(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】経腸給送ポンプを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
F04C 5/00 20060101AFI20240319BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20240319BHJP
F04C 14/28 20060101ALI20240319BHJP
A61M 5/168 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
F04C5/00 341N
F04B49/06 311
F04C14/28 B
A61M5/168 520
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019218597
(22)【出願日】2019-12-03
(62)【分割の表示】P 2017519867の分割
【原出願日】2015-10-14
【審査請求日】2019-12-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-10
(32)【優先日】2014-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517408184
【氏名又は名称】ケイピーアール ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン, ジョセフ
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】村上 哲
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-81355(JP,A)
【文献】特開2007-98125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 5/00
F04B 49/06
F04C 14/28
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプセットを通して流体を送達する
蠕動ポンプを動作させる方法であって、
前記
蠕動ポンプのコントローラを使用して、前記
蠕動ポンプの回転子の回転位置を、
パルス状の低減された出力において前記回転子を回転させる前記
蠕動ポンプのモータの動作中に示すセンサからのセンサ信号を前記コントローラが監視することに基づいて、前記ポンプセットに閉塞が存在するか否かを決定することを含み、
前記
パルス状の低減された出力は、ゼロより大きく、かつ、
一回の給送サイクルの間に前記ポンプセットにおける流体の流れをもたらすべく前記回転子を回転させる給送出力より小さく、
前記モータは、前記
一回の給送サイクルを開始するべく前記給送出力において
ホーム位置から動作し、前記
一回の給送サイクルの間に前記給送出力において連続して動作
し、及び前記給送出力における前記
一回の給送サイクルの回転角度よりも小さい回転角度の間に前記
パルス状の低減された出力において動作する、方法。
【請求項2】
前記ポンプセットにおける前記閉塞は、前記ポンプセット内の圧力を直接測定するセンサを使用することなく決定される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記モータに電力のパルスを供給することによって前記
パルス状の低減された出力において動作するように前記回転子を回転させることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記給送出力において前記モータを動作させた後、かつ、前記
パルス状の低減された出力において前記モータを動作させる前に、前記回転子の回転を停止させることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項5】
前記
パルス状の低減された出力において前記モータを動作させた後に前記
蠕動ポンプの前記回転子が
前記ホーム位置まで回転しないまたは少なくとも所定速度で回転しない場合に、前記ポンプセット内に閉塞が存在すると決定することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項6】
前記センサが検出した
前記ホーム位置に先立つホーム前位置において前記回転子の回転が停止した後に前記モータが前記
パルス状の低減された出力において動作する、請求項1の方法。
【請求項7】
前記回転子はローラを含み、
前記回転子の回転を停止させることは、前記回転子を、前記ローラが前記ポンプセットに係合しない前記ホーム前位置に停止させることを含む、請求項6の方法。
【請求項8】
前記センサ信号は、前記
パルス状の低減された出力において前記モータを動作させることにより前記回転子が、前記ローラが前記ポンプセットに係合する
前記ホーム位置まで回転するか否かをみるべく監視される、請求項7の方法。
