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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】水性剥離剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 9/00 20060101AFI20240319BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240319BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C09D9/00
C09D7/63
C09K3/00 R
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020066368
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2020169321
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019071693
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北尾 成史
(72)【発明者】
【氏名】守本 浩直
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-155590(JP,A)
【文献】特開2014-151581(JP,A)
【文献】特開2008-291178(JP,A)
【文献】特開平06-220489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00,
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水25重量%以上70重量%以下
(B)芳香族アルコール20重量%以上70重量%以下
を含む水性剥離剤組成物であって、さらに、
(C)炭素数6以上30以下のアルキル基とオキシアルキレン単位を有する界面活性剤0.1重量%以上10重量%以下
(D)芳香族溶媒0.1重量%以上10重量%以下及び(E)炭素数6以上30以下の脂肪族溶媒0.5重量%以上10重量%以下
を含有し
該(E)炭素数6以上30以下の脂肪族溶媒が、ノナン、オクタデカノール、エルカ酸アミド、ヘキサデカノール、オクタノール、デカン酸メチル、オレイン酸メチルから選ばれる1種以上を含有する、
ことを特徴とする水性剥離剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷が小さく、優れた剥離効果及び剥離効果の持続性に優れた水性剥離剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物、土木構造物等の表面に形成された塗膜(旧塗膜)を塗り替える方法として、旧塗膜の上に新しい塗料を塗装する方法、または、旧塗膜を一旦剥離し新しい塗料を塗装する方法等が挙げられる。従来コストや工期短縮等の面から旧塗膜に上に新しい塗料を塗装する方法で塗り替える場合が多く、現在旧塗膜の上に2回ないし3回以上塗り重ねた建築物、土木構造物は数多く存在する。
【0003】
しかし、既に劣化した旧塗膜の上に新しい塗料を何重にも塗り重ねると、塗膜自体が重くなり基材に負荷を与える恐れがある。また塗膜自体の厚みが厚くなりすぎ空間を圧迫してしまう場合もある。さらに近年では高機能性塗膜が登場し、塗膜の上に新しい塗料を塗装すること自体が難しい場合もある。
【0004】
このような問題から、最近では旧塗膜を一旦剥離する方法が多くなってきている。
旧塗膜を剥離する方法としては、サンダー処理、ブラスト処理、高圧水噴射、タガネハツリ等の物理的手法、薬剤、溶剤を利用した化学的手法等が挙げられるが、最近では、下地損傷、粉塵飛散等の問題、環境配慮等の観点から、水性剥離剤を利用した化学的手法が用いられるようになっている。(例えば、特許文献1等)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-155199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような水性剥離剤は、水、ベンジルアルコールを基本組成とし、さらに、溶剤や乳化剤を含有させることにより、水とベンジルアルコールを効率よく相溶、分散させることにより、優れた剥離性能を得ることができる。
例えば特許文献1では、水、ベンジルアルコールにさらに極性非プロトン溶剤を加えて可溶化させる方法が記載されている。
しかし、特許文献1の方法では、剥離効果、剥離効果の持続性に劣る場合があり、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、(A)水、(B)芳香族アルコールに、さらに、(C)炭素数6以上30以下のアルキル基とオキシアルキレン単位を有する界面活性剤と、(D)芳香族溶媒及び/または(E)炭素数6以上30以下の脂肪族溶媒を含有することにより、剥離効果及び剥離効果の持続性に優れていることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.(A)水25重量%以上70重量%以下
(B)芳香族アルコール20重量%以上70重量%以下
を含む水性剥離剤組成物であって、さらに、
(C)炭素数6以上30以下のアルキル基とオキシアルキレン単位を有する界面活性剤0.1重量%以上10重量%以下
(D)芳香族溶媒0.1重量%以上10重量%以下及び(E)炭素数6以上30以下の脂肪族溶媒0.5重量%以上10重量%以下
を含有し
該(E)炭素数6以上30以下の脂肪族溶媒が、ノナン、オクタデカノール、エルカ酸アミド、ヘキサデカノール、オクタノール、デカン酸メチル、オレイン酸メチルから選ばれる1種以上を含有する、
ことを特徴とする水性剥離剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性剥離剤組成物は、環境負荷が小さく、優れた剥離効果及び剥離効果の持続性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の水性剥離剤組成物は、(A)水(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)芳香族アルコール(以下、「(B)成分」ともいう。)とともに、(C)炭素数6以上30以下のアルキル基とオキシアルキレン単位を有する界面活性剤(以下、「(C)成分」ともいう。)と、(D)芳香族溶媒(以下、「(D)成分」ともいう。)及び/または(E)炭素数6以上30以下の脂肪族溶媒(以下、「(E)成分」ともいう。)を含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明で用いる(B)成分は、例えば、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、ナフトール等が挙げられる。本発明では特に、ベンジルアルコールを用いることが好ましい。
このような(B)成分と(A)成分を混合することで、優れた水性の剥離剤を得ることができる。
【0013】
