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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】長尺物の搬送装置およびその作動方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 51/32 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
B65H51/32 J
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020052248
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151311
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 広梓
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176258(JP,A)
【文献】特開2009-032531(JP,A)
【文献】特開昭57-166173(JP,A)
【文献】実開平02-066566(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 51/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端と他方端を有し、長手方向に延びている可撓性の長尺物を搬送する装置であって、
前記長尺物の一部が載置され、前記長尺物をその長手方向に沿って支持し、第1端から第2端へ延在している載置面を有する支持部材と、
前記載置面よりも上側に設けられ、前記長尺物を押さえる押さえ部材と、
前記長尺物の長手方向の一方側を保持し、前記載置面の延在方向に移動可能な第1の保持部材と、を有し、
前記押さえ部材の重心は、前記支持部材に対して所定の範囲で動くものであり、
前記長尺物を保持した前記第1の保持部材の前記支持部材に対する相対的な移動に伴い、前記長尺物の長手方向の前記他方端の位置が前記支持部材に対して相対的に移動する長尺物の搬送装置。
【請求項2】
前記押さえ部材の重心が、前記支持部材に対して所定の範囲で上下動する請求項1に記載の長尺物の搬送装置。
【請求項3】
前記押さえ部材は、
前記載置面の延在方向と上下方向の双方に垂直な方向に延在しているシャフトと、
前記シャフトが挿入されている孔を有し、前記長尺物と接触する押さえ部と、を備え、
前記孔の前記上下方向の長さは、前記シャフトの外径よりも大きい請求項1または2に記載の長尺物の搬送装置。
【請求項4】
前記押さえ部は、前記載置面の延在方向と前記上下方向の双方に垂直な方向を回転軸とするフリーローラーである請求項3に記載の長尺物の搬送装置。
【請求項5】
前記支持部材は凹部を有しており、前記載置面が前記凹部の底面であり、
前記押さえ部材は、前記凹部内に配置可能である請求項1~4のいずれか一項に記載の長尺物の搬送装置。
【請求項6】
前記支持部材には、前記載置面の延在方向と垂直な一方向に所定の間隔で並んでいる複数の前記凹部が設けられており、
前記押さえ部材は、所定の間隔で複数設けられており、
一の前記凹部に対して一の前記押さえ部材が配されている請求項5に記載の長尺物の搬送装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記載置面よりも上側に配置され且つ前記載置面との間で前記長尺物を挟持する固定部をさらに有しており、
前記固定部は、前記押さえ部材よりも前記第1の保持部材側に配置されている請求項1~6のいずれか一項に記載の長尺物の搬送装置。
【請求項8】
前記支持部材は、前記第1の保持部材と同一軸であって前記載置面の延在方向に移動可能である請求項7に記載の長尺物の搬送装置。
【請求項9】
さらに、前記長尺物の長手方向の他方側を保持する第2の保持部材を有している請求項1~のいずれか一項に記載の長尺物の搬送装置。
【請求項10】
記第2の保持部材は、前記第1の保持部材と同一軸であって前記載置面の延在方向に移動可能である請求項に記載の長尺物の搬送装置。
【請求項11】
可撓性を有する長尺物の一部が載置され、前記長尺物をその長手方向に沿って支持し、第1端から第2端へ延在している載置面を有する支持部材と、
前記載置面よりも上側に設けられ、前記長尺物を押さえる押さえ部材と、
前記長尺物を保持し、前記載置面の延在方向に移動可能な第1の保持部材と、を有し、
前記押さえ部材の重心が前記支持部材に対して所定の範囲で動く、長尺物の搬送装置を準備する工程と;
前記載置面に前記長尺物の一部を配置する工程と;
前記第1の保持部材が前記長尺物の長手方向の一方側を保持する工程と;
前記押さえ部材が前記長尺物を押さえる工程と;
前記第1の保持部材が前記支持部材に対して相対的に前記載置面の延在方向に移動すると、前記長尺物の長手方向の他方端の位置が前記支持部材に対して相対的に移動する工程と;を含む長尺物の搬送装置の作動方法。
【請求項12】
前記支持部材は、前記載置面よりも上側に配置され且つ前記載置面との間で前記長尺物を挟持する固定部をさらに有しており、
前記第1の保持部材が前記支持部材に対して相対的に移動する工程の後、前記載置面と前記固定部で前記長尺物を挟持する工程をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記載置面と前記固定部で前記長尺物を挟持する工程の後、前記押さえ部材による前記長尺物の押さえを解除する工程をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記押さえ部材が前記長尺物を押さえた状態で、前記固定部と前記第1の保持部材の少なくともいずれか一方が前記載置面の延在方向へ移動し、前記長尺物を延伸する工程をさらに含む請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂チューブ等の長尺物を搬送するための装置とその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺なワーク、特に可撓性を有するワークは重力により撓むことがある。このため、撓んだ状態で搬送されたワークに対して、加熱延伸等の加工を施すことで品質にバラツキが生じることがある。そのような品質のバラツキの発生を抑制するために、例えば、特許文献1には、バルーンカテーテルのバルーンを製造するためのパリソンの製造装置のチューブの延伸機構が、パリソン用チューブに生じている張力を検出するセンサを設けることが開示されている。