IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルパイン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車載システム 図1
  • 特許-車載システム 図2
  • 特許-車載システム 図3
  • 特許-車載システム 図4
  • 特許-車載システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】車載システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20240319BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20240319BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G01C21/30
G08G1/0969
G09B29/10 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020039463
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021139822
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】園部 晋吾
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-220688(JP,A)
【文献】特開2019-016278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/30
G08G 1/0969
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも高速道路に関する高精度の第1の道路地図データと、自車が走行する道路を撮像する撮像手段と、自車の現在位置を測位する第1の測位手段と、高速道路か否かを識別する識別手段と、道路識別情報を送信する送信手段とを有する道路識別機能であって、
前記第1の道路地図データは、高速道路の地物情報をリンクデータまたは位置情報と関連付けして記憶し、前記識別手段は、前記第1の測位手段により測位された自車位置に基づき第1の道路地図データからリンクデータと関連する地物情報を取得し、取得した地物情報と前記撮像手段により撮像された画像データとを比較し、比較結果に基づき自車が走行している道路が高速道路か否かを表す前記道路識別情報を生成し、前記送信手段は、生成された道路識別情報を送信する、前記道路識別機能と、
前記第1の道路地図データと異なる第2の道路地図データと、自車の現在位置を測位する第2の測位手段と、前記第2の測位手段によって測位された自車位置に基づき第2の道路地図データを利用して自車位置を道路上へマップマッチングするマップマッチング手段と、前記道路識別機能から送信された前記道路識別情報を受信する受信手段と、経路を案内する案内手段を含むナビゲーション機能とを有し、
前記ナビゲーション機能は、前記道路識別情報により識別された道路種別と前記マップマッチング手段によりマップマッチングされた道路種別とが一致しないとき、前記案内手段による案内を停止させる、車載システム。
【請求項2】
前記ナビゲーション機能は、前記道路識別機能により高速道路が識別され、前記マップマッチング手段によりマップマッチングされた道路が一般道であるとき、前記案内手段による案内を停止させる、請求項1に記載の車載システム。
【請求項3】
前記ナビゲーション機能は、前記道路識別機能により高速道路が識別され、前記マップマッチング手段によりマップマッチングされた道路が高速道路であるとき、前記案内手段による案内を実行させる、請求項1に記載の車載システム。
【請求項4】
前記送信手段は、前記道路識別情報を信号線または無線信号により送信する、請求項1に記載の車載システム。
【請求項5】
前記地物情報は、高速道路上に設置された看板、標識、案内、レーン数、幅員、特徴的な対象物を含む、請求項1に記載の車載システム。
【請求項6】
前記ナビゲーション機能はさらに、目的地までの経路を探索する探索手段を含み、
前記ナビゲーション機能は、前記道路識別機能により識別された道路種別と前記マップマッチング手段によりマップマッチングされた道路種別とが一致しないとき、前記探索手段による探索を停止させる、請求項1に記載の車載システム。
【請求項7】
