IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-多気筒内燃機関の本体ブロック 図1
  • 特許-多気筒内燃機関の本体ブロック 図2
  • 特許-多気筒内燃機関の本体ブロック 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】多気筒内燃機関の本体ブロック
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/00 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
F02F1/00 L
F02F1/00 S
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019177525
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021055584
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】藤村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 惇
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-279257(JP,A)
【文献】実開昭58-070442(JP,U)
【文献】再公表特許第2016/063445(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00-1/42
7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒がクランク軸線方向に並べて形成されたシリンダブロック部と、前記各気筒に対応して吸気ポート及び排気ポートが形成されたシリンダヘッド部とが、1つの鋳造品として一体に連続しており、
前記シリンダブロック部の下端はクランク軸よりも上に位置していて、前記シリンダブロック部における吸気側及び排気側の下端に、前記クランク軸を回転自在に保持するクランクケースが下方から重なる下デッキ部が前記気筒の群の外側にはみ出るように形成されて、前記下デッキ部に前記クランクケースをボルトで固定するためタップ穴の群が形成されている構成であって、
記シリンダブロック部においてクランク軸線方向に延びる長手外側面のうち下死点にあるピストンの頂面の高さ位置に、前記各気筒の外面から外向きに突出した状態でクランク軸線方向に長く延びる下部横長リブが一体に形成されている一方、
前記下デッキ部のタップ穴は、前記各気筒の軸心を挟んで前記各気筒の外側に位置した部位に配置されており、
かつ、前記下デッキ部のうち前記タップ穴が形成されている各部位の上面に、前記タップ穴が形成されたボス部が、前記長手外側面に連続しつつ前記下部横長リブとの間に間隔を空けた状態で形成されている、
多気筒内燃機関の本体ブロック。
【請求項2】
前記シリンダブロック部における長手外側面のうちボア間部の外側の箇所に、前記横長リブと交差して前記下デッキ部まで延びる縦長リブが形成されている、
請求項1に記載した多気筒内燃機関の本体ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒内燃機関において、シリンダブロック部とシリンダヘッド部とが一体に鋳造されたモノブロック式の本体ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、本体ブロックとしてシリンダブロック部とシリンダヘッド部とを備えており、一般に、これらシリンダブロック部とシリンダヘッド部とは別体に製造されており、ガスケットを介してヘッドボルトで締結されている。他方、例えば特許文献1に開示されているように、シリンダブロック部とシリンダヘッド部とを一体に鋳造してモノブロック化することが提案されている。
【0003】
