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特許7456758撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッド
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20240319BHJP
   B01F 27/921 20220101ALI20240319BHJP
   B01F 35/40 20220101ALI20240319BHJP
   F16L 3/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C02F11/04 Z
B01F27/921
B01F35/40
F16L3/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019215648
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021084083
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】種市 準
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-017924(JP,A)
【文献】特公昭47-001260(JP,B1)
【文献】実開昭57-035800(JP,U)
【文献】実開昭60-067135(JP,U)
【文献】特開平11-090492(JP,A)
【文献】実開昭60-129576(JP,U)
【文献】実開平01-141939(JP,U)
【文献】特開平01-210680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00 - 11/20
B01F 27/00 - 27/96
B01F 35/00 - 35/96
C02F 3/00 - 3/34
F16L 3/00 - 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型の消化槽と、該消化槽の中央に垂下される縦型の軸流ポンプと、該軸流ポンプを覆うポンプ配管であるドラフトチューブと、を備える撹拌機に用いられ、前記ドラフトチューブの垂下姿勢を保持するために、前記ドラフトチューブ側の支持部と前記消化槽内壁側の支持部との間に自身軸線を水平にして介装されるタイロッド本体を有するタイロッドであって、
前記タイロッド本体はパイプまたは鋼材が用いられて、自身軸方向への張力を付与しない介装状態で、前記ドラフトチューブ側の支持部と前記消化槽内壁側の支持部との間に架け渡され
前記タイロッド本体と少なくとも一方の前記支持部との間に、相互間の対向隙間を埋めるシム部材が介装されていることを特徴とする撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッド。
【請求項2】
縦型の消化槽と、該消化槽の中央に垂下される縦型の軸流ポンプと、該軸流ポンプを覆うポンプ配管であるドラフトチューブと、を備える撹拌機に用いられ、前記ドラフトチューブの垂下姿勢を保持するために、前記ドラフトチューブ側の支持部と前記消化槽内壁側の支持部との間に自身軸線を水平にして介装されるタイロッド本体を有するタイロッドであって、
前記タイロッド本体はパイプまたは鋼材が用いられて、自身軸方向への張力を付与しない介装状態で、前記ドラフトチューブ側の支持部と前記消化槽内壁側の支持部との間に架け渡され
前記ドラフトチューブ側の支持部に一端が支持されるチューブ側ロッドと、前記消化槽内壁側の支持部に一端が支持されるとともに前記チューブ側ロッドの他端との間に対向隙間がある状態で対向配置される消化槽内壁側ロッドと、前記チューブ側ロッドと前記消化槽内壁側ロッドとの間の対向隙間を埋めるように調整する対向隙間調整部と、を有することを特徴とする撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッド。
【請求項3】
当該ポンプ配管サポート用タイロッドが、前記ドラフトチューブの周方向に3以上が離隔して配置され、相互の剛性の協働によって前記ドラフトチューブの垂下姿勢を保持する請求項1または2に記載の撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッド。
【請求項4】
前記支持部のいずれかと前記ロッドまたは前記タイロッド本体とが相互に対向する少なくとも一の連結箇所は、ボールジョイント構造によって連結されている請求項1~3のいずれか一項に記載の撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッド。
【請求項5】
前記支持部のいずれかと前記ロッドまたは前記タイロッド本体とが相互に対向する少なくとも一の連結箇所は、ボールジョイント構造によって連結され、
