(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】柱と梁との接合構造及び柱と梁との接合構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20240319BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
E04B1/30 E
E04B1/58 508S
(21)【出願番号】P 2020039995
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】佐川 隆之
(72)【発明者】
【氏名】西谷 隆之
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-071809(JP,A)
【文献】特開2004-190350(JP,A)
【文献】特開2008-008120(JP,A)
【文献】特開2006-063617(JP,A)
【文献】特開2000-110356(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1448167(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート充填鋼管造の柱と鉄骨造の梁との接合構造であって、
前記柱は、
鉛直方向に延びる鋼管と、
該鋼管の内部に周方向に沿って配置され、該鋼管の上方から下方に延びる複数の上側接合鉄筋と、
前記鋼管の内部に周方向に沿って配置され、該鋼管の下方から上方に延びる複数の下側接合鉄筋と、を有し、
前記鋼管に連通して配置されたふさぎ部材と、
前記梁に接合される接合梁と、
前記鋼管の内部及び前記ふさぎ部材の内部に充填されたコンクリート部と、を備え、
前記接合梁と、前記ふさぎ部材とは一体成形されており、
前記上側接合鉄筋は、
鉛直方向に延びる上側鉛直部と、
該上側鉛直部の下部に、該上側鉛直部に対して傾斜するように設けられた上側傾斜部と、を有し、
前記下側接合鉄筋は、
鉛直方向に延び、前記上側鉛直部の直下に配置された下側鉛直部と、
該下側鉛直部の上部に、該下側鉛直部に対して傾斜するように設けられた下側傾斜部と、を有し、
前記上側傾斜部の下端部は、前記下側傾斜部の上端部よりも下方に配置され、
鉛直方向から見て、複数の前記上側鉛直部及び複数の前記下側鉛直部は複数の鉛直部配置領域に分散して配置され、前記上側傾斜部の下端部は隣り合う前記鉛直部配置領域の間の第一集約領域に配置され、前記下側傾斜部の上端部は隣り合う前記鉛直部配置領域の間の前記第一集約領域とは異なる第二集約領域に配置されていることを特徴とする柱と梁との接合構造。
【請求項2】
鉛直方向から見て、前記第一集約領域では複数の前記上側傾斜部が交差するように配置され、前記第二集約領域では複数の前記下側傾斜部が交差するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の柱と梁との接合構造。
【請求項3】
前記上側傾斜部の下端部は、前記下側鉛直部の上端部の高さまで達し、
前記下側傾斜部の上端部は、前記上側鉛直部の下端部の高さまで達していることを特徴とする請求項1または2に記載の柱と梁との接合構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の柱と梁との接合構造の施工方法であって、
床面から上方に突出するように延びる前記複数の下側接合鉄筋を囲繞するように前記鋼管を設置する鋼管設置工程と、
前記ふさぎ部材及び該ふさぎ部材
と一体成形され前記梁に接合される
前記接合梁を有する接合部材と
、前記上側接合鉄筋及び前記下側接合鉄筋とを一体化した接合体を、前記ふさぎ部材が前記鋼管に連通するように設置する接合体設置工程と、
前記接合梁に前記梁を接合する梁接合工程と、
前記鋼管の内部及び前記ふさぎ部材の内部にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、を備えることを特徴とする柱と梁との接合構造の施工方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の柱と梁との接合構造の施工方法であって、
床面から上方に突出するように延びる前記複数の下側接合鉄筋を囲繞するように前記鋼管を設置する鋼管設置工程と、
前記ふさぎ部材及び該ふさぎ部材
と一体成形され前記梁に接合される
前記接合梁を有する接合部材を、前記ふさぎ部材が前記鋼管に連通するように設置する接合部材設置工程と、
前記上側接合鉄筋と前記下側接合鉄筋とを有する接合鉄筋を、前記下側接合鉄筋が前記鋼管の内部に配置するように設置する接合鉄筋設置工程と、
前記接合梁に前記梁を接合する梁接合工程と、
