(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
H01R13/42 F
(21)【出願番号】P 2020034672
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 亨
(72)【発明者】
【氏名】中山 勇樹
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083109(JP,A)
【文献】特開2018-098116(JP,A)
【文献】特開平11-354197(JP,A)
【文献】特開2009-110669(JP,A)
【文献】特開2013ー004431(JP,A)
【文献】特開2002ー313474(JP,A)
【文献】特開2015ー072868(JP,A)
【文献】特開平05-347167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子収容室が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの前面側を覆うように装着され、前記複数の端子収容室に連通する複数の端子収容室を形成したフロントホルダと、
を備え、
前記フロントホルダは、前記複数の端子収容室を形成する上壁を有し、
前記フロントホルダの前記上壁は、前記ハウジングの複数の端子収容室を覆うように延びて、該複数の端子収容室を画成する区画壁となっており、
前記フロントホルダは、前記フロントホルダの複数の端子収容室内に収容された端子の二重係止を行うスペーサを有し、前記スペーサは、前記フロントホルダの下壁から前記上壁にかけて設けられ、前記下壁と前記上壁との間に位置するスペーサ収容部に収容されて
おり、
前記スペーサの下端は前記フロントホルダの下壁に当接し、前記スペーサの上端は前記フロントホルダの上壁により覆われているコネクタ。
【請求項2】
前記フロントホルダの前記上壁に位置する複数の端子収容室と前記上壁に位置しない複数の端子収容室とは、互い違いの格子状に一体形成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記フロントホルダの前記上壁は、倒れ防止リブを兼ね備えている請求項1又は2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングに端子が収容される複数の端子収容室を有したコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとして、特許文献1に開示されたものがある。このコネクタは、複数の端子収容室を有したハウジングと、このハウジングの前部において端子収容室を画成するフロントホルダと、端子収容室に後方から挿入される雌端子と、ハウジングの下方から挿入される端子係止用のスペーサと、を備えている。
【0003】
ハウジングには、高さ方向に3つの端子収容室が形成されている。また、ハウジングの後部の上壁と下壁との間には、2つの後部隔壁が水平に形成されている。この各後部隔壁は、係止ランスの後方に位置するスペーサの傾斜状の隔壁に続いている。さらに、フロントホルダは、端子収容室の前部を画成する先端下部にテーパガイドを有する3つの隔壁を備えている。これらテーパガイドを有する各隔壁と各後部隔壁は、同一高さに設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のコネクタでは、フロントホルダのハウジングの端子収容室の前部を画成する各隔壁が同じ長さで高さ方向に並列に形成されているため、変形し易い。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、フロントホルダの強度を向上させることができ、かつ、端子収容室内で端子の動きを規制することができるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係るコネクタは、複数の端子収容室が形成されたハウジングと、前記ハウジングの前面側を覆うように装着され、前記複数の端子収容室に連通する複数の端子収容室を形成したフロントホルダと、を備え、前記フロントホルダは、前記複数の端子収容室を形成する壁を有し、前記フロントホルダの前記壁は、前記ハウジングの複数の端子収容室を覆うように延びて、該複数の端子収容室を画成する区画壁となっている。
【0008】
前記フロントホルダの前記壁に位置する複数の端子収容室と前記壁に位置しない複数の端子収容室とは、互い違いの格子状に一体形成されていることが好ましい。
【0009】
前記フロントホルダの前記壁は、上壁であり、倒れ防止リブを兼ね備えていることが好ましい。
【0010】
前記上壁は、前記ハウジングの端子収容室に収容される端子の大きさに応じて長さが異なっていることが好ましい。
【0011】
前記フロントホルダは、前記フロントホルダの複数の端子収容室内に収容された端子の二重係止を行うスペーサを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フロントホルダの強度を向上させることができ、かつ、端子収容室内で端子の動きを規制することができるコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るレバー式コネクタの一例を示す嵌合前の斜視図である。
【
図2】上記レバー式コネクタの雌コネクタの分解斜視図である。
【