本発明で用いる(C)成分は、炭素数6以上30以下(好ましくは炭素数8以上24以下)のアルキル基とオキシアルキレン単位を有する界面活性剤で、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルあるいは、その硫酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、スルホン酸エステル塩、コハク酸塩、コハク酸エステル塩等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用できる。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等が挙げられる。また、オキシアルキレン単位としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位等が挙げられ、繰り返し単位が6以上50以下、好ましくは8以上30以下であること好ましい。
このような(C)成分は、(A)成分と(B)成分の乳化分散体を形成し、(B)成分の分散安定性を高めることができる。また後述する(D)成分、(E)成分とともに混合することで、剥離効果、剥離効果の持続性に優れた剥離剤を得ることができる。
【0014】
本発明で用いる(D)成分は、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンジルフェニルエーテル、ベンジルメチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用できる。
このような(D)成分は、特に剥離効果の向上が期待できる成分である。また(D)成分は、特に(B)成分と相溶しやすく、(B)成分と(D)成分の相乗効果により、より優れた剥離効果を得ることができる。
【0015】
本発明で用いる(E)成分は、炭素数6以上30以下(好ましくは炭素数8以上24以下、より好ましくは炭素数10以上22以下、さらに好ましくは炭素数12以上20以下)の脂肪族溶媒で、特に剥離効果の持続性の向上が期待できる成分である。また(E)成分は、特に(C)成分と相溶しやすく、上記(B)成分(または(D)成分)の分散安定性を高める効果も有する。
(E)成分としては、例えば、次に例示するもの等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用できる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族炭化水素
例えば、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、ペンタデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン等が挙げられ、特に、直鎖状の飽和脂肪族炭化水素等が好ましい。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族モノアルコール
第一級、第二級、第三級等特に限定されないが、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール 、エライジルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、エルシルアルコール、イソヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、イソヘプタノール、4-メチル-1-ヘキサノール、3-メチル-1-ヘキサノール、2-エチル-2-メチル-1-ブタノール、イソオクタノール、2-エチルヘキサノール、6-メチル-2-ヘプタノール、イソノナノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、イソデカノール、イソウンデカノール、イソドデカノール、2-ブチルオクタノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、2-ヘキシルデカノール、イソヘキサデカノール、2-ヘキシルデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、2-イソヘプチルイソウンデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、2-オクチルドデカノール、イソヘンエイコサノール、18-メチルエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、2-デシルテトラデカノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソトリアコンタノール等が挙げられ、特に、直鎖状の第一級飽和脂肪族脂肪族モノアルコール等が好ましい。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ジアルコール
例えば、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオール、エイコサンジオール、ヘンイコサンジオール、ドコサンジオール、トリコサンジオール、テトラコサンジオール、ペンタコサンジオール、ヘキサコサンジオール、ヘプタコサンジオール、オクタコサンジオール、ノナコサンジオール、トリアコサンジオール、リシノレイルアルコール等が挙げられ、特に、直鎖状の飽和脂肪族ジアルコール等が好ましい。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族モノカルボン酸
例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸 、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸、サピエン酸、オレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、パウリン酸、ミード酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ピノレン酸、エイコサジエン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、アドレン酸、ドコサペンタエン酸、オズボンド酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、リシノール酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘプタデセン酸、ペトロセリン酸、エレオステアリン酸、ボセオペンタエン酸、ガドレイン酸、エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、2-ヘキシルデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸、イソノナデカン酸、イソエイコサン酸、2-オクチルドデカン酸、2-デシルテトラデカン酸等が挙げられ、特に、直鎖状の飽和あるいは不飽和脂肪族モノカルボン酸等が好ましい。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ジカルボン酸
