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特許7456757有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物
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  • 特許-有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 245/04 20060101AFI20240319BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20240319BHJP
   C07D 495/06 20060101ALI20240319BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20240319BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20240319BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240319BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240319BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240319BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C07D245/04
C07D417/14 CSP
C07D495/06
C07D403/14
C07F5/02 A
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H05B33/22 D
C09K11/06 660
C09K11/06 655
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019215631
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2020090490
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0155173
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョンソブ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヘイン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヘジョン
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0079546(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0004214(KR,A)
【文献】特表2016-522170(JP,A)
【文献】特開2018-043984(JP,A)
【文献】国際公開第2018/203666(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188111(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106467553(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
H10K 50/10
H10K 50/16
H10K 50/15
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1-2A、化学式1-2Bまたは化学式1-3Bで表される多環化合物。
【化1】

【化2】

【化3】

(前記化学式1-2Aおよび前記化学式1-2Bにおいて、
はC(=O)またはBRであり、
及びRはそれぞれ独立して、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基であり
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基であり
及びnはそれぞれ独立して0以上3以下の整数であり、
前記化学式1-3Bにおいて、
XはS、O、C(=O)、NR 、またはBR であり、
及びR はそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基であり、
前記化学式1-2A、前記化学式1-2Bまたは前記化学式1-3Bにおいて、
Ar Arはそれぞれ独立して、環形成炭素数5以上60以下の炭化水素環基、または環形成原子であって、窒素原子を含まない環形成炭素数5以上60以下のヘテロ環基であり、
Ar及びArはそれぞれ独立して、下記化学式2で表され、
【化4】

前記化学式2において、
pは0または1であり、
pが1であれば、Yは単結合またはCRであり、
Ar及びArはそれぞれ独立して、環形成炭素数5以上60以下の炭化水素環基、または環形成原子であって、窒素原子を含まない環形成炭素数5以上60以下のヘテロ環基であり、
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基であり、
及びbはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。)
【請求項2】
前記化学式2は、下記化学式2-1または2-2で表される請求項1に記載の多環化合物。
【化5】

【化6】
【請求項3】
Ar及びArは置換若しくは無置換のフェニル基である請求項1に記載の多環化合物。
【請求項4】
Ar及びArは同じである請求項1に記載の多環化合物。
【請求項5】
前記下記化学式1-2A、化学式1-2Bまたは化学式1-3Bで表される多環化合物は、熱活性遅延蛍光発光材料である請求項1に記載の多環化合物。
【請求項6】
前記下記化学式1-2A、化学式1-2Bまたは化学式1-3Bで表される多環化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちからいずれか一つである請求項1に記載の多環化合物。
[第1化合物群]
【化7】







【請求項7】
第1電極と、
前記第1電極の上に配置される正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域の上に配置され、請求項1乃至請求項のうちいずれか一つである多環化合物を含む発光層と、
前記発光層の上に配置される電子輸送領域と、
前記電子輸送領域の上に配置される第2電極と、を含み、
前記第1電極及び前記第2電極はそれぞれ独立して、Ag,Mg,Cu,Al,Pt,Pd,Au,Ni,Nd,Ir,Cr,Li,Ca,LiF/Ca,LiF/Al,Mo,Ti,In,Sn及びZnからなる群から選択される一つ、これらの中から選択される複数を含む化合物、これらの中から選択される複数を含む混合物、又はこれらの中から選択される1つ以上の酸化物を含む、有機電界発光素子。
【請求項8】
前記発光層は、遅延蛍光を放出する請求項に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記発光層はホスト及びドーパントを含む遅延蛍光発光層であり、
前記ドーパントは前記化学式1で表される多環化合物を含む請求項に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記発光層は、青色光を放出する請求項に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光素子及びそれに使用される多環化合物に関し、より詳しくは、発光材料として使用される多環化合及びそれを含む有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、映像表示装置として、有機電界発光表示装置(Organic Electroluminescence Display)の開発が盛んに行われている。有機電界発光表示装置は液晶表示装置などとは異なって、第1電極及び第2電極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることで、発光層において有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子を表示装置に応用するに当たっては、有機電界発光素子の低駆動電圧化、高発光効率化、及び長寿命化が要求されており、これを安定的に実現し得る有機電界発光素子用材料の開発が持続的に要求されている。
【0004】
特に、最近は高効率の有機電界発光素子を実現するために三重項状態のエネルギーを利用するりん光発光や、三重項励起子の衝突によって一重項励起子が生成される現象(Triplet-triplet annihilation、TTA)を利用した遅延蛍光発光に関する技術が開発されており、遅延蛍光現象を利用した熱活性遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADF)材料に関する開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第2017-0070826号公報
【文献】韓国登録特許第1452578号公報
【文献】韓国公開特許第2016-0079546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、発光効率及び素子寿命が改善された有機電界発光素子を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、有機電界発光素子の発光効率と素子寿命を改善することができる多環化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によると、下記化学式1で表される多環化合物が提供される。
【化1】

化学式1において、XはS、O、C(=O)、NR、またはBRであり、R及びRはそれぞれ重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基であり、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基である。R、R、R及びRは隣接する基と互いに結合して環を形成するか、または結合しない。m及びnはそれぞれ独立して0以上3以下の整数であり、Ar~Arはそれぞれ独立して、環形成炭素数5以上60以下の炭化水素環基、または環形成原子であって、窒素原子を含まない環形成炭素数5以上60以下のヘテロ環基であり、Ar及びArはそれぞれ独立して、下記化学式2で表される。
【化2】

前記化学式2において、pは0または1であり、pが1であれば、Yは単結合またはCRであり、Ar及びArはそれぞれ独立して、環形成炭素数5以上60以下の炭化水素環基、または環形成原子であって、窒素原子を含まない環形成炭素数5以上60以下のヘテロ環基である。R、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成するか、または結合しない。a及びbはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。
【0009】
前記化学式1は、下記化学式1-1で表される。
【化3】