前記第1の道路地図データは、高精度の地図データであり、前記道路識別機能は、自車が走行している道路を識別する識別情報を自動運転システムへ提供する、請求項1に記載の車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション機能を備えた車載システムに関し、特に、道路地図データに反映されていない道路を走行するときの案内に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、GPS測位等を利用して自車位置を検出し、検出した自車位置を道路地図データ上に重畳して表示する。自車位置は、通常、マップマッチングにより道路上に引き付け処理される。マップマッチングでは、自車位置近傍の複数のマッチング候補の中から最も適切な道路を選択し、この道路上に自車位置を引き付け処理する。
【0003】
特許文献1のナビゲーション装置は、高速道路を走行中に誤って付近の一般道路にマップマッチングしてしまうことを防止するため、自車の速度が判定基準速度以上であるとき、自車が地図データ上にない高速道路を走行中であると判定しマップマッチングを停止する技術を開示する。特許文献2のナビゲーション装置は、自動運転中は、自動運転において走行を予定している走行経路上に自車位置を修正することで自動運転中に生じる位置検出精度や地図精度に起因する誤動作を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-292665号公報
【文献】特開2018-189549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ナビゲーション装置における経路案内は、道路地図データベースを利用し、どの道路に自車位置がマッチングしているかを判定して行われる。道路地図データベースは、定期的に更新されるが、その更新手続はユーザー任せである。例えば、開通したての高速道路が道路地図データベースに反映されていなければ、自車がそのような高速道路を実際に走行しているとき、自車位置は、道路地図データベース上では高速道路以外の一般道を走行していると判定されてしまう。つまり、自車位置が一般道にマップマッチングされてしまう。
【0006】
目的地までの経路が探索されている状態で、上記のように高速道路を走行しているにもかかわらず自車位置が一般道にマッチングされてしまうと、自車が経路から外れるたびに何度も経路の再計算が行われ、さらに不要な交差点案内が成されてしまい、ユーザーにとって不快と思われる案内が多発する。
【0007】
このような課題の具体例について図1を参照して説明する。同図において、P1、P2、P3、P4(矩形)は時刻t1、t2、t3、t4で検出された実際の自車位置を示し、HW(破線)は開通したての高速道路を示し、Rは一般道(細線)を示し、Bは目的地までの探索された経路(ハッチング)を示し、Kは案内点を示し、M1、M2、M3、M4の矢印は道路地図データベースの道路上にマップマッチングされた位置を示している。道路地図データベースには、高速道路HWが未だ反映されておらず、自車が高速道路HWを走行するものとする。
【0008】
時刻t1で、自車位置P1が一般道Rの位置M1にマップマッチングされ、時刻t2で自車位置P2が一般道Rの位置M2にマップマッチングされ、時刻t3で、自車位置P3が一般道の位置M3にマップマッチングされる。ナビゲーション装置では、自車が一般道Rを走行していると認識しているため、目的地までの経路Bは一般道Rに沿うように表示され、自車が案内点Kにさしかかると、経路Bに従う交差点案内(右折案内)が成される。しかしながら、実際には、自車は高速道路HWを走行しているので、このような経路Bの案内や、案内点Kでの交差点案内はユーザーにとって不要なものである。時刻t4で、自車位置P4が一般道の位置M4にマップマッチングされると、ナビゲーション装置は、自車が経路Bから逸脱したと判定し、新たな経路を探索するための経路計算が行われ、新たな経路B1が表示される。このような新たな経路B1のための経路計算もまた不要なものである。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決し、不要な経路計算や案内を抑制することができるナビゲーション機能を備えた車載システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車載システムは、少なくとも高速道路に関する高精度の第1の道路地図データを利用して自車が走行している道路を識別する道路識別機能と、第2の道路地図データを利用して自車位置を道路上へマップマッチングするマップマッチング手段および経路を案内する案内手段を含むナビゲーション機能とを有し、前記ナビゲーション機能は、前記道路識別機能により識別された道路種別と前記マップマッチング手段によりマップマッチングされた道路種別とが一致しないとき、前記案内手段による案内を停止させる。
【0011】
