(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】水道用仕切弁及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/50 20060101AFI20240319BHJP
F16K 31/44 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F16K31/50 A
F16K31/44 B
(21)【出願番号】P 2019223049
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根路銘 良介
(72)【発明者】
【氏名】森村 克
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-189680(JP,U)
【文献】特開昭62-113987(JP,A)
【文献】特開平06-264985(JP,A)
【文献】実開昭58-050375(JP,U)
【文献】特開2006-046532(JP,A)
【文献】特開2004-197800(JP,A)
【文献】実開昭62-117372(JP,U)
【文献】実開昭62-093479(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素を含む水道水が流れる水道管に設置されて前記水道水の圧力が印加される状態で使用される水道用仕切弁であって、前記水道用仕切弁は、
弁体本体部とナット部とを含む弁体と、
弁棒と、
前記水道水に対する防錆被膜と、
グリースで形成されている潤滑被膜とを備え、
前記ナット部の孔の表面にめねじ部が形成されており、
前記弁棒の表面に、前記めねじ部に螺合するおねじ部が形成されており、
前記防錆被膜は、フッ素樹脂で形成されており、
前記防錆被膜は、前記めねじ部及び前記おねじ部の少なくとも一つに形成されており、
前記潤滑被膜は、前記めねじ部と前記おねじ部との間かつ前記防錆被膜上に
積層されて
おり、
前記グリースは、前記水道水の流路とは反対側の前記ナット部の頂面上にさらに形成されており、
前記ナット部の前記頂面上に形成されている前記グリースは、前記弁棒または前記弁棒上に形成されている前記防錆被膜に接触している、水道用仕切弁。
【請求項2】
前記めねじ部と前記おねじ部との間に形成されているすき間は、前記防錆被膜及び前記潤滑被膜で充填されている、請求項1に記載の水道用仕切弁。
【請求項3】
前記フッ素樹脂は、テフロン(登録商標)である、請求項1または請求項2に記載の水道用仕切弁。
【請求項4】
前記防錆被膜は、前記おねじ部の全体に形成されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水道用仕切弁。
【請求項5】
前記グリースのちょう度は、175(1/cm)以上250(1/cm)以下である、請求項
1から請求項4のいずれか一項に記載の水道用仕切弁。
【請求項6】
塩素を含む水道水が流れる水道管に設置されて前記水道水の圧力が印加される状態で使用される水道用仕切弁であって、前記水道用仕切弁は、
弁体本体部とナット部とを含む弁体と、
弁棒と、
前記水道水に対する防錆被膜と、
グリースで形成されている潤滑被膜とを備え、
前記ナット部の孔の表面にめねじ部が形成されており、
前記弁棒の表面に、前記めねじ部に螺合するおねじ部が形成されており、
前記防錆被膜は、フッ素樹脂で形成されており、
前記防錆被膜は、前記めねじ部及び前記おねじ部の少なくとも一つに形成されており、
前記潤滑被膜は、前記めねじ部と前記おねじ部との間かつ前記防錆被膜上に積層されており、
前記おねじ部は、第1領域と、第2領域とを含み、
前記弁体本体部が
前記水道水の流路を全て閉塞する際に、前記おねじ部の前記第1領域は前記めねじ部に螺合しており、
前記弁体本体部が前記流路を全て開放する際に、前記おねじ部の前記第2領域は前記めねじ部に螺合しており、
前記第1領域上に形成されている前記潤滑被膜の第1厚さは、前記第2領域上に形成されている前記潤滑被膜の第2厚さより大きい
、水道用仕切弁。
【請求項7】
塩素を含む水道水が流れる水道管に設置されて前記水道水の圧力が印加される状態で使用される水道用仕切弁であって、前記水道用仕切弁は、
弁体本体部とナット部とを含む弁体と、
弁棒と、
前記水道水に対する防錆被膜と、
グリースで形成されている潤滑被膜とを備え、
前記ナット部の孔の表面にめねじ部が形成されており、
前記弁棒の表面に、前記めねじ部に螺合するおねじ部が形成されており、
前記防錆被膜は、フッ素樹脂で形成されており、
前記防錆被膜は、前記めねじ部及び前記おねじ部の少なくとも一つに形成されており、
前記潤滑被膜は、前記めねじ部と前記おねじ部との間かつ前記防錆被膜上に積層されており、
前記おねじ部は、第1領域と、第2領域とを含み、
前記弁体本体部が
前記水道水の流路を全て閉塞する際に、前記おねじ部の前記第1領域は前記めねじ部に螺合しており、
前記弁体本体部が前記流路を全て開放する際に、前記おねじ部の前記第2領域は前記めねじ部に螺合しており、
前記第2領域上に形成されている前記潤滑被膜の第2厚さは、前記第1領域上に形成されている前記潤滑被膜の第1厚さより大きい
、水道用の仕切弁。
【請求項8】
塩素を含む水道水が流れる水道管に設置されて前記水道水の圧力が印加される状態で使用される水道用仕切弁の製造方法であって、前記水道用仕切弁の製造方法は、
めねじ部及びおねじ部の少なくとも一つに
、グリースで形成されている潤滑剤を施すことを備え、前記めねじ部はナット部の孔の表面に形成されており、弁体は、弁体本体部と前記ナット部とを含み、前記おねじ部は弁棒の表面に形成されており、
前記水道水に対する防錆被膜が前記めねじ部及び前記おねじ部の少なくとも一つに形成されており、
前記おねじ部を前記めねじ部に螺合させながら、前記ナット部を前記弁棒に対して相対移動させることによって、前記潤滑剤を引き延ばして、前記めねじ部と前記おねじ部との間かつ前記防錆被膜上に潤滑被膜を
積層することとを備
え、
前記防錆被膜は、フッ素樹脂で形成されており、
前記グリースは、前記水道水の流路とは反対側の前記ナット部の頂面上にさらに形成されており、
前記ナット部の前記頂面上に形成されている前記グリースは、前記弁棒または前記弁棒上に形成されている前記防錆被膜に接触している、水道用仕切弁の製造方法。
【請求項9】
前記潤滑剤は、前記おねじ部に施されている、請求項
8に記載の水道用仕切弁の製造方法。
【請求項10】
塩素を含む水道水が流れる水道管に設置されて前記水道水の圧力が印加される状態で使用される水道用仕切弁の製造方法であって、前記水道用仕切弁の製造方法は、
めねじ部及びおねじ部の少なくとも一つに、グリースで形成されている潤滑剤を施すことを備え、前記めねじ部はナット部の孔の表面に形成されており、弁体は、弁体本体部と前記ナット部とを含み、前記おねじ部は弁棒の表面に形成されており、前記水道水に対する防錆被膜が前記めねじ部及び前記おねじ部の少なくとも一つに形成されており、
前記おねじ部を前記めねじ部に螺合させながら、前記ナット部を前記弁棒に対して相対移動させることによって、前記潤滑剤を引き延ばして、前記めねじ部と前記おねじ部との間かつ前記防錆被膜上に潤滑被膜を積層することとを備え、
前記防錆被膜は、フッ素樹脂で形成されており、