前記化学式1-1において、X、Ar~Ar、R、R、m、及びnは、前記化学式1で定義した通りである。
【0010】
Arは置換若しくは無置換のフェニレン基である。
【0011】
前記化学式1は、下記化学式1-2Aまたは1-2Bで表される。
【化4】

【化5】

前記化学式1-2A及び化学式1-2Bにおいて、X、Ar~Ar、R、R、m、及びnは、前記化学式1で定義した通りである。
【0012】
前記化学式1は、下記化学式1-3Aまたは1-3Bで表される。
【化6】

【化7】

前記化学式1-3A及び化学式1-3Bにおいて、X、及びAr1~Arは前記化学式1で定義した通りである。
【0013】
前記化学式2は、下記化学式2-1または化学式2-2で表される。
【化8】

【化9】

前記化学式2-1及び化学式2-2において、Ar、Ar、R、R、a及びbは前記化学式2で定義した通りである。
【0014】
Ar及びArは置換若しくは無置換のフェニル基である。
【0015】
Ar及びArは同じである。
【0016】
前記化学式1で表される多環化合物は、熱活性遅延蛍光発光材料である。
【0017】
他の実施形態によると、第1電極と、前記第1電極の上に配置された正孔輸送領域と、前記正孔輸送領域の上に配置され、前記化学式1で表される多環化合物を含む発光層と、前記発光層の上に配置された電子輸送領域と、前記電子輸送領域の上に配置された第2電極と、を含む有機電界発光素子が提供される。前記第1電極及び前記第2電極はそれぞれ独立して、Ag,Mg,Cu,Al,Pt,Pd,Au,Ni,Nd,Ir,Cr,Li,Ca,LiF/Ca,LiF/Al,Mo,Ti,In,Sn及びZnからなる群から選択される一つ、これらの中から選択される複数を含む化合物、これらの中から選択される複数を含む混合物、又はこれらの中から選択される1つ以上の酸化物を含む。
【0018】
前記発光層は、遅延蛍光を放出する。
【0019】
前記発光層はホスト及びドーパントを含む遅延蛍光発光層であり、前記ドーパントは前記化学式1で表される多環化合物を含む。
【0020】
前記発光層は青色光を放出する。
【0021】
前記発光層は、インクジェット(inkjet)方式で提供される。
【発明の効果】
【0022】
一実施形態に係る有機電界発光素子は、低い駆動電圧、及び高効率の改善された素子特性を示す。
【0023】
一実施形態による多環化合物は、有機電界発光素子の発光層に含まれて有機電界発光素子の高効率化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるため、特定の実施形態を図面に例示し、本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物又は代替物を含むと理解すべきである。
【0026】
本明細書において、ある構成要素(または領域、層、部分など)が他の構成要素の「上にある」、または「結合される」と言及されれば、それは他の構成要素の上に直接配置・連結・結合され得るか、またはそれらの間に第3の構成要素が配置され得ることを意味する。
【0027】
同じ図面符号は同じ構成要素を指す。また、図面において、構成要素の厚さ、割合、及び寸法は技術的内容の効果的な説明のために誇張されている。
【0028】
「及び/または」は、関連する構成が定義する一つ以上の組み合わせを全て含む。
【0029】
第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用されるが、構成要素は用語に限らない。用語は一つの構造要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない限り第1構成要素は第2構成要素と称されてもよく、同様に第2構成要素も第1構成要素と称されてもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味にならない限り、複数の表現を含む。
【0030】
また、「下に」、「下側に」、「上に」、「上側に」などの用語は、図面に示した構成の相関関係を説明するために使用される。これらの用語は相対的な概念であって、図面に示した方向を基準に説明される。
【0031】
異なるように定義されない限り、本明細書で使用された全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるようなものと同じ意味を有する。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語のような用語は、関連技術における一般的な意味と一致する意味を有すると解釈すべきであり、理想的な、または過度に形式的な意味に解釈されない限り、明示的にここで定義される。
【0032】
「含む」または「有する」などの用語は明細書の上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを意味するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解すべきである。
【0033】
本明細書において、「置換若しくは無置換の」とは、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、オキシ基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、カルボニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、炭化水素環基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群より選択される一つ以上の置換基に置換される若しくは無置換であることを意味する。また、例示された置換基それぞれは置換若しくは無置換であってもよい。例えば、ビフェニリル基はアリール基と解釈されてもよく、フェニル基に置換されたフェニル基と解釈されてもよい。
【0034】
本明細書において、「隣接する基と互いに結合して環を形成」するとは、隣接する基と互いに結合して置換若しくは無置換の炭化水素環、または置換若しくは無置換のヘテロ環を形成することを意味する。炭化水素環は、脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環を含む。ヘテロ環は、脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環を含む。隣接する基と互いに結合して形成された環は、単環または多環である。また、互いに結合して形成された環は、他の環と連結されてスピロ構造を形成する。
【0035】
本明細書において、「隣接する基」とは該当する置換基が置換された原子と直接結合された原子に置換された置換基、該当する置換基が置換された原子に置換された他の置換基または該当する置換基と立体構造的に最も隣接した置換基を意味する。例えば、1,2-ジメチルベンゼンにおける2つのメチル基は互いに「隣接する基」と解釈され、1,1-ジエチルシクロペンテンにおける2つのエチル基は互いに「隣接する基」と解釈される。
【0036】
本明細書において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
【0037】
本明細書において、アルキル基は直鎖、分枝鎖、または環状である。アルキル基の炭素数は、1以上50以下、1以上30以下、1以上20以下、1以上10以下、または1以上6以下である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルペプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0038】
本明細書において、炭化水素環は、脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環を含む。ヘテロ環は、脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環を含む。炭化水素環及びヘテロ環は、単環及び多環である。
【0039】
本明細書において、炭化水素環基は、脂肪族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基、または芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基である。炭化水素環基の環形成炭素数は、5以上60以下である。
【0040】
本明細書において、ヘテロ環基は、少なくとも一つのヘテロ原子を環形成原子として含むヘテロ環から誘導された任意の作用基または置換基である。ヘテロ環基の環形成炭素数は、5以上60以下である。
【0041】
本明細書において、アリール基は、芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基を意味する。アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基である。アリール基の環形成炭素数は、6以上30以下、6以上20以下、または6以上15以下である。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クォーターフェニリル基、キンクフェニリル基、セクシフェニリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0042】
本明細書において、フルオレニル基は置換され、2つの置換基が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。フルオレニル基が置換される場合の例示を以下に示す。但し、これらに限らない。
【化10】
【0043】
本明細書において、ヘテロアリール基はヘテロ原子としてB、O、N、P、Si、及びSのうち一つ以上を含む。ヘテロアリール基がヘテロ原子を2つ以上含む場合、2つ以上のヘテロ原子は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。ヘテロアリール基は、単環式へテロ環基または多環式へテロ環基である。ヘテロアリール基の環形成炭素数は、2以上30以下、2以上20以下、または2以上10以下である。ヘテロアリール基の例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジニル基、ビピリジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フェノキサジニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリルン、インドリル基、カルバゾリル基、N-アリールカルバゾリル基、N-ヘテロアリールカルバゾリル基、N-アルキルカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、ジベンゾシロリル基、及びジベンゾフラニル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0044】
本明細書において、アリーレン基は2価基であることを除いては、上述したアリール基に関する説明が適用される。ヘテロアリーレン基は2価基であることを除いては、上述したヘテロアリール基に関する説明が適用される。
【0045】
本明細書において、シリル基はアルキルシリル基及びアリールシリル基を含む。シリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0046】
本明細書において、アミノ基の炭素数は特に限らないが、1以上30以下である。アミノ基は、アルキルアミノ基及びアリールアミノ基を含む。アミノ基の例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、9-メチル-アントラセニルアミノ基、トリフェニルアミノ基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0047】
【0048】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子及びそれに含まれた一実施形態に係る多環化合物について説明する。
【0049】
図1図3は、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。図1図3を参照すると、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、第1電極EL1及び第2電極EL2は互いに対向して配置され、第1電極EL1と第2電極EL2との間には複数の有機層が配置される。複数の有機層は正孔輸送領域HTR、発光層EML、及び電子輸送領域ETRを含む。つまり、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子10は、順次に積層された第1電極EL1、正孔輸送領域HTR、発光層EML、電子輸送領域ETR、及び第2電極EL2を含む。一方、複数の有機層のうち少なくとも一つの有機層はインクジェット方式で提供される。例えば、正孔輸送領域HTR、発光層EML、及び電子輸送領域ETRなどの有機層はインクジェット方式で形成されてもよい。詳しくは、発光層EMLはインクジェット方式で形成される。
【0050】
一実施形態に係る有機発光素子10は、第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置された発光層EMLに後述する本発明の一実施形態に係る多環化合物を含む。しかし、本発明の実施形態はこれに限らず、有機発光素子10は、発光層EML以外に、第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置された複数の有機層のうち少なくとも一つの有機層に上述した一実施形態に係る多環化合物を更に含んでもよい。例えば、有機電界発光素子10は、一実施形態に係る多環化合物を発光層EMLの発光材料として含み、正孔輸送領域HTR及び電子輸送領域ETRに含まれた少なくとも一つの有機層に後述する一実施形態に係る多環化合物を含んでもよい。
【0051】
一方、図2図1とは異なり、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL及び電子輸送層ETLを含む一実施形態に係る有機電界発光素子10の断面図を示す。また、図3図1とは異なり、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL、電子輸送層ETL、及び正孔阻止層HBLを含む一実施形態に係る有機電界発光素子10の断面図を示す。
