(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物およびギア成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 59/04 20060101AFI20240319BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C08L59/04
C08K3/38
(21)【出願番号】P 2019209105
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】土岐 眞
(72)【発明者】
【氏名】小森 厚志
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-047262(JP,A)
【文献】国際公開第98/029483(WO,A1)
【文献】特開2017-160332(JP,A)
【文献】特開2019-065233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 59/04
C08K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、窒化ホウ素(B)を0.0005~0.008質量部含有し、
融点が
168.0℃以上173.0℃以下で、メルトフローインデックス(MI)が
0.6g/10分以上
7.0g/10分以下であり、
前記ポリアセタール樹脂(A)がポリアセタールコポリマーであり、
前記窒化ホウ素(B)の平均粒子径が1.0μm以上15.0μm以下であり、
前記窒化ホウ素(B)中の、粒子径が10μm以下の当該窒化ホウ素(B)の粒子の割合が35.0%以上である、ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、前記窒化ホウ素(B)を0.0015~0.007質量部含有し、
前記窒化ホウ素(B)の平均粒子径が2.0μm以上10.0μm以下であり、
粒子径が10μm以下の前記窒化ホウ素(B)の割合が45.0%以上である、請求項
1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記窒化ホウ素(B)以外の添加剤(C)として、酸化防止剤、窒素含有化合物、脂肪酸金属塩、および離型(潤滑)剤からなる群より選択される少なくとも1種を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01~10質量部含有する、請求項1
又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物からなるギア成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物およびギア成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、バランスのとれた機械物性と優れた疲労特性を有していることから、広く自動車、電子機器、電気機器等の部品に利用されている。特に、ポリアセタール樹脂は、これら製品中に樹脂製ギアとして、具体的には、例えば複写機、プリンター等のOA機器のギアや、自動車のワイパーギア、ウインドーギア等に広く使用されている。ポリアセタール樹脂を用いた樹脂製ギアとしては、例えば、ポリアセタールホモポリマーに窒化ホウ素を添加した機構部品(特許文献1)、融点を規定したポリアセタールコポリマーにタルクを添加した組成物(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-291073号公報
【文献】特開2008-156628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ポリアセタール樹脂を用いた樹脂製ギアには、高いレベルでの耐久性が求められている。特に、ギアの使用環境が、例えば自動車のように、比較的高温(夏場の車内温度は60℃弱にまで達する)になることがあるため、樹脂製ギアとしては、高温下で長時間晒された場合でも耐久性が維持されることが望まれる。また、樹脂製ギアは、歯先部分と、歯先部分以外の部分とで形成されているが、その使用過程での負荷の加わり方が異なることから、それぞれの部分で異なる特性が求められている。具体的には、歯先部分においては、そもそも歯先部分が破壊されにくく、さらに高温下で長時間晒された場合でも十分に破壊されにくいこと、すなわちエージング前後(高温下にさらされる前および後)での高いギア耐久性を有することが求められている。また、歯先部分以外の部分においては、刃先部分に必要なエージングまでは必要ないが材料自体の耐久性は重要であるため、高いクリープ性や繰返し振動疲労性が求められている。さらに、ポリアセタール樹脂を用いた樹脂製ギアは、上記のような耐久性以外にも、当該ギアを用いた製品を用いた人や自動車内での人への健康を考えて、樹脂自体の熱安定性も重要となる。
しかし、上記のような従来技術では、これら特性について十分に検討されていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、クリープ性、繰り返し振動疲労性、エージング前後でのギア耐久性、熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂に、特定の窒化ホウ素を添加し、樹脂組成物が特定の物性を有することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