前記潤滑剤は、前記おねじ部の第1領域に施され、
前記ナット部を前記弁棒に対して相対移動させることは、前記弁棒の前記おねじ部の前記第1領域から前記弁棒の前記おねじ部の第2領域まで、前記ナット部を前記弁棒に対して相対移動させることを含み、
前記弁体本体部が
前記水道水の流路を全て閉塞する際に、前記おねじ部の前記第1領域は前記めねじ部に螺合しており、
前記弁体本体部が前記流路を全て開放する際に、前記おねじ部の前記第2領域は前記めねじ部に螺合して
おり、
前記第1領域上に形成されている前記潤滑被膜の第1厚さは、前記第2領域上に形成されている前記潤滑被膜の第2厚さより大きい、水道用仕切弁の製造方法。
【請求項11】
塩素を含む水道水が流れる水道管に設置されて前記水道水の圧力が印加される状態で使用される水道用仕切弁の製造方法であって、前記水道用仕切弁の製造方法は、
めねじ部及びおねじ部の少なくとも一つに、グリースで形成されている潤滑剤を施すことを備え、前記めねじ部はナット部の孔の表面に形成されており、弁体は、弁体本体部と前記ナット部とを含み、前記おねじ部は弁棒の表面に形成されており、前記水道水に対する防錆被膜が前記めねじ部及び前記おねじ部の少なくとも一つに形成されており、
前記おねじ部を前記めねじ部に螺合させながら、前記ナット部を前記弁棒に対して相対移動させることによって、前記潤滑剤を引き延ばして、前記めねじ部と前記おねじ部との間かつ前記防錆被膜上に潤滑被膜を積層することとを備え、
前記防錆被膜は、フッ素樹脂で形成されており、
前記潤滑剤は、前記おねじ部の第2領域に施されており、
前記ナット部を前記弁棒に対して相対移動させることは、前記弁棒の前記おねじ部の前記第2領域から前記弁棒の前記おねじ部の第1領域まで、前記ナット部を前記弁棒に対して相対移動させることを含み、
前記弁体本体部が
前記水道水の流路を全て閉塞する際に、前記おねじ部の前記第1領域は前記めねじ部に螺合しており、
前記弁体本体部が前記流路を全て開放する際に、前記おねじ部の前記第2領域は前記めねじ部に螺合して
おり、
前記第2領域上に形成されている前記潤滑被膜の第2厚さは、前記第1領域上に形成されている前記潤滑被膜の第1厚さより大きい、水道用仕切弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道用仕切弁及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-74662号公報(特許文献1)は、仕切弁を開示している。仕切弁は、流路が形成されている弁箱と、めねじこまを含む弁体と、弁棒とを備えている。めねじこまの表面には、めねじが形成されている。弁棒の表面には、おねじが形成されている。弁棒は、めねじこまに螺合している。弁棒を回転させることによって、弁体は、弁棒に沿って移動して、流路を開放または閉塞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仕切弁は、断水作業、通水作業またはメンテナンス作業等の際に操作される。しかし、仕切弁には、何年も操作されないものがある。長期間にわたって操作されていない仕切弁の中には、仕切弁の操作トルクが上昇して、仕切弁の操作性が低下するものや、仕切弁が操作不能となるものがある。本出願人は、仕切弁の操作性が低下したり仕切弁が操作不能となる原因が、弁棒のおねじとめねじこまのめねじとの係合部に発生する腐食であることを突きとめた。
【0005】
具体的には、仕切弁を水道管に設置すると、弁棒のおねじとめねじこまのめねじとの間に形成されているすき間に水道水が浸入する。弁棒のおねじとめねじこまのめねじとの間に酸素の濃淡電池が形成される。弁棒のおねじとめねじこまのめねじとの係合部に腐食が発生する。長期間にわたって、仕切弁が操作されずかつ仕切弁のメンテナンスが行われない場合、この係合部における腐食は進展して、係合部に錆が発生する。錆は時間の経過とともに成長して、弁棒のおねじとめねじこまのめねじとは互いに固着する。弁棒に対してめねじこまを動かすことができず、仕切弁を操作することができなくなる。そして、水道水には水を消毒するための塩素が含まれている。水道水は、弁棒のおねじとめねじこまのめねじとの係合部における腐食及び錆の発生及び成長を促進する。
【0006】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンスの頻度を低減させることができるとともに、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする水道用仕切弁及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水道用仕切弁は、弁体と、弁棒と、フッ素樹脂で形成されている防錆被膜と、潤滑被膜とを備える。弁体は、弁体本体部とナット部とを含む。ナット部の孔の表面にめねじ部が形成されている。弁棒の表面に、めねじ部に螺合するおねじ部が形成されている。防錆被膜は、めねじ部及びおねじ部の少なくとも一つに形成されている。潤滑被膜は、めねじ部とおねじ部との間かつ防錆被膜上に形成されている。
【0008】
本発明の水道用仕切弁の製造方法は、めねじ部及びおねじ部の少なくとも一つに潤滑剤を施すことを備える。めねじ部は、ナット部の孔の表面に形成されている。弁体は、弁体本体部と、ナット部とを含む。おねじ部は、弁棒の表面に形成されている。フッ素樹脂で形成されている防錆被膜が、めねじ部及びおねじ部の少なくとも一つに形成されている。本実施の形態の水道用仕切弁の製造方法は、おねじ部をめねじ部に螺合させながら、ナット部を弁棒に対して相対移動させることによって、潤滑剤を引き延ばして、めねじ部とおねじ部との間かつ防錆被膜上に潤滑被膜を形成することを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水道用仕切弁は、水道用仕切弁のメンテナンスの頻度を低減させることができるとともに、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする。
【0010】
本発明の水道用仕切弁の製造方法によれば、メンテナンスの頻度を低減させることができるとともに、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする水道用仕切弁が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1の水道用仕切弁の概略斜視図である。
【
図2】実施の形態1の水道用仕切弁(全閉状態)の概略断面図である。
【
図3】実施の形態1の水道用仕切弁(全開状態)の概略断面図である。
【
図4】実施の形態1の水道用仕切弁に含まれるナット部の概略部分拡大断面図である。
【
図5】実施の形態1の水道用仕切弁に含まれる弁棒及びナット部の模式的断面図である。
【
図6】実施の形態1の水道用仕切弁の製造方法の一工程を示す模式的断面図である。
【
図7】実施の形態1の水道用仕切弁の製造方法における、
図6に示される工程の次工程を示す模式的断面図である。
【
図8】実施の形態1の水道用仕切弁の製造方法における、
図7に示される工程の次工程を示す模式的断面図である。
【
図9】実施の形態1の水道用仕切弁の製造方法における、
図8に示される工程の次工程を示す模式的断面図である。
【