前記ドラフトチューブ側の支持部と前記チューブ側ロッドとの前記連結箇所は、第一のボールジョイント構造によって連結され、
前記消化槽内壁側の支持部と前記消化槽内壁側ロッドとの前記連結箇所は、第二のボールジョイント構造によって連結され、
前記チューブ側ロッドと前記対向隙間調整部とを連結する箇所は、第三のボールジョイント構造によって連結されている請求項に記載の撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌機のポンプ配管の姿勢を保持するためのタイロッドに係り、特に、汚泥消化装置のドラフトチューブの姿勢の保持用として好適なタイロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
撹拌機を備える装置として、図9に一例を示すように、消化槽110と、この消化槽110の中央に垂下される縦型の軸流ポンプ130と、を備える汚泥消化装置100が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の汚泥消化装置100では、消化槽110中央の軸流ポンプ130の撹拌スクリュ132の周囲を囲うポンプ配管として、ドラフトチューブ120が軸線を縦にして設置される。
その際、従来の汚泥消化装置100においては、ドラフトチューブ120は、図10に要部を拡大図示するように、ドラフトチューブ120の上側開口部121が、消化槽110の内壁面に対して、ターンバックル140tを有するタイロッド140によって固定される。
【0003】
タイロッド140は、消化槽110を上から見て十字方向に4本が配置され、これら4本のタイロッド140により、各ターンバックル140tを締め込むことによって張力がそれぞれに与えられ、ドラフトチューブ120の上側開口部121を緊迫固定するようになっている。
これにより、ドラフトチューブ120は、チューブ内面が軸流ポンプ130の撹拌スクリュ132に接触しないように、また、消化槽110内の流れによってドラフトチューブ120自体が振動しないように支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-31168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、複数のタイロッド140に張力を与えてドラフトチューブ120の上側開口部121を緊迫固定する姿勢保持構造であると、数年~十数年に亘る汚泥消化装置100の長期使用において、タイロッド140が疲労破断するおそれがある。そのため、従来のタイロッド140は、ドラフトチューブ120の姿勢保持性能を長期に亘って維持する上で未だ改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ドラフトチューブのようなポンプ配管の姿勢保持性能を、より長期に亘って維持し得る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドは、縦型の消化槽と、該消化槽の中央に垂下される縦型の軸流ポンプと、該軸流ポンプを覆うポンプ配管であるドラフトチューブと、を備える撹拌機に用いられ、前記ドラフトチューブの垂下姿勢を保持するために、前記ドラフトチューブ側の支持部と前記消化槽内壁側の支持部との間に自身軸線を水平にして介装されるタイロッド本体を有するタイロッドであって、前記タイロッド本体は、自身軸方向への圧縮力によって座屈しない必要十分な剛性を備えたパイプまたは鋼材が用いられて、自身軸方向への張力を付与しない介装状態で、前記ドラフトチューブ側の支持部と前記消化槽内壁側の支持部との間に架け渡されることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドによれば、従来のタイロッドのように、ターンバックルを締め込むことによって張力を与えて緊迫する姿勢保持構造とは異なり、タイロッド本体として、自身軸方向での圧縮力によって座屈しない必要十分な剛性を備えたパイプや鋼材を用い、このタイロッド本体を、ドラフトチューブ側の支持部と消化槽内壁側の支持部との間に自身軸線を水平にして介装する。
その際、タイロッド本体は、自身軸方向への張力を付与しない介装状態でドラフトチューブ側の支持部と消化槽内壁側の支持部との間に架け渡されるので、これにより、ドラフトチューブの垂下姿勢をリジッドな剛接合によって固定できる。
そのため、本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドによれば、張力を与えて緊迫する方式のタイロッドと比較して、タイロッドの疲労破断を防止または抑制できる。よって、ドラフトチューブの姿勢保持性能をより長期に亘って維持できる。
【0009】