また、張力検出センサの検出値が制御装置に入力され、制御装置により予め設定された適宜な張力が印加されるように、直線駆動機構による推力が制御されることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-171172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された装置を用いて異なる種類のワークを加工する際に、ワーク間の加工後の品質のバラツキの発生を抑制するという観点で未だ改善の余地があった。また、特許文献1に開示された装置では、ワークを一本ずつ搬送する際の張力を検出するため、位置やたるみ状態が異なる複数本の長尺なワークを同時に搬送する際に適切に張力を付与するのは困難であった。そこで、本発明は、重力による撓みを抑制しながら可撓性の長尺物を搬送することができる装置とその作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の長尺物の搬送装置は、一方端と他方端を有し、長手方向に延びている可撓性の長尺物を搬送する装置であって、長尺物の一部が載置され、長尺物をその長手方向に沿って支持し、第1端から第2端へ延在している載置面を有する支持部材と、載置面よりも上側に設けられ、長尺物を押さえる押さえ部材と、長尺物の長手方向の一方側を保持し、載置面の延在方向に移動可能な第1の保持部材と、を有し、押さえ部材の重心は、支持部材に対して所定の範囲で動くものであり、長尺物を保持した第1の保持部材の支持部材に対する相対的な移動に伴い、長尺物の長手方向の他方端の位置が支持部材に対して相対的に移動する点に要旨を有する。この搬送装置では、長尺物は第1の保持部材に牽引されることで搬送される。長尺物が載置される載置面よりも上側に押さえ部材を設けており、かつ押さえ部材の重心が支持部材に対して所定の範囲で動くことにより、長尺物の種類によらず、押さえ部材は適度な負荷を掛けるように長尺物に当接することができる。また、長尺物の搬送中、押さえ部材が長尺物に対して負荷を掛け続けることができるため、重力による撓みを抑制しながら長尺物を搬送することができる。
【0006】
上記搬送装置において、押さえ部材の重心が、支持部材に対して所定の範囲で上下動することが好ましい。
【0007】
上記搬送装置において、押さえ部材は、載置面の延在方向と上下方向の双方に垂直な方向に延在しているシャフトと、シャフトが挿入されている孔を有し、長尺物と接触する押さえ部と、を備え、孔の上下方向の長さは、シャフトの外径よりも大きいことが好ましい。
【0008】
上記搬送装置において、押さえ部は、載置面の延在方向と上下方向の双方に垂直な方向を回転軸とするフリーローラーであることが好ましい。
【0009】
上記搬送装置において、支持部材は凹部を有しており、載置面が凹部の底面であり、押さえ部材は、凹部内に配置可能であることが好ましい。
【0010】
上記搬送装置において、支持部材には、載置面の延在方向と垂直な一方向に所定の間隔で並んでいる複数の凹部が設けられており、押さえ部材は、所定の間隔で複数設けられており、一の凹部に対して一の押さえ部材が配されていることが好ましい。
【0011】
上記搬送装置において、支持部材は、載置面よりも上側に配置され且つ載置面との間で長尺物を挟持する固定部をさらに有しており、固定部は、押さえ部材よりも第1の保持部材側に配置されていることが好ましい。
【0012】
上記搬送装置は、さらに、長尺物の長手方向の他方側を保持する第2の保持部材を有していることが好ましい。
【0013】
上記搬送装置において、支持部材または第2の保持部材は、第1の保持部材と同一軸であって載置面の延在方向に移動可能であることが好ましい。
【0014】
本発明は、長尺物の搬送装置の作動方法も提供する。本発明の長尺物の搬送装置の作動方法の一実施態様は、可撓性を有する長尺物の一部が載置され、長尺物をその長手方向に沿って支持し、第1端から第2端へ延在している載置面を有する支持部材と、載置面よりも上側に設けられ、長尺物を押さえる押さえ部材と、長尺物を保持し、載置面の延在方向に移動可能な第1の保持部材と、を有し、押さえ部材の重心が支持部材に対して所定の範囲で動く、長尺物の搬送装置を準備する工程と;載置面に長尺物の一部を配置する工程と;第1の保持部材が長尺物の長手方向の一方側を保持する工程と;押さえ部材が長尺物を押さえる工程と;第1の保持部材が支持部材に対して相対的に載置面の延在方向に移動すると、長尺物の長手方向の他方端の位置が支持部材に対して相対的に移動する工程と;を含む点に要旨を有する。上記搬送装置の作動方法では、長尺物は第1の保持部材に牽引されることで搬送される。搬送装置には長尺物が載置される載置面よりも上側に押さえ部材が設けられており、かつ押さえ部材の重心が支持部材に対して所定の範囲で動くことにより、長尺物の種類によらず、押さえ部材は適度な負荷を掛けるように長尺物に当接することができる。また、長尺物の搬送中、押さえ部材が長尺物に対して負荷を掛け続けることができるため、重力による撓みを抑制しながら長尺物を搬送することができる。
【0015】
上記作動方法において、支持部材は、載置面よりも上側に配置され且つ載置面との間で長尺物を挟持する固定部をさらに有しており、上記作動方法は、第1の保持部材が支持部材に対して相対的に移動する工程の後、載置面と固定部で長尺物を挟持する工程をさらに含むことが好ましい。
【0016】
上記作動方法は、載置面と固定部で長尺物を挟持する工程の後、押さえ部材による長尺物の押さえを解除する工程をさらに含むことが好ましい。
【0017】
上記作動方法は、押さえ部材が長尺物を押さえた状態で、固定部と第1の保持部材の少なくともいずれか一方が載置面の延在方向へ移動し、長尺物を延伸する工程をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る長尺物の搬送装置およびその作動方法では、長尺物は第1の保持部材に牽引されることで搬送される。長尺物が載置される載置面よりも上側に押さえ部材を設けており、かつ押さえ部材の重心が支持部材に対して所定の範囲で動くことにより、長尺物の種類によらず、押さえ部材は適度な負荷を掛けるように長尺物に当接することができる。また、長尺物の搬送中、押さえ部材が長尺物に対して負荷を掛け続けることができるため、重力による撓みを抑制しながら長尺物を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送装置の正面図を表す。
