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特許7456736形状測定装置、形状測定装置の形状測定方法および形状測定装置の形状測定プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】形状測定装置、形状測定装置の形状測定方法および形状測定装置の形状測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20240319BHJP
   G06T 7/521 20170101ALI20240319BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G06T7/521
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019122387
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021009057
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】595039014
【氏名又は名称】株式会社サキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100133639
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 卓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【弁理士】
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋介
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190002(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139512(WO,A1)
【文献】特開2006-064556(JP,A)
【文献】国際公開第2011/092150(WO,A1)
【文献】特開2003-042736(JP,A)
【文献】特開2012-053015(JP,A)
【文献】特開2006-145405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06T 7/521
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定平面に載置された測定対象物の形状を測定する形状測定装置であって、
前記測定対象物に光を照射することにより、複数の円弧または複数の多角形の一部を含む縞パターンを前記測定対象物の表面に描く光照射部と、
前記縞パターンが表面に描かれた前記測定対象物を撮像する撮像部と、
前記縞パターンの位相をシフトさせつつ複数回の撮像を行うことにより前記測定対象物の形状を測定する測定部と、
を備え、
前記光照射部は、前記撮像部の光軸から所定の角度傾いた方向から前記測定対象物に前記光を照射するように配置され、
前記縞パターンの測定平面上の中心位置は、
前記撮像部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第1投影中心と、
前記光照射部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第2投影中心との間にあって、
前記第1投影中心よりも前記第2投影中心に近い位置である形状測定装置。
【請求項2】
前記光照射部は、前記測定平面に形状測定用の光を照射するためのレンズを備え、前記レンズの前記測定平面側の入射瞳位置を前記測定平面に投影した投影位置または前記投影位置に近接した位置を中心とした前記縞パターンが描かれるように、前記測定対象物に光を照射する請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記光照射部は、前記測定平面に形状測定用の光を照射するためのレンズを備え、
前記レンズの前記測定平面側の焦点位置を前記測定平面に投影した投影位置、または前記投影位置に近接した位置を中心とした前記縞パターンが描かれるように、前記測定対象物に光を照射する請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記測定平面に描かれた、第1ピッチを有する第1縞パターンと、第1ピッチと異なる第2ピッチを有する第2縞パターンと、を、前記第1、第2縞パターンのそれぞれの位相をシフトさせつつ複数回撮像することにより前記測定対象物の形状を測定する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記光照射部として、それぞれ異なる方向から光を照射する第1光照射部と第2光照射部とを備えた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記撮像部として、それぞれ異なる方向から前記測定対象物を撮像する第1撮像部と第2撮像部とを備えた請求項1乃至5のいずれか1項に記載の形状測定装置。