【請求項9】
閉塞が存在するか否かを決定することは、前記
パルス状の低減された出力において前記モータを動作させることにより前記回転子が、前記流体の粘性に基づく所定時間内に前記ホーム位置まで回転するか否かに基づく、請求項8の方法。
【請求項10】
前記給送出力における前記
蠕動ポンプの動作の間に少なくともベースライン電流を前記モータに印加することにより、前記回転子を非閉塞流動状態及び閉塞流動状態の双方において回転させることと、パルス状のインクリメントで電力を供給することと、
パルス状の低減された電力を前記モータに供給することとの少なくとも一方により前記低減された出力において前記モータに電力を供給することと
をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項11】
前記
パルス状の低減された出力において前記モータを動作させている間、
前記一回の給送サイクルの一部の間に、前記回転子
の回転が、電力が前記モータに供給される励起周期と、電力が前記モータに供給されない励起解除周期とを含むように、前記モータへの電力が低減される、請求項1の方法。
【請求項12】
前記コントローラは、前記
一回の給送サイクルにおいて単一アリコートのみの流体が残されるまで前記給送出力において前記モータを動作させた後に前記モータを前記
パルス状の低減された出力において動作させる、請求項1の方法。
【請求項13】
励起周期の間に電力を前記モータに印加することにより前記回転子を回転させることと、
励起解除周期の間に前記回転子を回転させる電力を印加しないことにより前記
パルス状の低減された出力を生成することと
をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項14】
前記
一回の給送サイクルの終わりに前記
パルス状の低減された出力において前記モータを動作させることをさらに含む、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、装置上に搭載される管セット内の閉塞を検出可能である、流動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬または栄養を含有する流体を継続ベースで精密な量において患者に投与することは、公知である。典型的には、栄養流体は、制御された送達率で対象に流体を送達する、蠕動ポンプ等の流動制御装置上に装填された可撓性エラストマー管類を含む、ポンプセットによって、患者に送達される。蠕動ポンプは、通常、ギヤボックスを通してモータによって駆動される回転子を含む、筐体を有する。回転子は、回転子上に搭載される1つまたはそれを上回るローラによる衝打、例えば、挟持によって生成される可逆的圧縮によってもたらされる蠕動作用によって、ポンプセットの可撓性管類を通して流体を押進させる。ポンプセットは、ポンプセットを通して流体流動連通を選択的に許可または防止するための弁機構を有してもよい。コントローラは、流体流動を効果的に制御する、モータを動作可能に調整してもよい。
【0003】
既存の流動制御装置は、回転子上のエンコーダを使用して、回転子の回転を監視可能である。回転子の回転速度は、装置を通して送達されている栄養流体の流率を判定するために使用されることができる。
【0004】
流動制御装置はまた、流動制御装置の動作の間、装填されたポンプセット内で生じ得る流体流動状態を監視および検出可能であり得る。そのような流動状態の1つは、ポンプセット内の閉塞である。閉塞の存在は、栄養液体が患者に送達されることを妨害し、ポンプセットおよび流動制御装置に損傷を及ぼし得る。正常流動状態は、ポンプセット内の流体流動を閉塞または妨害するであろう、流動状態がないときに存在する。しかしながら、粘性栄養流体が使用されるとき、ポンプセット内の圧力は、そうでなければ正常である流動状態の間、増加し得る。したがって、圧力が、閉塞を検出するために排他的に使用される場合、正常流動状態は、粘性流体がポンプセットと併用されるとき、異常流動状態であるように考えられ得る。
【発明の概要】
【0005】
給送セットのために適合された流動制御装置が、開示され、該流動制御装置は、給送セットの少なくとも一部を受容することが可能な筐体と、給送セットが、筐体によって受容されると、給送セットに接触するための圧送デバイスであって、圧送デバイスは、給送セットに作用し、患者への患者方向における流体の送達のために、給送セット内に流体流動を生成し、回転子と、回転子を回転させ、給送セットに作用し、給送セット内に流体流動を生成するために、回転子に動作可能に接続される、モータとを備える、圧送デバイスと、圧送デバイスに対して配列され、回転子の回転位置を示す信号を生成する、センサと、センサから、回転子の回転位置を示すセンサ信号を受信するためにセンサと通信し、圧送デバイスと通信し、その動作を制御する、制御回路であって、制御回路は、モータを動作させ、回転子を回転させ、給送セットに接触し、給送セットを通して患者方向において流体の圧送作用を生成するように構成され、第1の出力では、モータを動作させ、回転子を回転させ、給送セット内に流体流動を生成し、事実上第1の出力未満の第2の出力では、モータを動作させ、第2の出力におけるモータの動作の間、センサ信号を監視し、給送セット内の流動状態を判定する、制御回路とを備える。ある場合には、本装置は、給送セット内の圧力を直接測定するためのセンサがない。