前記鋼管の内部及び前記ふさぎ部材の内部にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、を備えることを特徴とする柱と梁との接合構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と梁との接合構造及び柱と梁との接合構造の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼管の内部に接合鉄筋(主筋)及びコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管柱と、コンクリート充填鋼管柱の上下に配置された鉄骨造の梁との接合構造が知られている。コンクリート充填鋼管柱の鉛直方向の中央に接合鉄筋が配置されていない領域(無筋領域)があると、火災時に鋼管が高温になり鋼管による拘束効果がほぼ消失し、無筋領域がせん断破壊してしまうという課題があった。
【0003】
下記の特許文献1では、コンクリート充填鋼管柱の内部に、補強鉄筋体が配置されたものが提案されている。補強鉄筋体は、鉛直方向に延び周方向に沿って間隔を有して配置された複数の鉛直補強筋と、複数の鉛直補強筋を束ねるように鉛直方向に間隔を有して複数配置された平面視円形をなすせん断補強筋(円形補強鉄筋)と、を有している。補強鉄筋体のせん断補強筋によって柱のせん断伝達性能及び軸力伝達性能を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の柱と梁との接合構造では、柱の内部に接合鉄筋及び補強鉄筋体をそれぞれ別作業工程で配置する必要があるため、施工手間が生じるという問題点がある。また、直線状をなす鉄筋を事前に円形に曲げ加工してせん断補強筋を製作する必要があるため,加工手間及び作業期間がかかるという問題点がある。また、接合鉄筋の必要定着長が長い場合には、下階の接合鉄筋と上階の接合鉄筋とが干渉し、配筋が困難であるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、火災時の柱のせん断伝達性能及び軸力伝達性能を確保しつつ、施工性が良い柱と梁との接合構造及び柱と梁との接合構造の施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る柱と梁との接合構造は、コンクリート充填鋼管造の柱と鉄骨造の梁との接合構造であって、前記柱は、鉛直方向に延びる鋼管と、該鋼管の内部に周方向に沿って配置され、該鋼管の上方から下方に延びる複数の上側接合鉄筋と、前記鋼管の内部に周方向に沿って配置され、該鋼管の下方から上方に延びる複数の下側接合鉄筋と、を有し、前記鋼管に連通して配置されたふさぎ部材と、前記梁に接合される接合梁と、前記鋼管の内部及び前記ふさぎ部材の内部に充填されたコンクリート部と、を備え、前記接合梁と、前記ふさぎ部材とは一体成形されており、前記上側接合鉄筋は、鉛直方向に延びる上側鉛直部と、該上側鉛直部の下部に、該上側鉛直部に対して傾斜するように設けられた上側傾斜部と、を有し、前記下側接合鉄筋は、鉛直方向に延び、前記上側鉛直部の直下に配置された下側鉛直部と、該下側鉛直部の上部に、該下側鉛直部に対して傾斜するように設けられた下側傾斜部と、を有し、前記上側傾斜部の下端部は、前記下側傾斜部の上端部よりも下方に配置され、鉛直方向から見て、複数の前記上側鉛直部及び複数の前記下側鉛直部は複数の鉛直部配置領域に分散して配置され、前記上側傾斜部の下端部は隣り合う前記鉛直部配置領域の間の第一集約領域に配置され、前記下側傾斜部の上端部は隣り合う前記鉛直部配置領域の間の前記第一集約領域とは異なる第二集約領域に配置されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された柱と梁との接合構造では、第一集約領域に複数の上側傾斜部の下端部が配置されるとともに第二集約領域に複数の下側傾斜部の上端部が配置されることによって、せん断補強される。よって、火災時に鋼管が高温になっても、充填コンクリート拘束効果を保持し、柱のせん断伝達性能及び軸力伝達性能を確保することができる。
また、従来のように、上側接合鉄筋及び下側接合鉄筋とは別に鋼管の内部に補強鉄筋体等の鉄筋を配置する手間がなく、施工性が良い。
【0009】
また、本発明に係る柱と梁との接合構造は、鉛直方向から見て、前記第一集約領域では複数の前記上側傾斜部が交差するように配置され、前記第二集約領域では複数の前記下側傾斜部が交差するように配置されていてもよい。
【0010】
このように構成された柱と梁との接合構造では、第一集約領域では複数の上側傾斜部が交差するように配置され、第二集約領域では複数の下側傾斜部が交差するように配置されている。これによって、複数の上側傾斜部によってX形配筋状が形成されるとともに、複数の下側傾斜部によってX形配筋状が形成される。よって、生じ得るせん断ひび割れに対して直交するように配置されたX形配筋状(複数の上側傾斜部及び複数の下側傾斜部)によって、せん断耐力をより高めることができる。
【0011】