図4】上記雌コネクタのフロントホルダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態に係るコネクタについて詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係るレバー式コネクタの一例を示す嵌合前の斜視図である。
図2はレバー式コネクタの雌コネクタの分解斜視図である。
図3は雌コネクタの断面図である。
図4は雌コネクタのフロントホルダの断面図である。
図5は雌コネクタの正面図である。
【0016】
図1に示すように、レバー式コネクタ10は、雄ハウジング(相手ハウジング)12を有した雄コネクタ11と、雄ハウジング12にレバー70を介して嵌合・離脱される雌ハウジング(ハウジング)21を有した雌コネクタ(コネクタ)20と、を備えている。
【0017】
図1に示すように、雄コネクタ11は、合成樹脂製の雄ハウジング12を有している。この雄ハウジング12は、図示しない複数の棒状の雄端子(端子)を貫通させた矩形板状のハウジング本体13と、このハウジング本体13の前側に一体突出形成され、内部に雌コネクタ20のフロントホルダ30が嵌め込まれるフード部14と、を有している。
【0018】
図1に示すように、フード部14の上下壁14a,14bの外面の前側中央には、後述するレバー70のカム溝74が係合するカムボス15をそれぞれ起立するように一体突出形成してある。また、フード部14の上下壁14a,14bのカムボス15の両側には、後述する雌ハウジング21の切欠縁部29とレバー70のロックアーム75の突起部75aの仮係止状態を解除する仮係止解除リブ(解除部)16が一体突出形成されている。さらに、フード部14の上下壁14a,14bの内面には、フロントホルダ30の凹状のガイド溝38に係合する凸部17が一体突出形成されている。
【0019】
図1、
図2に示すように、雌コネクタ20は、雌ハウジング21と、フロントホルダ30と、スペーサ40と、パッキン50と、マットシール51と、マットシールカバー55と、カバー60と、レバー70と、を備えている。これら雌ハウジング21とフロントホルダ30とスペーサ40とマットシールカバー55とカバー60及びレバー70は、合成樹脂製であり、また、パッキン50とマットシール51はゴム製等である。
【0020】
図2に示すように、雌ハウジング21は、ハウジング本体22と、ハウジング本体22の後部に形成され、マットシール51が嵌め込まれる四角筒状の筒体部23と、ハウジング本体22の中央より外側に形成された枠板状の外套部24と、を有している。
【0021】
図2、
図3に示すように、雌ハウジング21のハウジング本体22は、雌端子80を収容する端子収容室(キャビティ)25を上下左右に複数段互い違いに並列に形成した直方体状(ブロック状)に形成されている。また、上下段の各端子収容室25を仕切る隔壁25aには、各端子収容室25に収容された雌端子(端子)80を係止する可撓性のランス26が切り欠き形成されている。さらに、各端子収容室25は、上から2段目までに位置するものがそれより下段に位置するものより大きいサイズに形成されている。また、最上段の左右並列に位置する各端子収容室25は、上壁(天井壁)部分がなく、開口(この開口を図中符号22bで示す)していて外に露出している。なお、ハウジング本体22の両側面の中央前側には、後述するフロントホルダ30の係止用弾性アーム37の係止突起37aが係止される係合突起27を一体突出形成してある。また、雌端子80には、電線81が加締め加工により接続されている。
【0022】
図2に示すように、雌ハウジング21の外套部24の上下面の中央には、後述するレバー70のアーム部72の支軸73が嵌め込まれる軸受凹部28をそれぞれ形成してある。さらに、外套部24の上下壁の中央には、レバー70のロックアーム(仮係止部)75の突起部75aが仮係止される切欠縁部(被仮係止部)29をそれぞれ形成してある。そして、外套部24内には、雄ハウジング12のフード部14が挿入されるようになっている。
【0023】
図1~
図5に示すように、フロントホルダ30は、雌ハウジング21のハウジング本体22の前面22aと上面の開口22bを覆うように装着され、雌ハウジング21の複数の端子収容室25に連通する複数の端子収容室31を形成したブロック状に形成されている。すなわち、フロントホルダ30は、最上段で複数の端子収容室31を形成する上壁(壁)32を有している。この上壁32は、雌ハウジング21の最上段の上面が開口した複数の端子収容室25、つまり、ハウジング本体22の上面の開口22bを覆うように延びていて、雌ハウジング21の最上段の複数の端子収容室25を画成する区画壁となっている。さらに、この上壁32は、倒れ防止リブを兼ね備えている。さらに、上壁32は、雌ハウジング21の最上段の各端子収容室25に収容される端子の大きさに応じて長さが異なっている。
【0024】
そして、
図5に示すように、フロントホルダ30の上壁32、すなわち、最上段に位置する複数の端子収容室31と最上段に位置しないそれより下段に位置する複数の端子収容室31とは、互い違いの格子状にそれぞれ一体形成されている。つまり、上下に位置する雌ハウジング21の各端子収容室25及びフロントホルダ30の各端子収容室31は、正面側から見て互い違いの格子状に配列(所謂千鳥格子状に配列)されている。さらに、各端子収容室31は、上から2段目までに位置するものがそれより下段に位置するものより大きいサイズに形成されていて、雌ハウジング21の複数の端子収容室25に連通している。
【0025】
また、
図4、