【0006】
さらに、流動制御装置を動作させる方法が開示され、流動制御装置によって作用される、ポンプセット内の流体流動中の閉塞を検出するための圧送デバイスを含み、本方法は、第1の出力では、圧送デバイスの回転子を回転させ、ポンプセット内に流体流動を生成するように、制御回路を使用して、圧送デバイスのモータを動作させるステップと、事実上第1の出力未満の第2の出力では、制御回路を使用して、モータを動作させるステップと、回転子の回転位置を示す信号を生成するように、圧送デバイスに対して配列されたセンサを動作させるステップと、第2の出力におけるモータの動作の間、センサ信号を監視し、閉塞がポンプセット内に存在するかどうかを判定するステップとを含む。ある場合には、ポンプセット内の閉塞は、ポンプセット内の圧力を直接測定するためのセンサを使用せずに判定される。モータを第2の出力において動作させるステップは、電力のパルスをモータに供給し、回転子を回転させるステップを含むことができる。本方法は、ある場合にはさらに、モータを第1の出力において動作させた後、かつモータを第2の出力において動作させる前に、制御回路を使用して、圧送デバイスのモータを動作させ、回転子の回転を停止させるステップを含むことができる。本方法は、ある場合にはさらに、モータを第2の出力において動作させた後、回転子が、所定の位置まで回転しない、または少なくとも所定の率で回転しない場合、ポンプセット内に閉塞が存在すると判定するステップを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の1つまたはそれを上回る側面による、経腸給送ポンプと、ポンプ上に受容または装填された投与用給送セットの断片的部分として例示的に示される、流動制御装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、給送セットのカセット筐体を伴わない、
図1の流動制御装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、給送セットを伴わない、
図1の流動制御装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の1つまたはそれを上回る側面による、流動監視システムを含む流動制御装置の要素を図示する、ブロック図である
【
図5】
図5は、本発明の1つまたはそれを上回る側面による、流動監視システムのフロー図である。
【0008】
対応参照文字は、図面全体を通して対応する部品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面、特に、
図1-3を参照すると、流動制御装置の実施形態は、概して、10に示される。流動制御装置は、装置上に装填される給送セット14内に存在する流動状態(例えば、下流閉塞)を検出および識別可能である、流動監視システム12(
図4)を備えてもよい。給送セット14は、患者への流体の送達のために、流動制御装置10上に装填されることができる、管類16を含んでもよい。本明細書で使用されるように、用語「装填」は、給送セット14が、流体を給送セットを通して患者に送達するために、流動制御装置10との動作の準備ができるように、管類16が流動制御装置10と係合されることを意味する。
【0010】
流動制御装置10は、給送セット14(広義には、「ポンプセット」)を流動制御装置10に装填するために適合される、筐体20を備えてもよい。流動制御装置は、給送セット14のカセット24を受容し、給送セットを流動制御装置10上に装填するための陥凹22(
図3)を備えてもよい。好ましくは、回転子26等の流体を駆動するための手段が、モータ28(
図4)によって回転されてもよい。回転子26は、回転子の周囲に離間されたローラ30(広義には、「圧送部材」)を含む。ローラ30は、給送セット14が、流動制御装置10に装填され、蠕動作用によって栄養補給セットを通して流体流動を生成するとき、管類が回転子によって(例えば、ローラ30によって)圧縮され得るように、連続して、繰り返し、管類16に係合するように適合されてもよい。
【0011】
回転子26は、モータ28によって回転される、回転可能シャフト31上に搭載されてもよい。一実施形態では、ポンプ回転子26は、内側ディスク39と、外側ディスク41と、好ましくは、ディスクに対してその縦軸を中心として回転可能な内側ディスクと外側ディスクとの間に搭載される複数のローラ30とを含む。図示される実施形態では、ポンプモータ28、回転可能シャフト31、および回転子26は、広義には、「圧送デバイス」と見なされ得る。ローラ以外の機構を使用する蠕動ポンプも、本開示の範囲内であり得ることを理解されたい。例えば、線形蠕動ポンプが、本明細書に開示される1つまたはそれを上回る側面または特徴を組み込むために使用され得る。