[1]ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、窒化ホウ素(B)を0.0005~0.008質量部含有し、
融点が168.0℃以上173.0℃以下で、メルトフローインデックス(MI)が0.6g/10分以上7.0g/10分以下であり、
前記ポリアセタール樹脂(A)がポリアセタールコポリマーであり、
前記窒化ホウ素(B)の平均粒子径が1.0μm以上15.0μm以下であり、
前記窒化ホウ素(B)中の、粒子径が10μm以下の当該窒化ホウ素(B)の粒子の割合が35.0%以上である、ポリアセタール樹脂組成物。
[2]前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、前記窒化ホウ素(B)を0.0015~0.007質量部含有し、
前記窒化ホウ素(B)の平均粒子径が2.0μm以上10.0μm以下であり、
粒子径が10μm以下の前記窒化ホウ素(B)の割合が45.0%以上である、上記[1]に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[3]前記窒化ホウ素(B)以外の添加剤(C)として、酸化防止剤、窒素含有化合物、脂肪酸金属塩、および離型(潤滑)剤からなる群より選択される少なくとも1種を、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01~10質量部含有する、上記[1]又は[2]に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物からなるギア成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、クリープ性、繰り返し振動疲労性、エージング前後でのギア耐久性、熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例において繰り返し振動疲労特性を評価する際に作製した試験片の説明図である。
【
図2】実施例においてギア耐久性を評価する際に作製したギア試験片の説明図である。
【
図3】実施例においてギア耐久性を評価する際に作製したギア試験片であって、当該評価した結果、破壊した試験片を示す写真である。
【
図4】実施例においてギア耐久性を評価する際に使用した試験機を説明する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
(ポリアセタール樹脂組成物)
本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、窒化ホウ素(B)を0.0005~0.008質量部含有し、融点が167.0℃以上173.0℃以下で、メルトフローインデックス(MI)が0.1g/10分以上10.0g/10分以下であり、前記ポリアセタール樹脂(A)がポリアセタールコポリマーであり、前記窒化ホウ素(B)の平均粒子径が1.0μm以上15.0μm以下であり、粒子径が10μm以下の前記窒化ホウ素(B)の割合が35.0%以上である。これにより、クリープ性、繰り返し振動疲労性、エージング前後でのギア耐久性、熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0012】
〔A:ポリアセタール樹脂〕
本実施形態におけるポリアセタール樹脂(A)は、ポリアセタールコポリマーである。
ポリアセタールコポリマーは、トリオキサンと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールを重合触媒の存在下で共重合して得られるポリアセタール樹脂である。
トリオキサンとは、ホルムアルデヒドの環状3量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルマリン水溶液を反応させることにより得られる。
このトリオキサンは、水、メタノール、蟻酸、蟻酸メチル等の連鎖移動させる不純物を含有している場合があるので、例えば蒸留等の方法でこれら不純物を除去精製することが好ましい。その場合、連鎖移動させる不純物の合計量をトリオキサン1molに対して、1×10-3mol以下とすることが好ましく、より好ましくは0.5×10-3mol以下とする。不純物の量を上記数値のように低減化することにより、優れた熱安定性が得られる。
【0013】
環状エーテル及び/又は環状ホルマールは、前記トリオキサンと共重合可能な成分であり、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクルロルヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキサタン、1,3-ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4-ブタンジオールホルマール、1,5-ペンタンジオールホルマール、1,6-ヘキサンジオールホルマール等が挙げられる。特に、1,3-ジオキソラン、1,4-ブタンジオールホルマールが好ましい。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
環状エーテル及び/又は環状ホルマールの添加量は、前記トリオキサン1molに対して0.7mol%~3.0mol%が好ましく、より好ましくは0.7mol%~2.5mol%、更に好ましくは1.0mol%~2.0mol%である。