図10】実施の形態2の水道用仕切弁に含まれる弁棒及びナット部の模式的断面図である。
【
図11】実施の形態2の水道用仕切弁の製造方法の一工程を示す模式的断面図である。
【
図12】実施の形態2の水道用仕切弁の製造方法における、
図11に示される工程の次工程を示す模式的断面図である。
【
図13】実施の形態2の水道用仕切弁の製造方法における、
図12に示される工程の次工程を示す模式的断面図である。
【
図14】実施の形態3の水道用仕切弁に含まれる弁棒及びナット部の模式的断面図である。
【
図15】実施の形態4の水道用仕切弁に含まれる弁棒及びナット部の模式的断面図である。
【
図16】実施の形態5の水道用仕切弁に含まれる弁棒及びナット部の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0013】
(実施の形態1)
図1から
図5を参照して、実施の形態1の水道用仕切弁1を説明する。水道用仕切弁1は、弁箱14と、弁体13と、弁棒12と、防錆被膜3と、潤滑被膜6とを主に備える。
【0014】
弁箱14は、球状黒鉛鋳鉄(例えば、FCD450-10)のような鋳鉄で形成されている。弁箱14には、流路24が形成されている。流路24には、水道水が流れる。水道水は、水を消毒するための塩素を含んでいる。弁箱14の上面の一部には、開口14aが設けられている。弁箱14の内面には、突起18(
図1を参照)が設けられている。
【0015】
弁体13は、弁体本体部15と、ナット部22とを含む。弁体本体部15は、球状黒鉛鋳鉄(例えば、FCD450-10)のような鋳鉄で形成されている。弁体本体部15には、弁棒12が挿入される孔20が形成されている。弁体本体部15の両側部に、案内溝17(
図1を参照)が形成されている。弁箱14の突起18が案内溝17に挿入されている。弁箱14の突起18と弁体本体部15の案内溝17とは、弁体13を案内溝17に沿って案内する。孔20の上部に、スロット21が設けられている。
【0016】
ナット部22は、スロット21に挿入されている。ナット部22は、例えば、めねじこまである。ナット部22は、例えば、真ちゅう(例えば、C3771)で形成されている。
図4に示されるように、ナット部22は、流路24から遠位する頂面22aと、流路24に近位する底面22bとを含む。ナット部22には、頂面22aと底面22bとを接続する孔28が設けられている。ナット部22の孔28の表面に、めねじ部28aが形成されている。
【0017】
図2及び
図3に示されるように、弁体13は、弁体本体部15の表面を被覆するゴムライニング16をさらに含んでもよい。ゴムライニング16は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)で形成されている。ゴムライニング16で被覆された弁体本体部15を含む水道用仕切弁1は、ソフトシール弁である。
【0018】
弁棒12は、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS403)で形成されている。弁棒12の表面に、おねじ部12aが形成されている。弁棒12のおねじ部12aは、ナット部22のめねじ部28aに螺合する。
図5に示されるように、おねじ部12aは、第1領域12fと、第2領域12gとを含む。
図2に示されるように弁体本体部15が水道水の流路24を全て閉塞する際に、おねじ部12aの第1領域12fはめねじ部28aに螺合している。
図3に示されるように弁体本体部15が流路24を全て開放する際に、おねじ部12aの第2領域12gはめねじ部28aに螺合している。水道用仕切弁1は、例えば、全閉状態(
図2及び
図5を参照)で水道管に設置される。弁棒12は、おねじ部12aの上方に形成されているフランジ32を含む。
【0019】
水道用仕切弁1は、蓋37をさらに備える。蓋37は、筒形状を有しており、弁箱14に固定されている。蓋37は、例えば、球状黒鉛鋳鉄(例えば、FCD450-10)のような鋳鉄で形成されている。蓋37は、支持板33を含む。支持板33は、弁棒12のフランジ32を、回転自在に支持している。支持板33は、流路24に近位する下面33aと、流路24から遠位する上面33bとを含む。支持板33には、下面33aと上面33bと接続する孔33cが設けられている。弁棒12は、孔33cに挿入されている。
【0020】
水道用仕切弁1は、シール部材34と、ブッシュ35と、保護カバー36と、Oリング38とをさらに備える。シール部材34は、フランジ32と支持板33との間に設けられている。シール部材34は、例えば、樹脂製である。シール部材34は、リング形状を有している。弁棒12は、シール部材34に挿入されている。ブッシュ35は、蓋37の内部のうちフランジ32に対して流路24とは反対側のスペースに設けられている。ブッシュ35は、例えば、真ちゅう(例えば、C3771)のような金属、または、ポリアセタール樹脂(POM)のような樹脂で形成されている。フランジ32よりも上方の弁棒12の部分は、ブッシュ35に挿入されている。ブッシュ35と弁棒12との間には、Oリング38が設けられている。シール部材34、ブッシュ35及びOリング38は、流路24を流れる水道水が蓋37から漏れ出すことを防止する。保護カバー36が、蓋37の上端に設けられている。
【0021】
図5に示されるように、防錆被膜3は、ナット部22のめねじ部28a及び弁棒12のおねじ部12aの少なくとも一つに形成されている。本実施の形態では、ナット部22は、例えば、真ちゅう(例えば、C3771)で形成されているのに対し、弁棒12は、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS403)で形成されているため、弁棒12は、ナット部22よりも、塩素を含む水道水に対して腐食しやすい。そこで、本実施の形態では、防錆被膜3は、おねじ部12aに形成されている。特定的には、防錆被膜3は、例えば、おねじ部12aの全体に形成されている。防錆被膜3は、防錆被膜3が形成される弁棒12及びナット部22の少なくとも一つよりも、塩素を含む水道水に対して錆びにくい膜である。
【0022】
防錆被膜3は、フッ素樹脂で形成されている。フッ素樹脂は、例えば、テフロン(登録商標)である。テフロン(登録商標)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、もしくは、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、または、これらのいかなる組み合わせを意味する。
【0023】
図5に示されるように、潤滑被膜6は、めねじ部28aとおねじ部12aとの間かつ防錆被膜3上に形成されている。潤滑被膜6は、防錆被膜3の少なくとも一部を覆っている。めねじ部28aとおねじ部12aとの間に形成されているすき間は、防錆被膜3及び潤滑被膜6で充填されてもよい。特定的には、潤滑被膜6は、防錆被膜3の全体を覆っている。弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部以外のおねじ部12aの部分は、潤滑被膜6から露出してもよい。弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部以外の防錆被膜3の部分は、潤滑被膜6から露出してもよい。潤滑被膜6は、ナット部22が弁棒12に対して滑らかに移動することを可能にする。