また、本発明に係る柱と梁との接合構造では、前記上側傾斜部の下端部の高さは、前記下側鉛直部の上端部の高さまで達し、前記下側傾斜部の上端部の高さは、前記上側鉛直部の下端部の高さまで達していてもよい。
【0012】
このように構成された柱と梁との接合構造では、上側傾斜部の下端部が下側鉛直部の上端部の高さまで達し、下側傾斜部の上端部が上側鉛直部の下端部の高さまで達している。よって、上側傾斜部及び下側傾斜部の必要定着長が長くなるため、せん断耐力をより高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る柱と梁との接合構造の施工方法は、上記のいずれか一に記載の柱と梁との接合構造の施工方法であって、床面から上方に突出するように延びる前記複数の下側接合鉄筋を囲繞するように前記鋼管を設置する鋼管設置工程と、前記ふさぎ部材及び該ふさぎ部材と一体成形され前記梁に接合される前記接合梁を有する接合部材と、前記上側接合鉄筋及び前記下側接合鉄筋とを一体化した接合体を、前記ふさぎ部材が前記鋼管に連通するように設置する接合体設置工程と、前記接合梁に前記梁を接合する梁接合工程と、前記鋼管の内部及び前記ふさぎ部材の内部にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
このように構成された柱と梁との接合構造の施工方法では、第一集約領域に複数の上側傾斜部が配置されるとともに第二集約領域に複数の下側傾斜部が配置されることによって、せん断補強される。よって、火災時に鋼管が高温になっても、充填コンクリート拘束効果を保持し、柱のせん断伝達性能及び軸力伝達性能を確保することができる。
また、従来のように、上側接合鉄筋及び下側接合鉄筋とは別に鋼管の内部に補強鉄筋体等の鉄筋を配置する手間がなく、施工性が良い。
また、接合部材と上側接合鉄筋及び下側接合鉄筋とを一体化しておくことによって、接合部材、上側接合鉄筋及び下側接合鉄筋を一度に設置でき、建方時のクレーンの使用回数を削減することができる。
【0015】
また、本発明に係る柱と梁との接合構造の施工方法は、上記のいずれか一に記載の柱と梁との接合構造の施工方法であって、床面から上方に突出するように延びる前記複数の下側接合鉄筋を囲繞するように前記鋼管を設置する鋼管設置工程と、前記ふさぎ部材及び該ふさぎ部材と一体成形され前記梁に接合される前記接合梁を有する接合部材を、前記ふさぎ部材が前記鋼管に連通するように設置する接合部材設置工程と、前記上側接合鉄筋と前記下側接合鉄筋とを有する接合鉄筋を、前記下側接合鉄筋が前記鋼管の内部に配置するように設置する接合鉄筋設置工程と、前記接合梁に前記梁を接合する梁接合工程と、前記鋼管の内部及び前記ふさぎ部材の内部にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
このように構成された柱と梁との接合構造の施工方法では、第一集約領域に複数の上側傾斜部が配置されるとともに第二集約領域に複数の下側傾斜部が配置されることによって、せん断補強される。よって、火災時に鋼管が高温になっても、充填コンクリート拘束効果を保持し、柱のせん断伝達性能及び軸力伝達性能を確保することができる。
また、従来のように、上側接合鉄筋及び下側接合鉄筋とは別に鋼管の内部に補強鉄筋体等の鉄筋を配置する手間がなく、施工性が良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る柱と梁との接合構造及び柱と梁との接合構造の施工方法によれば、火災時の柱のせん断伝達性能及び軸力伝達性能を確保しつつ、施工性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る柱と梁との接合構造を示す鉛直断面図である。
【
図3】(a)
図1のB-B線断面図であり、(b)
図1のC-C線断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る柱と梁との接合構造の柱の内部の構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る柱と梁との接合構造の施工方法を示す図であり、(a)鋼管設置工程を示す図であり、(b)接合体設置工程を示す図であり、(c)梁接合工程を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る柱と梁との接合構造の施工方法を示す図であり、(a)コンクリート充填工程を示す図であり、(b)鋼管設置工程を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態の変形例に係る柱と梁との接合構造を示す鉛直断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の変形例に係る柱と梁との接合構造の施工方法を示す図であり、(a)鋼管設置工程を示す図であり、(b)接合部材設置工程を示す図であり、(c)接合鉄筋設置工程及び梁接合工程を