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特許7456778インクジェットプリンタおよび吸引位置決定用のコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよび吸引位置決定用のコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240319BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240319BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/01 451
B41J2/175 501
B41J2/165 211
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020008121
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021115700
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】澤田 哲平
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079573(JP,A)
【文献】特開平09-131882(JP,A)
【文献】特開2020-006549(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0024216(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが貯留されるインクタンクと、
前記インクタンクに接続されたインク供給路と、
前記インク供給路に連通するノズルを備えたノズル面を有するインクヘッドと、
弾性部材によって形成され、かつ、前記ノズル面に接触可能な端部を有し、前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能なキャップと、
前記キャップに接続された吸引装置と、
前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構と、
前記インク供給路内の圧力を検出する圧力検出機構と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記キャップが前記ノズル面に装着されていない状態において、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを第1の距離、移動させる移動処理と、
前記移動処理が実行された後、前記吸引装置を駆動させ、前記インク供給路の圧力である検出圧力を検出し、前記検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力以下であると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を基準位置とし、前記基準位置に基づいて第1吸引位置を決定する決定処理と、
を実行可能に構成され、
前記移動処理では、前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力よりも大きいと判定されたとき、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを前記第1の距離、移動させ、
前記制御装置は、
前記決定処理によって決定された前記第1吸引位置に前記キャップを移動させる第1吸引位置移動処理と、
前記第1吸引位置に前記キャップが位置している状態で、前記吸引装置を駆動させる第1吸引処理と、
を更に実行可能に構成され
前記第1吸引位置は、前記キャップが前記ノズル面に装着された位置である、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インク供給路に配置されたダンパーを備え、
前記ダンパーは、
一部に形成された開口を有し、前記インク供給路と連通した貯留室と、
前記貯留室の開口を覆うダンパー膜と、
を有し、
前記圧力検出機構は、前記貯留室の圧力を検出することで、前記インク供給路の圧力を間接的に検出する、請求項1に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記ダンパーは、
前記ダンパー膜に設けられた押圧体と、
前記ダンパー膜よりも前記貯留室とは反対側に設けられ、前記押圧体の移動に伴って位置が変更されるレバーと、
を有し、
前記圧力検出機構は、前記レバーの少なくとも一部が所定の範囲内に移動したか否かを検出し、前記所定の範囲内に前記レバーの少なくとも一部が位置しているとき、前記貯留室内の圧力が前記判定圧力以下であることを検出するように構成されたレバーセンサである、請求項2に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記レバーは、前記貯留室の圧力が前記判定圧力以下のときに前記所定の範囲に位置する被検出部を有し、
前記レバーセンサは、前記被検出部が前記所定の範囲内に位置しているとき、前記貯留室内の圧力が前記判定圧力以下であることを検出するように構成された、請求項3に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記判定処理では、前記レバーセンサによって前記レバーの前記被検出部が前記所定の範囲内に位置しているか否かを判定し、
前記決定処理では、前記判定処理において前記被検出部が前記所定の範囲内に位置していると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を前記基準位置とする、請求項4に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項6】
インクが貯留されるインクタンクと、
前記インクタンクに接続されたインク供給路と、
前記インク供給路に配置された送液ポンプと、
前記インク供給路に配置されたダンパーと、
前記インク供給路に連通するノズルを備えたノズル面を有するインクヘッドと、
弾性部材によって形成され、かつ、前記ノズル面に接触可能な端部を有し、前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能なキャップと、
前記キャップに接続された吸引装置と、
前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構と、
前記インク供給路内の圧力を検出する圧力検出機構と、
制御装置と、
を備え、
前記ダンパーは、
一部に形成された開口を有し、前記インク供給路と連通した貯留室と、
前記貯留室の開口を覆うダンパー膜と、
前記ダンパー膜に設けられた押圧体と、
前記ダンパー膜よりも前記貯留室とは反対側に設けられ、前記押圧体の移動に伴って位置が変更されるレバーと、
を有し、
前記制御装置は、
前記キャップが前記ノズル面に装着されていない状態において、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを第1の距離、移動させる移動処理と、
前記移動処理が実行された後、前記吸引装置を駆動させ、前記インク供給路の圧力である検出圧力を検出し、前記検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力以下であると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を基準位置とし、前記基準位置に基づいて第1吸引位置を決定する決定処理と、
を実行可能に構成され、
前記移動処理では、前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力よりも大きいと判定されたとき、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを前記第1の距離、移動させ、
前記制御装置は、
前記決定処理によって決定された前記第1吸引位置に前記キャップを移動させる第1吸引位置移動処理と、
前記第1吸引位置に前記キャップが位置している状態で、前記吸引装置を駆動させる第1吸引処理と、
を更に実行可能に構成され、
前記圧力検出機構は、前記貯留室の圧力を検出することで、前記インク供給路の圧力を間接的に検出し、
前記圧力検出機構は、前記レバーの少なくとも一部が所定の範囲内に移動したか否かを検出し、前記所定の範囲内に前記レバーの少なくとも一部が位置しているとき、前記貯留室内の圧力が前記判定圧力以下であることを検出するように構成されたレバーセンサであり、
前記レバーは、前記貯留室の圧力が前記判定圧力以下のときに前記所定の範囲に位置する被検出部を有し、
前記レバーセンサは、前記被検出部が前記所定の範囲内に位置しているとき、前記貯留室内の圧力が前記判定圧力以下であることを検出するように構成され、
前記判定処理では、前記レバーセンサによって前記レバーの前記被検出部が前記所定の範囲内に位置しているか否かを判定し、
前記決定処理では、前記判定処理において前記被検出部が前記所定の範囲内に位置していると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を前記基準位置とし、
前記制御装置は、前記被検出部が前記所定の範囲内に位置しているとき、前記送液ポンプを駆動させる前処理を実行可能に構成され、
前記移動処理は、前記前処理の後、前記被検出部が前記所定の範囲内に位置していない状態で、実行される、インクジェットプリンタ。
【請求項7】
インクが貯留されるインクタンクと、
前記インクタンクに接続されたインク供給路と、
前記インク供給路に連通するノズルを備えたノズル面を有するインクヘッドと、
弾性部材によって形成され、かつ、前記ノズル面に接触可能な端部を有し、前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能なキャップと、
前記キャップに接続された吸引装置と、
前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構と、
前記インク供給路内の圧力を検出する圧力検出機構と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記キャップが前記ノズル面に装着されていない状態において、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを第1の距離、移動させる移動処理と、
前記移動処理が実行された後、前記吸引装置を駆動させ、前記インク供給路の圧力である検出圧力を検出し、前記検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力以下であると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を基準位置とし、前記基準位置に基づいて第1吸引位置を決定する決定処理と、
を実行可能に構成され、
前記移動処理では、前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力よりも大きいと判定されたとき、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを前記第1の距離、移動させ、
前記制御装置は、
前記決定処理によって決定された前記第1吸引位置に前記キャップを移動させる第1吸引位置移動処理と、
前記第1吸引位置に前記キャップが位置している状態で、前記吸引装置を駆動させる第1吸引処理と、
前記第1吸引処理を実行している間、前記検出圧力を検出し、前記検出圧力が前記判定圧力よりも大きいか否かを判定する吸引時判定処理と、
前記吸引時判定処理によって前記検出圧力が前記判定圧力よりも大きいと判定されたとき、警告を通知する警告通知処理と、
を実行可能に構成された、インクジェットプリンタ。
【請求項8】
インクが貯留されるインクタンクと、