【0024】
潤滑被膜6は、例えば、東レ・ダウコーニング社製のモリコート(登録商標) 111コンパウンドのようなグリースで形成されている。グリースのちょう度は、175(1/cm)以上250(1/cm)以下である。本明細書のグリースのちょう度は、JIS K 2220(2013)の規格によって定義される。例えば、モリコート(登録商標) 111コンパウンドのちょう度は、200である。
【0025】
第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さは、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さより大きい。潤滑被膜6において、第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さが最も大きく、かつ、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さが最も小さくてもよい。特定的には、潤滑被膜6の厚さは、第1領域12fから第2領域12gに向かうにつれて次第に減少している。めねじ部28aとおねじ部12aの第1領域12fとの間に形成されているすき間は、防錆被膜3及び潤滑被膜6で充填されてもよい。
【0026】
潤滑剤5は、水道水の流路24とは反対側のナット部22の頂面22a上にさらに形成されている。潤滑剤5は、例えば、潤滑被膜6と同じ材料で形成されている。ナット部22の頂面22a上に形成されている潤滑剤5は、弁棒12または弁棒12上に形成されている防錆被膜3に接触している。
【0027】
本実施の形態の水道用仕切弁1の動作を説明する。
【0028】
操作者が弁棒12を一方向(閉弁方向)に回転させると、ナット部22が弁棒12に対して下方向に移動する。弁体本体部15も、弁棒12に対して下方向に移動する。
図2に示されるように、弁体13が弁箱14の内面に押し付けられて、流路24が全閉される。
【0029】
操作者が弁棒12を他方向(開弁方向)に回転させると、ナット部22が弁棒12に対して上方向に移動する。弁体本体部15も、弁棒12に対して上方向に移動する。
図3に示されるように、弁体13の上端部が支持板33の下面33aに当接して、流路24が全開される。
【0030】
図6から
図9を参照して、実施の形態1の水道用仕切弁1の製造方法を説明する。
【0031】
図6を参照して、ナット部22のめねじ部28a及び弁棒12のおねじ部12aの少なくとも一つに、フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3を施す。本実施の形態では、防錆被膜3は、おねじ部12aに施されている。フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3は、例えば、スプレー塗装法を用いて、弁棒12のおねじ部12aに形成される。防錆被膜3は、ディッピング法または流動浸漬法を用いて、弁棒12のおねじ部12aに形成されてもよい。
【0032】
図7を参照して、めねじ部28a及びおねじ部12aの少なくとも一つに潤滑剤5を施す。本実施の形態では、潤滑剤5は、おねじ部12aに施されている。より具体的には、潤滑剤5は、おねじ部12aの第1領域12fに施されている。例えば、東レ・ダウコーニング社製のモリコート(登録商標)のようなグリースを、おねじ部12aの第1領域12fに塗布する。
【0033】
図8及び
図9に示されるように、本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法は、おねじ部12aをめねじ部28aに螺合させながら、ナット部22を弁棒12に対して相対移動させる。具体的には、
図8に示されるように、弁棒12のおねじ部12aの第1領域12fにナット部22を螺合させる。潤滑剤5が、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの間に引き延ばされる。潤滑剤5は、水道水の流路24とは反対側のナット部22の頂面22a上にも形成される。ナット部22の頂面22a上に形成されている潤滑剤5は、弁棒12または弁棒12上に形成されている防錆被膜3に接触している。
【0034】
それから、弁棒12のおねじ部12aの第1領域12fから第2領域12gまで、ナット部22を弁棒12に対して相対移動させる。ナット部22を弁棒12に対して相対移動させる際に、ナット部22の頂面22a上にある潤滑剤5が弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に噛み込まれる。潤滑剤5が、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの間に引き延ばされる。こうして、めねじ部28aとおねじ部12aとの間かつ防錆被膜3上に、潤滑被膜6が形成される。潤滑被膜6は、おねじ部12aの第1領域12fから第2領域12gにわたって、防錆被膜3上に形成される。
【0035】
第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さは、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さより大きい。潤滑被膜6において、第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さが最も大きく、かつ、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さが最も小さくてもよい。特定的には、潤滑被膜6の厚さは、第1領域12fから第2領域12gに向かうにつれて次第に減少している。めねじ部28aとおねじ部12aの第1領域12fとの間に形成されているすき間は、防錆被膜3及び潤滑被膜6で充填されてもよい。
【0036】
本実施の形態の水道用仕切弁1及びその製造方法の効果を説明する。
【0037】
本実施の形態の水道用仕切弁1は、弁体13と、弁棒12と、フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3と、潤滑被膜6とを備える。弁体13は、弁体本体部15とナット部22とを含む。ナット部22の孔28の表面にめねじ部28aが形成されている。弁棒12の表面に、めねじ部28aに螺合するおねじ部12aが形成されている。防錆被膜3は、めねじ部28a及びおねじ部12aの少なくとも一つに形成されている。潤滑被膜6は、めねじ部28aとおねじ部12aとの間かつ防錆被膜3上に形成されている。
【0038】
防錆被膜3が、ナット部22のめねじ部28a及び弁棒12のおねじ部12aの少なくとも一つに形成されているため、弁棒12とナット部22とが塩素を含む水道水に長期間曝されても、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に発生する腐食を防止するまたは低減させることができる。また、潤滑被膜6は防錆被膜3上に形成されているため、防錆被膜3は潤滑被膜6によって保護されて、防錆被膜3の腐食及び劣化が防止されるまたは低減される。そのため、水道用仕切弁1を長期間メンテナンスしなくても、弁棒12に対してナット部22を容易に動かすことができる。水道用仕切弁1のメンテナンスの頻度を減少させることができる。または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1を提供することができる。