図2図1に示した搬送装置の平面図を表す。
図3図1に示した搬送装置の押さえ部材の近傍を拡大した正面断面図を表す。
図4図1に示した搬送装置のIV-IV断面図を表す。
図5図4に示した搬送装置の変形例を示す断面図を表す。
図6図3に示した搬送装置の変形例を示す正面断面図を表す。
図7図3に示した搬送装置の変形例を示す斜視図を表す。
図8図1に示した搬送装置の変形例を示す正面図を表す。
図9図1に示した搬送装置の他の変形例を示す正面図を表す。
図10】本発明の一実施形態に係る搬送装置の作動方法を示す正面図を表す。
図11】本発明の一実施形態に係る搬送装置の作動方法を示す正面図を表す。
図12】本発明の一実施形態に係る搬送装置の作動方法を示す正面図を表す。
図13】本発明の一実施形態に係る搬送装置の作動方法を示す正面図を表す。
図14】本発明の一実施形態に係る搬送装置の作動方法を示す正面図を表す。
図15】本発明の一実施形態に係る搬送装置の作動方法を示す正面図を表す。
図16】本発明の一実施形態に係る搬送装置の作動方法を示す正面断面図を表す。
図17】本発明の一実施形態に係る搬送装置の作動方法を示す正面断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0021】
1.長尺物の搬送装置
本発明の一実施形態に係る長尺物の搬送装置は、一方端と他方端を有し、長手方向に延びている可撓性の長尺物を搬送する装置であって、長尺物の一部が載置され、長尺物をその長手方向に沿って支持し、第1端から第2端へ延在している載置面を有する支持部材と、載置面よりも上側に設けられ、長尺物を押さえる押さえ部材と、長尺物の長手方向の一方側を保持し、載置面の延在方向に移動可能な第1の保持部材と、を有し、押さえ部材の重心は、支持部材に対して所定の範囲で動くものであり、長尺物を保持した第1の保持部材の支持部材に対する相対的な移動に伴い、長尺物の長手方向の他方端の位置が支持部材に対して相対的に移動する。後述する各図面の空間座標において、x方向を載置面の延在方向とし、z方向を上下方向とし、y方向をx方向およびz方向の双方に垂直な方向とする。上記長尺物の搬送装置は、長尺物の搬送中に長尺物に対して負荷を掛け続けることで重力による撓みを抑制するための装置である。
【0022】
本発明において、長尺物は、一方端と他方端を有し、長手方向に延びているものである。長尺物の一方端は第1端、他方端は第2端ということもできる。長尺物の長手方向の一方側とは、長尺物を長手方向において二等分割したときの一方側を意味する。長尺物は、中実または中空状であり、例えばパイプ、ロッド、チューブと称されるものが含まれる。長尺物には、長手方向に垂直な断面の外周の長さと長手方向の長さを比べた場合、長手方向の長さの方が長いものが含まれる。長尺物の長さは特に限定されず、例えば10cm以上、20cm以上、または30cm以上であってもよく、200cm以下、150cm以下、または100cm以下であることも許容される。長尺物の断面形状は特に限定されず、例えば円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状にすることができる。長尺物の外径は、例えば0.4mm以上、0.8mm以上、または1.2mm以上であることが好ましく、6.0mm以下、5.0mm以下、または4.0mm以下であることが好ましい。
【0023】
長尺物は、可撓性を有しているものである。形状保持のため、長尺物は弾性を有していてもよい。長尺物を構成する材料は、樹脂または金属とすることができる。長尺物を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。長尺物を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。長尺物としては金属で構成されている長尺体の表面に樹脂が被覆されたものも含まれる。中でも、長尺物は、樹脂チューブであることが好ましく、フッ素系樹脂チューブまたはポリアミド系樹脂チューブであることがより好ましい。長尺物は、工業用または医療用の樹脂チューブであることが好ましく、医療用の樹脂チューブであることがより好ましく、バルーンカテーテル用の樹脂チューブであることがさらに好ましく、バルーン成形用の樹脂チューブであることが特に好ましい。
【0024】
本発明において、長尺物の搬送装置は、一または複数の長尺物を長手方向(好ましくは水平方向)に搬送する装置であり、以下では単に「搬送装置」と称することがある。図1図4を参照して、搬送装置の基本構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る搬送装置の正面図を表す。図2は、図1に示した搬送装置を上から見た平面図を表す。図3は、図1に示した搬送装置の押さえ部材の近傍を拡大した断面図を表す。図4は、図1に示した搬送装置のIV-IV断面図を表す。なお、図3では、第1の駆動機構を省略して記載している。搬送装置1は、支持部材10と、第1の保持部材20と、押さえ部材30と、を有している。
【0025】
支持部材10は、長尺物50の一部を支持する部材である。詳細には、支持部材10は長尺物50の長手方向の一部を下から支持する。支持部材10は、一または複数の部材から構成することができる。支持部材10は、後述する第1の保持部材20とは異なる位置で長尺物50を支持することが好ましい。長尺物50は、長手方向に一方端51と他方端52を有している。第1の保持部材20は、長尺物50の長手方向の一方側を保持するものであるが、支持部材10は、例えば第1の保持部材20よりも長尺物50の長手方向の他方側に設けることができる。支持部材10は、長尺物50の長手方向の一方側を支持していてもよく、他方側を支持していてもよく、複数の箇所を支持してもよい。
【0026】
図2図4に示すように、支持部材10は、長尺物50の一部が載置され、長尺物50をその長手方向に沿って支持する載置面11を有している。載置面11は、第1端11Aと第2端11Bを有しており、第1端11Aから第2端11Bへ延在している。載置面11の延在方向xは、第1端11Aから第2端11Bへ向かう方向として規定される。長尺物50が載置されることにより載置面11は長尺物50と当接する。載置面11は、y方向または水平面と平行であることが好ましいが、載置面11はy方向または水平面に対して傾斜していてもよい。
【0027】
支持部材10は、載置面11の延在方向xに移動可能であってもよい。これにより、載置面11の延在方向xにおける長尺物50の支持位置を変えることができる。