前記インクタンクに接続されたインク供給路と、
前記インク供給路に連通するノズルを備えたノズル面を有するインクヘッドと、
弾性部材によって形成され、かつ、前記ノズル面に接触可能な端部を有し、前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能なキャップと、
前記キャップに接続された吸引装置と、
前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構と、
前記インク供給路内の圧力を検出する圧力検出機構と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記キャップが前記ノズル面に装着されていない状態において、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを第1の距離、移動させる移動処理と、
前記移動処理が実行された後、前記吸引装置を駆動させ、前記インク供給路の圧力である検出圧力を検出し、前記検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力以下であると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を基準位置とし、前記基準位置に基づいて第1吸引位置を決定する決定処理と、
を実行可能に構成され、
前記移動処理では、前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力よりも大きいと判定されたとき、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを前記第1の距離、移動させ、
前記制御装置は、
前記決定処理によって決定された前記第1吸引位置に前記キャップを移動させる第1吸引位置移動処理と、
前記第1吸引位置に前記キャップが位置している状態で、前記吸引装置を駆動させる第1吸引処理と、
を更に実行可能に構成され、
前記第1吸引位置は、前記基準位置から前記ノズル面に第2の距離近づいた位置である、インクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記第1の距離と前記第2の距離とは同じである、請求項8に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項10】
主走査方向に延びたガイドレールと、
前記インクヘッドを支持し、前記ガイドレールに摺動可能に係合したキャリッジと、
前記キャリッジおよびインクヘッドを前記ガイドレールに沿って移動させるヘッド移動機構と、
を備え、
前記ガイドレールの一端部の位置であって、前記ノズル面に前記キャップが装着されるときにおける前記インクヘッドの前記主走査方向の位置を第1位置とし、前記ノズル面に前記キャップが装着されていないときにおける前記インクヘッドの前記主走査方向の位置を第2位置としたとき、
前記ヘッド移動機構は、前記第2位置から前記第1位置への前記インクヘッドの移動と連動して、前記ノズル面に前記キャップが接近する方向に前記キャップを移動させ、かつ、前記第1位置から前記第2位置への前記インクヘッドの移動と連動して、前記ノズル面から前記キャップが離間する方向に前記キャップを移動させるように構成されている、請求項1から9までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項11】
インクが貯留されるインクタンクと、
前記インクタンクに接続されたインク供給路と、
前記インク供給路に連通するノズルを備えたノズル面を有するインクヘッドと、
弾性部材によって形成され、かつ、前記ノズル面に接触可能な端部を有し、前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能なキャップと、
前記キャップに接続された吸引装置と、
前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構と、
前記インク供給路内の圧力を検出する圧力検出機構と、
主走査方向に延びたガイドレールと、
前記インクヘッドを支持し、前記ガイドレールに摺動可能に係合したキャリッジと、
前記キャリッジおよびインクヘッドを前記ガイドレールに沿って移動させるヘッド移動機構と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記キャップが前記ノズル面に装着されていない状態において、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを第1の距離、移動させる移動処理と、
前記移動処理が実行された後、前記吸引装置を駆動させ、前記インク供給路の圧力である検出圧力を検出し、前記検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力以下であると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を基準位置とし、前記基準位置に基づいて第1吸引位置を決定する決定処理と、
を実行可能に構成され、
前記移動処理では、前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力よりも大きいと判定されたとき、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを前記第1の距離、移動させ、
前記制御装置は、
前記決定処理によって決定された前記第1吸引位置に前記キャップを移動させる第1吸引位置移動処理と、
前記第1吸引位置に前記キャップが位置している状態で、前記吸引装置を駆動させる第1吸引処理と、
を更に実行可能に構成され、
前記ガイドレールの一端部の位置であって、前記ノズル面に前記キャップが装着されるときにおける前記インクヘッドの前記主走査方向の位置を第1位置とし、前記ノズル面に前記キャップが装着されていないときにおける前記インクヘッドの前記主走査方向の位置を第2位置としたとき、
前記ヘッド移動機構は、前記第2位置から前記第1位置への前記インクヘッドの移動と連動して、前記ノズル面に前記キャップが接近する方向に前記キャップを移動させ、かつ、前記第1位置から前記第2位置への前記インクヘッドの移動と連動して、前記ノズル面から前記キャップが離間する方向に前記キャップを移動させるように構成され、
前記主走査方向において、前記第1位置と前記第2位置との間の位置を第3位置とした場合、
前記インクヘッドが前記第3位置に位置しているときの前記ノズル面に対する前記キャップの位置が前記基準位置になるように構成された、インクジェットプリンタ。
【請求項12】
インクが貯留されるインクタンクと、
前記インクタンクに接続されたインク供給路と、
前記インク供給路に連通するノズルを備えたノズル面を有するインクヘッドと、
弾性部材によって形成され、かつ、前記ノズル面に接触可能な端部を有し、前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能なキャップと、
前記キャップに接続された吸引装置と、
前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構と、
前記インク供給路内の圧力を検出する圧力検出機構と、
他のインクが貯留される他のインクタンクと、
前記他のインクタンクに接続された他のインク供給路と、
前記他のインク供給路に連通する他のノズルを備えた他のノズル面を有する他のインクヘッドと、
前記他のノズルを覆うように前記他のノズル面に装着可能な他のキャップと、
前記他のキャップに接続された他の吸引装置と、
前記他のインク供給路内の圧力を検出する他の圧力検出機構と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記キャップが前記ノズル面に装着されていない状態において、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを第1の距離、移動させる移動処理と、
前記移動処理が実行された後、前記吸引装置を駆動させ、前記インク供給路の圧力である検出圧力を検出し、前記検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力以下であると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を基準位置とし、前記基準位置に基づいて第1吸引位置を決定する決定処理と、
を実行可能に構成され、
前記移動処理では、前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力よりも大きいと判定されたとき、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを前記第1の距離、移動させ、
前記制御装置は、
前記決定処理によって決定された前記第1吸引位置に前記キャップを移動させる第1吸引位置移動処理と、
前記第1吸引位置に前記キャップが位置している状態で、前記吸引装置を駆動させる第1吸引処理と、
を更に実行可能に構成され、
前記キャッピング機構は、前記他のノズル面に対して前記他のキャップを装着させたり、離間させたりするように構成され、
前記移動処理では、前記他のキャップが前記他のノズル面に装着されていない状態において、前記他のノズル面に対して前記他のキャップが接近する方向に前記他のキャップを前記第1の距離、移動させ、
前記判定処理では、前記他の吸引装置を駆動させた状態で、前記他のインク供給路の圧力である他の検出圧力を検出し、前記検出圧力と前記他の検出圧力の両方が前記判定圧力以下であるか否かを判定し、
前記決定処理では、前記判定処理において前記検出圧力と前記他の検出圧力の両方が前記判定圧力以下であると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップおよび前記他のキャップの位置を前記基準位置とし、前記基準位置に基づいて前記第1吸引位置を決定し、
前記第1吸引位置移動処理では、前記第1吸引位置に前記キャップおよび前記他のキャップを移動させ、
前記第1吸引処理では、前記第1吸引位置に前記キャップおよび前記他のキャップが位置している状態で、前記吸引装置および前記他の吸引装置を駆動させる、インクジェットプリンタ。
【請求項13】
インクが貯留されるインクタンクと、
前記インクタンクに接続されたインク供給路と、
前記インク供給路に連通するノズルを備えたノズル面を有するインクヘッドと、
弾性部材によって形成され、かつ、前記ノズル面に接触可能な端部を有し、前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能なキャップと、
前記キャップに接続された吸引装置と、
前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりするキャッピング機構と、
前記インク供給路内の圧力を検出する圧力検出機構と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記キャップが前記ノズル面に装着されていない状態において、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを第1の距離、移動させる移動処理と、
前記移動処理が実行された後、前記吸引装置を駆動させ、前記インク供給路の圧力である検出圧力を検出し、前記検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力以下であると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を基準位置とし、前記基準位置に基づいて第1吸引位置を決定する決定処理と、
を実行可能に構成され、
前記移動処理では、前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力よりも大きいと判定されたとき、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを前記第1の距離、移動させ、
