(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】車両試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
(21)【出願番号】P 2020041498
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 計
(72)【発明者】
【氏名】米津 俊
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-168384(JP,A)
【文献】特開2020-020634(JP,A)
【文献】特開2020-012711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 - 17/10
G07C 5/00 - 5/12
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両試験装置として自ら車両の速度を計測する車速計と、
車両試験中、または/および、前記車両試験の前後に、前記車両のネットワークを介して受信した前記車両の固有情報、または/および、前記車両を構成する部品のうち1つ以上の固有情報を前記車速計が計測した計測データと共に記録する制御部とを有し、
前記制御部は、前記車速計による計測データと前記車両のネットワーク上を流れる車速情報とが許容される範囲内で一致しているならば、前記車両の固有情報、または/および、前記車両を構成する部品の固有情報が正しいと判定する、
ことを特徴とする車両試験装置。
【請求項2】
車両試験装置として自ら車両の速度を計測する車速計と、
車両試験中、または/および、前記車両試験の前後に、前記車両のネットワークを介して受信した前記車両の固有情報、または/および、前記車両を構成する部品のうち1つ以上の固有情報を前記車速計が計測した計測データと共に記録する制御部とを有し、
前記制御部は、カメラが撮影した前記車両の撮影画像から車速を推定し、前記車速計による計測データと前記撮影画像から推定した車速情報とが許容される範囲内で一致しているならば、前記車両の固有情報、または/および、前記車両を構成する部品の固有情報が正しいと判定する、
ことを特徴とする車両試験装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記カメラが撮影した前記車両の撮影画像を、前記車速計が計測した計測データと共に記録する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャーシダイナモを使用して燃費試験等を行う場合、車両にあった適切な走行抵抗をシャーシダイナモに設定する必要がある。走行抵抗は、対象車両に速度計を設置し、実路(直線路)にて法規に従った惰行試験を行って計測したデータに基づいて算出される。惰行試験とは、車両試験における走行抵抗試験の1つで、惰行とは動力による加速やブレーキによる減速がなく、車両が惰性により走行している状態をさす。
そして、台上では車重といった車両諸元とともに走行抵抗を設定することで、実路走行を模擬した試験が可能となる。
【0003】
ただし、走行抵抗係数の転記ミスや改ざんの可能性がある。そのため、特許文献1に記載の発明のように、人の手を介在しないシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、走行抵抗は、法規試験に使用される数値であり、計測システムには完全性や責任追及性、真正性といったセキュリティの対応が求められる。
【0006】
この計測システムでの走行抵抗の受け渡しに際して、人の手を介在させず、データの完全性を向上させる発明が、特許文献1に記載されている。
【0007】
走行抵抗には、転記ミスや改ざんの可能性がある。また、ヒューマンエラーか故意かは別にして、そもそも車両自体や装着タイヤなどを取り違えてしまうことができるという問題が残る。
そこで、本発明は、車両試験装置について、計測データの真正性を保証することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、
車両試験装置として自ら車両の速度を計測する車速計と、
車両試験中、または/および、前記車両試験の前後に、前記車両のネットワークを介して受信した前記車両の固有情報、または/および、前記車両を構成する部品のうち1つ以上の固有情報を前記車速計が計測した計測データと共に記録する制御部とを有し、
前記制御部は、前記車速計による計測データと前記車両のネットワーク上を流れる車速情報とが許容される範囲内で一致しているならば、前記車両の固有情報、または/および、前記車両を構成する部品の固有情報が正しいと判定する、
ことを特徴とする車両試験装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両試験装置について、計測データの真正性を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態における認証用試験システムの構成図である。
【
図4】車両固有情報の記録処理のフローチャートである。
【
図5A】車両固有情報と車両画像の記録処理のフローチャート(その1)である。
【
図5B】車両固有情報と車両画像の記録処理のフローチャート(その2)である。
【
図6A】速度チェック処理と、車両固有情報と車両画像の記録処理のフローチャート(その1)である。
【
図6B】速度チェック処理と、車両固有情報と車両画像の記録処理のフローチャート(その2)である。
【
図7】ウェザーステーションによる車両の撮影動作を示す図である。
【