【請求項7】
前記光照射部は、複数のミラーを備えたデジタルミラーデバイスである請求項1乃至6のいずれか1項に記載の形状測定装置。
【請求項8】
測定平面に載置された測定対象物の形状を測定する形状測定方法であって、
光照射部が、前記測定対象物に光を照射することにより、複数の円弧または複数の多角形の一部を含む縞パターンを前記測定対象物の表面に描く光照射ステップと、
撮像部が、前記縞パターンが表面に描かれた前記測定対象物を撮像する撮像ステップと、
測定部が、前記縞パターンの位相をシフトさせつつ複数回の撮像を行うことにより前記測定対象物の形状を測定する測定ステップと、
を含み、
前記光照射部は、前記撮像部の光軸から所定の角度傾いた方向から前記測定対象物に前記光を照射するように配置され、
前記縞パターンの測定平面上の中心位置は、
前記撮像部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第1投影中心と、
前記光照射部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第2投影中心との間にあって、
前記第1投影中心よりも前記第2投影中心に近い位置である形状測定方法。
【請求項9】
測定平面に載置された測定対象物の形状を測定する形状測定プログラムであって、
光照射部が前記測定対象物に光を照射することにより、複数の円弧または複数の多角形の一部を含む縞パターンを前記測定対象物の表面に描く光照射ステップと、
前記縞パターンが表面に描かれた前記測定対象物を撮像部により撮像させる撮像ステップと、
前記縞パターンの位相をシフトさせつつ複数回の撮像を行うことにより前記測定対象物の形状を測定する測定ステップと、
をコンピュータに実行させる形状測定プログラムであって、
前記撮像部の光軸から所定の角度傾いた方向から前記測定対象物に前記光を照射し、
前記縞パターンの測定平面上の中心位置は、
前記撮像部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第1投影中心と、
前記光照射部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第2投影中心との間にあって、
前記第1投影中心よりも前記第2投影中心に近い位置である形状測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置、形状測定装置の形状測定方法および形状測定装置の形状測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、物体に同心円状の縞模様を投影し、投影された同心円のピッチから光干渉投影装置までの光軸上の距離から物体の形状計測を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-308452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、測定対象物の形状を高精度に測定できなかった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
測定平面に載置された測定対象物の形状を測定する形状測定装置であって、
前記測定対象物に光を照射することにより、複数の円弧または複数の多角形の一部を含む縞パターン前記測定対象物の表面に描光照射部と、
前記縞パターンが表面に描かれた前記測定対象物を撮像する撮像部と、
前記縞パターンの位相をシフトさせつ複数回の撮像を行うことにより前記測定対象物の形状を測定する測定部と、
を備え、
前記光照射部は、前記撮像部の光軸から所定の角度傾いた方向から前記測定対象物前記を照射するように配置され、
前記縞パターン測定平面上の中心位置は、
前記撮像部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第1投影中心と、
前記光照射部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第2投影中心との間にあって、
前記第1投影中心よりも前記第2投影中心に近い位置である形状測定装置。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る形状測定方法は、
測定平面に載置された測定対象物の形状を測定する形状測定方法であって、
光照射部が、前記測定対象物に光を照射することにより、複数の円弧または複数の多角形の一部を含む縞パターン前記測定対象物の表面に描光照射ステップと、
撮像部が、前記縞パターンが表面に描かれた前記測定対象物を撮像する撮像ステップと、
測定部が、前記縞パターンの位相をシフトさせつ複数回の撮像を行うことにより前記測定対象物の形状を測定する測定ステップと、
を含み、