ここで、本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドにおいて、当該ポンプ配管サポート用タイロッドが、前記ドラフトチューブの周方向に3以上が離隔して配置され、相互の剛性の協働によって前記ドラフトチューブの垂下姿勢を保持する構成とすることができる。このような構成であれば、ドラフトチューブの垂下姿勢をリジッドな剛接合によって固定しつつ、ドラフトチューブの芯の位置を保持する構造として好適である。
【0010】
また、本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドにおいて、前記タイロッド本体と少なくとも一方の前記支持部との間に、相互間の対向隙間を埋めるシム部材が介装されている構成とすることができる。
このような構成であれば、剛接合にするためのパイプまたは鋼材の長さをシムによって容易に調整できる。この場合において、本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドとドラフトチューブとを連結するドラフトチューブ側の支持部を構成するケーシングが、上下に2分割可能に構成されることは好ましい。
【0011】
また、本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドにおいて、前記タイロッド本体は、前記ドラフトチューブ側の支持部に一端が支持されるチューブ側ロッドと、前記消化槽内壁側の支持部に一端が支持されるとともに前記チューブ側ロッドの他端との間に対向隙間がある状態で対向配置される消化槽内壁側ロッドと、前記チューブ側ロッドと前記消化槽内壁側ロッドとの間の対向隙間を埋めるように調整する対向隙間調整部と、を有する構成とすることができる。このような構成であれば、チューブ側ロッドと消化槽内壁側ロッドとを剛接合にするための対向隙間の長さを対向隙間調整部によって容易に調整できる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドにおいて、前記支持部のいずれかと前記ロッドまたは前記タイロッド本体とが相互に対向する少なくとも一の連結箇所は、ボールジョイント構造によって連結されている構成とすることができる。
このような構成であれば、ボールジョイント構造により、本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドを装着した状態での上下左右の芯ズレを吸収できる。
【0013】
この場合において、装着状態での大きな偏心に対処できるようにするために、本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドの連結箇所に対して、ボールジョイント構造を2箇所または3箇所有することは好ましい。また、ボールジョイント構造の部分は鋳物製であることは好ましい。
また、本発明の一態様に係る撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドにおいて、剛接合にするためのパイプまたは鋼材の長手方向の寸法は、径の異なる2本のパイプ相互を差し込んで2本のパイプ相互のスライド移動によって調整できることは好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、本発明によれば、撹拌機のポンプ配管サポート用タイロッドの姿勢保持性能をより長期に亘って維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一態様に係るタイロッドを備えた消化設備の一実施形態の説明図であり、同図では、軸線に沿った断面を示している。
図2図1の消化設備におけるタイロッドの部分の拡大図である。
図3図1の消化設備におけるタイロッドの装着工程を説明する図であり、同図では、クリアランス調整部の固定ボルトを取り外した状態を示している。
図4図1の消化設備におけるタイロッドの装着工程を説明する図であり、同図では、クリアランス調整部の固定ボルトを装着した状態を示している。
図5図1の消化設備において、メンテナンス時に足場を設けた状態を示す説明図である。
図6】本発明の一態様に係るタイロッドの他の例(第一変形例)を説明する図であり、同図(a)は正面図、(b)は中心側支持部材を平面視した図である。
図7】本発明の一態様に係るタイロッドの他の例(第二変形例)を説明する図である。
図8】本発明の一態様に係るタイロッドの他の例(第三変形例)を説明する図であり、同図(a)は要部の平面図、(b)は正面図、(c)は(b)の右側面図である。
図9】従来のタイロッドを備えた消化設備の一例の説明図であり、同図では、軸線に沿った断面を示している。
図10図9の消化設備における従来のタイロッドの部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の汚泥消化装置1は、汚泥を入れる消化槽10と、消化槽10内に縦に配置されたドラフトチューブ20と、ドラフトチューブ20の上部に配置された軸流ポンプ30と、を備える。