前記制御装置は、
前記決定処理によって決定された前記第1吸引位置に前記キャップを移動させる第1吸引位置移動処理と、
前記第1吸引位置に前記キャップが位置している状態で、前記吸引装置を駆動させる第1吸引処理と、
を更に実行可能に構成され、
前記第1吸引位置よりも前記ノズル面に第3の距離近づいた位置を第2吸引位置としたとき、
前記制御装置は、
前記第2吸引位置に前記キャップを移動させる第2吸引位置移動処理と、
前記第2吸引位置に前記キャップが位置している状態で、前記吸引装置を駆動させる第2吸引処理と、
を実行可能に構成された、インクジェットプリンタ。
【請求項14】
前記第1吸引処理では、前記キャップ内のインクを第1の速度で吸引するように、前記吸引装置の駆動を制御し、
前記第2吸引処理では、前記キャップ内のインクを前記第1の速度よりも遅い第2の速度で吸引するように、前記吸引装置の駆動を制御する、請求項13に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項15】
請求項1から14までの何れか1つに記載されたインクジェットプリンタにおいて、前記移動処理、前記判定処理、前記決定処理、前記第1吸引位置移動処理、および、前記第1吸引処理を少なくともコンピュータに実行させるための吸引位置決定用のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよび吸引位置決定用のコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、インクを吐出するノズルを有するインクヘッドを備えたインクジェットプリンタが開示されている。上記インクジェットプリンタでは、ノズルの吐出性能を維持するために、キャップユニットが設けられている。キャップユニットは、印刷待機時に、インクヘッドのノズルが形成されたノズル面に装着されるキャップと、キャップに接続された吸引ポンプとを備えている。
【0003】
ノズル面をキャップが覆うことで、キャップとノズル面とによって囲まれた密閉空間が形成される。この密閉空間が形成された状態で吸引ポンプを駆動させることで、インクヘッド内に残留したインクをキャップに排出することができる。このように、インクヘッド内のインクを排出するための吸引の処理を吸引処理という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-87858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吸引処理において、インクヘッド内に残留したインクを適切に吸引するために、ノズル面とキャップとの密着力を高めることが好ましい。例えばキャップにおけるノズル面と接触する端部をゴムなどの弾性部材によって形成することで、上記密着力を高めることができる。また、吸引ポンプの回転速度を速くして、キャップ内を高負圧状態にすることでも上記密着力を高めることができる。
【0006】
しかしながら、吸引処理のときにキャップ内を高負圧状態にすることで、キャップの端部がキャップの内側に撓むことがあり得る。ここでは、吸引処理のときにキャップの端部がキャップの内側に撓むことを「キャップの座屈」という。吸引処理のときにキャップの座屈が発生することで、ノズル内のインクを適切に吸引し難くなることがあった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸引処理のときに、キャップの座屈が発生し難く、かつ、インクヘッド内のインクを適切に吸引することが可能なインクジェットプリンタおよび吸引位置決定用のコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インクタンクと、インク供給路と、インクヘッドと、キャップと、吸引装置と、キャッピング機構と、圧力検出機構と、制御装置とを備えている。前記インクタンクには、インクが貯留される。前記インク供給路は、前記インクタンクに接続されている。前記インクヘッドは、前記インク供給路に連通するノズルを備えたノズル面を有する。前記キャップは、弾性部材によって形成され、かつ、前記ノズル面に接触可能な端部を有し、前記ノズルを覆うように前記ノズル面に装着可能である。前記吸引装置は、前記キャップに接続されている。前記キャッピング機構は、前記ノズル面に対して前記キャップを装着させたり、離間させたりする。前記圧力検出機構は、前記インク供給路内の圧力を検出する。前記制御装置は、移動処理と、判定処理と、決定処理とを実行可能に構成されている。前記移動処理では、前記キャップが前記ノズル面に装着されていない状態において、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを第1の距離、移動させる。前記判定処理では、前記移動処理が実行された後、前記吸引装置を駆動させ、前記インク供給路の圧力である検出圧力を検出し、前記検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定する。前記決定処理では、前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力以下であると判定されたときにおける、前記ノズル面に対する前記キャップの位置を基準位置とし、前記基準位置に基づいて第1吸引位置を決定する。前記移動処理では、前記判定処理において前記検出圧力が前記判定圧力よりも大きいと判定されたとき、前記ノズル面に対して前記キャップが接近する方向に前記キャップを前記第1の距離、移動させる。前記制御装置は、第1吸引位置移動処理と、第1吸引処理とを更に実行可能に構成されている。前記第1吸引位置移動処理では、前記決定処理によって決定された前記第1吸引位置に前記キャップを移動させる。前記第1吸引処理では、前記第1吸引位置に前記キャップが位置している状態で、前記吸引装置を駆動させる。
【0009】
上記インクジェットプリンタによれば、インク供給路内の圧力が所定の判定圧力よりも大きく、かつ、キャップがノズル面に装着されている状態で、吸引装置を駆動させることで、インクヘッド内のインクが吸引され、キャップ内に排出される。このとき、インク供給路内の圧力は、インクが排出されたために小さくなり、所定の判定圧力以下となる。一方、インク供給路内の圧力が所定の判定圧力より大きいままの場合には、インクヘッド内のインクが吸引されていなく、適切に吸引処理が行われていない状態となる。このように、インクヘッド内のインクが吸引装置によって排出されていない状態から、排出された状態に切り替わったときのノズル面に対するキャップの位置が、吸引処理を適切に行うことができる位置であって、ノズル面に対してキャップが最も離れている位置である。当該位置を基準位置として、基準位置に基づいて第1吸引位置に決定し、第1吸引位置で吸引処理を行うことができる。第1吸引位置で吸引処理をすることで、キャップ内を高負圧状態になり過ぎ難くすることができるため、キャップの座屈が発生し難くすることができる。よって、第1吸引位置で吸引処理を行うことで、キャップの座屈が発生し難く、かつ、インクヘッド内のインクを適切に吸引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るプリンタの正面図である。
図2】キャリッジの下面の構成を模式的に示す図である。
図3】インクヘッドとインク供給システムとの関係を示す概念図である。
図4】第1インクヘッドに係る2つのインク供給システムの構成を示す模式図である。
図5】ダンパーの平面図であり、貯留室の圧力が所定の判定圧力以下の状態を示す図である。
図6】ダンパーの平面断面図であり、貯留室の圧力が所定の判定圧力より大きい状態を示す図である。
図7】インクヘッドおよびキャップユニットの正面図である。
図8】インクヘッドおよびキャップユニットの正面図である。
図9】キャップの正面図である。
図10】プリンタのブロック図である。
図11】通常吸引位置と、基準位置と、最大吸引位置との関係を示した図である。
図12】最大吸引位置を決定する手順を示したフローチャートである。
図13】警告通知を行うまでの手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)100の正面図である。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ100を正面から見たとき(例えば、後述の媒体5が搬送される方向と向かい合う方向から見たとき)の前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。主走査方向Yは、後述のインクヘッド41~44の移動方向である。図面中の符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交する方向である。副走査方向Xは、媒体5の搬送方向である。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
プリンタ100は、インクジェット式のプリンタである。プリンタ100は、媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は例えばロール状の記録紙である。しかしながら、媒体5は、ロール状の記録紙に限定されず、シート状の記録紙であってもよいし、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
【0014】
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体11と、プラテン13と、搬送機構20と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、ヘッド移動機構30と、インクヘッド41~44(図2参照)と、インク供給システム61~68(図3参照)と、キャップユニット110(図7参照)と、制御装置160とを備えている。
【0015】
プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プラテン13は、媒体5を支持する。プラテン13には、媒体5が載置される。プラテン13上において印刷が行われる。プラテン13は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がったものである。
【0016】
プラテン13に支持された媒体5は、搬送機構20によって副走査方向Xに搬送される。搬送機構20の構成は特に限定されない。本実施形態では、搬送機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方かつキャリッジ17よりも後方に設けられ、媒体5を上から押さえ付ける。グリットローラ22は、プラテン13に設けられた円筒状の部材である。ここでは、グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向している。ここでは、グリットローラ22には、フィードモータ23が接続されている。ピンチローラ21とグリットローラ22との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことで、媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0017】
ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられている。
【0018】
ヘッド移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド41~44(図2参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、キャリッジモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が取り付けられている。ここでは、右のプーリ31bには、キャリッジモータ33が接続されている。キャリッジモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ17およびインクヘッド41~44は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