前記光照射部は、前記撮像部の光軸から所定の角度傾いた方向から前記測定対象物前記を照射するように配置され、
前記縞パターン測定平面上の中心位置は、
前記撮像部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第1投影中心と、
前記光照射部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第2投影中心との間にあって、
前記第1投影中心よりも前記第2投影中心に近い位置である
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る形状測定プログラムは、
測定平面に載置された測定対象物の形状を測定する形状測定プログラムであって、
光照射部が前記測定対象物に光を照射することにより、複数の円弧または複数の多角形の一部を含む縞パターンを前記測定対象物の表面に描く光照射ステップと、
前記縞パターンが表面に描かれた前記測定対象物を撮像部により撮像させる撮像ステップと、
前記縞パターンの位相をシフトさせつつ複数回の撮像を行うことにより前記測定対象物の形状を測定する測定ステップと、
をコンピュータに実行させる形状測定プログラムであって、
前記撮像部の光軸から所定の角度傾いた方向から前記測定対象物に前記光を照射し、
前記縞パターンの測定平面上の中心位置は、
前記撮像部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第1投影中心と、
前記光照射部を前記測定平面の法線に沿って前記測定平面に投影した第2投影中心との間にあって、
前記第1投影中心よりも前記第2投影中心に近い位置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、測定対象物の形状を高精度に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る形状測定装置の構成を示すブロック図である。
図2A】本発明の第2実施形態に係る形状測定装置の構成を示すブロック図である。
図2B】本発明の第2実施形態に係る形状測定装置の前提技術による縞パターンを説明する図である。
図2C】本発明の第2実施形態に係る形状測定装置による縞パターンを説明する図である。
図2D】本発明の第2実施形態に係る形状測定装置による縞パターンを説明する図である。
図2E】本発明の第2実施形態に係る形状測定装置による縞パターンを説明する図である。
図2F】本発明の第2実施形態に係る形状測定装置による高さ計測を説明する図である。
図2G】本発明の第2実施形態に係る形状測定装置による位相の合成を説明する図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る形状測定装置の光照射部および撮像部の配置を説明する図である。
図4A】本発明の第2実施形態に係る形状測定装置の処理手順(前準備)を説明するフローチャートである。
図4B】本発明の第2実施形態に係る形状測定装置の処理手順(測定時)を説明するフローチャートである。
図5A】本発明の第3実施形態に係る形状測定装置の構成を示すブロック図である。
図5B】本発明の第3実施形態に係る形状測定装置の光照射部および撮像部の配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明記載する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての形状測定装置100について、図1を用いて説明する。図1に示すように、形状測定装置100は、光照射部101、撮像部102および測定部103を含む。形状測定装置100は、測定平面110に置かれた測定対象物120の形状を測定する装置である。
【0014】
光照射部101は、複数の円弧または複数の多角形の一部を含む縞パターンが測定対象物120の表面に描かれるように、測定対象物120に光112を照射する。撮像部102は、光照射部101により縞パターン113が照射された測定対象物120を撮像する。測定部103は、縞パターン113の位相をシフトさせつつ撮像部102を用いて複数回の撮像を行うことにより測定対象物120の形状を測定する。円弧の中心または多角形の中心の位置114は、撮像部102を測定平面110の法線に沿って測定平面110に投影した第1投影領域の中心116よりも、光照射部101を測定平面110の法線に沿って測定平面110に投影した第2投影領域の中心115に近い。
【0015】
本実施形態によれば、測定対象物の形状を高精度に測定できる。
【0016】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る形状測定装置について、図2A乃至図4Bを用いて説明する。図2Aは、本実施形態に係る形状測定装置200の構成を示すブロック図である。
【0017】
