(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】積層型熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 7/16 20060101AFI20240319BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20240319BHJP
F28F 9/18 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F28D7/16 B
F28F9/02 E
F28F9/18
(21)【出願番号】P 2020028452
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸丸 直哉
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025649(JP,A)
【文献】特表2014-524005(JP,A)
【文献】特開2000-304488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
F28F 9/02
F28F 9/18
F28F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の平面部(1a)と、両平面部(1a)間を連結する一対の側部(1b)とにより偏平チューブ(1)が形成され、夫々の平面部(1a)が平行に位置するように多数の偏平チューブ(1)が積層されてコアを形成し、
コアの外周に沿ってケーシングが被嵌され、各偏平チューブ(1)内にガス流路が形成されると共に、各偏平チューブ(1)の外周とケーシングとの間に冷媒流路が形成され、ガス流路に流通するガスと冷媒流路に流通する冷媒との間に熱交換が行われる熱交換器において、
それぞれ前記偏平チューブ(1)の積層体よりなる第1コア(2a)と、第2コア(2b)と
を設け、
第1コア(2a)と、第2コア(2b)とを前記積層方向に並べ、第2コア(2b)寄りの第1コア(2a)の端部に位置する平面部(1a)と、第1コア(2a)寄りの第2コア(2b)の端部に位置する平面部(1a)との間にそれら平面部(1a)と平行に配置され、第2コア(2b)寄りの第1コア(2a)の端部に位置する平面部(1a)との間に第1冷媒流路(6a)を形成すると共に、第1コア(2a)寄りの第2コア(2b)の端部に位置する平面部(1a)との間に第2冷媒流路(6b)を形成し、さらに、第1コア(2a)の各チューブ(1)の外周とケーシング(4)との間に形成された第1冷媒流路と(6a)、第2コア(2b)の各チューブ(1)の外周とケーシング(4)との間に形成された第2冷媒流路(6b)とを分離する仕切板(3)を設け、
前記ケーシング(4)は、前記仕切板(3)を中間に位置して前記両コア(2a)(2b)の外周全体を
被嵌しており、
前記第1コア(2a)の第1ガス流路(5a)の一端と、前記第2コア(2b)の第2ガス流路(5b)の一端との間が、ガス(17)の流れを反転させるガス流れ反転部材(7)で連結されており、
冷媒(16)の流れ
を、第1コア(2a)の第1冷媒流路(6a)から第2コア(2b)の第2冷媒流路(6b)へ反転
する連絡路(8)が設けられ、
前記仕切板(3)の外周縁には、ケーシング(4)の外面側に向けて突出する係止爪(3d)が形成され、
前記ケーシング(4)には、前記仕切板(3)の係止爪(3d)を係合する係合部(4e)が形成されており、
前記仕切板(3)の係止爪(3d)が前記ケーシング(4)の係合部(4e)に係合された状態で、前記係止爪(3d)の先端がケーシング(4)の外面から突出している積層型熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の積層型熱交換器において、
前記仕切板(3)の幅方向の縁部には、一対の前記係止爪(3d)が突設されており、その一対の係止爪(3d)は、前記仕切板(3)の前記ガス流れ反転部材(7)を配置する側に形成されている積層型熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の積層型熱交換器において、
前記ケーシング(4)は、底部(4c)とその底部(4c)から立ち上がる一対の側壁部(4d)とからなるケーシング本体(4a)と、そのケーシング本体(4a)に嵌合される蓋体(4b)とから形成されており、
前記係合部(4e)が、前記ケーシング本体(4a)の側壁部(4d)の前記ガス流れ反転部材(7)の配置側に形成されている積層型熱交換器。
【請求項4】
請求項2又は請求項3のいずれかに記載の積層型熱交換器において、