ドラフトチューブ20は、その軸線が消化槽10の中心に沿って鉛直に配置され、ドラフトチューブ20の下部が複数の支持脚15によって消化槽10の底部12に固定される。
軸流ポンプ30は、回転軸31とモータ部33とを備え、回転軸31の先端に撹拌スクリュ32が設けられている。撹拌スクリュ32の部分が、ドラフトチューブ20の上側開口部21内に配置される。モータ部33は、消化槽10の蓋部13に取り付けられて消化槽10の外部に配置される。
【0018】
本実施形態の汚泥消化装置1では、軸流ポンプ30を作動させることで、消化槽10内の汚泥が、ドラフトチューブ20の上側開口部21からドラフトチューブ20内に導入され、ドラフトチューブ20の下側開口部22から導出されて消化槽10内を循環する。これにより、消化槽10内の汚泥が撹拌されるようになっている。
ここで、ドラフトチューブ20の上側開口部21は、図2に要部を拡大図示するように、複数のタイロッド40によって消化槽10の壁部11に支持される。本実施形態では、タイロッド40は、消化槽10を上から見て十字方向に4本が配置されている。これら4本のタイロッド40は、軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの対向隙間(クリアランス)を所定に維持するように、各タイロッド40の架け渡し状態が調整される。
【0019】
特に、本実施形態のタイロッド40は、上述した、従来のターンバックル型タイロッド140のような、張力を用いた剛性によらない架け渡し構造になっている。つまり、本実施形態のタイロッド40は、タイロッド本体43が自身軸方向への張力を付与しない介装状態で架け渡される構造になっており、これにより、タイロッド40の疲労破壊が防止されるとともに、クリアランスの調整機能も満足できるようになっている。
詳しくは、本実施形態のタイロッド40は、ドラフトチューブ20側に設けられる管側支持部材41と、壁部11側に設けられる壁側支持部材42と、管側支持部材41と壁側支持部材42との間に水平に掛け渡されるタイロッド本体43と、を備える。本実施形態の例では、各タイロッド本体43の途中部分に、クリアランス調整部50が設けられている。
【0020】
本実施形態のタイロッド40は、ボールジョイント構造として、3か所にボールジョイント部51,52,53が設けられている。これにより、本実施形態のタイロッド40は、大型構造の消化槽10であっても、軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの芯ズレを吸収して安定した支持姿勢を保持できるようになっている。
【0021】
管側支持部材41は、ドラフトチューブ側の支持部であって、ドラフトチューブ20の上側開口部21の周囲を覆うように設けられた円筒状の本体部41aと、本体部41aの周方向に4等配された複数の支持部41bを有する。各支持部41bは、第一ボールジョイント部51を構成する凹状球面41cをそれぞれ有する。
壁側支持部材42は、消化槽内壁側の支持部であって、管側支持部材41の各支持部41bに対向する位置にそれぞれ設けられる。壁側支持部材42は、周壁部にアンカボルトにより装着される基部42aと、基部42aから水平方向に張り出す支持円筒部42bと、支持円筒部42bの先端に設けられて第二ボールジョイント部52を構成する凹状球面42cと、を有する。
【0022】
タイロッド本体43は、ドラフトチューブ側の支持部に一端が支持される第一ロッド44と、消化槽内壁側の支持部に一端が支持される第二ロッド45と、第一ロッド44と第二ロッド45との間に同軸に介装される第三ロッド46と、を有する。
第一ロッド44は、図3にも示すように、水平方向に張り渡される円筒状パイプ材から形成された本体部44aと、本体部44aの中心部側端部に設けられて第一ボールジョイント部51を構成する凸状球面44bと、本体部の第三ロッド46と対向する端部に設けられて第三ボールジョイント部53を構成する凹状球面44cと、を有する。
【0023】
第二ロッド45は、図3にも示すように、水平方向に張り渡される円筒状パイプ材から形成された本体部45aと、本体部45aの壁側端部に設けられて第二ボールジョイント部52を構成する凸状球面45bと、本体部45aの第三ロッド46と対向する端部に軸方向にスライド移動可能に設けられたインロー凹部45cと、本体部45aの途中部分の外周面に径方向に張り出すように設けられたフランジ部45dと、を有する。
第三ロッド46は、図3にも示すように、水平方向に架け渡される円筒状パイプ材から形成された本体部46aと、本体部46aの第一ロッド44と対向する端部に設けられて第二ボールジョイント部52を構成する凸状球面46bと、本体部46aの第二ロッド45と対向する端部に軸方向にスライド移動可能に設けられたインロー凸部46cと、本体部46aの途中部分の外周面に径方向に張り出すように設けられたフランジ部46dと、を有する。
【0024】