【0015】
重合触媒としては、ルイス酸に代表されるホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモン化物が挙げられ、特に、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素系水和物、及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましい。例えば、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素-ジ-n-ブチルエーテラートを好適例として挙げられる。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
重合触媒の添加量は、前記トリオキサン1molに対して0.1×10-5~0.1×10-3molの範囲が好ましく、より好ましくは0.3×10-5~0.5×10-4molの範囲であり、さらに好ましくは0.5×10-5~0.4×10-4molの範囲である。重合触媒の添加量が前記範囲内とすることで、安定した重合反応を実施することができる。
【0017】
ポリアセタールコポリマーの製造において、重合触媒の失活は、重合反応によって得られたポリアセタールコポリマーを、アンモニア、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン等のアミン類、又はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、有機酸塩等の触媒中和失活剤の少なくとも一種を含む水溶液または有機溶剤液中に投入し、スラリー状態で一般的には数分~数時間攪拌することにより行われる。触媒中和失活後のスラリーは濾過、洗浄により、未反応モノマーや触媒中和失活剤、触媒中和塩が除去された後、乾燥される。
【0018】
また、重合触媒の失活としては、アンモニア、トリエチルアミン等の蒸気とポリアセタールコポリマーとを接触させて重合触媒を失活させる方法や、ヒンダードアミン類、トリフェニルホスフィン及び水酸化カルシウム等のうち少なくとも一種とポリアセタールコポリマーとを混合機で接触させて触媒失活させる方法も用いることができる。
【0019】
また、重合触媒の失活を行わずに、ポリアセタールコポリマーの融点以下の温度で、不活性ガス雰囲気下において加熱することによって、重合触媒が揮発低減されたポリアセタールコポリマーを用いて本実施形態の後述の末端安定化処理を行ってもよい。
【0020】
以上の重合触媒の失活操作及び重合触媒の揮発低減操作は、必要に応じて、重合反応によって得られたポリアセタールコポリマーを粉砕した後で行ってもよい。
【0021】
得られたポリアセタールコポリマーの末端安定化処理は、次の方法によって不安定末端部分を分解除去する。不安定末端部の分解除去方法としては、例えば、ベント付き単軸スクリュー式押出機やベント付き2軸スクリュー式押出機を用いて、切欠剤としてアンモニアやトリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪酸アミン、水酸化カルシウムに代表されるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機弱酸塩、有機弱酸塩等の公知の不安定末端部を分解することのできる塩基性物質の存在下に、ポリアセタールコポリマーを溶融する方法が上げられ、それにより、不安定末端部を分解除去することができる。
【0022】
本実施形態のポリアセタール樹脂(A)は、融点が、167.0℃以上173.0℃以下が好ましく、より好ましくは168.0℃以上173.0℃以下、更に好ましくは169.0℃以上172.0℃以下である。
また、メルトフローインデックス(MI)は、0.1g/10分以上10.0g/10分以下が好ましく、より好ましくは0.6g/10分以上7.0g/10分以下。更に好ましくは1.0g/10分以上4.0g/10分以下である。
融点及びMIが前記範囲内であると、クリープ性、繰り返し振動疲労性、エージング前後のギア耐久性、熱安定性を向上させることができる。
なお、融点は、一旦200℃まで昇温させ融解させ100℃まで冷却した試料を、再度2.5℃/分の速度にて昇温させることで測定することができ、再度の昇温過程で発生する発熱スペクトルのピークの温度を融点とする。また、メルトフローインデックスは、ASTM-D-1238-57Tに準拠して、190℃、2.16kgの条件で測定することができる。
また、ポリアセタール樹脂(A)の融点は、環状エーテル及び/又は環状ホルマールの量を調整することで、調整することができる。
また、メルトフローインデックスは、連鎖移動剤や分子量調整剤として分子量が200以下、好ましくは60~170のアセタール化合物を使用することで調製することができる好適なアセタール化合物としては、具体的には、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラールを例として挙げることができる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらアセタール化合物の添加量は、重合体の分子量を好適な範囲に制御する観点から、トリオキサン1molに対して0.1×10-4~1.6×10-3molとすることが好ましい。
【0023】
〔B:窒化ホウ素〕