【0028】
支持部材10は、第1の保持部材20と同一軸であって載置面11の延在方向xに移動可能であることが好ましい。これにより、第1の保持部材20の移動方向と支持部材10の移動方向を合わせることができるため、第1の保持部材20での保持位置と支持部材10での支持位置の軸ずれを防ぐことができる。その結果、長尺物50の変形を抑制しながら搬送が可能となる。
【0029】
搬送装置1は、支持部材10を載置面11の延在方向xに移動させる第1の駆動機構41を備えることが好ましい。このように第1の駆動機構41を設けることにより、支持部材10での長尺物50の支持位置を変えることができる。図示していないが、第1の駆動機構41は、例えば、支持部材10に接続されている第1搬送部と、第1搬送部に接続され、第1搬送部の移動を制御する第1制御部と、を有していてもよい。
【0030】
第1搬送部は、載置面11の延在方向xに駆動する1軸以上のアクチュエータを含むことが好ましく、載置面11の延在方向xと、載置面11の延在方向xと垂直な一方向に駆動する2軸のアクチュエータを含むことがより好ましく、載置面11の延在方向xと、載置面11の延在方向xと垂直な二方向に駆動する3軸のアクチュエータを含むことがさらに好ましい。このように搬送部を構成することにより、自由度の高い設計が可能となる。アクチュエータは、モータ、リニアガイド、ボールねじ、タイミングベルト・プーリ、スライダ、ラックアンドピニオン等の機械要素を含むことができる。
【0031】
図4に示すように、支持部材10は凹部12を有しており、載置面11が凹部12の底面13であってもよい。凹部12は、底面13と、底面13の両側に設けられ、上下方向zに延びている内壁14とを有している。凹部12の底面13は、長尺物50を支持する面として機能する。長尺物50が底面13に載置されることにより、底面13は長尺物50と当接する。また、内壁14によって支持部材10からの長尺物50の脱落を防ぐことができる。以下では、載置面11の延在方向xにおける凹部12の長さを凹部12の延在長さ12aと称する。載置面11の延在方向xと垂直な方向であって凹部12の内壁14が並んでいる方向における凹部12の長さを凹部12の幅12bと称する。また、凹部12の深さを符号12cで表す。y方向は、載置面11の延在方向xと垂直な方向であって凹部12の内壁14が並んでいる方向と、水平面の少なくともいずれか一方と一致していることが好ましい。なお、図1図4では、y方向が凹部12の内壁14が並んでいる方向と水平面の双方と一致している例を示している。
【0032】
一の凹部12で複数の長尺物50を支持することもできるが、一の凹部12では一の長尺物50を支持することが好ましい。
【0033】
凹部12の深さ方向は、水平面と垂直な上下方向zと一致していることが好ましい。
【0034】
凹部12の深さ12cは、長尺物50の外径よりも大きいことが好ましい。これにより、凹部12内に長尺物50の外径全体が収まるため、長尺物50を確実に支持することができる。一方で、支持部材10は、凹部12で長尺物50の一部を支持していればよいため、凹部12の深さ12cは、長尺物50の外径よりも小さくてもよい。ただし、支持部材10からの長尺物50の脱落を防ぐため、凹部12の深さ12cは、長尺物50の半径よりは大きいことが好ましい。
【0035】
凹部12の幅12bは、凹部12の深さ方向および載置面11の延在方向xの双方と垂直な方向として規定される。詳細には、図4に示すように、長尺物50の載置面11の延在方向xと垂直な断面で看取することができる。凹部12の最小幅は、長尺物50の外径よりも大きいことが好ましい。これにより、凹部12の底面13に長尺物50を当接させることができる。
【0036】
凹部12の幅12bは、凹部12の深さ方向において一定の大きさであってもよい。図示はしていないが、凹部12の幅12bは、深さ方向において底面13側に向かって狭くなっていてもよい。これにより、凹部12内の所定の位置に長尺物50が収まりやすくなる。凹部12の幅12bは、深さ方向において底面13側に向かって広くなっていてもよい。これにより、長尺物50が凹部12から脱落しにくくなる。
【0037】
凹部12の延在長さ12aは、凹部12の幅12bよりも長くてもよく、短くてもよいが、長尺物50を安定して支持するためには凹部12の幅12bよりも長いことが好ましい。
【0038】
図5は、図4に示した搬送装置1の変形例を示す断面図を表す。図5に示すように、支持部材10には、載置面11の延在方向xと垂直な一方向に所定の間隔で並んでいる複数の凹部12が設けられていてもよい。これにより、載置面11が複数設けられるため、互いに一定の間隔を開けて並ぶように複数の長尺物50を支持することができる。支持部材10には、隣り合う2つの凹部12を区画している仕切り壁15が設けられている。仕切り壁15は、凹部12の内壁14とすることができる。
【0039】
凹部12の数は、一斉に処理する長尺物50の本数に応じて設定することができるが、例えば、2箇所以上、4箇所以上、8箇所以上であってもよく、20箇所以下、16箇所以下、12箇所以下であることも許容される。
【0040】
複数の凹部12の並び方向において、複数の凹部12は一定の間隔で並んでいればよい。複数の凹部12の間隔は、全て同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
例えば同時に同じ種類の長尺物50を処理する場合、凹部12毎のばらつきがないようにするため、複数の凹部12の延在長さ12aはそれぞれ同じであることが好ましい。また、複数の凹部12の幅12bはそれぞれ同じであることが好ましい。さらに、複数の凹部12の深さ12cはそれぞれ同じであることが好ましい。これにより、全ての押さえ部材30が凹部12に配置される長尺物50に当接しやすくなる。
【0042】
第1の保持部材20は、長尺物50の長手方向の一方側を保持し、載置面11の延在方向xに移動可能な部材である。第1の保持部材20は、長尺物50の保持および解除が可能な機構を有していればよく、例えば、長尺物50を摘まむ、挟む、握る、または吸引する等の方法で長尺物50を保持することができる。第1の保持部材20は、一または複数の部材から構成することができる。
【0043】
図1では、第1の保持部材20は、載置面11の延在方向xと垂直な上下方向zに並んでおり、かつ互いに対向している2つのチャック片21、22を有している。これら2つのチャック片21、22で長尺物50を挟むことで長尺物50を保持することができる。図示していないが、第1の保持部材20は、水平方向に並んでおり、かつ互いに対向して配置されている2つのチャック片であってもよい。