ある実施態様では、前記ナビゲーション機能は、前記道路識別機能により高速道路が識別され、前記マップマッチング手段によりマップマッチングされた道路が一般道であるとき、前記案内手段による案内を停止させる。ある実施態様では、前記ナビゲーション機能は、前記道路識別機能により高速道路が識別され、前記マップマッチング手段によりマップマッチングされた道路が高速道路であるとき、前記案内手段による案内を実行させる。ある実施態様では、前記道路識別機能は、自車が走行する道路を撮像する撮像手段を含み、前記道路識別機能は、自車が走行している道路を撮像した画像データに基づき道路を識別する。ある実施態様では、前記道路識別機能は、自車が走行している道路を識別する識別情報を前記ナビゲーション機能に送信し、前記ナビゲーション機能は、受信した識別情報に基づき前記案内手段を制御する。ある実施態様では、前記ナビゲーション機能はさらに、目的地までの経路を探索する探索手段を含み、前記ナビゲーション機能は、前記道路識別機能により識別された道路種別と前記マップマッチング手段によりマップマッチングされた道路種別とが一致しないとき、前記探索手段による探索を停止させる。ある実施態様では、前記第1の道路地図データは、高精度の地図データであり、前記道路識別機能は、自車が走行している道路を識別する識別情報を自動運転システムへ提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高速道路に関する高精度の第1の道路地図データを利用して自車が走行している道路を識別した結果とマップマッチング手段によりマップマッチングされた結果とが一致しないとき、案内手段による案内を停止させるようにしたので、不要な案内を抑制し、ユーザーへの不快を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来のナビゲーション装置におけるマップマッチングの課題を説明する図である。
図2図2(A)は、本発明の実施例に係る車載システムの概略構成を示す図、図2(B)は、本実施例のナビゲーション機能および道路識別機能の詳細な構成を示す図である。
図3】本発明の実施例に係る車載システムのナビゲーション機能の動作を説明するフローチャートである。
図4】本発明の実施例に係るマップマッチング処理の一例を説明する図である。
図5】本発明の実施例に係るナビゲーション機能を含む車載装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の車載システムは、ナビゲーション機能と、自車が走行する道路を高精度で識別する道路識別機能とを含む。ナビゲーション機能は、車載装置、情報端末、携帯型端末等のコンピュータ装置または電子装置であることができる。道路識別機能は、高精度の道路地図データベースおよび車載カメラで撮像された画像データを利用して自車が走行する道路を高精度に識別する。道路識別機能によって識別された識別結果は、ナビゲーション機能に提供され、ナビゲーション機能は、当該識別結果に基づき案内や経路探索を制御する。また、道路識別機能によって識別された結果は、自動運転システムに提供することもでき、自動運転システムは、当該識別結果に基づき自動運転を制御する。
【実施例
【0015】
次に、本発明の実施例に係る車載システムの構成について図面を参照して説明する。図2(A)は、本実施例の車載システムの概略構成を示す図である。車載システム100は、ナビゲーション機能200と道路識別機能300とを含む。
【0016】
ナビゲーション機能200は、自車位置を検出し、検出された自車位置周辺の道路地図を表示したり、目的地までの経路を探索したり、探索した経路の案内を行う。ナビゲーション機能200は、道路地図上に自車位置を表示させるとき、自車位置を道路地図データ上の道路にマップマッチングさせる。一方、道路識別機能300は、ナビゲーション機能200が使用する道路地図データベースよりも高精度の道路地図データベースを利用して自車が走行する道路やレーン等を識別する。道路識別機能300で識別された情報は、ナビゲーション機能200や図示しない自動運転システムに提供される。
【0017】
図2(B)は、ナビゲーション機能200と道路識別機能300の詳細な構成を示す図である。道路識別機能300は、システムユニット310、高精度の道路地図データベース320、カメラ330、GPS測位340を含む。
【0018】