前記係合部(4e)は、前記ガス流れ反転部材(7)側の方向の端部まで切欠かれて形成されたスリット(22)であり、
前記仕切板(3)の前記係止爪(3d)が前記スリット(22)に係止され、
前記ケーシング(4)と前記ガス流れ反転部材(7)との間に、前記係止爪(3d)が挟持されている積層型熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載の積層型熱交換器において、
前記仕切板(3)の前記係止爪(3d)には、ろう材が塗布されていない積層型熱交換器。
【請求項6】
請求項1に記載の積層型熱交換器において、
前記仕切板(3)は、その外周縁の一部に前記ケーシング(4)の内面と接触しない縁(3c)を有し、前記縁(3c)とケーシング(4)との間に
前記連絡路(8)が形成されて
いる積層型熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内燃機関等に用いられる積層型熱交換器に最適なものに関し、特に、仕切板によって2つのコアを積層方向に分離した積層型熱交換器の組立て性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1および特許文献2に記載の熱交換器は、偏平チューブの積層体からなるコアを有し、そのコア全体をカバーで被嵌したものである。各偏平チューブ内にガスが流通するガス流路が形成され、カバーと各偏平チューブの外面との間に冷媒流路が形成され、ガスと冷媒との間に熱交換を行うものである。
特許文献1、特許文献2に記載された熱交換器は、ガスのみがU字状タンクで反転され、ガス流路が2パスに形成される。一方、冷媒流路はUターンすることなく、1パスに流通する。
冷媒流路が1パスの場合、冷媒の出入口となる一対のパイプが離間して配置されることになり、一対のパイプを近接して配置する必要がある場合、その要望に対応できない欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-88010号公報
【文献】特許第6276054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この欠点を解決し、更に冷媒流れ反転構造を省スペース化するための構造として、本発明者は、次の積層型熱交換器を考案している。
この積層型熱交換器は、偏平チューブの積層体からなる第1コア及び第2コアを有し、その両コアとの間を、偏平チューブの積層方向に分離して、偏平チューブの平面部に平行に仕切板を配置する。この仕切板を両コアの中間に配置した状態で、その両コアの外周全体を1つのケーシングで被嵌する。そして、仕切板とケーシングの内面側との間の一部に冷媒流れ反転構造を設け、冷媒流路側を2パス化している。
このような構造により、ガス流路側及び冷媒流路側をともに2パスに流通させることができ、更に、冷媒流れ反転構造の省スペース化を図ることができる。
なお、この構造は、本発明者が本願発明を創作するに当たり、その過程で考案したものであり、従来技術ではない。
【0005】
しかしながら、本発明者が考案した積層型熱交換器は、第1コアと第2コアとの間に仕切板を配置し、積層型熱交換器の組立て後に、仕切板が正確な位置に配置されているかを確認することができない欠点がある。
また、仕切板は薄い部品であるため、組み込み忘れが生じるおそれがある。
そこで、本発明は、仕切板を確実に正確な位置に配置するとともに、その仕切板の組み込み忘れを検出できる積層型熱交換器の提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、対向する一対の平面部1aと、両平面部1a間を連結する一対の側部1bとにより偏平チューブ1が形成され、夫々の平面部1aが平行に位置するように多数の偏平チューブ1が積層されてコアを形成し、
コアの外周に沿ってケーシングが被嵌され、各偏平チューブ1内にガス流路が形成されると共に、各偏平チューブ1の外周とケーシングとの間に冷媒流路が形成され、ガス流路に流通するガスと冷媒流路に流通する冷媒との間に熱交換が行われる熱交換器において、
それぞれ前記偏平チューブ1の積層体よりなる第1コア2aと、第2コア2bとを設け、
第1コア2aと、第2コア2bとを前記積層方向に並べ、第2コア2b寄りの第1コア2aの端部に位置する平面部1aと、第1コア2a寄りの第2コア2bの端部に位置する平面部1aとの間にそれら平面部1aと平行に配置され、第2コア2b寄りの第1コア2aの端部に位置する平面部1aとの間に第1冷媒流路6aを形成すると共に、第1コア2a寄りの第2コア2bの端部に位置する平面部1aとの間に第2冷媒流路6bを形成し、さらに、第1コア2aの各チューブ1の外周とケーシング4との間に形成された第1冷媒流路6aと、第2コア2bの各チューブ1の外周とケーシング4との間に形成された第2冷媒流路6bとを分離する仕切板3を設け、