【0044】
第1の保持部材20による保持位置は特に限定されないが、長尺物50の長手方向の一方端51から10cm以内の位置であることが好ましく、8cm以内の位置であることがより好ましく、5cm以内の位置であることがさらに好ましい。
【0045】
第1の保持部材20は、載置面11の延在方向xに移動可能である。これにより、長尺物50を長手方向に移動させやすくなる。また、第1の保持部材20は、載置面11の延在方向xと垂直な一方向に移動可能であってもよい。詳細には、第1の保持部材20は、載置面11の延在方向xと垂直であって水平面と平行な水平方向に移動可能であることが好ましい。第1の保持部材20は、上下方向zに移動可能であってもよい。これにより、長尺物50を上下方向zにも移動させることができる。
【0046】
搬送装置1は、第1の保持部材20を少なくとも載置面11の延在方向xに移動させる第2の駆動機構42を備えることが好ましい。このように第2の駆動機構42を設けることにより、第1の保持部材20で長尺物50の保持位置を変えることができる。また、第1の保持部材20で長尺物50を保持した状態で第1の保持部材20を移動させることで、長尺物50を搬送することができる。第1の保持部材20は、第2の駆動機構42に接続されていることが好ましい。その他、第2の駆動機構42の構成については、第1の駆動機構41の説明を参照することができる。
【0047】
図3に示すように、押さえ部材30は、載置面11よりも上側に設けられて、長尺物50を押さえるための部材である。押さえ部材30の重心34は、支持部材10に対して所定の範囲で動くものである。なお、図3では、内壁14が図示されていない。押さえ部材30は、重力による撓みを抑制することができる程度の負荷を長尺物50に対して付与する。長尺物50を保持した第1の保持部材20の支持部材10に対する相対的な移動に伴い、長尺物50の長手方向の他方端52の位置が支持部材10に対して相対的に移動する。この搬送装置1では、長尺物50は第1の保持部材20に牽引されることで搬送される。長尺物50が載置される載置面11よりも上側に押さえ部材30を設けており、かつ押さえ部材30の重心34が支持部材10に対して所定の範囲で動くことにより、長尺物50の種類によらず、押さえ部材30は適度な負荷を掛けるように長尺物50に当接することができる。また、長尺物50の搬送中、押さえ部材30が長尺物50に対して負荷を掛け続けることができるため、重力による撓みを抑制しながら長尺物50を搬送することができる。さらに、押さえ部材30の重心34が支持部材10に対して所定の範囲で動くため、複数の長尺物50のそれぞれの載置面11での位置やたるみ状態が異なっていても、複数の長尺物50のそれぞれに押さえ部材30が確実に当接し、適度な負荷を掛けることができる。したがって、状態が異なる複数の長尺物50を重力による撓みを抑制しながら一斉に搬送することができる。
【0048】
図3では、載置面11に長尺物50を載置していないときの押さえ部材30の位置を二点鎖線で示しており、載置面11に長尺物50を載置したときの押さえ部材30の重心34の位置を符号34aで、載置面11に長尺物50を載置していないときの押さえ部材30の重心34の位置を符号34bで示している。このように長尺物50を載置面11に載置したときと載置していないときで、押さえ部材30の重心34の位置が異なっていることが好ましい。これにより、長尺物50の外径や可撓性が異なっていても、押さえ部材30は長尺物50に対して適度な負荷を掛けることができる。
【0049】
押さえ部材30は、上側から下側に向かって長尺物50を押さえるものであることが好ましい。このため、押さえ部材30の重心34は、載置面11の延在方向xと垂直な方向に往復移動することが好ましく、上下動することがより好ましい。
【0050】
押さえ部材30の自重によって長尺物50を押さえてもよく、押さえ部材30に接続されているモータの駆動を利用して長尺物50を押さえてもよい。また、押さえ部材30の少なくとも一部をばね部材やゴム部材等の弾性体から構成することで、弾性体の付勢力を利用して、押さえ部材30で長尺物50を押さえることもできる。
【0051】
図3に示すように、押さえ部材30の重心34が、支持部材10に対して所定の範囲で上下動することが好ましい。図3では、上下方向zにおける押さえ部材30の重心34の移動範囲を符号35で示している。このように押さえ部材30が上下動するように構成することで、押さえ部材30の自重により長尺物50に適度な負荷を掛けることができる。
【0052】
押さえ部材30は、一または複数の部材から構成することができる。図3では、押さえ部材30が、押さえ部31と、シャフト32を有している。押さえ部31は、長尺物50と接触する部分である。図3では、押さえ部31は、載置面11の延在方向xと上下方向zの双方に垂直な方向yを回転軸とする回転体である。シャフト32は、載置面11の延在方向xと上下方向zの双方に垂直な方向yに延在している。押さえ部31としての回転体には、シャフト32が挿入されている孔31aが設けられている。このため、第1の保持部材20によって長尺物50が長手方向の一方端51側に向かって牽引されると、押さえ部材30と長尺物50との間に働く摩擦力により、押さえ部材30は上下動しながら図3において左回りに回転する。第1の保持部材20によって長尺物50が移動している間、押さえ部材30は長尺物50に対して負荷を掛け続ける。
【0053】
押さえ部31は、載置面11の延在方向xと上下方向zの双方に垂直な方向yを回転軸とするフリーローラーであることが好ましい。これにより、押さえ部材30は自重により長尺物50に対して適度な負荷を掛けることができる。また、押さえ部材30が回転することにより、長尺物50を載置面11の延在方向xの両方向にスムーズに搬送することができる。
【0054】
押さえ部31を構成する材料としては、長尺物50を構成する材料の説明を参照することができるが、ゴムやエラストマーであることが好ましい。押さえ部31は、ショアD硬度が15以上の材料を含んでいることが好ましく、20以上の材料を含んでいることがより好ましく、25以上の材料を含んでいることがさらに好ましく、30以上の材料を含んでいることが特に好ましい。また、押さえ部31は、ショアD硬度が60以下の材料を含んでいてもよい。押さえ部31がこのような材料を含むことにより、押さえ部31に適度な硬さを付与することができる。このため、長尺物50に対して適度な負荷を掛けることができる。なお、ショアD硬度はISO868:2003 プラスチック・デュロメータ硬さ試験方法に基づき計測される。