高精度の道路地図DB320は、少なくとも高速道路のリンクデータとそれに関する地物情報を含む。地物情報は、例えば、高速道路上に設置された種々の看板、標識、案内(速度制限、方面、入口や出口、パーキングエリアやサービスエリア、インターチェンジ等を含む)、レーン数、幅員、その他の特徴的な対象物等を含む。これらの地物情報は、高速道路を構成するリンクデータに関連付けして記憶され、あるいは位置情報と関連付けして記憶される。このような高精度の道路地図DB320は、信頼性の高い道路識別やレーン識別を要求される自動運転システムには不可欠であり、従って、高精度の道路地図DB320は、ナビゲーション機能200が使用する一般的な道路地図DB220と異なり、常に最新の道路を反映した状態にある。しかしながら、高精度の道路地図DB320は、一般的な道路地図DB220よりも詳細な地物情報を包含するため、データサイズが比較的大きく、かつDBの作成に時間を要し、一般的な道路地図DB220のように全ての道路を網羅することは容易ではない。そこで、本実施例の高精度の道路地図DB320は、高速道路に関する情報を含んでいる。但し、本発明は、高精度の道路地図DB320が高速道路以外の一般道に関する詳細な地物情報を含むことを除外するものではない。
【0019】
カメラ330は、自車が走行する道路を撮像するものであり、1つまたは複数のカメラ330が車両に搭載される。カメラ330の搭載される場所は特に限定されないが、例えば、車両の前方、側方、後方、車内空間、サイドミラーなどに設置することができる。カメラ330で撮像された自車が走行する道路の画像データは、システムユニット310へ提供される。
【0020】
GPS測位340は、GPS衛星から送信されるGPS信号を利用して自車の現在位置の(緯度、経度、高さの絶対位置)を測位する。測位された自車位置は、システムユニット310へ提供される。
【0021】
システムユニット310は、GPS測位340からの自車位置に基づき道路地図DB320から対応するリンクデータとそれに関連する地物情報を取得し、さらにカメラ330が撮像した自車が走行する道路の画像データを処理し、処理した画像データと地物情報と照合する。画像データに一致するまたは類似する地物情報が撮像されていれば、システムユニット310は、自車が走行している道路が高速道路であると識別する。画像データに地物情報が含まれないようであれば、自車が走行している道路は高速道路ではないと識別する。この識別結果は、道路識別情報としてシステムユニット310からナビゲーション機能200へ提供される。道路識別情報の提供方法は、特に限定されないが、例えば、道路識別機能300とナビゲーション機能200とを物理的に連結する信号線または無線信号により実施される。また、ここには図示しないが、システムユニット310は、道路識別情報を自動運転システムへ提供することも可能である。
【0022】
ナビゲーション機能200は、ナビゲーションユニット210、一般的な道路地図データベース220、ジャイロセンサや加速度センサ等を含む自立航法センサ230、GPS測位240を含む。
【0023】
一般的な道路地図DB220は、広範囲の全ての道路(高速道路、一般道を含む)に関するリンクデータ、交差点データ、施設データ等を含む。一般的な道路地図DB220は、開通したての道路等を反映するため、定期的に更新されることが望ましい。
【0024】
自立航法センサ230は、自車の車速や方位を検出し、これをナビゲーションユニット210へ提供する。GPS測位240は、GPS信号に基づき自車の絶対位置を測位し、これをナビゲーションユニット210へ提供する。GPS測位240は、道路識別機能300のGPS測位340と共通であってもよい。
【0025】
ナビゲーションユニット210は、自立航法センサ230の検出結果およびGPS測位240の測位結果を受け取り、これらの情報に基づき自車位置を算出する。ナビゲーションユニット210は、例えば、自立航法センサ230から算出された自車の相対的な位置を算出し、この相対的な位置に含まれる誤差をGPS測位240の測位結果である絶対位置を用いて修正する。ナビゲーションユニット210は、自車位置を算出すると、道路地図DB220を参照して自車位置周辺のマップマッチング候補となる道路を抽出し、その中から最適な道路上に自車位置をマップマッチング処理(引き寄せ処理)する。これにより、表示部には、道路上に重畳して自車位置マークが表示される。ナビゲーション機能200は、公知のように、自車位置周辺の道路地図を表示する以外にも、目的地までの経路を探索したり、探索した経路を案内(例えば、探索した経路を表示したり、経路上の交差点における進行方向の案内等)することができる。
【0026】
本実施例において特徴的なことは、ナビゲーションユニット210は、道路識別機能300から提供された道路識別情報に基づき経路の案内(表示)や経路の再探索の制御を行うことである。例えば、ナビゲーションユニット210は、一般的な道路地図DB220を用いてマップマッチングしたときの道路種別が、道路識別機能300において高精度の道路地図DB320を用いて識別した道路種別に一致しないとき、経路の案内や経路逸脱時の経路の再探索を抑制させ、他方、両者の道路種別が一致するとき、経路の案内や経路逸脱時の経路の再探索を実行させる。
【0027】
