IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山九株式会社の特許一覧 ▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コンクリート擁壁通風孔用型枠 図1
  • 特許-コンクリート擁壁通風孔用型枠 図2
  • 特許-コンクリート擁壁通風孔用型枠 図3
  • 特許-コンクリート擁壁通風孔用型枠 図4
  • 特許-コンクリート擁壁通風孔用型枠 図5
  • 特許-コンクリート擁壁通風孔用型枠 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】コンクリート擁壁通風孔用型枠
(51)【国際特許分類】
   E04G 11/06 20060101AFI20240319BHJP
   C10B 29/08 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
E04G11/06 Z
C10B29/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020049270
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147885
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】薬眞寺 尉之
(72)【発明者】
【氏名】上村 竜介
(72)【発明者】
【氏名】杉村 裕二
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3038059(JP,U)
【文献】実開昭48-008038(JP,U)
【文献】特開2004-244979(JP,A)
【文献】特開平08-218623(JP,A)
【文献】特開2012-047021(JP,A)
【文献】特開昭53-019301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
C10B 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート擁壁の通風孔を形成するための型枠であって、
長尺の箱形状に形成され、該箱形を構成する長手方向に沿った四方の壁が分割可能であり、
構築すべきコンクリート擁壁の両側面間を貫通するかたちで配置され
前記四方の壁はそれぞれの中央部に長手方向に沿ってスプリッタが介在し、これらのスプリッタを介して分割可能に構成されることを特徴とするコンクリート擁壁通風孔用型枠。
【請求項2】
各前記スプリッタと前記壁とが隣接する部分には長手方向に沿って溝が形成されることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート擁壁通風孔用型枠。
【請求項3】
前記箱形の内部には変形防止用の複数の内部壁が、その内部空間を仕切るように設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート擁壁通風孔用型枠。
【請求項4】
前記コンクリート擁壁は、コークス炉の炉団長方向隔壁として構築されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のコンクリート擁壁通風孔用型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉改修工事等において炉団長端のコンクリート擁壁を再構築する場合に該コンクリート擁壁の通風孔を形成するための型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉改修工事で炉団長端の擁壁を再構築する場合、鋼製型枠を使い一気にコークス炉と同等の高さのコンクリート打ちを行う(例えば特許文献1のコンクリート構造物の構築方法等)。その際、擁壁に通風孔をあけるべく木製の型枠を使う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-115515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この手法の場合コンクリート打設の高さが高いため、これまでの型枠ではコンクリートの圧力で該型枠が変形し、正規な形状の穴(通風孔)を形成することができない。また、コンクリート硬化後に木枠の取外しが困難になる等の問題があった。
【0005】
本発明はかかる実情に鑑み、型枠が高い変形強度を有し、取外し等を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンクリート擁壁通風孔用型枠は、コンクリート擁壁の通風孔を形成するための型枠であって、長尺の箱形状に形成され、該箱形を構成する長手方向に沿った四方の壁が分割可能であり、構築すべきコンクリート擁壁の両側面間を貫通するかたちで配置され、前記四方の壁はそれぞれの中央部に長手方向に沿ってスプリッタが介在し、これらのスプリッタを介して分割可能に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通風孔用型枠は、打設されたコンクリートの圧力が高くても変形しづらく、正規の形状の通風孔を構築できる。また、コンクリート硬化後、通風孔用型枠を容易に取外しできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の適用例としてのコークス炉設備の平面図である。
図2】本発明の実施形態におけるコンクリート擁壁まわりを模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態におけるコンクリート擁壁の構築方法を概略的に示す図である。
図4】本発明の実施形態における通風孔用型枠及びコンクリート擁壁の配置関係等を示す図である。
図5】本発明の実施形態における通風孔用型枠の構成例を示す図である。