【0055】
押さえ部31を構成する材料のショアD硬度と、長尺物50を構成する材料のショアD硬度が互いに異なっていることが好ましい。また、押さえ部31を構成する材料のショアD硬度は、長尺物50を構成する材料のショアD硬度よりも小さいことが好ましい。このように押さえ部31と長尺物50の硬さを設定することにより、長尺物50の変形を防ぎながら、押さえ部31が長尺物50に対して適度な負荷を掛けることができる。
【0056】
押さえ部材30が長尺物50に当接したときに、押さえ部31が長尺物50に食い込むことが好ましい。このように押さえ部31が変形することで、長尺物50に対して適度な負荷を掛けることができる。
【0057】
図4に示すように、支持部材10は凹部12を有し、載置面11が凹部12の底面13である場合、押さえ部材30は凹部12内に配置可能であることが好ましい。これにより、押さえ部材30の少なくとも一部を凹部12内に収めやすくなる。その結果、上下方向zと垂直な方向における押さえ部材30の移動範囲を凹部12内で制限することができる。したがって、長尺物50の搬送中に、押さえ部材30が長尺物50に対して負荷を掛け続けることができる。
【0058】
図5では、支持部材10には載置面11の延在方向xと垂直な一方向に所定の間隔で並んでいる複数の凹部12が設けられており、押さえ部材30は所定の間隔で複数設けられており、一の凹部12に対して一の押さえ部材30が配されている。詳細には、支持部材10には4つの凹部12A、12B、12C、12Dが設けられており、凹部12Aには押さえ部材30Aが、凹部12Bには押さえ部材30Bが、凹部12Cには押さえ部材30Cが、凹部12Dには押さえ部材30Dが配されている。この場合、各凹部12では押さえ部材30の少なくとも一部が凹部12内に配されていることが好ましい。これにより、上下方向zと垂直な方向における押さえ部材30の移動範囲を凹部12内で制限することができる。
【0059】
図5では、押さえ部31A、31B、31C、31Dがそれぞれ載置面11の延在方向xと上下方向zの双方に垂直な方向yを回転軸とする回転体である。押さえ部31A、31B、31C、31Dの孔31a(図示せず)には、載置面11の延在方向xと上下方向zの双方に垂直な方向yに延在しているシャフト32A、32B、32C、32Dが挿入されている。このように複数の押さえ部31が設けられている場合、各押さえ部31に挿入されているシャフト32は独立していることが好ましい。すなわち、シャフト32は共有されていないことが好ましい。これにより、長尺物50の外径や可撓性が異なっていても押さえ部材30の重心34の位置を異ならせることができるため、各長尺物50に対して適度な負荷を掛けることができる。
【0060】
図示していないが、複数の押さえ部31が設けられている場合、一のシャフト32が全ての押さえ部31の孔31aに挿入されていてもよい。複数の押さえ部31の上下方向zの位置が揃いやすくなるため、このような態様は、同じ種類の複数の長尺物50を搬送する場合に適している。
【0061】
図示していないが、搬送装置1は、押さえ部材30を少なくとも上下方向zに移動させる第3の駆動機構を備えていてもよい。このように第3の駆動機構を設けることにより、押さえ部材30の長尺物50との当接の度合いを調整することができる。
【0062】
図1および図3では、搬送装置1の正面視において押さえ部31の孔31aとシャフト32が略同じ円形状である例を示したが、孔31aとシャフト32の形状は互いに異なっていてもよい。図6は、図3に示した搬送装置1の変形例を示す正面断面図を表す。例えば、図6に示すように、押さえ部材30は、載置面11の延在方向xと上下方向zの双方に垂直な方向yに延在しているシャフト32と、シャフト32が挿入されている孔31aを有し、長尺物50と接触する押さえ部31と、を備えている場合、孔31aの上下方向zの長さは、シャフト32の外径よりも大きくてもよい。このように孔31aを上下方向zに長く形成することにより、押さえ部材30の重心34が支持部材10に対して動きやすくなる。このため、長尺物50の種類によらず、押さえ部材30は適度な負荷を掛けるように長尺物50に当接することができる。
【0063】
図6に示すように、孔31aの上下方向zの長さは、載置面11の延在方向xにおける孔31aの長さよりも長くてもよい。このように孔31aを形成することによって、押さえ部材30の所定範囲での上下動が可能となる。
【0064】
図1図6に示した搬送装置1では押さえ部材30の押さえ部31が回転体である例を示したが、押さえ部材30の重心34が支持部材10に対して所定の方向に移動するものであればその形状は特に限定されない。押さえ部31は、回転体以外に、薄板状、直方体状等の多面体状であってもよい。図7は、図3に示した搬送装置1の変形例を示す斜視図を表す。図7に示すように、押さえ部31は、上下方向zに延びており、かつ載置面11の延在方向xに弾性変形可能な舌片状であってもよい。舌片状の押さえ部31の下端部が、長尺物50に当接することが好ましい。押さえ部31がこのような構成であっても、長尺物50に対して適度な負荷を掛けることができる。特に、長尺物50を長手方向の一方向に搬送する場合には有効である。また、図1図6に示した態様と比べると、シャフト32が不要であるため押さえ部材30の維持管理も行いやすい。なお、図7では、押さえ部材30を少なくとも上下方向zに移動させる第3の駆動機構43が示されている。
【0065】
図示していないが、舌片状の押さえ部31の下端部にはスリットが形成されていてもよい。スリットは、例えば上下方向zに延びるように形成される。このように舌片状の押さえ部31の下端部を分割することで押さえ部31が長尺物50に多くの場所で接触しやすくなるため、長尺物50に対して適度な負荷を掛けやすくなる。
【0066】
長尺物50を搬送しやすくするために、第1の保持部材20とは別に長尺物50を保持する機構が設けられていてもよい。図8は、図1に示した搬送装置1の変形例を示す正面図を表す。例えば、図8では、支持部材10は、載置面11よりも上側に配置され且つ載置面11との間で長尺物50を挟持する固定部40をさらに有しており、固定部40は、押さえ部材30よりも第1の保持部材20側に配置されている。固定部40と載置面11によって長尺物50を挟持することができる。このため、長尺物50を長手方向の少なくとも2箇所で保持することができ、長尺物50を搬送しやすくなる。
【0067】