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態の変形例に係る柱と梁との接合構造の施工方法を示す図であり、(a)コンクリート充填工程を示す図であり、(b)鋼管設置工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る柱と梁との接合構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る柱と梁との接合構造を示す鉛直断面図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の柱と梁との接合構造100では、コンクリート充填鋼管造の柱4の上部及び下部に、鉄骨造の梁1が接合されている。
図2に示すように、梁1は、柱4に対して、平面視直交配置されている。
【0021】
一対の梁1が、平面視で直交するように配置されている。本実施形態では、各梁1は、H形鋼で構成されている。
【0022】
図1に示すように、梁1は、上下方向に離間して配置された一対のフランジ11と、一対のフランジ11どうしを連結するウェブ12と、を有している。各梁1の端面には接合部材3がボルト等(不図示)により接合されている。
【0023】
接合部材3は、4本の接合梁1Xと、ふさぎ板(ふさぎ部材)2とを有し、一体成形されている。4本の接合梁1Xは、直交配置されている。
【0024】
接合梁1Xは、梁1と同一断面形状で形成されている。接合梁1Xは、上下方向に離間して配置された一対の接合フランジ11Xと、一対の接合フランジ11Xどうしを連結する接合ウェブ12Xと、を有している。
【0025】
直交配置された接合フランジ11Xどうしは、接合されている。直交配置された接合ウェブ12Xどうしは、接合されている。
【0026】
図2に示すように、接合ウェブ12Xには、円弧状に形成されたふさぎ板部2aが接合されている。ふさぎ板部2aは、直交配置された接合ウェブ12Xどうしを接続している。ふさぎ板部2aの高さは、接合ウェブ12Xの高さと略同一である。4枚のふさぎ板部2aによって、鉛直方向を軸線方向として略円筒状に形成されたふさぎ板2が構成されている。
【0027】
図1に示すように、ふさぎ板2は、後述する柱4の鋼管41と同軸上且つ略同一径で形成されている。ふさぎ部材2は、鋼管41の直上及び直下に、鋼管41と連通するように配置されている。
【0028】
柱4は、鋼管41と、複数の接合鉄筋42と、コンクリート部49と、を有している。
【0029】
鋼管41は、梁1を挟んで上下両側に設置されている。鋼管41は、鉛直方向を軸線方向として円筒状に形成されている。
【0030】
鋼管41の下端41bは、接合梁1Xの上面(接合フランジ11Xの上面)に単に設置されるのみであり、接合フランジ11Xの上面に溶接接合はされていない。鋼管41の上端41uは、接合梁1Xの下面(接合フランジ11Xの下面)に当接配置され、接合フランジ11Xの下面に溶接接合はされていない。
【0031】
複数の接合鉄筋42は、鋼管41の内部に配置されている。接合鉄筋42は、円筒状のふさぎ板2の内部に挿通され、上方の鋼管41から下方の鋼管41まで延びている。換言すると、一の鋼管41の内部には、上側の接合鉄筋42(以下、「上側接合鉄筋42A」と称することがある)の下部及び下側の接合鉄筋42(以下、「下側接合鉄筋42B」と称することがある)の上部が配置されている。上側接合鉄筋42Aの後述する鉛直部43の直下に、下側接合鉄筋42Bの鉛直部43が配置されている。本実施形態では、12本の接合鉄筋42が配置されている(
図2参照)。
【0032】
接合鉄筋42は、鉛直部43と、第一傾斜部(上側傾斜部)44と、第二傾斜部(下側傾斜部)45と、を有している。
【0033】
鉛直部43は、鉛直方向に延びている。鉛直部43は、鋼管41の内部に周方向に間隔を有して配置されている。
【0034】
図3(a)は
図1のB-B線断面図であり、
図3(b)は
図1のC-C線断面図である。
図3(a)に示すように、鉛直部43が配置される領域を領域(鉛直部配置領域)R1とする。領域R1は、鋼管41の内周面に沿って間隔を有して4箇所に形成されている(以下、「領域R11~R14」と称することがある)。本実施形態では、各領域R1に3本の鉛直部43が配置されている。
【0035】
図4は、柱4の内部の構成を示す図である。
図4に示すように、第一傾斜部44は、鉛直部43の下端部43bに設けられている。第一傾斜部44は、鉛直部43に対して傾斜するように設けられている。
【0036】
図3(b)に示すように、第一傾斜部44の下端部44bは、隣り合う領域R1の間の領域(第一集約領域)R2に配置されている。領域R2は、2箇所に形成されている(以下、「領域R21,R22」と称することがある)。領域R21は、領域R11と領域R14との間に配置されている。領域R22は、領域R12と領域R13との間に配置されている。
【0037】