特許文献1では、クランク軸線方向から見て、気筒を一方の側と他方の側とに交互に傾斜させることにより、クランク軸の軸受面積の確保やコンパクト化等を図ると共に、シリンダブロック部の長手側面に、隣り合った気筒を連結する補強リブを設けることによって剛性向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-107849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、シリンダブロック部は、クランク軸線が回転自在に保持されるクランクケース部も一体に形成されている。しかし、クランクケース部をシリンダブロック部に一体化すると、鋳造するに際して鋳型が複雑化して歩留りが悪くなる問題や、気筒内面等の加工に手間が掛かる等の問題がある。
【0006】
この点については、クランクケース部を別部材として、クランクケース部とシリンダブロック部とをボルトで固定したらよいといえるが、このようにクランクケース部を別部材に構成すると、ボルトによる引っ張り力が気筒に作用して気筒の下部の真円度が低下し、ピストンのスムースな動きが損なわれてメカロスが増大すると共に、ブローバイガスの吹き抜け量も増大することが懸念される。
【0007】
本願発明は、このような現状を改善することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の本体ブロックは、
「複数の気筒がクランク軸線方向に並べて形成されたシリンダブロック部と、前記各気筒に対応して吸気ポート及び排気ポートが形成されたシリンダヘッド部とが、1つの鋳造品として一体に連続しており、
前記シリンダブロック部の下端はクランク軸よりも上に位置していて、前記シリンダブロック部における吸気側及び排気側の下端に、前記クランク軸を回転自在に保持するクランクケースが下方から重なる下デッキ部が前記気筒の群の外側にはみ出るように形成されて、前記下デッキ部に前記クランクケースをボルトで固定するためタップ穴の群が形成されている
という基本構成である。
【0009】
そして、上記基本構成において、
記シリンダブロック部においてクランク軸線方向に延びる長手外側面のうち下死点にあるピストンの頂面の高さ位置に、前記各気筒の外面から外向きに突出した状態でクランク軸線方向に長く延びる下部横長リブが一体に形成されている一方、
前記下デッキ部のタップ穴は、前記各気筒の軸心を挟んで前記各気筒の外側に位置した部位に配置されており、
かつ、前記下デッキ部のうち前記タップ穴が形成されている各部位の上面に、前記タップ穴が形成されたボス部が、前記長手外側面に連続しつつ前記下部横長リブとの間に間隔を空けた状態で形成されている
という特徴を保持している。
【0010】
本願発明は、様々に展開できる。その例として請求項2では、請求項1において、
前記シリンダブロック部における長手外側面のうちボア間部の外側の箇所に、前記横長リブと交差して前記下デッキ部まで延びる縦長リブが形成されている
という構成を採用している。
【発明の効果】
【0011】
さて、クランクケースはクランクジャーナル及びクランクキャップで回転自在に支持されているが、エンジンのコンパクト化のためにはボア間部の間隔はできるだけ小さいのが好ましい一方、クランクジャーナルはある程度の幅(クランク軸線方向の厚さ)が必要であり、そこで、クランクジャーナルの厚さをボア間部の厚さよりも大きくしている。
【0012】
そして、シリンダブロックとシリンダヘッドとが分離している方式では、シリンダボアの加工は頂面方向から行えるため、クランクジャーナルがボア間部より厚くても問題はないが、シリンダヘッド部とシリンダブロック部とが一体化したモノブロック構造では、シリンダボアの加工は下方から行わざる得ないため、シリンダブロック部にクランクジャーナルが一体化していると、クランクジャーナルに必要な幅を持たせるためには、ボア間の間隔を大きくせざるを得ず、すると、本体ブロックが必要以上に大型化してしまう。
【0013】
吸気バルブ及び排気バルブを配置しているバルブ穴(特にバルブの傘部が重なる部分)の加工も同様であり、クランクジャーナルが一体化されていると、切削工具(ドリル)をクランクジャーナルに当てることなくバルブ穴の加工を行うためには、クランクジャーナルがボア間に収まっている必要があり、すると、上記のとおり、クランクジャーナルに必要な幅を持たせるためにはボア間の間隔を大きくせざるを得ず、すると、本体ブロックが必要以上に大型化してしまう。
【0014】
これに対して本願発明では、クランク軸を保持するクランクケース部はシリンダブロック部とは別部材になっているため、ボア間部の間隔を大きくすることなくシリンダボア及びバルブ穴の加工を行うことができる。
【0015】