前記ケーシング4は、前記仕切板3を中間に位置して前記両コア2a、2bの外周全体を被嵌しており、
前記第1コア2aの第1ガス流路5aの一端と、前記第2コア2bの第2ガス流路5bの一端との間が、ガス17の流れを反転させるガス流れ反転部材7で連結されており、
冷媒16の流れを、第1コア2aの第1冷媒流路6aから第2コア2b第2冷媒流路6bへ反転する連絡路8が設けられ、
前記仕切板3の外周縁には、ケーシング4の外面側に向けて突出する係止爪3dが形成され、
前記ケーシング4には、前記仕切板3の係止爪3dを係合する係合部4eが形成されており、
前記仕切板3の係止爪3dが前記ケーシング4の係合部4eに係合された状態で、前記係止爪3dの先端がケーシング4の外面から突出している積層型熱交換器である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の積層型熱交換器において、
前記仕切板3の幅方向の縁部には、一対の前記係止爪3dが突設されており、その一対の係止爪3dは、前記仕切板3の前記ガス流れ反転部材7を配置する側に形成されている積層型熱交換器である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の積層型熱交換器において、
前記ケーシング4は、底部4cとその底部4cから立ち上がる一対の側壁部4dとからなるケーシング本体4aと、そのケーシング本体4aに嵌合される蓋体4bとから形成されており、
前記係合部4eが、前記ケーシング本体4aの側壁部4dの前記ガス流れ反転部材7の配置側に形成されている積層型熱交換器である。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、請求項2又は請求項3のいずれかに記載の積層型熱交換器において、
前記係合部4eは、前記ガス流れ反転部材7側の方向の端部まで切欠かれて形成されたスリット22であり、
前記仕切板3の前記係止爪3dが前記スリット22に係止され、
前記ケーシング4と前記ガス流れ反転部材7との間に、前記係止爪3dが挟持されている積層型熱交換器である。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載の積層型熱交換器において、
前記仕切板3の前記係止爪3dには、ろう材が塗布されていない積層型熱交換器である。
【0011】
請求項6に記載の本発明は、請求項1に記載の積層型熱交換器において、
前記仕切板3は、その外周縁の一部に前記ケーシング4の内面と接触しない縁3cを有し、前記縁3cとケーシング4との間に前記連絡路8が形成されている積層型熱交換器である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の積層型熱交換器は、仕切板3の外周縁にケーシング4の外面側に向けて突出する係止爪3dが形成され、ケーシング4に仕切板3の係止爪3dを係合する係合部4eが形成され、仕切板3の係止爪3dがケーシング4の係合部4eに係合された状態で、係止爪3dの先端がケーシング4の外面から突出しているものである。
そのため、仕切板3の位置決めが容易に出来、仕切板3が正確な位置にあることを確認することができる。
【0013】
請求項2に記載の積層型熱交換器は、仕切板3の幅方向の縁部に一対の係止爪3dが突設されており、その一対の係止爪3dが仕切板3のガス流れ反転部材7を配置する側に形成されているものである。
このような位置に係止爪3dを設けることで、仕切板3の積層型熱交換器への組み付けが容易になる。
【0014】
請求項3に記載の積層型熱交換器は、ケーシング4が底部4cとその底部4cから立ち上がる一対の側壁部4dとからなるケーシング本体4aと、そのケーシング本体4aに嵌合される蓋体4bとから形成されており、係合部4eが、ケーシング本体4aの側壁部4dのガス流れ反転部材7の配置側に形成されているものである。
この構成により、ケーシング本体4aの仕切板3の係止爪3dが係止された側壁部4dは、蓋体4bの立ち上がり部によって押さえられることにより、仕切板3の係止爪3dとケーシング4の係合部4eとの組み付けが強固となる。
【0015】
請求項4に記載の積層型熱交換器は、係合部4eがガス流れ反転部材7側の方向の端部まで切欠かれて形成されたスリット22であり、仕切板3の係止爪3dがスリット22に係止され、ケーシング4とガス流れ反転部材7との間に、係止爪3dが挟持されるものである。