図9】タイヤの状態の検知処理のフローチャートである。
【
図10】データ収録中の車両速度をチェックする処理のフローチャートである。
【
図11】車速が許容範囲であるか否かの判定処理のフローチャートである。
【
図12A】ステレオカメラによる距離算出動作を示す図(その1)である。
【
図12B】ステレオカメラによる距離算出動作を示す図(その2)である。
【
図13】車両通過速度算出のための画像処理を示す図である。
【
図14】マーカを用いた車両通過速度算出のための画像処理を示す図である。
【
図15】マーカ検出のための画像処理を示す図である。
【
図16A】速度チェック処理と、部品固有情報と車両画像の記録処理のフローチャート(その1)である。
【
図16B】速度チェック処理と、部品固有情報と車両画像の記録処理のフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1と
図2は、以下に説明する第1~第6の実施形態に共通する構成を説明する図である。
【0012】
図1は、本実施形態における認証用試験システムSの構成図である。
認証用試験システムSは、車両5(
図7参照)のECU(Electronic Control Unit)1に、車載ネットワークを介して接続された速度計測装置2と、この速度計測装置2に無線接続されたウェザーステーション3とステレオカメラ4とを含んで構成される。但し、第1の実施形態では、このステレオカメラ4については言及しない。
【0013】
ECU1は、後記する
図7に示す車両5の様々な要素を電子制御するコンピュータのうちのひとつである。
速度計測装置2は、表示装置21と、速度計測装置本体22と、IMU(Inertial Measurement Unit)23と、GPS(Global Positioning System)アンテナ24とを含んで構成される。この速度計測装置2は、惰行試験に代表される車両試験を実施する車両試験装置である。速度計測装置2の通信端子は、車内通信ネットワーク(OBD:On-Board Diagnosticsなど)に接続されている。
【0014】
表示装置21は、速度計測装置2の計測状態等を表示するものであり、例えば液晶ディスプレイ等である。IMU23は、運動を司る3軸の角度(または角速度)と加速度を検出することで、車両5の挙動を計測する装置である。GPSアンテナ24は、GPS衛星が発する電波を受信するアンテナである。
【0015】
速度計測装置2は、GPS衛星が発する電波によって車両5の位置を測位し、更にIMU23により車両5の挙動を計測する。すなわち速度計測装置2は、車両5の速度を計測する車速計として機能する。
【0016】
図2は、速度計測装置本体22の構成図である。
速度計測装置本体22は、CPU(Central Processing Unit)221、RAM(Random Access Memory)222、フラッシュROM(Read Only Memory)223、無線モジュール224を含んで構成される。
【0017】
CPU221は、フラッシュROM223等に格納されたプログラムを実行する制御部であり、GPS衛星が発する電波に基づいて測位情報を算出する。このCPU221は、車両試験中、または/および、車両試験の前後に、車両のネットワークを介して受信した車両の固有情報、または/および、この車両を構成する1つ以上の部品の固有情報を車速計が計測した計測データの一部として記録する。
フラッシュROM223は、書き換え可能な不揮発性メモリであり、各種プログラムや計測データ等を格納する。
【0018】
RAM222は、揮発性メモリであり、CPU221による作業メモリとして用いられる。無線モジュール224は、後記するウェザーステーション3との間での無線通信を実行する。
【0019】
図3は、ウェザーステーション3の構成図である。
ウェザーステーション3は、試験環境における天候情報を収集するものであり、CPU31、RAM32、フラッシュROM33、無線モジュール34、アネモメータ35、気温センサ36を含んで構成され、更にステレオカメラ4が接続されている。
【0020】
CPU31は、フラッシュROM33等に格納されたプログラムを実行する制御部であり、ステレオカメラ4で得られる画像を画像解析する。フラッシュROM33は、書き換え可能な不揮発性メモリであり、各種プログラムや計測データ等を格納する。
【0021】
RAM32は、揮発性メモリであり、CPU31による作業メモリとして用いられる。無線モジュール34は、速度計測装置本体22との間での無線通信を実行する。
アネモメータ35は、試験環境における風速を計測する風速計である。気温センサ36は、試験環境における気温を計測する温度計である。
【0022】
《第1の実施形態》
第1の実施形態は、計測データと共に計測対象である車両固有情報を記録するものである。
図4は、第1の実施形態の惰行試験のデータ収録処理のフローチャートである。
速度計測装置2は、車両5に搭載され、車載ネットワークを介して車両5のECU1と通信可能である。運転者は、車両5の速度を試験開始の規定開始速度まで加速したのちに惰行運転し、試験終了の規定終了速度を下回るまで車両速度を計測する。
【0023】
速度計測装置本体22のCPU221は、自身の速度が試験開始の規定開始速度を上回ったか否かを判定する(S10)。自身の速度とは、速度計測装置本体22がGPS衛星の電波から緯度経度情報を繰り返し測位し、この緯度経度情報の変化に基づいて算出した速度、またはGPS衛星から出力されている搬送波のドップラ効果から算出した速度である(以下、GPS速度という)。