【0052】
第1電極EL1は導電性を有する。第1電極EL1は、金属合金または導電性化合物からなる。第1電極EL1はアノード(anode)である。また、第1電極EL1は画素電極である。第1電極EL1は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第1電極EL1が透過型電極であれば、第1電極EL1は透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などを含む。第1電極EL1が半透過型電極または反射型電極であれば、第1電極EL1はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。また、前記物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。例えば、第1電極EL1はITO/Ag/ITOの3槽構造を有してもよいが、これに限らない。第1電極EL1の厚さは、約100nm~約1000nm、例えば約100nm~約300nmである。
【0053】
正孔輸送領域HTRは第1電極EL1の上に設けられる。正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、正孔バッファ層(図示せず)、及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを含む。正孔輸送領域HTRの厚さは、例えば、約5nm~約150nmであってもよい。
【0054】
正孔輸送領域HTRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0055】
例えば、正孔輸送領域HTRは正孔注入層HILまたは正孔輸送層HTLの単一層の構造を有してもよく、正孔注入物質及び正孔輸送物質からなる単一層構造を有してもよい。また、正孔輸送領域HTRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、第1電極EL1から順番に積層された正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL、正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔バッファ層(図示せず)、正孔注入層HIL/正孔バッファ層(図示せず)、正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、または正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔阻止層EBLの構造を有してもよいが、これらに限らない。
【0056】
正孔輸送領域HTRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0057】
正孔注入層HTLは、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物と、DNTPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-フェニル-(m-トリル)アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン)、m-MTDATA(4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミノ)、TDATA(4,4,4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、2-TNATA(4,4’,4”-トリス{N,-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ}-トリフェニルアミン)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、PANI/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PANI/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)、PANI/PSS(ポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、トリフェニルアミンを含むポリエテールケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、HAT-CN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル)などが挙げられる。
【0058】
正孔輸送層HTLは、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などのようなトリフェニルアミン系誘導体、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(4,4’-シクロへキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、HMTPD(4,4’-ビス[N,N’-(3-トリル)アミノ]-3,3’-ジメチルビフェニル)などを含んでもよい。
【0059】
正孔輸送領域HTRの厚さは、約5nm~約1000nm、例えば約10nm~約500nmであってもよい。正孔注入層HILの厚さは、例えば約3nm~約100nmであり、正孔輸送層HTLの厚さは、約1nm~約100nmであってもよい。例えば、電子阻止層EBLの厚さは、約1nm~約100nmであってもよい。正孔輸送領域HTR、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的に駆動電圧が上昇することなく十分な正孔輸送特性が得られる。
【0060】
正孔輸送領域HTRは、上述した物質以外に、導電性を向上するために電荷生成物質を更に含んでもよい。電荷発生物質は、正孔輸送領域HTR内に均一にまたは不均一に分散されている。電荷発生物質は、例えば、p-ドーパント(dopant)である。p-ドーパントはキノン誘導体、金属酸化物及びシアノ基含有化合物のうちいずれか一つであってもよいが、これらに限らない。例えば、p-ドーパントの例としては、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)及びF4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)などのようなキノン誘導体、タングステン酸化物、及びモリブデン酸化物のような金属酸化物などが挙げられるが、これらに限らない。
【0061】
上述したように、正孔輸送領域HTRは、正孔輸送層HTL及び正孔注入層HIL以外に、正孔バッファ層(図示せず)及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを更に含んでもよい。正孔バッファ層(図示せず)は、発光層EMLから放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる。正孔バッファ層(図示せず)に含まれる物質としては、正孔輸送領域HTRに含まれ得る物質を使用することができる。電子阻止層EBLは、電子輸送領域ETRから正孔輸送領域HTRへの電子の注入を防止する役割をする層である。
【0062】
発光層EMLは正孔輸送領域HTRの上に設けられる。発光層EMLは、例えば、約10nm~約100nm、または約10nm~約30nmの厚さを有してもよい。発光層EMLは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0063】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは一実施形態に係る多環化合物を含む。
【0064】
一実施形態に係る多環化合物は、複数個の電子供与部(Electron Donor)、及び電子供与部の間に配置された電子受容部(Electron Acceptor)を含む。電子受容部は電気供与部を互いに結合する。電気受容部は複数個の電子供与部と結合する。例えば、一実施形態に係る多環化合物は、2つの電子供与部及び1つの電子受容部を含んでもよい。
【0065】
また、一実施形態に係る多環化合物において、電子受容部は、アリールアミノ部位によって固定された立体構造を有する。例えば、電子受容部は、アリールアミノ部位と結合して縮合環を形成してもよい。一実施形態において、電子受容部は、アリールアミノ部位と結合して縮合環を形成することで平面状の立体構造を有し、それによって一実施形態に係る多環化合物が発光材料として使用される際に発光する光の半値幅が減少する。
【0066】
一実施形態に係る多環化合物において、電子供与部は、置換若しくは無置換のカルバゾール基、または置換若しくは無置換のジアリールアミノ基である。また、一実施形態に係る多環化合物において、電子受容部は、S、O、C(=O)、NR、またはBRなどを含む。一方、R及びRについては、後述する化学式1で説明する内容と同じ内容が適用される。
【0067】
一実施形態の有機電界発光素子10において、発光層EMLは、下記化学式1で表される多環化合物を含む。
【化11】
【0068】
化学式1において、XはS、O、C(=O)、NR、またはBRである。化学式1において、R及びRはそれぞれ独立して、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基である。R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基である。R、R、R及びRは、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよい。m及びnはそれぞれ独立して0以上3以下の整数であり、m及びnがそれぞれ2以上の整数であれば、複数のRまたは複数のRは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0069】
化学式1において、Ar~Arはそれぞれ独立して、環形成炭素数5以上60以下の炭化水素環基、または環形成原子であって、窒素原子を含まない環形成炭素数5以上60以下のヘテロ環基であり、Ar及びArはそれぞれ独立して、下記化学式2で表される。
【化12】
【0070】
化学式2において、pは0または1であり、pが1であれば、Yは単結合またはCRである。化学式2において、Ar及びArはそれぞれ独立して、環形成炭素数5以上60以下の炭化水素環基、または環形成原子であって、窒素原子を含まない環形成炭素数5以上60以下のヘテロ環基である。
【0071】
、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基である。R、R、R及びRは、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよい。また、a及びbはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。a及びbがそれぞれ2以上の整数であれば、複数のRまたは複数のRは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0072】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物において、Ar及びArは電子供与部であり、Xを含む化学式1のコア部分は電子受容部である。つまり、化学式1で表される多環化合物は、電子供与部-電子受容部-電子供与部の構造を有する。
【0073】
【0074】
化学式1において、Arは置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上60以下の炭化水素環基である。例えば、Arは置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上60以下の芳香族炭化水素環基であってもよい。例えば、一実施形態に係る多環化合物において、Arは置換若しくは無置換のフェニレン基であってもよい。
【0075】
化学式1で表される多環化合物において、Ar及びArはそれぞれ独立して、環形成炭素数5以上60以下の炭化水素環基、または環形成原子であって、窒素原子を含まない環形成炭素数5以上60以下のヘテロ環基である。例えば、Ar及びArは、それぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上60以下の芳香族炭化水素環基であってもよい。例えば、一実施形態に係る多環化合物において、Ar及びArは、それぞれ独立して置換若しくは無置換のフェニル基であってもよい。
【0076】
一実施形態において、Ar及びArは同じである。例えば、Ar及びArは無置換のフェニル基であってもよい。
【0077】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物において、アリールアミン部位は電子受容部と結合し、電子受容部を平面状の立体構造で固定させる。一実施形態に係る多環化合物において、アリールアミン部位は下記化学式Aで表されてもよい。
【化13】
【0078】
【0079】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物において、R~Rはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基である。または、隣接するR及びRは互いに結合して環を形成してもよい。
【0080】
例えば、R及びRは水素原子または炭素数1以上10以下のアルキル基であってもよい。または、隣り合うR及びRは、互いに結合してXを環形成原子として含むヘテロ環基または炭化水素環基を形成してもよい。例えば、化合物1で表される多環化合物において、Rが置換されたフェニレン環とRが置換されたフェニレン環は、互いに結合してフルオレニレン基、ジベンゾチオフェニレン基、またはジベンゾフラニレン基などを形成してもよい。
【0081】
Ar及びArは、それぞれ独立して化学式2で表され、化学式2は下記化学式2-1または化学式2-2で表される。化学式2-1は化学式2においてpが1でYが単結合である場合を示し、化学式2-2は化学式2においてpが0である場合を示す。
【化14】