例えば、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸等が挙げられ、特に直鎖状の飽和脂肪族ジカルボン酸等が好ましい。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族モノエステル
例えば、上記炭素数6以上30以下の脂肪族モノカルボン酸とアルコールの反応生成物である脂肪族モノエステル、あるいは、上記炭素数6以上30以下の脂肪族モノアルコールとカルボン酸の反応生成物である脂肪族モノエステル等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ジエステル
例えば、上記炭素数6以上30以下の脂肪族ジカルボン酸とアルコールの反応生成物である脂肪族ジエステル、あるいは、上記炭素数6以上30以下の脂肪族ジアルコールとカルボン酸の反応生成物である脂肪族ジエステル等が挙げられる。
なお、脂肪族モノエステル、脂肪族ジエステルの生成で使用されるアルコールとしては、上記脂肪族モノアルコール、あるいはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれる1種以上が挙げられる。また、カルボン酸としては、上記脂肪族モノカルボン酸、あるいはメタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族エーテル
例えば、ヘプチルエーテル、オクチルエーテル、テトラデシルエーテル、ヘキサデシルエーテル等が挙げられ、特に、直鎖状の飽和脂肪族エーテル等が好ましい。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ケトン
例えば、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、イソホロン等が挙げられ、特に、直鎖状の飽和脂肪族ケトン等が好ましい。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族モノアミン
例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、イコシルアミン、ドコシルアミン、テトラコシルアミン、ペンタコシルアミン、ヘキサコシルアミン、ヘプタコシルアミン、オクタコシルアミン、ノナコシルアミン、トリアコンチルアミン、オレイルアミン、リノレイルアミン、エルカアミン、リシノレイルアミン等が挙げられ、特に、直鎖状の飽和脂肪族モノアミン等が好ましい。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ジアミン
例えば、ヘキシルジアミン、ヘプチルジアミン、オクタンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン等が挙げられ、特に、直鎖状の飽和脂肪族ジアミン等が好ましい。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族モノアミド
例えば、ヘキサンアミド、ヘプタンアミド、オクタンアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、テトラデカンアミド、ヘキサデカンアミド、オクタデカンアミド、イコサンアミド、ドコサンアミド、テトラコサンアミド、オレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミド、エルカ酸アミド等、また、上記炭素数6以上30以下の脂肪族モノカルボン酸とアミンの反応生成物である脂肪族モノアミド等が挙げられ、特に、直鎖状の飽和脂肪族モノアミド等が好ましい。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ジアミド
例えば、上記炭素数6以上30以下の脂肪族ジカルボン酸とアミンの反応生成物である脂肪族ジアミド等が挙げられ、特に、直鎖状の飽和脂肪族ジアミド等が好ましい。
なお、脂肪族モノアミド、脂肪族ジアミドの生成で使用されるアミンとしては、例えば、上記脂肪族モノアミン、あるいは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミンから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0016】
本発明では特に(E)成分として、炭素数6以上12以下(好ましくは炭素数8以上12以下)の脂肪族溶媒と、炭素数13以上30以下(好ましくは炭素数14以上24以下)の脂肪族溶媒を併用したものを用いることが好ましい。
また(E)成分として、脂肪族炭化水素、脂肪族モノアルコール、脂肪族モノエステル、脂肪族ジエステル、脂肪族モノアミド、脂肪族ジアミドから選ばれる1種以上を用いることが好ましく、特に、脂肪族炭化水素と、脂肪族モノエステル及び/または脂肪族ジエステルを併用したものを用いることが好ましい。
【0017】
このような(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分の混合量は、特に限定されないが、剥離剤全量に対し、
(A)成分25重量%以上70重量%以下(好ましくは30重量%以上60重量%以下、より好ましくは35重量%以上50重量%以下)、
(B)成分20重量%以上70重量%以下(好ましくは25重量%以上65重量%以下、より好ましくは30重量%以上60重量%以下)、
(C)成分0.1重量%以上10重量%以下(好ましくは0.5重量%以上8重量%以下、より好ましくは1.0重量%以上6重量%以下)、
(D)成分0.1重量%以上10重量%以下(好ましくは0.5重量%以上5重量%以下)、
(E)成分0.5重量%以上10重量%以下(好ましくは1.5重量%以上8重量%以下)、
であることが好ましい。
【0018】
本発明の剥離剤組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分の他に、例えば、増粘剤、酸化剤、還元剤、樹脂、ワックス、揮発防止剤、芳香剤、着色剤、染料等の添加剤を用いることもできる。
【0019】
増粘剤としては、例えば、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、ソーコナイト、スティーブンサイト、フルオロヘクトライト、ラポナイト、レクトナイト、バーミキュライト、イライト、マカタイト、カネマイト、イリエライト、マガディアイト、ケニヤアイト等の粘土鉱物、膨潤性シリカ、セルロースまたはセルロース誘導体、ポリアクリル酸重合体等を用いることができる。
増粘剤は、組成物全量に対し、0.1重量%以上20重量%以下、さらには0.5重量%以上15重量%以下含有することが好ましい。
【0020】
酸化剤としては、例えば、蟻酸、酢酸、酪酸、アクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、サリチル酸、ケイ皮酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸、アルギン酸、グリコール酸、グルコン酸、グルタミン酸、トルエンスルホン酸、ニコチン酸、尿酸、ハロゲン置換酢酸、ベンゼンスルホン酸、過酸化水素、過塩素酸塩、過ホウ酸塩等が挙げられる。
【0021】
還元剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0022】