CPU221は、自身の速度が規定開始速度を上回っていないならば(No)、S10の処理に戻る。CPU221は、自身の速度が規定開始速度を上回ったならば(Yes)、ステップS11の処理に進む。
【0024】
ステップS11において、CPU221は、ECU1に対して、車両固有情報を要求し、その応答を取得する。また、車速情報である車両速度(車輪速)を取得する。ここで車両が計測している速度はホイール回転数に応じた速度であるため、車輪速とも呼ばれる。
CPU221は、計測対象の車載ネットワークへ接続されていることを認識(保証)するため、車載ネットワーク上を流れる車速情報(車輪速)に対して、自身が計測したGPS速度を比較し、許容される範囲内で一致しているか否かを判定する(S12)。速度計測装置本体22のCPU221は、車両5の速度を高い精度で計測しているため、自身が計測したGPS速度と、車載ネットワークを介してECU1から得た車両5の速度とが許容範囲内で一致していることをもって、計測対象の車載ネットワークへ接続されていること、ひいては取得した車両固有情報が計測対象のものであることが保証可能である。
【0025】
CPU221は、車速情報に対してGPS速度が許容範囲内でなければ(No)、
図4の処理を終了する。CPU221は、車速情報に対してGPS速度が許容範囲内ならば(Yes)、ステップS13に進む。
【0026】
ステップS13において、CPU221は、データ収録を開始する。
データ収録中に、CPU221は、自身の速度が試験終了の規定終了速度を下回ったか否かと、試験停止ボタンが押下されたか否かとを判定する(S14)。CPU221は、自身の速度が規定終了速度を下回っておらず、かつ試験停止ボタンが押下されていないならば(No)、ステップS14の判定処理を繰り返すと共に、データ収録を継続する。CPU221は、自身の速度が規定終了速度を下回ったか、または試験停止ボタンが押下されたならば(Yes)、ステップS15に進む。
【0027】
CPU221は、再び車両固有情報を取得し(S15)、試験開始時と試験終了時にそれぞれ取得した車両固有情報を計測データと共に記録する(S16)。その後、CPU221は、データ収録を停止すると(S17)、
図4の処理を終了する。
【0028】
車両固有情報を計測データと共に記録することで、試験を実施した車両が何であるかを明確にすることができ、よって計測データの真正性を保証することができる。なお、事後的な改ざんを防止するため、車両固有情報と計測データとは暗号化されている。
【0029】
《第2の実施形態》
第2の実施形態は、計測データと共に車両固有情報と車両画像を記録するものである。以下、
図5Aと
図5Bを参照しつつ、第2の実施形態を説明する。
図5Aと
図5Bは、第2の実施形態の惰行試験のデータ収録処理のフローチャートである。
【0030】
速度計測装置本体22のCPU221は、自身の速度が試験開始の規定開始速度を上回ったか否かを判定する(S20)。CPU221は、自身の速度が規定開始速度を上回っていないならば(No)、S20の処理に戻る。CPU221は、自身の速度が規定開始速度を上回ったならば(Yes)、ステップS21の処理に進む。
【0031】
ステップS21において、CPU221は、ECU1に対して、車両固有情報を要求し、その応答を取得する。また、車速情報である車両速度(車輪速)を取得する。
CPU221は、計測対象の車載ネットワークへ接続されていることを認識(保証)するため、車載ネットワーク上を流れる車速情報(車輪速)に対して、自身が計測したGPS速度を比較し、許容される範囲内で一致しているか否かを判定する(S22)。速度計測装置本体22のCPU221は、車両5の速度を高い精度で計測しているため、自身が計測したGPS速度と、車載ネットワークを介してECU1から得た車両5の速度とが許容範囲内で一致していることをもって、計測対象の車載ネットワークへ接続されていること、ひいては取得した車両固有情報が計測対象のものであることが保証可能である。
【0032】
ステップS22において、CPU221は、車速情報に対してGPS速度が許容範囲内でなければ(No)、
図5Aの処理を終了する。CPU221は、車速情報に対してGPS速度が許容範囲内ならば(Yes)、ステップS23に進む。
【0033】
ステップS23において、CPU221は、データ収録を開始する。以下のステップS24~S29は、データ収録中の処理である。
【0034】
これと並行して、ウェザーステーション3の電源が投入されると、ウェザーステーション3のCPU31は、車載された速度計測装置2に無線接続できたか否かを判定する(S40)。CPU31は、速度計測装置2に無線接続できなかったならば(No)、ステップS40の処理に戻り、速度計測装置2に無線接続できたならば(Yes)、ステップS41の判定処理に進む。
【0035】
ステップS41において、CPU31は、画像フレーム内に車両5が撮影されたか否かを判定する。CPU31は、画像フレーム内に車両5が撮影されていないならば(No)、ステップS40の処理に戻り、画像フレーム内に車両5が撮影されたならば(Yes)、車両画像を送信したのち(S42)、ステップS40の処理に戻る。このステップS42の送信処理に対応する受信処理は、後記するステップS24に記載されている。
【0036】
データ収録中に、CPU221は、ウェザーステーション3から車両画像を受信して(S24)、この車両画像を計測データの一部として記録する(S25)。更にCPU221は、自身の速度が試験終了の規定終了速度を下回ったか否かと、試験停止ボタンが押下されたか否かとを判定する(S26)。CPU221は、自身の速度が規定終了速度を下回っておらず、かつ試験停止ボタンが押下されていないならば(No)、データ収録を継続したままステップS26の処理に戻る。CPU221は、自身の速度が規定終了速度を下回ったか、または試験停止ボタンが押下されたならば(Yes)、ステップS27に進む。