領域R11及び領域R14に配置されている上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44の下端部44bは、領域R21に集約されている。領域R12及び領域R13に配置されている上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44の下端部44bは、領域R22に集約されている。
【0038】
領域R11に配置されている上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44では、下端部44bが領域R14側を向くように、第一傾斜部44が傾斜している。領域R14に配置されている上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44では、下端部44bが領域R11側を向くように、第一傾斜部44が傾斜している。鉛直方向から見て、領域R11に配置されている上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44と領域R14に配置されている上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44とが交差するように配置されている。
【0039】
領域R12に配置されている上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44では、下端部44bが領域R13側を向くように、第一傾斜部44が傾斜している。領域R13に配置されている上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44では、下端部44bが領域R12側を向くように、第一傾斜部44が傾斜している。鉛直方向から見て、領域R12に配置されている上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44と領域R13に配置されている上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44とが交差するように配置されている。
【0040】
図4に示すように、第二傾斜部45は、鉛直部43の上端部43uに設けられている。第二傾斜部45は、鉛直部43に対して傾斜するように設けられている。
【0041】
図3(a)に示すように、第二傾斜部45の上端部45uは、隣り合う領域R1の間の領域(第二集約領域)R3に配置されている。領域R3は、2箇所に形成されている(以下、「領域R31,R32」と称することがある)。領域R31は、領域R11と領域R12との間に配置されている。領域R32は、領域R13と領域R14との間に配置されている。
【0042】
領域R11及び領域R12に配置されている下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45の上端部45uは、領域R31に集約されている。領域R13及び領域R14に配置されている下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45の上端部45uは、領域R32に集約されている。
【0043】
領域R11に配置されている下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45では、上端部45uが領域R12側を向くように、第二傾斜部45が傾斜している。領域R12に配置されている下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45では、上端部45uが領域R11側を向くように、第二傾斜部45が傾斜している。鉛直方向から見て、領域R11に配置されている下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45と領域R12に配置されている下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45とが交差するように配置されている。
【0044】
領域R13に配置されている下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45では、上端部45uが領域R14側を向くように、第二傾斜部45が傾斜している。領域R14に配置されている下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45では、上端部45uが領域R13側を向くように、第二傾斜部45が傾斜している。鉛直方向から見て、領域R13に配置されている下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45と領域R14に配置されている下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45とが交差するように配置されている。
【0045】