本実施形態の窒化ホウ素(B)は、化学式BNを有し、六方晶系で存在する。窒化ホウ素(B)としては無色の粉末を用いることができ、窒素とホウ素とを1500℃で反応させる、又はホウ砂を塩化アンモニウムと熱する等の方法により得られる。
【0024】
本実施形態における窒化ホウ素は、平均粒子径が1.0μm以上15.0μm以下であり、好ましくは平均粒子径が2.0μm以上10.0μm以下であり、より好ましくは平均粒子径が3.0μm以上6.0μm以下である。当該平均粒子径が上記の範囲内であると、クリープ性、繰り返し振動疲労性、エージング前後のギア耐久性を向上させることができる。
【0025】
また、本実施形態では、窒化ホウ素(B)中の、粒子径が10μm以下の窒化ホウ素(B)の粒子の割合(個数百分率)が35.0%以上であり、好ましくは45.0%以上、より好ましくは10μm以上の割合が70.0%以上である。当該粒子径が10μm以下の割合が上記の範囲内であると、クリープ性、繰り返し振動疲労性、エージング前後のギア耐久性を向上させることができる。
粒子径の調整は、原料の混合割合、焼成温度を適宜設定することで任意にすることができる。
また、平均粒子径の測定は、界面剤(石鹸水)を一滴添加した水に、窒化ホウ素粉末を濃度0.04%wt/volとなるよう混合し、超音波にて20分処理する。その後、SHIMADZU製レーザー粒度分布計(SALD-2300)を用いて測定することで平均粒子径を得ることができる。また、窒化ホウ素(B)中の、粒子径が10μm以下の窒化ホウ素(B)の粒子の割合(個数百分率)は、上記測定により得た窒化ホウ素(B)の粒度分布に基づき算出することができる。
【0026】
また、本実施形態における窒化ホウ素(B)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.0005~0.008質量部であり、好ましくは0.0015~0.007質量部であり、より好ましくは0.002~0.005質量部である。窒化ホウ素(B)の含有量が、上記の範囲内であると、クリープ性、繰り返し振動疲労性、エージング前後のギア耐久性を向上させることができる。
【0027】
〔C:その他添加剤〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、窒化ホウ素(B)以外の添加剤(C)を含有させることができ、当該樹脂組成物の用途に応じて適当な添加剤を選択し含有させることにより、例えば熱安定性に優れたポリアセタール樹脂を得ることができる。添加剤(C)としては、酸化防止剤、窒素含有化合物、脂肪酸金属塩、および離型(潤滑)剤からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。また、当該添加剤(C)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01~10質量部とすることができ、好ましくは0.01~5質量部である。
【0028】
酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、例えばn-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3’-メチル-5’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-テトラデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4 -ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、1,4- ブタンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル -5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。好ましくは、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
窒素含有化合物としては、例えば、ポリアミド樹脂、アミド化合物、尿素誘導体、トリアジン誘導体、等が挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、例えば、ジアミンとジカルボン酸との縮合、アミノ酸の縮合、ラクタムの開環重合等によって得られるナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン6・10、ナイロン6/6・10、ナイロン6/6・6、ナイロン6・6/6・10、ナイロン6/6・6/6・10、ポリ-β-アラニン等が挙げられる。
アミド化合物としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族モノカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸と脂肪族モノアミン、脂肪族ジアミン、芳香族モノアミン、芳香族ジアミンとから生成されるステアリルステアリン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、エチレンジアミンージステアリン酸アミド、エチレンジアミンージベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンジアミンージステアリン酸アミド、エチレンジアミンージエルカ酸アミド、キシリレンジアミンージエルカ酸アミド、ジ(キシリレンジアミンーステアリン酸アミド)、セバシン酸アミド等が挙げられる。