さて、シリンダブロック部の下面にクランクケース部をボルトで締結すると、ボルトの引っ張りによって各気筒に応力が発生し、このため、特に気筒の下部が変形して真円度が低下する傾向を呈する。この点については、シリンダブロック部の下端に分厚いデッキ部を形成して、ボルトの引っ張り力が気筒に作用しないようにしたらよいと云えるが、これではシリンダブロック部の重量が増大して燃費を悪化させてしまう。
【0016】
これに対して本願発明では、各気筒がその下部において下部横長リブで連結されているため、ボルトの引っ張り力が各気筒に作用しても、横長リブと各気筒が補強し合って気筒が変形することを防止できる。従って、シリンダブロック部の下端に分厚いデッキ部を設けることなく、各気筒の下部を高い真円度に維持できる。その結果、軽量化を図りつつボアの真円度を保持して円滑な運転を実現できる。
【0017】
更に、本願発明では、ボルトの引っ張り力が気筒の上部に波及することがないため、運転時に何らかの理由でクランクケース部が変形してもその変形が各気筒の上部に波及することはない。すなわち、クランクケース部が変形しても、その変形が気筒の下部で吸収されるのであり、このため、気筒が全体的に曲がるような事態を防止して、信頼性を維持できる。
請求項2のように縦長リブを設けると、ボア間部の外側の部位で下デッキ部が曲がり変形することが防止されるため、ボルトによる引っ張り力が下デッキ部のうちボア間部の外側の部位にも強く作用する。従って、下デッキ部のうち縦長リブの下方の部位をクランクケース部に強く密着させて、高いシール性を確保することが可能になる。また、縦長リブを利用してオイル落とし穴を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態を示す斜視図である。
図2図1のII-II 視概略断面図である。
図3図2のIII-III 視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1).基本構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、タイミングチェーンが配置される側を前、ミッションケースが配置される側を後ろとしている。左右方向は、クランク軸線及びシリンダボア軸心と直交した方向である。図1,3に方向を明示している。
【0020】
内燃機関は、基本的要素として、シリンダブロック部1とシリンダヘッド部2とが一体化したモノブロック式の本体ブロックと、シリンダブロック部1の下面に固定されたクランクケース部3とを備えており、図2のとおり、クランクケース部3に、クランクキャップ4を介してクランク軸5が回転自在に保持されている。
【0021】
シリンダブロック部1には、クランク軸線方向に並んだ3つの気筒6が形成されている一方、シリンダヘッド部2には、燃焼室を構成するペントルーフ状の凹所7が気筒6と同心の状態に形成されている。本体ブロックはアルミの鋳造品であるが、各気筒6の内面(ボア)は、鋳込みによって固定された鉄製のライナー6aによって構成されている。
【0022】
図2に示すように、シリンダヘッド部2には、各凹所7に対向した一対ずつの吸気ポート8と排気ポート9とがクランク軸線を挟んだ両側に形成されており、各排気ポート9は集合空間10に連通している。集合空間10は、シリンダヘッド部2の排気側面2aに開口した1つの排気出口11を備えている。シリンダヘッド部2には、各凹所7に開口した点火プラグ装着穴(イグニッションホール)12が形成されている。
【0023】
また、主としてシリンダヘッド部2に、冷却水が流れるウォータジャケット13を形成している。ウォータジャケット13の下端はシリンダブロック部1上端部に入り込んでいる。従って、従来の内燃機関に比べて、シリンダブロック部1の冷却は殆ど成されていない。これは、シリンダヘッド部2とシリンダブロック部1との伝熱性が良くて、シリンダヘッド部2の冷却効果がシリンダブロック部1にダイレクトに及ぶからである。
【0024】
従って、シリンダブロック部1を構成する各気筒6の厚さは、シリンダブロック部1とシリンダヘッド部2とが分離している2パーツ方式に比べて薄くなっている。このため、2パーツ方式に比べてシリンダブロック部1は相当にスリム化・軽量化されている。
【0025】
(2).横長リブ
各気筒6を略全長(全高)に亙って薄肉化したことによる剛性低下を防止するため、シリンダブロック部1の上端部の長手側面に、各気筒6に繋がった状態でクランク軸線方向に長く延びる上部横長リブ14が形成されている。