【0039】
防錆被膜3はフッ素樹脂で形成されている。フッ素樹脂は、塩素を含む水道水との反応性が極めて低い。そのため、防錆被膜3が塩素を含む水道水と反応することによって生ずる異物(例えば、黒色物質など)が、水道水に混入することが防止される。水道用仕切弁1は、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする。
【0040】
本実施の形態の水道用仕切弁1では、ナット部22のめねじ部28aと弁棒12のおねじ部12aとの間に形成されているすき間は、防錆被膜3及び潤滑被膜6で充填されている。防錆被膜3及び潤滑被膜6は、ナット部22のめねじ部28aと弁棒12のおねじ部12aとの間に形成されているすき間に水道水が浸入することを防止する。弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に腐食が発生することが防止され得る。水道用仕切弁1のメンテナンスの頻度を減少させることができる。または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1を提供することができる。水道用仕切弁1は、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする。
【0041】
本実施の形態の水道用仕切弁1では、フッ素樹脂は、テフロン(登録商標)である。そのため、水道用仕切弁1のメンテナンスの頻度を減少させることができる。または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1を提供することができる。水道用仕切弁1は、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする。
【0042】
本実施の形態の水道用仕切弁1では、防錆被膜3は、おねじ部12aの全体に形成されている。そのため、弁棒12に対するナット部22の位置がいずれであっても、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に発生する腐食を防止するまたは低減させることができる。また、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部以外の弁棒12の部分に発生する腐食を防止するまたは低減させることができる。水道用仕切弁1のメンテナンスの頻度を減少させることができる。または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1を提供することができる。
【0043】
本実施の形態の水道用仕切弁1では、潤滑被膜6は、グリースで形成されている。そのため、潤滑被膜6は防錆被膜3上に容易に形成され得る。水道用仕切弁1のメンテナンスの頻度を減少させることができる。または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1を提供することができる。水道用仕切弁1は、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする。
【0044】
本実施の形態の水道用仕切弁1では、グリースのちょう度は、175(1/cm)以上250(1/cm)以下である。そのため、弁棒12に対するグリースの付着力が高い。グリースは、弁棒12に対して長期間にわたって付着し続ける。グリースは、長期間にわたって、防錆被膜3を保護し続ける。そのため、水道用仕切弁1のメンテナンスの頻度を減少させることができる。または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1を提供することができる。水道用仕切弁1は、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする。
【0045】
本実施の形態の水道用仕切弁1では、グリースは、水道水の流路24とは反対側のナット部22の頂面22a上にさらに形成されている。ナット部22の頂面22a上に形成されているグリースは、弁棒12または弁棒12上に形成されている防錆被膜3に接触している。そのため、水道用仕切弁1を操作して、弁体13を弁棒12に対して移動させる時に、ナット部22の頂面22a上にあるグリースが弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に噛み込まれる。弁体13が弁棒12に対して滑らかに移動するため、水道用仕切弁1の操作が容易になる。
【0046】
本実施の形態の水道用仕切弁1では、おねじ部12aは、第1領域12fと、第2領域12gとを含む。弁体本体部15が水道水の流路24を全て閉塞する際に、おねじ部12aの第1領域12fはめねじ部28aに螺合している。弁体本体部15が流路24を全て開放する際に、おねじ部12aの第2領域12gはめねじ部28aに螺合している。第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さは、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さより大きい。
【0047】
弁体本体部15が水道水の流路24を閉塞する位置にあるときには、水道水の圧力が弁体本体部15に印加される。そのため、弁体本体部15が水道水の流路24を閉塞する位置にあるときに弁体本体部15を移動させるために弁棒12に印加される第1トルクは、弁体本体部15が水道水の流路24を開放する位置にあるときに弁体本体部15を移動させるために弁棒12に印加される第2トルクより大きい。第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さは、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さより大きいため、弁体本体部15が水道水の流路24を閉塞する位置にあるときに、おねじ部12aとめねじ部28aとの間の摩擦が小さくなって、弁体本体部15を容易に移動させることができる。また、おねじ部12aとめねじ部28aとの間の摩擦が小さくなるため、弁体本体部15を全閉位置(
図2)に向けて容易かつ確実に移動させることができる。水道用仕切弁1の止水性を向上させることができる。
【0048】
第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さが相対的に大きいため、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの間に形成されているすき間への水道水の浸入が防止されるまたは減少する。弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に発生する腐食を防止するまたは低減させることができる。水道用仕切弁1のメンテナンスの頻度を減少させることができる。または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1を提供することができる。水道用仕切弁1は、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする。