図6】本発明の実施形態における通風孔用型枠の端壁を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき、本発明によるコンクリート擁壁通風孔用型枠の好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明の適用例としてのコークス炉設備の平面図である。このコークス炉設備は複数のコークス炉100からなり、炉団をなしている。コークス炉100は基本的に煉瓦製であり、多数の煉瓦を積み重ねて構成される。図1では炉団長方向Yに沿って3炉団編成、及び2炉団編成からなる1A~5Bの炉団を含んでいる。なお、詳細な説明を省略するが、各コークス炉100は蓄熱室の上部に炭化室と燃焼室が交互に並べられる(図1の矢印Y;炉団長方向)。
【0010】
各炉の炉団長方向Yの両端には炭槽(石炭塔)あるいは中間デッキが配置され、それらと炉との間に隔壁としてのコンクリート擁壁が設けられる。本実施形態において、例えば図1に示す4A炉の場合を例にして説明する。この4A炉の両端には4炉端部及び4炭槽があり、これら4炉端部及び4炭槽と4A炉との間におけるそれぞれコンクリート擁壁200を構築して更新するものとする。
【0011】
ここで図2をも参照して、本実施形態で構築すべきコンクリート擁壁200の寸法等に関して、厚さ(T)1m程度、長さ(L)十数m、高さ(H)十数mを有する巨大なコンクリート構造物であり、概して薄い直方体状を呈する。図2において模式的に示すが、対向する一対の側面201と各側面201の両端の端面202を有する。老朽化したコンクリート擁壁が撤去されたコークス炉設備において、そのようなコンクリート擁壁200が構築される。
【0012】
コンクリート擁壁200を構築する際、例えば図3のようにコンクリート擁壁200の一方の側面201側に鋼板型枠1が設置され、他方の側面201に合板でなる合板型枠2が設置される。更に、鋼板型枠1及び合板型枠2の間には、図4に示されるように鉄筋3が縦横に配設されると共に、コンクリート擁壁200を形成するためのコンクリート5が打設される。
【0013】
また、鋼板型枠1及び合板型枠2の間には図4に示されるように通風孔用型枠10が、形成されるべきコンクリート擁壁200を前後に貫通するかたちで配置される。なお、この前後方向を通風孔用型枠10の長手方向とする。また、構築すべきコンクリート擁壁200の特に上下方向全体に亘って、複数の通風孔用型枠10が所定間隔で配置される。
【0014】
図5は、通風孔用型枠10の構成例を示している。通風孔用型枠10は長尺の箱形状の独自形状による組立式であり、上壁11、側壁12,13及び底壁14が相互に結合して箱形を呈する。これら上壁11、側壁12,13及び底壁14は分割可能であり、即ちそれぞれの中央部に長手方向に沿ってスプリッタ11a,12a,13a,14aが介在し、これらのスプリッタ11a~14aを介して分割できるようになっている。更に各スプリッタ11a,12a,13a,14aには長手方向に沿ってV字状等の溝11b,12b,13b,14bが刻設される。
【0015】
通風孔用型枠10は箱形内部には変形防止用の複数の内部壁15が、通風孔用型枠10の内部空間を前後に仕切るように設けられる。各内部壁15にはV字状等の溝15aが十字状に刻設され、例えば鉄棒やバールの柄等により、この溝15aを介して内部壁15を簡単に割ることができるようになっている。
【0016】
通風孔用型枠10の前後両端には図6に示すような端壁16が取り付けられ、これらの端壁16は図4に示されるようにボルト17によって鋼板型枠1及び合板型枠2の間に締結される。この場合、一方の端壁16は鋼板型枠1の内側に結合し、他方の端壁16は合板型枠2よりも適度に外方へ突出するように配置される。
【0017】
通風孔用型枠10はコンクリート擁壁200を構築する際、鋼板型枠1及び合板型枠2の間にコンクリート擁壁200を前後に貫通するかたちで配置される。鋼板型枠1及び合板型枠2の間に、コンクリート擁壁200を形成するためのコンクリートが打設される。コンクリートの硬化後、通風孔用型枠10が取り外され、これによりコンクリート擁壁200には複数の通風孔203が形成される。
【0018】
本発明によれば、通風孔用型枠10は箱形状の独自形状を有し、しかも箱形内部には変形防止用の複数の内部壁15が設けられているため、極めて高い剛性強度を有する。高さ十数mを有するコンクリート擁壁200を形成するためのコンクリートが打設される場合には特にコンクリート擁壁200の下部程高いコンクリート圧は発生するが、そのような高圧下でも通風孔用型枠10は変形し難く、これにより歪み等のない正規形状の通風孔203を形成することができる。
【0019】
また、通風孔用型枠10はコンクリートの硬化後に取り外されるが、通風孔用型枠10の箱形を構成する四方の壁、即ち上壁11、側壁12,13及び底壁14がスプリッタ11a~14aを介して分割可能である。従って、これら四方の壁を分割することで簡単且つ迅速に通風孔用型枠10を撤去することができる。その際、合板型枠2の外側へ突出する端壁16をハンマ等で叩いて簡単に通風孔用型枠10を分割することができる。
【0020】
更に、各スプリッタ11a,12a,13a,14aには溝11b,12b,13b,14bが刻設され、また、内部壁15には溝15aが刻設され、これらの溝11b~14b、溝15aを介して通風孔用型枠10の四方の壁、即ち上壁11、側壁12,13及び底壁14、及び内部壁15を簡単に割ることができる。
【0021】
このように本発明の通風孔用型枠10によれば、コンクリート圧が高くても変形しづらく、正規の形状の通風孔を構築できる。また、コンクリート硬化後、容易に取外しができる上、設置も容易である等の利点を有する。
【0022】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
本実施形態におけるスプリッタ11a,12a,13a,14aの溝11b,12b,13b,14b、あるいは内部壁15の溝15aの形状は上記実施形態の場合に限らず、適宜変更可能である。
また、コンクリート擁壁200の場合に限らず、その他の巨大なコンクリート構造物に対して適用可能であり、上記実施形態と同様な効果が得られる。
【符号の説明】
【0023】
10 通風孔用型枠、11 上壁、11a,12a,13a,14a スプリッタ、12,13 側壁、14 底壁、15 内部壁、16 端壁、17 ボルト、100 コークス炉、200 コンクリート擁壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6