実施例及び各比較例における各感熱記録体の耐次亜塩素酸性を評価した。以下、耐次亜塩素酸性評価の手順について説明する。
【0137】
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシュミレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0V、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギー0.171mJ/dotの条件で印字を行った。
【0138】
印字した感熱記録体のサンプルを23℃の条件下で1%次亜塩素酸水溶液に15分間浸漬後、乾燥させた。
【0139】
試験前、及び上記試験後の感熱記録体のサンプルにおける印字部の光学濃度(印字部のOD値)を、分光光度計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
【0140】
上記の試験による測定結果を表2に示す。表2の測定結果において、印字部における光学濃度(OD値)は、上記の耐水性試験と同様に、数値が大きい場合(つまり、光の反射率が少ない)、より発色濃度が維持されており(発色具合の黒色が維持されている)、数値が小さい場合(つまり、光の反射率が大きい)、発色濃度が低下していることを示す。すなわち、感熱記録体を次亜塩素酸水溶液中に浸漬したときの、印字部の発色濃度低下の程度を表すことになる。このため、印字部の耐次亜塩素酸性評価は、次亜塩素酸水溶液中への浸漬によって発色部分が消えないことによって確認できる。具体的には、印字部は、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合、耐次亜塩素酸性に優れることを意味する。
【0141】
(耐湿熱性評価)
耐湿熱性評価では、各実施例及び各比較例における各感熱記録体を湿熱条件に保存した印字部について、光学濃度(印字部のOD値)を測定した。この測定結果から、各実施例及び各比較例における各感熱記録体の耐湿熱性を評価した。以下、耐湿熱性評価の手順について説明する。
【0142】
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシュミレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0V、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギー0.171mJ/dotの条件で印字を行った。
【0143】
印字した感熱記録体のサンプルを70℃100%RHの条件下で24時間静置させた。
【0144】
試験前、及び上記静置後の感熱記録体のサンプルにおける印字部の光学濃度(印字部のOD値)を、分光光度計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
【0145】
上記の試験による測定結果を表2に示す。表2の測定結果において、印字部における光学濃度(OD値)は、上記の耐水性試験と同様に、数値が大きい場合(つまり、光の反射率が少ない)、より発色濃度が維持されており(発色具合の黒色が維持されている)、数値が小さい場合(つまり、光の反射率が大きい)、発色濃度が低下していることを示す。すなわち、感熱記録体を70℃100%RHの湿熱条件に静置したときの、印字部の発色濃度低下の程度を表すことになる。このため、印字部の耐湿熱性評価は、上記湿熱条件によって発色部分が消えないことによって確認できる。具体的には、印字部は、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合、耐湿熱性に優れることを意味する。
【0146】
(経時印字保存性評価)
経時印字保存性評価では、各実施例及び各比較例における各感熱記録体を加熱乾燥条件で保存した印字部について、光学濃度(印字部のOD値)を測定した。この測定結果から、各実施例及び各比較例における各感熱記録体の経時印字保存性を評価した。以下、経時印字保存性評価の手順について説明する。
【0147】
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシュミレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0V、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギー0.104mJ/dotの条件で印字を行った。
【0148】
印字した感熱記録体のサンプルを40℃の乾燥条件下で3日間又は7日間静置させた。
【0149】
試験前、及び上記静置後の感熱記録体のサンプルにおける印字部の各光学濃度(印字部のOD値)を、分光光度計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
【0150】
上記の試験による測定結果を表3に示す。表3の測定結果において、印字部における光学濃度(OD値)は、上記の耐水性試験と同様に、数値が大きい場合(つまり、光の反射率が少ない)、より発色濃度が維持されており(発色具合の黒色が維持されている)、数値が小さい場合(つまり、光の反射率が大きい)、発色濃度が低下していることを示す。すなわち、感熱記録体を上記加熱乾燥条件で保管したときの、印字部の発色濃度低下の程度を表すことになる。このため、印字部の経時印字保存性評価は、上記加熱乾燥条件での保管によって発色部分が消えないことによって確認できる。具体的には、印字部は、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合、経時印字保存性に優れることを意味する。
【0151】
【0152】
【0153】
<検証結果>
表2、3に示す結果から下記のことが確認できた。
顕色剤としてジフェニルスルホン化合物のみを含み、ウレアウレタン化合物及び保存性向上剤を含まない比較例1、顕色剤としてジフェニルスルホン化合物及びウレアウレタン化合物を含むが、保存性向上剤を含まない比較例2は、耐水性、耐次亜塩素酸性、耐湿熱性、経時印字保存性の何れにおいても、顕色剤としてジフェニルスルホン化合物及びウレアウレタン化合物を含み、保存性向上剤として分子内にフェノール性水酸基を3個有する化合物を含む実施例に比べて、印字部のOD値が大きく低下し、印字保存性に劣るものであった。
一方、顕色剤としてジフェニルスルホン化合物及びウレアウレタン化合物を含み、保存性向上剤として分子内にフェノール性水酸基を2個有する化合物を含む比較例3は、実施例と同等の発色性、耐水性、及び経時印字保存性を示したが、耐次亜塩素酸性、耐湿熱性では、印字部のOD値が、実施例と比べて低下するものであった。
以上の結果より、顕色剤としてジフェニルスルホン化合物及びウレアウレタン化合物を含み、保存性向上剤として分子内にフェノール性水酸基を3個有する化合物を含む感熱記録層を有する感熱記録体は、発色性に優れると共に、発色濃度が低下しにくく、印字保存性にも優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
以上に説明したように、本発明は、バーコード等が印字される感熱記録体に、特に有用である。
【0155】
以下に、本発明のバリエーションを付記する。
〔付記1〕
基材上に、感熱記録層が積層された感熱記録体であって、
前記感熱記録層は、発色剤と、顕色剤と、保存性向上剤とを含有し、
前記顕色剤として、下記式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物を含有し、
【化9】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R
9は、水素原子、アルキル基、又はアルケニル基を示す。)
前記保存性向上剤として、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物を含有することを特徴とする、感熱記録体。
〔付記2〕
前記顕色剤として、さらに、下記式(2)で表されるウレアウレタン化合物を含有する、付記1に記載の感熱記録体。
【化10】
〔付記3〕
前記感熱記録層の全体に対する前記ジフェニルスルホン化合物の含有量が、10質量%以上40質量%以下である、付記1又は2に記載の感熱記録体。
〔付記4〕
前記感熱記録層の全体に対する前記分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物の含有量が、1質量%以上10質量%以下である、付記1~3のいずれか1つに記載の感熱記録体。
【符号の説明】
【0156】
1 感熱記録体
2 基材
3 感熱記録層
4 中間層
5 トップコート層
6 アンダーコート層
【要約】
【課題】発色性に優れ、さらに印字保存性に優れた感熱記録体を提供することを目的とする。
【解決手段】感熱記録体1は、基材2上に、感熱記録層3が積層された構成を有する。感熱記録層3は、発色剤と、顕色剤と、保存性向上剤とを含有する。感熱記録層3は、顕色剤として、下記式(1)で表されるジフェニルスルホン化合物を含有し、保存性向上剤として、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する化合物を含有する。
【化1】
(上記式(1)中の各記号の定義は、明細書記載の通りである。)
【選択図】
図1