【0019】
図2は、キャリッジ17の下面の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、インクヘッド41~44は、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド41~44は、その下面を露出するように、キャリッジ17に支持されている。以下の説明では、インクヘッド41~44のことを、それぞれ第1~第4インクヘッド41~44と適宜称することがあり得る。インクヘッド41~44は、インクを吐出するものである。インクヘッド41~44は、主走査方向Yに並んで配置されている。本実施形態では、例えば第1インクヘッド41が本発明のインクヘッドの一例である。例えば第2インクヘッド42が本発明の他のインクヘッドの一例である。
【0020】
インクヘッド41~44は、それぞれノズル面45を有している。ノズル面45は、インクヘッド41~44の下面にそれぞれ形成されている。第1インクヘッド41のノズル面45には、複数のノズル51が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル52が副走査方向Xに並んで形成されている。同様に、第2インクヘッド42のノズル面45には、複数のノズル53が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル54が副走査方向Xに並んで形成されている。第3インクヘッド43のノズル面45には、複数のノズル55が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル56が副走査方向Xに並んで形成されている。また、第4インクヘッド44のノズル面45には、複数のノズル57が副走査方向Xに並んで形成され、かつ、複数のノズル58が副走査方向Xに並んで形成されている。ここでは、複数のノズル51~58の列のことを、それぞれノズル列51a~58aと称する。インクヘッド41~44は、それぞれ2つのノズル列を有している。本実施形態では、例えば第1インクヘッド41のノズル面45が本発明のノズル面に対応し、第2インクヘッド42のノズル面45が本発明の他のノズル面に対応している。例えばノズル51が本発明のノズルに対応し、ノズル53が本発明の他のノズルに対応している。
【0021】
図3は、インクヘッド41~44と、インク供給システム61~68との関係を示す概念図である。図3に示すように、インク供給システム61~68は、インクヘッド41~44にインクを供給するシステムである。インク供給システム61~68は、ノズル列51a~58aごとに設けられている。本実施形態では、ノズル列の数は「8」であるため、インク供給システムの数も「8」である。ノズル列51a~58aを構成するノズル51~58には、それぞれインク供給システム61~68が接続されている。ここでは、インク供給システム61~68は、いずれも同じ構成を有している。そこで、以下では、第1インクヘッド41に係るインク供給システム61および62について説明し、その他のインク供給システム63~68についての説明は、省略または簡略化する。ただし、インク供給システム61~68において、一部のインク供給システム61~68の構成は、他のインク供給システム61~68の構成と異なっていてもよい。
【0022】
図4は、第1インクヘッド41に係るインク供給システム61および62の構成を示す模式図である。図4に示すように、インク供給システム61は、インクタンク71aと、インク供給路72aと、送液ポンプ73aと、ダンパー74aとを備えている。インク供給システム62は、インクタンク71bと、インク供給路72bと、送液ポンプ73bと、ダンパー74bとを備えている。
【0023】
インクタンク71aは、インクが貯留された容器である。インクタンク71aには、例えばプロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク、クリアインクなど)のうちの1つのインクが貯留されている。ただし、インクタンク71aに貯留されるインクの色は特に限定されない。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。
【0024】
インク供給路72aは、インクタンク71aと第1インクヘッド41とを接続する流路である。インク供給路72aの一端は、ダンパー74aを介してインクヘッド41に接続されている。詳しくは、インク供給路72aの一端は、ノズル列51aを構成するノズル51に接続され、ノズル51と連通している。インク供給路72aの他端は、インクタンク71aに接続されている。ノズル列51aを構成する複数のノズル51からは、インクタンク71aに貯留されたインクが吐出される。なお、インク供給路72aの材質は特に限定されない。インク供給路72aは、例えば可撓性のチューブなどによって構成されている。
【0025】
送液ポンプ73aは、インク供給路72aに設けられている。送液ポンプ73aは、インクタンク71aに貯留されたインクをノズル列51aのノズル51に供給すると共に、インクヘッド41からのインクの吐出に適した圧力に調整するためのポンプである。送液ポンプ73aは、駆動時には、インクタンク71aからノズル列51aのノズル51に向かってインクを送液する。送液ポンプ73aの種類は特に限定されないが、例えば、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプなどである。
【0026】
ダンパー74aは、インクの圧力変動を緩和して、第1インクヘッド41のインクの吐出動作を安定させるものである。ダンパー74aは、ダンパー74aに流入するインクの流量(言い換えると、ダンパー74a内の圧力)を検出する。そして、インクの流量の検出結果に基づいて、送液ポンプ73aが制御される。図4に示すように、ダンパー74aは、第1インクヘッド41に接続されている。ここでは、ダンパー74aは、第1インクヘッド41の上部に設けられている。なお、ダンパー74aの構成は特に限定されない。
【0027】
図5は、ダンパー74a~74hの平面図であり、貯留室82の圧力が所定の判定圧力以下の状態を示す図である。図6は、ダンパー74a~74hの平面断面図であり、貯留室82の圧力が所定の判定圧力より大きい状態を示す図である。本実施形態では、図5に示すように、ダンパー74aは、ダンパー本体81と、貯留室82と、ダンパー膜83と、検出機構84とを備えている。
【0028】
ダンパー本体81は中空のものである。貯留室82は、ダンパー本体81内に形成されており、一部に形成された開口を有している。貯留室82には、インクが一時的に貯留される。貯留室82は、インク供給路72a(図4参照)および第1インクヘッド41(図4参照)と連通している。本実施形態では、ダンパー本体81の上部には、インク供給路72aが接続された流入口85aが形成され、ダンパー本体81の下部には、第1インクヘッド41に接続された流出口85b(図4参照)が形成されている。ただし、流入口85aおよび流出口85bの形成位置は特に限定されない。本実施形態では、ダンパー74aは、印刷時に流入口85aから貯留室82に流入したインクが流出口85bを通じて第1インクヘッド41へ流れるように構成されている。
【0029】
図5に示すように、ダンパー膜83は、貯留室82の開口部分を覆うようにダンパー本体81に設けられている。ここでは、ダンパー膜83とダンパー本体81によって囲まれた空間が貯留室82である。ダンパー膜83は、例えば可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。ただし、ダンパー膜83は、弾性部材、例えばゴムによって構成されていてもよい。ダンパー膜83は、貯留室82内のインクの貯留量や、貯留室82内の圧力に基づいて、図5および図6に示すように、貯留室82の内側および外側に変形可能である。ダンパー膜83は、貯留室82の内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で、ダンパー本体81に取り付けられている。
【0030】
本実施形態では、図5に示すように、貯留室82には、バネ85が設けられている。バネ85は、圧縮された状態で貯留室82に配置されており、ダンパー膜83に向かって弾性力を付与する。ここでは、バネ85は、ダンパー膜83の貯留室82側の面に接続されている。なお、バネ85の種類は特に限定されず、例えばバネ85はコイルバネである。
【0031】
検出機構84は、貯留室82内の圧力を検出する機構である。ここでは、検出機構84は、貯留室82内の圧力を検出することで、第1インク供給路72a(図4参照)内の圧力を間接的に検出する。なお、検出機構84の構成は特に限定されない。本実施形態では、検出機構84は、押圧体86と、レバー87と、レバーセンサ88とを備えている。
【0032】
押圧体86は、ダンパー膜83に設けられている。本実施形態では、押圧体86は、ダンパー膜83の貯留室82側の面に設けられている。ただし、押圧体86は、ダンパー膜83の貯留室82とは反対側の面に設けられていてもよい。ここでは、押圧体86は、バネ85に支持されており、ダンパー膜83の撓みと共に、貯留室82の内側および外側に移動可能である。
【0033】
レバー87は、ダンパー膜83または押圧体86と接触可能にダンパー本体81に設けられている。本実施形態では、ダンパー本体81には、支持バネ89が設けられおり、レバー87は、支持バネ89に支持されている。レバー87の形状は特に限定されない。ここでは、レバー87は、略コの字状に形成されている。詳しくは、レバー87は、押圧体86の右方において、前後方向に延びた接触部87aと、接触部87aの後部から左方に延びた支持部87bと、接触部87aの前部から左方に延びた被検出部87cとを有している。接触部87aは、ダンパー膜83または押圧体86に接触する。支持部87bは、支持バネ89に支持されている。被検出部87cは、レバーセンサ88によって検出される部位である。
【0034】
レバーセンサ88は、レバー87の位置を検出することによって、貯留室82内の圧力を検出する。レバーセンサ88は、貯留室82内の圧力を検出することで、第1インク供給路72aの圧力を間接的に検出する。ここでは、ダンパー74aのレバーセンサ88は、本発明の圧力検出機構の一例である。本実施形態では、レバーセンサ88は、非接触式のセンサであるが、接触式のセンサであってもよい。本実施形態では、レバーセンサ88は、一対の検出部88aを有している。一対の検出部88aは、平面視において互いが離間している。図5に示すように、一対の検出部88aの間に、レバー87の被検出部87cが位置しているとき、レバーセンサ88は、貯留室82の圧力が所定の判定圧力以下であることを検出する。
【0035】
図6に示すように、貯留室82の圧力が大きくなるにしたがって、ダンパー膜83が貯留室82の外側に撓む。このとき、押圧体86によって、レバー87が貯留室82の外側に押されることで、レバー87は、接触部87aと支持部87bとの間に位置する軸87dを軸にして回転する。そして、貯留室82の圧力が所定の判定圧力より大きくなったとき、レバー87の被検出部87cがレバーセンサ88の一対の検出部88aの間から外れた位置に移動する。レバーセンサ88は、一対の検出部88aの間に、レバー87の被検出部87cが位置していないとき、貯留室82の圧力が所定の判定圧力よりも大きいことを検出する。なお、本実施形態では、一対の検出部88aの間の範囲は、本発明の所定の範囲に対応する。
【0036】