【0049】
本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法は、めねじ部28a及びおねじ部12aの少なくとも一つに潤滑剤5を施すことを備える。めねじ部28aは、ナット部22の孔28の表面に形成されている。弁体13は、弁体本体部15と、ナット部22とを含む。おねじ部12aは、弁棒12の表面に形成されている。フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3が、めねじ部28a及びおねじ部12aの少なくとも一つに形成されている。本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法は、おねじ部12aをめねじ部28aに螺合させながら、ナット部22を弁棒12に対して相対移動させることによって、潤滑剤5を引き延ばして、めねじ部28aとおねじ部12aとの間かつ防錆被膜3上に潤滑被膜6を形成することを備える。
【0050】
防錆被膜3が、ナット部22のめねじ部28a及び弁棒12のおねじ部12aの少なくとも一つに形成されているため、弁棒12とナット部22とが塩素を含む水道水に長期間曝されても、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に発生する腐食を防止するまたは低減させることができる。また、潤滑被膜6が防錆被膜3上に形成されているため、防錆被膜3は潤滑被膜6によって保護されて、防錆被膜3の腐食及び劣化が防止されるまたは低減される。そのため、水道用仕切弁1を長期間メンテナンスしなくても、弁棒12に対してナット部22を容易に動かすことができる。本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法によれば、メンテナンスの頻度を減少させることができる、または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1が得られる。
【0051】
防錆被膜3はフッ素樹脂で形成されている。フッ素樹脂は、塩素を含む水道水との反応性が極めて低い。そのため、防錆被膜3が塩素を含む水道水と反応することによって生ずる異物(例えば、黒色物質など)が、水道水に混入することが防止される。本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法によれば、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする水道用仕切弁1が得られる。
【0052】
本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法では、水道用仕切弁1を組み立てる工程の一つとして行われる弁を移動させる工程において、潤滑剤5は引き延ばされる。水道用仕切弁1の製造方法は、水道用仕切弁1の組み立て作業の効率化を図ることができる。
【0053】
本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法では、潤滑剤5は、おねじ部12aに施されている。本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法によれば、メンテナンスの頻度を減少させることができる、または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1が得られる。本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法によれば、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする水道用仕切弁1が得られる。
【0054】
本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法では、潤滑剤5は、おねじ部12aの第1領域12fに施される。ナット部22を弁棒12に対して相対移動させることは、弁棒12のおねじ部12aの第1領域12fから第2領域12gまで、ナット部22を弁棒12に対して相対移動させることを含む。弁体本体部15が水道水の流路24を全て閉塞する際に、おねじ部12aの第1領域12fはめねじ部28aに螺合している。弁体本体部15が流路24を全て開放する際に、おねじ部12aの第2領域12gはめねじ部28aに螺合している。
【0055】
弁体本体部15が水道水の流路24を閉塞する位置にあるときには、水道水の圧力が弁体本体部15に印加される。そのため、弁体本体部15が水道水の流路24を閉塞する位置にあるときに弁体本体部15を移動させるために弁棒12に印加される第1トルクは、弁体本体部15が水道水の流路24を開放する位置にあるときに弁体本体部15を移動させるために弁棒12に印加される第2トルクより大きい。本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法によれば、第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さは、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さより大きくなる。そのため、弁体本体部15が水道水の流路24を閉塞する位置にあるときに、おねじ部12aとめねじ部28aとの間の摩擦が小さくなって、弁体本体部15を容易に移動させることができる。また、おねじ部12aとめねじ部28aとの間の摩擦が小さくなるため、弁体本体部15を全閉位置(
図2)に向けて容易かつ確実に移動させることができる。水道用仕切弁1の止水性を向上させることができる。
【0056】
第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さが相対的に大きいため、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの間に形成されているすき間への水道水の浸入が防止されるまたは減少する。弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に発生する腐食を防止するまたは低減させることができる。本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法によれば、メンテナンスの頻度を減少させることができる、または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1が得られる。本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法によれば、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする水道用仕切弁1が得られる。
【0057】
本実施の形態の水道用仕切弁1の製造方法によれば、潤滑剤5はナット部22の頂面22a上にさらに形成されるとともに、ナット部22の頂面22a上に形成されているグリースは弁棒12または弁棒12上に形成されている防錆被膜3に接触する。そのため、水道用仕切弁1を操作して、弁体13を弁棒12に対して移動させる時に、ナット部22の頂面22a上にあるグリースが弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に噛み込まれる。弁体13が弁棒12に対して滑らかに移動するため、水道用仕切弁1の操作が容易になる。