【化15】
【0082】
化学式2、化学式2-1、及び化学式2-2において、Ar及びArはそれぞれ独立して環形成炭素数5以上60以下の炭化水素環基、または環形成原子であって、窒素原子を含まない環形成炭素数5以上60以下のヘテロ環基である。
【0083】
一実施形態において、Ar及びArは同じであってもよい。一実施形態において、Ar及びArは環形成炭素数5以上60以下の炭化水素環基である。例えば、Ar及びArは環形成炭素数5以上60以下の芳香族炭化水素環基であってもよい。例えば、Ar及びArはベンゼン環であってもよい。
【0084】
例えば、Ar及びArは、それぞれ独立して下記D1またはD2で表されてもよい。D1及びD2において、*は窒素原子(N)と結合される部分を示す。
【化16】
【0085】
つまり、化学式2-1は置換若しくは無置換のカルバゾリル基であり、化学式2-2は置換若しくは無置換のジフェニルアミノ基である。
【0086】
一方、化学式1で表される多環化合物において、Ar及びArは同じであってもよい。
【0087】
化学式1で表される一実施形態の多環化合物は、下記化学式1-1で表されてもよい。
【化17】
【0088】
化学式1-1は、化学式1に比べ、アリールアミノ部位の結合位置が特定されている。例えば、一実施形態の多環化合物は、化学式1-1に示すように、アリールアミノ部位とXはフェニレンリンカーに対してメタ位で結合されていてもよい。
【0089】
化学式1-1において、X、Ar~Ar、R、R、m、及びnに対しては、上述した化学式1で説明した内容と同じ内容が適用される。
【0090】
一方、化学式1は、下記化学式1-2Aまたは化学式1-2Bで表されてもよい。
【化18】