図5に示すように、フロントホルダ30の前壁33の各端子収容室31に対応する位置には、雄コネクタ11の図示しない雄端子が挿入される端子挿入孔35を形成してある。さらに、フロントホルダ30の下壁34から上壁32にかけてスペーサ40を収容するスペーサ収容部36が形成されている。また、フロントホルダ30の両側面の中央には、雌ハウジング21のハウジング本体22の係合突起27に係止される係止突起37aを有した片持ち保持の係止用弾性アーム37が一体突出形成されている。さらに、フロントホルダ30の上壁32と下壁34には、フード部14の上下壁14a,14bの内面に設けられた凸部17が係合する凹状のガイド溝38を複数形成してある。
【0026】
図3に示すように、スペーサ40は、雌ハウジング21の複数の端子収容室25内に収容された雌端子80を可撓性のランス26と共に二重係止を行うものであり、複数の端子収容部41を有している。なお、最上段の端子収容部41の上面側は開口している。
【0027】
図2、
図3に示すように、パッキン50は、ゴム製で四角環状に形成されており、雌ハウジング21のハウジング本体22に形成された段差部22cに装着される。この装着により、雌ハウジング21のハウジング本体22と枠板状の外套部24間に嵌め込まれる雄コネクタ11のフード部14と雌ハウジング21のハウジング本体22との間をシールするようになっている。
【0028】
図3に示すように、マットシール51は、ゴム製で矩形板状に形成されていて、雌ハウジング21の後部の四角筒状の筒体部23内に嵌め込まれて複数の端子収容室25をシールするものである。このマットシール51の雌ハウジング21の各端子収容室25に対応する位置には、電線81付きの雌端子80が挿入される端子挿入孔52を形成してある。また、マットシールカバー55は、合成樹脂製で直方体状に形成されていて、雌ハウジング21の筒体部23内に嵌め込まれてマットシール51を覆うものである。このマットシールカバー55にも雌端子80が挿入される端子挿入孔56を形成してある。
【0029】
図1~
図3に示すように、カバー60は、マットシールカバー55の後面55bから引き出された複数の電線81に対して機械的な負荷が作用しないように保護するための電線カバーである。そして、カバー60は、マットシールカバー55の後面55bに対向する面と、その対向する面に連続する一端面とが開口するように形成されている。すなわち、カバー60は、開口部を構成する一対の側壁61,61と、曲面を有する湾曲状の天井壁62とを備えていて、雌ハウジング21の筒体部23の後端側に装着されるように形成されている。
【0030】
図1、
図2に示すように、カバー60の側壁61の下端部61aは、雌ハウジング21の筒体部23の後端部に一体形成された突起片部23aと起立片部23bの間にスライドして抜け止め自在に装着されるようになっている。また、カバー60の天井壁62の開口の先端側には、束ねられてテープ巻きされた複数の電線81を保持する電線保持部63をU字状に一体突出形成してある。
【0031】
図2、
図3に示すように、レバー70は、操作部71と、この操作部71の両側から延びる一対のアーム部72,72と、を備えている。各アーム部72には、雌ハウジング21の軸受凹部28に回動自在に支持される凸状の支軸73が形成されている。また、各アーム部72には、雄ハウジング12のカムボス15に係合されるカム溝74が形成されている。そして、レバー70の操作部71の操作によってカム溝74とカムボス15を介して雄雌両ハウジング12,21がテコの原理による低挿入力で嵌合・離脱されるようになっている。なお、操作部71の裏側には、コネクタ嵌合完了時にカバー60の天井壁62の後部に設けられたロック部64に係止されるロック突起76が形成されている。
【0032】
さらに、
図2に示すように、レバー70のアーム部72のカム溝74の近傍には、弾性変形するロックアーム(仮係止部)75を一体形成してあり、このロックアーム75の突起部75aが雌ハウジング21の切欠縁部29に仮係止・離脱されるようになっている。このロックアーム75の仮係止によりレバー70の回転が規制されるようになっている。この雌ハウジング21の切欠縁部29とレバー70のロックアーム75の突起部75aとの仮係止状態は、雄ハウジング12の仮係止解除リブ16により解除されるようになっている。
【0033】
以上実施形態の雌コネクタ20によれば、フロントホルダ30の上壁32で雌ハウジング21の最上段の各端子収容室25を覆い、フロントホルダ30の上下左右の各端子収容室31を互い違いの格子状に配置することで、上壁32が倒れ防止リブを兼ね備える。この上壁32により、フロントホルダ30の強度を向上させることができると共に、雌コネクタ20の各端子収容室25及びフロントホルダ30の各端子収容室31内で雌端子80の動きを簡単かつ確実に規制することができる。すなわち、上下に位置する雌ハウジング21の各端子収容室25及びフロントホルダ30の各端子収容室31を千鳥格子状に配列することで、そのキャビティ壁の強度を向上させることができる。
【0034】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0035】
すなわち、前記実施形態によれば、レバー式コネクタの雌コネクタに本実施形態を適用したが、レバー式コネクタでないタイプのコネクタの雌コネクタに本実施形態を適用しても良い。
【符号の説明】
【0036】
20 雌コネクタ(コネクタ)
21 雌ハウジング(ハウジング)
22a 前面
25 端子収容室
30 フロントホルダ
31 端子収容室
32 上壁(壁)
40 スペーサ
80 雌端子(端子)