【0058】
(実施の形態2)
図10を参照して、実施の形態2の水道用仕切弁1bを説明する。本実施の形態の水道用仕切弁1bは、実施の形態1の水道用仕切弁1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0059】
水道用仕切弁1bは、例えば、全開状態(
図3及び
図10を参照)で水道管に設置される。具体的には、おねじ部12aの第2領域12gはめねじ部28aに螺合している。
【0060】
本実施の形態では、第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さは、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さより小さい。潤滑被膜6において、第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さが最も小さく、かつ、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さが最も大きくてもよい。特定的には、潤滑被膜6の厚さは、第2領域12gから第1領域12fに向かうにつれて次第に減少している。めねじ部28aとおねじ部12aの第2領域12gとの間に形成されているすき間は、防錆被膜3及び潤滑被膜6で充填されてもよい。
【0061】
図10から
図13を参照して、実施の形態2の水道用仕切弁1bの製造方法を説明する。
【0062】
図11を参照して、実施の形態1と同様に、ナット部22のめねじ部28a及び弁棒12のおねじ部12aの少なくとも一つに、フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3を施す。本実施の形態では、防錆被膜3は、おねじ部12aに施されている。
【0063】
図11を参照して、めねじ部28a及びおねじ部12aの少なくとも一つに潤滑剤5を施す。本実施の形態では、潤滑剤5は、おねじ部12aに施されている。より具体的には、潤滑剤5は、おねじ部12aの第2領域12gに施されている。例えば、東レ・ダウコーニング社製のモリコート(登録商標) 111コンパウンドのようなグリースを、おねじ部12aの第2領域12gに塗布する。
【0064】
それから、弁棒12のおねじ部12aの第1領域12fにナット部22を螺合させる。
図12に示されるように、おねじ部12aの第1領域12fから第2領域12gまで、ナット部22を弁棒12に対して相対移動させる。潤滑剤5が、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの間に引き延ばされる。潤滑剤5は、水道水の流路24とは反対側のナット部22の頂面22a上にも形成される。ナット部22の頂面22a上に形成されている潤滑剤5は、弁棒12または弁棒12上に形成されている防錆被膜3に接触している。
【0065】
図13に示されるように、本実施の形態の水道用仕切弁1bの製造方法は、おねじ部12aをめねじ部28aに螺合させながら、ナット部22を弁棒12に対して相対移動させる。具体的には、おねじ部12aの第2領域12gから第1領域12fまで、ナット部22を弁棒12に対して相対移動させる。ナット部22を弁棒12に対して相対移動させる際に、ナット部22の頂面22a上にある潤滑剤5が弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に噛み込まれる。潤滑剤5が、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの間に引き延ばされる。こうして、めねじ部28aとおねじ部12aとの間かつ防錆被膜3上に、潤滑被膜6が形成される。
【0066】
第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さは、第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さより大きい。潤滑被膜6において、第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さが最も小さく、かつ、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さが最も大きくてもよい。特定的には、潤滑被膜6の厚さは、第1領域12fから第2領域12gに向かうにつれて次第に増加している。めねじ部28aとおねじ部12aの第2領域12gとの間に形成されているすき間は、防錆被膜3及び潤滑被膜6で充填されてもよい。
【0067】
それから、おねじ部12aの第1領域12fから第2領域12gまで、ナット部22を弁棒12に対して相対移動させる。こうして、
図10に示される水道用仕切弁1bが得られる。
【0068】
本実施の形態の水道用仕切弁1b及びその製造方法の効果を説明する。本実施の形態の水道用仕切弁1b及びその製造方法は、実施の形態1の水道用仕切弁1及びその製造方法の効果と同様の効果を奏するとともに、以下の効果を奏する。
【0069】
本実施の形態の水道用仕切弁1bでは、おねじ部12aは、第1領域12fと、第2領域12gとを含む。弁体本体部15が水道水の流路24を全て閉塞する際に、おねじ部12aの第1領域12fはめねじ部28aに螺合している。弁体本体部15が流路24を全て開放する際に、おねじ部12aの第2領域12gはめねじ部28aに螺合している。第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さは、第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さより大きい。
【0070】
そのため、弁体本体部15が水道水の流路24を全て開放する際に、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に発生する腐食を防止するまたは低減させることができる。水道用仕切弁1bのメンテナンスの頻度を減少させることができる。または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1bを提供することができる。
【0071】
本実施の形態の水道用仕切弁1bの製造方法では、潤滑剤5は、おねじ部12aの第2領域12gに施されている。ナット部22を弁棒12に対して相対移動させることは、弁棒12のおねじ部12aの第2領域12gから弁棒12のおねじ部12aの第1領域12fまで、ナット部22を弁棒12に対して相対移動させることを含む。弁体本体部15が水道水の流路24を全て閉塞する際に、おねじ部12aの第1領域12fはめねじ部28aに螺合している。弁体本体部15が流路24を全て開放する際に、おねじ部12aの第2領域12gはめねじ部28aに螺合している。
【0072】
本実施の形態の水道用仕切弁1bの製造方法によれば、第2領域12g上に形成されている潤滑被膜6の第2厚さは、第1領域12f上に形成されている潤滑被膜6の第1厚さより大きくなる。水道管に設置された水道用仕切弁1bの多くは、全開状態(
図3及び