【0037】
CPU221は、再び車両固有情報を取得し(S27)、試験開始時と試験終了時にそれぞれ取得した車両固有情報を計測データと共に記録する(S28)。その後、CPU221は、データ収録を停止すると(S29)、
図5Bの処理を終了する。
【0038】
車両固有情報と車両画像を計測データと共に記録することで、試験を実施した車両が何であるかを明確にすることができ、よって計測データの真正性を保証することができる。加えて、車両5の外観を画像として保存することで、サイドミラーを畳んでいないといった空気抵抗に関わる状態が適切だったかを事後的に確認することができる。なお、事後的な改ざんを防止するため、車両固有情報と車両画像と計測データとは暗号化されている。
【0039】
《第3の実施形態》
第3の実施形態は、計測データと共に車両固有情報と車両画像と通過速度とタイヤ情報を記録するものである。
図6Aと
図6Bは、第3の実施形態の惰行試験のデータ収録処理のフローチャートである。
【0040】
速度計測装置本体22のCPU221は、自身の速度が規定開始速度を上回ったか否かを判定する(S50)。CPU221は、自身の速度が規定開始速度を上回っていないならば(No)、S50の処理に戻る。CPU221は、自身の速度が規定開始速度を上回ったならば(Yes)、ステップS51の処理に進む。
【0041】
ステップS51において、CPU221は、ECU1に対して、車両固有情報を要求し、その応答を取得する。また、車速情報である車両速度(車輪速)を取得する。
CPU221は、計測対象の車載ネットワークへ接続されていることを認識(保証)するため、車載ネットワーク上を流れる車速情報(車輪速)に対して、自身が計測したGPS速度を比較し、許容される範囲内で一致しているか否かを判定する(S52)。速度計測装置本体22のCPU221は、車両5の速度を高い精度で計測している。そのため、CPU221は、自身が計測したGPS速度と、車載ネットワークを介してECU1から得た車両5の速度とが許容範囲内で一致していることをもって、計測対象の車載ネットワークへ接続されていること、ひいては取得した車両固有情報が計測対象のものであることが保証可能である。
【0042】
ステップS52において、CPU221は、車速情報に対してGPS速度が許容範囲内でなければ(No)、
図6Aの処理を終了する。CPU221は、車速情報に対してGPS速度が許容範囲内ならば(Yes)、ステップS53に進む。
【0043】
ステップS53において、CPU221は、データ収録を開始する。以下のステップS54~S61は、データ収録中の処理である。
【0044】
これと並行して、ウェザーステーション3の電源が投入されると、ウェザーステーション3のCPU31は、車載された速度計測装置2に無線接続できたか否かを判定する(S70)。CPU31は、速度計測装置2に無線接続できなかったならば(No)、ステップS70の処理に戻り、速度計測装置2に無線接続できたならば(Yes)、ステップS71の判定処理に進む。
【0045】
ステップS71において、CPU31は、画像フレーム内に車両5が撮影されたか否かを判定する。CPU31は、画像フレーム内に車両5が撮影されていないならば(No)、ステップS70の処理に戻り、画像フレーム内に車両5が撮影されたならば(Yes)、この画像フレームに対して
図9に示す画像処理を行い、通過速度を算出したのち(S72)、タイヤ情報を算出する(S73)。タイヤ情報の算出処理の詳細は、後記する
図7と
図8で説明する。通過速度の算出処理の詳細は、後記する
図12Aと
図12Bと
図13から
図15で説明する。
【0046】
そして、CPU31は、タイヤ情報などを送信したのち(S74)、ステップS70の処理に戻る。このステップS73の送信処理に対応する受信処理は、後記するステップS54に記載されている。
【0047】
データ収録中に、CPU221は、ウェザーステーション3から車両画像と通過速度とタイヤ情報を受信する(S54)。CPU221は、計測対象の車両画像であることを保証するため、取得した通過速度に対して、自身が計測したGPS速度を比較し、許容される範囲内で一致しているか否かを判定する(S55)。速度計測装置本体22のCPU221は、車両5の速度を高い精度で計測しているため、自身が計測したGPS速度と、画像から算出された通過速度とが許容範囲内で一致していることをもって、計測対象の車両の画像であることを保証可能である。
【0048】
ステップS55において、CPU221は、通過速度に対してGPS速度が許容される範囲内で一致していないならば(No)、
図6Bの処理を終了し、通過速度に対してGPS速度が許容される範囲内で一致しているならば(Yes)、速度OKフラグをセットしたのち(S56)、ステップS57の処理に進む。
ステップS57において、CPU221は、車両画像と通過速度とタイヤ情報と速度OKフラグを計測データの一部として記録する。
【0049】
更にCPU221は、自身の速度が試験終了の規定終了速度を下回ったか否かと、試験停止ボタンが押下されたか否かとを判定する(S58)。CPU221は、自身の速度が規定終了速度を下回っておらず、かつ試験停止ボタンが押下されていないならば(No)、データ収録を継続したままステップS58の処理に戻る。CPU221は、自身の速度が規定終了速度を下回ったか、または試験停止ボタンが押下されたならば(Yes)、ステップS59に進む。
【0050】