【化19】
【0091】
化学式1-2Aにおいて、X、Ar~Ar、R、R、m、及びnに対しては、上述した化学式1で説明した内容と同じ内容が適用される。
【0092】
【0093】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、下記化学式1-3Aまたは化学式1-3Bで表されてもよい。化学式1-3Aは、化学式1においてm及びnがすべて0であり、R及びRが全て水素原子である場合を示す。また、化学式1-3Bは、Xに結合する2つのフェニレン基の隣接する炭素原子が結合して環を形成した場合を示す。化学式1-3Bでは隣接する炭素原子が単結合を形成し、Xを環形成原子として含む環が形成される。
【化20】

【化21】
【0094】
上記化学式1-3A及び化学式1-3Bにおいて、X及びA~Aに対しては、上述した化学式1で説明した内容と同じ内容が適用される。
【0095】
例えば、化学式1-3Bは、下記化学式3-a~化学式3-eのうちいずれか一つで表されてもよい。化学式3-a~化学式3-eにおいて、A~Aに対しては、上述した化学式1で説明した内容と同じ内容が適用される。
【化22】
【0096】
一実施形態に係る多環化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちいずれか一つである。
[第1化合物群]
【化23】







【0097】
一実施形態に係る有機電界発光素子10は、第1化合物群に示した化合物のうち少なくとも一つの多環化合物を発光層EMLに含んでもよい。
【0098】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、熱活性遅延蛍光発光材料である。一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは遅延蛍光を放出する。例えば、発光層EMLは熱活性遅延蛍光を発光してもよい。
【0099】
また、有機電界発光素子10の発光層EMLは青色光を放出する。例えば、一実施形態に係る有機電界発光素子10の発光層EMLは、480nm以下の領域の青色光を放出してもよい。しかし、実施形態はこれに限らず、発光層EMLは赤色光または緑色光を放出してもよい。
【0100】
一方、図示していないが、一実施形態に係る有機電界発光素子10は複数の発光層を含んでもよい。この場合、複数の発光層は順次に積層されて設けられるが、例えば、複数の発光層を含む有機電界発光素子10は白色光を放出してもよい。複数の発光層を含む有機電界発光素子10は、タンデム(Tandem)構造の有機電界発光素子である。有機電界発光素子10が複数の発光層を含む場合、少なくとも一つの発光層EMLは、上述した一実施形態に係る多環化合物を含む。
【0101】
一実施形態において、発光層EMLはホスト及びドーパントを含み、上述した多環化合物をドーパントとして含む。例えば、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは遅延蛍光発光用ホスト及び遅延蛍光発光用ドーパントを含むが、上述した多環化合物を遅延蛍光発光用ドーパントとして含む。発光層EMLは、上述した第1化合物群に示した多環化合物のうち少なくとも一つを熱活性遅延蛍光ドーパントとして含んでもよい。
【0102】
一実施形態において、発光層EMLは遅延蛍光発光層であり、発光層MELは公知のホスト材料、及び上述した多環化合物を含む。例えば、一実施形態において、多環化合物はTADFドーパントとして使用されてもよい。
【0103】
一方、一実施形態において、発光層EMLは公知のホスト材料を含む。例えば、発光層EMLはドーパント材料として、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリノ)アルミニウム)、CBP(4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)、PVK(ポリ(n-ビニルカルバゾール)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン)、TPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン)、TBADN(3-tert-ブチル-9、10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、DSA(ジスチリルアリレン)、CDBP(4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチル-ビフェニル)、MADN(2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CP1(ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン)、UGH2(1,4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン)、DPSiO(ヘキサフェニルシクロトリシロキサン)、DPSiO(オクタフェニルシクロテトラシロキサン)、またはPPF(2,8-ビス(ジフェニルホスフォリル)ジゼンゾフラン)、mCBP(3,3’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)、mCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)などを含んでもよい。しかし、本実施形態はこれらに限らず、上記のホスト材料以外にも公知の遅延蛍光発光ホスト材料が含まれてもよい。
【0104】
一方、有機電界発光素子10において、発光層EMLは公知のドーパント材料を更に含んでもよい。例えば、発光層EMLは、ドーパントとして、スチリル誘導体(例えば、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン(BCzVB)、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン(N-BDAVBi)、ぺリレン及びその誘導体(例えば、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルぺリレン(TBP))、ピレン及びその誘導体(例えば、1,1-ジピレン、1,4-ジピレニルベンゼン、1,4-ビス(N、N-ジフェニルアミノ)ピレンなどを含んでもよい。
【0105】
図1図3に示した有機電界発光素子10において、電子輸送領域ETRは発光層EMLの上に設けられる。電子輸送領域ETRは、正孔阻止層HBL、電子輸送層ETL、及び電子注入層のEILうち少なくとも一つを含むが、これらに限らない。
【0106】
電子輸送領域ETRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0107】
例えば、電子輸送領域ETRは電子注入層のEILまたは電子輸送層ETLの単一層の構造を有してもよく、電子注入物質と電子輸送物質からなる単一層構造を有してもよい。また、電子輸送領域ETRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、発光層EMLから順番に積層された電子輸送層ETL/電子注入層EIL、正孔阻止層HBL/電子輸送層ETL/電子注入層EILの構造を有してもよいが、これらに限らない。電子輸送領域ETRの厚さは、例えば、約100nm~約150nmであってもよい。
【0108】
電子輸送領域ETRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法などのような多様な方法を利用して形成される。
【0109】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、電子輸送領域ETRはアントラセン系化合物を含んでもよい。但し、これに限らず、電子輸送領域は、例えば、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2,4,6-トリス(3’-ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾリル-1-イルフェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-テルト-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-テルトーブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、及びこれらの混合物を含んでもよい。電子輸送層ETLの厚さは、約10nm~約100nm、例えば、約15nm~約50nmであってもよい。電子輸送層HTLの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的に駆動電圧が上昇することなく十分な電子輸送特性が得られる。
【0110】
電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子輸送領域ETRは、LiF、LiQ(8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム)、LiO、BaO、NaCl、CsF、Ybのようなランタノイド金属、またはRbCl、Rblのようなハロゲン化金属などが使用されてもよいが、これらに限らない。電子注入層EILは、電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal slat)が混合された物質からなる。有機金属塩は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)が約4eV以上の物質である。詳しくは、例えば、有機金属塩は、酢酸金属塩(metal acetate)、安息香酸塩金属塩(metal benzoate)、アセト酢酸金属塩(metal acetoacetate)、金属アセチルアセトナート(metal acetylacetonate)、または金属ステアレート(stearate)を含む。電子注入層EILの厚さは、約0.1nm~約10nm、例えば約0.3nm~約9nmである。電子注入層EILの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的に駆動電圧が上昇することなく十分な電子注入特性が得られる。
【0111】
電子輸送領域ETRは、上述したように、正孔阻止層HBLを含む。正孔阻止層HBLは、例えば、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、及びBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)のうち少なくとも一つを含んでもよいが、これらに限らない。
【0112】
第2電極EL2は、電子輸送領域ETRの上に設けられる。第2電極EL2は、共通電極または負極である。第2電極EL2は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第2電極EL2が透過型電極であれば、第2電極EL2は透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる。
【0113】
第2電極EL2が半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極EL2はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらを含む化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。第2電極EL2は、前記物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。