形状測定装置200は、測定対象物220を撮像して得られる画像を用いて測定対象物の形状を測定する装置である。測定対象物220は、例えば、はんだペーストが塗布された電子回路基板であるが、これには限定されない。形状測定装置200は、例えば、はんだペーストが塗布された電子回路基板の形状を測定することにより、はんだペーストの塗布状態の良否を判定できる。
【0018】
図2Aに示したように、形状測定装置200は、光照射部201、撮像部202および測定部203を有する。光照射部201は、測定平面210に形状測定用の光212を照射するためのレンズ211を備える。
【0019】
光照射部201は、レンズ211の測定平面側の入射瞳位置を測定平面210に投影した投影位置216または投影位置216に近接した位置を中心とした複数の円弧または複数の多角形の一部を含む縞パターン213が測定対象物220の表面に描かれるように、測定対象物220に光212を照射する。なお、光照射部201は、レンズ211の測定平面側の焦点位置を測定平面210に投影した投影位置または当該投影位置に近接した位置を中心とした複数の円弧または複数の多角形の一部を含む縞パターン213が測定対象物220の表面に描かれるように、測定対象物220に光212を照射してもよい。
【0020】
縞パターン213は、明線と暗線とが交互に周期的に繰り返される1次元の縞パターンである。光照射部201は、測定対象物220に対して斜め方向から縞パターン213を照射するように配置されている。測定対象物220の高さの変化(高さの非連続性)は、縞パターン213の画像において、縞パターン213のずれとして表れる。したがって、縞パターン213のずれ量から高さの差を求めることができる。形状測定装置200は、例えば、サインカーブに従って明るさが変化する縞パターン213を用いる位相シフト法(PMP(Phase Measurement Profilometry)法)により高さマップを作成する。PMP法においては、縞パターン213のずれ量がサインカーブの位相差に相当する。
【0021】
PMP法では、縞パターン213が照射された領域の1つの点に着目すると、縞パターン213の位相をずらしながら縞パターン213を測定対象物220に照射したときに(縞パターン213を走査したときに)、その点の明るさは周期的に変動する。色や反射率等の点の表面特性に応じて点ごとの明るさは異なるが、どの点においても縞パターン213に対応する周期的な明るさの変動が生じる。したがって、例えば、点を最も明るくするときの縞パターン213の位相がその点の高さの情報を表す。つまり、周期的な明るさ変動の初期位相が、各点の高さ情報を与える。
【0022】
ここで、図2B乃至図2Dを参照して、本実施形態の前提技術による縞パターンと本実施形態の縞パターンとについて説明する。図2Bは、本実施形態に係る形状測定装置200の前提技術による縞パターンを説明する図である。図2Cは、本実施形態に係る形状測定装置200による縞パターンを説明する図である。図2Dは、本実施形態に係る形状測定装置200による縞パターンを説明する図である。
【0023】
前提技術においては、直線状の縞が所定のピッチで繰り返される縞パターン240を用いて形状測定を行っていた。しかしながら、縞パターン240では、方向241と方向242とを比較すると、方向241の方が縞同士の間隔であるピッチが長くなるため、高さの測定精度が悪くなる。つまり、縞パターン240のどの方向を用いて測定を行うかにより、高さの測定精度にばらつきが生じていた。そのため、前提技術においては、縞パターン240を拡大しながら測定対象物に照射して形状測定を行っていた。縞パターン240の拡大は、例えば、DMD(Digital Mirror Device)、液晶、ガラスプレートに描かれた縞をレンズで拡大しながら測定対象物に照射していた。この場合、測定対象物の各測定ポイントから見ると、入射瞳から縞が拡大されながら照射されたように見える。あるいは、ガルバノミラー等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)にレーザ光を反射させ、XY方向に走査しながら縞パターンを測定対象物に照射して形状測定を行うことをも行われていた。この場合も、MEMSを起点に縞パターンを拡大しながら測定対象物に照射して形状測定を行うこととなる。
【0024】
これに対して、本実施形態では、円弧状の縞パターン213を用いるので、方向241と方向242とのいずれにおいても縞のピッチが同じとなり、測定精度が同じとなる。つまり、円弧状の縞パターン213なので、どの方向を用いて測定を行っても誤差が生じず高さの測定精度にばらつきが生じず、高精度な測定を行うことが可能となる。なお、図2Cにおいては、縞パターンとして円弧状の縞パターン213(複数の円弧を含む縞パターン)を用いているが、図2Dに示したように、複数の多角形を含む縞パターン216を用いてもよい。
【0025】