【0012】
本明細書で使用されるように、回転子26につながる給送セット14の管類16の部分は、「上流」と称され、回転子26から離れる管類16の部分は、「下流」と称される。故に、回転子26の回転は、管類16を圧縮し、流体(例えば、栄養液体)を給送セット14の上流から下流側への患者方向に駆動させる。以下により詳細に説明されるように、管類16を圧縮するための回転子26の回転はまた、閉塞が管類内に存在するとき、管類内に正圧を発生させる。
【0013】
図1を参照すると、流動制御装置10はさらに、流動制御装置10との相互作用のためのユーザインターフェース40を備えてもよい。装置はまた、ポンプのステータスおよび動作についての情報を表示可能である、装置の正面上に、概して、42に示される、ディスプレイ画面を有してもよい。ディスプレイ画面42の側面上のボタン44は、ポンプ1からの情報を制御および取得する際に使用するために提供されることができ、3つの発光ダイオード46は、ポンプに関するステータス情報を提供することができる。ユーザインターフェースは、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に説明されるもの以外の構成を有してもよい。
【0014】
図4を参照すると、流動制御装置10はさらに、少なくとも1つの回転子センサ53と通信上関連付けられる、マイクロプロセッサ51等のプロセッサを備えてもよい。流動監視システム12はまた、マイクロプロセッサ51と動作可能に関連付けられ、流動制御装置10が、給送セット14内に存在する流動状態を検出および識別するための手段を提供してもよい。マイクロプロセッサ51はさらに、流動制御装置10の種々の構成要素の動作を制御および管理してもよい。
【0015】
少なくとも1つの回転子センサは、典型的には、回転子または回転可能シャフトの角度位置のインジケーションを提供し、したがって、回転式エンコーダであることができる。回転子センサ53は、少なくとも部分的に、流動制御装置10の筐体20内に位置し、回転子26の回転位置を検出するために位置付けられてもよい。回転子センサ53は、回転子26の表面上または回転子と連動して回転する表面上(例えば、回転可能シャフト31の表面上)に複数の第1のセンサ要素(図示せず)を備えてもよい。第2のセンサ要素(図示せず)は、第1のセンサ要素が第2のセンサ要素によって発出される信号をパスするように、信号を回転子26の表面または回転子と連動して回転する表面に指向するように構成される。第2のセンサ要素は、各第1のセンサ要素が、発出される信号をパスし、回転子26の回転位置を判定すると、それを検出することができる。
【0016】
回転子26の回転位置はまた、回転子の回転速度を判定するためにも使用されることができる。概して、給送セット14を通る栄養流体の流率は、回転子転動間の時間に基づき、回転子速度およびエンコーダカウント(すなわち、第1のセンサ要素が第2のセンサ要素によって検出された回数)に依存する。したがって、ある周期にわたるエンコーダカウントの数は、回転子26の回転速度を示し得る。加えて、第1のセンサ要素は、エンコーダカウントの所定の数が完全回転子転動を示すように配列されてもよい。他のタイプのセンサも、回転子の回転位置を監視するために使用されることができることが想定される。1つまたはそれを上回るセンサ53の回転式エンコーダは、磁場によって発生された電流を測定することによる検出、磁場の存在によって誘発される変化の結果としての電流の変化を検出することによる検出を伴い得る、または回路を開放もしくは閉鎖し、回転位置を判定する、電気接点を伴い得る。他の場合には、センサ53は、光学システムを利用して、回転位置を判定することを伴い得る。
【0017】
図示される実施形態では、回転子26は、回転の各4分の1が1アリコートの流体を患者に送達するように、4つのローラ30を含んでもよい。各ローラ30が、最初に、管類16に係合するにつれて、管類を挟持し、それによって、管類の上流部分から生じる流体からのある量の流体を順方向に(すなわち、患者に向かって)閉め出す。管類を挟持する初期係合は、ローラ30のための「ホーム位置」と称され得る。したがって、例えば、4つのローラを有する回転子に関して、ローラと関連付けられた4つの「ホーム位置」が存在するであろう。ローラ30は、右に、例えば、圧送デバイスの反時計回り回転を継続し、流体をローラの順方向に患者に向かって押動させる。最後に、ローラ30は、後続ローラが、流体の次のアリコートを送達するため、それを挟持するために管類に係合するのとほぼ同時に、管類11との係合から解放される。したがって、マイクロプロセッサ51が、選択された流体流動率を送達するためのコマンドを受信すると、数アリコートを送達するであろう所与の時間周期内の回転数を計算し、所望の流率を生成する。回転子動作を変更する他の方法も、選択された流率を維持するために使用され得ることを理解されたい。選択された流率は、医師、看護士、または他の介護者によって選択される率であってもよい、または、例えば、患者の必要性および送達されるべき流体のうちの任意の1つまたはそれを上回るものを含む、いくつかの要因に依存し得る、流動制御装置10にプログラムされる、デフォルトまたは所定の給送率であってもよい。