図1に示すように、一の鋼管41の内部において、上側には、上側接合鉄筋42Aの鉛直部43(以下、「上側鉛直部43A」と称することがある)が配置されている。一の鋼管41の内部において、下側には、下側接合鉄筋42Bの鉛直部43(以下、「下側鉛直部43B」と称することがある)が配置されている。一の鋼管41の内部において、鉛直方向の略中央には、上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44及び下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45が配置されている。
【0046】
上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44の下端部44bは、下側鉛直部43Bの第二傾斜部45の上端部45uよりも下方に配置されている。上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44の下端部44bは、下側接合鉄筋42Bの下側鉛直部43Bの上端部43uの高さまで達している。下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45の上端部45uは、上側接合鉄筋42Aの上側鉛直部43Aの下端部43bの高さまで達している。
【0047】
コンクリート部49は、鋼管41の内部及びふさぎ板2の内部に充填されている。接合鉄筋42は、コンクリート部49に定着されている。
【0048】
次に、柱と梁との接合構造の施工方法について説明する。
図5は、柱と梁との接合構造の施工方法を示す図であり、(a)下階Aにおける鋼管設置工程を示す図であり、(b)下階Aにおける接合体設置工程を示す図であり、(c)下階Aにおける梁接合工程を示す図である。
図6は、柱と梁との接合構造の施工方法を示す図であり、(a)下階Aにおけるコンクリート充填工程を示す図であり、(b)上階Bにおける鋼管設置工程を示す図である。
【0049】
図5(a)に示すように、下階Aの床Fから突出するように下側接合鉄筋42Bが設置された状態から説明する。下側接合鉄筋42Bの設置方法は後述する。
【0050】
まず、鋼管設置工程を行う。
周方向に配置された複数の下側接合鉄筋42Bを覆うように、鋼管41を設置する。
【0051】
次に、接合体設置工程を行う。
図5(b)に示すように、接合梁1Xに円筒状に形成されたふさぎ板2が接合された接合部材3と接合鉄筋42とを一体化した接合体5を組み立てておく。接合鉄筋42はふさぎ板2の内部に挿通され、接合鉄筋42の上部(下側接合鉄筋42B)がふさぎ板2よりも上方に配置され、接合鉄筋42の下部(上側接合鉄筋42A)がふさぎ板2よりも下方に配置された状態である。ふさぎ板2が鋼管41と連通するように、接合体5を設置する。
【0052】
次に、梁接合工程を行う。
図5(c)に示すように、接合部材3の接合梁1Xに、梁1をボルト等で接合する。また、床デッキプレートを敷き込んでおく。
【0053】
次に、コンクリート打設工程を行う。
図6(a)に示すように、鋼管41の内部及び前記ふさぎ板2の内部にコンクリートを打設する。これによって、上階Bにおいて、床Fから下側接合鉄筋42Bが突出した状態となる。
【0054】
次に、上記の鋼管設置工程、接合体設置工程、梁接合工程及びコンクリート打設工程を、上階Bにおいて行う。
【0055】
このように構成された柱と梁との接合構造100及び柱と梁との接合構造の施工方法では、領域R2に複数の第一傾斜部44の下端部44bが配置されるとともに領域R3に複数の第二傾斜部45の上端部45uが配置されることによって、せん断補強される。よって、火災時に鋼管41が高温になっても、充填コンクリート拘束効果を保持し、柱4のせん断伝達性能及び軸力伝達性能を確保することができる。
【0056】
また、従来のように、上側接合鉄筋42A及び下側接合鉄筋42Bとは別に鋼管41の内部に補強鉄筋体等の鉄筋を配置する手間がなく、施工性が良い。
【0057】
また、領域R2では複数の第一傾斜部44が交差するように配置され、領域R3では複数の第二傾斜部45が交差するように配置されている。これによって、複数の第一傾斜部44によってX形配筋状が形成されるとともに、複数の第二傾斜部45によってX形配筋状が形成される。よって、生じ得るせん断ひび割れに対して直交するように配置されたX形配筋状(複数の第一傾斜部44及び複数の第二傾斜部45)によって、せん断耐力をより高めることができる。
【0058】
また、第一傾斜部44の下端部44bが下側鉛直部43Bの上端部45uの高さまで達し、第二傾斜部45の上端部45uが上側鉛直部43Aの下端部44bの高さまで達している。よって、第一傾斜部44及び第二傾斜部45の必要定着長が長くなるため、せん断耐力をより高めることができる。
【0059】