CPU221は、再び車両固有情報を取得し(S59)、試験開始時と試験終了時にそれぞれ取得した車両固有情報を計測データと共に記録する(S60)。その後、CPU221は、データ収録を停止すると(S61)、
図6Bの処理を終了する。
【0051】
車両固有情報に加えて、車両画像と通過速度とタイヤ情報と速度OKフラグを計測データの一部として記録することで、試験の実施状況を明確に記録することができ、よって計測データの真正性を保証することができる。なお、事後的な改ざんを防止するため、車両固有情報と車両画像と通過速度とタイヤ情報と速度OKフラグとは暗号化されている。
【0052】
《第4の実施形態》
第4の実施形態は、カメラによって試験中の車両を撮影して、撮影した一連の画像フレームから車速を算出するものである。試験車両の撮影画像と、撮影した一連の画像フレームから算出した車速と、車速計が計測した車速のデータとを偽造し、かつ矛盾なく整合させることは困難である。よって、車速計が計測した車速と試験車両の撮影画像と撮影した一連の画像フレームから算出した車速を記録することで、計測データの真正性を判定可能である。
【0053】
図7は、ウェザーステーション3による車両の撮影動作を示す図である。
ウェザーステーション3は、通過車両を観察するステレオカメラ4が装備されている。このステレオカメラ4を、試験区間中央付近かつステレオカメラ4の光軸が試験路に対しておおよそ90°となるよう設置する。ウェザーステーション3のCPU31は、このステレオカメラ4から得られる一連の複数画像を利用し、画像フレームに含まれる車両5の通過速度を逐次算出する。
【0054】
この車両5は、タイヤ51~54が装着されている。
図8は、ステレオカメラ4が撮影したタイヤ51の状態の一例を示す図である。
タイヤ51の側面は、略円状であり、中央のホイールリム512と、ゴムで形成された外周部511とを含んで構成される。ホイールリム512の直径はrである。外周部511の径方向の幅はTである。そして、外周部511は弾性体であるため、沈み込み量sで沈み込んでいる。
【0055】
ステレオカメラ4がタイヤ51,52を撮影することにより、後記する距離スケールが算出できると、タイヤホイールの実際の直径を算出可能である。タイヤホイールの実際の直径と、予め入力された標準タイヤホイールサイズとの比較から、試験車両のホイールサイズが適合しているか否かを判定可能である。
【0056】
その他、タイヤの画像計測により、銘柄や扁平率、沈み込み量(速度、車重、空気圧に依存)を取得し、照合、判定、記録することが可能である。これにより、タイヤの状態が惰行試験に適切であるか否かを併せて判定可能である。
【0057】
図9は、車両通過速度とタイヤ情報を算出するための画像処理のフローチャートである。この処理は、
図6Aに示したステップS71,S72の処理の詳細を示したものである。
ステップS80において、CPU31は、ステレオカメラ4から時刻tにおける画像フレームを取得して、RAM32などのメモリに保持する。
【0058】
CPU31は、背景差分に基づいて、動体がフレーム内に在るか否かを判定する(S81)。CPU31は、動体がフレーム内に無いならば(No)、このフレームを背景画像として保持し(S83)、ステップS80の処理に戻り、動体がフレーム内に在るならば、ステップS82の処理に進む。
【0059】
ステップS82において、CPU31は、時刻t,t-1の画像フレームと背景画像の差分を取り、動体領域を抽出する。そしてCPU31は、動体領域が中央を横切るか否かを判定する(S84)。CPU31は、動体領域が中央を横切っていないと判定したならば(No)、ステップS80の処理に戻り、動体領域が中央を横切ったと判定したならば(Yes)、その動体領域の変位量を算出する(S85)。
【0060】
動体領域が中央を横切ったタイミングとは、車両5の中央点が画像フレームの中央にもっとも近づいたタイミングであり、かつカメラ正面を車両5が通過するタイミングでもある。ステレオカメラ4の正面を車両5が通過する際、このステレオカメラ4によって最も適切な車両5の外観画像を得ることができ、かつ、速度計測装置2とウェザーステーション3との間の無線通信が最も良好に行える。
【0061】
ステップS86において、CPU31は、ステレオカメラ4が撮影した画像フレームに基づき、ステレオカメラ4から動体(車両)までの距離を算出する。これによりCPU31は、画像計測したタイヤホイール直径[Pixel]を、実際の直径[m]に変換可能となる。更にCPU31は、動体の画像フレーム上の変位量[Pixel]と実際の移動距離[m]を算出し、更にカメラのフレームレートから通過速度を算出する(S87)。
【0062】
そして、CPU31は、画像フレーム内から前後輪タイヤをそれぞれ認識して、縦・横方向の実際の長さを算出し(S88)、
図9の処理を終了する。
これによりCPU31は、予め入力された標準タイヤホイールサイズとの比較から、少なくともホイールサイズが適合していることを確認できる。更にCPU31は、タイヤを画像計測して、その銘柄や扁平率、沈み込み量(速度、車重、空気圧に依存)を取得し、照合、判定、記録することが可能である。
【0063】
車速計は、車両の速度を高い精度で計測している。カメラから得た車速は、車速計が計測した車速と整合している。これら各種データを偽造し、かつ各種データを矛盾なく整合させることは困難である。よって、車速計が計測した車速とカメラから得た車速を比較することで、計測データの真正性を判定可能である。
【0064】
《第5の実施形態》
第5の実施形態は、試験によってデータを収録し、収録したデータを事後的に処理するものである。
図10は、データ収録中の車両速度をチェックする処理のフローチャートである。