次に、本実施例の車載システムのナビゲーション機能の動作について図3のフローを参照して説明する。道路識別機能300は、自車の走行開始に伴い、カメラ330で撮像された画像データおよび高精度の道路地図DB320を利用して、自車が走行する道路を識別し、道路識別情報を連続的にナビゲーション機能200に提供する。一方、ナビゲーション機能200も自車の走行開始に伴い、自立航法センサ230および/またはGPS測位240で検出された自車位置のマップマッチングを開始する。
【0028】
ナビゲーションユニット210は、道路地図DB220を参照して、検出された自車位置を道路上へマップマッチングする(S100)。例えば、自立航法センサ230および/またはGPS測位240による自車位置が1秒単位で検出されるならば、マップマッチングもこれに同期して行なわれる。次に、ナビゲーションユニット210は、システムユニット210から提供された道路識別情報により自車が走行している道路が高速道路であるか否かを判定し(S110)、自車が高速道路を走行していると識別されている場合には、さらにマップマッチングされた道路が一般道か否かを判定する(S120)。マップマッチングされた道路が一般道である場合、さらに目的地までの経路があるか否かを判定する(S130)。目的地までの経路がある場合には、ナビゲーションユニット210は、経路の案内、つまり経路を非表示にする(S140)。高精度の道路地図DB320を利用して高速道路を走行していると識別されているにもかかわらず、一般の道路地図DB220を利用したマップマッチングで一般道が選択されているということは、現在走行中の高速道路が開通したてであり、一般の道路地図DB220が未だ更新されていないものと推定されるからである。さらに、ナビゲーションユニット210は、経路逸脱時に新たな経路を再探索する機能を搭載している場合には、そのような経路再探索も停止させる。
【0029】
他方、ナビゲーションユニット210は、マップマッチングされた道路が一般道でない場合、すなわち高速道路の場合には(S120)、高速道路へマッチングして表示させ(S150)、案内を実行/再開する(S160)。例えば、目的地までの経路が表示され、進行方向の案内が実行される。
【0030】
このように本実施例では、システムユニット310により識別された道路種別が高速道路であり、ナビゲーションユニットによりマップマッチングされる道路種別が一般道である場合には、マップマッチング情報と道路識別情報とが不一致であるため、案内を停止させ、マップマッチング情報と道路識別情報とが一致する場合には、案内を実行または再開させるようにしたので、一般的な道路地図DB220が最新の道路を反映しない場合等に生じ得る不必要な案内を抑制し、ユーザーへの不快を軽減させることができる。
【0031】
なお、上記例では、ナビゲーションユニット210は、目的地までの経路がある場合に(S130)、案内を停止するようにしたが、これに限らず、目的地までの経路がない(つまり目的地までの経路が探索されていない)場合であっても、交差点の案内をする機能がある場合には、ナビゲーションユニット210は、目的地までの経路の有無にかかわらず、案内を停止させるようにしてもよい。さらに、ナビゲーションユニット210は、目的地までの経路から自車位置が逸脱したときに経路を再探索する機能を備えている場合には、道路識別情報とマップマッチング結果とが不一致であれば、そのような経路再探索を停止させ、経路再探索のための不必要なコスト計算を抑制することができる。
【0032】
次に、本実施例の車載システム100による具体的な動作例を図4に示す。図4は、従来技術の課題で説明した図1に対応するものである。同図において、P1、P2、P3、P4、P5(矩形)は、時刻t1、t2、t3、t4、t5で自立航法センサ230/GPS測位240により検出された実際の自車位置を示し、HW(破線)は開通したての高速道路を示し、HW1(実線)は従来からある高速道路を示し、Rは一般道(細線)を示し、B1は経路(ハッチング)を示し、Kは抑制される案内点を示し、M1、M2、M3、M4、M5の矢印はマップマッチングされた位置を示している。高精度の道路地図DB320には、開通したての高速道路HWが反映されているが、一般的な道路地図DB22には、高速道路HWは未だ反映されておらず、自車が高速道路HW、HW1を走行するものとする。
【0033】
時刻t1で、道路識別機能300のシステムユニット310は、高精度の道路地図DB320およびカメラ330の走行道路の画像データに基づき自車が高速道路HWを走行していると識別し、その道路識別情報がナビゲーション機能200に提供される。ナビゲーションユニット210は、一般的な道路地図DB220を参照し、自車位置P1を一般道Rの位置M1にマップマッチングする。さらにナビゲーションユニット210は、道路識別機能300の識別情報により識別された高速道路とマップマッチング結果である一般道とが一致しないため、一般道R上に描画される目的地までの経路を非表示にし、案内を停止させる。