また、接合部材3と上側接合鉄筋42A及び下側接合鉄筋42Bとを一体化しておくことによって、接合部材3、上側接合鉄筋42A及び下側接合鉄筋42Bを一度に設置でき、建方時のクレーンの使用回数を削減することができる。
【0060】
また、上側接合鉄筋42Aの第一傾斜部44と下側接合鉄筋42Bの第二傾斜部45とが干渉しないように、第一傾斜部44の下端部44bを領域R2に集約し、第二傾斜部45の上端部45uを領域R2とは異なる領域R3に集約している。これによって、下側接合鉄筋42Bを設置した後に、上側接合鉄筋42Aを設置することができる。また、上側接合鉄筋42A及び下側接合鉄筋42Bの必要定着長を確保しつつ,耐火補強の効果を兼ねることができる。
【0061】
(変形例)
次に、本発明の一実施形態の変形例に係る柱と梁との接合構造について、主に
図7~
図10を用いて説明する。
以下の変形例において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
図7は、本発明の一実施形態の変形例に係る柱と梁との接合構造を示す鉛直断面図である。
図8は、
図7のD-D線断面図である。
図7及び
図8に示すように、本変形例の柱と梁との接合構造100Dでは、接合梁1Xは、外ダイヤフラム21で連結されている。外ダイヤフラム21と接合梁1Xの接合フランジ11Xとは、溶接などにより一体化されている。
【0063】
外ダイヤフラム21は、円筒状のふさぎ板2の上下端部にそれぞれ設けられている。外ダイヤフラム21は、平面視略矩形状に形成されており、その四隅に接合梁1Xの接合フランジ11Xが連結されている。外ダイヤフラム21とふさぎ板2とは、溶接などにより一体化されている。
【0064】
鋼管41の下端41bは、外ダイヤフラム21の上面に単に設置されるのみであり、外ダイヤフラム21の上面に溶接接合はされていない。
【0065】
次に、柱と梁との接合構造の施工方法について説明する。
図9は、係る柱と梁との接合構造の施工方法を示す図であり、(a)下階Aにおける鋼管設置工程を示す図であり、(b)下階Aにおける接合部材設置工程を示す図であり、(c)下階Aにおける接合鉄筋設置工程及び梁接合工程を示す図である。
図10は、柱と梁との接合構造の施工方法を示す図であり、(a)下階Aにおけるコンクリート充填工程を示す図であり、(b)上階Bにおける鋼管設置工程を示す図である。
【0066】
図9(a)に示すように、下階Aの床Fから突出するように下側接合鉄筋42Bが設置された状態から説明する。
【0067】
まず、鋼管設置工程を行う。
周方向に配置された複数の下側接合鉄筋42Bを覆うように、鋼管41を設置する。
【0068】
次に、接合部材設置工程を行う。
図9(b)に示すように、ふさぎ板2が鋼管41と連通するように、接合部材3を設置する。
【0069】
次に、接合鉄筋設置工程を行う。
上側接合鉄筋42Aが鋼管41の内部に配置されるように、接合鉄筋42を設置する。下側接合鉄筋42Bがふさぎ板2よりも上方に配置された状態になる。
【0070】
次に、梁接合工程を行う。
接合部材3の接合梁1Xに、梁1をボルト等で接合する。また、床デッキプレートを敷き込んでおく。
【0071】
次に、コンクリート打設工程を行う。
図10(a)に示すように、鋼管41の内部及び前記ふさぎ板2の内部にコンクリートを打設する。これによって、上階Bにおいて、床Fから下側接合鉄筋42Bが突出した状態となる。
【0072】
次に、上記の鋼管設置工程、接合部材設置工程、接合鉄筋設置工程、梁接合工程及びコンクリート打設工程を、上階Bにおいて行う。
【0073】
このように構成された柱と梁との接合構造100D及び柱と梁との接合構造の施工方法では、領域R2に複数の第一傾斜部44の下端部44bが配置されるとともに領域R3に複数の第二傾斜部45の上端部45uが配置されることによって、せん断補強される。よって、火災時に鋼管41が高温になっても、充填コンクリート拘束効果を保持し、柱4のせん断伝達性能及び軸力伝達性能を確保することができる。
【0074】
また、従来のように、上側接合鉄筋42A及び下側接合鉄筋42Bとは別に鋼管41の内部に補強鉄筋体等の鉄筋を配置する手間がなく、施工性が良い。
【0075】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0076】
例えば、上記に示す実施形態では、12本の接合鉄筋42が配置されているが、接合鉄筋の本数は適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…梁
1X…接合梁
2…ふさぎ板(ふさぎ部材)
3…接合部材
4…柱
5…接合体
41…鋼管
42…接合鉄筋
42A…上側接合鉄筋
42B…下側接合鉄筋
43…鉛直部
43A…上側鉛直部
43B…下側鉛直部
44…第一傾斜部(上側傾斜部)
45…第二傾斜部(下側傾斜部)
49…コンクリート部
100,100D…接合構造
F…床
R1,R11~R14…鉛直部配置領域
R2,R21,R22…第一集約領域
R3,R31,R32…第二集約領域