図2Aを参照して、光照射部201は、複数のミラーを備えたデジタルミラーデバイスであってもよい。例えば、光照射部201は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム))を用いたミラーデバイスデバイスである。また、光照射部201は、レンズ211の他に、図示しない、縞パターン213を形成する縞パターン形成部や、光源、光学系などを含んで構成されている。パターン形成部は、例えば、動的に所望の縞パターン213を形成可能な液晶ディスプレイや、縞パターン213が固定的に形成されたガラスプレートなどであってもよい。
【0026】
撮像部202は、光照射部201により縞パターン213が照射された測定対象物220を撮像する。撮像部202は、測定対象物220の2次元画像を生成する撮像素子と撮像素子に画像を結像させるための光学系とを含んでいる。撮像部202は、例えば、CCD(Charged-coupled devices)カメラやCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)カメラであるが、これらには限定されない。撮像部202の最大視野は、測定平面210上の測定対象物220の載置領域よりも小さくてもよい。この場合、撮像部202は、複数の部分画像に分割して測定対象物220の全体を撮像する。
【0027】
測定部203は、測定制御部231、画像処理部232、高さ算出部233および形状特定部234を有する。測定制御部231は、光照射部201および撮像部202を制御して、縞パターン213を測定対象物220に照射させて、測定対象物の画像を撮像する。測定制御部231は、縞パターン213の位相をシフトさせつつ撮像部202を制御して複数回の撮像を行う。
【0028】
図2Eは、本実施形態に係る形状測定装置200による縞パターンを説明する図である。図2Eに示したように、測定制御部231は、縞パターン213の縞の間のピッチが異なる縞パターン214,215を照射する。具体的には、縞パターン214は、縞が細い線となっており、縞同士の間の間隔(ピッチ)が狭いパターン(短い周期のピッチのパターン)となっている。縞パターン215は、縞が太い線となっており、縞同士の間の間隔が、縞パターン214と比較して広いパターン(長い周期のピッチのパターン)となっている。そして、測定制御部231は、縞パターン214,215のそれぞれの位相をシフトさせつつ撮像部202を用いて複数回の撮像を行うように制御する。PMP法においては、各縞パターン214,215について、位相をずらして少なくとも3回の撮像が必要となるが、本実施形態においては、位相を90°(1/4波長)ずらして、4回撮像している。
【0029】
このように、ピッチの異なる縞パターン214,215を用いることにより、高さ測定の精度を高めることができる。例えば、ピッチの広いパターン(縞パターン214)を大まかな高さ測定に用い(例えば、1mmオーダ)、ピッチの狭いパターン(縞パターン215)をより細かい高さ測定に用いる(例えば、0.1mmオーダ)ことにより、より正確で、高精度の高さ測定が可能となる。
【0030】
PMP法では、縞パターンの位相を用いて測定対象物220の高さを算出するので、高さの差が大きい場合には、縞が1周期以上ずれてしまい、高さを一意に特定することができない。そのため、ピッチの広い縞パターン215を用いて高さを測定しておくことにより、ピッチの狭い縞パターン214を照射したときに縞が1周期以上ずれていても高さを一意に特定できる。
【0031】
図2Aを参照して、画像処理部232は、撮像部202が撮像した画像を受信し、後に実行される高さ算出に備えて、受信した画像を処理する。画像処理部232は、受信した画像、処理した画像を記憶する。また、画像処理部232は、基準画像を記憶している。基準画像は、測定平面210上に測定対象物220を置かない状態で照射される縞パターン214,215の画像である。
【0032】
高さ算出部233は、撮像部202が撮像した画像上の縞パターン214,215に基づいて、測定対象物220の高さマップを作成する。高さ算出部233は、撮像部202により撮像された画像と基準画像との位相差を画像全体について算出することにより、測定対象物220の位相差マップを生成する。そして、高さ算出部233は、高さ算出の基準となる基準面と位相差マップとを用いて測定対象物220の高さマップを生成する。
【0033】
図2Fは、本実施形態に係る形状測定装置200による高さ計測を説明する図である。図2Fに示したように、形状測定装置200による測定範囲をH、縞パターン213(214,215)の照射角度をθ、縞パターン213(214,215)の縞のピッチ(周期)をwとすると、H=wtanθと表せる。
【0034】
高さ算出部233は、より詳細には、撮像部202が撮像した画像の各画素と、当該画素に対応する基準画像の画素との間で縞パターン214,215の位相差を算出する。そして、高さ算出部233は、算出した位相差を高さへ変換する。高さへの変換は、当該画素近傍における局所的な縞パターン214,215の幅を用いて行われる。これは、撮像部202が撮像した画像の縞パターン214,215の幅が場所により異なるのを補償するためである。測定対象物220の上面(測定面)での位置により光照射部201からの距離が異なるために、基準画像の縞パターン214,215の幅が一定であっても、測定対象物220の上面の縞パターン214,215の照射領域の一端から他端へと線型に幅が変化するからである。高さ算出部233は、換算された高さと基準面とに基づいて基準面からの高さを算出し、測定対象物220の高さマップを作成する。