この構造により、仕切板3の係止爪3dの係合部4eへの組み付けが容易となるとともに、ケーシング4とガス流れ反転部材7との間に、係止爪3dが挟持されることで、仕切板3の係止爪3dの位置決めがされる。
【0016】
請求項5に記載の積層型熱交換器は、仕切板3の前記係止爪3dには、ろう材が塗布されていないものである。
この場合、ろう付け時に仕切板3に隣接する部品(コア,ガス流れ反転部材7)に塗布されたろう材が回り、ろう付けされることになるため、仕切板3にろう材を塗布する作業が不要となる。
【0017】
請求項6に記載の積層型熱交換器は、仕切板3の外周縁の一部にケーシング4の内面と接触しない縁3cを有し、その縁3cとケーシング4との間に連絡路8が形成されており、冷媒16の流れが、連絡路8を介して、第1コア2aの第1冷媒流路6aから第2コア2bの第2冷媒流路6bへ反転されているものである。
この構造により、冷媒の流れを反転させる構造をケーシングの内部に設けることができ、簡単な構造で積層型熱交換器の省スペース化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施例の積層型熱交換器を示す分解斜視図。
【
図2】同積層型熱交換器の組立て斜視図及びB部拡大図。
【
図3】
図2(B)の側面図及び
図3(A)のB-B矢視断面図。
【
図6】本発明の第2実施例の積層型熱交換器の仕切板3の組み付け状態を示す側面図及び
図6(A)のB-B矢視断面図。
【
図7】本発明の第3実施例の積層型熱交換器の仕切板3の組み付け状態を示す側面図及び
図7(A)のB-B矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面に基づいて、本発明の実施の形態につき、説明する。
図1~
図5は、本発明の第1実施例の積層型熱交換器を示す。
図1はその分解斜視図、
図2(A)は同組立て斜視図、
図2(B)は
図2(A)のB部拡大図、
図3(A)は
図2(B)の側面図、
図3(B)は
図3(A)のB-B矢視断面図である。また、
図4は
図2(A)のIV-IV矢視断面図であり、
図5は
図4のV-V矢視断面図である。
【0020】
この熱交換器は、それぞれ偏平チューブ1の積層体からなる第1コア2aと第2コア2bとを有する。各偏平チューブ1は、その横断面が矩形に形成されており、対向する一対の平面部1aと、その平面部1a間を連結する側部1bを有する。各コア2a、2bは、平面部1aが平行になるように積層される。
それらの各コア2a、2bが、仕切板3を介して、積層されることにより、積層コアが形成される。積層コアの外周がケーシング4で被嵌される。
【0021】
この形態では、各偏平チューブ1の軸線方向の両端は、厚み方向に拡開され、その開口が方形となる拡開部1cが形成されている。そして、第1コア2a、第2コア2bはそれぞれ偏平チューブ1の拡開部1cにおいて、積層される。
この例では、
図1及び
図2に示すように、第1コア2aのガス17の流れの上流端、第2コア2bのガス17の流れの下流端には、ガスヘッダ13が被嵌されている。また、第1コア2aのガス17の流れの下流端、第2コア2bのガス17の流れの上流端には、各コア2a、2bを束ねる枠体15が被嵌されている。
【0022】
第1コア2a、第2コア2bを被嵌するケーシング4には、複数のケーシング膨出部20が形成されている。偏平チューブ1の平面部1aの4隅に配置されたケーシング膨出部20は、そのうちの1つ以上の隅部に連絡路8を構成するケーシング膨出部20を配置することが好ましい。この例では、後述に述べる第1冷媒流路6aの冷媒流れの下流側で、且つ、第2冷媒流路6bの冷媒流れの上流側に相当する部分の2隅に、連絡路8を構成するケーシング膨出部20が形成されている。
また、各ケーシング膨出部20は、側部1bに平行で、且つケーシング4に一体に外側に膨出している。
【0023】
第1コア2aと第2コア2bとの間には、それらを積層方向に分離する仕切板3が、偏平チューブ1の平面部1aに平行に配置される。
仕切板3は、その平面において、2つの隅部(連絡路8以外のケーシング膨出部20に相当する位置)に、仕切板3の幅方向に突出する凸部3bを有し、ケーシング4の連絡路8を構成する2つの隅部には、ケーシング4と接触しない縁3cを有する。
そして、その連絡路8以外のケーシング膨出部20では、仕切板3の凸部3bがケーシング膨出部20の内面と接触し、ケーシング膨出部20内を積層方向に閉塞する。
図5に示す如く、仕切板3のケーシング4と接触しない縁3cとケーシング膨出部20とにより、第1冷媒流路6aと第2冷媒流路6bを連通する連絡路8が形成される。
【0024】