【0026】
シリンダブロック部1の下端にはフランジ状の下デッキ部15が形成されている一方、クランクケース部3にも上下のフランジ状のデッキ部16,17が形成されており、シリンダブロック部1の下デッキ部15とクランクケース部3の上デッキ部16とが、図2に示すボルト18の群によって固定されている。図2のとおり、ボルト18はクランクケース3の上デッキ部16に下方から挿通されており、シリンダブロック部1の下デッキ部15には、ボルト18がねじ込まれるタップ穴を形成している。
【0027】
なお、クランクケース部3の下デッキ部17にはオイルパン(図示せず)が固定される。また、図3に示すように、シリンダブロック部1の前面(及びシリンダヘッド部2の前面とクランクケース部3の前面)には、タイミングチェーンを配置するための凹所19が形成されている。タイミングチェーンは、図示しないフロントカバーによって覆われている。
【0028】
シリンダブロック部1の長手側面のうちその下部に、各気筒6に繋がった状態でクランク軸線方向に長く延びる下部横長リブ20が一体に形成されている。下部横長リブ20は、図2のとおり、下死点にあるピストン21の頂面よりもやや高い位置(直上位置)に形成されている。また、シリンダブロック部1の前端と後端とには左右方向に張り出した上下長手のフランジ22,23が形成されており、上下の横長リブ14,20は前後のフランジ22,23に繋がっている。
【0029】
下部横長リブ20は、実線の状態では各気筒6から均等な寸法で突出しているが、図3に一点鎖線で示すように、前から後ろに向けて突出寸法が大きくなるように後ろ広がりに形成してもよい。このように突出寸法を後ろに向けて大きくすると、シリンダブロック部1の後端部の剛性を向上できるため、重量が大きいミッションケースを安定的に支持できる。
【0030】
シリンダブロック部1の下デッキ部15とクランクケース部3の上下デッキ部16,17は後部の張り出し寸法が大きくなっている。これは、ミッションケースの大きさに対応させたものであるが、補強機能を向上させる意味も持っている。このようなデッキ部15,16,17の形状に合わせて、下部横長リブ20を後ろ広がりに形成することにより、シリンダブロック部1の後部の剛性を大きく向上できる。
【0031】
なお、上部横長リブ14についても、前から後ろに向けて左右幅が大きくなるように形成することは可能であるが、上部横長リブ14はミッションケースの上方に位置しているので、後ろ広がりに形成してもミッションケースの取り付け強度向上にはあまり貢献しない。従って、少なくとも下部横長リブ20を後ろ広がりに形成したらよい。
【0032】
さて、ボルト18は、各気筒6が左右方向に最も広がっている部位(各気筒6の軸心を挟んで左右を外側に位置した部位)の外側に配置されており、下デッキ部15に形成されたボス部24に下方からねじ込まれている。このため、ボルト18を締め込むと、引っ張り力が各気筒6に作用して、気筒6に応力が発生する。そして、下部横長リブ20が存在しないと、引っ張り力が気筒6の下部まで波及して、気筒6がいびつに変形してしまうおそれがある。
【0033】
これに対して、実施形態のように、上死点にあるピストン21の頂面近くの高さ位置に下部横長リブ20を形成すると、引っ張り力が上方に作用することが阻止されると共に、気筒6の下部の剛性が向上する。このため、各気筒6のボアは、上下全長に亙って高い真円度に保持される。
【0034】
つまり、下部横長リブ20と各気筒6と下デッキ部15とによって、断面が外向きに開口したコ字形の枠体が構成されるため、下部横長リブ20と各気筒6と下デッキ部15とが互いに補強しあって断面係数が増大し、その結果、ボルト18の引っ張り力が気筒6に作用しても、気筒6の変形が阻止される。そして、下部横長リブ20の高さが高くなると枠体の補強効果は低くなるが、本実施形態のように、下死点にあるピストン21の頂面の高さ位置かその直上位置に下部横長リブ20を配置すると、下部横長リブ20と下デッキ部15との間隔が小さいため、気筒6に曲げ力が作用しても、気筒6が変形することを防止できる。
【0035】