尿素誘導体としては、例えば、N-フェニル尿素N,N’-ジフェニル尿素、N-フェニルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素が挙げられる。
トリアジン誘導体としては、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、N-フェニルメラミン、メレム、N,N’-ジフェニルメラミン、N-メチロールメラミン、N,N’-トリメチロールメラミン、2,4-ジアミノー6-シクロヘキシルトリアジン、メラム等が挙げられる。
これら窒素含有化合物は1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
脂肪酸金属塩としては、炭素数10~35の飽和若しくは不飽和の脂肪酸又は水酸基で置換されている脂肪酸と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物又は塩化物と、から得られた脂肪酸金属塩が挙げられる。
脂肪酸金属塩の脂肪酸は、例えば、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミトン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグリセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸、12-ヒドロキシドデカン酸、3-ヒドオキシデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、10-ヒドロキシヘキサデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸、10-ヒドロキシ-8-オクタデカン酸等が挙げられる。
また、金属化合物としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム及びカルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムのアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物若しくは塩化物である。
脂肪酸金属塩としては、好ましくは、脂肪酸がミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸であり、金属化合物がカルシウムの水酸化物、酸化物及び塩化物である。具体的な脂肪酸金属塩の例としては、ミリスチン酸カルシウム、パルミチン酸カリシウム、ステアリン酸カルシウムである。
【0031】
離型(潤滑)剤としては、アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール、平均重合度が10~500であるオレフィン化合物、シリコーンが好ましく使用される。
【0032】
〔ポリアセタール樹脂組成物の特性〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、融点が167.0℃以上173.0℃以下であり、好ましくは168.0℃以上173.0℃以下、より好ましくは169.0℃以上172.0℃以下である。
また、メルトフローインデックス(MI)は、0.1g/10分以上10.0g/10分以下であり、好ましくは0.6g/10分以上7.0g/10分以下、より好ましくは1.0g/10分以上4.0g/10分以下である。
本実施形態において、融点及び、メルトフローインデックスが前記範囲内であると、クリープ性、繰り返し振動疲労性、エージング前後のギア耐久性、熱安定性において好適である。
なお、融点は、一旦200℃まで昇温させ融解させ100℃まで冷却した試料を、再度2.5℃/分の速度にて昇温させることで測定することができ、再度の昇温過程で発生する発熱スペクトルのピークの温度を融点とする。また、メルトフローインデックスは、ASTM-D-1238-57Tに準拠して、190℃、2.16kgの条件で測定することができる。
また、ポリアセタール樹脂組成物の融点及びメルトフローインデックスは、ポリアセタール樹脂組成物中のポリアセタール樹脂(A)を適宜選択することにより調節することができる。
【0033】
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態において、ポリアセタール樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、一般的な押出機を用いて、各成分を混練することで製造することができる。押出機としては1軸又は多軸混練押出機等が挙げられ、中でも、減圧装置を備えた2軸押出機が好ましい。該ポリアセタール樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、
〈1〉ポリアセタール樹脂(A)を押出機トップよりフィードし、更に窒化ホウ素(B)を定量フィーダー等でサイドフィード口から添加して溶融混練する方法、
〈2〉ポリアセタール樹脂(A)の一部を押出機トップよりフィードし、更に窒化ホウ素(B)と残りのポリアセタール樹脂(A)を定量フィーダー等でサイドフィード口から添加して溶融混練する方法、
〈3〉ポリアセタール樹脂(A)を押出機トップよりフィードし、更にポリアセタール樹脂等でマスターバッチ化した窒化ホウ素(B)を定量フィーダー等でサイドフィード口から添加して溶融混練する方法、