【0018】
流動制御装置10はまた、回転子26を回転させるためにモータ28に印加される電流(または電圧)を調節してもよい。正常動作状態下では、ベースライン電流が、モータ28に印加され、回転子26を回転させ、ローラ30で管類16を圧縮し、栄養流体を給送セット14を通して移動させ得る。典型的には、ベースライン電流レベルは、正常非閉塞流動状態および異常閉塞流動状態において、給送セット14を通して粘性および非粘性栄養流体の両方を移動させるために十分である。しかしながら、給送セット14内の閉塞は、回転子26に抗力を及ぼし、管16に沿ったローラ30の移動に対する抵抗を増加させ得る。モータ28は、付加的動力またはトルクを生成し、増加した抵抗を克服し、ローラ30を順方向に駆動させ得る。モータ28が、閉塞によって生じた背圧に対向して回転子26を回転させるにつれて、給送セット内の圧力は、典型的には、増加するであろう。流動制御装置10は、本増加または高圧状態を使用して、閉塞が給送セット14内に存在する可能性があることを判定してもよい。例証の目的のために、非粘性流体は、約75cP未満の粘度を有するものと見なされ、粘性流体は、約75cPを上回るまたはそれと等しい粘度を有するものと見なされる。
【0019】
監視システム12は、一連の決定点およびステップを通して、正常流動または異常流動状態(すなわち、閉塞)が管類16内に存在するかどうかを判定してもよい。監視システム12は、回転子26の位置も監視しながら、モータ28に印加される電力(すなわち、電流)を変動させ、閉塞が管類16内に存在するかどうかを判定する。
【0020】
図5を参照すると、マイクロプロセッサ51は、流動制御装置10を動作させるためのコンピュータ実行可能命令を実行する。ステップ70では、マイクロプロセッサ31は、回転子26に、回転し始め、給送セット14を通して流体を送達するように命令してもよい。回転子を回転させるために、ステップ72では、マイクロプロセッサ51は、電力をモータ28に供給させ、動力を発生させてもよい。ステップ74では、動力は、回転子26が、ローラが蠕動様式で管類に係合するように管類16に係合するローラ30を有することによって、受信される。電力(「第1の出力」)は、少なくともベースライン電流が、モータに印加され、非閉塞および閉塞流動状態の両方下で回転子26を回転させるように、モータ28に供給されてもよい。回転子26が回転するにつれて、ステップ76では、マイクロプロセッサ51は、回転子センサ53に、マイクロプロセッサに回転子センサ信号の読取値を提供し、回転子の回転位置を監視するように命令してもよい。マイクロプロセッサ51は、センサ読取値をデータベース66(
図4)(広義には、「メモリ」)内に記録してもよい。
【0021】
一実施形態では、装置10は、流体を給送セット14を通して送達し、実質的に、給送サイクル全体を完了することができる。例えば、マイクロプロセッサ51は、回転子26に、単一アリコートのみの流体が回転子によって生成されるように残されるまで、回転し、流体を給送セット14を通して送達するように命令してもよい。図示される実施形態では、これは、回転子26の4分の1の転動のみが給送サイクルを完了するために残されるときとなるであろう。
【0022】
異なる数のローラを有する回転子に関して、「ホーム前位置」が、異なる場所に配置されてもよいことを理解されたい。
【0023】
ステップ78では、マイクロプロセッサ51は、回転子26に、「ホーム位置」のすぐ手前の「ホーム前位置」で回転を停止するように命令してもよい。「ホーム前位置」は、管類を挟持するための管類16への係合に先立った(すなわち、「ホーム位置」の到達に先立った)ローラ30の位置を指す。一実施形態では、「ホーム前位置」は、回転方向における先行ローラが「ホーム位置」にある、ローラ位置に対応する。マイクロプロセッサ51は、エンコーダカウントを使用して、回転子26の位置を判定し、回転子を「ホーム前位置」に正確に停止させてもよい。ステップ80では、マイクロプロセッサ51は、電力をモータ28に供給させ、再び、動力を発生させてもよい。80においてモータ28に印加される電力(「第2の出力」)は、短インクリメントでパルス化されてもよい。加えて、または代替として、70において装置10の動作を開始するために供給される電力(第1の出力)から低減された電力(第2の出力)が、モータ28に供給されてもよい。パルス化/低減された電力は、給送セット14が非閉塞流動状態を有する場合、回転子26を適正に回転させることが可能であるが、給送セットが閉塞流動状態を有する場合、回転子を適正に回転させることが不可能であり得る。ステップ82では、マイクロプロセッサ51は、回転子センサ53に、マイクロプロセッサに回転子センサ信号の読取値を提供し、回転子の回転位置を監視するように命令してもよい。