【0034】
時刻t2~t4の区間でも、同様に、道路識別機能300で識別された高速道路とマップマッチング結果である一般道とが不一致であるため、一般道R上の経路が非表示にされる。また、自車が案内点Kにさしかかったときの交差点案内も抑制される。時刻t5で、ナビゲーション機能200は、自車位置P5を従来からある高速道HW1の位置M5にマップマッチングする。このとき、道路識別情報の高速道路とマップマッチング結果の高速道路とが一致するため、ナビゲーションユニット210は、自車位置P5を高速道路HW1の位置M5に表示させ、かつ目的地までの経路B1を再探索し、この経路B1を表示させ、案内を再開させる。
【0035】
このように、高精度の道路地図DB320と画像認識を使って高速道路を走行中と識別された場合には、ナビゲーション機能200の不必要な案内は経路再計算が抑制される。また、高速道路を走行中に近くに、道路地図DB220の高速道路がある場合には、ナビゲーションユニット210は、自車位置をその高速道路にマッチングさせる。これにより、開通したての高速道路では不要な案内を抑制し、道路地図DBに格納されている高速道路がある地点まで来た際に、即座に復帰し案内を継続することができる。
【0036】
次に、本実施例のナビゲーション機能200の構成例について説明する。図5は、ナビゲーション機能を有する車載装置の構成を示す図である。車載装置400は、入力部410、位置検出部420、ナビゲーション部430、マルチメディア再生部440、外部インターフェース(I/F)450、表示部460、音声出力部470、記憶部480、制御部490を含んで構成される。但し、ここに示す構成は一例である。
【0037】
入力部410は、入力キーデバイス、音声入力認識装置、タッチパネルなどを含み、これらのデバイスを介してユーザーからの指示を受け取り、これを制御部490へ提供する。位置検出部420は、GPS信号を利用したGPS測位および/またはジャイロセンサや方位センサ等を利用した自立航法センサを含み、自車の現在位置を検出する。
【0038】
ナビゲーション部430は、位置検出部420によって検出された自車の現在位置に道路地図データ上にマップマッピングし、自車位置周辺の道路を表示部460に表示したり、現在位置から目的地までの経路を探索し、探索した経路を道路地図上に表示し目的地までの経路を案内する。
【0039】
マルチメディア再生部440は、CD、DVD、ハードディスク、半導体メモリ等に記憶されたオーディオデータやビデオデータを再生し、これを表示部460や音声出力部470から出力させる。
【0040】
外部I/F450は、外部との接続を行うインターフェースであり、本実施例では、車載装置400は、外部I/F450を介して図2に示す道路識別機能300に接続され、道路識別機能300から道路識別情報を取得する。外部I/F450はさらに、車内の通信LAN等に接続し、車両の状態を表す信号(例えば、車速情報、サイドブレーキのオン/オフ情報など)を取得することができる。さらに外部I/F450は、外部の機器(例えば、スマートフォン)との間で有線または無線によるデータ通信を可能にする。
【0041】
表示部460は、ナビゲーション部430によるナビゲーション画面を表示したり、マルチメディア再生部440で再生された映像を表示し、音声出力部470は、ナビゲーション部430による音声案内等やマルチメディア再生部440で再生された音声を出力する。
【0042】
記憶部480は、不揮発性の記憶媒体であり、車載装置400に必要なデータやアプリケーションソフトウエア等を記憶することができる。また、記憶部480は、ナビゲーション部430が使用する一般的な道路地図DB220を記憶する。道路地図DB220は、地図データ、リンクデータ、ノードデータ、施設データ等を含む。
【0043】
制御部490は、車載装置400の各部の動作を制御する。ある態様では、制御部490は、ROM/RAM等を備えたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを含み、制御部490は、ROM/RAMに格納されたプログラムあるいは記憶部480に記憶されたアプリケーションソフトウエアを実行することで種々の動作を制御する。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
100:車載システム
200:ナビゲーション機能
210:ナビゲーションユニット
220:一般的な道路地図データベース
230:自立航法センサ
240:GPS測位
300:道路識別機能
310:システムユニット
320:高精度の道路地図データベース
330:カメラ
340:GPS測位
図1
図2
図3
図4
図5