【0035】
図2Gは、本実施形態に係る形状測定装置200による位相の合成を説明する図である。本実施形態では、ピッチの異なる2つの縞パターン214,215を用いて測定対象物の画像を撮像しているため、図2Gを参照して、長い波長(長いピッチ)の位相と短い波長(短いピッチ)の位相との合成について説明する。横軸は、基準面からの位相のずれを表し、縦軸は高さを表す。単一の位相で認識できる高さ(長さ)の範囲は、1ピッチの範囲に限られる(図2Eの測定範囲Hに相当)。1ピッチ以上の基準面からの位相のずれは、何ピッチ目の位相のずれかを認識することはできない。測定精度を上げるために、短いピッチの縞パターンを用いると、測定範囲が犠牲となる。
【0036】
そのため、本実施形態においては、長いピッチの縞パターンと短いピッチの縞パターンとを組み合わせることにより、測定範囲を広げながら、精度の高い測定を実現している。図2Gでは、短いピッチの位相を260(短波長位相)で表し、長いピッチの位相を261(長波長位相)で表している。例えば、短波長位相260でπという結果となった際に、長波長位相261における3/6π、5/6π、7/6πの中で最も近いものが5/6πとなったとする(実際には、測定誤差があり、短波長位相260のπと長波長位相261の5/6πは完全には一致しないため、どこに最も近いかを考える)。この場合、短波長位相260で2ピッチずれた上でのπなので、短波長位相260では位相が5πずれていることになる。長波長位相261は、測定精度が悪いため、基本的には、短波長位相260の何ピッチ目かという特定に用いて、実際の高さ計算では短波長位相260を用いて高さを算出する。ノイズの影響で短波長位相260での計算を正常に行えない場合に、長波長位相261の結果を用いる場合もある。
【0037】
図2Aを参照して、形状特定部234は、測定対象物220の高さマップが有する高さ情報を測定対象物220の2次元画像の各画素に対応付けることにより、高さ分布を有する測定対象物220の画像を作成する。また、形状特定部234は、高さ分布付きの測定対象物220の画像に基づいて、測定対象物220の3次元モデリング表示を行ってもよい。さらに、形状特定部234は、2次元の測定対象物220の画像に高さ分布を重ね合わせてディスプレイなどの出力部に出力してもよい。また、例えば、形状特定部234は、測定対象物220の高さ分布を色分けして出力してもよい。
【0038】
図3は、本実施形態に係る形状測定装置200の光照射部201および撮像部202の配置を説明する図である。撮像部202は、測定平面210に対して垂直方向の上方に配置されている。すなわち、撮像部202は、測定平面210に対して垂直な方向から測定対象物220を撮像することができる。なお、撮像部202の配置位置は垂直方向の上方でなくてもよいが、この場合、撮像した画像を補正するなどの処理が必要となる。
【0039】
光照射部201は、撮像部202の邪魔にならないように、撮像部202の視野に対して斜め方向から縞パターン213を照射するように配置されている。すなわち、光照射部201は、撮像部202のレンズ211の光軸に対して所定の角度傾いた方向から縞パターン213を照射するように配置されている。また、光照射部201は、固定された位置に配置されていてもよい。この場合、光照射部201と撮像部202との相対位置が固定されていることとなる。これとは反対に、光照射部201が、移動機構により撮像部202の周りを移動できるようになっていても、撮像部202が移動可能となっていてもよい。例えば、撮像部202の周囲にレールを配置し、光照射部201を当該レールに滑車などを介して取り付け、モータを用いて光照射部201を移動させる移動機構が考えられるが、これには限定されない。光照射部201が移動可能であれば、測定対象物220の形状に合わせて縞パターン213の照射方向を選択できるので、より精度の高い測定が可能となる。縞パターン213は、光照射部201のレンズ211の測定平面側の入射瞳位置330(レンズ設計により異なる)を測定平面210に投影した投影位置230または投影位置230に近接した位置を中心とした複数の円弧を含んでいる。
【0040】
図4Aは、本実施形態に係る形状測定装置200の処理手順(前準備)を説明するフローチャートである。形状測定装置200は、ステップS401において、短周期の縞パターン214を基準平面に照射して、その画像(短周期基準画像)を撮像部202で撮像し、所定のメモリに記憶する。ステップS403において、形状測定装置200は、長周期の縞パターン215を基準平面に照射して、その画像(長周期準備画像)を撮像部202で撮像し、所定のメモリに記憶する。なお、基準平面は、部品が搭載されていない基板を測定平面210にセットして、その基板の上面としても、基準平面となる専用の部材を測定平面210にセットしたものとしても、測定平面210としてもよい。