更に述べると、ボルト18の締め込みによって下デッキ部15は図2に矢印Aに示すように引っ張られ、すると、気筒6は矢印Bで示す方向に引っ張られる。このため、何等の措置を施さない場合は、気筒6の下部が楕円状に変形してボアの真円度が悪化するが、実施形態のように下部横長リブ20を設けると、上記のような理由で、気筒6が矢印Bの方向に曲がることが下部横長リブ20よって阻止される。その結果、ボアの全体の真円度を維持できる。
【0036】
既に触れたが、図2のとおり、クランクケース部3とシリンダブロック部1とを締結するボルト18は、クランクケース部3の上デッキ部16に下方から挿通しており、図1のとおり、シリンダブロック部1には、ボルト18がねじ込まれるタップ穴を形成したボス部24が、下デッキ部15と長手側面とに連続した状態に形成されている。そして、各ボス部24は、下部横長リブ20よりも低い高さになっている。
【0037】
仮にボス部24が下部横長リブ20の上方に延びていると、クランクケース部3に外力が掛かって変形した場合に、その変形がボス部24を介して気筒6の上部に伝わって、気筒6が全体的に変形してしまうおそれがあるが、本実施形態のように、ボス部24を下部横長リブ20よりも低い高さに設定すると、クランクケース部3が何らかの理由で変形しても、クランクケース部3の変形は気筒6の下部での変形によって吸収されて、気筒全体が変形することを防止できる。
【0038】
(3).縦長リブ
シリンダブロック部1の長手側面のうちボア間部25の外側の部位に、気筒6の軸線と平行な縦長リブ26が形成されている。縦長リブ26の上端はシリンダヘッド部2に繋がって、下端はシリンダブロック部1の下デッキ部15に至っており、上下の横長リブ14,20とは交叉している。従って、縦横のリブ14,20,26と下デッキ部15とで井桁構造が構成されており、これにより、本体ブロックは捩れや曲げに対して高い剛性を発揮する。
【0039】
そして、排気側の縦長リブ26に、オイル落とし穴27が形成されている。オイル落とし穴27は、シリンダヘッド部2の上方に開口していると共に、シリンダブロック部1の下方にも開口している。補強用の縦長リブ26を利用してオイル落とし穴27を形成するものであるため、それだけシリンダブロック部1の構造を単純化して軽量化に貢献できる。縦長リブ26は、下部横長リブ20よりも大きく突出している。これは、気筒6の真直性を保持するためである。
【0040】
縦長リブ26には、オイル落とし穴27でない上下長手の穴28が空いている。これらの穴28は、オイルギャラリーやブローバイガス通路等として使用される。
【0041】
さて、クランクケース部3とシリンダブロック部1とを締結するボルト18は、気筒6の左右幅が最も大きくなっている部位の外側に配置されているため、ボルト18による引っ張り力はボア間部25の外側において最も低くなっている。従って、縦長リブ26が存在しないと、シリンダブロック部1の下デッキ部15は、ボア間部25の外側の部位においてクランクケース部3との密着力が最も低くなる。
【0042】
しかるに、本実施形態のように縦長リブ26を設けると、ボア間部25の外側の部位で下デッキ部15が曲がり変形することが防止されるため、ボルト18による引っ張り力が下デッキ部15のうちボア間部25の外側の部位にも強く作用する。従って、下デッキ部15のうち縦長リブ26の下方の部位をクランクケース部3に強く密着させて、オイル落とし穴27に高いシール性を確保できる(Oリングのようなシールリングを使用することなく、高いシール性を確保することが可能になる。)。
【0043】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、実施形態では、シリンダブロック部1の長手側面に上下2本の横リブを形成したが、上部横長リブ14と下部横長リブ20との間に他の横長リブを形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願発明は、モノブロック式の本体ブロックに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 本体ブロックを構成するシリンダブロック部
2 本体ブロックを構成するシリンダヘッド部
3 クランクケース部
5 クランク軸
6 気筒
14 上部横長リブ
15 シリンダブロック部の下デッキ部
16 クランクケース部の上デッキ部
18 シリンダブロック部とクランクケース部とを締結するボルト
20 下部横長リブ
21 ピストン
25 ボア間部
26 縦長リブ
27 オイル落とし穴
図1
図2
図3