第二ロッド45および第三ロッド46相互のフランジ部45d、46dは、対向する位置に、複数組の雌ねじ(不図示)が形成され、図4に示すように、連結位置保持用のねじ棒状の固定ボルト54を、相互の対向する雌ねじに螺合し、各フランジ部45d、46dの両面からナットで挟持固定することよって、第二ロッド45および第三ロッド46相互の軸方向のスライド位置が固定されるようになっている。
【0025】
次に、本実施形態の汚泥消化装置1に対し、本実施形態のタイロッド40を用いて軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの対向隙間(クリアランス)を所定に維持する方法について説明する。
図5に模式図を示すように、本実施形態のタイロッド40を装着する際には、汚泥消化装置1に対して、消化槽10の内部に仮設足場Sを組んでから施工する。仮設足場Sは、施工後に解体して撤去する。本実施形態のタイロッド40によれば、既設タイロッドが、図9に示したような、ターンバックル140tを有するタイロッド140であっても、これに替えて同じ装着位置に装着できるため、メンテナンス時のリプレースが容易である。
【0026】
本実施形態のタイロッド40を装着する手順は、ドラフトチューブ20側に対しては、予め、上側開口部21に対しては管側支持部材41を装着するとともに、消化槽10の壁部11側には、4か所に壁側支持部材42をアンカボルトにより装着する。各壁側支持部材42は、管側支持部材41の各支持部41bに対向する位置にそれぞれ施工する。
次いで、4本のタイロッド40の仮掛け渡し作業を行う。仮掛け渡し作業では、作業者が、仮設足場S上にて門型を組んでおき、不図示の懸架機器を用いて4本のタイロッド40をそれぞれ吊った状態で水平姿勢を保持しつつ所望の位置に組み立てる。
【0027】
4本のタイロッド40は、軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの対向隙間(クリアランス)を所定に維持するように、第二ロッド45および第三ロッド46相互のインロー凹部45cとインロー凸部46cとの勘合量を調整して、各タイロッド40の架け渡し状態が調整される。その際、4本のタイロッド40は、自身軸方向への張力を付与しない介装状態でドラフトチューブ20側の支持部と消化槽10の内壁側の支持部との間に架け渡される。
【0028】
4本のタイロッド40を架け渡してクリアランス調整を終えたならば、各タイロッド40の、第二ロッド45および第三ロッド46相互のフランジ部45d、46dに、連結位置保持用のねじ棒状の固定ボルト54を挿通する。固定ボルト54の挿通作業は、固定ボルト54を相互のフランジ部45d、46dの対向する雌ねじに螺合して所望の位置までねじ込み、次いで、各フランジ部45d、46dの両面からナットで固定ボルト54を挟持して固定する。これによって、第二ロッド45および第三ロッド46相互の軸方向のスライド位置が固定され、4本のタイロッド40のクリアランス調整を終えた掛け渡し状態を確実に保持することができる。
【0029】
次に、本実施形態のタイロッド40の作用効果について説明する。
ここで、汚泥消化装置が稼働時にはタイロッドはわずかに動いている。そのため、上述したような、従来のタイロッド140であると、ターンバックル140tを締め込むことによって張力をそれぞれに与える構造なので、ターンバックル140tのジョイント部では徐々に摩耗が進行して張力が抜けてタイロッド140のガタが拡大する。また、従来のタイロッド140では、大型構造の消化槽の芯ズレを吸収するような構造になっていないため、偏った力の作用によって、タイロッド140の疲労破壊がより早期に進行するおそれがある。
【0030】
これに対し、本実施形態のタイロッド40によれば、上述した、従来のターンバックル型タイロッド140のような、張力を用いた剛性によらない架け渡し構造になっている。つまり、本実施形態のタイロッド40は、タイロッド本体43の自身軸方向への張力を付与しない介装状態で架け渡されるため、タイロッド40の疲労破壊が防止され、クリアランス調整機能も満足できる。
また、本実施形態のタイロッド40によれば、3か所にボールジョイント部51,52,53が設けられているので、大型構造の消化槽10であっても、軸流ポンプ30の撹拌スクリュ32とドラフトチューブ20の内壁面20nとの芯ズレを吸収して安定した支持姿勢を保持できる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のタイロッド40によれば、張力を与えて緊迫する方式のタイロッドと比較して、タイロッド40の疲労破断を防止または抑制できる。よって、ドラフトチューブ20の姿勢保持性能をより長期に亘って維持できる。
なお、本発明に係るポンプ配管サポート用タイロッドは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【0032】