【0114】
図示していないが、第2電極EL2は補助電極と接続されてもよい。第2電極EL2が補助電極と接続されれば、第2電極EL2の抵抗を減少させることができる。
【0115】
一方、図示していないが、一実施形態に係る有機電界発光素子10の第2電極EL2の上には、キャッピング層(図示せず)が更に配置されてもよい。キャッピング層(図示せず)は、例えば、α-NPD、NPB、TPD、m-MTDATA、Alq、CuPc、TPD15(N4,N4,N4’,N4’-テトラ(ビフェニル-4-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール ソル-9-イル)トリフェニルアミン)、N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)などを含んでもよい。
【0116】
本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子10は、上述した一実施形態に係る多環化合物を第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置された発光層EMLに含むことで、低い駆動電圧と高い発光効率特性を示す。また、一実施形態に係る多環化合物は熱活性遅延蛍光ドーパントであり、発光層EMLは当該多環化合物を含んで熱活性遅延蛍光発光することで高い発光効率特性を示す。
【0117】
一方、上述した一実施形態に係る多環化合物は、発光層EML以外の有機層で有機電界発光素子10用材料として含まれてもよい。例えば、有機電界発光素子10は、上述した多環化合物を第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置された少なくとも一つの有機層、または第2電極EL2の上に配置されたキャッピング層(図示せず)に含んでもよい。
【0118】
上述した一実施形態に係る多環化合物は、複数個の電子供与部及び電子供与部を連結する電子受容部を含み、一つの分子の中に電子供与部と電子受容部をすべて含むことで分子内における電子移動が容易である。また、当該多環化合物は、電子供与部と電子受容部との間に双極子(dipole)が形成されて分子内部の双極子モーメントが増加することにより、発光材料として使用する際に発光効率をより向上させることができる。
【0119】
また、一実施形態に係る多環化合物は、電子受容部を平面形態に固定させるアリールアミノ部位を含み、当該多環化合物を含む発光層から発光される光の半値幅を減少させることができる。それによって、一実施形態に係る有機電界発光素子が放出する光の色純度が高くなり、改善された表示品質を示すことができる。
【0120】
また、一実施形態に係る多環化合物は、熱活性遅延蛍光発光することで、有機電界発光素子の発光効率をより向上させることができる。
【実施例
【0121】
以下では実施例及び比較例を参照し、本発明の一実施形態に係る多環化合物及び一実施形態に係る有機電界発光素子について詳しく説明する。また、以下に示す実施例は本発明の理解を助けるための一例示であって、本発明の範囲はこれに限らない。
【0122】
[実施例]
1.多環化合物の合成
まず、本実施形態に係る多環化合物の合成方法について、化合物A-5、A-3、A-22、及びA-24の合成方法を例示して詳しく説明する。また、以下で説明する多環化合物の合成法は一例であって、本発明の実施形態に係る多環化合物の合成法は下記実施例に限らない。
【0123】
(1)化合物A-5の合成
多環化合物A-5は、例えば、下記反応式1によって合成される。
[反応式1]
【化24】
【0124】
<中間体1-1の合成>
ジメチルフェニルボロナート(1eq)と9-(3-ブロモ-5-クロロフェニル)-9H-カルバゾール(2.1eq)を500mlのトルエンに溶解させた。Pd(PPh(0.02eq)を添加し、更にトルエン400ml及び2MのKCO飽和溶液70mlを添加した後、5時間還流撹拌した。反応終結後、MC(メチレンクロライド)400mlと蒸留水150mlで洗浄及び抽出してから、溶媒を除した後、生成された固体をカラムクロマトグラフィで精製して所望の中間体1-1(収率55.4%)を得た。質量分析器で測定した結果、分子量から、中間体1-1であることを確認した。(HRMS for C4227BCl [M]+:calcd:641、found:640)
【0125】
<化合物A-5の合成>
中間体1-1(1eq)とN1,N2-ジフェニルベンゼン-1,2-ジアミン(1eq)を入れたフラスコに、Pd(dba)(0.03eq)、(t-Bu)P(0.06eq)及びトルエン(0.1M、1eq試薬基準)を添加した後、8時間還流撹拌した。常温で冷却した後、MCで抽出し、蒸留水で洗浄した。MgSOで乾燥させ、減圧蒸留した後、残渣をカラムで分離して化合物A-5(収率78.87%)を得た。質量分析器で測定した分子量から、化合物A-5であることを確認した。(HRMS for C6041BN [M]+:calcd:828、found:827)
【0126】
(2)化合物A-3の合成
多環化合物A-3は、例えば、下記反応式2によって合成される。
[反応式2]
【化25】
【0127】
<中間体2-1の合成>
ベンゼン-1,2-ジアミン(1eq)とビス(3-ブロモ-5-クロロフェニル)スルファン(1eq)を入れ、Pd(dba)(0.03eq)、(t-Bu)P(0.06eq)及びトルエン(0.1M、1eq試薬基準)を添加した後、8時間還流撹拌した。常温で冷却した後、MCで抽出し、蒸留水で洗浄した。MgSOで乾燥させ、減圧蒸留した後、残渣をカラムで分離して化合物2-1(収率78.87%)を得た。質量分析器で測定した結果、分子量から、中間体2-1であることを確認した。(HRMS for C1812BClS[M]+:calcd:359、found:358)
【0128】
<中間体2-2の合成>
中間体2.2(1eq)とブロモベンゼン(2.2eq)を入れ、Pd(dba)(0.03eq)、(t-Bu)P(0.06eq)及びトルエン(0.1M、1eq試薬基準)を添加した後、8時間還流撹拌した。常温で冷却した後、MCで抽出し、蒸留水で洗浄した。MgSOで乾燥させ、減圧蒸留した後、残渣をカラムで分離して化合物2-2(収率87%)を得た。質量分析器で測定した結果、分子量から、中間体2-2であることを確認した。(HRMS for C3020ClS [M]+:calcd:512、found:511)
【0129】
<化合物A-3の合成>
中間体2-2(1eq)とカルバゾール(2.2eq)を入れたフラスコに、Pd(dba)(0.03eq)、(t-Bu)P(0.06eq)及びトルエン(0.1M、1eq試薬基準)を添加した後、8時間還流撹拌した。常温で冷却した後、MCで抽出し、蒸留水で洗浄した。MgSOで乾燥させ、減圧蒸留した後、残渣をカラムで分離して化合物A-3(収率88.44%)を得た。質量分析器で測定した結果、分子量から、化合物A-3であることを確認した。(HRMS for C5436S [M]+:calcd:772、found:771)
【0130】
(3)化合物A-22の合成
一実施例による多環化合物A-22は、例えば、下記反応式3によって合成される。
[反応式3]
【化26】
【0131】
<中間体3-1の合成>
N1,N3-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(1eq)と1-ブロモ-3-クロロ-5-ヨードベンゼン(2.1eq)を入れ、Pd(dba)(0.03eq)、(t-Bu)P(0.06eq)及びトルエン(0.1M、1eq試薬基準)を添加した後、3時間120℃温度で撹拌した。常温で冷却し、MCで抽出し、蒸留水で洗浄した。MgSOで乾燥させ、減圧蒸留した後、残渣をカラムで分離して化合物3-1(収率81.7%)を得た。質量分析器で測定した結果、分子量から、中間体3-1であることを確認した。(HRMS for C3020BrCl [M]+:calcd:639、found:638)
【0132】
<中間体3-2の合成>
中間体3-1(1eq)とジメチルフェニルボロナート(1eq)を500mlのトルエンに溶解させた。次に、Pd(PPh(0.02eq)を添加した。更にトルエン400ml及び2MのKCO飽和溶液70mlを添加した後、5時間還流撹拌させた。反応終結後、MC400mlと蒸留水150mlで洗浄及び抽出してから、溶媒を除した後、生成された固体をカラムクロマトグラフィで精製して所望の中間体3-2(収率66.7%)を得た。質量分析器で測定した結果、分子量から、中間体3-2であることを確認した。(HRMS for C3625BCl [M]+:calcd:567、found:566)
【0133】
<化合物A-22の合成>
中間体3-2(1eq)とカルバゾール(2.2eq)を入れたフラスコに、Pd(dba)(0.03eq)、(t-Bu)P(0.06eq)及びトルエン(0.1M、1eq試薬基準)を添加した後、8時間還流撹拌した。常温で冷却し、MCで抽出した後、蒸留水で洗浄した。MgSOで乾燥させ、減圧蒸留した後、残渣をカラムで分離して化合物A-22(収率85.6%)を得た。質量分析器で測定した結果、分子量から、化合物A-22であることを確認した。(HRMS for C6041BN [M]+:calcd:828、found:827)
【0134】
(4)化合物A-24の合成
化合物A-5の合成方法から、N1,N2-ジフェニルベンゼン-1,2-ジアミン に代わってN1,N3-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミンを使用したことを除いては、化合物A-5の合成方法と同じ方法で化合物A-24を合成した。質量分析器で測定した結果、分子量から、化合物A-24であることを確認した。(HRMS for C6041BN [M]+:calcd:828、found:827)
【0135】
2.化合物のエネルギー準位の評価
下記表1は、実施例化合物である化合物A-5、化合物A-3、A-22、及び化合物A-24のHOMOエネルギー準位、LUMOエネルギー準位、最低一重項励起エネルギー準位(S1 level)、最低三重項励起エネルギー準位(T1 level)、及びΔEST値を示している。
【0136】
表1におけるエネルギー準位値は、非経験的分子軌道法によって計算された。詳しくは、Gaussian社製のGaussian09を利用し、B3LYP/6-31G(d)で計算された。ΔESTは最低一重項励起エネルギー順位(S1 level)と最低三重項励起エネルギー準位(T1 level)の差を示す。
【表1】
【0137】
実施例化合物である化合物A-5、化合物A-3、化合物A-22、及び化学式A-24のΔEST値が0.3eV以下の値を有する。これから、化合物A-5、化合物A-3、化合物A-22、及び化学式A-24は熱活性遅延蛍光ドーパント材料として使用可能であると判断される。
【0138】
3.多環化合物を含む有機電界発光素子の製作及び評価
(有機電界発光素子の製作)
一実施形態に係る多環化合物を発光層に含む、一実施形態に係る有機電界発光素子を下記方法で製造した。上述した化合物A-5、化合物A-3、化合物A-22、及び化合物A-24の多環化合物を発光層のドーパント材料として使用し、実施例1~実施例4の有機電界発光素子を作製した。
【0139】
比較例1は、下記BH1をホスト材料と使用し、BD1をドーパント材料と使用して作成した有機電界発光素子に当たる。比較例2は、比較例化合物C1を発光層のドーパント材料として使用して作成された有機電界発光素子に当たる。
【化27】