酸化剤、還元剤の混合量は、特に限定されないが、組成物全量に対し、その合計量が0.1重量%以上10重量%以下、さらには0.5重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
【0023】
樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、本発明では特に酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂形態は、水可溶型、水分散型、溶剤可溶型、NAD型、自己乳化型、粉末型等特に限定されないが、水分散型、自己乳化型、粉末型等であることが好ましい。
【0024】
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、パラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、ペトロラタム、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ラノリン、みつろう、フィッシャー・トロプシュワックス等が挙げられ、液状または固形状特に限定されず、1種または2種以上を用いることができる。本発明では特に、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスを用いることが好ましい。
【0025】
揮発防止剤としては、例えば、グリセリン、ブタントリオール、2-メチル-プロパントリオール、ペンタントリオール、2-メチル-ブタントリオール、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、2-エチル-ブタントリオール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ペンタエリスリトール、ペンタンテトロール、ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ソルビトール、アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース、トリペンタエリスリトール、
トリメリット酸、ヘミメリット酸等のベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸等のベンゼンテトラカルボン酸、メリット酸等のベンゼンヘキサカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、
トリアミノトリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、
ヘキサメチルリン酸トリアミド、
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用できる。
【0026】
また、上記(E)成分、(D)成分以外の溶媒として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N-メチルピロリドン、スルホラン、クロロブタン、ブロムヘキサン、ジクロロメタン、1,2&#8722;ジクロロエタン、1,1&#8722;ジクロロエタン、クロロホルム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、トリグリセリド、シクロヘキサノール、フルフリルアルコール等を使用することもできる。
【0027】
本発明の剥離剤組成物は、建築物、土木構造物等の表面に形成された塗膜を剥離するもので、適用できる塗膜としては、特に限定されないが、例えば、JIS K5621「一般用さび止めペイント」、JIS K5651「アミノアルキド樹脂塗料」、JIS K5658「建築用耐候性上塗り塗料」、JIS K5659「鋼構造物用耐候性塗料」、JIS K5660「つや有合成樹脂エマルションペイント」、JIS K5663「合成樹脂エマルションペイント」、JIS K5668「合成樹脂エマルション模様塗料」、JIS K5670「アクリル樹脂系非水分散形塗料」、JIS A6909「建築用仕上塗材」等が挙げられる。
【0028】
本発明の剥離剤組成物は、このような塗膜の上に、好ましくは0.2kg/m以上5.0kg/m以下、より好ましくは0.3kg/m以上3.0kg/m以下で塗付すればよい。塗装器具としては特に限定されず、例えば、ローラー、刷毛、鏝、ヘラ、スプレー、ガン等を用いて塗装すればよい。
【0029】
また本発明の剥離剤組成物は、30分から2時間程度で軟化し剥離を開始することができ、さらに24時間から48時間経過後も軟化が持続している。そのため、翌日など、施工者のタイミングにあわせて剥離が可能である。剥離器具としては特に限定されず、例えば、鏝、ヘラ、スクレーパー等を用いて剥離すればよい。
【実施例
【0030】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0031】
表1に示す重量割合にて下記原料を均一に混合した剥離剤組成物1~16を用意した。
A:水
B:ベンジルアルコール
C1:ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム
C2:ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル
C3:ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム
C4:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
D:キシレン
E1:ノナン
E2:オクタデカノール
E3:エルカ酸アミド
E4:ヘキサデカノール
E5:オクタノール
E6:ブタノール
E7:デカン酸メチル
E8:オレイン酸メチル
E9:プロピオン酸メチル
揮発抑制剤:グリセリン
増粘剤:セルロース系増粘剤
酸化剤:過酸化水素
【0032】
(試験)
下記に示す塗膜面が垂直となるように設置し、表1に示す剥離用組成物を下記に示す所要量でローラー塗りし、下記の試験を実施した。
塗膜面:スレート板(300×150×6mm)の片面に、アクリルシリコン樹脂、酸化チタンを主成分とするアクリルシリコン樹脂塗料を吹付け、塗膜厚0.3mmの塗膜を形成させ、これを促進耐候性試験機「アイスーパーUVテスター」(岩崎電気株式会社製)にて400時間曝露させたものを塗膜面とした。剥離用組成物所要量0.5kg/m
【0033】
(試験1)塗着性
塗付直後の剥離用組成物の塗着度合いを目視にて観察した。度合いの評価は、「5」(垂直面でも問題無く優れた塗着性を示した。)から「1」(剥離用組成物が一部垂れ落ちてしまった。)の5段階で評価した。結果は表1に示す。
【0034】
(試験2)剥離性
塗付後24時間後、ヘラを用いて塗膜剥離を行い、その度合いを、「5」(問題無くスムーズに剥離でき、優れた塗膜軟化性を示した。)から「1」(剥離が困難であり、塗膜軟化性に劣っていた。)の5段階で評価した。結果は表1に示す。
【0035】
(試験3)剥離効果の持続性
塗付後48時間後、ヘラを用いて塗膜剥離を行い、その度合いを評価した。評価は試験2と同様である。結果は表1に示す。
【0036】
【表1】