例えば、上記実施形態では、ドラフトチューブ20側の支持部と第一ロッド44との連結箇所は、第一のボールジョイント部51によって連結され、消化槽10の内壁側の支持部と第二ロッド45との連結箇所は、第二のボールジョイント部53によって連結され、クリアランス調整部50とを連結する箇所は、第一ロッド44と第二ロッド45との間に同軸に介装される第三ロッド46は、第二ロッド45との協働によるクリアランス調整部50を構成するとともに、第一ロッド44との連結箇所が第三のボールジョイント部52によって連結されている例を示したがこれに限定されない。
【0033】
例えば、図6に変形例を示すように、ボールジョイント部を設けることなく、ドラフトチューブ20側の支持部と消化槽10の内壁側の支持部との間に対向隙間がある状態に架け渡されるタイロッド本体44と、タイロッド本体44と少なくとも一方の支持部との間に介装されて対向隙間を埋めるシム部材50(同図の例では、複数のシム50a,50b・・・から構成されている。)と、を有する構成としてもよい。この例では、ドラフトチューブ20の支持部に、複数のシム50a,50bにより、シム部材=クリアランス調整部50が設けられていることになる。
【0034】
また、例えば、図7に他の変形例を示すように、ドラフトチューブ20側の支持部に一端が支持されるチューブ側ロッド44と、消化槽10の内壁側の支持部に一端が支持されるとともにチューブ側ロッド44の他端との間に対向隙間がある状態で対向配置される内壁側ロッド45と、チューブ側ロッド44と内壁側ロッド45との間に設けられて相互の対向隙間を埋めるように調整するクリアランス調整部50と、を有する構成としてもよい。この例では、ボールジョイント部51,53を両端の二か所に設けている。
この例では、クリアランス調整部50は、「まな板状」のスライド板50aと、スライド板50aに軸方向で対向する相手側のコ字状受板50bとを有し、スライド板50aをコ字状受板50bの間に挟み込んで軸方向の水平姿勢を保持した状態でクリアランスを調整する。
【0035】
クリアランスの調整は、上記実施形態同様に、チューブ側ロッド44と内壁側ロッド45相互のフランジ部44d、45dの対向位置に、複数組の雌ねじ(不図示)が形成されており、図4に示した例同様、連結位置保持用のねじ棒状の固定ボルト54を、相互の対向する雌ねじに螺合し、各フランジ部44d、45dにナットで固定することよって、チューブ側ロッド44と内壁側ロッド45のスライド板50aおよびコ字状受板50bのスライド位置が固定される。
そして、クリアランスが取れた段階でスライド板50aおよびコ字状受板50b相互を溶接にて固定する。なおさらに、クリアランス調整後に、チューブ側ロッド44および内壁側ロッド45相互をつなぐサポート部材59を溶接することによって一層強固に固定することが好ましい。
【0036】
また、ボールジョイント部は、上記実施形態の例では、3か所にボールジョイント部51,52,53が設けられている例を示したが、これに限定されず、ボールジョイント部を設けない態様としてもよいし、また、ボールジョイント部を1箇所または2箇所に設けることもできる。また、ボールジョイント部の構造は、上記実施形態の例では、凹状球面と凸状球面との組によって構成された例で説明したが、これに限定されない。
【0037】
例えば、図8に他の例を示すように、球状部56を有するボールスタッド55と、球体部56に球面接触する収容部58を有するソケット57と、を備えてなる球状軸受によってボールジョイント部を構成してもよい。
ボールジョイント部を、このようなボールスタッド55とソケット57とから構成すれば、芯ズレを吸収して安定した支持姿勢を保持できる上、任意の方向に回転可能で且つ並進方向に高い剛性をもつジョイント構造とすることができる。
【0038】
そして、このような構成であれば、ソケット57の収容部58に収容された状態のボールスタッド55の球体部56は、収容部58上部の開口部分以外からはソケット57から外れないため、施工時の組み立て作業性に優れている。また、同様に、収容部58に収容された状態の球体部56は、収容部58内で所定範囲での軸方向の移動が可能になっているので、例えば上記実施形態において、第二ロッド45および第三ロッド46相互のフランジ部45d、46dの位置決め作業時における、組み立て作業性に優れている。
【符号の説明】
【0039】
1 汚泥消化装置(消化設備:撹拌機)
10 消化槽
11 壁部
12 底部
13 蓋部
15 支持脚
20 ドラフトチューブ(ポンプ配管)
21 上側開口部
30 軸流ポンプ
31 回転軸
32 撹拌スクリュ
33 モータ
40 タイロッド
41 管側支持部材(ドラフトチューブ側の支持部)
42 壁側支持部材(消化槽内壁側の支持部)
43 タイロッド本体
50 クリアランス調整部
51,52,53 ボールジョイント部(ボールジョイント構造)
54 固定ボルト
S 仮設足場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10