本実施形態では、図5に示すように、レバーセンサ88の一対の検出部88aの間に、レバー87の被検出部87cが位置しているとき、すなわち、貯留室82の圧力が所定の判定圧力以下のとき、「レバー87がヒットしている」という。一方、図6に示すように、レバーセンサ88の一対の検出部88aの間に、レバー87の被検出部87cが位置していないとき、すなわち、貯留室82の圧力が所定の判定圧力よりも大きいとき、「レバー87がアンヒットしている」という。
【0037】
なお、本実施形態では、図4に示すように、インク供給システム62は、インク供給システム61と同様に構成されている。インク供給システム62において、インクタンク71bと、インク供給路72bと、送液ポンプ73bと、ダンパー74bとは、それぞれインク供給システム61のインクタンク71aと、インク供給路72aと、送液ポンプ73aと、ダンパー74aと同じ構成である。
【0038】
図3に示すように、インク供給システム63~68は、それぞれインク供給システム61と同じ構成を有している。詳しい説明は省略するが、インク供給システム63は、ノズル53に接続されており、インクタンク71cと、インク供給路72cと、送液ポンプ73cと、ダンパー74cとを備えている。ここでは、例えばインクタンク71cが他のインクタンクの一例であり、インク供給路72cが他のインク供給路の一例であり、ダンパー74cのレバーセンサ88が他の圧力検出機構の一例である。
【0039】
インク供給システム64は、ノズル54に接続されており、インクタンク71dと、インク供給路72dと、送液ポンプ73dと、ダンパー74dとを備えている。インク供給システム65は、ノズル55に接続されており、インクタンク71eと、インク供給路72eと、送液ポンプ73eと、ダンパー74eとを備えている。インク供給システム66は、ノズル56に接続されており、インクタンク71fと、インク供給路72fと、送液ポンプ73fと、ダンパー74fとを備えている。インク供給システム67は、ノズル57に接続されており、インクタンク71gと、インク供給路72gと、送液ポンプ73gと、ダンパー74gとを備えている。また、インク供給システム68は、ノズル58に接続されており、インクタンク71hと、インク供給路72hと、送液ポンプ73hと、ダンパー74hとを備えている。
【0040】
次に、キャップユニット110について説明する。図7および図8は、それぞれインクヘッド41~44およびキャップユニット110の正面図である。図7は、インクヘッド41~44が第2位置P2に位置しているときの図である。図8は、インクヘッド41~44が第1位置P1に位置しているときの図である。キャップユニット110は、図7に示すように、キャップ111~114と、ベース115と、キャッピング機構120と、吸引ポンプ131~134と、を有している。
【0041】
図8に示すように、キャップ111~114は、それぞれインクヘッド41~44のノズル面45に装着可能に構成されている。ここで、「装着」とは、底面視においてノズル51~58がキャップ111~114に囲まれている状態、言い換えるとキャップ111~114の端部118(図9参照)が環状にノズル面45に接触している状態のことをいう。キャップ111~114は、それぞれノズル51~58(図2参照)を覆うものである。例えば第1キャップ111は、第1インクヘッド41のノズル面45に形成された複数のノズル51、および、複数のノズル52を覆うものである。なお、本実施形態では、キャップ111が本発明のキャップの一例であり、キャップ112が本発明の他のキャップの一例である。
【0042】
図9は、キャップ111~114の正面図である。本実施形態では、キャップ111~114は、同じ構成を有している。そのため、以下ではキャップ111の構成について説明し、キャップ112~114の構成の説明は省略する。図9に示すように、キャップ111は、中空の部材であり、上方に向かって開口している。キャップ111は、上部に形成された開口117と、開口117を囲む端部118とを有している。端部118は、キャップ111の上部を構成している。詳しい図示は省略するが、端部118は、ノズル面45に接触する部位である。
【0043】
なお、キャップ111を形成する材料の種類は特に限定されない。本実施形態では、キャップ111の少なくともノズル面45と接触する部分、ここでは端部118は、例えばゴムなどの弾性部材によって形成されている。ただし、キャップ111全体が弾性部材によって形成されていてもよい。
【0044】
本実施形態では、キャップユニット110は、吸収体119を有している。吸収体119は、キャップ111~114内に配置されている。なお、図7および図8において、吸収体119の図示は省略されている。ここでは、図9に示すように、吸収体119は、キャップ111の底面に載置されている。吸収体119は、キャップ111内のインクを吸収するものである。本実施形態では、吸収体119は、キャップ111に収容されており、吸収体119の上端は、端部118の上端よりも下方に位置する。そのため、ノズル面45にキャップ111が装着されているとき、吸収体119は、ノズル面45に接触しない。なお、吸収体119の具体的な種類は特に限定されない。吸収体119は例えばスポンジである。
【0045】
図7に示すように、キャップ111~114は、ベース115に支持されている。ベース115は、キャップ111~114の下方に配置されている。なお、ベース115の形状は特に限定されないが、ここでは板状の部材である。
【0046】
図8に示すように、ガイドレール15の右端部分には、印刷待機時に、インクヘッド41~44が待機する位置である第1位置P1が設定されている。この第1位置P1とは、いわゆるホームポジションのことである。この第1位置P1にインクヘッド41~44が位置しているとき、インクヘッド41~44のノズル面45には、それぞれキャップ111~114が装着される。
【0047】
図7および図8に示すように、キャッピング機構120は、インクヘッド41~44のノズル面45に対して、それぞれキャップ111~114を装着させたり、離間させたりするものである。ここでは、キャッピング機構120は、キャップ111~114を昇降させる機構である。本実施形態では、キャッピング機構120は、インクヘッド41~44の主走査方向Yへの移動に連動して、キャップ111~114を主走査方向Yおよび上下方向に移動させるように構成されている。しかしながら、キャッピング機構120は、インクヘッド41~44の位置を固定させた状態で、キャップ111~114を上下方向に移動させるように構成されていてもよい。すなわち、キャッピング機構120は、キャップ111~114を主走査方向Yに移動させずに、上下方向に移動させるように構成されてもよい。
【0048】
図7に示すように、ガイドレール15の右端部分であって、第1位置P1よりも左方の位置には、第2位置P2が設定されている。この第2位置P2は、プラテン13(図1参照)の真上には位置していない。第2位置P2から第1位置P1へインクヘッド41~44が移動している間、キャッピング機構120は、キャップ111~114を第2位置P2から第1位置P1へ移動させながら、インクヘッド41~44のノズル面45に向かって移動させるように構成されている。一方、第1位置P1から第2位置P2へインクヘッド41~44が移動している間、キャッピング機構120は、キャップ111~114を第1位置P1から第2位置P2へ移動させながら、インクヘッド41~44のノズル面45から離間させるように構成されている。
【0049】
ここで、「離間」とは、キャップ111~114の端部118がノズル面45に完全に接触していない状態のことをいう。「離間」とは、キャップ111~114の端部118とノズル面45との間に、全体に亘って隙間が形成されている状態のことをいう。
【0050】
本実施形態では、「キャッピング機構120を制御する」とは、ヘッド移動機構30を制御して、インクヘッド41~44を主走査方向Yに移動させることに連動して、キャップ111~114をノズル面45に対して装着させたり、離間させたりすることをいう。このように、「キャッピング機構120を制御する」には、キャップ111~114を直接昇降させる場合、および、ヘッド移動機構30などの他の機構の動作と連動して、キャップ111~114を間接的に昇降させる場合が含まれる。
【0051】
キャッピング機構120の具体的な構成は特に限定されない。本実施形態では、キャッピング機構120は、第2位置P2から第1位置P1に向かって上方斜めに延びたガイド孔122が形成されたガイド部材123と、ガイド孔122に係合し、ベース115に設けられた支持軸124とを備えている。例えばキャリッジ17には、第2位置P2から第1位置P1の間において、ベース115に接触する接触部(図示せず)が設けられている。
【0052】
インクヘッド41~44が第2位置P2から第1位置P1へ移動している間、キャリッジ17の上記接触部がベース115を第1位置P1側に押す。このとき、ベース115およびキャップ111~114は、ガイド孔122にガイドされながら、ノズル面45に向かって移動し、かつ、第2位置P2から第1位置P1に向かって移動する。このとき、インクヘッド41~44のノズル面45と、キャップ111~114の端部118とが徐々に接近する。そして、図8に示すように、インクヘッド41~44が第1位置P1に到達したとき、インクヘッド41~44のノズル面45にキャップ111~114が装着された状態となる。
【0053】
一方、キャリッジ17およびインクヘッド41~44が第1位置P1から第2位置P2に移動している間、キャリッジ17の上記接触部も第1位置P1から第2位置P2へ移動する。このとき、ベース115およびキャップ111~114は、ガイド孔122にガイドされながら、ノズル面45から離れる方に移動すると共に、キャリッジ17の上記接触部にベース115が接触しながら、第1位置P1から第2位置P2に向かって移動する。このとき、インクヘッド41~44のノズル面45と、キャップ111~114の端部118とは、徐々に離れる。なお、図7に示すように、キャップ111~114は、第2位置P2に到達したとき、第2位置P2に待機するように構成されている。
【0054】
なお、本実施形態では、ノズル面45にキャップ111~114が装着されている状態から装着されていない状態になるとき、キャップ111~114の端部118の一部がノズル面45から離れた後に、キャップ111~114の端部118の他の一部がノズル面45から離れるように構成されている。例えば、ノズル面45からキャップ111~114が取り外される際、キャップ111~114の右側の端部118がノズル面45から離れた後、キャップ111~114の左側の端部118がノズル面45から離れるように構成されている。ノズル面45からキャップ111~114が取り外される際、ノズル面45に対してキャップ111~114が斜めに配置される。
【0055】
図7に示すように、吸引ポンプ131~134は、それぞれキャップ111~114に接続されている。吸引ポンプ131~134は、それぞれキャップ111~114内のインクや空気などを吸引する部材である。本実施形態では、例えば吸引ポンプ131が本発明の吸引装置の一例であり、吸引ポンプ132が本発明の他の吸引装置の一例である。吸引ポンプ131~134の種類は特に限定されないが、吸引ポンプ131~134は、例えば真空ポンプである。吸引ポンプ131~134は、それぞれチューブなどを介して、キャップ111~114の底面に接続されている。吸引ポンプ131~134は、駆動時には、それぞれに対応するインクヘッド41~44に接続されたインク供給路内の圧力よりも低い負圧を形成するように構成されている。例えば、キャップ111~114がインクヘッド41~44に装着された状態で吸引ポンプ131~134が駆動されたときには、インクヘッド41~44のノズル51~58からインクなどが吸い出される。吸引ポンプ131~134に吸引されたインクなどは、図示しないチューブなどを介して図示しない廃液タンクに廃棄される。
【0056】
図1に示すように、プリンタ100のプリンタ本体11の右端部には、操作パネル140が設けられている。操作パネル140には、プリンタ100の状態などを表示する表示画面141と、ユーザによって操作される入力キー142などが設けられている。