【0140】
実施例1~実施例4及び比較例2で使用した化合物は、表2に示した。
【表2】
【0141】
ガラス基板の上に厚さ120nmのITOをパターニングした後、イソプロピルアルコール及び超純水で洗浄し、超音波で洗浄した後、30分間UVを照射して、オゾン処理を行った。その後、厚さ4nmのNPBを蒸着して正孔注入層を形成し、次に厚さ1nmのmCPを蒸着して、正孔輸送層を形成した。
【0142】
正孔輸送層の上にmCBPと本実施形態に係る多環化合物である化合物A-5、化合物A-3、化合物A-22、及び化合物A-24または比較例化合物C1を85:15の割合で共蒸着し、厚さ20nmの発光層を形成した。つまり、共蒸着して形成した発光層は、実施例1~実施例4ではそれぞれ化合物A-5、化合物A-3、化合物A-22、及び化合物A-24をmCBPと混合して蒸着し、比較例2では比較例化合物C1をmCBPと混合して蒸着した。また、比較例1として、化合物BH1と化合物BD1とを85:15の割合で混合して共蒸着し、厚さ20nmの発光層を形成した。
【0143】
発光層の上にETL1物質で厚さ30nmの電子輸送層を形成し、次に、アルミニウム(Al)で厚さ120nmの第2電極を形成した。
【0144】
実施例及び比較例の有機電界発光素子の製作に使用した化合物を以下に開示した。
【化28】