ステップS100~S103の処理は、試験によってデータを収録する一連の処理である。
【0065】
速度計測装置本体22のCPU221は、自身の速度が試験開始の規定開始速度を上回ったか否かを判定する(S100)。自身の速度が規定開始速度以下ならば(No)、ステップS100の処理を繰り返し、自身の速度が規定開始速度を上回ったならば(Yes)、ステップS101の処理に進む。
【0066】
ステップS101において、CPU221は、計測器から得られるデータと、車両側から得られる車両固有情報および車速情報の収録を開始する。ここで車両側から得た車速はファイルに書き出しする必要はなく、メモリ上で管理し,計測器データと比較後,問題なければ破棄されてもよい。車両側から得た車両固有情報は時間に対して変化しない。そのためCPU221は、最初の1つだけを記憶し、それ以降は取得できたタイミングで変化していないか確認するという処理でもよい。
【0067】
CPU221は、自身の速度が試験終了の規定終了速度を下回ったか否かと、試験停止ボタンが押下されたか否かとを判定する(S102)。CPU221は、自身の速度が規定終了速度を下回っておらず、かつ試験停止のボタンが押下されていないならば(No)、ステップS102の処理に戻り、自身の速度が規定終了速度を下回ったか、または試験停止ボタンが押下されたならば(Yes)、データ収録を停止し(S103)、ステップS104の処理に進む。
【0068】
ステップS104において、CPU221は、車両速度比較処理を行う。この車両速度比較処理は、後記する
図11で詳細に説明する。
ステップS105において、CPU221は、車両5から得た速度がGPS速度に対して許容範囲内であるか否かを判定する。CPU221は、車両5から得た速度がGPS速度の許容範囲内ならば(Yes)、ステップS106に進み、車両5から得た速度がGPS速度の許容範囲外ならば、
図10の処理を終了する。
ステップS106において、CPU221は、速度OKフラグを記録し、
図10の処理を終了する。
【0069】
図11は、車速が許容範囲であるか否かの判定処理のフローチャートである。この判定処理は、
図10のステップS104から呼び出される。
ステップS110において、CPU221は、データ番号を示す変数Nに0をセットして、一連の判定処理を開始する。
【0070】
ステップS111において、CPU221は、データ番号NにおけるGPSの車速Vと車両側から得た車速Uを取得する。そして、CPU221は、車速Vと車速Uとが、以下の式(1)を満たすか否かを判定する(S112)。
【0071】
【0072】
この式(1)は、車速Uが車速Vの90~110%であることを判定するものである。つまり、車速Uの許容範囲は、車速Vの90~110%である。車両に搭載されている速度計の表示誤差は法律で規定され、車検でチェックされる。よって、車検を通りうる車両のうち殆どは、上記の式(1)を満たす。
【0073】
CPU221は、車速Vと車速Uが式(1)を満たすならば(Yes)、データ番号を示す変数Nに1を加算して(S113)、ステップS114に進み、車速Vと車速Uが式(1)を満たさないならば(No)、車速Uが許容範囲外と判定し(S116)、
図11の処理を終了する。
【0074】
ステップS114において、CPU221は、変数Nが収録データ数を超えたか否かを判定する。CPU221は、変数Nが収録データ数以下ならば(No)、ステップS111の処理に戻り、変数Nが収録データ数を超えたならば(Yes)、車速Uが許容範囲内と判定して(S115)、
図11の処理を終了する。
【0075】
車両固有情報に加えて、GPSの車速Vと車両側から得た車速Uを計測データの一部として記録することで、試験の実施状況を明確に記録することができる。この車速Vと車速Uとが収録範囲全域に対して許容範囲内で整合していることで、計測データの真正性を保証することができる。なお、事後的な改ざんを防止するため、車両固有情報と車両速度と速度OKフラグとは暗号化されている。
【0076】
ここで、画像による車両速度(通過速度)の計測方法について説明する。
図12Aと
図12Bは、ステレオカメラ4による距離算出動作を示す図である。
図12Aは、ステレオカメラ4を上から視た図である。
図12Bは、ステレオカメラ4を右横から視た図である。
【0077】
ステレオカメラ4は、カメラ4L,4Rを含んで構成される。カメラ4Lとカメラ4Rの光軸は平行かつ同一の水平面に含まれており、かつ距離bだけ離れている。原点Oは、カメラ4Lとカメラ4Rの中間点である。各カメラ4L,4Rの水平方向の画角はθである。
【0078】
被写体Pは、原点Oから光軸方向に距離Zだけ離れ、右側に距離Xだけ離れ、上側に距離Yだけ離れている。
カメラ4Lから視ると、被写体Pは、焦点距離fの画像座標系において右側に距離x
lの位置、かつ上側に距離y
lの位置に見える。カメラ4Rから視ると、被写体Pは、焦点距離fの画像座標系において左側に距離x
rの位置、かつ上側に距離y
r(=y
l)の位置に見える。これは、以下の式(2)と式(3)の関係を有している。
【数2】
【0079】
【0080】
そして、焦点距離fと距離Zの比は、以下の式(4)で示される。なお、距離x
lと距離x
rとの画素数の差は、視差と呼ばれる。
【数4】
【0081】
これを被写体Pの座標について整理すれば、以下の式(5)と式(6)と式(7)とが得られる。
【数5】
【0082】
【0083】
【0084】
カメラ座標の原点Oを光軸にとった水平画素数は2xmaxで示される。ここでΔxは、距離Zにおけるステレオカメラ4の画角中央から画角左端までの実寸である。角度θは、カメラ4Lの画角である。
【0085】