【0057】
次に、制御装置160について説明する。制御装置160は、印刷に関する制御、および、インクヘッド41~44のクリーニングに関する制御を行う装置である。制御装置160の構成は特に限定されない。制御装置160は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリと、を備えている。なお、制御装置160は必ずしもプリンタ100の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ100の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
【0058】
図10は、本実施形態に係るプリンタ100のブロック図である。図10に示すように、制御装置160は、搬送機構20のフィードモータ23と、ヘッド移動機構30のキャリッジモータ33と、インクヘッド41~44と、送液ポンプ73a~73hと、ダンパー74a~74hのレバーセンサ88と、吸引ポンプ131~134とにそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。
【0059】
本実施形態では、制御装置160は、記憶部161と、通常吸引位置移動部162と、通常吸引処理部164と、最大吸引位置移動部172と、最大吸引処理部174と、吸引時判定部176と、警告通知部178を備えている。上述した制御装置160の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば上述した各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、制御装置160の上記各部の具体的な制御については、後述する。
【0060】
以上、本実施形態に係るプリンタ100の構成について説明した。ところで、インクヘッド41~44に対してクリーニングを行う際、通常吸引処理が行われる。この通常吸引処理では、インクヘッド41~44のノズル面45に、キャップ111~114の端部118を完全に接触させた状態で、吸引ポンプ131~134を駆動させる。
【0061】
図11は、通常吸引位置P21と、基準位置P23と、最大吸引位置P22との位置関係を示した模式図である。なお、図11では、理解し易いように、通常吸引位置P21と、基準位置P23と、最大吸引位置P22とを実際よりも離している。実際には、通常吸引位置P21と、基準位置P23と、最大吸引位置P22とは、近接している。通常吸引処理が実行されるときのインクヘッド41~44のノズル面45に対するキャップ111~114の上下方向の位置を通常吸引位置P21(図11参照)という。ここで、通常吸引位置P21、基準位置P23、および、最大吸引位置P22は、例えばインクヘッド41~44のノズル面45に対するキャップ111~114の下端の上下方向の位置のことを示している。通常吸引位置P21では、キャップ111~114の端部118がノズル面45に押し潰された状態となる。本実施形態では、通常吸引位置P21は、本発明の第2吸引位置の一例である。
【0062】
本実施形態では、通常吸引処理は、通常吸引位置移動処理の後に実行される処理である。通常吸引位置移動処理は、本発明の第2吸引位置移動処理の一例であり、通常吸引位置移動部162によって実行される。通常吸引処理は、本発明の第2吸引処理の一例であり、通常吸引処理部164によって実行される。
【0063】
通常吸引位置移動部162は、キャップ111~114を通常吸引位置P21に移動させる。本実施形態では、通常吸引位置移動部162は、ヘッド移動機構30を制御することで、キャッピング機構120を間接的に制御する。詳しくは、通常吸引位置移動部162は、図8に示すように、インクヘッド41~44を第1位置P1に移動させるように、ヘッド移動機構30を制御する。このとき、ヘッド移動機構30の制御と連動したキャッピング機構120によって、キャップ111~114がインクヘッド41~114のノズル面45に向かって徐々に移動し、第1位置P1において、インクヘッド41~44のノズル面45にキャップ111~114が装着されて、キャップ111~114が通常吸引位置P21に配置される。
【0064】
このように、キャップ111~114が通常吸引位置P21に位置している状態で、通常吸引処理部164は、吸引ポンプ131~134を駆動させる。このことで、キャップ111~114内を負圧にすることができる。このときのキャップ111~114内の圧力の具体的な数値は特に限定されないが、例えば-5kPa以下である。本実施形態では、通常吸引処理部164による処理によって、キャップ111~114内が負圧になり、ノズル51~58内のインクがキャップ111~114に排出される。以上のようにして、通常吸引処理が行われる。
【0065】
ところで、通常吸引処理において、インクヘッド41~44(言い換えると、ノズル51~58)内のインクを適切に吸引するためには、上述のようにキャップ111~114の弾性部材で形成された端部118がノズル面45に押し潰されるように、キャップ111~114が通常吸引位置P21(図11参照)に配置されているとよい。このことで、ノズル面45とキャップ111~114の端部118との密着力を高めることができる。このような状態で、吸引ポンプ131~134の回転速度を速くするように駆動させることで、キャップ111~114内の圧力を高負圧状態にすることができる。
【0066】
しかしながら、通常吸引処理のときにキャップ111~114内を高負圧状態にすることで、キャップ111~114の端部118がキャップ111~114の内側に撓みキャップ111~114の座屈が発生することがあり得る。このキャップ111~114の座屈が発生することで、ノズル51~58内のインクを適切に吸引し難くなることがあった。
【0067】
そこで、本願発明者は、種々の検討の結果、通常吸引位置P21よりもキャップ111~114をノズル面45から下方に離した位置であっても、インクヘッド41~44内のインクを吸引することが可能なことを見出した。さらに、本願発明者は、通常吸引位置P21よりもキャップ111~114をノズル面45から下方に離すことで、上記のキャップ111~114の座屈が発生し難いことを見出した。
【0068】
本実施形態では、図11に示すように、通常吸引位置P21よりもキャップ111~114をノズル面45から下方に離したキャップ111~114の上下方向の位置を最大吸引位置P22という。この最大吸引位置P22は、本発明の第1吸引位置の一例である。最大吸引位置P22は、通常吸引位置P21よりも下方に位置し、吸引ポンプ131~134を駆動させることで、ノズル51~58内のインクを吸引して、キャップ111~114に排出可能な位置である。最大吸引位置P22のとき、ノズル51~58内のインクを吸引可能な、ノズル面45とキャップ111~114との最大の距離、または、当該最大の距離の近傍となる。
【0069】
本実施形態では、最大吸引位置P22の決定は、制御装置160によって行われる。図10に示すように、最大吸引位置P22を決定する処理を実行するために、制御装置160は、更に、前処理部180と、移動処理部182と、判定部184と、決定部186と、を備えている。なお、最大吸引位置P22を決定するための制御装置160の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば上述した各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、最大吸引位置P22を決定するための制御装置160の上記各部の具体的な制御については、後述する。
【0070】
本実施形態では、前処理部180、移動処理部182、判定部184、および、決定部186が行う処理を「最大吸引位置決定処理」という。ここで、最大吸引位置決定処理は、最大吸引位置P22を決定する処理である。最大吸引位置決定処理は、所定の期間が経過する毎に行われる処理である。また、最大吸引位置決定処理は、キャップ111~114の座屈が発生したときに行われる処理である。
【0071】
次に、最大吸引位置決定処理によって最大吸引位置P22を決定する手順について図11のフローチャートに沿って説明する。
【0072】
まず、ステップS101では、前処理が実行される。本実施形態では、前処理部180は、前処理を実行するようにプログラムされている。ここで、前処理とは、最大吸引位置決定処理の前段階に行われる処理である。前処理は、インク供給システム61~68の全てのインク供給路72a~72h(図3参照)内の圧力が、所定の判定圧力よりも大きくなるようにする処理である。言い換えると、前処理は、ダンパー74a~74hのそれぞれのレバー87の被検出部87cが所定の範囲(ここでは、レバーセンサ88の一対の検出部88aの間)に位置しているとき、吸引ポンプ131~134を駆動させる処理である。
【0073】
前処理部180は、前処理を実行するために、送液ポンプ73a~73hの駆動を制御する。ここで、インク供給路72a~72h内の圧力が所定の判定圧力よりも大きいとは、図6に示すように、レバー87がアンヒットしている、すなわちレバーセンサ88の一対の検出部88aの間に、レバー87が位置していないことと同義である。
【0074】
前処理として、具体的には、前処理部180は、送液ポンプ73a~73hの全てが駆動しているか否かを判定し(ステップS1010)、送液ポンプ73a~73hの何れかが駆動していないとき、駆動していない送液ポンプ73a~73hを駆動させる(ステップS1011)。以下の説明において、「送液ポンプの駆動を制御」とは、レバー87がヒットした場合には、送液ポンプを駆動(言い換えると、回転)させるように自動で制御し、それ以外の場合には、送液ポンプを待機状態(例えば、停止状態)に自動で制御することをいう。ここでは、「送液ポンプの駆動を制御」する状態とは、自動制御状態のことである。
【0075】
次に、前処理部180は、ダンパー74a~74hの全てのレバー87がアンヒットしているか否かを判定する(ステップS1012)。ここでは、送液ポンプ73a~73hの駆動によって、インクがインクヘッド41~44に供給されることで、図6に示すように、ダンパー74a~74hの貯留室82内のインクの量が徐々に多くなり、ダンパー膜83が外側に撓む。このことで、レバー87がアンヒットしている状態となる。すなわち、インク供給路72a~72h内の圧力が、所定の判定圧力よりも大きくなる。
【0076】
ここで、ステップS1012による判定がNOの場合、すなわちダンパー74a~74hのうち、何れかのダンパーのレバー87がヒットしている状態の場合には、前処理部180は、所定の待機時間(例えば、1秒間)の間、待機し(ステップS1013)、再び、ステップS1012の判定を行う。ステップS1012において、ダンパー74a~74hの全てのレバー87がアンヒットしていると判定された場合、前処理部180は、送液ポンプ73a~73hの駆動を停止、および、送液ポンプ73a~73hを閉鎖する(ステップS1014)。ここでは、送液ポンプ73a~73hが閉鎖されることで、インク供給路72a~72hが閉鎖される。このことで、後述するステップS1020の吸引ポンプ131の駆動で、インクを吸引した際に、インクタンク71a~71hからインク供給路72a~72hにインクが供給されて、インク供給路72a~72h内の圧力低下が阻害されることを防止することができる。なお、インク供給路72a~72hを閉鎖する方法は、送液ポンプ73a~73hを閉鎖することに限定されず、例えば、インク供給路72a~72hに設けられたバルブ(図示せず)を閉鎖してもよい。
【0077】
その後、前処理部180は、インクヘッド41~44およびキャップ111~114を所定の位置に移動させる(ステップS1015)。ここで、所定の位置とは、フラッシング位置である。フラッシング位置とは、インクヘッド41からキャップ111に向かってインクを吐出させるフラッシングが行われる位置のことであり、例えば、第1位置P1(図8参照)と第2位置P2(図7参照)との間に設定されている。