〈4〉ポリアセタール樹脂(A)と窒化ホウ素(B)をヘンシェルミキサー、タンブラー、V字型ブレンダーなどで一括混合した後、押出機を用いて溶融混錬する方法が挙げられる。この中でも、ポリアセタール樹脂(A)が溶融した状態に窒化ホウ素(B)を添加する〈1〉~〈3〉の製造方法が好ましい。
更に(C)成分は、押出機トップからポリアセタール樹脂(A)と同時にフィードしてもよいし、サイドフィード口より窒化ホウ素(B)と同時にフィードしてもよい。また、予め(A)、(B)、(C)成分からなる高濃度マスターバッチを作成しておき、射出成形時にポリアセタール樹脂で希釈することにより本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を得ることもできる。
【0034】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形する方法は、特に制限するものではなく、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法の何れかによって成形することができる。
【0035】
(成形体)
本実施形態の成形体は、上記の本実施形態のポリアセタール樹脂組成物からなる成形体であり、ギア(ギア成形体)に好適に使用できる。ギアの種類としては、特に限定するものではないが、例えば、はすば歯車、平歯車、内歯車、ラック歯車、やまば歯車、すぐばかさ歯車、はすばかさ歯車、まがりばかさ歯車、冠歯車、フェースギア、ねじ歯車、ウォームギア、ウォームホイールギア、ハイポイドギア、ノビコフ歯車等を挙げることができ、特に自動車のハイパーギア、ウインドーギア等に好適に使用できる。
また、ギアにはグリースを塗布して使用されることが好ましい。これにより、作動耐久性と静音性が大きく向上する場合がある。
【実施例】
【0036】
以下、実施例、参考例及び比較例よって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。尚、実施例、参考例及び比較例中の用語及び測定法は以下のとおりである。
【0037】
〔融点の測定方法〕
ポリアセタール樹脂およびポリアセタール樹脂組成物の融点は、示差熱量計(パーキンエルマー社製、DSC-2C)を用い、一旦200℃まで昇温させ融解させ100℃まで冷却した試料を、再度2.5℃/分の速度にて昇温することで測定した。当該昇温の過程で発生する発熱スペクトルのピークの温度を当該試料の融点とした。
【0038】
〔メルトフローインデックスの測定方法〕
ASTM-D-1238により東洋精機製のMELT INDEXERを用いて190℃、2160gの条件下でMI(メルトフローインデックス:g/10分)を測定した。
【0039】
〔平均粒子径および所定粒子径の割合の測定方法〕
平均粒子径の測定は、界面剤(石鹸水)を一滴添加した水に、窒化ホウ素粉末を濃度0.04%wt/volとなるよう混合し、超音波にて20分処理した。その後、SHIMADZU製レーザー粒度分布計(SALD-2300)を用いて測定した。また、得られた粒度分布から粒子径が10μm以下の窒化ホウ素の割合を算出した。
組成物中の窒化ホウ素の平均粒子径および10μm以下の粒子径の割合は、組成物ペレット或いは成形片を、550℃に設定した電気炉で焼却し、その残分を、上記と同様の操作を行うことにより測定した。
【0040】
〔クリープ特性の評価方法〕
ポリアセタール樹脂組成物を原料として、住友重機工業(株)製SH-75射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、射出圧力60MPa、射出時間25秒、冷却時間15秒、金型温度70℃にて、JIS2号の寸法60mm×6.5mm×3mmの短冊状の試験片を作製した。この試験片を150℃に設定されたギアーオーブンに吊るし、120時間加熱した。その後、ギアーオーブンから試験片を取り出し、23℃で50%の湿度に保たれた恒温室で24時間放置した。放置後の試験片を、東洋精密製作所(株)製のクリープ試験機200-6を用いて、荷重応力20MPaの引張応力で、80℃の空気中で試験片が破壊されるまでの時間を測定した。クリープ性は、n=5で測定した数値の平均値とした。破壊されるまでの時間が長いほど、耐クリープ性に優れる。
【0041】
〔繰り返し振動疲労特性の評価方法〕
ポリアセタール樹脂組成物を原料として、住友重機工業(株)製SH-75射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、射出圧力60MPa、射出時間25秒、冷却時間15秒、金型温度70℃にて、ASTM D671B(
図1)の試験片を作製した。この試験片を150℃に設定されたギアーオーブンに吊るし、120時間加熱した。その後、ギアーオーブンから試験片を取り出し、23℃で50%の湿度に保たれた恒温室で24時間放置した。放置後の試験片を、東洋精機(株)製の繰返し曲げ振動疲労試験機B70THを用いて、JIS K7119に従い、周波数30Hzで、荷重応力20MPaの曲げ応力で、80℃の空気中で、繰返し試験を実施し破断するまでの回数を測定した。繰返し振動特性は、n=5で測定した数値の平均値とした。破断するまでの回数が多いほど、繰返し振動疲労性に優れる。
【0042】
〔エージング前後のギア耐久性の評価方法〕