第1コア2a、第2コア2bの一方の端部間は、枠体15を介して、ガス流れ反転部材7により連結される。この例では、ガス流れ反転部材7は湾曲したUターン部を有するタンクで形成されている。さらに、第1コア2a、第2コア2bの他方の端部間は、フランジ9に接続される。フランジ9は、偏平チューブ1の積層方向の中間に架橋部9aが形成され、その内側に一対のガスヘッダ13の開口縁が接続される。
仕切板3は、第1コア2aのガスへッダ13と第2コア2bのガスへッダ13との間に、挟持されている。
【0025】
ケーシング4には、一対の冷媒パイプ14が突設される。
この例では、
図1に示す如く、一方の冷媒パイプ14は、仕切板3で分離された第1コア2aの第1冷媒流路6aに連通し、第1冷媒流路6aの冷媒流れの上流側のケーシング膨出部20に突設されている。他方の冷媒パイプ14は、第2コア2bの第2冷媒流路6bに連通し、第2冷媒流路6bの冷媒流れの下流側で、一方の冷媒パイプ14と同一位置のケーシング膨出部20に突設されている。
【0026】
この積層型熱交換器は、
図2(A)及び
図4において、ガス17がフランジ9の架橋部9aの右上側から第1コア2aに流入する。そのガス17が偏平チューブ1の内部を左側へ流通して、ガス流れ反転部材7によりガス17の流れが下方に反転し、フランジ9の架橋部9aの右下側から流出する。
また、冷媒16は、第1冷媒流路6aと連通する右上側の冷媒パイプ14から流入し、第1コア2aの各偏平チューブ1の外面側を左に流通する。その冷媒16の流れが、仕切板3の縁3c(
図1参照)とケーシング4の内周との間に形成される連絡路8を流通(
図5参照)することで、冷媒16の流れが下方に反転する。そして、第2コア2bの各偏平チューブ1の外面側を右方に流通して、それが第2冷媒流路6bと連通する右下側の冷媒パイプ14から流出する。
そして、冷媒16とガス17との間に熱交換が行われる。
【0027】
一例として、
図4に示すように、冷媒流れとガス流れとは並行流とすることができる。その場合、ガスの流入口近傍に冷媒入口用の冷媒パイプ14を配管し、ガスの流出口近傍に冷媒出口用の冷媒パイプ14を配管すると、沸騰が起こりやすいガス入口側を集中的に冷却することができるため、沸騰を防止できる。
また、
図1に示すように、仕切板3の側部端に空気抜き3aを欠設しておくと良い。積層型熱交換器の全体が重力方向に平行に位置され、ガス流れ反転部材7が下側に配置され、フランジ9が上側に配置されるように使用する場合、この空気抜き3aは各コアの上端部に滞留する空気を一方のコアから他方のコアに流通させ、出口側の冷媒パイプ14から外部に滞留した空気を放出することができる。
【0028】
本発明の積層型熱交換器は、仕切板3の位置決め構造に特徴がある。
第1実施例の積層型熱交換器の仕切板3の外周縁には、ケーシング4の外面側に向けて突出する係止爪3dが形成されている。
具体的には、
図1及び
図2に示す如く、仕切板3のガス流れ反転部材7を配置する側で、且つ、仕切板3の幅方向の両側の縁部に、その部分からガス流れ反転部材7側の方向へ延長する付根部3fが形成され、付根部3fの外周縁から係止爪3dがケーシングの外面側に向けて突出している。
【0029】
また、ケーシング4には、仕切板3の係止爪3dを係合する係合部4eが形成されている。
この例のケーシング4は、底部4cとその底部4cから立ち上がる一対の側壁部4dとからなるケーシング本体4aと、そのケーシング本体4aに嵌合される蓋体4bとから形成されている。この例では、上記係合部4eは、ケーシング本体4aの側壁部4dのガス流れ反転部材7の配置側に孔21として形成されている。孔21の高さは、仕切板3の板厚と同程度とし、孔21の幅も仕切板3の係止爪3dの幅と同程度とすることが好ましい。
仕切板3の係止爪3dをケーシング4の孔21に挿通することにより、係合する。この係合状態において、
図3(B)に示す如く、係止爪3dの先端はケーシング4の外面から突出する。
仕切板3の付根部3fの外周縁は、ケーシングの側壁部4dの内面と接触する。
【0030】
また、ガス流れ反転部材7のケーシング4との接続部の縁には、係止爪3dが整合する位置に欠切部7aが形成されている。この欠切部7aは、
図2(B)、
図3のように、ガス流れ反転部材7がケーシング4と嵌着した時に、係止爪3dと干渉しないようにするために設けられる。また、この欠切部7aは、形成しなくともよい。
【0031】
ケーシング4の係合部4eに仕切板3の係止爪3dを挿通することにより、仕切板3の上下、左右、前後が仮固定される。また、仕切板3の係止爪3dの先端がケーシング4の外面から突出している。そのため、簡単な構造で、仕切板3の組み込み忘れを防止することができ、仕切板3が的確な位置にあることを確認することができる。