図10を参照)で保持される。潤滑被膜6の第2厚さは相対的に大きいため、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの間に形成されているすき間への水道水の浸入が防止されるまたは減少する。弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に発生する腐食を防止するまたは低減させることができる。本実施の形態の水道用仕切弁1bの製造方法によれば、メンテナンスの頻度を減少させることができる、または、メンテナンスフリーである水道用仕切弁1bが得られる。
【0073】
(実施の形態3)
図14を参照して、実施の形態3の水道用仕切弁1cを説明する。本実施の形態の水道用仕切弁1cは、実施の形態1の水道用仕切弁1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0074】
本実施の形態では、フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3は、ナット部22のめねじ部28aにも形成されている。すなわち、防錆被膜3は、ナット部22のめねじ部28a及び弁棒12のおねじ部12aの両方に形成されている。本実施の形態では、ナット部22は、例えば、真ちゅう(例えば、C3771)で形成されてもよいし、真ちゅう(例えば、C3771)よりも塩素を含む水道水に対して腐食しやすいステンレス鋼(例えば、SUS403)で形成されてもよい。
【0075】
実施の形態3の水道用仕切弁1cの製造方法は、実施の形態1の水道用仕切弁1の製造方法と同様の工程を備えるが、ナット部22に、フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3を施す工程をさらに備えている点で異なる。例えば、フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3を、ナット部22のめねじ部28aに塗布する。
【0076】
本実施の形態の変形例では、実施の形態2の水道用仕切弁1bにおいて、フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3がナット部22のめねじ部28aにさらに形成されている。
【0077】
本実施の形態の水道用仕切弁1c及びその製造方法は、実施の形態1及び実施の形態2の水道用仕切弁1,1b及びその製造方法の効果に加えて、以下の効果を奏する。本実施の形態の水道用仕切弁1c及びその製造方法では、フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3は、ナット部22のめねじ部28a及び弁棒12のおねじ部12aの両方に形成されている。そのため、水道用仕切弁1cのメンテナンスの頻度を減少させることができる。ナット部22の材料の選択肢が増えるため、水道用仕切弁1cの性能を高めたり、水道用仕切弁1cのコストを低減させたりすることができる。
【0078】
(実施の形態4)
図15を参照して、実施の形態4の水道用仕切弁1dを説明する。本実施の形態の水道用仕切弁1dは、実施の形態3の水道用仕切弁1cと同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0079】
本実施の形態の水道用仕切弁1dでは、実施の形態3の水道用仕切弁1cから、弁棒12のおねじ部12aに形成されている防錆被膜3が省略されている。すなわち、本実施の形態では、フッ素樹脂で形成されている防錆被膜3は、ナット部22のめねじ部28aに形成されているが、弁棒12のおねじ部12aには形成されていない。
【0080】
本実施の形態の水道用仕切弁1dの製造方法は、実施の形態3の水道用仕切弁1cの製造方法と同様の工程を備えるが、本実施の形態の水道用仕切弁1dの製造方法では、弁棒12のおねじ部12aに防錆被膜3を施す工程が省略されている。
【0081】
本実施の形態の変形例では、実施の形態3の変形例から、弁棒12のおねじ部12aに形成された防錆被膜3が省略されている。
【0082】
本実施の形態の水道用仕切弁1d及びその製造方法は、実施の形態1から実施の形態3の水道用仕切弁1,1b,1c及びその製造方法の効果と同様の効果に加えて、以下の効果を奏する。水道用仕切弁1dでは、防錆被膜3が形成される範囲が減少するため、水道用仕切弁1dのコストを低減させることができる。水道用仕切弁1dでは、弁棒12に対するナット部22の位置がいずれであっても、弁棒12のおねじ部12aとナット部22のめねじ部28aとの係合部に発生する腐食を防止するまたは低減させることができる。
【0083】
(実施の形態5)
図16を参照して、実施の形態5の水道用仕切弁1eを説明する。本実施の形態の水道用仕切弁1eは、実施の形態1の水道用仕切弁1と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。本実施の形態では、弁棒12の第1領域12fから第2領域12gにわたって、潤滑被膜6の厚さが等しい。
【0084】
本実施の形態の水道用仕切弁1eの製造方法は、実施の形態1の水道用仕切弁1の製造方法と同様の工程を備えるが、主に以下の点で異なる。本実施の形態の水道用仕切弁1eの製造方法では、弁棒12のおねじ部12aにナット部22のめねじ部28aを螺合する前に、弁棒12のおねじ部12aの第1領域12fから第2領域12gにわたって等しい膜厚を有する防錆被膜3を弁棒12のおねじ部12aに施す。
【0085】
実施の形態2から実施の形態4のいずれか一つの水道用仕切弁1b,1c,1dにおいて、弁棒12の第1領域12fから第2領域12gにわたって潤滑被膜6の厚さが等しくてもよい。
【0086】
本実施の形態の水道用仕切弁1e及びその製造方法は、実施の形態1から実施の形態4の水道用仕切弁1,1b,1c,1d及びその製造方法の効果と同様の以下の効果を奏する。水道用仕切弁1eのメンテナンスの頻度を減少させることができる。水道用仕切弁1eは、長期間にわたって衛生的な水道水を供給することを可能にする。
【0087】
今回開示された実施の形態1-5はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。例えば、実施の形態1-5の水道用仕切弁1は、ゴムライニング16を含まないメタルシート弁であってもよい。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態1-5の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本発明の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0088】
1,1b,1c,1d,1e 水道用仕切弁、3 防錆被膜、5 潤滑剤、6 潤滑被膜、12 弁棒、12a おねじ部、12f 第1領域、12g 第2領域、13 弁体、14 弁箱、14a 開口、15 弁体本体部、16 ゴムライニング、17 案内溝、18 突起、20,28 孔、21 スロット、22 ナット部、22a 頂面、22b 底面、24 流路、28a めねじ部、32 フランジ、33 支持板、33a 下面、33b 上面、33c 孔、34 シール部材、35 ブッシュ、36 保護カバー、37 蓋、38 リング。