ポリアセタール樹脂組成物を原料として、住友重機工業(株)製SH-75射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃、射出圧力60MPa、射出時間25秒、冷却時間15秒、金型温度70℃にて、歯先円直径52mm、ピッチ円直径50mm、歯先厚8mm、歯数50個のギア試験片(
図2)を作製した。この試験片を中川製作所製のギア耐久試験機を用いて、荷重トルク9Nmで、回転数100rpmで、23℃の空気中で、ギアが破壊するまでの時間を測定した(破壊後のギア試験片:
図3)。ギア耐久性は、n=5で測定した数値の平均値とした。ギアが破壊するまでの時間が長いほど、ギア耐久性に優れる。
また、同試験片を100℃に設定したギアーオーブン中に吊るし50日間の耐熱エージングを実施した。その後、ギアーオーブンから試験片を取り出し、23℃で50%の湿度に保たれた恒温室で24時間放置した。放置後の試験片を前記と同じ条件にてギア耐久試験を実施した。n=5で測定し平均値を耐久性とした。ギアが破壊するまでの時間が長いほど、ギア耐久性に優れる。
ギア耐久試験機(
図4)は、駆動ユニット1を備えた樹脂製ギア(ギア試験片)2と、可変式トルク計ユニット3を備えた金属製ギア(S45C)4と、を有し、樹脂製ギア2を回転させることで、金属製ギア4が回転する機構である。ここで、金属製ギア4側のトルクを所定値に設定し、耐久試験を実施する。試験に際しては、グリースとして、協同油脂(株)製エクセライトN0.2を塗布して実施した。
【0043】
〔熱安定性の評価方法〕
ポリアセタール樹脂組成物(3±0.01g)を、窒素雰囲気下(50mL/hr)で、230℃に加熱、溶融させ、滞留時間2~30分間に発生するホルムガスを、1mol/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液に吸収させ、生成する水酸化ナトリウムを、1/100規定の硫酸で滴定し、ホルムガス量に換算して求めた。この滴定には、指示薬としてチモールフタレインを用い、青色が無色となった時点を終点とした。
値が小さいほど、熱安定性に優れる。
【0044】
以下、実施例、参考例、比較例に用いた成分を示す。
〔A:ポリアセタール樹脂〕
〔A-1〕
熱媒を通すことのできるジャケット付き2軸パドル型連続重合反応機((株)栗本鐵工所製、径2B、L/D=14.8)を温度80℃に調整した。
重合触媒として三フッ化ホウ素-ジ-n-ブチルエーテラートをシクロヘキサンにて0.26質量%に希釈した触媒調合液69g/hrと、トリオキサン3500g/hr、1,3-ジオキソラン43g/hr、分子量調節剤としてメチラール4.2g/hrを、重合反応機に連続的に供給し重合を行った。
重合反応機から排出されたものは、0.5質量%のトリエチルアミン水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った後、濾過、洗浄、乾燥を行った。
次に、200℃に設定されたベント付の2軸押出し機(L/D=40)に供給し、末端安定化ゾーンに、0.8質量%トリエチルアミン水溶液を、窒素の質量に換算して20質量ppmになるように液添し、90kPaで減圧脱気しながら安定化させ、ペレタイザーにてペレット化した。その後100℃で2hr乾燥を行い、ポリアセタール樹脂を得た。
得られたポリアセタール樹脂は、融点171.1℃、メルトフローインデックス9.7g/10分であった。
【0045】
〔A-2〕
ポリアセタール樹脂A-1に対して融点を変えたものを得るため、1,3-ジオキソランの量を27g/hrとした以外は、A-1と同様の操作を実施し、ポリアセタール樹脂を得た。
得られたポリアセタール樹脂は、融点173.0℃、メルトフローインデックス9.6g/10分であった。
【0046】
〔A-3〕
ポリアセタール樹脂A-1に対して融点を変えるため1,3-ジオキソランの量を86g/hrとした以外は、A-1と同様の操作を実施し、ポリアセタール樹脂を得た。
得られたポリアセタール樹脂は、融点167.0℃、メルトフローインデックス9.4g/10分であった。
【0047】
〔A-4〕
ポリアセタール樹脂A-1に対して融点を変えるため1,3-ジオキソランの量を121g/hrとした以外は、A-1と同様の操作を実施し、ポリアセタール樹脂を得た。
得られたポリアセタール樹脂は、融点164.0℃、メルトフローインデックス9.4g/10分であった。
【0048】
〔A-5〕
ポリアセタール樹脂A-1に対してメルトフローインデックスを変えるためメチラールの量を1.6g/hrとした以外は、A-1と同様の操作を実施し、ポリアセタール樹脂を得た。
得られたポリアセタール樹脂は、融点171.0℃、メルトフローインデックス0.5g/10分であった。
【0049】
〔A-6〕
ポリアセタール樹脂A-1に対してメルトフローインデックスを変えるためメチラールの量を2.4g/hrとした以外は、A-1と同様の操作を実施し、ポリアセタール樹脂を得た。
得られたポリアセタール樹脂は、融点171.0℃、メルトフローインデックス2.1g/10分であった。
【0050】
〔A-7〕
ポリアセタール樹脂A-1に対してメルトフローインデックスを変えるためメチラールの量を5.0g/hrとした以外は、A-1と同様の操作を実施し、ポリアセタール樹脂を得た。
得られたポリアセタール樹脂は、融点171.0℃、メルトフローインデックス14.6g/10分であった。
【0051】
〔A-8〕
ポリアセタール樹脂A-8として、旭化成(株)製Tenac_4010を用いた。
当該樹脂は、ポリアセタールホモポリマーであり、融点176.0℃、メルトフローインデックス9.8g/10分であった。