【0086】
これより、1pixelに対応する物体面上の実寸は、X方向のスケール係数δ
Xとして、式(9)のように得られる。
【数9】
【0087】
なお、ステレオカメラ4の画素のアスペクト比が1であれば、X方向のスケール係数δ
XとY方向のスケール係数δ
Yとは等しい。以下では、スケール係数を単にδと記載する。
以上から、車両の速度U[mm/s]は、式(10)のように算出することができる。ここで、ΔL[pixel]は、動体(車両5)についてのフレーム間のピクセル変位量である。Fは、カメラのフレームレート[frames/s]である。δ[mm/pixel]は、画像フレーム上の画素を物体面上の実寸に変換するスケール係数である。
【数10】
【0088】
なお、ステレオカメラを用いてδを算出せずとも、単眼カメラにおける距離Z,Δxなどを予め入力しておいてもよい。
【0089】
図13は、車両通過速度算出のための画像処理を示す図である。
画像フレーム63は、時刻tにおけるフレームであり、車両が撮影されている。
画像フレーム61は、画像フレーム63の直前であり、かつ時刻t-1におけるフレームであるため、撮影されている車両はやや左側に位置している。画像フレーム62は、車両が撮影されていない背景のフレームである。
【0090】
画像フレーム64は、画像フレーム61の輝度値から、背景の画像フレーム62の輝度値を減算した差分画像である。これにより背景は打ち消されて黒となり、車両が明瞭に示される。
画像フレーム65は、画像フレーム63の輝度値から、背景の画像フレーム62の輝度値を減算した差分画像である。これにより背景は打ち消されて黒となり、車両が明瞭に示される。
【0091】
画像フレーム66は、画像フレーム64を二値化してノイズを除去したものである。このとき車両の右端は、画像フレーム66の左端からL(t-1)のピクセル位置である。
画像フレーム67は、画像フレーム65を二値化してノイズを除去したものである。このとき車両の右端は、画像フレーム67の左端からL(t)のピクセル位置である。
【0092】
このとき、フレーム間のピクセル変位量ΔLは、L(t)からL(t-1)を減算することで求められる。
【0093】
図14は、マーカを用いた車両通過速度算出のための画像処理を示す図である。
画像フレーム72は、時刻tにおけるフレームであり、マーカを付けた車両が撮影されている。
画像フレーム71は、画像フレーム72の直前であり、かつ時刻t-1におけるフレームであるため、撮影されている車両には、マーカがつけられており、時刻tのフレームよりもやや左側に位置している。
マーカ73は、車両の側面中央に付けられたマーカと同一の画像である。ウェザーステーション3のCPU31は、このマーカ73で画像フレーム71,72をトラッキングすることで、車両5の位置を特定可能である。
【0094】
画像フレーム74は、画像フレーム71上でマーカ73をトラッキングして得たものである。このマーカの位置は、左端からL(t-1)のピクセル位置である。
画像フレーム75は、画像フレーム72上でマーカ73をトラッキングして得たものである。このマーカの位置は、左端からL(t)のピクセル位置である。
【0095】
このとき、フレーム間のピクセル変位量ΔLは、L(t)からL(t-1)を減算することで求められる。
【0096】
図15は、マーカ検出のための画像処理を示す図である。
マーカ画像81は既知であり、画像フレーム82は、所定パターン(マーカ)を含んでいる。
【0097】
CPU31は、画像フレーム82上で、所定サイズの矩形で縦横にトラッキング走査して、マーカ画像81と比較する。このときCPU31は、マーカ画像81と矩形との差異(相違度)が0またはその近傍であったならば、画像フレーム82上に所定パターンを発見したと判定する。このようにして、CPU31は、画像フレームから所定のマーカを検出可能である。
【0098】
《第6の実施形態》
第6の実施形態は、車両固有情報の代替情報として部品の固有情報を用いている。部品の固有情報には、シリアル番号だけでなく、製品型番、ロット番号、製造日のような情報も含まれる。例えば、100個の部品のロット番号を集められたら、それらの組み合わせを載せた車両は、ほぼ1台に特定できることが期待される。よって、部品の固有情報は、車両固有情報の代替情報として用いることができる。部品の固有情報としては、例えばタイヤセンサシリアル番号、触媒センサシリアル番号などが考えられる。
速度計測装置2は更に、試験に大きく影響する部品の状態値を、計測データに含めるとよい。これにより、計測データの妥当性を示すことができる。
【0099】
図16Aと
図16Bは、第6の実施形態の速度チェック処理と、部品固有情報と車両画像の記録処理のフローチャートである。
速度計測装置本体22のCPU221は、自身の速度が試験開始の規定開始速度を上回ったか否かを判定する(S120)。CPU221は、自身の速度が規定開始速度を上回っていないならば(No)、S120の処理に戻る。CPU221は、自身の速度が規定開始速度を上回ったならば(Yes)、ステップS121の処理に進む。
【0100】
ステップS121において、CPU221は、ECU1に対して、部品固有情報を要求し、その応答を取得する。また、CPU221は、車速情報である車両速度(車輪速)を取得する。
CPU221は、計測対象の車載ネットワークへ接続されていることを認識(保証)するため、車載ネットワーク上を流れる車速情報(車輪速)に対して、自身が計測したGPS速度を比較し、許容される範囲内で一致しているか否かを判定する(S122)。速度計測装置本体22のCPU221は、車両5の速度を高い精度で計測している。そのため、CPU221は、自身が計測したGPS速度と、車載ネットワークを介してECU1から得た車両5の速度とが許容範囲内で一致していることをもって、計測対象の車載ネットワークへ接続されていること、ひいては取得した部品固有情報が計測対象のものであることが保証可能である。