【0024】
ステップ84では、回転子センサ53が、回転子26が、所定の数もしくはパルス内に、または所定の時間量、例えば、約500ミリ秒未満、もしくは、ある場合には、流体が低粘性である場合、約200ミリ秒未満以内に、パルス化および/または低減された電力下で「ホーム位置」に到達したことを示す場合、マイクロプロセッサ51は、86において、正常非閉塞流動状態が管類16内に存在することを示し得る。しかしながら、回転子センサ53が、回転子が、所定の数のパルス内または所定の時間量内に、パルス化および/または低減された電力下で「ホーム位置」に到達しなかったことを示す場合、マイクロプロセッサ51は、88において、異常または閉塞流動状態が管類16内に存在することを示し得る。
【0025】
回転子26を「ホーム位置」まで回転させることができないモータ28は、管類16が閉塞されるとき、モータ28の能力が、完全電力下で低トルク状態にある、例えば、回転子26の回転の間に発生された背圧を克服不能である結果である。本状態では、モータ28は、回転子26を予期される速度で前進させ得ない、または回転子を全く回転させ得ず、回転子は、割り当てられたパルス数または割り当てられた周期内にホーム位置に到達しないであろう。流動制御装置10は、したがって、管類16内の圧力を直接測定するためのセンサを使用せずに、給送セット14内の閉塞を検出可能となる。
【0026】
説明される実施形態では、流動監視システム12、マイクロプロセッサ51、およびデータベース66は、広義には、「制御回路」と見なされ得ることを理解されたい。これらの構成要素は、個々に、「制御回路」と見なされ得る。さらに、他のタイプの制御回路も、本発明の範囲内で使用されてもよい。
【0027】
マイクロプロセッサ51は、異常流動状態が判定される場合、アラーム90をトリガすることと、流動制御装置10の動作を停止させ、給送セット14の修理または交換を可能にすることとのうちの少なくとも1つを実施もしくは開始する。好ましくは、アラーム90は、聴覚的、視覚的、触知的(例えば、振動)、または任意のそれらの組み合わせであってもよい。一実施形態では、アラーム90は、特定のまたは所定のメッセージをディスプレイ42上に出現させてもよい。
【0028】
管類16内の直接圧力を測定するのではなく、回転子位置に及ぼす可変モータ電流の影響が監視される、前述のプロセスは、装置が給送セット14内の流体の粘度にかかわらず、管類内の流動状態を正確に検出することを可能にする。モータからの出力を変動させ、モータが事実上低減されたモータ出力で動作するとき、回転子位置を監視することによって、装置10は、使用されている流体の粘度にかかわらず、給送セット14内の流動状態を正確に判定することができる。これは、給送セット内の圧力変化を直接測定するセンサに排他的に依拠する、システムを改良する。これらの理由から、前述の装置10およびプロセスは、装置上に搭載された給送セットの流動状態を検出するための改良されたデバイスおよび方法を提供する。
【0029】
別の実施形態では、監視システム12は、完全回転子回転またはサイクルの一部の間、モータへの電力(例えば、電流)を低減させることによって、閉塞インジケーションを提供する、または閉塞状態の間の付加的量のトルクを検出してもよい。例えば、完全回転の少なくとも一部の間、公称電力をモータに提供後、マイクロプロセッサは、完全回転の一部の残りの間、例えば、回転子回転の最後の4分の1もしくは最後の90度の角度回転の間、または第1の周期、例えば、100ミリ秒の励起周期の間等、所定の時間間隔内における次の回転の間、電力をモータに提供する。その後、マイクロプロセッサは、第2の周期、例えば、100ミリ秒の励起解除周期の間、電力を提供しない。第1の周期の間に送達される電力の量は、公称電力未満であることができる。励起および励起解除シーケンスは、回転子回転の最後の4分の1の間または次の回転の一部の間、1回またはそれを上回る回数、繰り返されることができる。代替として、電流が送達されるのではなく、モータに印加される電圧電位が、励起および励起解除シーケンスの間、公称電圧から低減されることができる。閉塞状態が存在しない場合、モータは、十分な電力を提供し、回転子を回転子センサによって検出可能な予期される位置、例えば、ホーム位置まで回転させるであろう。閉塞状態が管類16内に存在する場合、背圧が、回転子回転に対して抵抗をもたらし、これは、予期される位置までの回転子の回転を阻止するであろう。閉塞検出の確認は、シーケンスを繰り返し、回転子移動に対する抵抗の存在を検証することによって行われることができる。確認に応じて、閉塞状態の通知が、表示されることができ、アラームが、アクティブ化されることができる。ある場合には、流動制御装置はまた、非アクティブ化されることができる。
【0030】