【0145】
(有機電界発光素子の特性評価)
表3は、実施例1~実施例4、及び比較例1~比較例2に対する有機電界発光素子の評価結果を示している。表2は、製作された有機電界発光素子の駆動電圧、発光効率及び外部量子効率(EOE)を比較して示している。表3に示した実施例及び比較例に対する特性評価結果において、発光効率は電流密度10mA/cmに対する電流効率値を示す。
【表3】
【0146】
表3の結果を参照すると、本発明の一実施形態係る多環化合物を発光層材料として使用した有機電界発光素子の実施例の場合、比較例に比べ、低い駆動電圧、及び高い発光効率と高い外部量子効率を示すことが分かる。
【0147】
一方、比較例1は一般的な蛍光発光用ドーパント材料であるBD1を発光層に含むが、実施例1~実施例4の場合、比較例1に比べ高い発光効率を示すことから、実施例の多環化合物は熱活性遅延蛍光発光することが分かる。
【0148】
つまり、比較例1とのドーパント化合物に比べ、実施例で使用された本発明の多環化合物の場合、電子供与部と電子受容部を一つの化合物単位で含むことで遅延蛍光発光することができ、高い素子効率を示す。また、比較例2は実施例1~実施例4で使用したホスト物質を同じく使用し、ドーパントとして比較例化合物C1を使用しているが、比較例化合物C1は、複数個の電子供与部及び電子供与部を連結する電子受容部を含む本発明の多環化合物とは異なる構造を有する。これにより、比較例2は実施例に比べ相対的に高い駆動電圧、及び低い発光効率と低い外部量子効率値を有することが分かる。つまり、実施例で使用された多環化合物の場合、比較例で使用されたドーパント化合物に比べ低い駆動電圧でも優秀な素子効率を示す。
【0149】
これまで本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当する技術分野における熟練した当業者または該当する技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更し得ることを理解できるはずである。
【0150】
よって、本発明の技術的範囲は明細書の詳細な説明に記載されている内容に限らず、特許請求の範囲によって決められるべきである。
【符号の説明】
【0151】
10:有機電界発光素子 EL1:第1電極
EL2:第2電極 HTR:正孔輸送領域
EML:発光層 ETR:電子輸送領域
図1
図2
図3