【0101】
ステップS122において、CPU221は、車速情報に対してGPS速度が許容範囲内でなければ(No)、
図16Bの処理を終了する。CPU221は、車速情報に対してGPS速度が許容範囲内ならば(Yes)、ステップS123に進む。
【0102】
ステップS123において、CPU221は、データ収録を開始する。以下のステップS124~S128は、データ収録中の処理である。
【0103】
これと並行して、ウェザーステーション3の電源が投入されると、ウェザーステーション3のCPU31は、車載された速度計測装置2に無線接続できたか否かを判定する(S140)。CPU31は、速度計測装置2に無線接続できなかったならば(No)、ステップS140の処理に戻り、速度計測装置2に無線接続できたならば(Yes)、ステップS141の判定処理に進む。
【0104】
ステップS141において、CPU31は、画像フレーム内に車両5が撮影されたか否かを判定する。CPU31は、画像フレーム内に車両5が撮影されていないならば(No)、ステップS140の処理に戻り、画像フレーム内に車両5が撮影されたならば(Yes)、この画像フレームに対して
図9に示す画像処理を行い(S142)、通過速度とタイヤ情報とを算出する。タイヤ情報の算出処理の詳細は、
図7と
図8で説明した。通過速度の算出処理の詳細は、
図12Aと
図12Bと
図13から
図15で説明した。
【0105】
そして、CPU31は、車両画像と通過速度とタイヤ情報を送信したのち(S143)、ステップS140の処理に戻る。このステップS143の送信処理に対応する受信処理は、後記するステップS124に記載されている。
【0106】
データ収録中に、CPU221は、ウェザーステーション3から車両画像と通過速度とタイヤ情報を受信する(S124)。CPU221は、計測対象の車両であることを保証するため、取得した通過速度に対して、自身が計測したGPS速度を比較し、許容される範囲内で一致しているか否かを判定する(S125)。速度計測装置本体22のCPU221は、車両5の速度を高い精度で計測しているため、自身が計測したGPS速度と、画像から算出された通過速度とが許容範囲内で一致していることをもって、計測対象の車両の画像であることを保証可能である。
【0107】
ステップS125において、CPU221は、通過速度に対してGPS速度が許容される範囲内で一致していないならば(No)、
図16Bの処理を終了し、通過速度に対してGPS速度が許容される範囲内で一致しているならば(Yes)、速度OKフラグをセットして(S126)、ステップS127に進む。
ステップS127において、CPU221は、車両画像と通過速度とタイヤ情報と速度OKフラグを計測データの一部として記録する。
【0108】
更にCPU221は、自身の速度が試験終了の規定終了速度を下回ったか否かと、試験停止ボタンが押下されたか否かとを判定する(S128)。CPU221は、自身の速度が規定終了速度を下回っておらず、かつ試験停止ボタンが押下されていないならば(No)、データ収録を継続したままステップS128の処理に戻る。CPU221は、自身の速度が規定終了速度を下回ったか、または試験停止ボタンが押下されたならば(Yes)、ステップS129に進む。
【0109】
CPU221は、再び部品固有情報を取得し(S129)、試験開始時と試験終了時にそれぞれ取得した部品固有情報を計測データと共に記録する(S130)。その後、CPU221は、データ収録を停止すると(S131)、
図16Bの処理を終了する。
【0110】
部品固有情報を計測データと共に記録することで、試験を実施した車両が何であるかを明確にすることができ、よって計測データの真正性を保証することができる。なお、事後的な改ざんを防止するため、部品固有情報と計測データとは暗号化されている。
【0111】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)~(e)のようなものがある。
【0112】
(a) 計測データは、作業者が編集・加工した場合は、作業者固有情報とともに履歴として記録されてもよい。
(b) 計測データには車両固有情報の他に、計測装置の固有情報や運転者の固有情報を含めてもよい。
(c) 車両固有情報の代替情報として部品の固有情報を用いるだけでなく、車両情報と部品の固有情報の両方を計測データに含めてもよい。
(d) 本発明は、惰行試験に限られず、車外騒音測定、燃費試験、制動試験などに適用してもよい。
(e) 速度計測装置が車両の固有情報、または/および、この車両を構成する部品のうち1つ以上の固有情報を記録するタイミングは、車両試験の前後に限られず、車両試験中であってもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 ECU
2 速度計測装置 (車両試験装置)
21 表示装置
22 速度計測装置本体
221 CPU
222 RAM
223 フラッシュROM
224 無線モジュール
23 IMU
24 GPSアンテナ
3 ウェザーステーション
31 CPU
32 RAM
33 フラッシュROM
34 無線モジュール
35 アネモメータ
36 気温センサ
4 ステレオカメラ
4L カメラ
4R カメラ
5 車両
51~54 タイヤ
511 外周部
512 ホイールリム
61~67,71,72,74,75,82 画像フレーム
81 マーカ画像
73 マーカ