低減される電力の量、例えば、より低い電流またはより低い電圧電位は、限定ではないが、送達されるべき流体の粘度、送達される流体のタイプ、管類のサイズ、管類の材料、回転子のサイズ、ローラの数、およびモータの設計電流引き込みのうちの任意の1つまたはそれを上回るものを含む、いくつかの要因に基づいて判定されてもよい。例えば、非粘性流体に関して、低減される電力は、公称またはベースライン電力の80%未満であることができるが、粘性流体に関して、低減される電力は、公称またはベースライン電力の約少なくとも80%であることができる。他の非限定的実施例は、公称電力の50%未満の電力低減を伴ってもよい。
【0031】
さらなる実施形態では、監視システム12は、モータへの電力をパルス化することによって、閉塞状態のインジケーションを提供する、または閉塞状態を表す付加的量のトルクを検出してもよい。
【0032】
正常動作の間、流動制御装置は、給送手技を行うとき、複数の所定の動作周期、例えば、1分周期内で動作し、流体を患者に提供する。所定の動作周期のそれぞれの間、回転子は、所定の回転率で回転し、所望の流体給送率を達成し、給送手技のために標的量の流体が送達される結果をもたらす。さらに、所定の動作周期のそれぞれの間、回転子の回転は、所定の割合の旋回、例えば、旋回の4分の1だけ中断されることができ、監視システムは、パルス化された電力をモータに提供してもよい。例えば、所定の動作周期中の最後の完全回転子回転の大部分の間に、公称電力、例えば、約5.3ボルトで約400ミリアンペアがモータに提供され、マイクロプロセッサは、最後の完全回転の一部の残りの間、例えば、回転子回転の最後の4分の1もしくは角度回転の最後の90度、または次の回転の間、パルス化された電力をモータに提供する。パルス化された電力は、例えば、第1の電力後に、第2の電力が続くことができる。第1の電力の間、マイクロプロセッサは、所定の第1の周期、例えば、励起周期の間、電流および電位をモータに提供することができる。その後、第2の電力の間、例えば、マイクロプロセッサは、第2の周期、例えば、励起解除周期の間、電力を提供しない。ある実施形態では、励起周期の間のモータへの電流および電位の大きさは、約公称電流および公称電位であることができる。励起周期の持続時間は、典型的には、所定であるが、以下の考慮点、すなわち、送達されるべき流体の粘度、送達されるべき流体が同種または異種流体である、例えば、スラリーであるかどうか、管類の物理的寸法、および管類の機械的特性のうちの任意の1つまたはそれを上回るものに照らして変動されてもよい。より低い粘度流体、より低い硬度の管類材料、およびより小さい管類サイズ、および回転子上の増加数のローラのいずれも、より短い励起周期を伴うことになるであろう。同様に、より高い粘度流体は、より長い励起周期を伴うことになるであろう。例えば、励起周期は、約2ミリ秒~約100ミリ秒の範囲内の持続時間を有することができる。ある実施例では、経腸給送ポンプは、約5ミリ秒~約20ミリ秒の範囲内の励起周期を有することができ、具体的実施形態は、約10ミリ秒の励起周期を伴う。励起解除周期は、約50ミリ秒~約500ミリ秒の範囲内の持続時間を有することができる。ある実施例では、経腸給送ポンプは、約100ミリ秒~約400ミリ秒の範囲内の励起解除周期を有することができ、具体的実施形態は、約300ミリ秒の励起周期を伴う。励起解除周期の持続時間は、回転子が回転し、管類の壁と関連付けられた力およびその中に含有される流体によって付与される内圧からのトルク平衡に近づくことを可能にするように選択される。持続時間はまた、水等の予期されるまたは標準的流体を使用して、実験的に判定されることができる。励起および励起解除周期を伴って、モータに指向される電力をパルス化することは、回転子旋回の最後の4分の1または次の旋回の一部の間、繰り返されることができる。例えば、パルス化は、5回、繰り返されることができる。いくつかの構成では、励起および励起解除周期を含むパルス化は、10回、行われることができる。例示的構成は、所定の動作周期の任意であるが、好ましくは、それぞれの間、最後の完全旋回の一部中、8回~10回、パルス化を伴うことができる。パルスの数の選択は、典型的には、励起周期および励起解除周期の個別の持続時間を判定する際に考慮されるであろうものと類似要因に依存する。実験的に判定される実施例では、パルス化された電力サイクルの数は、8~10サイクルを伴う。所定の回数の電力パルス化に続いて、監視システムは、センサにクエリし、回転子が予期される回転位置にあるかどうかを判定する。例えば、ある構成では、監視システムは、センサからの信号を比較し、回転子回転位置がホーム位置にあるローラと対応するかどうかを判定することができる。閉塞状態が存在しない場合、複数のパルスが、回転子を予期される位置まで回転させるために十分な電力を提供するであろう。閉塞状態が管類内に存在する場合、背圧力が、回転子回転に対して抵抗をもたらし、これは、回転子の回転が予期される位置にあることを阻害するであろう。閉塞状態の判定に応じて、閉塞状態の通知が、表示されることができ、随意に、可聴アラームが、アクティブ化されることができる。ある場合には、流動制御装置はまた、閉塞状態に関心を向けるための可聴または可視インジケーションの有無にかかわらず、非アクティブ化されることができる。