固定部40は、載置面11との間で長尺物50を挟み込む構成を有していればよく、例えば図8のように、固定部40は上下方向zに延在している押圧体であってもよい。
【0068】
固定部40のうち、長尺物50と当接する当接部は、押さえ部材30(好ましくは押さえ部31)と同様の材料から構成することができる。当接部の表面には凹凸が形成されていてもよい。凹凸が長尺物50に食い込むことにより、固定部40で長尺物50を強固に保持することができる。
【0069】
図示していないが、固定部40は上下方向zに移動可能か、固定部40が上下方向zに伸縮可能であることが好ましい。固定部40を下側に移動させる、または下側に向かって伸長させることで、載置面11との間で長尺物50を挟持することができる。また、固定部40を上側に移動させる、または伸長させていた固定部40を収縮することによって、長尺物50の挟持を解除することができる。
【0070】
支持部材10が凹部12を有しており、載置面11が凹部12の底面13である場合、固定部40の少なくとも一部を凹部12内に配置可能であることが好ましい。これにより、固定部40と載置面11との間に長尺物50を挟持しやすくなる。
【0071】
支持部材10に載置面11の延在方向xと垂直な方向yに所定の間隔で並んでいる複数の凹部12が設けられている場合、固定部40が所定の間隔で複数設けられていてもよい。その場合、一の凹部12に対して一の固定部40が配されていることが好ましい。これにより、複数の固定部40で複数の長尺物50を挟持することができるため、複数の長尺物50の長手方向の位置をそれぞれ2箇所で固定することができる。
【0072】
次に、第1の保持部材20とは別に長尺物50を保持するための他の機構について図9を参照して説明する。図9は、図1に示した搬送装置1の他の変形例を示す正面図を表す。図9に示すように、搬送装置1は、さらに長尺物50の長手方向の他方側を保持する第2の保持部材25を有していてもよい。これにより、第1の保持部材20と第2の保持部材25で長尺物50の長手方向の両側を保持することができるため、長尺物50を安定して移動させることができる。
【0073】
第2の保持部材25による保持位置は特に限定されないが、長尺物50の長手方向の他方端52から10cm以内の位置であることが好ましく、8cm以内の位置であることがより好ましく、5cm以内の位置であることがさらに好ましい。
【0074】
第2の保持部材25は、第1の保持部材20と同一軸であって載置面11の延在方向xに移動可能であることが好ましい。これにより、第1の保持部材20の移動方向と第2の保持部材25の移動方向を合わせることができるため、長尺物50の長手方向の一方側と他方側での軸位置のずれを防ぐことができる。その結果、長尺物50の変形を抑制しながら搬送が可能となる。
【0075】
第2の保持部材25の構成、保持機構、移動方向、移動範囲などについては、第1の保持部材20の説明を参照することができる。第2の保持部材25による長尺物50の保持機構は、第1の保持部材20による長尺物50の保持機構と同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0076】
搬送装置1は、第2の保持部材25を少なくとも載置面11の延在方向xに移動させる第4の駆動機構44を備えることが好ましい。このように第4の駆動機構44を設けることにより、第2の保持部材25で長尺物50の保持位置を変えることができる。また、第2の保持部材25で長尺物50を保持した状態で第2の保持部材25を移動させることで、長尺物50を搬送することもできる。第4の駆動機構44の構成については、第1の駆動機構41の説明を参照することができる。
【0077】
搬送装置1に第2の保持部材25が設けられている場合、支持部材10と押さえ部材30は、第1の保持部材20と第2の保持部材25の間に配置されていてもよい。これにより、長尺物50の長手方向の第1の保持部材20と第2の保持部材25の間で、長尺物50に対して適度なテンションを付与することができる。他方、図9に示すように、支持部材10と押さえ部材30は、第2の保持部材25よりも長尺物50の他方端52側に配置されていてもよい。
【0078】
支持部材10、第1の保持部材20、押さえ部材30、固定部40、第2の保持部材25を構成する材料は特に限定されず、例えば、樹脂または金属あるいはこれらの複合材料から構成することができる。そのような樹脂または金属としては、長尺物50を構成する材料の説明を参照することができる。複合材料としては炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂あるいは金属に樹脂をコートした材料などを用いることができる。支持部材10、第1の保持部材20、押さえ部材30、固定部40、第2の保持部材25を構成する材料は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0079】
長尺物50を第1の保持部材20と第2の保持部材25の少なくともいずれかで保持した後は、支持部材10による支持は必須ではなくなる。このため、支持部材10は、載置面11の延在方向xと垂直な方向、例えば上下方向zや、水平面と平行な水平方向yに移動可能であってもよい。
【0080】
2.長尺物の搬送装置の作動方法
本発明は、長尺物50の搬送装置1の作動方法も提供する。以下では、図10図17を参照しながら作動方法の各ステップについて説明する。図10図15は、本発明の一実施形態に係る搬送装置1の作動方法を示す正面図を表し、図16図17は、本発明の一実施形態に係る搬送装置1の作動方法を示す正面断面図を表す。なお、図10図17に示した搬送装置1は、図8に示した搬送装置1と同様の構成を有している。
【0081】
まず、可撓性を有する長尺物50の一部が載置され、長尺物50をその長手方向に沿って支持し、第1端から第2端へ延在している載置面11を有する支持部材10と、載置面11よりも上側に設けられ、長尺物50を押さえる押さえ部材30と、長尺物50を保持し、載置面11の延在方向xに移動可能な第1の保持部材20と、を有し、押さえ部材30の重心34が支持部材10に対して所定の範囲で動く、長尺物50の搬送装置1を準備する(工程1)。その他、搬送装置1の具体的構成については「1.長尺物の搬送装置」の説明を参照することができる。
【0082】
図10に示すように、載置面11に長尺物50の一部を配置する(工程2)。一の載置面11には、一の長尺物50を配置することが好ましい。
【0083】