また、ケーシング4がケーシング本体4aと、そのケーシング本体4aに嵌合される蓋体4bとから形成されている場合、仕切板3の係止爪3dをケーシング本体4aの側壁部4dの係合部4eに取付けることが容易であり、仕切板3がケーシング本体4aに取付けられた状態で、蓋体4bの立ち上がり部によって押さえられることにより、仕切板3の係止爪3dとケーシング4aの係合部4eとの組み付けが強固となる。
【0032】
このように組み立てた積層型熱交換器は、高温の炉内で一体的にろう付される。
このろう付の際、仕切板3に隣接する部品(例えば、各コア2a、2b,ガス流れ反転部材7)にろう材を塗布しておくことで、ろう材が塗布された部材から仕切板3の各接触部分にろう材が回り、仕切板3がろう付けされることになるため、仕切板3にろう材を塗布する作業が不要となる。
【0033】
仕切板3の組み込み忘れや、位置ずれが起こると、ケーシング4と各コア2a、2b間に仕切板3の板厚分の隙間が生じ、その隙間の部分から冷媒漏れが生じるおそれがある。 また、仕切板3の組み込み忘れや、位置ずれは、冷媒入口用の冷媒パイプ14から流入した冷媒が、第1コア2aから第2コア2bへ流通せずに、直接、冷媒出口用の冷媒パイプ14から流出するため、熱交換が不可能な状態になる。
上述のような仕切板3の位置決め構造を有することで、仕切板3の組み込み忘れや、位置ずれが起こることを防止できる。
図1に示すように、各コア2a、2bの偏平チューブ1の表面にディンプル18を突設しておき、仕切板3には、そのディンプル18の先端と当接するディンプル3eを突設しておくと良い。この構造は、ろう付時に積層型熱交換器のケーシングの外側から治具により加えられる圧縮を受けた時に、偏平チューブ1にその圧縮を十分に伝えることができ、各偏平チューブ1の内部に挿入されたインナーフィンが密着した状態でろう付をすることができる。
【0034】
図6(A)は、本発明の第2実施例の積層型熱交換器の仕切板3の組み付け状態を示す側面図であり、
図6(B)は
図6(A)のB-B矢視断面図である。
この実施例が第1実施例と異なる点は、係止爪3dと係合部4eとの係合構造の点である。
この実施例のケーシング4の係合部4eは、ガス流れ反転部材7の接続部側の方向の端部まで切欠かれてスリット22が形成されている。このスリット22に仕切板3の係止爪3dをスリット22の端部まで挿通し、当接させる。その後、ガス流れ反転部材7をケーシング4に嵌合し、ケーシング4とガス流れ反転部材7との間に、係止爪3dを挟持した状態でろう付固定される。
この構造の場合、係合部4eが孔21の場合よりも、仕切板3の係止爪3dのケーシング4への組み付け及び位置決めが容易となる。
【0035】
図7(A)は、本発明の第3実施例の積層型熱交換器の仕切板3の組み付け状態を示す側面図であり、
図7(B)は
図7(A)のB-B矢視断面図である。
この実施例が第2実施例と異なる点は、ガス流れ反転部材7に切欠き7aが設けられていない点である。
このように切欠き7aがないガス流れ反転部材7の端面であっても、第2実施例と同様の効果が得られる。
【0036】
本発明の積層型熱交換器の各コア2a、2bの構成、各コア2a、2bを形成する偏平チューブ1の構成、ケーシング4の構成、ガス流れ反転部材7の構成は、図示されているものに限定されるものではない。
例えば、ガス流れ反転部材7として、湾曲したUターン部を有するタンクに替えて、U字状の幅広の管体等を用いることができる。
各偏平チューブ1の両端は、拡開部1cを有してなくともよい。その場合、一対のヘッダープレートの偏平孔に各偏平チューブ1を挿通し、各ヘッダープレートにそれぞれヘッダ本体が取付けられる。
本発明の仕切板3の係止爪3dの位置は、図面に記載された実施例の位置に限るものではない。例えば、付根部3fを設けずに、仕切板3の凸部3bの位置に設けることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 偏平チューブ
1a 平面部
1b 側部
1c 拡開部
2a 第1コア
2b 第2コア
【0038】
3 仕切板
3a 空気抜き
3b 凸部
3c 縁
3d 係止爪
3e ディンプル
3f 付根部
【0039】
4 ケーシング
4a ケーシング本体
4b 蓋体
4c 底部
4d 側壁部
4e 係合部
【0040】
5a 第1ガス流路
5b 第2ガス流路
6a 第1冷媒流路
6b 第2冷媒流路
7 ガス流れ反転部材
7a 切欠き
8 連絡路
9 フランジ
9a 架橋部
【0041】
13 ガスヘッダ
14 冷媒パイプ
15 枠体
16 冷媒
17 ガス
18 ディンプル
20 ケーシング膨出部
21 孔
22 スリット