【0078】
以上のように、ステップS101の前処理が終了した後、ステップS102の最大吸引位置決定処理が行われる。本実施形態では、最大吸引位置決定処理には、移動処理と、判定処理と、決定処理とが含まれる。
【0079】
移動処理は、キャップ111~114がそれぞれインクヘッド41~44のノズル面45に装着されていない状態(ここでは、インクヘッド41~44がフラッシング位置に位置している状態)において、ノズル面45にキャップ111~114が装着される方向(言い換えると、ノズル面45に接近する方向)に、キャップ111~114を第1の距離D1、移動させる処理である。第1の距離D1については後述する。ここでは、移動処理部182は、移動処理を実行するようにプログラムされている。
【0080】
判定処理は、移動処理が実行された後、吸引ポンプ131~134を駆動させ、インク供給路72a~72h(図3参照)内の圧力である検出圧力をそれぞれ検出し、インク供給路72a~72hの全ての検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定する処理である。判定処理では、ダンパー74a~74hの全てのレバー87がヒットしているか否かを判定する。検出圧力が所定の判定圧力以下になったときとは、インクヘッド41~44内のインクが吸引ポンプ131~134に吸引されたときである。インクヘッド41~44内のインクが吸引ポンプ131~134に吸引されたとき、ダンパー74a~74hのダンパー膜83は内側に撓み、貯留室82内のインクが減少する。判定部184は、判定処理を実行するようにプログラムされている。
【0081】
決定処理では、判定処理においてインク供給路72a~72hの全ての検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定されたとき、すなわち、ダンパー74a~74hの全てのレバー87がヒットしていると判定されたときにおける、ノズル面45に対するキャップ111~114の上下方向の位置を基準位置P23(図11参照)とする。そして、決定処理では、基準位置P23に基づいて、最大吸引位置P22(図11参照)を決定する。決定部186は、決定処理を実行するようにプログラムされている。
【0082】
本実施形態では、ステップS102の最大吸引位置決定処理は、ステップS1020~S1023に沿って行われる。具体的には、まず判定部184は、所定の時間(例えば10秒)の間、吸引ポンプ131~134を駆動させる(ステップS1020)。次に、判定部184は、ダンパー74a~74hの全てのレバー87がヒットしたか否かを判定する(ステップS1021)。ステップS1021では、ダンパー74a~74hの全てのレバー87がヒットすることで、インク供給路72a~72hにおける全ての検出圧力が所定の判定圧力以下であると判定される。
【0083】
ステップS1021において、NOと判定された場合、すなわちダンパー74a~74hのうち何れかのレバー87がアンヒットしていると判定された場合、移動処理部182は、インクヘッド41~44が第1位置P1(図8参照)に向かって、所定の距離(例えば、0.1mm)移動するようにヘッド移動機構30を制御する(ステップS1022)。このとき、ヘッド移動機構30と連動したキャッピング機構120によって、キャップ111~114は、上方へ第1の距離D1、移動する。このことで、インクヘッド41~44のノズル面45とキャップ111~114とが接近する。その後、再度、ステップS1020の制御が行われる。
【0084】
ここで、第1の距離D1は、記憶部161に予め記憶された値である。第1の距離D1の具体的な数値は特に限定されない。第1の距離D1は、0.1mm~0.3mmであり、例えば0.1mmである。第1の距離D1は、上記の所定の位置(ここでは、フラッシング位置)にキャップ111~114が配置されたときのキャップ111~114とノズル面45との距離よりも短い。
【0085】
一方、ステップS1021において、ダンパー74a~74hの全てのレバー87がヒットしていると判定された場合、YESに進み、次にステップS1023の処理が実行される。ステップS1023では、決定部186は、最大吸引位置P22を決定する。ここでは、まず決定部186は、ノズル面45に対するキャップ111~114の上下方向の位置を基準位置P23(図11参照)とし、基準位置P23に基づいて最大吸引位置P22(図11参照)を決定する。
【0086】
本実施形態では、基準位置P23にキャップ111~114が位置している状態で、吸引ポンプ131~134を駆動させると、インクヘッド41~44内のインクを吸引することが可能となる。しかしながら、基準位置P23は、インクヘッド41~44内のインクを吸引できる最下端の位置であるため、キャップ111~114の経年劣化などに起因して、インクヘッド41~44内のインクを吸引できないことが起こり得る。そこで、多少の猶予を持たせるために、最大吸引位置P22を基準位置P23よりも少し上方の位置に設定してもよい。ここでは、決定部186は、図11に示すように、基準位置P23からノズル面45に第2の距離D2近づいた位置を、最大吸引位置P22に決定する。言い換えると、基準位置P23と最大吸引位置P22との上下方向の距離が第2の距離D2である。
【0087】
第2の距離D2は、記憶部161に予め記憶されている。なお、第2の距離D2の具体的な値は特に限定されない。第2の距離D2は、0mm~0.3mmであり、例えば0.1mmである。第2の距離D2は、第1の距離D1と同じである。上記のように、第2の距離D2は、0mmであってもよい。この場合、基準位置P23が最大吸引位置P22となる。
【0088】
本実施形態では、最大吸引位置P22は、通常吸引位置P21よりも下方に位置する。ここでは、通常吸引位置P21は、最大吸引位置P22よりもノズル面45に第3の距離D3近づいた位置である。第3の距離D3は、通常吸引位置P21と最大吸引位置P22との上下方向の距離である。第3の距離D3は、例えば第1の距離D1以上であり、かつ、第2の距離D2以上である。
【0089】
なお、本実施形態において、キャップ111~114の位置が基準位置P23のとき、インクヘッド41~44の主走査方向Yの位置は、第3位置P3(図8参照)である。この第3位置P3は、第1位置P1と第2位置P2との間の位置である。言い換えると、インクヘッド41~44を第2位置P2から第1位置P1へ移動させて、キャップ111~114をノズル面45に接近させている間に、キャップ111~114は基準位置P23を通過する。
【0090】
以上のように、ステップS1023において決定された最大吸引位置P22は、記憶部161に記憶される。このようにして、最大吸引位置P22が決定される。
【0091】
本実施形態では、キャップ111~114が最大吸引位置P22に位置しているときに行われる吸引処理のことを、最大吸引処理という。最大吸引処理は、最大吸引位置移動処理の後に実行される。最大吸引位置移動処理は、本発明の第1吸引位置移動処理の一例であり、最大吸引位置移動部172によって実行される。最大吸引処理は、本発明の第1吸引処理の一例であり、最大吸引処理部174によって実行される。
【0092】
最大吸引位置移動部172は、決定処理で決定された最大吸引位置P22(図11参照)にキャップ111~114を移動させる。本実施形態では、最大吸引位置移動部172は、ヘッド移動機構30を制御することで、キャッピング機構120を間接的に制御する。このように、キャップ111~114が最大吸引位置P22に位置している状態で、最大吸引処理部174は、吸引ポンプ131~134を駆動させる。
【0093】
本実施形態では、最大吸引処理におけるキャップ111~114内のインクを吸引する速度は、通常吸引処理におけるキャップ111~114内のインクを吸引する速度よりも速い。ここでは、最大吸引処理部174は、最大吸引処理において、キャップ111~114内のインクを第1の速度S1で吸引するように、吸引ポンプ131~134の駆動を制御する。なお、本実施形態では、通常吸引処理において、通常吸引処理部164は、キャップ111~114内のインクを第2の速度S2で吸引するように、吸引ポンプ131~134の駆動を制御する。第2の速度S2は、第1の速度S1よりも遅い。
【0094】
本実施形態では、最大吸引処理部174による制御によって、キャップ111~114内が最大吸引位置P22において負圧になり、ノズル51~58内のインクがキャップ111~114に排出される。以上のようにして、最大吸引処理が行われる。
【0095】
なお、最大吸引処理では、インクヘッド41~44のノズル面45とキャップ111~114との距離が、通常吸引処理のときよりも長いため、キャップ111~114の経年劣化などに起因して、インクヘッド41~44内のインクが適切に吸引できないことがあり得る。そこで、本実施形態では、最大吸引処理を行っている間、適切に吸引が行われているか否かの処理(以下、吸引時判定処理という。)を行う。
【0096】
本実施形態では、吸引時判定処理は、吸引時判定部176によって実行されるように、吸引時判定部176はプログラムされている。図13は、警告通知を行うまでの手順を示したフローチャートである。図13のステップS201では、吸引時判定部176は、最大吸引処理を実行している間、インク供給路72a~72hの全ての検出圧力を検出し、全ての検出圧力のうち何れかの検出圧力が判定圧力よりも大きいか否かを判定する。言い換えると、吸引時判定部176は、最大吸引処理を実行している間、ダンパー74a~74hの何れかのレバー87がアンヒットしているか否かを判定する。
【0097】
ここで、吸引時判定処理において、インク供給路72a~72hの全ての検出圧力が判定圧力以下の場合、すなわち、ダンパー74a~74hの全てのレバー87がヒットしている場合、ノズル51~58のインクが適切に吸引されている判定される。この場合、ステップS201の判定結果をNOとし、最大吸引処理を継続しながら、再度ステップS201を実行する。
【0098】
一方、ステップS201の吸引時判定処理において、インク供給路72a~72hの全ての検出圧力のうち何れかの検出圧力が判定圧力よりも大きいとき、すなわち、ダンパー74a~74hの何れかのレバー87がアンヒットしているとき、判定圧力よりも大きい検出圧力に対応したインクヘッドのノズルからインクが適切に吸引されていないと判定される。この場合、次に、ステップS203に進み、警告通知処理が行われる。
【0099】
警告通知処理は、警告通知部178によって実行される。警告通知部178は、最大吸引処理において、適切な吸引処理が行われていない旨の警告を通知する。本実施形態では、警告通知部178は、操作パネル140の表示画面141に警告メッセージを表示する。ただし、この警告の通知の具体的な方法は特に限定されない。警告通知部178は、例えば図示しないランプを点滅または点灯させることで警告を通知してもよいし、図示しないブザーを鳴らすことで、音で警告を通知してもよい。なお、上記のように警告通知処理を実行した場合、最大吸引処理は停止される。
【0100】
以上、本実施形態では、プリンタ100は、図3に示すように、例えばインクが貯留されるインクタンク71aと、インク供給路72aと、第1インクヘッド41と、キャップ111と、吸引ポンプ131と、キャッピング機構120と、圧力検出機構の一例のダンパー74aのレバーセンサ88(図5参照)と、制御装置160とを備えている。インク供給路72aは、インクタンク71aに接続されている。第1インクヘッド41は、インク供給路72aに連通するノズル51を備えたノズル面45(図2参照)を有する。図9に示すように、キャップ111は、弾性部材によって形成され、かつ、ノズル面45に接触可能な端部118を有し、図8に示すように、ノズル51を覆うようにノズル面45に装着可能である。吸引ポンプ131は、キャップ111に接続されている。キャッピング機構120は、ノズル面45に対してキャップ111を装着させたり、離間させたりする。ダンパー74aのレバーセンサ88は、インク供給路72a内の圧力を間接的に検出する。