図11に示すように、第1の保持部材20が長尺物50の長手方向の一方側を保持する(工程3)。工程3は、後述する工程4の前に開始されることが好ましい。長尺物50の可撓性が高い場合、押さえ部材30で長尺物50を押さえる工程4よりも先に長尺物50の長手方向の端部を保持することにより、長尺物50の保持を円滑に行うことができる。
【0084】
図12に示すように、押さえ部材30で長尺物50を押さえる(工程4)。工程4では押さえ部材30が上側から下側に移動し、押さえ部材30(好ましくは押さえ部31)が長尺物50に接触することが好ましい。このとき、押さえ部材30の自重によって長尺物50を押さえることが好ましい。
【0085】
図13に示すように、第1の保持部材20が支持部材10に対して相対的に載置面11の延在方向xに移動すると、長尺物50の長手方向の他方端52の位置が支持部材10に対して相対的に移動する(工程5)。工程5では、押さえ部材30で長尺物50を押さえた状態で、第1の保持部材20が支持部材10に対して相対的に載置面11の延在方向xに移動することが好ましい。上記搬送装置の作動方法では、長尺物50は第1の保持部材20に牽引されることで搬送される。搬送装置1には長尺物50が載置される載置面11よりも上側に押さえ部材30が設けられており、かつ押さえ部材30の重心34が支持部材10に対して所定の範囲で動くことにより、長尺物50の種類によらず、押さえ部材30は適度な負荷を掛けるように長尺物50に当接することができる。また、長尺物50の搬送中、押さえ部材30が長尺物50に対して負荷を掛け続けることができるため、重力による撓みを抑制しながら長尺物50を搬送することができる。
【0086】
工程5において、第1の保持部材20の移動長さと、長尺物50の長手方向の他方端52の移動長さが同じであることが好ましい。即ち、工程5では長尺物50を延伸することなく移動させることが好ましい。また、工程5では長尺物50を加熱しないことが好ましい。
【0087】
上記作動方法は、図14に示すように、支持部材10が、さらに載置面11よりも上側に配置され且つ載置面11との間で長尺物50を挟持する固定部40を有している場合、第1の保持部材20が支持部材10に対して相対的に移動する工程の後、載置面11と固定部40で長尺物50を挟持する工程をさらに含むことが好ましい(工程6)。これにより、固定部40と載置面11によって長尺物50を挟持することができる。このため、長尺物50を長手方向の少なくとも2箇所で保持することができ、長尺物50を搬送しやすくなる。
【0088】
支持部材10がさらに固定部40を有している場合、上記作動方法は、図15に示すように工程6の後、押さえ部材30による長尺物50の押さえを解除する工程をさらに含むことが好ましい(工程7)。これにより、押さえ部材30による負荷がない状態で長尺物50を搬送することができる。
【0089】
上記作動方法は、図16に示すように、押さえ部材30が長尺物50を押さえた状態で、固定部40と第1の保持部材20の少なくともいずれか一方が載置面11の延在方向xへ移動し、図17に示すように長尺物50を延伸する工程をさらに含むことが好ましい(工程8)。長尺物50を延伸することで、長尺物50に延伸部と未延伸部が形成される。そのような延伸部と未延伸部を有する長尺物50は、延伸後の長尺物50をバルーンカテーテルのバルーンを製造するためのパリソンとして用いることができる。工程8において、固定部40と第1の保持部材20のいずれか一方が移動してもよく、双方が移動してもよい。
【0090】
工程8では、押さえ部材30が長尺物50を押さえた状態で長尺物50を延伸するが、押さえ部材30による押さえは必須ではない。すなわち、上記作動方法は、工程8に代えて、押さえ部材30が長尺物50を押さえていない状態で、固定部40と第1の保持部材20の少なくともいずれか一方が載置面11の延在方向xへ移動し、長尺物50を延伸する工程を含んでいてもよい。
【0091】
図16図17に示すように、長尺物50を延伸するために、工程8では第1の保持部材20よりも長尺物50の長手方向の他方端52側、(好ましくは、長尺物50の長手方向の中途部)を加熱しながら、固定部40と第1の保持部材20の少なくともいずれか一方を載置面11の延在方向xへ移動させることが好ましい。長尺物50の搬送装置1は、載置面11の延在方向xにおいて、支持部材10と第1の保持部材20の間に、加熱装置48を備えることが好ましい。これにより、第1の保持部材20よりも長尺物50の長手方向の他方端52側の所定の区間を加熱延伸することができる。加熱装置48としては、公知の加熱装置を用いることができる。長尺物50の加熱と、第1の保持部材20または固定部40の移動とは、いずれを先に行ってもよく、同時に開始してもよい。
【0092】
搬送装置1は、固定部40に代えて、第2の保持部材25を備えていてもよい。この場合、上記作動方法は、第1の保持部材20が支持部材10に対して相対的に移動する工程の後、工程6に代えて、第2の保持部材25で長尺物50の長手方向の他方側を保持する工程を含んでいてもよい(工程9)。
【0093】
搬送装置1が、第2の保持部材25を有している場合、上記作動方法は、第2の保持部材25で長尺物50の長手方向の他方側を保持する工程の後、工程7に代えて、押さえ部材30による長尺物50の押さえを解除する工程をさらに含むことが好ましい(工程10)。
【0094】
搬送装置1が、第2の保持部材25を有している場合、上記作動方法は、工程8に代えて、押さえ部材30が長尺物50を押さえた状態、または押さえない状態で、第1の保持部材20の少なくともいずれか一方が載置面11の延在方向xへ移動し、長尺物50を延伸する工程をさらに含むことが好ましい(工程11)。
【符号の説明】
【0095】
1:長尺物の搬送装置
10:支持部材
11:載置面
11A:第1端
11B:第2端
12:凹部
12a:凹部の延在長さ
12b:凹部の幅
12c:凹部の深さ
13:底面
14:内壁
15:仕切り壁
20:第1の保持部材
21、22:チャック片
25:第2の保持部材
30:押さえ部材
31:押さえ部
31a:孔
32:シャフト
34:押さえ部材の重心
35:上下方向における押さえ部材の重心の移動範囲
40:固定部
41:第1の駆動機構
42:第2の駆動機構
43:第3の駆動機構
44:第4の駆動機構
48:加熱装置
50:長尺物
51:一方端
52:他方端
x:載置面の延在方向
y:載置面の延在方向と上下方向の双方に垂直な方向
z:上下方向
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