なおもさらなる実施形態では、閉塞状態の判定は、複数の電力パルス化イベントの完了後、所定の遅延周期の間、比較の実施に遅延を伴い、該当する場合、管類の弛緩に対応することができる。例えば、判定は、例えば、ローラがホーム位置にあるかどうか、回転子の回転位置を表すセンサ信号と予期される回転位置を比較する前に、約1秒~約22秒の範囲内の遅延周期を伴うことができる。他の場合には、遅延周期は、第1のパルス化と一致して開始され、継続または複数のパルスを通して生じさせ、その後、さらなる時間周期の間、ローラが位置平衡を得ることを可能にすることができる。したがって、比較を行う前の遅延の持続時間は、電力の第1のパルス化とともに開始して、または複数のパルスの最後の後に開始して、約5秒~約15秒の範囲内であることができる。
【0033】
本発明の実施形態は、1つまたはそれを上回るコンピュータもしくは他のデバイスによって実行される、プログラムモジュール等のコンピュータ実行可能命令を用いて、実装されてもよい。コンピュータ実行可能命令は、限定ではないが、特定のタスクを行う、または特定の抽象データタイプを実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、およびデータ構造を含む、1つまたはそれを上回るコンピュータ実行可能構成要素またはモジュールの中に編成されてもよい。本発明の側面は、任意の数および編成のそのような構成要素またはモジュールを用いて、実装されてもよい。例えば、本発明の側面は、図に例証され、かつ本明細書に説明される具体的なコンピュータ実行可能命令あるいは具体的な構成要素またはモジュールに限定されない。本発明の他の実施形態は、本明細書に例証かつ説明されるよりも、多いまたは少ない機能性を有する異なるコンピュータ実行可能命令または構成要素を含んでもよい。
【0034】
さらに、本明細書に図示および説明される本発明の実施形態における動作の実行または実施の順序は、別様に規定されない限り、不可欠ではない。すなわち、動作は、別様に規定されない限り、任意の順序で行われてもよく、本発明の実施形態は、本明細書に開示されたものに対して付加的なまたはより少ない動作を含んでもよい。例えば、別の動作の前に、それと同時に、またはその後に、特定の動作を実行もしくは実施することも、本発明の側面の範囲内であることが検討される。
【0035】
動作時、マイクロプロセッサ51は、本発明の側面を実装するために、図に図示されるもの等のコンピュータ実行可能命令を実行する。本発明の側面はまた、分散型コンピューティング環境において実践されてもよく、タスクは、通信ネットワークを通してリンクされた遠隔処理デバイスによって行われる。分散型コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、メモリ記憶デバイスを含む、ローカルおよび遠隔コンピュータ記憶媒体の両方に位置してもよい。
【0036】
説明される本発明が詳細に説明されたが、修正および変形例が、添付の請求項に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、可能性として考えられることが明白であろう。例えば、本発明の側面は、流動監視システム12を含むように、以前に使用された蠕動ポンプを改造または修正することを対象とすることができる。したがって、本発明のいくつかの側面は、圧送デバイスを有する以前に使用された流動制御装置を修正する方法であって、センサから、圧送デバイスの回転子の回転位置を示すセンサ信号を受信するために、センサと通信し、圧送デバイスと通信し、その動作を制御する、制御回路を設置するステップであって、制御回路は、圧送デバイスのモータを動作させ、回転子を回転させ、給送セットに接触し、給送セットを通して流体の圧送作用を生成し、制御回路は、第1の出力では、モータを動作させ、回転子を回転させ、給送セット内に流体流動を生成し、事実上第1の出力未満の第2の出力では、モータを動作させ、第2の出力におけるモータの動作の間、センサ信号を監視し、給送セット内の流動状態を判定するように構成される、ステップを含む、方法に関することができる。
【0037】
本発明の要素またはその好ましい実施形態を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、要素の1つまたはそれを上回るものであることを意味することが意図される。用語「comprising(備える)」、「including(含む)」、および「having(有する)」は、列挙された要素以外の付加的要素が存在し得ることを含み、かつ意味することが意図される。
【0038】
上記を考慮して、本発明のいくつかの目的が達成され、かつ他の利点となる結果が獲得されることが分かるであろう。
【0039】
種々の変更が、本発明の範囲から逸脱せずに、上記の構成および方法に行なわれ得るため、上記の説明に含有され、かつ付随の図面に示される全ての内容は、例証として解釈され、限定的な意味でないことが意図される。