【0101】
制御装置160は、移動処理と、判定処理と、決定処理とを実行可能に構成されている。移動処理は、移動処理部182によって実行され、キャップ111がノズル面45に装着されていない状態において、ノズル面45に対してキャップ111が接近する方向に前記キャップ111を第1の距離D1、移動させる(図12のステップS1022参照)。判定処理は、判定部184によって実行され、移動処理が実行された後、吸引ポンプ131を駆動させ、インク供給路72aの圧力である検出圧力を検出し、検出圧力が所定の判定圧力以下であるか否かを判定する(図12のステップS1021参照)。決定処理は、決定部186によって実行され、判定処理において検出圧力が判定圧力以下であると判定されたときにおける、ノズル面45に対するキャップ111の位置を基準位置P23(図11参照)とし、基準位置P23に基づいて最大吸引位置P22(図11参照)を決定する(図12のステップS1023参照)。移動処理では、判定処理において検出圧力が判定圧力よりも大きいと判定されたとき、ノズル面45に対してキャップ111が接近する方向にキャップ111を第1の距離D1、移動させる(図12のステップS1022参照)。制御装置160は、更に、最大吸引位置移動処理と、最大吸引処理とを実行可能に構成されている。最大吸引位置移動処理は、最大吸引位置移動部172によって実行され、決定処理によって決定された最大吸引位置P22にキャップ111を移動させる。最大吸引処理は、最大吸引処理部174によって実行され、最大吸引位置P22にキャップ111が位置している状態で、吸引ポンプ131を駆動させる。
【0102】
このことによって、インク供給路72a内の圧力が所定の判定圧力よりも大きく、かつ、キャップ111がノズル面45に装着されている状態で、吸引ポンプ131を駆動させることで、インクヘッド41内のインクが吸引され、キャップ111内に排出される。このとき、インク供給路72a内の圧力は、インクが排出されたために小さくなり、所定の判定圧力以下となる(図5参照)。一方、インク供給路72a内の圧力が所定の判定圧力より大きいままの場合には、インクヘッド41内のインクが吸引されていなく、適切に吸引処理が行われていない状態となる。このように、インクヘッド41内のインクが吸引ポンプ131によって排出されていない状態から、排出された状態に切り替わったときのノズル面45に対するキャップ111の位置が、吸引処理を適切に行うことができる位置であって、ノズル面45に対してキャップ111が最も離れている位置である。当該位置を基準位置P23として、基準位置P23に基づいて最大吸引位置P22に決定し、最大吸引位置P22で最大吸引処理を行うができる。最大吸引位置P22で吸引処理をすることで、キャップ111内を高負圧状態になり過ぎ難くすることができるため、キャップ111の座屈が発生し難くすることができる。よって、最大吸引位置P22で吸引処理を行うことで、キャップ111の座屈が発生し難く、かつ、インクヘッド41内のインクを適切に吸引することができる。
【0103】
本実施形態では、判定処理では、吸引ポンプ131~134を駆動させた状態で、インク供給路72a~72hの全ての検出圧力を検出し、全ての検出圧力が判定圧力以下であるか否かを判定する。決定処理では、判定処理において、インク供給路72a~72hの全ての検出圧力が判定圧力以下であると判定されたときにおける、ノズル面45に対するキャップ111~114の位置を基準位置P23とする。このように、インク供給路72a~72hの全ての検出圧力が判定圧力以下のときのキャップ111~114の位置を基準位置P23としているため、この基準位置P23に基づいて決定された最大吸引位置P22は、全てのノズル51~58内のインクを吸引できる位置である。よって、最大吸引位置P22で吸引処理を行う際、全てのノズル51~58内のインクを適切に吸引することができる。
【0104】
本実施形態では、図5および図6に示すダンパー74a~74hは、印刷時にインクの供給のタイミングを制御するために用いられるものである。ここでは、ダンパー74a~74hのそれぞれのレバーセンサ88を使用して、貯留室82の圧力を検出することで、インク供給路72a~72hの圧力を間接的に検出し、その検出した圧力に基づいて、基準位置P23を決定し、基準位置P23に基づいて最大吸引位置P22を決定している。よって、最大吸引位置P22を決定するための専用の機構を設ける必要がないため、部品点数を減らせることができると共に、製造コストを抑えることができる。
【0105】
本実施形態では、図4に示すように、インク供給路72aには、送液ポンプ73aが配置されている。制御装置160は、ダンパー74aのレバー87の被検出部87cが所定の範囲(ここでは、一対の検出部88a)内に位置しているとき、送液ポンプ73aを駆動させる前処理を実行可能に構成されている。移動処理は、前処理の後、被検出部87cが所定の範囲内に位置していない状態で、実行される。このように、送液ポンプ73aを駆動させることで、ダンパー74aの貯留室82にインクが供給されて、圧力が所定の判定圧力よりも大きくすることができる。よって、ダンパー74aの貯留室82の圧力、言い換えるとインク供給路72aの圧力が所定の判定圧力よりも大きい状態で、最大吸引位置決定処理を実行することができる。したがって、最大吸引位置P22を適切に決定し易い。
【0106】
本実施形態では、制御装置160は、吸引時判定処理と、警告通知処理とを実行可能に構成されている。吸引時判定処理は、吸引時判定部176によって実行され、最大吸引処理を実行している間、インク供給路72aの検出圧力を検出し、当該検出圧力が判定圧力よりも大きいか否かを判定する(図13のステップS201参照)。警告通知処理は、警告通知部178によって実行され、吸引時判定処理によって検出圧力が判定圧力よりも大きいと判定されたとき、警告を通知する(図13のステップS203参照)。最大吸引位置P22で吸引処理が行われる最大吸引処理では、インクヘッド41のノズル面45とキャップ111との距離が、通常吸引処理のときよりも長いため、キャップ111の経年劣化などに起因して、インクヘッド41内のインクが適切に吸引できないことがあり得る。そこで、本実施形態では、最大吸引処理を行っている間、吸引時判定処理を行うことで、最大吸引処理であっても、適切に吸引処理が実行されていることを確認し易い。
【0107】
本実施形態では、図11に示すように、最大吸引位置P22は、基準位置P23からノズル面45に第2の距離D2近づいた位置である。仮に基準位置P23にキャップ111が位置している状態で、吸引ポンプ131を駆動させると、インクヘッド41内のインクを吸引することが可能となる。しかしながら、基準位置P23は、インクヘッド41内のインクを吸引できるキャップ111の最下端の位置であるため、キャップ111の経年劣化などに起因して、インクヘッド41内のインクを吸引できないことが起こり得る。そこで、多少の猶予を持たせるために、最大吸引位置P22を基準位置P23からノズル面45に第2の距離D2近づいた位置に決定することで、キャップ111の経年劣化などに起因して、インクヘッド41内のインクを吸引できないことが起こり難くすることができる。
【0108】
本実施形態では、第1の距離D1と、第2の距離D2とは同じである。このことによって、第1の距離D1と第2の距離D2とが異なる場合と比較して、処理が複雑化することを抑制することができる。
【0109】
本実施形態では、図7および図8に示すように、キャッピング機構120は、第2位置P2から第1位置P1へのインクヘッド41~44の移動と連動して、ノズル面45にキャップ111~114が接近する方向にキャップ111~114を移動させ、かつ、第1位置P1から第2位置P2へのインクヘッド41~44の移動と連動して、ノズル面45にキャップ111~114が離間する方向にキャップ111~114を移動させるように構成されている。本実施形態では、インクヘッド41~44が第1位置P1に到達したと同時に、インクヘッド41~44のノズル面45にキャップ111~114を装着させることができる。よって、インクヘッド41~44が第1位置P1に到着してから、ノズル面45にキャップ111~114を装着させるまでの時間を短縮することができる。よって、通常吸引処理を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0110】
本実施形態では、主走査方向Yにおいて、第1位置P1と第2位置P2との間の位置を第3位置P3(図8参照)とした場合、インクヘッド41が第3位置P3に位置しているときのノズル面45に対するキャップ111の位置が基準位置P23になるように構成されている。このことによって、インクヘッド41を第2位置P2から第1位置P1に移動させている間において、基準位置P23を決定することができる。
【0111】
本実施形態では、図11に示すように、最大吸引位置P22よりもノズル面45に第3の距離D3近づいた位置を通常吸引位置P21とする。制御装置160は、通常吸引位置移動処理と、通常吸引処理とを実行可能に構成されている。通常吸引位置移動処理は、通常吸引位置移動部162によって実行され、通常吸引位置P21にキャップ111を移動させる。通常吸引処理は、通常吸引処理部164によって実行され、通常吸引位置P21にキャップ111が位置している状態で、吸引ポンプ131を駆動させる。最大吸引処理では、キャップ111内のインクを第1の速度S1で吸引するように、吸引ポンプ131の駆動を制御する。通常吸引処理では、キャップ111内のインクを第1の速度S1よりも遅い第2の速度S2で吸引するように、吸引ポンプ131の駆動を制御する。このことによって、最大吸引処理では、通常吸引処理と比較して単位時間当たりのインクの吸引量を多くすることができる。よって、最大吸引処理では、吸引処理の時間を短縮することができる。
【0112】
なお、本実施形態には、制御装置160によって実行される通常吸引位置移動処理、通常吸引処理、最大吸引位置移動処理、最大吸引処理、吸引時判定処理、警告通知処理を実現するためのコンピュータプログラムが含まれる。また、本実施形態には、制御装置160によって実行される移動処理、判定処理、決定処理を実現するための吸引位置決定用のコンピュータプログラムが含まれる。
【0113】
本実施形態では、1つのインクヘッドから異なる種類のインクが吐出されていた。1つのインクヘッドには、2つのインク供給システムが接続されていた。しかしながら、1つのインクヘッドから同じインクが吐出されてもよい。1つのインクヘッドには、1つのインク供給システムが接続されていてもよい。
【0114】
本実施形態では、キャッピング機構120は、ヘッド移動機構30に連動して、キャップ111~114を昇降させていた。しかしながら、本発明に係るキャッピング機構は、駆動モータを備え、この駆動モータを駆動させることで、キャップ111~114を昇降させてもよい。また、本発明に係るキャッピング機構は、第1位置P1にインクヘッド41~44が到達した後に、第1位置P1において、キャップ111~114を昇降させるように構成されていてもよい。
【0115】
本実施形態では、本発明の圧力検出機構は、例えばダンパー74aのレバーセンサ88であった。しかしながら、圧力検出機構は、インク供給路72aに設けられた、いわゆる圧力センサであってもよい。
【符号の説明】
【0116】
41 インクヘッド
42 インクヘッド(他のインクヘッド)
45 ノズル面
51~58 ノズル
71a~71h インクタンク
72a~72h インク供給路
73a~73h 送液ポンプ
74a~74h ダンパー
82 貯留室
83 ダンパー膜
84 レバー
87c 被検出部
88 レバーセンサ(圧力検出機構)
100 プリンタ(インクジェットプリンタ)
111~114 キャップ
118 端部
120 キャッピング機構
131~134 吸引ポンプ(吸引装置)
160 制御装置
図1
図2
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図13