【0041】
図4Bは、本実施形態に係る形状測定装置200の処理手順(測定時)を説明するフローチャートである。ステップS421において、形状測定装置200は、測定平面210に置かれた測定対象物220に短周期の縞パターン214を照射して、撮像部202で撮像し、撮像した画像(短周期測定画像)を所定のメモリに記憶する。ここでは、90°ずつ位相をずらした(1/4波長ずらした)縞パターン214を測定対象物220に照射して、少なくとも3枚の画像を取得する。なお、ステップS421においては、4枚の画像を取得する。
【0042】
ステップS423において、形状測定装置200は、測定平面210に置かれた測定対象物220に長周期の縞パターン215を照射して、撮像部202で撮像し、撮像した画像(長周期測定画像)を所定のメモリに記憶する。ここでは、90°ずつ位相をずらした(1/4波長ずらした)縞パターン215を測定対象物220に照射して、少なくとも3枚の画像を取得する。なお、ステップS423においては、4枚の画像を取得する。
【0043】
ステップS425において、形状測定装置200は、ステップS421において撮像した短周期測定画像をメモリから読み出し、位相計算を行う。ステップS427において、形状測定装置200は、ステップS423において撮像した長周期測定画像をメモリから読み出し、位相計算を行う。ステップS429において、形状測定装置200は、短周期測定画像および長周期測定画像から計算した位相を結合して、測定対象物220の高さマップを作成し、3次元形状を測定する。
【0044】
本実施形態によれば、複数の円弧または複数の多角形を含む縞パターンを測定対象物に照射して形状を測定するので、測定対象物の形状を高精度で測定できる。
【0045】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る形状測定装置について、図5Aおよび図5Bを用いて説明する。図5Aは、本実施形態に係る形状測定装置200の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る形状測定装置は、上記第2実施形態と比べると、光照射部を2つおよび撮像部を2つ有する点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0046】
形状測定装置500は、光照射部201,501、撮像部202,502および測定部203を有する。光照射部201,501は、それぞれ異なる方向から光を照射する。また、撮像部202,502は、それぞれ異なる方向から測定対象物220を撮像する。なお、本実施形態では、形状測定装置500は、2つの光照射部201,501および2つの撮像部202,502を有しているが、形状測定装置500は、3つ以上の光照射部および3つ以上の撮像部を有していてもよい。
【0047】
形状測定装置500は、例えば、光照射部201で縞パターン213(214,215)を位相をずらしながら測定対象物220に照射し、撮像部202で撮像する。その後、形状測定装置500は、光照射部501で縞パターン213を位相をずらしながら測定対象物220に照射し、撮像部502で撮像する。そして、形状測定装置500は、撮像部202,502で撮像した画像を用いて、測定対象物220の高さを算出する。形状測定装置500は、例えば、縞パターン213(214,215)の位相をずらしながら4枚の画像を取得するが、照射部201および撮像部202を用いて4枚のうちの2枚の画像を取得し、光照射部501および撮像部502を用いて4枚のうちの2枚の画像を取得してもよい。なお、光照射部501は、レンズ511の測定平面側の入射瞳位置を測定平面210に投影した投影位置516または投影位置516に近接した位置を中心とした複数の円弧または複数の多角形の一部を含む縞パターン213が測定対象物220の表面に描かれるように、測定対象物220に光212を照射する。
【0048】
図5Bは、本実施形態に係る形状測定装置200の光照射部および撮像部の配置を説明する図である。撮像部202,502は、測定平面210に対して垂直方向の上方から測定平面210上の測定対象物220を撮像する。光照射部201,501は、撮像部202,502の視野に対して斜め方向から縞パターン213を照射できるように配置されている。光照射部201,501および撮像部202,502は、移動可能に配置されていてもよい。なお、光照射部201および光照射部501の配置位置は、図示した例には、限定されない。
【0049】
本実施形態によれば、2つの光照射部および2つの撮像部を用いるので、迅速、高精度に測定対象物の形状を測定することができる。
【0050】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4A
図4B
図5A
図5B