【0052】
〔B:窒化ホウ素〕
〔B-1〕
窒化ホウ素B-1として、デンカ(株)製、Grade:SP-2を用いた。当該窒化ホウ素B-1は、粒子径:0.16μm~40μm、平均粒子径:4.1μm、粒子径10μm以下の粒子の割合:82.5%であった。
【0053】
〔B-2〕
窒化ホウ素B-2として、デンカ(株)製、Grade:GPを用いた。当該窒化ホウ素B-2は、粒子径:0.2μm~90μm、平均粒子径:7.8μm、粒子径10μm以下の粒子の割合:48.8%であった。
【0054】
〔B-3〕
窒化ホウ素B-3として、デンカ(株)製、Grade:MGP用いた。当該窒化ホウ素B-3は、粒子径:0.2μm~100μm、平均粒子径:11.1μm、粒子径10μm以下の粒子の割合:41.4%であった。
【0055】
〔B-4〕
窒化ホウ素B-4として、デンカ(株)製、Grade:SGP用いた。当該窒化ホウ素B-4は、粒子径:0.23μm~120μm、平均粒子径:18.8μm、粒子径10μm以下の粒子の割合:26.6%であった。
【0056】
〔C:その他添加剤〕
〔C-1〕
酸化防止剤:トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]・・BASF(株)社製、Irganox245
【0057】
〔C-2〕
脂肪酸金属塩:ステアリン酸カルシウム
【0058】
[実施例5~11、参考例1~4、比較例1~3、5~7]
表1又は2に示したポリアセタール樹脂100質量部を、200℃に設定されたL/D=30の30mmベント付2軸押出機のメインフィード口からフィードし、メインフィード口の下流に設置されたサイドフィード口より表1又は2に示した窒化ホウ素をフィードし、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物ペレットを製造した。
得られたポリアセタール樹脂組成物ペレットを前述の測定方法により、クリープ性、繰返し振動疲労性、エージング前後のギア耐久性、熱安定性の評価を行った。結果を表1~3に示す。
【0059】
[比較例4]
表1に示すポリアセタール樹脂(A-1)100質量部を、200℃に設定されたL/D=30の30mmベント付2軸押出機のメインフィード口からフィードし、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬することによりポリアセタール樹脂ペレットを製造した。
得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の測定方法により、クリープ性、繰返し振動疲労性、エージング前後のギア耐久性、熱安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例12]
表3に示すポリアセタール樹脂(A-6)100質量部に、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.3質量部及び、脂肪酸金属塩としてステアリン酸カルシウム0.1質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した。この混合物を200℃に設定されたL/D=30の30mmベント付2軸押出機のメインフィード口からフィードし、メインフィード口の下流に設置されたサイドフィード口より表3に示した窒化ホウ素(B-1)0.004質量部をフィードし、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬することによりポリアセタール樹脂ペレットを製造した。
得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の測定方法により、クリープ性、繰返し振動疲労性、エージング前後のギア耐久性、熱安定性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0061】
[比較例8]
表3に示すポリアセタール樹脂(A-6)100質量部を、200℃に設定されたL/D=30の30mmベント付2軸押出機のメインフィード口からフィードし、メインフィード口の下流に設置されたサイドフィード口より表3に示したタルク40ppmをフィードし、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬することによりポリアセタール樹脂ペレットを製造した。
得られたポリアセタール樹脂ペレットを前述の測定方法により、クリープ性、繰返し振動疲労性、エージング前後のギア耐久性、熱安定性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
表1~3に示すように、特定の物性を有し、且つ、特定の窒化ホウ素を含有するポリアセタール樹脂組成物である実施例5~12、参考例1~4は、特定の物性を有しない、または、特定の窒化ホウ素を含有しないポリアセタール樹脂組成物である比較例1~8と比較して、クリープ性、繰り返し振動疲労性、エージング前後でのギア耐久性、熱安定性に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、クリープ性、繰り返し振動疲労性、エージング前後でのギア耐久性、熱安定性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
1:駆動ユニット
2:樹脂製ギア
3:可変式トルク計ユニット
4:金属製ギア